(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記封止樹脂が前記導光板の1つの側面に対向して配置され、前記硫化物蛍光体含有層が前記導光板の上面に対向して配置されていることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであり、本発明の技術的範囲を限定することを意図したものではないことに留意されたい。1つの実施形態において説明する構成は、特段の断りがない限り、他の実施形態にも適用可能である。以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。
各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがあることに留意されたい。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。さらに、例えば符号「10A」のように、数字とアルファベットから成る符号により示される部材は、特段の断りがない事項については、例えば符号「10」のように同じ数字を有しアルファベットを有しない符号により示される部材および同じ数字と異なるアルファベットを有する符号により示される部材と同じ構成を有してよい。
【0012】
本願発明者は鋭意検討した結果、従来の赤色蛍光体を用いることに代えて、赤色蛍光体として、KSF蛍光体およびMGF蛍光体の少なくとも一方を用いることで、緑色硫化物蛍光体を用いた、高い発光効率を有する発光装置を提供できることを見いだした。詳細を後述するKSF蛍光体およびMGF蛍光体は、発光素子の発光する青色光を吸収し、赤色光を発光するが、緑色硫化物蛍光体が発光する緑色光をほとんど吸収しない。すなわち、2次吸収を起こさない。このため、本発明の実施形態に係る発光装置は高い発光効率を有する。また、KSF蛍光体およびMGF蛍光体の発光スペクトルにおけるピークは半値幅が、10〜20nm程度と狭い。このため、赤の波長域のほぼ全域を透過するカラーフィルタを通した場合であっても、半値幅の狭い赤色が得られるので、色純度が高い赤色光を得ることができる。
【0013】
また、発光素子に近い側、すなわち封止部材にKSF蛍光体を含有させ、温度特性の悪い硫化物蛍光体を発光素子から離して配置するため、発光素子からの熱の影響を受けにくく、発光効率の低下を抑制することができる。
【0014】
KSF蛍光体は青色光の吸収が少ないため、白色光源とする場合、従来の赤色蛍光体よりも多く含有させる必要がある。しかし、特許文献1のように緑色蛍光体とともにシートに含有させると、その含有量の多さから蛍光体シートの厚みが大きくなる。近年のバックライト光源では、より薄型の光源とすることが求められており、蛍光体を薄くする必要がある。
【0015】
本実施形態では、従来の赤色蛍光体よりも多くの量を必要とするKSF蛍光体を封止部材に入れることで発光素子に近い位置に配置し、KSF蛍光体の必要量を最小限とする一方で、熱に弱い硫化物蛍光体を封止部材の外側(光取り出し側)に配置する。
これにより、硫化物蛍光体含有層(蛍光体シート)の厚みを増やすことなくKSF蛍光体を用いることができる。蛍光体量を減らせるので、コストも低減することができる。
以下に本発明の複数の実施形態に係る発光装置について詳述する。
【0016】
1.実施形態1
図1は、本発明の実施形態1にかかる発光装置100の概略断面図である。発光装置100は、青色光を発光する発光素子1と、発光素子1が発する青色光の一部を吸収し、緑色光を発光する緑色硫化物蛍光体24と、発光素子1の発する青色光の一部を吸収し、赤色光を発光する赤色蛍光体14を含んでいる。赤色蛍光体14は、詳細を後述する、KSF蛍光体およびMGF蛍光体の少なくとも一方である。
【0017】
本発明の実施形態に係る発光装置では、発光素子1に対して、赤色蛍光体14の方が、緑色硫化物蛍光体24より近くに位置している。
【0018】
発光装置100は、発光素子パッケージ10を含む。発光素子パッケージ10は、底面と、側壁と、該底面と該側壁とに囲まれ上部が開口したキャビティを備えた樹脂パッケージ3と、樹脂パッケージ3のキャビティの底面に配置された発光素子1と、樹脂パッケージ3のキャビティに充填された封止樹脂12とを有する。発光素子1は、その正極および負極が、例えば金属ワイヤ、金属バンプ、めっき等の導電手段を介して外部電源と接続されており、外部電源から電流(電力)を供給することにより青色光を発光する。
樹脂パッケージ3のキャビティの底面にリードを配置して、発光素子1をこのリードの上に配置してもよい。リードを用いる場合、リードと発光素子の負極および/または正極を金属ワイヤで接続し、リードを介して発光素子1を外部電源に接続してよい。また、金属ワイヤを用いずに、半田等でフリップチップ接続してもよい。また、リードは必要に応じて表面にめっき層を有してよい。
封止樹脂12は、発光素子1の周囲(
図1に示す実施形態では、発光素子1の底面を除いた、上面および側面)を覆っている。封止樹脂12は赤色蛍光体14を含む。すなわち、封止樹脂12の内部には、赤色蛍光体14が分散配置されている。
なお、
図1に示す実施形態では、赤色蛍光体14は、封止樹脂12内に均一に分散しているが、赤色蛍光体の分散配置の形態はこれに限定されるものではない。赤色蛍光体14は、例えば、発光素子1の近傍において、高い密度で配置されている等、封止樹脂12内の一部において、より高い密度で配置されてよい。このような配置として、赤色蛍光体の分散密度が、封止樹脂の上部で小さく、封止樹脂12底部(発光素子1の直上を含む)で高くなっている、所謂、沈降配置がある。沈降配置は、例えば、赤色蛍光体14を均一に分散させた、硬化前の封止樹脂12を樹脂パッケージ3のキャビティに充填した後、封止樹脂12を未硬化のままで所定の時間放置し、封止樹脂12内の赤色蛍光体14が重力により移動し、その分布が封止樹脂12の底部において高くなってから、封止樹脂12を硬化させることで形成できる。遠心力により沈降させてもよい。
なお、封止樹脂12の内部に、赤色蛍光体14に加えて、フィラーを配置してもよい。
【0019】
発光素子パッケージ10は、その上面を出射面とし、青色光と赤色光を発光する。より詳細には、発光素子1から出た青色光の一部は、封止樹脂12を透過して封止樹脂12の上面から外側に向かって出射する。これら発光素子パッケージ10から出射する青色光の一部は、封止樹脂12の内部を進む際に樹脂パッケージ3の側面および/または底面で反射した後、封止樹脂12の上面から出射してもよい。また、発光素子1から出た青色光の別の一部は、封止樹脂12の内部を進む途中で赤色蛍光体14に吸収され、赤色蛍光体14は赤色光を発光する。そして、赤色蛍光体14から発せられた赤色光は、封止樹脂12を透過して封止樹脂12の上面から外側に向かって出射する。これら赤色蛍光体14が発する赤色光の一部は、封止樹脂12の内部を進む際に樹脂パッケージ3の側面および/または底面で反射した後、封止樹脂12の上面から出射してもよい。
【0020】
封止樹脂12の外側、すなわち、
図1においては、封止樹脂12(または樹脂パッケージ3)の上部には、緑色硫化物蛍光体含有層20が配置されている。緑色硫化物蛍光体含有層20は、透光性材料22と緑色硫化物蛍光体24とを含む。すなわち、緑色硫化物蛍光体24は、透光性材料22内に分散配置されている。緑色硫化物蛍光体含有層20は任意の形態を有してよい。好ましい形態の1つは、
図1に示すようなシート形状(またはフィルム状)である。緑色硫化物蛍光体含有層20の厚さを均一にでき、色むらを抑制できるからである。
【0021】
このような構成を有することで、発光装置100では、発光素子1に対して、赤色蛍光体14の方が、緑色硫化物蛍光体24より近くに位置している。波長変換のための必要量が緑色硫化物蛍光体よりも多いKSF蛍光体またはMGF蛍光体を発光素子の近くに配置し、緑色硫化物蛍光体24を発光素子1の遠くに配置することにより、赤色蛍光体の必要量を低減し、この結果、光の取り出し効率(すなわち、発光効率)を更に向上することができる。
【0022】
発光素子パッケージ10の上面から出射した赤色光の多くは、緑色硫化物蛍光体含有層20の下面から内部に進入し、緑色硫化物蛍光体含有層20の透光性材料22を透過した後、緑色硫化物蛍光体含有層20上面より外側に出て行く。
発光素子パッケージ10の上面から出射した青色光の多くは、緑色硫化物蛍光体含有層20の下面から内部に進入する。緑色硫化物蛍光体含有層20の下面から内部に進入した青色光の一部は、緑色硫化物蛍光体含有層20の透光性材料22を透過した後、緑色硫化物蛍光体含有層20上面より外側に出て行く。緑色硫化物蛍光体含有層20の下面から内部に進入した青色光の別の一部は、緑色硫化物蛍光体24に吸収され、緑色硫化物蛍光体24が緑色光を発光する。緑色硫化物蛍光体24が発した緑色光の多くは、透光性材料22の内部を進み、緑色硫化物蛍光体含有層20上面より外側に出て行く。この結果、緑色硫化物蛍光体含有層20上面の外側では、青色光と赤色光と緑色光が混ざり白色光を得ることができる。
【0023】
なお、緑色硫化物蛍光体24が発する緑色光の一部は、下方に進み、緑色硫化物蛍光体含有層20の下面から出て、発光素子パッケージ10の上面から封止樹脂12の内部に進入する。しかし、KSF蛍光体およびMGF蛍光体の少なくとも一方である赤色蛍光体14は、緑色光を吸収しにくい。このため、例えば、樹脂パッケージ3の内面により反射された後、発光素子パッケージ10の上面から出射し、緑色硫化物蛍光体含有層20の下面から進入し、緑色硫化物蛍光体含有層20の上面から出射する緑色光がある。このような、緑色光が存在することは、発光装置100の取り出し効率の向上に寄与する。
【0024】
図1に示す実施形態では緑色硫化物蛍光体含有層20と封止樹脂12(または樹脂パッケージ3)とは離間している。これにより、熱に弱い緑色硫化物蛍光体24に発光素子1の発熱が伝わるのを、より確実に抑制できるという効果が得られる。
しかし、これに限定されるものではなく、緑色硫化物蛍光体含有層20と封止樹脂12(または樹脂パッケージ3)とは接触していてもよい。この場合、発光素子パッケージ10から出射した光が、より多く緑色硫化物蛍光体含有層20に進入し、取り出し効率を更に高くすることが可能となる。また、緑色硫化物蛍光体含有層20と封止樹脂12(または樹脂パッケージ3)とは接触していても発光素子1と緑色硫化物蛍光体24とはある程度、距離がはなれているため、緑色硫化物蛍光体24の熱劣化を抑制する効果を得ることができる。
【0025】
図1に示す実施形態では、発光素子パッケージ10は、その実装面が底面(下面)となっており、光取り出し面と反対側の面を実装面とする(例えば、上面を光り取り出し面とし、下面を実装面とする)トップビュー型の発光素子パッケージである。しかし、これに限定されるものではなく、発光素子パッケージ10は、光取り出し面に隣接する面を実装面とする、いわゆるサイドビュー型として構成されてもよい。
また、
図1に示す実施形態では、樹脂パッケージ3を含む発光素子パッケージ10を用いているがこれに限定されるものではない。発光素子パッケージ10に代えて、樹脂パッケージを用いずに、発光素子1の表面に、赤色蛍光体14を含む蛍光体層を形成した、所謂、パッケージレスの形態であってもよい。
【0026】
図2は、発光素子パッケージ10から出射する光(緑色硫化物蛍光体含有層20に入射する光)の好ましい色度範囲を色度座標上に示した図である。発光素子パッケージ10から出射する光の色度が
図2中に点線で示した四角形の範囲(すなわち、CIE1931色度図のxy色度座標系において、(0.4066、0.1532)、(0.3858、0.1848)、(0.1866、0.0983)および(0.1706、0.0157)の4点を結んでできる四角形の範囲)内であることが好ましい。
発光素子パッケージ10から出射する光の色度が
図2中に実線で示した四角形の範囲(すなわち、CIE1931色度図のxy色度座標系において、(0.19、0.099779)、(0.19、0.027013)、(0.3、0.09111)および(0.3、0.14753)の4点を結んでできる四角形の範囲)内であることがより好ましい。
色度をこのような範囲とすることで、緑色硫化物蛍光体含有層20とともに用いた際に、バックライトとして好ましい色調を得ることができる。
【0027】
出射光の色度がこのような範囲内に入る発光素子パッケージ10を実際に作製し、発光スペクトルを測定した例を以下に示す。
図3Aは作製した発光素子パッケージ10の断面の一部を示すSEM像であり、
図3Bは
図3AのA部の拡大SEM像であり、
図3Cは
図3AのB部の拡大SEM像であり、
図3Dは
図3AのC部の拡大SEM像であり、
図3Eは
図3BのD部の拡大SEM像である。
上面視で角部に丸みを帯びた略四角形のキャビティを備え、縦4mm、横1.4mm、高さ0.6mmの外形寸法を有する樹脂パッケージ3を用いた。樹脂パッケージ3はキャビティの底面に一対のリード5を有し、リード5は表面にめっき層15を有する。一対のリード5の一方の上に、透光性基板13と半導体層11とを有する発光素子1を配置した。発光素子1と一対のリードとを金ワイヤにより電気的に接続した。発光素子1の発する光は、435nm〜465nmの間に発光強度のピークを有する。
【0028】
封止樹脂12は、赤色蛍光体14とフィラー16とを分散させたシリコーン樹脂を樹脂パッケージ3のキャビティ内に配置し、赤色蛍光体14とフィラー16とを遠心沈降させて形成した。赤色蛍光体14としてKSF蛍光体(K
2SiF
6:Mn
4+)を用いた。フィラー16としてシリカフィラーとナノシリカフィラーを用いた。封止樹脂12は、シリコーン樹脂100重量部に対して、KSF蛍光体約17重量部と、シリカフィラー約5重量部と、ナノシリカフィラーを約0.4重量部とを含有していた。
図3Cに示すように、発光素子1の側面上部は、赤色蛍光体14およびフィラー16により覆われていなかった。
【0029】
図4は、得られた発光素子パッケージ10の発光スペクトルである。発光素子1は主に430nm〜480nmの波長の光を放出し、赤色蛍光体14は主に600nm〜660nmの波長の光を放出している。447nmに発光素子1の発光強度の最大値を示す第1のピーク波長を有し、631nmに赤色蛍光体14の発光強度の最大値を示す第2のピーク波長を有する。第1のピーク波長における発光強度と第2のピーク波長における発光強度の比は、第1:第2=100:67である。
CIE1931における色度座標の値は、x=0.216、y=0.054であった。
【0030】
次に発光装置100の各要素の詳細を示す。
1)発光素子
発光素子1は、青色光(発光ピーク波長が435〜465nmの範囲内である)を発光する限り、既知の任意の発光素子であってよく、青色LEDチップであってよい。発光素子1は、半導体積層体を備えてよく、窒化物半導体積層体を備えることが好ましい。半導体積層体(好ましくは窒化物半導体積層体)は、順に、第1半導体層(例えば、n型半導体層)、発光層および第2半導体層(例えば、p型半導体層)を有してよい。
好ましい窒化物半導体材料として、具体的には、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いてよい。各層の膜厚及び層構造は、当該分野で既知のものを用いてよい。
【0031】
2)赤色蛍光体
赤色蛍光体14は、KSF蛍光体およびMGF蛍光体の少なくとも一方である。KSF蛍光体およびMGF蛍光体は、緑色光をほとんど吸収せず、従って2次吸収をほとんど生じないという利点を有する。また、発光ピークの半値幅が35nm以下、好ましくは10nm以下と小さいことを特徴とする。また、粒径は例えば20〜50μm(平均粒径)である。なお、本明細書中において、平均粒径の値は、空気透過法を利用したF.S.S.S.No(Fisher−SubSieve−Sizers−No.)によるものとする。
以下に、KSF蛍光体およびMGF蛍光体について詳述する。
【0032】
(KSF蛍光体)
KSF蛍光体は、その発光波長のピークが610〜650nmの範囲にある赤色蛍光体である。その組成は、下記一般式(1)に表される。
A
2[M
1-aMn
4+aF
6] (1)
(式中、Aは、K
+、Li
+、Na
+、Rb
+、Cs
+及びNH
4+からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、aは0<a<0.2を満足する。)
【0033】
KSF蛍光体の発光ピークの半値幅は、10nm以下である。
なお、このKSF蛍光体については、本願出願人が先に特許出願した特願2014−122887号を参照してよい。
【0034】
KSF蛍光体の製造方法の一例を説明する。まず、所望の組成比となるようにKHF
2、K
2MnF
6、を秤量する。秤量したKHF
2をHF水溶液に溶解して、溶液Aを調製する。また、秤量したK
2MnF
6をHF水溶液に溶解させて溶液Bを調製する。さらに、H
2SiF
6を含む水溶液を所望の組成比となるように調製してH
2SiF
6を含む溶液Cとする。そして、溶液Aを、室温で撹拌しながら、溶液Bと溶液Cとをそれぞれ滴下する。得られた沈殿物を固液分離後、エタノール洗浄を行い、乾燥することで、KSF蛍光体を得ることができる。
【0035】
(MGF蛍光体)
MGFは深赤色の蛍光を発する赤色蛍光体である。すなわち、その発光波長のピークがKSF蛍光体よりも長波長側の650nm以上であり、Mn
4+で付活された蛍光体である。組成式の一例として3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:Mn
4+で表される。MGF蛍光体の半値幅は、15nm以上35nm以下である。
【0036】
MGF蛍光体は、その組成中のMgOのMg元素の一部をLi、Na、K、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W等の他の元素で置換してよく、またGeO
2中のGe元素の一部をB、Al、Ga、In等の他の元素に置換することにより発光効率を向上させてもよい。好ましくは、MgとGeの両元素を、それぞれScとGaの両元素に置換することにより、深赤色と呼ばれる600〜670nmの波長領域の光の発光強度をよりいっそう向上させることができる。
【0037】
MGF蛍光体は、下記一般式(2)で示される蛍光体である。
(x−a)MgO・(a/2)Sc
2O
3・yMgF
2・cCaF
2・(1−b)GeO
2・(b/2)Mt
2O
3:zMn
4+ (2)
(式中x、y、z、a、b、cは、2.0≦x≦4.0、0<y<1.5、0<z<0.05、0≦a<0.5、0<b<0.5、0≦c<1.5、y+c<1.5を満足し、MtはAl、Ga、Inから選択された少なくとも1種である。)
【0038】
一般式(2)において、0.05≦a≦0.3、0.05≦b<0.3とすることで、さらに発光する赤色光の輝度を向上させることができる。なお、MGF蛍光体については、本願出願人が先に特許出願した特願2014−113515号を参照してよい。
【0039】
本発明の実施の形態に係るMGF蛍光体の製造方法の一例を説明する。まず、原料としてMgO、MgF
2、Sc
2O
3、GeO
2、Ga
2O
3、MnCO
3を所望の組成比となるように秤量する。これらの原料を混合した後、この混合した原料をるつぼに充填した後、大気中において1000〜1300℃で焼成することにより得ることができる。
発光素子のピーク波長における発光強度と赤色蛍光体のピーク波長における発光強度の比は、第1:第2=100:55〜70であることが好ましい。
【0040】
3)緑色硫化物蛍光体
緑色硫化物蛍光体24は、下記一般式(3)で示される蛍光体である。
M
1Ga
2S
4:Eu (3)
(式中、M
1=Mg,Ca,Sr,Baで示されるEu付活チオガレート蛍光体)
緑色硫化物蛍光体24は、例えば、5〜20μmの粒径(平均粒径)を有する。緑色硫化物蛍光体24は、例えば、その発光波長のピークが520〜560nmの範囲にある緑色光を発光する。緑色硫化物蛍光体24の発光ピークの半値幅は55μm以下、好ましくは50μm以下である。
【0041】
4)透光性材料
透光性材料22は、青色光、緑色光および赤色光を透過させることができる。透光性材料は、発光素子1から出射され透光性材料22に入射した光のうち、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、80%以上または90%以上を透過する。
好ましい透光性材料22として、高歪点ガラス、ソーダガラス(Na
2O・CaO・SiO
2)、硼珪酸ガラス(Na
2O・B
2O
3・SiO
2)、フォルステライト(2MgO・SiO
2)、鉛ガラス(Na
2O・PbO・SiO
2)、無アルカリガラスを例示することができる。あるいは、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、環状非晶質ポリオレフィン、多官能アクリレート、多官能ポリオレフィン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。
【0042】
例えば、シート状に形成する場合、
図1に示すように硫化物蛍光体を含有する層のみで形成されていてもよいし、
図5Aに示すように透明層で挟まれた形態であってもよい。例えば、
図5Aに示す蛍光体シート23は、透明層25に硫化物蛍光体含有樹脂組成物を成膜して緑色硫化物蛍光体含有層20を形成し、その上に別の透明層25を積層することにより製造することができる。さらに、蛍光体シート23の両面を封止フィルム27a,27bで挟み、全体を熱圧着することにより、
図5Bに示す構造の蛍光体シート23を製造することもできる。
【0043】
硫化物蛍光体含有層20の厚みは、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜40μmである。
【0044】
透明層25としては、厚さ10〜100μmの熱可塑性樹脂フィルム、熱又は光硬化性樹脂フィルムを使用することができる。例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリオレフィンフィルム等を挙げることができる。これらのフィルムの表面には、蛍光体含有樹脂組成物に対する密着性を改善するために、必要に応じてプラズマ処理等を施してもよい。
【0045】
5)封止樹脂
封止樹脂12は、青色光および赤色光を透過させることができ、好ましくは緑色光も透過させることができる。透光性材料は、発光素子1から出射され透光性材料22に入射した光のうち、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、80%以上または90%以上を透過する。
好ましい封止樹脂12として、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ変性樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、TPX樹脂、ポリノルボルネン樹脂またはこれらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂等の樹脂を挙げることができる。なかでもシリコーン樹脂またはエポキシ樹脂が好ましく、特に耐光性、耐熱性に優れるシリコーン樹脂がより好ましい。
【0046】
6)樹脂パッケージ
樹脂パッケージ3は任意の種類の樹脂により構成されてよい。好ましい樹脂として、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、液晶樹脂の少なくとも1種以上含む熱可塑性樹脂、または、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ハイブリッド樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、これらの樹脂を少なくとも1種以上含む熱硬化性樹脂などを例示できる。樹脂パッケージ3は、好ましくは白色の樹脂より成る。封止樹脂12の内部を進む光のうち、樹脂パッケージ3に達した光をより多く反射できるからである。
【0047】
2.実施形態2
図6は、本発明の実施形態2に係る発光装置100Bを用いた液晶ディスプレイ200を示す概略断面図である。発光装置100Bは、発光素子パッケージ10と、緑色硫化物蛍光体含有層20と、発光素子パッケージ10と緑色硫化物蛍光体含有層20との間に配置された導光板52とを含む。
図6に示す実施形態では、発光素子パッケージ10の封止樹脂12と、緑色硫化物蛍光体含有層20との間に導光板52が配置されている。より詳細には、封止樹脂12が導光板52の1つの側面に対向して配置され、緑色硫化物蛍光体含有層20が導光板52の上面に対向して配置されている。
図6に示す実施形態では発光素子パッケージ10は、トップビュー型であるが、これに限定されるわけではなく、上述のサイドビュー型等の他の形態を有してよい。
【0048】
発光装置100Bは、発光素子パッケージ10から導光板52に入射した光のうち、導光板52の下面に達した光を上方に反射させ、導光板52の上面に向かわせるように、導光板52の下面上に反射板(リフレクタ)51を備えてよい。
【0049】
図6に示す実施形態では、発光素子パッケージ10は、導光板52から離間して配置されているが、これに限定されるものでなく、例えば、封止樹脂12または樹脂パッケージ3を導光板52の側面に接触させること等により、発光素子パッケージ10と導光板52とを接触させてよい。
緑色硫化物蛍光体含有層20は、導光板52の上面に接触して配置されてもよく、また導光板52から離間して配置されてもよい。
【0050】
緑色硫化物蛍光体含有層20の上には、下部偏光フィルム53Aが配置される。下部偏光フィルム53Aの上には、液晶セル54が配置され、液晶セル54の上にはカラーフィルタアレイ55が配置される。カラーフィルタアレイ55は、例えば、赤色カラーフィルタ部55A、緑色カラーフィルタ部55Bおよび青色カラーフィルタ部55Cのように、特定の色の光のみを透過する、異なる色に対応した複数の種類のカラーフィルタ部を備える。カラーフィルタアレイ55の上には上部偏光フィルム53Bが配置されている。
【0051】
次に液晶ディスプレイ200の動作について説明する
発光素子1が発光した青色光の一部は、封止樹脂12から出てくる。また発光素子1が発光した青色光の一部は、封止樹脂12内に配置された赤色蛍光体14に吸収され、赤色蛍光体14から赤色光が発光され、この赤色光は封止樹脂12から出てくる。すなわち、発光素子パッケージ10からは、青色光と赤色光が混じった紫色光が出射し、この紫色光(青色光+赤色光)は導光板52を介して、緑色硫化物蛍光体含有層20に進入する。緑色硫化物蛍光体含有層20に入った青色光の一部は、緑色硫化物蛍光体24に吸収され、緑色硫化物蛍光体24は緑色光を発光する。この結果、緑色硫化物蛍光体含有層20の上面からは、青色光と緑色光と赤色光が混じった白色光が出射し、この白色光は下部偏光フィルム53Aに入る。下部偏光フィルム53Aに入った白色光(青色光+緑色光+赤色光)の一部は、下部偏光フィルム53Aを通過し、液晶セル54に進入する。液晶セル54に入った白色光の一部は、液晶セル54を通過して、カラーフィルタアレイ55に到達する。なお、緑色硫化物蛍光体含有層20と下部偏光フィルム53Aの間に、プリズムシートや輝度向上フィルムを使用することにより、効率よく青色光を変換することができるため、より少ない蛍光体量で目的の色度を得ることができる。
【0052】
カラーフィルタアレイ55に到達した、青色光、緑色光および赤色光のそれぞれは、対応したフィルタ部を通過することができる。例えば、赤色光は赤色カラーフィルタ部55Aを通過し、緑色光は緑色カラーフィルタ部55Bを通過し、青色光は青色カラーフィルタ部55Cを通過する。カラーフィルタアレイ55を通過した青色光、緑色光および赤色光、それぞれの一部は上部偏光フィルム53Bを通過する。これにより液晶ディスプレイ200は、所望の画像を表示できる。
上述のように赤色蛍光体14が発する赤色光および緑色硫化物蛍光体24が発する緑色光は、その発光ピークの半値幅が狭く、よって色純度が高い。また、より多くの光が赤色カラーフィルタ部55Aおよび緑色カラーフィルタ部55Bを通過できるため効率を向上させることができる。
【0053】
3.実施形態3
実施形態2ではエッジ方式の液晶ディスプレイを例に挙げて説明したが、直下方式の液晶ディスプレイであっても同様の効果を得ることができる。
図7は、本発明の実施形態3に係る発光装置100Cを用いた液晶ディスプレイ300を示す概略断面図である。発光装置100Cは、発光素子パッケージ10と、緑色硫化物蛍光体含有層20と、発光素子パッケージ10と緑色硫化物蛍光体含有層20との間に配置された拡散板56とを含む。直下方式の場合は、封止樹脂12と硫化物蛍光体含有層20の間に拡散板56が封止樹脂12と離間して配置される。