【実施例】
【0014】
(例)
PI 2611膜を、175℃および200℃で5から120分の範囲の時間、VFM硬化させた。樹脂をシリコンウエハ上に4000rpmでスピンコートして、厚さ7μmの膜を得、続いて膜を、130℃で2分間ソフトベークし、硬化前に残留溶媒を除去した。
図2は、これらの標本のヤング率を、オーブン硬化された標本(350℃と400℃)と比較して示す。200℃で60分硬化させた後に、この係数は急上昇し、この時点で、この係数は従来のオーブン中で硬化された材料の係数よりも実際高いという驚くべき観察がなされた。備考:係数は、基板の影響を最小限にするために、100〜200nmの厚さに関するナノインデンテーション方法により計測した。
(例)
図3は、上述の例中で記載されたBPDA−PPD膜の硬度を示す。この場合も、硬化時間約60分で激しい上昇が見られ、この時点で、硬度は、350℃のオーブン硬化により生成されたものの硬度と同等である。
(例)
図4は、200℃でのVFM硬化によるイミド化のパーセントを、FTIRで測定し、時間に対する関数として示す図である。イミド化は20分後に約80%が完了し、60分から120分の間に小さな変遷があるが、60分後に本質的に完了することがわかる。
【0015】
BPDA−PPDを200℃のみでマイクロ波(VFM)により完全に硬化させると(T
g=350℃)、90〜100%への硬化度合の上昇および
図2の係数、
図3の硬度および
図4のFTIRで示されるように、処理に入って60分と75分との間で、配向の激しい移行で起こる。この配向は予期せず、MWにより時間と共に激しい相転移として生じるが、この係数は、対流オーブン硬化で見られるようなより高いレベルに上昇することはなく、一方、CTEは3.1ppm/℃で留まる。これは、T
gを超える温度に加熱しないと、残留応力レベルがより低くさえなることを示す。その結果、BPDA/PPD膜のシリコンウエハ上でのVFM硬化は、追加的な反りを示すことがない。
【0016】
この高い配向は、ポリマー鎖の密な整列化を意味し、これは、液晶相が非常に配向されて「棒のように」まとまることに類似している。この特別な熱可塑性構造の電子工学的性質は、芳香環中での非常に良好に整列化されたsp
2軌道と、
図1に示されているように、複素イミド環が、この非常に線形で剛性を有する構造に沿っていることとの結果である。商業的に利用可能なポリイミドのより一般的な構造は、これとは対照的に、
図5のPMDA−ODAであるKapton(登録商標)膜中にある一般的なポリイミドの構造で示されるように、よりねじれ、柔軟性を有する。
【0017】
形態学的に等方性を有するPMDA−ODAの面外CTEは、面内CTEの1.2倍に過ぎないが、配向されたBPDA−PPDは、異方性を有し、面内の率が25倍高い。この異方性における低いCTEは、シリコンのCTE(3ppm/℃)と厳密に一致し、これによって、シリコンウエハ上にコーティングされたポリマー膜は、冷却後には実質的に誘導応力を有さない。この点は、ポリイミド誘電膜でコーティングされた薄いシリコンウエハスタックの使用が増えつつある電子工学産業にとって、非常に高い密度機能性を提供するために非常に重要である。ポリマー誘電膜のCTE(約60ppm/℃)とシリコンウエハのCTEとの間での現状の不一致は、通常300mmの直径のウエハ中に300〜800μmの反りを作る。この点は、解決困難な問題であったが、その理由は、先進的なデバイスとパッケージング構造とに対して互換性を有するように250℃未満の硬化温度を探し求めている電子工学産業にとっては、BPDA−PPDの硬化時の350〜400℃という従来のオーブン硬化温度が、ウエハ処理の実地での限界をはるかに超えているためである。例えば、先進的なメモリデバイス、例えばポリマーまたはセラミック製のRAMデバイスなどの中には、250℃よりずっと高い温度では動作不能なものがある。マイクロ波を用いて200℃のみの硬化温度で、高い配向性を有する低いCTEのポリイミド膜を作る能力は、非常に重要な技術上の飛躍的な進歩である。
【0018】
ポリイミド膜は、マイクロ電子産業において、何十年にも亘って最適な有機誘電体であったが、その理由は、この材料が、300℃を超える温度に対して、高い熱安定性、化学安定性および機械安定性を有するためである。電子工学デバイス技術の最近の進歩によって、250℃を上回る高温処理に対してしばしば感受性を来している。この限界により、電子工学産業は、硬化温度が250℃未満である他の化学的なクラス、例えば、ポリベンゾオキサゾールおよびエポキシなどを模索せざるを得なくなった。全ての場合において、ポリイミドに代わるこれらの物質では、安定性および誘電特性に関して妥協してきたか、または、製造上の頑健性を低減させてきた。従来のオーブンで300℃未満の温度で不完全に硬化されたポリイミドは、マイクロ電子デバイスには許容され得ない化学的および誘電特性を有する。
【0019】
高い配向性を有する低CTEポリイミド膜を、200℃程度の低温で作り出す能力によって、主に250℃以下で行われるパッケージング処理の流れの大部分において頑健なポリイミド膜硬化を含むことができ、これによって、ダイ接着、ダイ封止、鋳造、ダイアンダーフィルおよびダイ積層の応用において一般的に使用されるエポキシ接着剤の分解を回避することができる。
さらに、T
g未満での低いマイクロ波硬化温度と、パッケージングまたは組み立てにおいて使用される他の任意の処理工程によってみられる最高温度との間の差は、ここでは50℃以下となる。この低い温度の範囲での逸脱は、従来のオーブン硬化においてみられる係数およびCTEに関する時間と温度との強い効果をほぼ取り除くが、これについては、M.T. Pottiger and J.C. Coburn, "Modeling Stresses in Polyimide Films", Mat. Res. Soc. Symp. Proc., Vol 308, 527-534 (1993) に記載されている通りである。
【0020】
材料バルク全体に亘る臨界反応双極子の均一なマイクロ波励起により、ポリイミド鎖の硬化反応(イミド化/環化)は非常に効率が良くなる一方で、バルク中での温度をずっと低く(200℃)保つ。ポリマーの低温硬化は、様々な系で実証されている。この反応は、完了(
図4に示す通りほぼ90%)に近くなるにしたがって、鎖の剛性がさらに高くなり、鎖はより可動性が小さくなる。回転する双極子(この点では、主にカルボニル)中でのマイクロ波エネルギーの継続的な効果は、剛性を有するこれらの棹体をより低いエネルギースタッキングサイト中に配向/結晶化するのを支持する。同様のことが、小さな水の分子の同期結晶化(凍結)温度、0℃前のまさに最後の温度で見られうる。この同期性は、ポリマーの標準的な対流加熱では見られず、その理由は、この処理には、秩序を高めるのとほぼ同程度に秩序を乱す他のものとの衝突による、鎖の無作為な衝突が含まれており、その結果、より高温が必要となるためである。
【0021】
出願人は、驚くべき低い温度においてマイクロ波により誘導された配向が、BTDA−PPDの線形構造により可能であることを示した。この観察に基づき、出願人は、この現象が、同じ特徴を備えたこれ以外の意図的に設計されたポリイミド構造にも拡張されうることを期待している。
(例)
本発明による方法を利用する他のポリマーの設計では、
図6の一般的なクラスに示唆されるような二官能性ポリアミック酸部分と、
図7に示唆されるようなR1およびR2を有する二官能性アミンとを組み合わせることができる。硬化されると、高い配向能力を備え、線形で、共役し、かつ剛性を有するポリイミド膜を生成するこれ以外の多くの可能性も存在する。
【0022】
[Y.Kuramoto、「Chemical Oscillations,Waves,and Turbulence.」Springer、Berlin(1984)]では、化学および生物分野における突然の位相転移は、分布の臨界レベルにおいて分子間の相互作用により生じうることが示されている。硬化の終焉に近づくとより遅い速度で動く分極性ポリマー鎖のマイクロ波により誘導される相互作用は、これらの鎖の長さの分布がより狭い場合には、より効果的に同期化され、より配向される。
【0023】
(例)
BTDA−PPDに関して観察された配向または結晶化は、相転移の様式で(
図2〜4参照)強く同期していると思われることから、出発材料中の鎖の長さ分布を小さくすることによって、MW照射における他のポリイミドおよびこれ以外の熱可塑性物質における高い配向レベルを誘導することが可能であるはずである。熱可塑性物質の多分散指数(PDI)を小さくすることは、サイズ排除クロマトグラフィーなどの分離技術を用いることによって、または、出発材料の形成における熱可塑性物質のエンドキャップ反応の初期形成を制限することによって行われうる。これらの方法により、例えば、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリカーボネートおよびアクリロニトリルなどの、硬度およびCTEが調節可能である点が有利であるはるかに広い選択範囲でのポリイミドおよびこれ以外の熱可塑性物質の機械特性を高めることが可能であるべきである。この選択的設計の能力は、標準的な熱硬化技術を使用した場合には、明らかにあり得ない。
【0024】
上述の例および説明に基づけば、許容可能な結果を生じる処理変数の範囲があること、ある特別な施用と別のものとでは最適なパラメータが異なりうることが理解されるであろう。当業者は、日常の実験を通じて特別な系に用いる処理を容易に最適化することができる。BPDA−PPD系については、出願人は、175〜225℃の温度範囲で、約20〜120分間処理することを好む。特注のポリマー配合、例えば、
図6および7に関連付けて説明したポリマー配合については、T
g値は、多少変わる可能性があるが、多くの場合では約300〜400℃の範囲内であると理解されるであろう。これらの系については、BPDA−PPDと同様に、出願人は、マイクロ波処理が、特別な配合について、Tgより約100℃低い温度以下の温度で行われることを好む。したがって、望ましい処理温度の上限も、最終使途によりある温度までと指示されるであろう。電子工学デバイスについて、業界は、一般的に約250℃未満に維持させることを好み、多くの場合で、可能であれば200℃未満に維持させることを好む。
【0025】
本発明が、従来は形成不能であった構造の製造を可能にすることは、当業者には明らかであろう。特に、温度上限が250℃以下である機能的なシリコン集積回路を、T
gが350℃以上である熱可塑性物質の高密度な層でコーティングした複合的な構造を作り上げることができる。集積回路の特徴の特徴部サイズは100〜15nmでありうる。全ての従来技術の方法では、この種のポリマーを圧縮するために必要とされる処理温度は、下にある回路部材の機能性を破壊してしまう。
VFM処理は、キャビティおよび加工対象品のサイズおよび形状、基板のタイプなどの変数に基づいて、当業者が特別な周波数範囲、掃引速度などを選択することができる、本質的に柔軟性を有する方法であることが理解されることになろう。ある選択された帯域幅(通常、中心周波数の±5%または±10%)に亘って周波数を掃引することは、均一性を向上させるのみならず、アーク放電およびこれ以外の加工対象品中の電子工学部品に対して悪影響を及ぼす効果を防ぐことは周知である。したがって、出願人は、中心周波数の少なくとも±5%、より好ましくは±10%の帯域幅に亘って、周波数を掃引することを好む。