特許第6659909号(P6659909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6659909自動分析装置および自動分析装置における洗浄機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6659909
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】自動分析装置および自動分析装置における洗浄機構
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20200220BHJP
【FI】
   G01N35/02 E
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-501264(P2019-501264)
(86)(22)【出願日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】JP2018005243
(87)【国際公開番号】WO2018155300
(87)【国際公開日】20180830
【審査請求日】2019年7月11日
(31)【優先権主張番号】特願2017-30612(P2017-30612)
(32)【優先日】2017年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 圭
(72)【発明者】
【氏名】飯島 昌彦
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−077953(JP,U)
【文献】 特開2009−053125(JP,A)
【文献】 特開2015−132520(JP,A)
【文献】 特開平10−062431(JP,A)
【文献】 特開2015−087345(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0058577(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器を保持する反応ディスクと、
前記反応容器に試料を分注する試料分注機構と、
前記反応容器に試薬を分注する試薬分注機構と、
当該反応容器に分注された試料と試薬との混合液に光を照射する光源と、当該光源から照射された光を検出する検出器と、からなる光学系と、
当該反応容器を洗浄する洗浄機構と、を備え、
当該検出器により検出された光に基づいて前記試料を分析する自動分析装置であって、
前記洗浄機構は、当該分析後の反応容器に洗浄液を供給する洗浄液供給ノズルと、当該供給された洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズルと、前記洗浄液吸引ノズルの下端に設けられた洗浄チップと、を備え、
前記洗浄チップの側面は、前記洗浄チップが前記反応容器に挿入されている状態で、少なくとも前記光源と対向する面および前記検出器と対向する面において、
前記光源から前記反応容器に照射された光が前記検出器に向かって前記反応容器を通過する範囲である測光範囲を含み、下方にいくほど幅が小さくなるように形成される第一の領域と、
当該測光範囲を含まず、前記第一の領域の上方に位置し、前記第一の領域の上端部と同じ幅を有する第二の領域と、から構成され、かつ、
前記反応容器の内壁と前記洗浄チップとの間のクリアランスの体積が、前記洗浄チップの内孔の体積以下であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
当該洗浄チップの側面における前記第一の領域は、下方にいくほど幅が小さくなるように形成されたテーパを有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動分析装置において、
当該テーパは、傾きの角度が1〜5度となるように形成されることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記側面は4つの面から構成されることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の自動分析装置において、
前記第一の領域は、
当該4つの面のうち、前記光源と対向する面および前記検出器と対向する面である2つの面のみにおいて形成されることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項4に記載の自動分析装置において、
前記側面は、当該4つの面のうち、隣接する2つの面により形成される角部が面取りされた面取り部を少なくとも1つ有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記洗浄機構を制御する制御部を備え、
前記洗浄機構は、当該分析後の反応容器に洗浄液を供給する洗浄液供給ノズルと、当該供給された洗浄液を吸引する第1及び第2の洗浄液吸引ノズルと、を備え、
前記第1の洗浄液吸引ノズルの下端には洗浄チップが設けられ、前記洗浄チップは、下方に向かって幅が小さくなるように形成されたテーパを有し、
前記制御部は、
前記分析後の反応容器に、前記洗浄液供給ノズルにより洗浄液を供給し、当該供給された洗浄液を、前記第2の洗浄液吸引ノズルにより所定量吸引し、当該吸引ののち、前記第1の洗浄液吸引ノズルに設けられた洗浄チップによって前記反応容器に残存する洗浄液を吸引するように、前記洗浄機構を制御することを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの生体試料を分析する自動分析装置に係り、特に反応容器を洗浄するための洗浄機構および当該洗浄機構を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿などの生体試料(以下、試料またはサンプルということがある)を定性・定量的に分析する装置である。試料と試薬を反応容器中で反応させて、試料中の測定対象成分の分析を行う。反応容器はプラスチックやガラスなどの材質で形成されており、特に生化学分析等の項目を分析する装置においては、1回の測定に使用した反応容器を洗浄し、繰り返し使用することが一般的である。反応容器の洗浄作業は、反応容器を所定の洗浄位置に移動し、洗剤や洗浄水といった洗浄液などの注入、吸引を繰り返し、最終的には反応容器内の液体を吸引して洗浄を終える。このとき、洗浄後の反応容器に残液が残っていると次の分析結果に影響を与えてしまう。
【0003】
反応容器内に洗浄液などの残液を残さないようにするための技術として、特許文献1では、ノズルの先端に反応容器の内壁に沿った形状の吸い上げ部材(以下、洗浄チップということがある)を取り付けている。洗浄チップと反応容器内壁との隙間(以下、クリアランスということがある)をできるだけ小さくすることで、残液を少なくすることができる。また、特許文献2では、洗浄チップが確実に反応容器に挿入され、かつ反応容器の停止位置がずれた場合にも正しい挿入位置に補正する位置決めガイドを備えることで、反応容器の停止精度にかかわらず、確実に反応容器にノズルを挿入するための技術について説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-062431号公報
【特許文献2】特開2009-53125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分析装置では、装置の小型化のための機構の単純化や、分析結果の信頼性の向上がますます求められている。また、自動分析装置の分析方法としては、生体試料と試薬とを混合した液体に反応容器外から光を照射し、透過や散乱する光を検出することで測定対象成分の濃度などを結果として算出するのが一般的である。そのため、洗浄して繰り返し使用する反応容器に前測定の反応液や洗剤などの残液が存在している場合、次の測定に影響を与える可能性がある。また、洗浄チップが反応容器の内壁に接触して傷がついた場合、入射される光の屈折率や透過光、散乱光が変化し、分析結果に影響するおそれがある。
【0006】
上述した特許文献1では、反応容器と洗浄チップとのクリアランスを小さくして残液を少なくしている。しかしながら、クリアランスを小さくした場合、位置決めが困難となり、反応容器に洗浄チップを挿入できない場合が考えられる。
【0007】
また、特許文献2記載のように位置決めガイドによる位置補正機能を持つことで、反応容器に確実に洗浄チップを挿入することができるが、洗浄機構としてはより複雑な機構が必要となる。さらに、洗浄チップを反応容器に確実に挿入できたとしても、反応容器と洗浄チップとの間のクリアランスが小さいため、挿入後の反応容器の内壁に洗浄チップが接触してしまう可能性については考慮されていない。
【0008】
本発明では、上記課題に鑑み、複雑な構成を用いずに、反応容器の内壁を傷つけることなくかつ位置精度良く洗浄チップを挿入し、高精度で信頼性の高い分析を実現することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための一態様として、反応容器を保持する反応ディスクと、前記反応容器に試料を分注する試料分注機構と、前記反応容器に試薬を分注する試薬分注機構と、
当該反応容器に分注された試料と試薬との混合液に光を照射する光源と、当該光源から照射された光を検出する検出器と、からなる光学系と、当該反応容器を洗浄する洗浄機構と、を備え、当該検出器により検出された光に基づいて前記試料を分析する自動分析装置であって、前記洗浄機構は、当該分析後の反応容器に洗浄液を供給する洗浄液供給ノズルと、当該供給された洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズルと、前記洗浄液吸引ノズルの下端に設けられた洗浄チップと、を備え、前記洗浄チップの側面は、前記洗浄チップが前記反応容器に挿入されている状態において、少なくとも前記光源と対向する面および前記検出器と対向する面における、前記光源から前記反応容器に照射された光が前記検出器に向かって前記反応容器を通過する範囲である測光範囲と重複する範囲、あるいは当該測光範囲よりも大きい範囲において、下方にいくほど幅が小さくなるように形成されることを特徴とする装置、および当該装置における反応容器の洗浄機構を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0010】
上記一態様によれば、洗浄チップのテーパ構造により、測光領域となる反応容器の内壁に傷をつけることなく、かつ精度良く挿入することができる。そのため、複雑な構成を用いずに反応容器の残水を減らし、高精度で信頼性の高い分析の実現に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る自動分析装置の基本構成を示す図である。
図2】本実施の形態(実施例1)に係る洗浄チップを備えた洗浄機構の構成を示す図である。
図3】直方体の洗浄チップを備えた洗浄機構の構成を示す図である。
図4】本実施の形態(実施例1)に係る洗浄チップを備えた洗浄液吸引時の洗浄機構の様子を示す概念図である。
図5】本実施の形態(実施例1)に係る光度計の光源および検出器の構成を示す図である。
図6】本実施の形態(実施例2)に係る洗浄チップを備えた洗浄機構の構成を示す図である。
図7】本実施の形態(実施例3)に係る反応容器の構成を示す図である。
図8】本実施の形態に係る洗浄機構の全体構成を示す図である。
図9】本実施の形態に係る洗浄動作を説明するフローチャートである。
図10】本実施の形態に係る反応容器と洗浄チップの断面積の関係を説明する図である。
図11】本実施の形態(実施例3)に係る反応容器の構成を示す図である。
図12】本実施の形態に係る洗浄チップの構成の詳細を示す図である。
図13】本実施の形態に係る洗浄チップのテーパの傾き角度を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、全体を通して、各図における同一機能を有する各構成部分については原則として同一の符号を付すようにし、説明を省略することがある。
【実施例1】
【0013】
<装置の全体構成>
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の基本構成を示す図である。ここでは、自動分析装置の一態様として、ターンテーブル方式の生化学分析装置の例について説明する。
【0014】
本図に示すように、自動分析装置1は、その筐体上に反応ディスク13、サンプルディスク11、第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16、光度計19、洗浄機構21が配置されている。
【0015】
反応ディスク13は、時計回り、反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、反応容器26をその円周上に複数個配置することができる。
【0016】
サンプルディスク11は、時計回り、反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、標準サンプルや被検サンプル等の生体試料を収容するサンプル容器18をその円周上に複数個配置することができる。
【0017】
第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16は時計回り、反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、サンプルに含まれる各検査項目の成分と反応する成分を含有する試薬を収容する試薬容器20をその円周上に複数個配置することができる。また、本図には示していないが、第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16では、保冷機構などを備えることにより、配置された試薬容器20内の試薬を保冷可能に構成することもできる。
【0018】
反応ディスク13とサンプルディスク11の間には、サンプル分注プローブ12が配置されており、サンプル分注プローブ12の回転動作によって反応ディスク13上の反応容器26、サンプルディスク11上のサンプル容器18においてサンプルの吸引および分注動作が可能なように配置されている。
【0019】
同様に、反応ディスク13と第1試薬ディスク15の間には、第1試薬分注プローブ17が、反応ディスク13と第2試薬ディスク16との間には、第2試薬分注プローブ14が配置されている。それぞれの回転動作により、反応ディスク13上の反応容器26と第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16上の試薬容器20内の吸引、吐出といった分注動作が可能なように配置されている。
【0020】
光度計19は、一例として図5にて後述するように、検出器36と光源35が反応ディスク13に設置された反応容器26の外周側と内周側に位置するよう配置され、反応容器26内の液体の透過光や散乱光などを測光することが可能である。
【0021】
洗浄機構21は、サンプル分注プローブ12、第1試薬分注プローブ17および第2試薬分注プローブ14に干渉しない位置であって、かつ反応ディスク13に設置した反応容器26に挿入できる位置に、図2にて後述する洗浄液吸引ノズル22を備えている。
【0022】
次に、自動分析装置1に係る制御系、及び信号処理系について簡単に説明する。コンピュータ105はインターフェース101を介して、サンプル分注制御部201、試薬分注制御部(1)206、試薬分注制御部(2)207、A/D変換器205に接続されており、各制御部に対して指令となる信号を送信する。
【0023】
サンプル分注制御部201は、コンピュータ105から受けた指令に基づいて、サンプル分注プローブ12によるサンプルの分注動作を制御する。
【0024】
また、試薬分注制御部(1)206および試薬分注制御部(2)207は、コンピュータ105から受けた指令に基づいて、第1試薬分注プローブ17、第2試薬分注プローブ14による、試薬の分注動作を制御する。
【0025】
A/D変換器205によってデジタル信号に変換された反応容器26内の反応液の透過光または散乱光の測光値はコンピュータ105に取り込まれる。
【0026】
インターフェース101には、測定結果をレポート等として出力する際に印字するためのプリンタ106、記憶装置であるメモリ104や外部出力メディア102、操作指令等を入力するためのキーボードなどの入力装置107、画面表示するための表示装置103が接続されている。表示装置103には、例えば液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等がある。
【0027】
ここで、自動分析装置1の基本動作について説明する。
【0028】
まず、操作者はキーボード等の入力装置107を用いて各サンプルに対し検査項目を依頼する。依頼された検査項目についてサンプルを分析するために、サンプル分注プローブ12は分析パラメータに従ってサンプル容器18から反応容器26へ所定量のサンプルを分注する。サンプルが分注された反応容器26は反応ディスク13の回転によって移送され、試薬受け入れ位置に停止する。第1試薬分注プローブ17、第2試薬分注プローブ14のノズルは該当する検査項目の分析パラメータにしたがって、反応容器26に所定量の試薬液を分注する。サンプルと試薬の分注順序は、この例とは逆に、サンプルより試薬が先であってもよい。
【0029】
その後、図示しない攪拌機構により、サンプルと試薬との攪拌が行われ、混合される。この反応容器26が測光位置を横切る時、光度計19により反応液の透過光または散乱光が測光される。測光された透過光または散乱光は、A/D変換器205により光量に比例した数値のデータに変換され、インターフェース101を経由して、コンピュータ105に取り込まれる。
【0030】
この変換された数値を用い、検査項目毎に指定された分析法により予め測定しておいた検量線に基づき、濃度データが算出される。各検査項目の分析結果としての成分濃度データは、プリンタ106や表示装置103の画面に出力される。以上の測定動作が実行される前に、操作者は、分析に必要な種々のパラメータの設定や試薬およびサンプルの登録を、表示装置103の操作画面を介して行う。また、操作者は、測定後の分析結果を表示装置103上の操作画面により確認する。
<洗浄機構の構成>
次に、本実施の形態に係る洗浄機構の全体構成、及び洗浄チップを備えた洗浄液吸引ノズルの構成および洗浄動作について、図8図2図12図9図13を用いてそれぞれ説明する。
【0031】
まず、図8に示すように、洗浄機構21は、主として、反応液809を吸引する反応液吸引ノズル801、洗浄液808を吐出する洗浄液吐出ノズル802、洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズル803、ブランク水807を吐出するブランク水吐出ノズル804、ブランク水807及びそれまでに使用した洗浄液を吸引する(洗浄チップ付き)洗浄液吸引ノズル805(ブランク水吸引ノズルともいう。図2にて後述する洗浄液吸引ノズル22に相当)、各ノズルに接続されたチューブ806、各ノズルが設置されるノズル治具812、及び各ノズルを上下動させる上下支持軸811からなる。分析動作が行われている間は、各ノズル801、802、803、804、805の先端は反応容器26開口部上側に位置しているが、反応ディスク13が回転して反応容器26が所定の洗浄位置に移動すると下降し、反応液の吸引、そして各分析に応じて設定された洗浄条件に基づいて洗浄液の吐出、及び吸引がそれぞれのノズルによって行われたのちに、次の分析に備えたブランク水の吐出、吸引がなされる。ここで、洗浄液の吐出、吸引を行うノズルには、種々の洗浄条件に適応するように酸性・アルカリ性の洗剤及び洗浄水等をそれぞれ吐出、吸引するノズル等が含まれるものとする。また、上述の態様において、(洗浄チップ付き)洗浄液吸引ノズル805で洗浄液を吸引する前に、洗浄液吸引ノズル803にて洗浄液をある程度の量(所定量)だけ吸引しておき、残存する洗浄液のみを(洗浄チップ付き)洗浄液吸引ノズル805で吸引するように構成することもできる。このようにすることで、(洗浄チップ付き)洗浄液吸引ノズル805で吸引する液体の量が少なくなり、吸引の効率が向上し、反応容器26内の洗浄後の残液をより少なくできるため、分析結果の信頼性をさらに向上することができる。
【0032】
次に、本実施の形態に係る洗浄チップを備えた洗浄液吸引ノズルの構成についてより詳細に説明する。図2に示すように、洗浄機構21のうち、洗浄液を吸引する機構は、主として、洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズル22、洗浄液吸引ノズル22の先端(下端)に接続された洗浄チップ30、洗浄チップ30とは反対側の洗浄液吸引ノズル22の端部(上端)に接続された吸引チューブ25、洗浄液吸引ノズル22を反応容器26内に挿入するように上下動が可能なアーム24、アーム24を駆動するモータ23等により構成される。
【0033】
ここで、洗浄チップ30は、最大の幅30aと厚み30bが反応容器26に挿入できる大きさとなるように設けられており、かつ、図中A面、A’面(斜線部分)、及びB面、B’面において、後述するテーパ31aを備えている。ここでは、位置決めをより容易にすることができる構成として、上述の通りA面、A’面、B面、B’面にテーパを設けている構成について説明するが、測光用の光が通過するA面、A’面にのみテーパを設け、B面、B’面には設けないようにすることもできる。この場合には、より分析結果に影響の大きなA面、A’面についてはテーパにより反応容器26の内壁への傷を防止し、かつ、比較的影響の小さなB面、B’面はクリアランスを小さくして残液を確実に吸引できるという利点を有する。
【0034】
また、洗浄チップ30には内孔30cが設けられており、洗浄液吸引ノズル22が洗浄液を吸引する際の液体の流路となっている。洗浄チップ30には、反応容器26よりも柔らかい樹脂等であって、かつ耐薬性を有する材質を用いることが望ましい。
【0035】
図12は、本実施の形態に係る洗浄チップの構成の詳細を示す図である。上述した洗浄チップ30について、(a)斜視図、(b)正面図(A面)、(c)側面図(B面)、(d)上面図、(e)下面図を示す。ここで、(a)に示されるように、洗浄チップ30の挿入方向における4箇所の角部、及び底面における4箇所の角部について、エッジを削ることにより面取り部30d、30eを設けることもできる。このように構成することで、反応容器26の内壁や底面に対する傷付けをより低減し、保護の効果を一層高めることができる。この面取り部は、4箇所全てにおいて設けることもできるし、少なくとも1箇所設けるように構成することもできる。
【0036】
図9は、本実施の形態に係る洗浄動作を説明するフローチャートである。上述した測定の完了後は、測定に使用した反応容器26は反応ディスク13の回転によって洗浄機構21の洗浄位置に移動され、反応液を吸引したのちに(ステップS901)、洗浄条件に応じてアルカリ洗剤や酸洗剤、洗浄水などの洗浄液を吐出、吸引される(ステップS902〜905)。このように、反応容器26内の液体が反応液から洗浄液へ置換される。ここで、ステップS902及びステップS903は、洗浄条件に従って複数回繰り返しあるいは1回に設定することもでき、洗浄水のみで洗浄可能な場合にはスキップすることも可能である。また、ステップS904及びステップS905についても、洗浄条件に従って複数回繰り返しあるいは1回に設定することができる。
【0037】
洗浄液に置換後、反応容器26にブランク水を分注し、測定に使用した反応容器26の汚れを光度計19により測定することで、ある閾値を超えた場合には、反応容器26の交換を要求するアラームを発するように構成することが望ましい。反応容器26の汚れが閾値よりも低くなったことが確認できたら、最後に、洗浄液吸引ノズル22をモータ23によって下降させ、反応容器26内に挿入し、洗浄液吸引チューブ25によって反応容器26内の液体を吸いきることで反応容器26を次の測定に使用可能な状態とする。
【0038】
ここで、洗浄チップ30を備える洗浄機構21における、反応容器26の内壁への接触による傷等のダメージについて図3を用いて説明する。図3は、直方体の洗浄チップを備えた洗浄機構の構成を示す図である。
【0039】
上述した通り、洗浄チップ30の外壁と反応容器26の内壁とのクリアランスが小さいほど、洗浄液吸引時の残液が少ないことが知られている。そのため、洗浄チップ30を反応容器26の内部に沿った形状、すなわち、図3に示すように洗浄チップ30を直方体のような形状にすることでより残液が少なくなると考えられる。
【0040】
しかし、本図に示すように洗浄チップ30の形状を直方体とすると、反応容器26に挿入する際、反応容器26の中心からずれて挿入した場合や構成部品の寸法公差による積算などにより、反応容器26の内壁の一部分34に洗浄チップ30が接触し、傷を付けてしまう可能性がある。反応容器26に傷が付いた場合、反応容器26に入射する光、及び反応容器26を透過、あるいは散乱する光が傷による屈折率の変化により正しく測定できなくなってしまう。そこで、図2に示したように、本実施の形態では、洗浄チップ30の側面を、洗浄チップ30が反応容器26に挿入されている状態で、少なくとも前記光源と対向する面および前記検出器と対向する面における、光源35から反応容器26に照射された光が検出器36に向かって反応容器26を通過するときの、反応容器26における高さ方向の範囲である測光領域32(以下、測光範囲ということがある)と重複する範囲、あるいは当該測光範囲よりも大きい範囲において、下方にいくほど幅が小さくなるように形成している。本実施の形態では、その一例として、当該側面に、テーパ31aを設けている構成について説明する。
【0041】
ここで、図4は、本実施の形態に係る洗浄チップを備えた洗浄液吸引時の洗浄機構の様子を示す概念図であって、図2におけるテーパ31aと反応容器26の測光領域32との関係を説明する図である。なお、本図では、図2に対して、反応ディスク13の右側が内周側、左側が外周側となるように回転させた角度から見た図を示している。
【0042】
本図に示すように、反応容器26の測光領域32よりも大きい、あるいは重複する範囲において、洗浄チップ30の先端(下端)にいくほど幅が小さくなるように(すなわち、洗浄チップ30の、反応容器26への挿入方向に対して垂直な面における断面積が、同じく洗浄チップ30の挿入方向に対して垂直な面における反応容器26の開口部の断面積に対して下方にいくほど小さくなるように)テーパ31aを設けることで、反応容器26の測光領域32を傷つけることなく、洗浄液を吸引することができる。
【0043】
ここで、図10は本実施の形態に係る反応容器と洗浄チップの断面積の関係を説明する図である。本図に示すように、図中矢印で示す洗浄チップ30の挿入方向に対して垂直な面における洗浄チップ30の断面積は、反応容器26の開口部1001の断面積に対して、上端部1002から下端部1003に向かって小さくなるように構成される。
【0044】
上述の通り、測光領域32は、高さ方向の範囲を示すものであり、本実施例では図5にて後述する光源35から照射される光および透過、散乱する光の方向は、図10においては手前から奥に向かう方向である。つまり、反応ディスク13の内周側から外周側の径方向37に光は照射され、外周側に設置された図5に示す検出器36によって測光される。
【0045】
図5は、本実施の形態に係る光度計の光源および検出器の構成を示す図である。本例では、光源から反応容器に光が入射し、透過した光を検出器によって検出する態様について示している。また、本例では反応ディスク13の内周側に光源35が配置され、外周側に検出器36が配置される構成について説明するが、光源35と検出器36の位置をこの例とは反対になるように、すなわち、反応ディスク13の外周側に光源35を配置し、内周側に検出器36を配置するように構成することもできる。本図に示すように、光源35から入射され、検出器36に向かって広がる範囲である反応容器26の測光領域32と重複する、あるいはこの領域よりも大きい範囲となるように洗浄チップ30にテーパ31aを設けることで、この範囲において洗浄チップ30と反応容器26の内壁とが接触することがないので、このような接触による測定結果への影響を防止することができる。
【0046】
ここで、反応容器26の内壁と洗浄チップ30の外壁との間の空間(以下、クリアランスということがある)の体積を洗浄チップ30の内孔30cの体積以下となるよう設計することで、洗浄液吸引ノズル22が洗浄液を吸引する能力を保つことができ、テーパ31aを設けたことによる残液の増加を防ぐことができる。
【0047】
洗浄チップ30自体の体積については、洗浄液が入った反応容器26に挿入しても洗浄液が反応容器26から溢れない程度に構成する。一例として、反応容器26に入る液体の最大量が反応容器26の容積の80%を占めるため、洗浄チップ30の体積は、反応容器26の容積に対し20%以下とする。本構成によれば、万が一吸引チューブが詰まるなどして洗浄液を吸引できなかった場合でも洗浄液が溢れる可能性を低減することができる。
【0048】
また、洗浄チップ30が直方体の場合、挿入時に反応ディスク13の停止精度や構成部品の寸法公差、位置調整の誤差等により挿入できず、下降時に反応容器26の入り口に引っかかり装置が停止してしまう可能性も考えられる。一方、本実施の形態にかかる洗浄チップ30では、テーパ31aを設けたことにより、洗浄チップ30の先端が洗浄チップ30の最大の幅30a、厚み30bよりも小さい構造となるため、反応容器26の中心からずれてしまった場合でも反応容器26入り口とのクリアランスを確保でき、洗浄チップ30を挿入することが容易となる。
【0049】
以上の構成によれば、洗浄チップ30に設けたテーパ31aにより洗浄効率を下げることなく、装置の分析性能の信頼性を向上することができる。また、装置の構成を複雑化することなく位置決めを容易化することができ、省スペース省コストで当該効果を実現することが可能である。
【0050】
また、図13は本実施の形態に係る洗浄チップ30のテーパ31aの傾き角度を説明する図である。本図に示すように、反応容器26と洗浄チップ30との間に形成されるクリアランス(d6、d7)が大きいほど、反応容器26に洗浄チップ30を挿入しやすく、測光領域を傷つけにくくなる一方、残液が増える可能性が高まる。そこで、一例としてテーパ31aの傾きの角度θが1〜5度の範囲内となるようにd0〜d7の条件を設定することにより、洗浄チップ31の位置決めの精度を高め、かつ洗浄効率を維持することができる。
【0051】
なお、上述した実施例1、及び後述する実施例2、3において、テーパ31aの例として洗浄チップの所定の面が、下方にいくほど連続的に幅が狭くなる構成について説明したが、本構成以外にも、例えば連続的ではなく、階段状に幅が狭くなる形状に適用することも可能である。さらに、洗浄チップ30の例として、A面、A’面、B面、B’面からなる4つの側面を有する構成について説明したが、本構成以外にも、例えば1つの連続的な側面を有する、円錐台の形状に対し、断面積の小さな上面が底面となるように略180度回転させた逆円錐台の形状に適用することも可能である。なお、洗浄チップ30として逆円錐台の形状を適用する場合には、光度計19にて測定する光は、透過光よりも散乱光の方が望ましく、また、洗浄チップ30の形状に合わせて、反応容器26の形状も、逆円錐台に構成することもできる。
【0052】
また、テーパ31a以外にも、例えば1つの連続的な側面を有する洗浄チップ30において、下方にいくほどその幅が小さくなるように曲線のカーブを描くように形成される構成にも適用することができる。
【実施例2】
【0053】
次に、本実施の形態に係る自動分析装置1の洗浄機構21の他の構成について説明する。上述した実施例1では、洗浄チップ30の高さが反応容器26の高さ(開口部(上端)から底面(下端)までの高さ)よりも低い場合について図示して説明した。ここでは、洗浄チップ30の高さが反応容器26の開口部から底面までの高さと略同程度とし、かつテーパ31aを洗浄チップ30の上端から下端まで設けた構成について、図6を用いて説明する。図6は、本実施の形態(実施例2)に係る洗浄チップを備えた洗浄機構の構成を示す図である。なお、本図では、図4と同様に、図2に対して、反応ディスク13の右側が内周側、左側が外周側となるように回転させた角度から見た図を示している。
【0054】
本図に示す例では、上述の通り、洗浄チップ30の高さを反応容器26の開口部から底面までの高さと略同程度等とし、洗浄チップ30の上端から下端にわたってテーパ31aを設けた形状としている。よって、該範囲に設けられたテーパ31aは、反応容器26の開口部から底面までの高さと略同程度となる。ここで、テーパ31aは、洗浄チップ30の反応容器26への挿入方向に対して垂直な面における断面積が、反応容器26の開口部から底面にわたる断面積に対して、下方にいくほど小さくなるように形成することができる。
【0055】
該形状により、反応容器26の内壁に洗浄チップ30が接触する可能性をより低くすることができるため、測光領域32だけでなく反応容器26の内壁全体を保護できる。よって、上述した実施例1と同様に洗浄チップ30の位置決めを容易化できることに加え、消耗品である反応容器26を長寿命化し、コストの削減に期待できる。なお、略同程度とは、実質的に上述の効果を得られる範囲の構成を含めるものとする。
【実施例3】
【0056】
次に、本実施の形態に係る自動分析装置1の反応容器26のその他の構成について説明する。上述の実施例では、全ての面において長方形からなる直方体の反応容器26を用いた構成について説明したが、ここでは、反応容器の一部であって、洗浄チップ30の下端が底面に接触するように設置されている状態において、洗浄チップ30の上端の位置から、反応容器の底面までの直方体領域33a(第1の領域)においては、洗浄チップ30の反応容器への挿入方向に垂直な面における断面積が等しく、洗浄チップ30の上端から、反応容器の開口部までのテーパ領域33b(第2の領域)においては洗浄チップ30の上端から反応容器の開口部に向かって当該面における断面積が大きくなるように形成された反応容器(以下、テーパ型反応容器33という)を用いた場合について図7を用いて説明する。本図に示すように、テーパ型反応容器33のテーパは下方、すなわち測光領域32に向かって断面積が小さくなるように設けられている。なお、本図及び後述する図11では、図4、6と同様に図2に対して、反応ディスク13の右側が内周側、左側が外周側となるように回転させた角度から見た図を示している。
【0057】
また、本図に示した例以外にも、直方体領域33a(第1の領域)を、少なくとも測光領域32と重複するように、例えば図11に示す測光領域32の上端からテーパ型反応容器33の底面33cにわたって、洗浄チップ30の挿入方向に垂直な面における断面積が等しくなるように設け、テーパ領域33b(第2の領域)を、測光領域32よりも上方に位置する領域、すなわち測光領域32の上端からテーパ型反応容器33の開口部に向かって洗浄チップ30の挿入方向に垂直な面における断面積が大きくなるように設けることもできる。
【0058】
図7に戻り、テーパ型反応容器33の直方体領域33aの上端は、洗浄チップ30の上端の高さと同程度に位置している。そして、洗浄チップ30のテーパ31aは直方体領域33aに設けられている。直方体領域33aの上方に設けられたテーパ領域33bでは、上方である開口部に近づくにつれて幅が広がるように(すなわち、洗浄チップ30の挿入方向に対して垂直な面における断面積が大きくなるように)形成されたテーパの構造によってテーパ型反応容器33の入り口の大きさをより大きく設計できるので、洗浄機構21に取り付けられた洗浄チップ30の位置決めをより容易化することができる。
【0059】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・自動分析装置
11・・・サンプルディスク
12・・・サンプル分注プローブ
13・・・反応ディスク
14・・・第2試薬分注プローブ
15・・・第1試薬ディスク
16・・・第2試薬ディスク
17・・・第1試薬分注プローブ
18・・・サンプル容器
19・・・光度計
20・・・試薬容器
21・・・洗浄機構
22・・・洗浄液吸引ノズル
23・・・モータ
24・・・アーム
25・・・吸引チューブ
26・・・反応容器
30・・・洗浄チップ
30a・・・洗浄チップの最大幅
30b・・・洗浄チップの最大厚み
30c・・・洗浄チップの内孔
30d、30e・・・洗浄チップの面取り部
31a・・・洗浄チップに設けられたテーパ
32・・・反応容器の測光領域(測光範囲)
33・・・テーパ型反応容器
33a・・・直方体領域(第1の領域)
33b・・・テーパ領域(第2の領域)
33c・・・底面
34・・・反応容器内壁の洗浄チップとの接触部
35・・・光源
36・・・検出器
37・・・反応ディスクの径方向(内周から外周方向)
101・・・インターフェース
102・・・外部出力メディア
103・・・表示装置
104・・・メモリ
105・・・コンピュータ
106・・・プリンタ
107・・・入力装置
201・・・サンプル分注制御部
205・・・A/D変換器
206・・・試薬分注制御部(1)
207・・・試薬分注制御部(2)
801・・・反応液吸引ノズル
802・・・洗浄液吐出ノズル
803・・・洗浄液吸引ノズル
804・・・ブランク水吐出ノズル
805・・・(洗浄チップ付き)洗浄液吸引ノズル(ブランク水吸引ノズル)
806・・・チューブ
807・・・ブランク水
808・・・洗浄液
809・・・反応液
810・・・恒温水
811・・・上下支持軸
812・・・ノズル治具
1001・・・開口部
1002・・・洗浄チップ上端部
1003・・・洗浄チップ下端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13