特許第6662671号(P6662671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6662671
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】エッチング液組成物及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20200227BHJP
   H01L 21/3213 20060101ALI20200227BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20200227BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20200227BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20200227BHJP
   C23F 1/18 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   H01L21/308 Z
   H01L21/308 F
   H01L21/88 C
   H01L21/88 M
   C23F1/18
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-59470(P2016-59470)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-174975(P2017-174975A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】大宮 大輔
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−084680(JP,A)
【文献】 特開2007−027708(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0295626(US,A1)
【文献】 特開2007−142409(JP,A)
【文献】 特開2012−129304(JP,A)
【文献】 特開2013−135039(JP,A)
【文献】 特開2016−25321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/3205
H01L 21/3213
H01L 21/768
H01L 23/532
C23F 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化インジウム系層をエッチングするためのエッチング液組成物であって、
(A)過酸化水素0.01〜15質量%;
(B)硫酸1〜40質量%;
(C)下記一般式(1)で表されるアミド化合物0.01〜10質量%;
(D)ハロゲン化物イオン供給源0.0001〜0.01質量%;及び
水を含有し、
前記(D)ハロゲン化物イオン供給源が、アルカリ金属のハロゲン化物塩であるエッチング液組成物。
(前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、又は炭素原子数1若しくは2のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数6〜8のアリール基を表す)
【請求項2】
前記(D)ハロゲン化物イオン供給源が、アルカリ金属の塩化物塩である請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項3】
前記(D)ハロゲン化物イオン供給源の濃度が、0.0001〜0.008質量%である請求項1又は2に記載のエッチング液組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のエッチング液組成物を用いて酸化インジウム系層をエッチングする工程を有するエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング液組成物、及びそれを用いたエッチング方法に関する。さらに詳しくは、酸化インジウム系層をエッチングするために用いるエッチング液組成物、及びそれを用いたエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜等に使用される酸化インジウム系層のウエットエッチングに関する技術は、種々知られている。なかでも、安価でエッチング速度が良好であることから、塩酸を含む水溶液がエッチング液組成物として多く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化第二鉄と塩酸を含有するインジウム−スズ酸化物(以下、「ITO」とも記す)用エッチング液組成物が開示されている。
【0004】
また、塩酸を使用しないエッチング液として、例えば特許文献2には、銅又は銅合金のエッチング剤である、第二銅イオン、有機酸、ハロゲンイオン、アゾール、及びポリアルキレングリコールを含有する水溶液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−231427号公報
【特許文献2】特開2006−111953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示されたエッチング液組成物のような塩化水素を含有するエッチング液を用いて、ITO層又はITO層と銅層からなる積層体を一括でエッチングすると、基材や周辺部材の変色、基材や周辺部材表面の粗化、基材や周辺部材表面からの金属成分の溶出、及び形成された細線の直線性の不良等が発生しやすいことが問題となっていた。
【0007】
また、特許文献2で開示されたエッチング剤のような塩化水素を含有しないエッチング液を用いて、ITO層又はITO層と銅層からなる積層体を一括でエッチングすると、形成される細線の細りが大きく、所望の幅の細線を形成することが困難であるとともに、細線の直線性が低下することが問題となっていた。
【0008】
したがって、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、塩化水素を含有しなくとも、エッチングによる細り幅が少なく、直線性が良好であるとともに所望の幅を有する細線を形成することが可能な、酸化インジウム系層のエッチングに有用なエッチング液組成物を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記エッチング液組成物を用いたエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を含有するエッチング液組成物が上記問題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、酸化インジウム系層をエッチングするためのエッチング液組成物であって、(A)過酸化水素0.01〜15質量%;(B)硫酸1〜40質量%;(C)下記一般式(1)で表されるアミド化合物0.01〜10質量%;(D)ハロゲン化物イオン供給源0.0001〜0.01質量%;及び水を含有し、前記(D)ハロゲン化物イオン供給源が、アルカリ金属のハロゲン化物塩であるエッチング液組成物が提供される。
【0011】
(前記一般式(1)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、水素、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、又は炭素原子数1若しくは2のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数6〜8のアリール基を表す)
【0012】
本発明においては、(D)ハロゲン化物イオン供給源が、アルカリ金属の塩化物塩であることが好ましく、(D)ハロゲン化物イオン供給源の濃度が、0.0001〜0.008質量%であることが好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、上記のエッチング液組成物を用いて酸化インジウム系層をエッチングする工程を有するエッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塩化水素を含有しなくとも、エッチングによる細り幅が少なく、直線性が良好であるとともに所望の幅を有する細線を形成することが可能な、酸化インジウム系層のエッチングに有用なエッチング液組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記エッチング液組成物を用いたエッチング方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。本明細書における「エッチング」とは、化学薬品などの腐食作用を利用した塑形又は表面加工の技法を意味する。本発明のエッチング液組成物の具体的な用途としては、例えば、除去剤、表面平滑化剤、表面粗化剤、パターン形成用薬剤、基体に微量付着した成分の洗浄液などを挙げることができる。本発明のエッチング液組成物は、酸化インジウムを含有する層の除去速度が速いことから除去剤として好適に用いることができる。また、3次元構造を有する微細な形状のパターンの形成に用いると、矩形などの所望の形状のパターンを得ることができるため、パターン形成用薬剤としても好適に用いることができる。
【0016】
本明細書における「酸化インジウム系層」は、酸化インジウムを含む層であれば特に限定されるものではない。「酸化インジウム系層」は、例えば、酸化インジウム、インジウム−スズ酸化物、及びインジウム−亜鉛酸化物から選ばれる1種以上からなる層の総称である。
【0017】
本明細書における「金属系層」は、金属からなる層であれば特に限定されるものではない。「金属系層」は、例えば、銅、ニッケル、チタン、クロム、銀、モリブデン、白金、パラジウム等の金属層や、CuNi、CuNiTi、NiCr、Ag−Pd−Cu等に代表される金属合金から選ばれる1種以上からなる層の総称である。
【0018】
酸化インジウム系層がインジウム−スズ酸化物を含有する層であり、さらに金属系層が銅を含有する層である場合、高い精度で所望の細線を形成することができるとともに、エッチング速度も速いために好ましい。
【0019】
本発明のエッチング液組成物は、(A)過酸化水素(以下、「(A)成分」とも記す)を含有する。エッチング液組成物中の(A)成分の濃度は、0.01〜15質量%の範囲である。(A)成分の濃度が0.01質量%未満であると、エッチング速度が遅くなりすぎてしまい、生産性が著しく低下する。一方、(A)成分の濃度が15質量%超であると、エッチング速度が速くなりすぎてしまい、エッチング速度を制御することが困難になる。(A)成分の濃度は、好ましくは0.1〜12質量%の範囲であり、より好ましくは1〜10質量%の範囲である。
【0020】
本発明のエッチング液組成物は、(B)硫酸(以下、「(B)成分」とも記す)を含有する。エッチング液組成物中の(B)成分の濃度は、1〜40質量%の範囲である。(B)成分の濃度が1質量%未満であると、エッチング速度が遅くなりすぎてしまい、生産性が低下する。一方、(B)成分の濃度が40質量%超であると、エッチング速度が速くなりすぎてしまい、エッチング速度を制御することが困難になる、又は被エッチング体周辺の部材やレジストなどを劣化させてしまう場合がある。(B)成分の濃度は、好ましくは5〜30質量%の範囲であり、より好ましくは10〜25質量%の範囲である。
【0021】
本発明のエッチング液組成物は、(C)下記一般式(1)で表されるアミド化合物(以下、「(C)成分」とも記す)を含有する。
【0022】
【0023】
一般式(1)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、水素、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、又は炭素原子数1若しくは2のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数6〜8のアリール基を表す。
炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシルなどを挙げることができる。
【0024】
炭素原子数2〜8のアルケニル基としては、例えば、ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニルなどを挙げることができる。
【0025】
炭素原子数1又は2のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数6〜8のアリール基としては、例えば、フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニルなどを挙げることができる。
【0026】
一般式(1)で表されるアミド化合物の好ましい具体例としては、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオン酸アミド、酪酸アミド、N,N,−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、メタアクリルアミド、アクリルアミド、N−フェニルホルムアミド、ベンズアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を挙げることができる。これらのなかでも、ホルムアミドを用いた場合は、レジストパターンの幅と、エッチングして形成される細線の幅との差(ズレ)がより小さくなるとともに、形成される細線の直線性がさらに良好になるために好ましい。
【0027】
エッチング液組成物中の(C)成分の濃度は、0.01〜10質量%の範囲である。(C)成分の濃度が0.01質量%未満であると、エッチングして形成される細線の直線性が低下する。一方、(C)成分の濃度が10質量%超であると、エッチング速度が遅くなりすぎてしまい、生産性が著しく低下する。(C)成分の濃度は、好ましくは0.05〜5質量%の範囲であり、より好ましくは0.1〜1質量%の範囲である。
【0028】
本発明のエッチング液組成物は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分以外の必須成分として、水を含有する。また、本発明のエッチング液組成物には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び水以外の成分として、本発明の効果を阻害することのない範囲で、周知の添加剤を配合させることができる。添加剤としては、エッチング液組成物の安定化剤、各成分の可溶化剤、消泡剤、pH調整剤、比重調整剤、粘度調整剤、濡れ性改善剤、キレート剤、酸化剤、還元剤、界面活性剤等を挙げることができる。これらの添加剤の濃度は、一般的に、0.001〜50質量%の範囲である。
【0029】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、テトラエチレンペンタミン七酢酸、ペンタエチレンヘキサミン八酢酸、ニトリロ三酢酸、及びこれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩等のアミノカルボン酸系キレート剤;ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、及びこれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩等のホスホン酸系キレート剤;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、これらの無水物、及びこれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩等の2価以上のカルボン酸化合物、又は2価以上のカルボン酸化合物が脱水した一無水物若しくは二無水物を挙げることができる。これらのキレート剤の濃度は、一般的に、0.01〜40質量%の範囲である。
【0030】
エッチング速度が速い場合、還元剤を添加剤として用いることが好ましい。還元剤の具体例としては、塩化銅、塩化第一鉄、銅粉、銀粉等を挙げることができる。これらの還元剤の濃度は、一般的に、0.01〜10質量%の範囲である。
【0031】
本発明のエッチング液組成物には、さらに(D)ハロゲン化物イオン供給源(以下、「(D)成分」とも記す)を含有させることが好ましい。例えば、エッチングにより細線を形成する場合、(D)成分をさらに含有させることで、レジストパターンの幅と、エッチングして形成される細線の幅との差(ズレ)をより小さくすることができる。
【0032】
ハロゲン化物イオン供給源が供給するハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等を挙げることができる。ハロゲン化物イオン供給源としては、例えば、ハロゲン化物イオンを含有する水溶性塩を用いることができる。ハロゲン化物イオンを含有する水溶性塩の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のハロゲン化物塩;塩化アンモニウム等を挙げることができる。これらのなかでも、ハロゲン化物塩を用いると、より良好な速度でエッチングすることができるために好ましく、アルカリ金属の塩化物塩がさらに好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0033】
エッチング液組成物中の(D)成分の濃度は、0.00001〜0.1質量%の範囲であることが好ましい。(D)成分の濃度が0.00001質量%未満であると、(D)成分の配合効果が得られない場合がある。一方、(D)成分の濃度を0.1質量%超としても、(D)成分の配合効果はそれ以上向上しない。(D)成分の濃度は、さらに好ましくは0.0001〜0.01質量%の範囲である。
【0034】
本発明のエッチング方法は、上記の本発明のエッチング液組成物を用いて酸化インジウム系層をエッチングする工程を有する。本発明のエッチング液組成物を用いれば、酸化インジウム系層と金属系層からなる積層体を一括してエッチングすることができる。積層体を構成する酸化インジウム系層は、1層であっても2層以上であってもよい。また、積層体を構成する金属系層も、1層であっても2層以上であってもよい。積層体は、金属系層が酸化インジウム系層の上層に配置されていても、下層に配置されていても、上層及び下層に配置されていてもよい。さらに、酸化インジウム系層と金属系層が交互に積層されていてもよい。
【0035】
酸化インジウム系層や、酸化インジウム系層と金属系層との積層体を一括でエッチングする方法は特に限定されず、一般的なエッチング方法を採用すればよい。例えば、ディップ式、スプレー式、スピン式等によるエッチング方法を挙げることができる。例えば、ディップ式のエッチング方法によって、PET基板上にCu/ITO層が成膜された基材をエッチングする場合、この基材を適切なエッチング条件にてエッチング液組成物に浸漬した後、引き上げることで、PET基板上のCu/ITO層を一括してエッチングすることができる。
【0036】
ディップ式のエッチング方法におけるエッチング条件は特に限定されず、基材(被エッチング体)の形状や膜厚等に応じて任意に設定すればよい。例えば、エッチング温度は10〜60℃とすることが好ましく、20〜40℃とすることがさらに好ましい。エッチング液組成物の温度は反応熱により上昇することがある。このため、必要に応じて、エッチング液組成物の温度を上記の範囲内に維持するように公知の手段によって温度制御してもよい。また、エッチング時間は、エッチングが完了するのに十分な時間とすればよく、特に限定されない。例えば、電子回路基板の配線製造において、膜厚5〜500nm程度であれば、上記の温度範囲で10〜600秒程度エッチングすればよい。
【0037】
スプレー式のエッチング方法によって、PET基板上にCu/ITO層が成膜された基材をエッチングする場合、エッチング液組成物を適切な条件で基材に噴霧することで、PET基板上のCu/ITO層をエッチングすることができる。
【0038】
スプレー式のエッチング方法におけるエッチング条件は特に限定されず、被エッチング体の形状や膜厚等に応じて任意に設定すればよい。例えば、噴霧条件は0.01〜1.0MPaの範囲から選択することができ、好ましくは0.02〜0.5MPaの範囲、さらに好ましくは0.05〜0.2MPaの範囲である。また、エッチング温度は10〜60℃とすることが好ましく、20〜40℃とすることがさらに好ましい。エッチング液組成物の温度は反応熱により上昇することがある。このため、必要に応じて、エッチング液組成物の温度を上記の範囲内に維持するように公知の手段によって温度制御してもよい。また、エッチング時間は、エッチングが完了するのに十分な時間とすればよく、特に限定されない。例えば、電子回路基板の配線製造において、膜厚5〜500nm程度であれば、上記の温度範囲で5〜600秒程度エッチングすればよい。
【0039】
本発明のエッチング液組成物及びこのエッチング液組成物を用いたエッチング方法は、主として液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル、有機EL、太陽電池、照明器具等の電極や配線を加工する際に好適に使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0041】
<エッチング液組成物>
参考例1〜7、実施例〜12)
表1に示すアミド化合物を使用し、各成分を表2に示す配合となるように各成分を混合してエッチング液組成物(参考例1〜7、実施例〜12)を得た。なお、成分の合計が100質量%となるように水を配合した。
【0042】
【0043】
【0044】
(比較例1〜5)
各成分を表3に示す配合となるように各成分を混合してエッチング液組成物(比較例1〜5)を得た。なお、成分の合計が100質量%となるように水を配合した。
【0045】
【0046】
<エッチング方法>
参考例13〜19、実施例20〜24)
ガラス基体上にITO層(15nm)及びCu層(400nm)をこの順に積層した基体に、ポジ型液状レジストを用いて幅30μm、開口部30μmのレジストパターンを形成した。レジストパターンを形成した基体を縦20mm×横20mmに切断してテストピースを得た。得られたテストピースに対し、参考例1〜7、実施例〜12のエッチング液組成物を用いて、35℃、1分間、撹拌下でディップ式によるエッチング処理を行って細線を形成した。
【0047】
(比較例6〜10)
ガラス基体上にITO層(15nm)及びCu層(400nm)をこの順に積層した基体に、ポジ型液状レジストを用いて幅30μm、開口部30μmのレジストパターンを形成した。レジストパターンを形成した基体を縦20mm×横20mmに切断してテストピースを得た。得られたテストピースに対し、比較例1〜5のエッチング液組成物を用いて、35℃、1分間、撹拌下でディップ式によるエッチング処理を行って細線を形成した。
【0048】
<評価>
レーザー顕微鏡を使用して、細線の直線性、及びレジストパターンの幅と細線の幅とのズレを評価した。細線の直線性については、細線に蛇行が確認できたものを「−」と評価し、細線に蛇行が確認できなかったものを「+」と評価した。また、レジストパターンの幅と細線の幅とのズレについては、下記式(A)から、エッチング処理前のレジストパターンの幅と、形成された細線上部の幅との差の絶対値「L1」を算出して評価した。「L1」の値が「0」である場合は、エッチング処理前のレジストパターンの幅と、形成された細線の幅が同じであり、所望とする幅の細線が形成されたことを意味する。一方、「L1」の値が大きいほど、エッチング処理前のレジストパターンの幅と、形成された細線の幅との差が大きく、所望とする幅の細線が形成されなかったことを意味する。評価結果を表4に示す。
【0049】
1=|(エッチング処理前のレジストパターンの幅)−(形成された細線上部の幅)| ・・・(A)
【0050】
【0051】
表4に示す結果から、参考例13〜19、実施例20〜24では、いずれも直線性の良好な細線が形成されたことがわかる。また、参考例13〜19、実施例20〜24では、比較例1〜5よりも「L」の値が小さく、所望とする幅の細線を形成することができた。参考例13〜19のなかでは、参考例13、14、及び16で「L」の値が特に小さかった。また、(D)成分を含有する実施例8〜12のエッチング液組成物を用いた実施例20〜24では、(D)成分を含有しない参考例1〜7のエッチング液組成物を用いた参考例13〜19と比較して、「L」の値が50%程度減少することがわかった。