特許第6661640号(P6661640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661640
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】化学機械研磨ツール用の構成要素
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20200227BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20200227BHJP
【FI】
   H01L21/304 622Z
   B24B37/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-532683(P2017-532683)
(86)(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公表番号】特表2017-538296(P2017-538296A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】US2015061643
(87)【国際公開番号】WO2016099790
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2017年7月11日
(31)【優先権主張番号】62/094,484
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】アッター スリーニディ
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−179021(JP,A)
【文献】 特開2003−133270(JP,A)
【文献】 特表2009−539626(JP,A)
【文献】 特開2012−051037(JP,A)
【文献】 特開2014−147990(JP,A)
【文献】 特開2000−349054(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0330886(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMPツール用の構成要素であって、
前記CMPツールが基板を研磨しているときに研磨流体にさらされる表面を有する本体と、
前記本体の前記表面に配された疎水性層であり、400nmから1600nmの間の厚さを有し、90°から140°の流体接触角を有する疎水性層と
を備え、
前記疎水性層は、モノマーから形成され、前記モノマーは、オクタデシルジメチルクロロシラン、トリ(トリメチルシロキシ)シリルエチル−ジメチルクロロシラン、オクチルジメチルクロロシランからなる群から選択される構成要素。
【請求項2】
前記構成要素が、CMPツール内において流体を送達するための構成要素であり、CMPツール内において流体を送達するための前記構成要素が、
細長い部材
を備え、前記細長い部材がさらに、
第1の端と、
第2の端と、
前記第1の端と前記第2の端の間に延びる細長い上面と、
を備え、
前記疎水性層は、前記細長い部材の前記細長い上面に配されている、
請求項1に記載の構成要素。
【請求項3】
前記接触角が140°である、請求項2に記載の構成要素。
【請求項4】
CMPツール用の構成要素であって、
下部および上部によって画定されたリング形の本体
を備え、前記下部がさらに、
下縁と、
前記上部に向かって延びる上縁と、
外径を有する外面と、
内径を有する内面であり、前記内径が前記外径よりも小さく、前記外面と中心軸を共有する内面と、
前記下部の前記内面に配された第1の疎水性層であり、400nmから1600nmの間の厚さを有し、前記下部の前記内面の一部分に流体が接触したときに90°から140°の接触角を有する第1の疎水性層と
を備え、
前記上部がさらに、
前記下部の前記上縁と一体の下縁と、
前記上部の前記下縁から半径方向内側に上方向へ延びる上縁と、
前記下部の前記外径よりも小さい前記上部の外径を有する外面と、
内径を有する内面であり、前記上部の前記内径が前記下部の前記内径よりも小さい内面と、
前記上部の前記内面に配された第2の疎水性層であり、前記上部の前記内面の一部分に流体が接触したときに90°から140°の接触角を有する第2の疎水性層と
を備え、
前記疎水性層は、モノマーから形成され、前記モノマーは、オクタデシルジメチルクロロシラン、トリ(トリメチルシロキシ)シリルエチル−ジメチルクロロシラン、オクチルジメチルクロロシランからなる群から選択される
構成要素。
【請求項5】
前記第2の疎水性層が140°の接触角を有する、請求項4に記載の構成要素。
【請求項6】
前記第2の疎水性層が少なくとも400nmの厚さを有する、請求項4に記載の構成要素。
【請求項7】
前記第2の疎水性層の厚さが1600nmである、請求項6に記載の構成要素。
【請求項8】
前記第1の疎水性層が140°の接触角を有する、請求項4に記載の構成要素。
【請求項9】
前記第1の疎水性層が少なくとも400nmの厚さを有する、請求項4に記載の構成要素。
【請求項10】
CMPツール内の構成要素であって、
ディスク形の本体
を備え、前記ディスク形の本体がさらに、
頂面と、
前記頂面に対して実質的に平行な底面と、
前記底面に対して垂直な外壁であり、さらに、
外径、
前記底面と一体の第1の端、および
前記第1の端の反対側の第2の端
を備える外壁と、
前記頂面に対して垂直な内壁であり、さらに、
前記外径よりも小さい内径、
第1の端、および
前記頂面と一体の第2の端
を備える内壁と、
前記外壁および前記内壁によって画定された、前記外壁および前記内壁に対して垂直なレッジであり、第1の端および第2の端を有し、前記レッジの前記第1の端が、前記外壁の前記第2の端と一体であり、前記レッジの前記第2の端が、前記レッジの前記第1の端から半径方向内側にあり、前記レッジの前記第2の端が、前記外壁の前記第1の端に一体として接続されており、前記外壁の前記第2の端が、前記外壁の前記第1の端から前記頂面に向かって半径方向内側にあるレッジと
を備え、
前記構成要素が、
前記ディスク形の本体上に堆積させた疎水性層であり、400nmから1600nmの間の厚さを有し、前記ディスク形の本体の一部分に流体が接触したときに90°から140°の接触角を有する疎水性層
をさらに備え、
前記疎水性層は、モノマーから形成され、前記モノマーは、オクタデシルジメチルクロロシラン、トリ(トリメチルシロキシ)シリルエチル−ジメチルクロロシラン、オクチルジメチルクロロシランからなる群から選択される構成要素。
【請求項11】
前記疎水性層が140°の接触角を有する、請求項10に記載の構成要素。
【請求項12】
前記疎水性層が少なくとも400nmの厚さを有する、請求項10に記載の構成要素。
【請求項13】
前記疎水性層の厚さが1600nmである、請求項12に記載の構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載された実施形態は一般に、化学機械研磨ツール内で使用するための構成要素に関し、この構成要素は、構成要素の表面に配された疎水性層を含む。
本開示は一般に基板の化学機械研磨に関し、より詳細には、化学機械研磨装置の構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は通常、シリコンウエハなどの基板上に、導電層、半導電層または絶縁層を逐次的に堆積させることによって形成される。それぞれの層を堆積させた後、その層をエッチングして、回路フィーチャを形成する。一連の層を順次堆積させ、エッチングすると、基板の外面または最上位面、すなわち基板の露出した表面は次第に平坦ではなくなる。この平坦でない外面は、集積回路製造業者にとって問題である。したがって、基板表面を定期的に平坦にして平らな表面を提供する必要がある。
化学機械研磨(CMP)は、一般に認められた1つの平坦化法である。CMPは通常、キャリアヘッドまたは研磨ヘッド上に基板を取り付けることを含む。次いで、基板の露出した表面を、回転する研磨パッドに向けて置く。キャリアヘッドは、制御可能な荷重、すなわち制御可能な圧力を基板に加えて、基板を研磨パッドに押し付ける。さらに、キャリアヘッドは回転して、基板と研磨面の間の追加の運動を提供することができる。
研磨剤と化学的に反応性の少なくとも1種の試剤とを含む研磨スラリを研磨パッドに供給して、パッドと基板との間の界面に研磨化学溶液を提供することができる。
研磨スラリは、CMPツールの構成要素と接触し、CMPツールの構成要素に付着することもある。時間がたつにつれて、研磨スラリは、それらの構成要素の表面をこすり、それによって構成要素粒子を除去しうる。これらの粒子の一部が研磨パッド上に落下することがあり、その結果、それらの粒子が基板を引っかくことがある。引っかき傷が、完成したデバイスの研磨中に基板欠陥の原因となることがあり、そのような基板欠陥は性能の低下につながる。加えて、スラリ粒子が、スラリと接触したCMPツールの構成要素を侵食し始める可能性もある。したがって、それらの部分の寿命は短くなり、それらの部分は、より短期間のうちに交換する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、CMPツール内で使用するための改良された構成要素が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書では、一実施形態として、CMPツール用の構成要素が開示される。この構成要素は、CMPツールが基板を研磨しているときに研磨流体にさらされる表面を有する本体と、本体のその表面に配された疎水性層とを含む。この疎水性層は、少なくとも90°の流体接触角を有する。
本明細書では、他の実施形態として、CMPツール用の構成要素が開示される。この構成要素は、リング形の本体と疎水性層とを含む。リング形の本体は、下部および上部によって画定される。下部は、下縁、上縁、外径を有する外面、内径を有する内面、および第1の疎水性層を含む。上縁は、上部に向かって延びている。内径は外径よりも小さい。外面と内面は中心軸を共有する。下部の内面には第1の疎水性層が配されている。第1の疎水性層は、下部の内面の一部分に流体が接触したときに少なくとも90°の接触角を有する。上部は、下縁、上縁、外径を有する外面、内径を有する内面、および第2の疎水性層を含む。下縁は、下部の上縁と一体である。上部の上縁は、上面の内縁から半径方向内側に上方向へ延びている。上部の外径は下部の外径よりも小さい。上部の内径は下部の内径よりも少ない。第2の疎水性層は、上部の内面の一部分に流体が接触したときに少なく90°の接触角を有する。
【0005】
本明細書では、他の実施形態として、CMPツール内の構成要素が開示される。この構成要素は、ディスク形の本体と、ディスク形の本体上に堆積させた疎水性層とを含む。ディスク形の本体は、頂面、底面、外壁、内壁およびレッジ(ledge)を有する。底面は、頂面に対して実質的に平行である。外壁は、底面に対して垂直である。外壁は、外径、第1の端および第2の端を含む。外壁の第1の端は底面と一体である。第2の端は、第1の端の反対側にある。内壁は、頂面に対して垂直である。内壁は、内径、第1の端および第2の端を含む。内径は外径よりも小さい。内壁の第2の端は頂面と一体である。レッジは、外壁および内壁によって画定される。レッジは、外壁および内壁に対して垂直である。レッジは、第1の端および第2の端を有する。レッジの第1の端は、外壁の第2の端と一体である。レッジの第2の端は、レッジの第1の端から半径方向内側にある。レッジの第2の端は、もう一方の壁の第1の端に一体として接続されている。外壁の第2の端は、外壁の第1の端から頂面に向かって半径方向内側にある。疎水性層は、ディスク形の本体の一部分に流体が接触したときに少なくとも90°の接触角を有する。
【0006】
上に挙げた本開示の諸特徴を詳細に理解することができるように、そのうちのいくつかが添付図面に示された実施形態を参照することによって、上に概要を示した本開示をより具体的に説明する。しかしながら、添付図面は本開示の典型的な実施形態だけを示したものであり、したがって添付図面を本開示の範囲を限定するものと考えるべきではないことに留意すべきである。等しく有効な別の実施形態を本開示が受け入れる可能性があるためである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】基板を研磨するための一実施形態に基づく化学機械研磨(CMP)ツールの上面図である。
図2A】その上に堆積させた疎水性層を持たない、一実施形態に基づくCMPツール構成要素の一部分の側面図である。
図2B】その上に堆積させた疎水性層を有する、一実施形態に基づくCMPツール構成要素の一部分の側面図である。
図2C図2Bに示されたCMPツール構成要素上に堆積させた疎水性層よりも厚い疎水性層を有する、一実施形態に基づくCMPツール構成要素の一部分の側面図である。
図3】その上に堆積させた疎水性層を有する、一実施形態に基づくスプラッシュカバーの側面図である。
図4】その上に堆積させた疎水性層を有する、一実施形態に基づくキャリアカバーの側面図である。
図5】その上に堆積させた疎水性層を有する、一実施形態に基づく研磨流体送達アームの側面図である。
図6】その上に堆積させた疎水性層を有する、一実施形態に基づく研磨装置の一部分の一実施形態の側面図である。
図7】その上に堆積させた疎水性層を有する、一実施形態に基づくCMPツールのパッドコンディショニングアームの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
理解を容易にするため、可能な場合には、上記の図に共通する同一の要素を示すのに同一の参照符号を使用した。特段の言及なしに、1つの実施形態に開示された要素を他の実施形態で有益に利用することが企図される。
本明細書では、CMPツールの構成要素に従って本開示の実施形態を説明する。
図1は、基板(図示せず)を研磨するための従来の化学機械研磨(CMP)ツール100を示す。CMPツール100はベース101を含むことがある。ベース101は、キャリッジ102および複数のステーション108を含む。キャリッジ102は、ベース101上のベース101の中央に配されている。キャリッジ102は、研磨ヘッド112をそれぞれが支持した複数のアーム110を含むことがある。アーム110は、キャリッジ102からそれぞれのステーション108の上に延びている。研磨ヘッド112は一般にステーション108の上方に支持される。研磨ヘッド112は、研磨中の基板を保持するように構成された凹み(図示せず)を含む。ステーション108は例えば移送ステーション113または研磨ステーション111であることがある。移送ステーション113および第1のステーション108の研磨ステーション111を示すことができるように、図1に示された2本のアーム110が破線で示されている。キャリッジ102は、研磨ヘッド112を研磨ステーション111と移送ステーション113の間で移動させることができるような態様の割出しが可能である(indexable)。
【0009】
ベース101上に、それぞれの研磨ステーション111に隣接して、コンディショニングデバイス134が配されていることがある。コンディショニングデバイス134は、研磨ステーション111の研磨面を定期的に調整して均一な研磨結果を維持する目的に使用されることがある。
【0010】
研磨ステーション111はそれぞれ流体送達アーム109を有する。流体送達アーム109は、研磨ステーション111の研磨面に研磨流体を送達して、基板を研磨することができるようにする。研磨ステーション111に研磨流体が送達されたときに、研磨流体は、CMPツールの構成要素と接触する可能性がある。研磨流体としてスラリが使用された場合、CMPツールのさまざまな構成要素にスラリ粒子が付着する。時間がたつにつれて、研磨スラリは、構成要素の表面をこすり、それによって構成要素粒子を除去しうる。これらの粒子の一部が研磨面上に落下することがあり、場合によっては、それらの粒子が、研磨中の基板上の引っかき傷の原因となることがある。これらの引っかき傷の結果、デバイス性能が低下し、欠陥が増える可能性がある。加えて、スラリ粒子が、CMPツールのそれらの構成要素を浸食し始める可能性もある。したがって、構成要素の侵食が遅れ、寿命が延びるような態様で、研磨流体とCMPツールの構成要素との間の接触を制限する必要がある。
【0011】
図2A〜Cは、外面に適用された疎水性層を有するCMPツール構成要素と疎水性層を持たないCMPツール構成要素とを比較する。
【0012】
図2Aは、外面に疎水性層を持たないCMPツール構成要素の一部分を示す。流体がCMPツール構成要素の表面と接触する角度を接触角と呼ぶ。接触角は、接着面と凝集面との間の合力によって決定される。流体が、図2Aに示されているような疎水性層を持たないCMPツール構成要素の部分の表面と接触したとき、流体とCMPツール構成要素との間の接触角206は約60°である。濡れの程度が大きく接触角が90°よりも小さい表面を親水性の表面と呼ぶ。表面の濡れの程度は接触角と反比例の関係にある。流体とCMPツール構成要素との間の接触角が小さいことは、CMPツールの濡れの程度が大きいことを示す。濡れの程度が大きいと、CMPツール構成要素の外面により多くのスラリ粒子が付着する。より多くのスラリがCMPツール構成要素と接触すると、CMPツール構成要素から一部の表面粒子を除去する可能性が増大する。除去されたこのような構成要素粒子は、研磨ステーションの研磨面上に落下し、基板を引っかく。
図2B〜2Cに示されたCMPツール構成要素は、構成要素の外面に配された疎水性層を有する。この疎水性層は、疎水性試剤の溶液もしくは乳濁液または頻繁には使用されないが疎水性試剤の蒸気で材料を処理することによって形成された単分子層(厚さ約1分子の配向した吸着層)またはラッカーフィルムの形態をとってもよい。疎水性試剤は、水との相互作用は弱いが表面には付着する物質である。この疎水性層は、プラズマチャンバ内で実行されるプラズマ処理を使用してCMPツール構成要素上に堆積させることができる。このプラズマ処理は、安価で最小限のガスを消費する低圧プラズマシステムを利用する。疎水性堆積プロセスでは、チャンバにモノマーが導入され、そのモノマーが互いに化学的に反応してポリマーを形成する。それらのポリマーは、処理後の構成要素上に疎水性層として堆積する。チャンバに導入するモノマーは例えば、ヘキサメチルジシロキサン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(プロピレン)、オクタデシルジメチルクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、トリ(トリメチルシロキシ)シリルエチル−ジメチルクロロシラン、オクチルジメチルクロロシランまたはジメチルジクロロシランとすることができる。
【0013】
流体と表面との間の接触角はさまざまな技法を使用して測定することができる。例えば、1つの技法は、平らな表面に試料、この場合はCMPツールの構成要素を置くことを含む。次いで、構成要素上に、一定の体積の水またはスラリ溶液をピペットを用いて散布する。構成要素の外面に配された疎水性層上に小滴がある間に、疎水性層上に配されたその小滴の写真を撮影する。小滴と表面との間の角度を測定して接触角を決定することができる。
疎水性層の接触角は、VCMA Optimaアナライザを使用することによっても決定することができる。VCMA Optimaアナライザは、高精度カメラおよび先進のPC技術を利用して、小滴の静止画または動画を捕捉し、接触角測定の基準とする接線を決定する。手動シリンジまたは自動シリンジが試験液を分配する。コンピュータ化された測定が、接触角を測定する際のヒューマンエラー要素を排除する。タイムセンシティブな分析に対しては動画を捕捉することができる。
【0014】
再び図2Aを参照する。図2Aは、疎水性層を持たない従来のCMPツール構成要素200上の流体の小滴202を示す。この小滴の接触角206は約60°である。小さな接触角は、構成要素200の表面の濡れの程度が大きいことを示し、濡れの程度が大きいことは、時間がたつにつれて構成要素200の浸食に寄与する可能性がある。したがって、CMPツール構成要素200の寿命は短く、望ましくない。
【0015】
図2Bは、構成要素200の頂面に配された疎水性層204を有するCMPツール構成要素200を示す。疎水性層204は、プラズマ処理または他の適当な方法によって構成要素200に適用されうる。CMPツール構成要素200の疎水性層204上に配された流体の小滴202は接触角212を有する。疎水性層204は、疎水性層を持たない従来のCMPツール100の表面の接触角よりも大きな接触角212を有する。小滴202と構成要素200上の疎水性層204との間に形成される接触角212は少なくとも90°である。図2Bに示されたより大きな接触角212は、表面に対する濡れが大幅に少ないことを示す。したがって、小滴202は、CMPツール構成要素200を濡らすよりはむしろ、構成要素200の表面を容易に転がり落ちる。したがって、構成要素200の浸食は大幅に減り、したがって構成要素200の寿命を延ばす。加えて、研磨流体がスラリである場合には、濡れが大幅に減少する結果、構成要素200に付着するスラリ粒子が減る。構成要素200に付着するスラリ粒子が減ると、スラリ粒子がCMPツール構成要素の表面粒子を除去し、最終的に研磨ステーション上に落下する可能性が低下する。
【0016】
図2Cは、図2Bに示された疎水性層204に比べてより厚い疎水性層208を有するCMPツール構成要素200を示す。疎水性層208の厚さは、構成要素200を疎水性層堆積プロセスにかける時間によって制御することができる。CMPツール構成要素200を疎水性層堆積プロセスにかける時間が長いほど、疎水性層208は厚くなる。疎水性層の厚さは400nm〜1600nmの範囲とすることができる。疎水性層208の厚さが増すと、疎水性層と流体との間に形成される接触角は大きくなる。接触角が大きくなると濡れの程度は小さくなる。したがって、形成される疎水性層が厚いほど濡れの程度は小さくなる。このより厚い疎水性層208の滴202と構成要素200との間の接触角214は約140°である。その結果、濡れの程度は小さくなる。したがって、小滴202は、CMPツール構成要素200を濡らすよりはむしろ、構成要素200の表面を容易に転がり落ちる。したがって、構成要素200の浸食は大幅に減り、したがって構成要素200の寿命を延ばす。加えて、研磨流体がスラリである場合には、濡れが大幅に減少する結果、構成要素200に付着するスラリ粒子が減る。構成要素200に付着するスラリ粒子が減ると、スラリ粒子が研磨ステーション上に落下する可能性が低下する。
【0017】
図3は、CMPツール300のスプラッシュカバー302の形態のCMPツール構成要素の一部分の断面図を示す。図3には、1つの研磨ステーション304だけが示されている。ツール300は本質的に、ツール300の1つまたは複数の構成要素が疎水性コーティングを有することを除き、図1に記載されたツール100と同様に構成されている。スプラッシュカバー302は研磨ステーション304の周囲を取り囲んでいる。スプラッシュカバー302は、研磨流体が、研磨ステーション304から振り飛ばされ、CMPツール300の他のエリアを覆うことを妨げるために使用される。スプラッシュカバー302は、本体301および本体301上に配された疎水性層324を含む。本体301は、上部306および下部308を有する。下部308は、下縁310、上縁312、外面314および内面316を含む。上縁312は、下縁310の反対側にあり、上部306に向かって上方向かつ内側方向へ延びている。外面314は外径318を有する。内面316は内径320を有する。内径320は外径318よりも小さい。外面314と内面316は中心軸を共有する。
【0018】
上部306は、下縁340、上縁342、外面344および内面346を含む。上縁342は、上部306の下縁340から半径方向内側に上方向へ延びている。上部306の下縁340は下部308の上縁312と一体化して、連続するスプラッシュカバー302を形成している。外面344は外径348を有する。上部306の外径348は下部308の外径318よりも小さい。内面346は内径350を有する。上部306の内径350は、下部308の内径320と上部306の外径348の両方よりも小さい。
スプラッシュカバー302の下にトラフ(trough)322があってもよい。トラフ322は、スプラッシュカバー302の屈曲によって下方へ導かれた過剰の流体またはスラリを集める。
【0019】
スプラッシュカバー302と接触する流体は、基板から取り除かれた材料、研磨面からの材料、研磨粒子もしくは水酸化ナトリウムなどの化学試薬、または脱イオン水を含むことがある。スプラッシュカバー302の本体301上に堆積させた疎水性層324は、浸食および粒子の張り付きを防ぐ。一実施形態では、疎水性層324が、下部308の内面316および上部306の内面346に置かれる。疎水性層324は、浸食を遅らせることによってスプラッシュカバー302の寿命を延ばす。疎水性層324が存在する結果、キャリアスプラッシュカバー302の濡れが大幅に減る。したがって、研磨流体は、スプラッシュカバーを濡らすよりはむしろ、スプラッシュカバー302の表面を容易に転がり落ちる。したがって、スプラッシュカバー302の浸食は大幅に減り、したがってスプラッシュカバー302の寿命を延ばす。加えて、研磨流体がスラリである場合には、濡れが大幅に減少する結果、スプラッシュカバー302に付着するスラリ粒子が減る。スプラッシュカバー302に付着するスラリ粒子が減ると、スラリ粒子がスプラッシュカバーの表面から粒子を除去し、研磨ステーション上に落下する可能性が低下する。
【0020】
図4は、キャリアヘッドアセンブリ400の形態のCMPツール構成要素の一実施形態の断面図を示す。キャリアヘッドアセンブリ400は、キャリアヘッド401、保持リング426、キャリアカバー403および膜409を含む。キャリアヘッド401は本体411を含む。本体411は、露出した上面402、底面404、内壁406および外壁408を有する。上面402は、底面404に対して実質的に平行である。内壁406はさらに、第1の端436、第2の端446および内径410を含む。外壁408はさらに、第1の端438、第2の端448および外径412を含む。外径412は内径410よりも大きい。内径410および外径412によってキャリアカバー403にレッジ414が形成されている。レッジ414は、上面402と底面404の両方に対して実質的に平行である。レッジ414は、外径412に対して90°であってもよい。膜409は、キャリアヘッド401の底面の下に配されており、保持リング426によって周囲を取り囲まれている。膜409は、ステーション(図示せず)間で基板を移動させるためにキャリアヘッド401が基板をピックアップするときに基板(図示せず)を取り付けるための取付け面となる。
【0021】
キャリアカバー403は、本体413および本体413上に配された疎水性層425を含む。本体413は、露出した上面402、レッジ414、壁406、408が覆われるような態様で、キャリアヘッドの上にぴったりとはまるように構成されている。キャリアカバー403は、研磨の間、研磨流体にさらされる。研磨ステーションに送達された研磨流体は、キャリアカバー403および/またはキャリアヘッド401と接触する可能性がある。研磨流体は、研磨粒子もしくは水酸化ナトリウムなどの化学試薬を含むスラリとすることができ、または脱イオン水とすることができる。疎水性層425は、浸食を遅らせることによってこれらの構成要素の寿命を延ばす。疎水性層425が存在する結果、キャリアヘッド401およびキャリアカバー403の濡れが大幅に減る。したがって、研磨流体は、キャリアヘッド401およびキャリアカバー403を濡らすよりはむしろ、キャリアヘッド401およびキャリアカバー403の表面を容易に転がり落ちる。したがって、キャリアヘッド401およびキャリアカバー403の浸食は大幅に減り、したがってキャリアヘッド401およびキャリアカバー403の寿命を延ばす。加えて、研磨流体がスラリである場合には、濡れが大幅に減少する結果、キャリアヘッド401およびキャリアカバー403に付着するスラリ粒子が減る。キャリアヘッド401およびキャリアカバー403に付着するスラリ粒子が減ると、スラリ粒子が構成要素の表面から粒子を除去し、研磨ステーション上に落下する可能性が低下する。
【0022】
図5は、研磨流体送達アームアセンブリ500の形態のCMPツール構成要素の側面図を示す。研磨流体送達アームアセンブリ500は、流体送達アーム503、ベース部材502、ノズル504および流体送達ホース(図示せず)を含む。流体送達アーム503は、本体501および本体501上に配された疎水性層508を含む。本体501は、細長い頂面506、第1の側面510、第1の側面510の反対側の第2の側面512、底部514、第1の端580および第2の端582を含む。第1の端580はベース部材502に結合されている。細長い面506は、第1の端580から第2の端582まで延びている。第2の端582は、研磨ステーション(図示せず)の上に張り出している。ノズル504は、本体501の底部514に位置している。ノズル504は、基板(図示せず)の表面に研磨流体を供給する。流体送達ホースは、基板が研磨される研磨面上に散布するために研磨流体をノズル504まで運ぶ。
【0023】
本体501の全体を疎水性層508で覆ってもよい。あるいは、第1の側面510、反対側の第2の側面512、細長い頂面506または底部514のうちの少なくとも1つを疎水性層508で覆ってもよい。基板を研磨する際にノズル504が研磨ステーション111の研磨面に研磨流体を供給したときに、研磨流体は、流体送達アーム503と接触する可能性がある。疎水性層508が存在する結果、流体送達アーム503の濡れが大幅に減る。したがって、研磨流体は、CMPツール流体送達アーム503を濡らすよりはむしろ、流体送達アーム503の表面を容易に転がり落ちる。したがって、流体送達アーム503の浸食は大幅に減り、したがって流体送達アーム503の寿命を延ばす。加えて、研磨流体がスラリである場合には、濡れが大幅に減少する結果、流体送達アーム503に付着するスラリ粒子が減る。流体送達アーム503に付着するスラリ粒子が減ると、スラリ粒子が構成要素の表面から粒子を除去し、研磨ステーション上に落下し、基板を引っかく可能性が低下する。したがって、デバイスの品質および歩留りが向上する。
【0024】
図6は、基板610を研磨するための研磨装置アセンブリ600の一部分の一実施形態を示す。研磨装置アセンブリ600のこの部分は、キャリッジ602、複数のアーム612、アームカバー621および研磨ヘッド606を含む。アーム612はそれぞれ本体613を有する。本体613は、第1の端614および第2の端616を含む。本体613の第1の端614はキャリッジ602に結合されている。本体613の第2の端616は、キャリッジ602から、研磨ステーション(図示せず)の上に延びている。本体613の第2の端616は、研磨ヘッド606に結合されている。
【0025】
研磨ヘッド606は、本体607および本体607上に配された疎水性層604を含む。本体607には凹み608が形成されている。研磨ヘッド606は、研磨ステーションに面した凹み608の中に基板610を保持する。研磨ヘッド606は、処理の間、基板610を研磨材料(図示せず)に押し付けることができる。基板610を研磨材料に押し付け手いる間、研磨ヘッド606は静止していてもよく、または、回転し、分離し、軌道を描いて移動し、直線的にもしくは運動の組合せで移動してもよい。
【0026】
アームカバー621は、第1の端614から第2の端616までのアーム612の上に置かれてもよい。アームカバー621はさらに、アーム612を流体から保護してもよい。アームカバー621は、疎水性層604がその上に配された本体619を含む。本体619は、第1の端680および第2の端682を有する。アーム612の上にアームカバー621をぴったりとはめることができるような態様で、本体619の幅はアーム612の幅よりもわずかに広く、本体619の長さは、アーム612の長さよりもわずかに長い。研磨ヘッド606およびアームカバー621上に疎水性層604が存在する結果、アームカバー621および研磨ヘッド606の濡れが大幅に減る。したがって、研磨流体は、CMPツール研磨ヘッド606およびアームカバー621を濡らすよりはむしろ、研磨ヘッド606およびアームカバー621の研磨ヘッド606およびアームカバー621を容易に転がり落ちる。したがって、研磨ヘッド606およびアームカバー621の浸食は大幅に減り、したがって、研磨ヘッド606およびアームカバー621の寿命を延ばす。加えて、研磨流体がスラリである場合には、濡れが大幅に減少する結果、研磨ヘッド606およびアームカバー621に付着するスラリ粒子が減る。研磨ヘッド606およびアームカバー621に付着するスラリ粒子が減ると、スラリ粒子が構成要素の表面から粒子を除去し、研磨ステーション上に落下し、基板を引っかく可能性が低下する。したがって、疎水性層の結果、デバイスの品質および歩留りが向上する。
【0027】
図7は、パッドコンディショニングアームアセンブリ700の形態のCMPツール構成要素の側面図である。パッドコンディショニングアームアセンブリ700は本体701を含み、本体701は、ベース702、パッドコンディショニングアーム704およびコンディショナーヘッド706を有する。パッドコンディショニングアーム704は、ベース702に結合された第1の端720、およびコンディショナーヘッド706に結合された第2の端722を有する。コンディショナーヘッド706はさらに本体703含む。本体703は、その上に配された疎水性層714を有する。本体703は、コンディショニングディスク712を保持する回転可能でかつ垂直に移動可能なエンドエフェクタ710に結合されていてもよい。コンディショニングディスク712は、ダイアモンド研磨剤が埋め込まれた底面を有し、この底面を、パッドに再びテクスチャを与えるため研磨パッドの表面にこすり付けることができる。コンディショニングディスク712は、磁石(図示せず)または機械式の留め具(図示せず)によってエンドエフェクタ710の中に保持することができる。エンドエフェクタ710とコンディショナーヘッド706の間にジンバル機構(図示せず)が結合されていてもよい。このジンバル機構は、エンドエフェクタ710が、パッドコンディショニングアーム704に対してある角度に傾くことを可能にする。
【0028】
コンディショナーヘッド706内の垂直アクチュエータ(図示せず)、例えばエンドエフェクタ710に下向きの圧力を加えるように配置された加圧可能なチャンバ708によって、エンドエフェクタ710の垂直運動およびコンディショニングディスク712の圧力制御を提供することができる。
【0029】
研磨工程の間、パッドコンディショニングアームアセンブリ700の構成要素は、使用された流体またはスラリと接触しやすい。時間がたつにつれて、この流体またはスラリとの連続接触の結果、それらの構成要素が浸食される可能性がある。疎水性層714が存在する結果、アーム704およびパッドコンディショナーヘッド706の濡れが大幅に減る。したがって、研磨流体は、研磨パッドコンディショニングアーム704およびコンディショナーヘッド706を濡らすよりはむしろ、研磨パッドコンディショニングアーム704およびコンディショナーヘッド706の表面を容易に転がり落ちる。したがって、研磨パッドコンディショニングアーム704およびコンディショナーヘッド706の浸食は大幅に減り、したがって研磨パッドコンディショニングアーム704およびコンディショナーヘッド706の寿命を延ばす。加えて、研磨流体がスラリである場合には、濡れが大幅に減少する結果、研磨パッドコンディショニングアーム704およびコンディショナーヘッド706に付着するスラリ粒子が減る。研磨パッドコンディショニングアーム704およびコンディショナーヘッド706に付着するスラリ粒子が減ると、スラリ粒子が構成要素の表面から粒子を除去し、研磨ステーション上に落下し、基板を引っかく可能性が低下する。したがって、デバイスの品質および歩留りが向上する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
CMPツールの構成要素上に疎水性層を堆積させることにより、構成要素の浸食が遅れ、それらの構成要素の寿命が延びる。
【0031】
以上の説明は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱することなく本開示の他の追加の実施形態を考案することができる。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7