(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インペラの回転軸線の方向に沿って延びて該回転軸線の方向に開口する筒状をなして前記インペラにガスを導入する吸気部と、前記インペラ及び前記吸気部の外周側に配置されて周方向に沿って延びて該周方向に開口する吐出口と該吐出口に向かって前記インペラからの前記ガスが流通するスクロール流路における前記回転軸線の方向の前記吸気部側の内面とを有する第一本体部とを、樹脂の一体成形によって成形する吸気側ケーシング成形工程と、
前記スクロール流路における前記回転軸線の方向の前記インペラ側の内面を有する第二本体部と、前記第二本体部の径方向内側で前記吸気部と前記インペラとで前記回転軸線の方向に挟まれる位置に配置されて前記スクロール流路の径方向内側の内面を有するとともに前記ガスを前記インペラから前記スクロール流路内に導くディフューザ部とを、前記吸気側ケーシング成形工程で用いた樹脂成形金型によって樹脂の一体成形で成形するインペラ側ケーシング成形工程と、
一体成形した前記吸気部及び第一本体部と、一体成形した前記第二本体部及び前記ディフューザ部とを、前記樹脂成形金型のスライドによって組み合わせるダイスライド工程と、
互いに組み合わされた前記吸気部及び第一本体部と、前記第二本体部及び前記ディフューザ部との間を接合する接合工程と、
を含み、
前記ディフューザ部と前記吸気部とで前記回転軸線の方向に挟まれる位置に配置されるように、かつ、前記吸気部の内面に接触するように、筒状をなす金属製のスリーブを、前記吸気側ケーシング成形工程の前に該吸気側ケーシング成形工程で用いる樹脂成形金型内に挿入するインサート工程をさらに含み、
前記インサート工程の前に、前記スリーブにおける前記吸気部の内面に接触する接触面を粗面化する粗化工程をさらに含むラジアルコンプレッサのケーシングの製造方法。
前記インペラ側ケーシング成形工程の前に、該インペラ側ケーシング成形工程で用いる樹脂成形金型に設けられる成形品の取出し用のエジェクタピンを挿入する孔部に該孔部の中途位置まで、前記エジェクタピンを前記インペラ側ケーシング成形工程での樹脂注入前に挿入しておくピン挿入工程をさらに含む請求項1に記載のラジアルコンプレッサのケーシングの製造方法。
前記吸気側ケーシング成形工程、及びインペラ側ケーシング成形工程では、第一本体部及び前記第二本体部の各々の外周端に、前記回転軸線に沿って互いに離間する方向に突出する凸部を形成する請求項1又は2に記載のラジアルコンプレッサのケーシングの製造方法。
前記吸気側ケーシング成形工程、及びインペラ側ケーシング成形工程では、第一本体部及び前記第二本体部の各々の外周端に、前記回転軸線に沿って互いに離間する方向に突出する凸部を形成する請求項4に記載のラジアルコンプレッサのケーシングの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した樹脂製のケーシングは、樹脂成形金型内に樹脂を注入することで製造される。しかしながらディフューザ部を成形後にスクロール部に組み込む際、ディフューザ部とスクロール部との位置関係を合せることが難しい。ディフューザ部とスクロール部との間の位置関係が設計上の位置関係からずれてしまうと、ディフューザ部とインペラとの間のチップクリアランスが設計値と異なってしまう。この結果、コンプレッサの性能が低下してしまうという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、ディフューザ部の位置ずれを回避し、性能低下を抑制することのできるラジアルコンプレッサのケーシングの製造方法、及びラジアルコンプレッサの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に係るラジアルコンプレッサのケーシングの製造方法は、インペラの回転軸線の方向に沿って延びて該回転軸線の方向に開口する筒状をなして前記インペラにガスを導入する吸気部と、前記インペラ及び前記吸気部の外周側に配置されて周方向に沿って延びて該周方向に開口する吐出口と該吐出口に向かって前記インペラからの前記ガスが流通するスクロール流路における前記回転軸線の方向の前記吸気部側の内面とを有する第一本体部とを、樹脂の一体成形によって成形する吸気側ケーシング成形工程と、前記スクロール流路における前記回転軸線の方向の前記インペラ側の内面を有する第二本体部と、前記第二本体部の径方向内側で前記吸気部と前記インペラとで前記回転軸線の方向に挟まれる位置に配置されて前記スクロール流路の径方向内側の内面を有するとともに前記ガスを前記インペラから前記スクロール流路内に導くディフューザ部とを、前記吸気側ケーシング成形工程で用いた樹脂成形金型によって樹脂の一体成形で成形するインペラ側ケーシング成形工程と、一体成形した前記吸気部及び第一本体部と、一体成形した前記第二本体部及び前記ディフューザ部とを、前記樹脂成形金型のスライドによって組み合わせるダイスライド工程と、互いに組み合わされた前記吸気部及び第一本体部と、前記第二本体部及び前記ディフューザ部との間を接合する接合工程と、を含んでいる。
【0008】
このようなケーシングの製造方法によれば、樹脂の一体成形で吸気部、第一本体部、ディフューザ部、及び第二本体部を成形するとともに、ダイスライド成形を用いてケーシングを製造する。よって、一つの樹脂成形金型を用いてケーシングの製造を行うことが可能であるため、製造の手間を削減し、製造コストを抑えつつケーシングの製造が可能となる。
また、インペラ側ケーシング成形工程では、ディフューザ部と第二本体部とを一体で成形する。このため成形後にディフューザ部を第二本体部に組み込む作業を行う必要がなく、これらディフューザ部と第二本体部との位置関係が、所定の位置関係からずれてしまうことがなくなる。
また、所定のチップクリアランスを得るために、ディフューザ部におけるインペラとの対向面の形状を整えるような後加工等が不要となるため、製造コストの低減が可能となる。
【0009】
また、本発明の第二の態様に係るラジアルコンプレッサのケーシングの製造方法では、上記第一の態様のケーシングの製造方法は、前記ディフューザ部と前記吸気部とで前記回転軸線の方向に挟まれる位置に配置されるように、かつ、前記吸気部の内面に接触するように、筒状をなす金属製のスリーブを、前記吸気側ケーシング成形工程の前に該吸気側ケーシング成形工程で用いる樹脂成形金型内に挿入するインサート工程をさらに含んでいてもよい。
【0010】
このようなインサート工程を実行することで、金属製のスリーブを吸気部の内側に容易に設けることができる。金属製のスリーブを事前に樹脂成形金型内にインサートして設けたことで、吸気側ケーシング成形工程で実行される冷却工程で、樹脂の収縮による吸気部及び第一本体部の変形を抑制することができる。よって、ディフューザ部におけるインペラとの対向面の形状を整えるような後加工等を不要としつつ、インペラとのチップクリアランスを設計値の通りにすることができる。
また仮に、ラジアルコンプレッサの運転時にインペラが破損した際にも、金属製のスリーブによって破損したインペラの破片がコンプレッサ外に飛散することを抑制することができる。
【0011】
また、本発明の第三の態様に係るラジアルコンプレッサのケーシングの製造方法では、上記第二の態様のケーシングの製造方法は、前記インサート工程の前に、前記スリーブにおける前記吸気部の内面に接触する接触面を粗面化する粗化工程をさらに含んでいてもよい。
【0012】
このような粗化工程を実行することで、スリーブにおける吸気部への接触面が粗面となるため、スリーブを吸気部に対して所定の位置にしっかりと固定することができる。
【0013】
また、本発明の第四の態様に係るラジアルコンプレッサのケーシングの製造方法では、上記第一から第三のいずれかの態様のケーシングの製造方法は、前記インペラ側ケーシング成形工程の前に、該インペラ側ケーシング成形工程で用いる樹脂成形金型に設けられる成形品の取出し用のエジェクタピンを挿入する孔部に該孔部の中途位置まで、前記エジェクタピンを前記インペラ側ケーシング成形工程での樹脂注入前に挿入しておくピン挿入工程をさらに含んでいてもよい。
【0014】
このようなピン挿入工程を実行することで、成形品となる第二本体部及びディフューザ部の成形時には樹脂がエジェクタピンの先端との間まで孔部内に入り込み、成形品には、該成形品と一体に成形品の表面から突出して孔部内に挿入された柱状部が形成される。よって、この柱状部によって、ダイスライド工程実行前に、成形品となる第二本体部及びディフューザ部が金型上で位置ずれしてしまうことを回避することができる。
【0015】
また、本発明の第五の態様に係るラジアルコンプレッサのケーシングの製造方法では、上記第一から第四のいずれかの態様の前記吸気側ケーシング成形工程、及びインペラ側ケーシング成形工程では、第一本体部及び前記第二本体部の各々の外周端に、前記回転軸線に沿って互いに離間する方向に突出する凸部を形成してもよい。
【0016】
第一本体部及び第二本体部が、このような凸部を有することで、成形時の冷却工程で第一本体部及び第二本体部が収縮しようとする際に、この凸部が樹脂成形金型に引っ掛かる。このため、第一本体部及び第二本体部の径方向への収縮が抑制され、設計通りの寸法でケーシングを製造することが可能となる。従って、コンプレッサの性能低下を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の第六の態様に係るラジアルコンプレッサの製造方法は、上記第一から第五のいずれかの態様のケーシングの製造方法と、前記ケーシングにインペラ及び該インペラが嵌合する回転軸を設ける組立工程と、を含んでいる。
【0018】
このようなラジアルコンプレッサの製造方法によれば、上記のケーシングの製造方法が実行されることで、一つの樹脂成形金型を用いてケーシングの製造を行うことが可能であるため、製造の手間を削減し、製造コストを抑えつつケーシングの製造が可能となる。
またディフューザ部と第二本体部とを一体で成形するため、成形後にディフューザ部を第二本体部に組み込む作業を行う必要がなく、これらディフューザ部と第二本体部との間での位置関係が所定の位置関係からずれてしまうことがなくなる。
また、ディフューザ部の位置ずれを回避できるので、所定のチップクリアランスを得るためにディフューザ部におけるインペラとの対向面の形状を整えるような後加工等が不要となる。よって、製造コストの低減が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
上記のラジアルコンプレッサのケーシングの製造方法、及びラジアルコンプレッサの製造方法では、ディフューザ部の位置ずれを回避し、性能低下を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態におけるラジアルコンプレッサ1の製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法で製造されるラジアルコンプレッサ1(以下、単にコンプレッサ1とする)は、例えば車両に搭載されるターボチャージャ用のコンプレッサである。
図1及び
図2に示すように、コンプレッサ1は、インペラ2と、インペラ2が嵌合することでインペラ2と一体で回転軸線Oを中心として回転する回転軸3と、インペラ2を覆うケーシング10とを備えている。
【0022】
次に、ケーシング10について説明する。
図1から
図3に示すように、ケーシング10は、インペラ2にガスG(例えば空気)を導入する吸気部11と、インペラ2から流出したガスGが流通してこのガスGを吐出するスクロール部12と、吸気部11とスクロール部12とを接続する複数のリブ13とを備えている。ケーシング10は、さらに、吸気部11の内側に配置された内筒部14と、吸気部11と内筒部14とを接続する複数の内部リブ15とを備えている。
【0023】
吸気部11は、インペラ2に対して回転軸線Oの方向の一方に配置されて回転軸線Oの方向に延び、回転軸線Oの方向に開口する円筒状をなしている。吸気部11は、インペラ2に向かって回転軸線Oの方向の一方からガスGを吸込み、インペラ2の流路(不図示)に向けてガスGを導入する。また、吸気部11の材料は、熱可塑性プラスチック等の樹脂(例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PA9T・PA46・PA6T(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等)である。
【0024】
スクロール部12は、インペラ2及び吸気部11の外周側に配置されている。このスクロール部12はインペラ2及び回転軸3の周方向に環状に延びるスクロール流路20を内部に有している。スクロール部12は、周方向の一方の端部に設けられて、スクロール流路20の開口部20aを形成する円筒状の吐出口21をさらに有している。
ここで吐出口21側となるスクロール部12における周方向の一方側の端部をスクロール部12の吐出側とし、周方向の他方側の端部をスクロール部12の巻き始め側とする。吐出側の端部と巻き始め側の端部とは隣接している。
【0025】
スクロール流路20は、巻き始め側から吐出側に向かって、周方向に直交する断面での流路断面積が漸次拡大する。これによりスクロール部12は、巻き始め側から吐出側に向かって外形寸法が漸次拡大する。また、スクロール流路20の周方向に直交する断面での流路断面の形状は円形状をなしている。これによりスクロール部12における回転軸線Oの方向を向く面の外形形状はスクロール流路20の形状に沿って曲面状に形成されている。
【0026】
また、スクロール部12は、回転軸線Oの一方でスクロール流路20の内面を形成する第一本体部22と、回転軸線Oの他方でスクロール流路20の内面を形成する第二本体部23と、スクロール流路20の径方向内側の内面を形成するディフューザ部24と、ディフューザ部24と吸気部11との間に配置されたスリーブ25とをさらに備えている。
【0027】
第一本体部22は、回転軸線Oを中心とした環状をなしている。スクロール部12における回転軸線Oの方向の一方側の部分である第一本体部22は、吸気部11の外周面11bを外周から取り囲むように設けられている。また、第一本体部22は吸気部11と同様に樹脂製である。第一本体部22には、周方向の一方側の端部で吐出口21が接続されている。本実施形態では、第一本体部22と吐出口21とは一体で製造されている。
【0028】
具体的には、第一本体部22は、回転軸線Oを中心とした環状をなす環状部22aと、環状部22aの径方向外側の端部(外周端)で周方向にわたって、回転軸線Oの方向の一方へ回転軸線Oに沿って突出する凸部22bとを有している。また、第一本体部22は、環状部22aの径方向外側の端部(外周端)に設けられて、回転軸線Oの方向の他方を向く面22cと、この面22cから回転軸線Oの方向の一方へ周方向にわたって凹む凹部22dとをさらに有している。
【0029】
第二本体部23は回転軸線Oを中心とした環状をなす環状部23aと、環状部23aの径方向外側の端部(外周端)で周方向にわたって、回転軸線Oの方向の他方へ回転軸線Oに沿って突出する凸部23bとを有している。また、第二本体部23は、径方向外側の端部(外周端)に設けられて、回転軸線Oの方向の一方を向く面23cと、この面23cから回転軸線Oの方向の他方へ、周方向にわたって凹む凹部23dとをさらに有している。
【0030】
凸部23bは、第一本体部22における凸部22bと略同一形状をなしており、これら凸部22b、23bは径方向の同じ位置に配置されている。凸部23bと凸部22bとは、回転軸線Oの方向に互いに離間する方向に延びている。
凹部23dは、第一本体部22における凹部22dと略同一形状をなしている。
【0031】
また第二本体部23は、吸気部11及び第一本体部22と同様に樹脂製である。そして第二本体部23は、第一本体部22に回転軸線Oの方向に対向して設けられている。本実施形態では第二本体部23は、第一本体部22とは別体で製造され、第一本体部22に接合されている。より詳しくは、第二本体部23の面23cと第一本体部22の面22cとが接触し、かつ、第二本体部23の凹部23dと第一本体部22の凹部22dとが径方向の同じ位置に配置されて凹部23dと凹部22dとが回転軸線Oの方向に対向している。
【0032】
ディフューザ部24は、回転軸線Oを中心とした環状をなしている。ディフューザ部24は、第二本体部23の径方向内側で、吸気部11とインペラ2とによって回転軸線Oの方向に挟まれる位置に配置されている。
【0033】
ディフューザ部24のインペラ2に対向する対向面24aは、インペラ2のチップの形状に対応した形状に形成されている。この対向面24aとインペラ2との間の距離がチップクリアランスである。
そして、ディフューザ部24の対向面24aよりも、第二本体部23における回転軸線Oの方向の他方の端部の方が、回転軸線Oの他方に配置されている。これにより、スクロール流路20が径方向内側に環状に開口する開口部20bを有している。インペラ2から流出したガスGはこの開口部20bからスクロール流路20に流入する。
ディフューザ部24は、第一本体部22と別体で製造され、第一本体部22に回転軸線Oの方向の他方側から接合されている。
【0034】
スリーブ25は、ディフューザ部24と吸気部11とで回転軸線O方向に挟まれる位置に配置されている。スリーブ25は金属製である。またスリーブ25は、回転軸線Oの方向に延びる筒状部26と、筒状部26における回転軸線Oの方向の他方側の端部に筒状部26と一体に設けられた鍔部27とを備えている。
【0035】
筒状部26は、回転軸線Oを中心とした円筒状をなしている。筒状部26の外周面は、吸気部11の内周面11aに接触する接触面26aである。この接触面26aは、レーザー等の粗面化処理を行うことで粗面となっている。また、スリーブ25の内周面25aは、吸気部11の内周面11aとの間で段差が形成されないように、吸気部11の内周面11aと面一になっている。
【0036】
鍔部27は、回転軸線Oを中心とした環状をなしている。鍔部27は筒状部26の外周面から径方向外側に突出して設けられている。
ここで第一本体部22における径方向内側に位置し、第一本体部22とディフューザ部24とで挟まれる領域には回転軸線Oを中心とした環状の隙間A2が設けられている。この隙間A2内に鍔部27が配置されている。そして鍔部27の回転軸線Oの方向の一方を向く面は第一本体部22に接触する接触面27aとなっている。この接触面27aについても粗面となっていてもよい。また、鍔部27の回転軸線Oの方向の他方を向く面はディフューザ部24と回転軸線Oの方向に離れた位置に配置されている。
【0037】
本実施形態のスクロール部12は、上記の隙間A2に充填された充填材30をさらに備えている。充填材30は、第一本体部22、第二本体部23、及びディフューザ部24の材料と同じ樹脂である。この充填材30により、第一本体部22とディフューザ部24とが互いに固定されている。
また、凹部22dと凹部23dとによって形成される周方向に延びる隙間A3にも、充填材30が充填されて、第一本体部22と第二本体部23とが互いに接合されている。
【0038】
複数のリブ13は、吸気部11の外周面11bと、第一本体部22における回転軸線Oの方向の一方を向く外面22eとを接続している。これらのリブ13は吸気部11及び第一本体部22と同様に樹脂製であって、吸気部11及び第一本体部22と一体で成形される。
【0039】
これらのリブ13は、周方向に間隔をあけて、スクロール部12の周方向にわたって設けられている。リブ13の周方向の設置間隔は、巻き始め側から吐出側に向かって漸次小さくなっていく。またこれらのリブ13は、第一本体部22の外面22e上で径方向に延びており、リブ13の径方向の延在方向の全域で、外面22eに接続されている。
また、第一本体部22の外面22e上でのリブ13の長さは、周方向に巻き始め側から吐出側に向かって漸次小さくなっている。
【0040】
またこれらリブ13は、吸気部11の外周面11bに沿って回転軸線Oの方向に延びており、リブ13の回転軸線Oの方向の延在方向の全域で、吸気部11の外周面11bに接続されている。全てのリブ13の吸気部11の外周面11b上での長さ寸法は同じである。
【0041】
内筒部14は、回転軸線Oを中心とした円筒状をなしており、内筒部14の内側をガスGが流通する。内筒部14の回転軸線Oの方向の一方側の端部は、吸気部11の回転軸線Oの方向の一方の端部よりも、回転軸線Oの方向の他方に位置している。即ち、内筒部14は吸気部11に収容されている。内筒部14は、吸気部11と同様に樹脂製である。内筒部14は例えば、吸気部11、第一本体部22、及びリブ13と一体で成形される。即ち、内筒部14によって吸気部11は二重管構造となっている。
【0042】
本実施形態では、内筒部14の外周面14aは吸気部11の内周面11aと径方向に離れた位置に配置されている。さらに、内筒部14の回転軸線Oの方向の他方側の端部は、ディフューザ部24における回転軸線Oの方向の一方の端部と間隔をあけて設けられている。これにより、内筒部14とディフューザ部24との間には回転軸線Oを中心とした環状のスリットSLが形成されている。
【0043】
内部リブ15は、内筒部14の外周面14aと吸気部11の内周面11aとの間に、回転軸線Oの方向に延在して設けられている。また内部リブ15は、周方向に等間隔をあけて複数が設けられている。
これにより、内部リブ15同士の間には、回転軸線Oの方向の両側で内筒部14の内側に連通する空間A1が画成されている。これら空間A1は、回転軸線Oの他方側でスリットSLを介して内筒部14の内側に連通している。またこれら空間A1は、回転軸線Oの一方側でも回転軸線Oの方向に開口し、内筒部14の内側に連通している。
【0044】
本実施形態では、スクロール部12がスリーブ25を備えるので、内部リブ15における回転軸線Oの方向の他方側の部分は、スリーブ25の内周面25aに接続され、内部リブ15における回転軸線Oの方向の一方側の部分は、吸気部11の内周面11aに接続されている。
【0045】
次に、
図4から
図7を参照して、本実施形態のコンプレッサ1の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、スリーブ準備工程S1と、粗化工程S2と、インサート工程S3と、一次成形工程S4と、ダイスライド工程S5と、二次成形工程(接合工程)S6とを含むケーシング10の製造方法と、当該ケーシング10の製造方法の後に実行される組立工程S7とを含んでいる。
【0046】
まず、スリーブ準備工程S1を実行して、上記の金属製のスリーブ25を準備する。その後、粗化工程S2を実行し、スリーブ25における接触面26aに例えばレーザー光を照射して接触面26aを粗化する。
【0047】
次に、インサート工程S3を実行する。インサート工程S3では、第一本体部22及び吸気部11を成形する樹脂成形金型100内の所定の位置に、スリーブ25を挿入して設置する。
ここで樹脂成形金型100は第一金型110と、第一金型110に突き合わされる第二金型111とを有している。スリーブ25は、第一金型110側にインサートされる。
【0048】
その後、一次成形工程S4を実行する。一次成形工程S4は、吸気側ケーシング成形工程S4aとインペラ側ケーシング成形工程S4bとを含んでいる。
図5に示すように、吸気側ケーシング成形工程S4aでは、スリーブ25が設置された樹脂成形金型100に樹脂を注入し、第一本体部22と吸気部11とを一体で成形する。これにより金属製のスリーブ25と第一本体部22と吸気部11とが一体で成形される。本実施形態では、内筒部14及び内部リブ15についても、第一本体部22及び吸気部11と一体で樹脂成形される。
【0049】
そして、インペラ側ケーシング成形工程S4bは吸気側ケーシング成形工程S4aとともに実行される。樹脂成形金型100には、第一本体部22と吸気部11とを一体で形成する部分と、第二本体部23とディフューザ部24とを一体で成形する部分とが並んで設けられている。
インペラ側ケーシング成形工程S4bでは、上記の樹脂成形金型100内に樹脂を注入し、第二本体部23とディフューザ部24とを一体で成形する。
【0050】
次に、ダイスライド工程S5を実行する。
図6に示すように、樹脂成形金型100における第一金型110と第二金型111とをスライドさせる。これにより、第一金型110上に配置されている一体成形した吸気部11及び第一本体部22と、第二金型111上に配置されている第二本体部23及びディフューザ部24とを対向させる。
【0051】
次に、二次成形工程S6を実行する。即ち、
図7に示すように、第一金型110上に配置されている第一本体部22と、第二金型111上に配置されている第二本体部23とを対向させて配置させたことで、これら第一本体部22と第二本体部23との間に形成された隙間A3、及び、第一本体部22とディフューザ部24との間に形成された隙間A2に樹脂(充填材30)を充填することで、第一本体部22と第二本体部23とを接合する。
これにより、ケーシング10が製造される。ここで、二次成形工程S6を実行後に、検査工程を実行してもよい。
【0052】
そして組立工程S7を実行し、ケーシング10にインペラ2及び該インペラ2が嵌合する回転軸3を、ディフューザ部24の対向面24aにインペラ2のチップが対向するように、回転軸3の中心が回転軸線Oに一致するように設ける(
図1参照)。
【0053】
以上説明した本実施形態のコンプレッサ1の製造方法によれば、一つの樹脂成形金型100を用いて、吸気部11と第一本体部22とを成形し、同時にディフューザ部24と第二本体部23とを成形することができる。その後、樹脂成形金型100の第一金型110と第二金型111とスライドさせることで成形品同士を接合することができる。即ち、いわゆるダイスライド成形を用いてケーシング10を製造することができる。よって製造の手間を削減でき、樹脂成形金型の数量を低減することができるため、製造コストを抑えつつケーシングの製造が可能となる。
【0054】
また、インペラ側ケーシング成形工程S4bでは、ディフューザ部24と第二本体部23とを一体で成形する。このため成形後にディフューザ部24を第二本体部23に組み込む作業を行う必要がなく、これらディフューザ部24と第二本体部23との間での位置関係が、所定の位置関係からずれてしまうことがなくなる。即ち、ディフューザ部24の軸が回転軸線Oからずれてしまうことを回避することができる。この結果、例えば所定のチップクリアランスを得るためにディフューザ部24における対向面24aの形状を整えるような後加工等が不要となる。
よって、本実施形態では、上述のようにケーシング10の製造コストの低減しつつディフューザ部24の位置ずれを回避し、性能低下を抑制することができる
【0055】
また、インサート工程S3を実行することで、金属製のスリーブ25を吸気部11の内側に容易に設けることができる。そして金属製のスリーブ25を一次成形工程S4の前に樹脂成形金型100内にインサートして設けたことで、吸気側ケーシング成形工程S4aで実行される冷却工程で、樹脂の収縮による吸気部11及び第一本体部22の変形を抑制することができる。よって、樹脂が収縮変形することでディフューザ部24の位置ずれが生じてしまうことがなくなるので、対向面24aに後加工等を行うことを不要としつつインペラ2とのチップクリアランスを設計値の通りに設定することができる。
【0056】
さらに金属製のスリーブ25を設けたことで、仮にラジアルコンプレッサ1の運転時にインペラ2が破損した際にも、スリーブ25によって破損したインペラ2の破片がコンプレッサ1の外に飛散することを抑制することができる。
【0057】
また、スリーブ25の接触面26aは粗化工程S2によって粗面とされるため、スリーブ25を吸気部11に対して所定の位置にしっかりと固定することができる。特に、コンプレッサ1の運転中にもスリーブ25の位置ずれが生じにくくなる。よって、コンプレッサ1の性能低下を抑制することができる。
【0058】
また第一本体部22が凸部22bを有し、第二本体部23が凸部23bを有することで、吸気側ケーシング成形工程S4aとインペラ側ケーシング成形工程S4bを実行する際の冷却工程で第一本体部22及び第二本体部23が収縮しようとする際に、この凸部23bが樹脂成形金型100に引っ掛かる。このため、第一本体部22及び第二本体部23の径方向への収縮が抑制され、設計通りの寸法でケーシング10を製造することが可能となる。従って、コンプレッサ1の性能低下を抑制することができる。
【0059】
また、ケーシング10に複数のリブ13が設けられていることで、吸気部11とスクロール部12とが接続される部分で剛性を向上でき、スクロール部12の熱変形を抑制することができる。これにより、インペラ2と、ディフューザ部24の対向面24aとの間のチップクリアランスの変動を抑えることができ、コンプレッサ1の性能低下を抑えることができる。
【0060】
さらに、スクロール部12では吐出側の方が巻き始め側よりも外形寸法が大きいため、同じ熱膨張率で熱変形すると、吐出側の方が巻き始め側よりも熱変形量が大きくなる。本実施形態では吐出側に向かってリブ13の設置間隔を小さくすることで、吐出側でスクロール部12の径方向への熱変形を促しつつ回転軸線Oの方向への熱変形を抑制できる。一方で、巻き始め側ではスクロール部12の第一本体部22の外面22e上でのリブ13の径方向の寸法が大きくなっているので、巻き始め側では吐出側と比較してスクロール部12の剛性が高くなる。よって、スクロール部12では回転軸線Oの方向、及び径方向に、比較的均一に熱変形が生じる。
【0061】
この結果、回転軸線Oの方向への熱変形量が巻き始め側より大きくなる吐出側と、回転軸線Oの方向への熱変形量が吐出側より小さくなる巻き始め側とで、回転軸線Oの方向への熱変形量とを同等にすることができる。即ち、インペラ2とケーシング10との間のチップクリアランスの変化を吐出側で低減できる。よってインペラ2とケーシング10との間のチップクリアランスを周方向に均一化することができる。よってコンプレッサ1の性能低下を抑えることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0063】
例えば
図8に示すように、ケーシング10Aは、上記の内筒部14と内部リブ15とを有していなくともよい。即ち、吸気部11は二重管構造となっていなくともよい。
また、吸気部11の内側に内筒部14のみを設け、内部リブ15を設けなくてもよい。即ち、必ずしもガスGの再循環路(
図3参照)となる空間A1を形成しなくてもよい。
【0064】
また、インサート工程S3を実行せず、スクロール部12にスリーブ25を設けなくともよい。また粗化工程S2も実行しなくともよい。
【0065】
またスリーブ25には鍔部27は設けられていなくともよい。またスリーブ25の接触面26aは必ずしも粗面となっていなくともよい。
【0066】
ここで、
図9に示すように、樹脂成形金型100には、成形品となるディフューザ部24の取出し用のエジェクタピン101を挿入する孔部102が設けられていてもよい。
【0067】
具体的には本実施形態では、孔部102は、成形品となるディフューザ部24における対向面24aを形成するための樹脂成形金型100における第二金型111の内面100aから、回転軸線Oの方向に沿って延びるように、第二金型111を回転軸線Oの方向に貫通して設けられている。また孔部102は、径方向に離れて一対が設けられている。これら孔部102の開口102aは、対向面24aを形成するための内面100aで、対向面24aの径方向外側の端部寄りの位置に対応する位置に設けられている。
ここで、第一本体部22や第二本体部23を成形する位置においても、樹脂成形金型100に孔部が設けられていてもよい。
【0068】
そして、
図10に示すように、本変形例では一次成形工程S4の前に、ピン挿入工程SPを実行してもよい。このピン挿入工程SPでは、エジェクタピン101を孔部102の開口102aと離れた中途位置まで、即ち、成形品であるディフューザ部24に接触しない位置まで、樹脂成形金型100内への樹脂の注入前に樹脂成形金型100の外部から挿入しておく。
ここで本変形例では、粗化工程S2とインサート工程S3との間にピン挿入工程SPを実行することにしているが、少なくとも一次成形工程S4の前であれば、どのタイミングでピン挿入工程SPを実行してもよい。
【0069】
このようなピン挿入工程SPを実行することで、成形品となるディフューザ部24の成形時には、樹脂がエジェクタピン101の先端との間まで孔部102内に入り込み、成形品となるディフューザ部24と一体にディフューザ部24から突出して孔部102内に挿入された柱状をなす柱状部35が形成される。この柱状部35によって、ダイスライド工程S5の実行前に、ディフューザ部24が第二金型111上で位置ずれしてしまうことを回避することができる。
【0070】
また、第一本体部22及び第二本体部23には、必ずしも凸部22b、23bを形成しなくともよい。また、リブ13も設けなくともよい。