特許第6658097号(P6658097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友大阪セメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6658097-光導波路素子 図000002
  • 特許6658097-光導波路素子 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6658097
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】光導波路素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20200220BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   G02F1/035
   G02B6/12 363
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-38064(P2016-38064)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-156462(P2017-156462A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年8月6日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/(高い臨時設営性を持つ有無線両用高速光伝送技術の研究開発)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】市川 潤一郎
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−093905(JP,A)
【文献】 特開2003−084326(JP,A)
【文献】 特開平06−265956(JP,A)
【文献】 特開2013−127519(JP,A)
【文献】 特開2010−134115(JP,A)
【文献】 特開2013−174744(JP,A)
【文献】 特開2002−236273(JP,A)
【文献】 米国特許第04691984(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/14
G02F 1/00−1/125,1/21−7/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを備えた光導波路素子において、
該制御電極とは別に、該光導波路の少なくとも一部に交流電界を印加するための交流用電極を備え、
該光導波路に所定強度の光波を入力すると共に、該交流用電極には、該光導波路を伝播する光波の位相がπ変化する電界の強さの2倍より大きい電界が発生する電圧を印加する印加制御手段を有することを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子において、
該印加制御手段は、該交流用電極に1mHz〜6GHzの周波数の交流電界が発生する電圧を印加することを特徴とする光導波路素子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光導波路素子において、
該光導波路は、該光導波路を伝播する光波を分岐させる分岐部を有し、
該交流用電極は、該光導波路の該分岐部を含む部位に対して設けられることを特徴とする光導波路素子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光導波路素子において、
該所定強度の光波として予め所定の変調を施した変調光が入力されることを特徴とする光導波路素子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光導波路素子において、
該所定強度の光波として該制御電極により変調された光よりも波長が短い短波長光が入力されることを特徴とする光導波路素子。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の光導波路素子において、
該印加制御手段は、該光導波路素子が加熱された状態で、該光導波路に所定強度の光波を入力すると共に該交流用電極に電圧を印加することを特徴とする光導波路素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路とを備えた光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信や光計測の分野において、ニオブ酸リチウム(LN)などの電気光学効果を有する基板上に光導波路を形成すると共に、光導波路内を伝播する光波を制御するための制御電極を形成した導波路型光変調器などの光導波路素子が多用されている。
長距離伝送のために、光変調器に入射する光の強度を高くした際には、消光比の劣化、光損失の増大、バイアス点の変動などが問題となる。特に、光入力強度が10mW以上になると、このような問題が顕著となる。
【0003】
これらの問題は、主に、光変調器に光を入力する入力部及び光変調器内の光導波路などから発生する迷光と、光導波路内を伝播する信号光とが相互に干渉し、フォトリフラクティブ現象が発生し、光導波路部にグレーティングを形成していることが、大きな原因であることがわかった。
このような光導波路部に形成されたグレーティングは、光導波路内を進行する信号光を、進行方向とは逆方向に戻す、若しくは、光導波路外へ反射させることにより、信号光の消光比の劣化を引き起こすこととなる。
【0004】
フォトリラクティブ現象とは、光が当たることにより物質の屈折率が変化する現象であるが、具体的には、光により物質中の電荷移動が発生する特性から、光干渉などにより空間的な光の強度分布が生じると、該光の強度分布に応じて電荷の再分布が起こり、この電荷の偏在により内部電界が局所的に変化する。内部電場は物質の屈折率を変化させるため、結果として、光の強度分布に対応した物質の屈折率分布が形成される。
しかも、フォトリフラクティブ現象は、物質に光を当て続けると、次第に屈折率が変化し、散乱が時間と共に強くなるという特性を有するため、長時間にわたる光変調器の駆動に際しては、特に、消光比の劣化や光損失の増大など光変調器特性の悪化が顕著となる。
なお、特許文献1,2には、消光比の劣化や光損失の増大を抑制する技術が開示されている。
【0005】
光信号のOSNR(Optical Signal to Noise Ratio)などの諸特性の改善において、光入力強度の増加は、光変調器の駆動電圧Vπの低減、光損失低減などと同じ次数のインパクトがある。しかしながら、従来のデジタル光通信の用途では、EDFA(Erbium-Doped Fiber-Optical Amplifier)やラマンなどの光ファイバーアンプでの増幅が可能であることなどから、光入力定格についてのシステム要求はさほど高くなかった。
【0006】
ところが近年、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などの多値変調や周波数多重伝送、超高速TDM(Time Division Multiplexing)伝送、一部の計測用途などにおいて、OSNRなどの光信号品質の確保に有利な線幅の細いレーザー光源を用いる提案がなされている。線幅の細いレーザーは、コヒーレンシー(干渉性)が高いため、フォトリフラクティブ効果が顕著になる。
また、マッハツェンダー(MZ)干渉計構造の変調器の場合、バイアス点の変動は、光の入力強度が75mWの場合は7時間程度では安定しているが、100mW以上になるとバイアス点の変動が顕著になり、長時間の安定動作が得られない。
【0007】
フォトリフラクティブ効果は、導電帯にたたき上げられる電子が再トラップされて空間電荷分布が生じて屈折率変化が起こる現象であるため、材料自体の導電性が高く空間電荷の緩和が起こりやすい状態であれば、直ちに緩和する。したがって、デバイス全体や電気光学材料の温度を上げて電気抵抗値が高い状態で用いれば、フォトリフラクティブ感度は小さくなって高い入力耐性が得られる。しかしながら、この場合にはバイアスドリフトも加速されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−93905号公報
【特許文献2】特開2009−244811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記のような問題を解決し、基板材料のフォトリフラクティブ効果に起因する現象を抑制できる光導波路素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路素子は以下のような技術的特徴を有する。
(1) 電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを備えた光導波路素子において、該制御電極とは別に、該光導波路の少なくとも一部に交流電界を印加するための交流用電極を備え、該光導波路に所定強度の光波を入力すると共に、該交流用電極には、該光導波路を伝播する光波の位相がπ変化する電界の強さの2倍より大きい電界が発生する電圧を印加する印加制御手段を有することを特徴とする。
【0011】
(2) 上記(1)に記載の光導波路素子において、該印加制御手段は、該交流用電極に1mHz(1×10-3Hz)〜6GHzの周波数の交流電界が発生する電圧を印加することを特徴とする。
【0012】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の光導波路素子において、該光導波路は、該光導波路を伝播する光波を分岐させる分岐部を有し、該交流用電極は、該光導波路の該分岐部を含む部位に対して設けられることを特徴とする。
【0013】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光導波路素子において、該所定強度の光波として予め所定の変調を施した変調光が入力されることを特徴とする。
【0014】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光導波路素子において、該所定強度の光波として該制御電極により変調された光よりも波長が短い短波長光が入力されることを特徴とする。
【0015】
(6) 上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の光導波路素子において、該印加制御手段は、該光導波路素子が加熱された状態で、該光導波路に所定強度の光波を入力すると共に該交流用電極に電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光導波路素子は、光導波路の少なくとも一部に交流電界を印加するための交流用電極を備え、光導波路に所定強度の光波を入力すると共に、交流用電極には、光導波路を伝播する光波の位相がπ変化する電界の強さの2倍より大きい電界が発生する電圧を印加するので、光導波路中のドナー(電荷供与体)やアクセプター(電荷受容体)を電界によって光導波路から掃き出し、あるいはペアにして不活性化させることができ、フォトリフラクティブ効果に起因する現象を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る光変調器の構成例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る光変調器の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明に係る光導波路素子の一例である光変調器は、図1に示すように、電気光学効果を有する基板1と、該基板1に形成された光導波路2とを備えた光導波路素子において、該光導波路2の少なくとも一部に交流電界を印加するための交流用電極41,42を備え、該光導波路2に所定強度の光波を入力すると共に、該交流用電極41,42には、該光導波路2を伝播する光波の位相がπ変化する電界の強さの2倍より大きい電界が発生する電圧を印加する印加制御部6を有する。
【0019】
光変調器に使用する基板1としては、LiNbO,LiTaO又はPLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)などの電気光学効果を有する基板を用いることが好ましい。また、基板1に形成する光導波路2は、例えば、LiNbO基板(LN基板)上にチタン(Ti)などの高屈折率物質を熱拡散することにより形成される。また、基板1に光導波路2に沿った凹凸を形成したリッジ型光導波路も利用可能である。さらに、図2では、Xカット型の基板1を用いた光変調器を例示しているが、本発明はこれに限らずZカット型の基板でも同様に適用することが可能である。また、基板1として半導体材料を用いることも可能である。
【0020】
本例の光導波路2は、マッハツェンダー干渉計構造(MZ構造)となっており、光導波路2を伝搬する光波の制御が行われる作用部R1と、作用部R1に光波を導入する入力部R2と、作用部R1から光波を導出する出力部R3とに分けることができる。
入力部R2は、光導波路2の入力側端部に入力された光波を複数に分岐させる分岐部p1を有し、分岐部p1で分岐された入力側分岐導波路が作用部R1に接続される。
出力部R3は、作用部R1に接続された複数の出力側分岐導波路の光波を合波する合波部p2を有し、合波部p2で合波された光波が光導波路2の出力側端部から出力される。
【0021】
基板1には、光導波路2を伝播する光波を制御するための制御電極を構成する信号電極31及び接地電極32,33と、光導波路2の少なくとも一部に交流外部電界を印加するための交流用電極41,42とが形成されている。これらの電極は、基板1の表面に、Ti・Auの電極パターンを形成し、金メッキ方法などにより形成することが可能である。
図1では、光導波路2の作用部R1部分に対応させて制御電極(信号電極31及び接地電極32,33)を形成してあり、光導波路2の入力部R2部分に対応させて交流用電極41,42を形成してある。
【0022】
本例の光変調器は、制御電圧に印加する電圧に応じて光変調器出力のオン状態又はオフ状態を制御する。具体的には、MZ構造の光導波路2の作用部R1部分に外部電界を発生させて光波の位相をπ変化させるか否かを制御することで、光変調器出力のオン状態又はオフ状態を制御する。
ここで、光導波路2を伝播する光波の位相をπ変化(つまり、光変調器出力をオン状態からオフ状態に変化)させるために必要な外部電界の強さをVπとする。
【0023】
本例の光変調器は、印加制御手段である印加制御部6の制御の下で、光導波路2に所定強度の光波を入力させた状態で、交流用電極41,42に、光導波路2を伝播する光波の位相がπ変化する電界の強さの2倍より大きい交流外部電界E(すなわち、E>2Vπ)が発生する電圧を印加させるブリーチング処理を行う機能を有している。交流用電極41,42への電圧の印加は、交流用電極41,42に接続された外部電界電源5を印加制御部6が制御することで行われる。
【0024】
通信用の光変調器のブリーチング処理の際に光導波路2に入力される光波としては、通信波長帯より光子エネルギーの高い、つまり短波長の高強度光が用いられる。0.633nmの場合は10μW以上、1.06nmの場合は1mW以上、1310nmの場合は50mW以上の光波であれば、ブリーチング効果が得られる。
また、ブリーチング処理の際に光導波路2に発生させる交流外部電界は、大振幅(E>2Vπ/d (dは電極間隔))の外部電界を作用させることができるように、1mHz(1×10-3Hz)〜6GHz程度の低周波数とされる。ただし、交流外部電界は、基板材料の反転抗電界や絶縁破壊電界を超えない程度の強さである必要がある。
【0025】
このように、光導波路2に高強度光を入力させた状態で、大振幅で低周波の交流外部電界を光導波路2に発生させることで、その部分からドナー(電荷供与体)やアクセプター(電荷受容体)を掃き出し、あるいはペアにして不活性化させることができ、これにより、フォトリフラクティブ効果に起因する現象を抑制することができる。その結果、光変調器から良好な特性の光信号を発生させることができるともに、長期間に渡って安定的に動作させることが可能となる。
【0026】
ブリーチング処理は、一例として、以下のような手順で実施される。
(1)光変調器に光ファイバーを接続(ピグテイル化)する。
(2)印加制御部6を起動させて、光ファイバーから高強度光を光導波路2に入力すると共に、交流用電極41,42に、大振幅で低周波の交流外部電界が発生する電圧を印加することで、光導波路2をブリーチングする。
(3)印加制御部6を停止させて、光ファイバーからの光入力及び交流用電極41,42への電圧印加を終了させ、ブリーチングによって加熱された光変調器を冷却する。
【0027】
ブリーチングを行う時間は、光導波路2に入力される光波の光子のエネルギーと強度に依存する。0.633nmで10μW以上の場合、1.06nmで1mW以上の場合、1310nmで50mW以上の場合には、10〜20時間程度で効果があり、40〜160時間程度で効果が飽和する。光導波路2にレーザー光を入力する場合、光波が干渉して干渉縞が形成され、暗部では明部に比べてブリーチングが遅れるが、大振幅で低周波の交流外部電界を光導波路2に発生させることで、光波の位相を時間変化させれば、干渉縞の明暗も反転するため、平均的にブリーチングを進めることができる。
【0028】
ここで、本例では、光導波路2の少なくとも分岐部p1を含む入力部R2部分を両側から挟み込むように交流用電極41,42を対向させて配置してある。
すなわち、入力部R2は他の部位に比べて光波の光損失が少ないためにフォトリフラクティブ効果が発生しやすいことを鑑みて、この入力部R2に対してブリーチング処理を実施するようにしてある。また、分岐部p1にフォトリフラクティブ効果が発生すると、分岐比などに影響が生じて消光比の劣化などが懸念されるので、少なくとも分岐部p1に対してブリーチング処理を実施するようにしてある。これにより、光導波路2の入力部R2におけるフォトリフラクティブ効果に起因する現象を抑制できる。
【0029】
なお、図2に光変調器の他の構成例を示すように、光導波路2の入力部R2部分に対応させて交流用電極41,42を設けるだけでなく、光導波路2の少なくとも合波部p2を含む出力部R3部分に対応させて交流用電極43,44を設けるようにしてもよい。これにより、フォトリフラクティブ効果によって合波部p2の合波比などに影響が生じ、消光比の劣化などが懸念される場合にも対応することができる。
また、光導波路2の作用部R1部分にも交流用電極を設け、光導波路2の全体にわたってブリーチング処理を実施するようにしてもよい。
【0030】
なお、交流用電極は、本例のような単純な対向電極構造でなくともよく、例えば、差動線路(ペア線)、CPS(コプレーナストリップ)、CPW(コプレーナ導波路)、MSL(マイクロストリップライン)などの構造を用いてもよい。
【0031】
ここで、ブリーチング処理の際に光導波路2に入力する光波としては、所定の変調を施した高変調光を用いてもよい。LD直接変調光源、CW光に外部変調器をつなげたもの、パルスレーザーなど、強度、位相、周波数のいずれか一つ以上が変化する変調光であれば、同じ時間平均強度のCW光を用いた場合よりブリーチング効果が高い。これは、変調光を入射した場合は光導波路内での干渉縞の明暗が不明瞭になること、変調によって干渉縞の明暗の位相が時間変化し、ブリーチング平均的に進みやすいからである。大きな変調度の位相変調が望ましく、位相変調度をπラジアン以上にすると、ブリーチング時間を短縮できる。さらに望ましくは、位相変調度をπラジアンの整数倍にするのがよい。光変調の周波数は問わない。10GHzであっても、1Hzであっても、1mHz(1×10-3Hz)であってもよいが、周波数が高い方が光の線幅(スペクトル幅)が広がり干渉性が低下するため、ブリーチングが均一に進みやすく、ブリーチング時間を短縮できる。しかしながら、変調周波数の効果は劇的ではなく、数GHzで飽和する。変調周波数は、大出力のドライバアンプを比較的廉価で入手できる6GHz程度までとするのが良い。
【0032】
また、ブリーチング処理の際に光導波路2に入力する光波としては、変調光よりも波長が短い短波長光を用いてもよい。LiNbOなどの電気光学結晶材料はバンドギャップ構造の材料においては、光子のエネルギーが大きい短波長の光波ほど、ドナー(電荷供与体)やアクセプター(電荷受容体)を掃き出す効果が高いため、ブリーチングの効果が高い。
【0033】
また、ブリーチング処理に先立って光変調器自体を加熱しておき、光変調器が加熱された状態でブリーチング処理を行うようにしてもよい。結晶中の電子伝導や水素イオン伝導が活性化する温度では、ドナーやアクセプターも移動しやすく、ペアにして不活性化しやすいためと思われる。水素イオンのドナーやアクセプター近傍への移動がドナーやアクセプターの不活性化させている可能性もあるが、詳細は不明である。ブリーチングの加熱による加速は加熱温度50℃以上で明確になるが、望ましくは80℃以上で行うのが良い。
【0034】
ブリーチング処理は、システムへの実装前、つまり、光変調器の送信器への組み込み前に行っておくことが望ましい。システム運用開始後にフォトリフラクティブ効果による変調器特性の劣化が起こった場合には、システムを停止し、再ブリーチングを行う。ブリーチング用の光源に切り替え、所定時間フリーチング用に大振幅のRF信号を印加して変調を行うことで、特性の回復が可能となる。
【0035】
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した内容に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、基板材料のフォトリフラクティブ効果に起因する現象を抑制できる光変調素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 基板
2 光導波路
31 信号電極
32,33 接地電極
41,42,43,44 交流用電極
5 外部電界電源
6 印加制御部
R1 作用部
R2 入力部
R3 出力部
p1 分岐部
p2 合波部
図1
図2