(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661801
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
G01N35/00 B
【請求項の数】23
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-566039(P2018-566039)
(86)(22)【出願日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】JP2018001312
(87)【国際公開番号】WO2018142944
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2019年7月22日
(31)【優先権主張番号】特願2017-19185(P2017-19185)
(32)【優先日】2017年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大草 武徳
(72)【発明者】
【氏名】山下 善寛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊輔
【審査官】
本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−201162(JP,A)
【文献】
実開平04−116766(JP,U)
【文献】
特開2011−191117(JP,A)
【文献】
特表2009−525847(JP,A)
【文献】
特開2016−031334(JP,A)
【文献】
実開昭61−63140(JP,U)
【文献】
特開2010−139332(JP,A)
【文献】
特開2012−112832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
B01L 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換部を有する温調機構をそれぞれに有する、第一の温度制御ユニット及び第二の温度制御ユニットと、
吸気口から吸引された空気を前記熱交換部に供給する吸気ダクトと、
前記吸気ダクトと分離して形成され、前記熱交換部からの空気を排気口に向けて排気する排気ダクトと、
前記第一の温度制御ユニットを第一の目標温度、前記第二の温度制御ユニットを第一の目標温度よりも高い第二の目標温度となるように、それぞれの温調機構を制御する制御装置と、を備え、
前記第一の温度制御ユニットが、前記第二の温度制御ユニットよりも前記吸気口に近い位置に配置される、自動分析装置。
【請求項2】
周囲環境温度を測定するセンサを備え、
予め所定の周囲環境温度範囲が設定されており、
前記制御装置は、前記第一の温度制御ユニットが前記周囲環境温度範囲よりも常に低い目標温度になるよう、当該第一の温度制御ユニットの温調機構を制御する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記センサにより測定される周囲環境温度によって、前記第二の温度制御ユニットの温調機構に対して加温制御と冷却制御を切り替えるよう制御する、請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記第一及び第二の温度制御ユニットよりも高い温度精度で管理される第三の温度制御ユニットを備え、
当該第三の温度制御ユニットは、前記排気ダクトの上面投影領域から離れた位置に配置される、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記吸気ダクトの吸気口と前記排気ダクトの排気口が、装置の相向かい合う側面に設けられている、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記吸気ダクトの吸気口を装置の前面側に配置し、かつ、前記排気ダクトの排気口を装置の背面側に配置する、請求項5記載の自動分析装置。
【請求項7】
分析に使用する消耗品を保管するユニットを有し、
当ユニットが、吸気ダクトの吸気口から見て、吸気ダクト内の空気の流れの下流に位置し、かつ、排気ダクトの排気口から見て、排気ダクト内の空気の流れの上流に位置する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記排気ダクトの排気口に、排気ダクトから装置外へ向かう気流を作るファンを設ける、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記吸気ダクトの吸気口に、空気中の異物を除去するフィルタを設ける、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記第一の温度制御ユニットは、試料の分析に用いる試薬を保冷保管する試薬保管庫である、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記第二の温度制御ユニットは、試料と試薬の反応液を測定する測定ユニットである、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記第三の温度制御ユニットは、試料と試薬の反応を促進させる反応促進ユニットである、請求項4記載の自動分析装置。
【請求項13】
熱交換部を有する温調機構をそれぞれに有する、第一の温度制御ユニット及び第二の温度制御ユニットと、
吸気口から吸引された空気を前記熱交換部に供給する吸気ダクトと、
前記熱交換部からの空気を排気口に向けて排気する排気ダクトと、
前記第一の温度制御ユニットを第一の目標温度、前記第二の温度制御ユニットを第一の目標温度よりも高い第二の目標温度となるように、それぞれの温調機構を制御する制御装置と、
前記第一及び第二の温度制御ユニットよりも高い温度精度で管理される第三の温度制御ユニットと、を備え、
前記第一の温度制御ユニットは、前記第二の温度制御ユニットよりも前記吸気口に近い位置に配置され、
前記第三の温度制御ユニットは、前記排気ダクトの上面投影領域から離れた位置に配置される、自動分析装置。
【請求項14】
周囲環境温度を測定するセンサを備え、
予め所定の周囲環境温度範囲が設定されており、
前記制御装置は、前記第一の温度制御ユニットが前記周囲環境温度範囲よりも常に低い目標温度になるよう、当該第一の温度制御ユニットの温調機構を制御する、請求項13記載の自動分析装置。
【請求項15】
前記制御装置は、前記センサにより測定される周囲環境温度によって、前記第二の温度制御ユニットの温調機構に対して加温制御と冷却制御を切り替えるよう制御する、請求項14記載の自動分析装置。
【請求項16】
前記吸気ダクトの吸気口と前記排気ダクトの排気口が、装置の相向かい合う側面に設けられている、請求項13記載の自動分析装置。
【請求項17】
前記吸気ダクトの吸気口を装置の前面側に配置し、かつ、前記排気ダクトの排気口を装置の背面側に配置する、請求項16記載の自動分析装置。
【請求項18】
分析に使用する消耗品を保管するユニットを有し、
当ユニットが、吸気ダクトの吸気口から見て、吸気ダクト内の空気の流れの下流に位置し、かつ、排気ダクトの排気口から見て、排気ダクト内の空気の流れの上流に位置する、請求項13記載の自動分析装置。
【請求項19】
前記排気ダクトの排気口に、排気ダクトから装置外へ向かう気流を作るファンを設ける、請求項13記載の自動分析装置。
【請求項20】
前記吸気ダクトの吸気口に、空気中の異物を除去するフィルタを設ける、請求項13記載の自動分析装置。
【請求項21】
前記第一の温度制御ユニットは、試料の分析に用いる試薬を保冷保管する試薬保管庫である、請求項13記載の自動分析装置。
【請求項22】
前記第二の温度制御ユニットは、試料と試薬の反応液を測定する測定ユニットである、請求項13記載の自動分析装置。
【請求項23】
前記第三の温度制御ユニットは、試料と試薬の反応を促進させる反応促進ユニットである、請求項13記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液や尿などの生体由来の試料を定量的または定性的に分析する臨床用の自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床用の自動分析装置において、分析反応過程中の反応環境温度を各反応過程に適切な温度に制御することは、分析性能の向上に良い影響を及ぼす。適切な温度は各反応過程に依存して決められる。各反応過程を遂行する各ユニットは、各反応過程に適切な温度になるように反応環境温度を制御する。そのため、各ユニットの目標温度と要求される温度精度はそのユニットが担当する反応過程に依存し、同一の自動分析装置内に様々な目標温度と温度精度が要求されるユニットが存在する。
【0003】
ユニットに要求される温度精度は、目標温度に対する上限温度と下限温度との差が2〜3度と比較的大きなレンジが許容されるユニットもあれば、0.3度以下しか許容されないユニットも存在する。また、各ユニットの目標温度は、装置が設置されている環境の温度、すなわち、使用環境温度よりも高いユニットもあれば、低いユニットも存在する。
【0004】
一方、分析装置を使用する際の運用コストを軽減する要求は強く、その要求の一つとして、装置が設置時に占有するスペースに対して、単位スペースあたりの分析処理能力を増加することが求められている。単位スペース当たりの分析処理能力を増加させる方法のひとつとして、処理能力を維持したまま装置サイズを小さくすることが考えられる。その場合、装置内のユニット間の間隔をより小さくして装置内に配置する必要があり、結果として、ユニット間で相互に熱の影響を及ぼしやすくなっている。
【0005】
特許文献1には、「効率的な排熱を実現すると共に、反応試薬ユニットの冷却手段を効率的に機能させる」ことを目的とし、「筐体を低温部である上部と高温部である下部に仕切り、熱を発生させる電源・制御ユニットおよびダクトを下部に収容している。また、冷却手段から発生する熱をダクトから筐体外に排熱させ、電源・制御ユニットから発生する熱を筐体外に排熱される」ように構成された自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−083979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
目標温度が異なるユニット間で熱の移動が発生し、互いのユニットの制御温度に影響を及ぼし合うと、目標温度に到達するまでの時間の延長や、温度制御に必要とするエネルギーの増大など、温度制御の効率が低下する可能性がある。
【0008】
特許文献1に記載の方式ではダクトを通して装置外に排熱することは記載されているが、ユニット間で発生する熱の相互影響を軽減するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本願発明の構成は以下の通りである。すなわち、熱交換部を有する温調機構をそれぞれに有する、第一の温度制御ユニットおよび第二の温度制御ユニットと、吸気口から吸引された空気を前記熱交換部に供給する吸気ダクトと、前記熱交換部からの空気を排気口に向けて排気する排気ダクトと、前記第一の温度制御ユニットを第一の目標温度、前記第二の温度制御ユニットを第一の目標温度よりも高い第二の目標温度となるように、それぞれの温調機構を制御する制御装置と、を備え、前記第一の温度制御ユニットが、前記第二の温度制御ユニットよりも前記吸気口に近い位置に配置されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
異なる目標温度を有する複数のユニットの装置内配置を最適化することで、ユニット間で及ぼす温度影響を軽減し、効率的な温度制御を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】冷却する温度制御ユニットと加熱する温度制御ユニットの配置
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施例では、自動分析装置を一例として説明する。自動分析装置には、例えば生化学自動分析装置、免疫自動分析装置や遺伝子自動分析装置などが挙げられる。ただし、これは本発明の単なる一例であって、本発明は以下説明する実施の形態に限定されるものではなく、サンプルと試薬を反応させて当該反応の結果に基づいてサンプルの分析を行う装置を広く含む。例えば、臨床検査に用いる質量分析装置や血液の凝固時間を測定する凝固分析装置なども含まれる。また、これらと生化学自動分析装置、免疫自動分析装置などとの複合システム、またはこれらを応用した自動分析システムにも適用可能である。
【0013】
図1は、本実施例のユニット最適配置を適用した自動分析装置の概略構成図である。
【0014】
自動分析装置では、分析対象の試料が収容された採血管等の検体容器101を検体吸引位置110まで搬送する検体搬送ユニット102、分析に使用する試薬が入っている試薬容器103を、当試薬温度がある温度範囲内になるよう温度制御する試薬保管ユニット104、検体容器内の試料を反応容器に分注する検体分注ユニット105、試薬容器内の試薬を反応容器に分注する試薬分注ユニット106、検体と試薬が混合された反応液を収容する反応容器を設置し、当反応液の液温がある温度範囲内に入る様に制御する反応促進ユニット107、反応促進ユニットで反応が促進された反応液中の物質の量を、光学的に測定する測定ユニット108とから構成される。また、自動分析装置が配置された周囲環境の温度を測定するための環境温度測定センサが配置されている。これらのユニットは制御装置113によって制御される。
【0015】
検体搬送ユニット102は、例えば検体容器101を一本あるいは複数本搭載した検体ラックや、ディスクの円周上に配置した検体ディスクでも良い。検体ラックである場合、搬送ベルト機構やロボットアーム等の搬送装置によって、当該検体ラックは検体分注ユニットの吸引位置まで搬送される。
【0016】
試薬保管ユニット104は、例えば複数本の試薬容器を円周上に配置させ、回転させることで所望の位置に任意の試薬容器を搬送する者であっても良いし、試薬容器を一列あるいは縦横に複数列ずつ配置した構成であっても良い。
【0017】
測定ユニット108では、当ユニット内の測定流路内の反応液を対象に光学的な測定を行うが、その測定に際し、当流路内の当反応液の温度がある温度範囲内に制御された状態で測定する。測定動作の一例としては、反応液の吸光度の計測や、反応液に試薬を添加したり電圧を印加した際の発光量の測定、反応液中の粒子数の計測、あるいは反応液が電極膜に接触した際の電流値や電圧値の変動を計測することがあげられる。そのため測定ユニット108内には、光電子増倍管や光度計等の測光器や、CCDなどの撮像素子、電流値や電圧値の変動を測定する電流計、電圧計などが設けられている。
【0018】
反応促進ユニット107は、反応容器の温度を所定の温度範囲内に保つことによって、安定した反応を進行させる。例えば、円周上に複数の反応容器を配置した状態でヒータ等で周囲を加温することにより温度コントロールするインキュベータであっても良いし、一定の温度範囲にコントロールされた液体が循環する槽内に反応容器を浸漬させる恒温槽であっても良い。
【0019】
分析装置に要求される分析性能によっては、検体間のキャリーオーバの影響を考慮して、検体分注ユニットが検体を分注する際、検体と接触する部分に検体が変わるごとに交換可能な分注チップを用いたり、検体と試薬とを反応させる反応容器に、毎回、未使用の反応容器を用いる場合がある。その際、一度使用した分注チップや反応容器は廃棄される。ある時間分の分析を実行するのに必要な新しい分注チップや反応容器が消耗品保管ユニット111に保管されており、消耗品搬送ユニット112によって適時、それらを使用する場所に供給される。
【0020】
次に
図2に本発明において温度制御が必要なユニットとダクトの配置を示す。
【0021】
反応促進ユニット107は、検体と試薬とが混合された反応液の反応を促進するため、反応液の温度を、それが反応している間、ある範囲内に制御する必要がある。その目標温度Taは例えば37℃で、許容される温度精度TaΔは±0.5℃未満と極めて精度の高い温度制御が求められる。
【0022】
測定ユニット108は、測定時の測定流路内の反応液の目標温度Tbは28℃で、許容される温度精度TbΔは±1℃未満程度が要求される。
【0023】
試薬保管ユニット104は、試薬を適切な温度状態で保管しておく必要がある。そのため、試薬保管ユニット104内は、当ユニットに設置されている試薬の目標温度Tdは例えば7.5℃で、温度精度TdΔは±2.5℃が要求される。すなわち、試薬温度が5〜10℃の範囲に維持される様に温度制御が行われる。
【0024】
この様に、自動分析装置では、目標とする温度や温度精度が異なるユニットを同一の装置内に配置されている。
【0025】
一般的に、臨床用自動分析装置は、それを使用する周囲環境の温度、すなわち使用環境温度Tが規定されており、その使用環境温度範囲内で使用することが求められる。その温度範囲は例えば、15℃から32℃と各ユニットに求められる温度のレンジよりも広い場合がある。そのため、各ユニットの目標温度と使用環境温度によって、各ユニットに求められるのが冷却制御か加熱制御かが異なってくる。
【0026】
例えば、試薬保管ユニット104は、その目標温度Tdが7.5℃である。そのため、一番低い使用環境温度15℃の環境下で使用されている場合でも冷却される必要がある。すなわち、装置が使用環境温度内で使用されている限り、常に冷却制御が必要になる。反応促進ユニット107は、その目標温度Taが37℃であり、装置の一番高い使用環境温度32℃の環境下で使用されている場合でも加熱制御が必要になる。すなわち、装置が使用環境温度内で使用されている場合、常に加熱制御が必要になる。一方、測定ユニット108ではその目標温度Tbが28℃であり、使用環境温度Tが15℃の時は加熱制御が必要になり、使用環境温度が32℃の時は冷却制御が必要になる。
【0027】
冷却制御が必要になるユニットでは、温度制御のための温調機構として、ペルチェ素子などの熱交換素子を使用することができる。熱交換素子は、温度を制御するユニットと当該ユニットの外部との間で熱交換を行う熱交換部を備えており、熱交換素子がユニットに対して冷却制御をおこなう場合、熱交換部が当該ユニットの外部へ排熱を行う。逆に、熱交換素子がユニットに対して加熱制御をする場合、熱交換部は当該ユニットの外部から吸熱する。これらの熱交換部で発生する排熱や吸熱が、温度制御対象のユニット以外の、他のユニットの温度に影響を及ぼすとその当該他のユニットの温度制御が不安定になったり、温度制御により多くのエネルギーが必要になったりする可能性がある。この影響を軽減するため、これらのユニットの熱交換で発生した熱を装置外に排出するための熱交換用の空気が流れる吸気ダクトや排気ダクトが設けられている。
【0028】
図2に本発明における自動分析装置内のダクト配置状態を示す。本発明のダクトは分離して形成される吸気用ダクト201と排気用ダクト202とからなる。
【0029】
吸気用ダクト201は、外気を取り込むためのダクト吸気口201−1を装置の側面に有する。また、吸気用ダクト201から取り込んだ外気を試薬保管ユニット104と測定ユニット108にそれぞれ設けられた温度制御ユニット104−1、108−1に送り込むため、ユニット吸気口104−2、108−2に接続されている。
【0030】
排気用ダクト202は、装置の背面に排気するためのダクト廃棄口202−1を備える。また、試薬保管ユニット104と測定ユニット108から発生した排熱を送り出すため、各ユニットに設けられた温度制御ユニット104−1、108−1のそれぞれのユニット排気口104−3、108−3に接続されている。
【0031】
本願発明におけるダクト内を流れる気体の動きについて説明する。吸気用ダクトのダクト吸気口201−1から取り込まれた空気201−2の一部は、吸気用ダクト201を通じて試薬保管ユニット104のユニット吸気口104−2に到達する(矢印104−4)。他の一部は、吸気用ダクト201を通じて測定ユニットのユニット吸気口108−2に到達する(矢印108−4)。ユニット吸気口104−2、108−2に取り込まれた空気はユニット排気口104−3、108−3に向かって移動する間に、温度制御ユニット104−1、108−1との間で熱交換を行なう。
【0032】
ユニット排気口から出てくる空気(矢印104−5、108−5)は、各温度制御ユニットから温度影響を受けている。例えば、温度制御ユニットが冷却制御をしている場合は、温度制御ユニットから空気へ排熱が行われ、ユニット吸気口よりもユニット排気口の空気は高温となる。一方、温度制御ユニットが加熱制御をおこなう場合は、空気から温度制御ユニットへ吸熱が行われ、ユニット吸気口よりもユニット排気口側の空気は低温となる。ユニット排気口から排出された空気は、排気用ダクト202を通じてダクト排気口202−1から装置外へ排気される(矢印104−5、108−5)。
【0033】
各温度制御ユニット104−1、108−1を通過する間に空気と熱交換部の間で熱交換が行われるため、排気用ダクト202内を流れる空気の温度は安定していない。そのため、排気ダクトの周囲に断熱材を巻くことにより、排気ダクト内の不安定な空気温度が装置におよぼす影響を軽減することができる。
【0034】
また、より高精度の温度管理が要求されるユニット(例えば反応促進ユニット107)は、当排気ダクト202と物理的に離れた位置に配置することで、排気ダクトを流れる排気の温度の影響を軽減することが可能になる。特に装置内は、空気の対流による影響を大きく受け、垂直方向(重力方向)の熱移動が多い。そのため、装置を重力方向から見た上面図内にて、排気用ダクト202の投影面と、高精度の温度制御が要求される反応促進ユニット107の投影面が重ならないように、排気用ダクト202と反応促進ユニット107をそれぞれ配置する。これにより、反応促進ユニット107が排気ダクトから受ける熱の影響を抑え、効率的で高精度な温度制御が可能となる。なお、高精度の温度管理が要求されるユニットが別に在る場合も反応促進ユニットと同様に、排気ダクトから物理的に離れた位置に配置することが有効である。
【0035】
次に、
図3(a),(b)を用いて、装置の環境温度Tgよりも低い目標温度を持つ複数のユニットの配置について説明する。
【0036】
本実施例は一例として、装置の環境温度Tgよりも目標温度が低い、試薬保管ユニット305と測定ユニット306を例として説明する。試薬保管ユニットの目標温度はTe、測定ユニットの目標温度はTfとする。これらのユニットを目標温度に制御するため、それぞれの温度制御ユニット305−1,306−1は冷却制御をおこなう。Te<Tfの場合、試薬保管ユニット305からは測定ユニット306からよりも、より多くの排熱が発生すると考えられる。
【0037】
一般的に、自動分析装置には多数のモータや電磁弁などの熱源が配置されており、装置内は装置外よりも高い温度になっていることが多い。そのため、
図3(b)に示すように、ダクト吸気口201−1から吸気用ダクト201内に取り込まれた空気201−2の温度301は、ダクト吸気口では使用環境温度Tgと同じだが、ダクト吸気口から離れるほど高くなる傾向がある。
【0038】
ユニット吸気口から流入する空気(矢印305−4、306−4)の温度と、温度制御ユニットの熱交換部の温度309、310との温度差311、312が大きいほど、より多くの熱を効率的に排気することができる。そのため、目標温度が低い試薬保管ユニット305をダクト吸気口201−1に近い位置に配置する。測定ユニット306は目標温度と装置の使用環境温度との差が比較的小さいため、熱交換部で排気する熱量も小さく、空気との温度差が小さくても十分、効率的に熱交換をすることができる。
【0039】
これにより、装置全体の熱交換効率を上げることが可能となる。また、試薬保冷ユニット305と測定ユニット306に限らず、冷却を必要とする複数の温度制御ユニットを装置内に配置する場合には、より目標温度と装置の使用環境温度Tgとの差が大きいユニットを、ダクト吸気口に近い位置に設置することで、装置全体の熱交換の効率を上げることができる。
【0040】
次に、
図4(a),(b)を用いて、装置の使用環境温度Tjよりも低い目標温度を有するユニットと、高い目標温度を有するユニットを配置する場合の配置位置を説明する。
【0041】
本実施例は一例として、装置の環境温度Tjよりも低い目標温度(Th)を有する試薬保管ユニット405と、環境温度よりも高い目標温度(Ti)を有する測定ユニット406を例として説明する。
【0042】
高い目標温度(Ti)を持つ測定ユニット406は、温度制御ユニット406−1が加熱制御をおこなうため、空気はユニット吸気口406−2からユニット排気口406−3へ流れる間に吸気される。そのため、ユニット吸気口406−2から入ってくる空気(矢印406−4)の温度が高いほど、当ユニットで行われる熱交換の効率は良くなる。
【0043】
以上より、目標温度Thで冷却制御をする試薬保管ユニット405と、目標温度Tiで加熱制御をしている測定ユニット406を装置内に配置する場合、冷却制御を必要とする試薬保管ユニット405をダクト吸気口201−1に近い位置に設置し、加熱制御を必要とする測定ユニット406をダクト吸気口201−1から離れた位置に設置することが望ましい。
【0044】
これにより、冷却を必要とする温度制御ユニットには低い温度407の空気を供給することができ(矢印405−4)、加熱制御を必要とする温度制御ユニットには、装置内で暖められた高い温度の空気を供給することができる(矢印406−4)。こうすることで、各熱交換部と空気の温度差411、412を大きくすることができ、熱交換の効率を上げられる。また、試薬保冷ユニット405と測定ユニット406に限らず、冷却処理が必要な複数のユニットと加熱処理が必要な複数のユニットを装置上に設置する場合、冷却処理が必要なユニットを、加熱処理が必要なユニットよりもダクト吸気口に近い位置に配置し、かつ、冷却動作をする複数のユニットのうち、目標温度と使用環境温度との差がより大きいユニットを、ダクト吸気口に近い位置に設置することで、装置全体の熱交換の効率を上げることができる。同様に、加熱動作をする複数の温度制御ユニットのうち、目標温度と使用環境温度との差が大きいユニットを、ダクト吸気口から離れた位置に設置することで、熱交換の効率をより上げることができる。
【0045】
本発明の考え方をさらに拡張すれば、使用環境温度にかかわらず常に冷却が必要なユニットA、使用環境温度にかかわらず常に加熱が必要なユニットB、使用環境温度によって冷却と過熱を切り替えて制御する必要があるユニットCを分析装置上に配置する場合には、ダクト吸気口に対して、A→C→Bの順に、吸気ダクトの上面投影経路に沿って配置することが望ましい。また、ユニットA〜Cよりも高い温度精度で制御すべきユニットDが有る場合には、ユニットA〜Cの排熱が通る排気ダクトの上面投影経路から離れた位置に配置することが望ましい。
【0046】
また、吸気用ダクトから供給される空気を排熱に使用する場合、より温度の低い空気を吸気した方が、熱交換効率が良い。そのためダクト吸気口から吸気される空気は、装置からの熱影響を受けていないことが好ましい。より望ましくは、吸気用ダクトのダクト吸気口は装置の前面に位置させることで、吸気される空気が装置から受ける熱の影響を少なくして、より使用環境温度に近い温度の空気を吸気することができ、温度制御ユニットでの温度制御の効率を向上させることができる。この場合、ダクト排気口は装置の背面に位置させる。
【0047】
また、空気中を舞うホコリ等の異物がダクト吸気口を介して装置内に吸い込まれないよう、ダクト吸気口にはホコリを取り除くためのフィルタが設けられることが望ましい。この場合、フィルタにたまったホコリは定期的に掃除、除去されることが望ましく、フィルタへのアクセスを考えると吸気口はユーザがアクセス容易な装置前面に設けることが望ましい。
【0048】
また、排気用ダクトおよびダクト排気口は、温度制御ユニットの熱交換部で排熱や吸熱の影響を受けた空気が流れているため、その温度は安定していない。装置内に配置している温度制御ユニットへの影響を軽減するため、断熱材をダクトおよびダクト排気口に追加することが好ましい。具体的には、断熱材をダクトの周囲に巻き付けることが考えられる。また、ダクト排気口を、ダクト吸気口を設けた装置の面の対面に設けることで、当排気口から装置外に排気された空気が装置から離れた場所に拡散し、また、ダクト排気口から装置外に排気された空気がダクト吸気口から再吸気され、ユニットの温度に影響を与えることを防ぐことができる。
【0049】
また、ダクト排気口には、排気用ダクト内の空気を積極的に装置外へ流すためのファンを設けても良い。これにより、排気ダクト内に存在する、温度不安定な空気を装置外により効率的に排出することができ、当排気が装置内の温度制御を必要とするユニットに及ぼす影響を軽減することができる。
【0050】
なお、本実施例では、免疫自動分析装置を一例として説明したが、先にも述べたように他の分析装置にも適用することが可能である。適用することができる装置としては、生化学分析装置、遺伝子分析装置、質量分析装置、凝固分析装置などがあげられる。また、分析装置以外としては、生体試料の前処理を行うための検体前処理システムなどがあげられる。このような装置においては、例えば、試薬を保管するための試薬保管庫、生体試料を保管するための試料保管庫、試薬と試料の反応液を保管する反応液保管部、試薬や試料等の液体に対して攪拌処理を行うための攪拌機構、反応液中の狭雑物を除去するための分離機構、反応液に対して測定処理を施すための測定機構、生体試料に遠心処理を施すための遠心処理機構、生体試料に前処理を施す前処理機構等、種々の温度管理機構が含まれる。いずれの機構であったとしても、本発明を適用し、装置の環境温度や目標温度との関係で配置を決定することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
101 検体容器、102 検体搬送ユニット、103 試薬容器、104 試薬保管ユニット、104−1 試薬保管ユニットの温度制御ユニット、104−2 試薬保管ユニットのユニット吸気口、104−3 試薬保管ユニットのユニット排気口、104−4 吸気用ダクトから試薬保管ユニットのユニット吸気口に取り込まれる空気、104−5 試薬保管ユニットのユニット排気口から排気用ダクトに排気される空気、105 検体分注ユニット、106 試薬分注ユニット、107 反応促進ユニット、108 測定ユニット、108−1 測定ユニットの温度制御ユニット、108−2 測定ユニットのユニット吸気口、108−3 測定ユニットのユニット排気口、108−4 吸気用ダクトから測定ユニットのユニット吸気口に取り込まれる空気、108−5 測定ユニットのユニット排気口から排気用ダクトに排気される空気、110 検体吸引位置、111 消耗品保管ユニット、112 消耗品搬送ユニット、113 制御装置、114 環境温度測定センサ、201 吸気用ダクト、201−1 ダクト吸気口、201−2 ダクト吸気口から吸気された空気、202 排気用ダクト、201−1 ダクト排気口、301 吸気用ダクト内の空気の温度、305 温度制御ユニット、306 温度制御ユニット、302 使用環境温度、305−1 温度制御ユニット、306−2 温度制御ユニット、305−2 ユニット吸気口、306−2 ユニット吸気口、305−3 ユニット排気口、306−3 ユニット排気口、305−4 ユニット吸気口から入る空気、306−4 ユニット吸気口から入る空気、307 ユニット吸気口の空気の温度、308 ユニット吸気口の空気の温度、309 熱交換部の温度、310 熱交換部の温度、311 吸引口の空気の温度と熱交換部の温度差、312 吸引口の空気の温度と熱交換部の温度差、401 吸気用ダクト内の空気の温度、405 温度制御ユニット、406 温度制御ユニット、402 使用環境温度、405−1 温度制御ユニット、406−2 温度制御ユニット、405−2 ユニット吸気口、406−2 ユニット吸気口、405−3 ユニット排気口、406−3 ユニット排気口、405−4 ユニット吸気口から入る空気、406−4 ユニット吸気口から入る空気、407 ユニット吸気口の空気の温度、408 ユニット吸気口の空気の温度、409 熱交換部の温度、410 熱交換部の温度、411 吸引口の空気の温度と熱交換部の温度差、412 吸引口の空気の温度と熱交換部の温度差