【実施例1】
【0013】
<装置の全体構成>
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の基本構成を示す図である。ここでは、自動分析装置の一態様として、ターンテーブル方式の生化学分析装置の例について説明する。
【0014】
本図に示すように、自動分析装置1は、その筐体上に反応ディスク13、サンプルディスク11、第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16、光度計19、洗浄機構21が配置されている。
【0015】
反応ディスク13は、時計回り、反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、反応容器26をその円周上に複数個配置することができる。
【0016】
サンプルディスク11は、時計回り、反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、標準サンプルや被検サンプル等の生体試料を収容するサンプル容器18をその円周上に複数個配置することができる。
【0017】
第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16は時計回り、反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、サンプルに含まれる各検査項目の成分と反応する成分を含有する試薬を収容する試薬容器20をその円周上に複数個配置することができる。また、本図には示していないが、第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16では、保冷機構などを備えることにより、配置された試薬容器20内の試薬を保冷可能に構成することもできる。
【0018】
反応ディスク13とサンプルディスク11の間には、サンプル分注プローブ12が配置されており、サンプル分注プローブ12の回転動作によって反応ディスク13上の反応容器26、サンプルディスク11上のサンプル容器18においてサンプルの吸引および分注動作が可能なように配置されている。
【0019】
同様に、反応ディスク13と第1試薬ディスク15の間には、第1試薬分注プローブ17が、反応ディスク13と第2試薬ディスク16との間には、第2試薬分注プローブ14が配置されている。それぞれの回転動作により、反応ディスク13上の反応容器26と第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16上の試薬容器20内の吸引、吐出といった分注動作が可能なように配置されている。
【0020】
光度計19は、一例として
図5にて後述するように、検出器36と光源35が反応ディスク13に設置された反応容器26の外周側と内周側に位置するよう配置され、反応容器26内の液体の透過光や散乱光などを測光することが可能である。
【0021】
洗浄機構21は、サンプル分注プローブ12、第1試薬分注プローブ17および第2試薬分注プローブ14に干渉しない位置であって、かつ反応ディスク13に設置した反応容器26に挿入できる位置に、
図2にて後述する洗浄液吸引ノズル22を備えている。
【0022】
次に、自動分析装置1に係る制御系、及び信号処理系について簡単に説明する。コンピュータ105はインターフェース101を介して、サンプル分注制御部201、試薬分注制御部(1)206、試薬分注制御部(2)207、A/D変換器205に接続されており、各制御部に対して指令となる信号を送信する。
【0023】
サンプル分注制御部201は、コンピュータ105から受けた指令に基づいて、サンプル分注プローブ12によるサンプルの分注動作を制御する。
【0024】
また、試薬分注制御部(1)206および試薬分注制御部(2)207は、コンピュータ105から受けた指令に基づいて、第1試薬分注プローブ17、第2試薬分注プローブ14による、試薬の分注動作を制御する。
【0025】
A/D変換器205によってデジタル信号に変換された反応容器26内の反応液の透過光または散乱光の測光値はコンピュータ105に取り込まれる。
【0026】
インターフェース101には、測定結果をレポート等として出力する際に印字するためのプリンタ106、記憶装置であるメモリ104や外部出力メディア102、操作指令等を入力するためのキーボードなどの入力装置107、画面表示するための表示装置103が接続されている。表示装置103には、例えば液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等がある。
【0027】
ここで、自動分析装置1の基本動作について説明する。
【0028】
まず、操作者はキーボード等の入力装置107を用いて各サンプルに対し検査項目を依頼する。依頼された検査項目についてサンプルを分析するために、サンプル分注プローブ12は分析パラメータに従ってサンプル容器18から反応容器26へ所定量のサンプルを分注する。サンプルが分注された反応容器26は反応ディスク13の回転によって移送され、試薬受け入れ位置に停止する。第1試薬分注プローブ17、第2試薬分注プローブ14のノズルは該当する検査項目の分析パラメータにしたがって、反応容器26に所定量の試薬液を分注する。サンプルと試薬の分注順序は、この例とは逆に、サンプルより試薬が先であってもよい。
【0029】
その後、図示しない攪拌機構により、サンプルと試薬との攪拌が行われ、混合される。この反応容器26が測光位置を横切る時、光度計19により反応液の透過光または散乱光が測光される。測光された透過光または散乱光は、A/D変換器205により光量に比例した数値のデータに変換され、インターフェース101を経由して、コンピュータ105に取り込まれる。
【0030】
この変換された数値を用い、検査項目毎に指定された分析法により予め測定しておいた検量線に基づき、濃度データが算出される。各検査項目の分析結果としての成分濃度データは、プリンタ106や表示装置103の画面に出力される。以上の測定動作が実行される前に、操作者は、分析に必要な種々のパラメータの設定や試薬およびサンプルの登録を、表示装置103の操作画面を介して行う。また、操作者は、測定後の分析結果を表示装置103上の操作画面により確認する。
<洗浄機構の構成>
次に、本実施の形態に係る洗浄機構の全体構成、及び洗浄チップを備えた洗浄液吸引ノズルの構成および洗浄動作について、
図8、
図2、
図12、
図9、
図13を用いてそれぞれ説明する。
【0031】
まず、
図8に示すように、洗浄機構21は、主として、反応液809を吸引する反応液吸引ノズル801、洗浄液808を吐出する洗浄液吐出ノズル802、洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズル803、ブランク水807を吐出するブランク水吐出ノズル804、ブランク水807及びそれまでに使用した洗浄液を吸引する(洗浄チップ付き)洗浄液吸引ノズル805(ブランク水吸引ノズルともいう。
図2にて後述する洗浄液吸引ノズル22に相当)、各ノズルに接続されたチューブ806、各ノズルが設置されるノズル治具812、及び各ノズルを上下動させる上下支持軸811からなる。分析動作が行われている間は、各ノズル801、802、803、804、805の先端は反応容器26開口部上側に位置しているが、反応ディスク13が回転して反応容器26が所定の洗浄位置に移動すると下降し、反応液の吸引、そして各分析に応じて設定された洗浄条件に基づいて洗浄液の吐出、及び吸引がそれぞれのノズルによって行われたのちに、次の分析に備えたブランク水の吐出、吸引がなされる。ここで、洗浄液の吐出、吸引を行うノズルには、種々の洗浄条件に適応するように酸性・アルカリ性の洗剤及び洗浄水等をそれぞれ吐出、吸引するノズル等が含まれるものとする。また、上述の態様において、(洗浄チップ付き)洗浄液吸引ノズル805で洗浄液を吸引する前に、洗浄液吸引ノズル803にて洗浄液をある程度の量(所定量)だけ吸引しておき、残存する洗浄液のみを(洗浄チップ付き)洗浄液吸引ノズル805で吸引するように構成することもできる。このようにすることで、(洗浄チップ付き)洗浄液吸引ノズル805で吸引する液体の量が少なくなり、吸引の効率が向上し、反応容器26内の洗浄後の残液をより少なくできるため、分析結果の信頼性をさらに向上することができる。
【0032】
次に、本実施の形態に係る洗浄チップを備えた洗浄液吸引ノズルの構成についてより詳細に説明する。
図2に示すように、洗浄機構21のうち、洗浄液を吸引する機構は、主として、洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズル22、洗浄液吸引ノズル22の先端(下端)に接続された洗浄チップ30、洗浄チップ30とは反対側の洗浄液吸引ノズル22の端部(上端)に接続された吸引チューブ25、洗浄液吸引ノズル22を反応容器26内に挿入するように上下動が可能なアーム24、アーム24を駆動するモータ23等により構成される。
【0033】
ここで、洗浄チップ30は、最大の幅30aと厚み30bが反応容器26に挿入できる大きさとなるように設けられており、かつ、図中A面、A’面(斜線部分)、及びB面、B’面において、後述するテーパ31aを備えている。ここでは、位置決めをより容易にすることができる構成として、上述の通りA面、A’面、B面、B’面にテーパを設けている構成について説明するが、測光用の光が通過するA面、A’面にのみテーパを設け、B面、B’面には設けないようにすることもできる。この場合には、より分析結果に影響の大きなA面、A’面についてはテーパにより反応容器26の内壁への傷を防止し、かつ、比較的影響の小さなB面、B’面はクリアランスを小さくして残液を確実に吸引できるという利点を有する。
【0034】
また、洗浄チップ30には内孔30cが設けられており、洗浄液吸引ノズル22が洗浄液を吸引する際の液体の流路となっている。洗浄チップ30には、反応容器26よりも柔らかい樹脂等であって、かつ耐薬性を有する材質を用いることが望ましい。
【0035】
図12は、本実施の形態に係る洗浄チップの構成の詳細を示す図である。上述した洗浄チップ30について、(a)斜視図、(b)正面図(A面)、(c)側面図(B面)、(d)上面図、(e)下面図を示す。ここで、(a)に示されるように、洗浄チップ30の挿入方向における4箇所の角部、及び底面における4箇所の角部について、エッジを削ることにより面取り部30d、30eを設けることもできる。このように構成することで、反応容器26の内壁や底面に対する傷付けをより低減し、保護の効果を一層高めることができる。この面取り部は、4箇所全てにおいて設けることもできるし、少なくとも1箇所設けるように構成することもできる。
【0036】
図9は、本実施の形態に係る洗浄動作を説明するフローチャートである。上述した測定の完了後は、測定に使用した反応容器26は反応ディスク13の回転によって洗浄機構21の洗浄位置に移動され、反応液を吸引したのちに(ステップS901)、洗浄条件に応じてアルカリ洗剤や酸洗剤、洗浄水などの洗浄液を吐出、吸引される(ステップS902〜905)。このように、反応容器26内の液体が反応液から洗浄液へ置換される。ここで、ステップS902及びステップS903は、洗浄条件に従って複数回繰り返しあるいは1回に設定することもでき、洗浄水のみで洗浄可能な場合にはスキップすることも可能である。また、ステップS904及びステップS905についても、洗浄条件に従って複数回繰り返しあるいは1回に設定することができる。
【0037】
洗浄液に置換後、反応容器26にブランク水を分注し、測定に使用した反応容器26の汚れを光度計19により測定することで、ある閾値を超えた場合には、反応容器26の交換を要求するアラームを発するように構成することが望ましい。反応容器26の汚れが閾値よりも低くなったことが確認できたら、最後に、洗浄液吸引ノズル22をモータ23によって下降させ、反応容器26内に挿入し、洗浄液吸引チューブ25によって反応容器26内の液体を吸いきることで反応容器26を次の測定に使用可能な状態とする。
【0038】
ここで、洗浄チップ30を備える洗浄機構21における、反応容器26の内壁への接触による傷等のダメージについて
図3を用いて説明する。
図3は、直方体の洗浄チップを備えた洗浄機構の構成を示す図である。
【0039】
上述した通り、洗浄チップ30の外壁と反応容器26の内壁とのクリアランスが小さいほど、洗浄液吸引時の残液が少ないことが知られている。そのため、洗浄チップ30を反応容器26の内部に沿った形状、すなわち、
図3に示すように洗浄チップ30を直方体のような形状にすることでより残液が少なくなると考えられる。
【0040】
しかし、本図に示すように洗浄チップ30の形状を直方体とすると、反応容器26に挿入する際、反応容器26の中心からずれて挿入した場合や構成部品の寸法公差による積算などにより、反応容器26の内壁の一部分34に洗浄チップ30が接触し、傷を付けてしまう可能性がある。反応容器26に傷が付いた場合、反応容器26に入射する光、及び反応容器26を透過、あるいは散乱する光が傷による屈折率の変化により正しく測定できなくなってしまう。そこで、
図2に示したように、本実施の形態では、洗浄チップ30の側面を、洗浄チップ30が反応容器26に挿入されている状態で、少なくとも前記光源と対向する面および前記検出器と対向する面における、光源35から反応容器26に照射された光が検出器36に向かって反応容器26を通過するときの、反応容器26における高さ方向の範囲である測光領域32(以下、測光範囲ということがある)と重複する範囲、あるいは当該測光範囲よりも大きい範囲において、下方にいくほど幅が小さくなるように形成している。本実施の形態では、その一例として、当該側面に、テーパ31aを設けている構成について説明する。
【0041】
ここで、
図4は、本実施の形態に係る洗浄チップを備えた洗浄液吸引時の洗浄機構の様子を示す概念図であって、
図2におけるテーパ31aと反応容器26の測光領域32との関係を説明する図である。なお、本図では、
図2に対して、反応ディスク13の右側が内周側、左側が外周側となるように回転させた角度から見た図を示している。
【0042】
本図に示すように、反応容器26の測光領域32よりも大きい、あるいは重複する範囲において、洗浄チップ30の先端(下端)にいくほど幅が小さくなるように(すなわち、洗浄チップ30の、反応容器26への挿入方向に対して垂直な面における断面積が、同じく洗浄チップ30の挿入方向に対して垂直な面における反応容器26の開口部の断面積に対して下方にいくほど小さくなるように)テーパ31aを設けることで、反応容器26の測光領域32を傷つけることなく、洗浄液を吸引することができる。
【0043】
ここで、
図10は本実施の形態に係る反応容器と洗浄チップの断面積の関係を説明する図である。本図に示すように、図中矢印で示す洗浄チップ30の挿入方向に対して垂直な面における洗浄チップ30の断面積は、反応容器26の開口部1001の断面積に対して、上端部1002から下端部1003に向かって小さくなるように構成される。
【0044】
上述の通り、測光領域32は、高さ方向の範囲を示すものであり、本実施例では
図5にて後述する光源35から照射される光および透過、散乱する光の方向は、
図10においては手前から奥に向かう方向である。つまり、反応ディスク13の内周側から外周側の径方向37に光は照射され、外周側に設置された
図5に示す検出器36によって測光される。
【0045】
図5は、本実施の形態に係る光度計の光源および検出器の構成を示す図である。本例では、光源から反応容器に光が入射し、透過した光を検出器によって検出する態様について示している。また、本例では反応ディスク13の内周側に光源35が配置され、外周側に検出器36が配置される構成について説明するが、光源35と検出器36の位置をこの例とは反対になるように、すなわち、反応ディスク13の外周側に光源35を配置し、内周側に検出器36を配置するように構成することもできる。本図に示すように、光源35から入射され、検出器36に向かって広がる範囲である反応容器26の測光領域32と重複する、あるいはこの領域よりも大きい範囲となるように洗浄チップ30にテーパ31aを設けることで、この範囲において洗浄チップ30と反応容器26の内壁とが接触することがないので、このような接触による測定結果への影響を防止することができる。
【0046】
ここで、反応容器26の内壁と洗浄チップ30の外壁との間の空間(以下、クリアランスということがある)の体積を洗浄チップ30の内孔30cの体積以下となるよう設計することで、洗浄液吸引ノズル22が洗浄液を吸引する能力を保つことができ、テーパ31aを設けたことによる残液の増加を防ぐことができる。
【0047】
洗浄チップ30自体の体積については、洗浄液が入った反応容器26に挿入しても洗浄液が反応容器26から溢れない程度に構成する。一例として、反応容器26に入る液体の最大量が反応容器26の容積の80%を占めるため、洗浄チップ30の体積は、反応容器26の容積に対し20%以下とする。本構成によれば、万が一吸引チューブが詰まるなどして洗浄液を吸引できなかった場合でも洗浄液が溢れる可能性を低減することができる。
【0048】
また、洗浄チップ30が直方体の場合、挿入時に反応ディスク13の停止精度や構成部品の寸法公差、位置調整の誤差等により挿入できず、下降時に反応容器26の入り口に引っかかり装置が停止してしまう可能性も考えられる。一方、本実施の形態にかかる洗浄チップ30では、テーパ31aを設けたことにより、洗浄チップ30の先端が洗浄チップ30の最大の幅30a、厚み30bよりも小さい構造となるため、反応容器26の中心からずれてしまった場合でも反応容器26入り口とのクリアランスを確保でき、洗浄チップ30を挿入することが容易となる。
【0049】
以上の構成によれば、洗浄チップ30に設けたテーパ31aにより洗浄効率を下げることなく、装置の分析性能の信頼性を向上することができる。また、装置の構成を複雑化することなく位置決めを容易化することができ、省スペース省コストで当該効果を実現することが可能である。
【0050】
また、
図13は本実施の形態に係る洗浄チップ30のテーパ31aの傾き角度を説明する図である。本図に示すように、反応容器26と洗浄チップ30との間に形成されるクリアランス(d6、d7)が大きいほど、反応容器26に洗浄チップ30を挿入しやすく、測光領域を傷つけにくくなる一方、残液が増える可能性が高まる。そこで、一例としてテーパ31aの傾きの角度θが1〜5度の範囲内となるようにd0〜d7の条件を設定することにより、洗浄チップ31の位置決めの精度を高め、かつ洗浄効率を維持することができる。
【0051】
なお、上述した実施例1、及び後述する実施例2、3において、テーパ31aの例として洗浄チップの所定の面が、下方にいくほど連続的に幅が狭くなる構成について説明したが、本構成以外にも、例えば連続的ではなく、階段状に幅が狭くなる形状に適用することも可能である。さらに、洗浄チップ30の例として、A面、A’面、B面、B’面からなる4つの側面を有する構成について説明したが、本構成以外にも、例えば1つの連続的な側面を有する、円錐台の形状に対し、断面積の小さな上面が底面となるように略180度回転させた逆円錐台の形状に適用することも可能である。なお、洗浄チップ30として逆円錐台の形状を適用する場合には、光度計19にて測定する光は、透過光よりも散乱光の方が望ましく、また、洗浄チップ30の形状に合わせて、反応容器26の形状も、逆円錐台に構成することもできる。
【0052】
また、テーパ31a以外にも、例えば1つの連続的な側面を有する洗浄チップ30において、下方にいくほどその幅が小さくなるように曲線のカーブを描くように形成される構成にも適用することができる。