特許第6660150号(P6660150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660150
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】荷電粒子顕微鏡における非接触温度測定
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20200220BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20200220BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   H01J37/28 B
   H01J37/244
   H01J37/20 A
   H01J37/20 E
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-220167(P2015-220167)
(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公開番号】特開2016-96140(P2016-96140A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2018年11月5日
(31)【優先権主張番号】14192853.1
(32)【優先日】2014年11月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ サイモン フェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ルボミール トウマ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー バーネット
(72)【発明者】
【氏名】リボル ノヴァーク
【審査官】 松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−327766(JP,A)
【文献】 実開昭53−089262(JP,U)
【文献】 特表2013−506137(JP,A)
【文献】 特開平01−159946(JP,A)
【文献】 特開2001−202915(JP,A)
【文献】 特開平07−045229(JP,A)
【文献】 特開平10−172487(JP,A)
【文献】 特開平11−64348(JP,A)
【文献】 特開平6−74880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/28
H01J 37/20
H01J 37/244
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子顕微鏡を使用する方法であって、
前記荷電粒子顕微鏡は、荷電粒子の一次ビームで、サンプルホルダに取り付けられたサンプルを検査するように構成され、
前記サンプルホルダは、セラミック部と、該セラミック部の裏面に設置された早い熱応答時間を有するヒータとを有し、前記サンプルは、前記セラミック部の前記ヒータとは反対の側に設置され、
前記荷電粒子顕微鏡は、前記一次ビームによる前記サンプルの照射に応じて、前記サンプルから放射される二次粒子を検出する半導体検出器を備え、
前記半導体検出器は、前記サンプルの直接的な光学ビューとなり、
当該方法は、
前記サンプルを、前記サンプルホルダ上に提供するステップ
を有し、
当該方法は、
前記サンプルが前記一次ビームで照射されない際に、前記半導体検出器を用いて、前記サンプルおよび/または前記サンプルホルダの温度の非接触測定を実施するステップ
を有する方法。
【請求項2】
前記ヒータは、MEMSヒータである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒータは、レーザ、マイクロ波加熱、誘導加熱または電子ビーム加熱による非接触式の加熱が可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記荷電粒子の一次ビームは、電子の一次ビーム、またはイオンの一次ビームである、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記ヒータの前記熱応答時間は、10ms未満であり、特に1ms未満である、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記ヒータの温度は、1000Kを超えるように、特に1300Kに調整できる、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
1000Kを超える温度では、加熱および冷却の速度は、104K/sを超え、特に、105K/sを超える、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
当該方法は、さらに、
熱容量の変化による、加熱または冷却の速度の変化を検出するステップ
を有する、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記熱容量の変化は、前記サンプルの相変化によって生じる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
荷電粒子の一次ビームにより、サンプルホルダに取り付けられたサンプルを検査するように構成された荷電粒子顕微鏡であって、
当該荷電粒子顕微鏡は、前記一次ビームによる前記サンプルの照射に応じて、前記サンプルから放射される二次粒子を検出する半導体検出器を備え、
前記半導体検出器は、前記サンプルの直接的な光学ビューとなり、
前記半導体検出器の信号は、作動中にプロセッサに供給され、
前記プロセッサは、ディスプレイユニットに画像を表示するように構成され、
前記サンプルホルダは、セラミック部と、該セラミック部の裏面に設置された早い熱応答時間を有するヒータとを有し、前記サンプルは、前記セラミック部の前記ヒータとは反対の側に設置され、
当該荷電粒子顕微鏡は、前記ヒータの温度を制御するヒータ制御器を備え、
前記プロセッサは、少なくとも2つのモードで作動するように構成され、第1のモードでは、前記プロセッサは、前記サンプルから放射される電子の強度に比例する信号を表示し、第2のモードでは、前記検出器は、前記サンプルが前記ビームで照射されない場合、前記検出器の前記信号を用いて、前記サンプルの温度を表示する、荷電粒子顕微鏡。
【請求項11】
当該荷電粒子顕微鏡は、前記温度を定める際に、荷電粒子の前記一次ビームを排除するようにプログラム化される、請求項10に記載の荷電粒子顕微鏡。
【請求項12】
少なくとも1000Kの温度まで、特に少なくとも1300Kの温度まで、前記サンプルを加熱することができる、請求項10または11に記載の荷電粒子顕微鏡。
【請求項13】
前記サンプルホルダおよび/または前記サンプルを加熱する非接触ヒータを備え、
前記非接触ヒータは、レーザ、マイクロ波ヒータ、誘導ヒータ、および電子ビームヒータの群から選定される、請求項10乃至12のいずれか一つに記載の荷電粒子顕微鏡。
【請求項14】
当該荷電粒子顕微鏡は、透過型電子顕微鏡コラム、走査透過型電子顕微鏡コラム、走査型電子顕微鏡コラム、収束イオンビームコラム、またはこれらの組み合わせを含む顕微鏡の群からの顕微鏡である、請求項10乃至13のいずれか一つに記載の荷電粒子顕微鏡。
【請求項15】
温度変化用の前記半導体検出器の応答時間は、10ms未満であり、特に1ms未満である、請求項10乃至14のいずれか一つに記載の荷電粒子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子顕微鏡を使用する方法に関する。荷電粒子顕微鏡は、荷電粒子の一次ビームを用いて、サンプルホルダに取り付けられたサンプルを検査するように構成され、荷電粒子顕微鏡は、一次ビームによるサンプルへの照射に応じてサンプルから放射される二次粒子を検出する、半導体検出器(SSD)を備え、半導体検出器は、直接的なサンプルの光学ビューとなり、荷電粒子顕微鏡は、サンプルを加熱する手段を備える。
【0002】
本発明は、さらに、前記方法を実施するための機器に関する。
【背景技術】
【0003】
そのような方法は、米国NC27606、ローリー、Protochipsからのアプリケーションノート「Aduro(登録商標)AA01.2」(-1-)により知られている。
【0004】
このアプリケーションノートには、SEM(日立SU-6600SEM)におけるMEMSヒータ(E-チップ)上のサンプル(亜鉛酸化物/アルミナ層)を加熱することが記載されている。加熱は、700℃(約1000K)を超える温度まで行われる。
【0005】
例えば、材料(金属)の相転移の研究の際には、サンプルを加熱する必要がある。Aduro E-チップは、標準的なTEMグリッドに代わるサンプルホルダである。E-チップは、内蔵式ヒータを有する、モノリシックなセラミック膜を有する。これは、1000℃(約1300K)を超える温度まで、加熱することができる。
【0006】
E-チップは、電気コンタクトと接触する特殊なSEMステージに取り付けることができる。あるいは、これは、TEMのサイドエントリーホルダに取り付けることができ、これにより、TEMでの加熱実験の実施が可能となる。
【0007】
日立SEMがヒータの光学ビューにSSDを備えるかどうかは不明である。しかしながら、これは、「高温SEMのデモ」(-2-)に記載された同様の利用法により知られている。ここでは、Aduro加熱ステージは、米国ヒルズバロのFEI社により製造されたNova NanoSEM230において、in-situで使用される。このSEMは、インレンズの後方散乱式電子検出器(BSED)を有し、インレンズBSEDは、サンプルの光学ビューにおける半導体検出器となる。
【0008】
また、加熱に関して、しばしば、クエンチが必要となる。すなわち、サンプルの急速冷却により、サンプルの状態を「冷凍する」ことが必要となる。
【0009】
E-チップで加熱または冷却する時間は、極めて短く、ミリ秒のオーダーである。室温の環境下でE-チップが約1000Kに加熱される場合、加熱および冷却の速度は、104K/sよりも大きい。
【0010】
放射される放射線の量は大きく温度依存するため、加熱および冷却の速度は、温度依存性であることに留意する必要がある。P≒T4
【0011】
E-チップのヒータは、抵抗ヒータであり、E-チップの温度は、抵抗ヒータの抵抗値を測定することによって定められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】アプリケーションノートAduro(登録商標)AA01.2: http://website.protochips.netdna-cdn.com/images/stories/aa01.2.pdf
【非特許文献2】高温SEMデモ:http://www.mse.ucla.edu/events/events-archive/2013/high-temperature-sem-demo
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明では、迅速な応答時間を有するヒータを用いて、サンプルホルダの温度を測定するための代替方法を提供することを目的とする。より具体的には、本発明の目的は、サンプルの温度を測定するための代替方法、および温度の遷移を測定するための代替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の目的のため、本発明では、サンプルが一次ビームで照射されていない際に、半導体検出器(solid state detector:SSD)を用いて、サンプルおよび/またはサンプルホルダの温度の非接触測定を有する方法が提供される。
【0015】
本発明は、電子顕微鏡内で使用される半導体検出器が、二次電子、散乱電子およびX線の群から選定される二次放射線に感度を示す上、可視光および/または赤外の領域ではフォトンにも感度を示すという洞察に基づくものである。従って、通常、SE、BSE、X線の検出に干渉すると思われる、熱放射線に対する暴露を、サンプルまたはサンプルホルダの温度測定に有意に使用することができる。本方法は、非接触であるため、本方法は、サンプルおよび/またはサンプルホルダの熱特性(熱容量、最大温度等)に影響を及ぼさない上、例えば、測定のため使用される材料がサンプルに拡散し、またはその逆の現象が生じる可能性もない。
【0016】
ある実施例では、ヒータは、MEMSヒータである。
【0017】
この実施例は、AduroのE-チップのような、MEMSヒータと組み合わされた方法の使用として記載される。
【0018】
別の実施例では、加熱は、レーザ、マイクロ波加熱、または誘導もしくは電子ビーム加熱によって生じる非接触加熱である。
【0019】
この実施例では、加熱および測定の両方が非接触式である。抵抗ヒータとして、いかなる材料も追加する必要はなく、これにより支持構造の選定に最適な自由度が得られる。
【0020】
電子ビーム加熱を使用する際、電子ビームは、検査に使用されるビームであってもよいが、通常は、加熱専用のビームが使用される傾向にあることに留意する必要がある。
【0021】
レーザを使用する場合、SSDによって見える側面とは反対の側面から、レーザを用いてホルダが照射され、レーザの放射線は、温度の読み出しに影響を及ぼさない(支持構造がレーザ放射線に対して不透明であると仮定した場合)。
【0022】
レーザの色および偏光の選定は、所望の温度に到達する際に重要となることに留意する必要がある。
【0023】
一次ビームは、電子の一次ビーム、またはイオン(正もしくは負に帯電された原子、分子、またはクラスタ)の一次ビームであってもよいことに留意する必要がある。
【0024】
ヒータの熱応答時間は、10ms未満であり、特に1msであることが好ましい。
【0025】
サンプル支持として薄膜を使用した場合、低い容量、さらには迅速な熱応答が実現できる。
【0026】
サンプルホルダおよび/またはサンプルの温度は、1000Kを超え、特に1300Kを超えるように調整されることが好ましい。
【0027】
炭素、セラミックス(窒化ケイ素、ホウ化ケイ素)等のような適当な材料を選定することにより、これらの温度でのサンプルホルダが実現できる。重要なことは、ホルダの材料自身が、高温で蒸発せず、真空度(通常、1hPaから10-6hPaの間)を低下させないこと、ならびにホルダ材料およびサンプル材料が、これらの高温下で反応/拡散しないことである。
【0028】
1000Kのサンプル温度および室温の環境において、加熱および冷却の速度は、104K/sを超え、特に105K/sを超えることが好ましい。
【0029】
例えば金属の研究などの多くの実験では、サンプルの早いクエンチ処理が要求される。
【0030】
別の実施例では、本方法は、さらに、熱容量の変化による、加熱または冷却の速度の変化を検出するステップを有する。
【0031】
これにより、微小(マイクロ)熱量測定の方法の使用が可能となる。
【0032】
熱容量の変化は、サンプルの相変化(吸熱または発熱)によって生じることに留意する必要がある。
【0033】
本発明のある態様では、荷電粒子の一次ビームにより、サンプルホルダに取り付けられたサンプルを検査するように構成された荷電粒子顕微鏡において、
当該荷電粒子顕微鏡は、前記一次ビームによる前記サンプルの照射に応じて、前記サンプルから放射される二次粒子を検出する半導体検出器を備え、
前記半導体検出器は、前記サンプルの直接的な光学ビューとなり、
前記半導体検出器の信号は、作動中にプロセッサに供給され、
前記プロセッサは、ディスプレイユニットに画像を表示するように構成され、
当該荷電粒子顕微鏡は、ヒータの温度を制御するヒータ制御器を備え、
前記プロセッサは、少なくとも2つのモードで作動するように構成され、第1のモードでは、前記プロセッサは、前記サンプルから放射される電子の強度に比例する信号を表示し、第2のモードでは、前記プロセッサは、前記サンプルが前記ビームで照射されない場合、前記検出器の前記信号を用いて、前記サンプルの温度を表示する。
【0034】
荷電粒子顕微鏡の実施例では、当該荷電粒子顕微鏡は、温度を定める際に、一次ビームを排除(blank)するように構成される。
【0035】
当該荷電粒子顕微鏡は、少なくとも1000Kの温度まで、特に少なくとも1300Kの温度まで、前記サンプルを加熱することができることが好ましい。
【0036】
ある実施例では、当該荷電粒子顕微鏡は、前記サンプルホルダおよび/または前記サンプルを加熱する非接触ヒータを備え、前記非接触ヒータは、レーザ、マイクロ波ヒータ、誘導ヒータ、および電子ビームヒータの群から選定される。
【0037】
別の実施例では、当該荷電粒子顕微鏡は、透過型電子顕微鏡コラム、走査透過型電子顕微鏡コラム、走査型電子顕微鏡コラム、収束イオンビームコラム、またはこれらの組み合わせを含む顕微鏡の群からの顕微鏡である。
【0038】
当該荷電粒子顕微鏡は、SSDを備え、温度変化を検出するための応答時間は、10ms未満であり、特に1ms未満であることが好ましい。
【0039】
以下、添付の概略的な図面を参照して、一実施形態に基づいて本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A】MEMSヒータを概略的に示した底面図である。
図1B図1Aに示したMEMSヒータを概略的に示した側面図である。
図2】前記MEMSヒータの上部に配置されたSSDを概略的に示した図である。
図3】サンプルの温度に対するSSDの信号の関係を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1aには、底面から見たMEMSヒータを概略的に示す。すなわち、図では側面が除去されており、荷電粒子は、この側面からMEMSヒータに衝突する。
【0042】
セラミック部101のような耐熱性の電気絶縁材料のピースが、抵抗性ヒータを形成する金属トラック102で被覆される。トラック(さらにはセラミック部101)を加熱するため、パッド103A、103Bに電流が印加される。パッド104A、104Bにわたる電圧の測定により、4点(端子)での抵抗測定が行われ得る。
【0043】
セラミック材料は、シリコン含有材料であってもよく、あるいは例えばボロン含有材料であってもよい。一例は、SiN、SiO2、BN、またはSiNとSiO2のサンドイッチ構造である。
【0044】
金属トラック102用の材料として、耐熱金属(例えばW、Mo、Ta、Cr、またはTi)の群からの材料が使用される。ヒータは、セラミック部の表面に配置されても、セラミック部内に埋設されてもよい(セラミック部は、例えば、サンドイッチ構造である)。材料が十分な耐熱性を有し、ヒータ用の適当な電気特性を有する場合、トラックを構成する他の材料は、例えば、炭素または半導体トラックであってもよい。金属トラックの形態は、熱の均一な分布が得られるように調整され、または周囲に比べてセラミック上のスポットで高温が得られるように調整される。温度は、金属トラックの抵抗の一部を測定することにより、または別個の専用のトラックの抵抗を測定することにより測定される。そのような専用のトラックは、単一の金属のトラックである必要はなく、例えば熱電対を有するトラックであってもよい。
【0045】
セラミック部の加熱部分は薄膜であり、この部分から顕微鏡に、熱がほとんど伝達しないことが好ましいことに留意する必要がある。顕微鏡では、ドリフト、または検出器のような電子部品の損傷など、好ましくない影響が生じ得るからである。また、加熱部分のサイズ(表面積)は、前記理由から小さくする必要がある。
【0046】
図1Bには、図1Aに示したMEMSヒータの側面を概略的に示す。
【0047】
図1Bに示されたセラミック部101は、片側にトラック102を有し、反対側にサンプル100を有する。サンプルおよびヒータは、反対の側に配置され、金属トラックでのサンプル材料の拡散、またはその逆の現象が回避される。サンプルは、数点でのみ、MEMSヒータと接触する。これは、通常、加熱前の状態にあたる。加熱後には、サンプルはセラミックを濡らし、またはサンプルは、セラミックと反発してもよい(後者の場合、小表面でのみセラミックと接触する)。サンプルの昇温は、ほぼ間接的な加熱により生じ、すなわち、セラミックから放射される放射線により生じる。同様に冷却は、放射によって生じる。比較的薄いセラミック部を介した伝導は、ほとんど無視できる。
冷却は放射により生じるため、冷却速度は、温度に大きく依存する。高温では、低温に比べて冷却速度は大きくなる。
【0048】
図2には、前記MEMSヒータの上部に配置されたSSDを概略的に示す。
【0049】
図2は、図1Bから得られると考えられる。図1Bに加えて、微粒子放射線200のビームが示されており、これは、サンプル100に位置201で衝突する。この衝突位置から、二次放射線が放射され、これは、磁気レンズの磁極片203に取り付けられたSSD202により検出される。
【0050】
微粒子放射線のビームは、電子ビームであってもよく、例えば、しばしばSEMで使用されるような、200eVから30keVの間の選択可能なエネルギーを有する電子ビーム、またはしばしばSTEMで使用されるような、40から300keVの間の選択可能なエネルギーを有するビームである。他のエネルギーを使用することも知られている。また、微粒子放射線のビームは、例えば、FIBで慣例的に使用されるような、500eVから40keVの間の選択可能なエネルギーを有するイオン(正もしくは負に帯電された原子、分子、またはクラスタ)のビームであってもよい。
【0051】
前述の全ての場合において、二次電子の形態の二次放射線が放射される。また、電子が入射される場合には、散乱電子(BSE)およびX線が形成される。SE、BSE、およびX線は、SSDにより検出され、これは、例えば、欧州特許出願公開第EP2009705号に記載されているようなタイプのSSDである。
検出器は、放射線の一次ビームが通る中央孔を備える。前記ビーム(さらには衝突サイト201)は、サンプル100の表面にわたって走査される。
【0052】
図3には、サンプル温度の関数としてのSSDの信号を概略的に示す。
【0053】
図3には、信号対温度のプロットが示されており、最大信号は、255(1バイト)に近く、最小信号は、0に近い。他のスケールを使用してもよく、例えば、0から(216−1)までの2バイトのスケール、または0から100%までのスケールも使用できる。当業者には明らかなように、これらのレベルは、しばしば輝度制御、ブラックレベル、またはオフセットとして知られる第1の制御により、およびしばしば、信号を処理するプロセッサのゲインまたはコントラストとして知られる第2の制御により調整することができる。
【0054】
SSDは、長波長では感度を示さず、その結果、800K未満の温度では、信号に極めて小さな変化しか生じず、または変化は全く生じない。温度が約800Kを超える場合、より具体的には1000Kを超える場合、検出器の信号は、温度に十分に依存し、これを温度の測定に使用できる。
【0055】
使用前に、SSD信号の温度と信号の関係のプロットを定める必要があることに留意する必要がある。これは、工場設定であってもよく、またはヒータ(空のヒータ)上のサンプルを用いた実験の前に定められてもよい。(空の)MEMSヒータの温度自体は、工場補正され、またはオーム抵抗の4点測定を用いて、あるいは別の種類の金属トラックの温度依存測定を用いて、校正されてもよい。また、SSDの温度依存性は、以前に定められた温度曲線とSSDの信号との比較に基づいてもよい。これらの方法の各々は、短所と長所を有する。高温領域のサイズは、サンプルの体積、サンプルの「ブラックネス」(すなわち放出された放射黒体放射からの遠さ)等で変化し、温度変化と信号の関係のプロットが得られることが言及される。
【0056】
図3では、1150Kを超える温度では、検出信号のクリッピングが生じることが読み取られるが、これは事実ではない。より低いゲインを用いて、検出器信号が最大値未満に維持されてもよい。
【0057】
非特許文献
(-1-)Application Note Aduro(TM) AA01.2:
http://website.protochips.netdna-cdn.com/images/stories/aa01.2.pdf
(-2-)High-Temperature SEM DEMO:
http://www.mse.ucla.edu/events/events-archive/2013/high-temperature-sem-demo
図1A
図1B
図2
図3