(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0014】
[実施形態1]
ここでは、本実施形態1に係る逆止弁機構110(
図5参照)がペースト塗布装置1(
図1参照)に搭載されているノズル機構5(
図2参照)に用いられている場合を想定して説明する。
【0015】
<ペースト塗布装置の構成>
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態1で用いるペースト塗布装置1の全体の構成につき説明する。
図1はペースト塗布装置1の全体の構成を示す斜視図である。
図2はペースト塗布装置1の主要部の構成を示す斜視図である。
【0016】
(ペースト塗布装置の全体の構成)
図1に示すように、ペースト塗布装置1は、架台2、基板載置テーブル3、θ軸回転機構4、ノズル機構5a〜5d、ガントリ6a,6b、主制御部7a、副制御部7b、モニタ8、及び、キーボード9を有している。
【0017】
架台2は、基板載置テーブル3やθ軸回転機構4、ガントリ6a,6b等が搭載された台である。
基板載置テーブル3は、塗布材の塗布対象(ここでは、TFT基板用のガラス基板19)が載置されるテーブルである。
θ軸回転機構4は、基板載置テーブル3とともにガラス基板19をθ軸周りに回転駆動する機構である。
ノズル機構5a〜5dは、塗布材を塗布対象に塗布する機構である。ここでは、ペースト状の液体であるシール材を塗布材とし、ガラス基板19を塗布対象とし、シール材をガラス基板19に塗布する場合を想定して説明する。ノズル機構5a〜5dの構成及び動作は、同じである。以下、ノズル機構5a〜5dを総称する場合に「ノズル機構5」と称する。ノズル機構5の具体的な構成については後記する「ノズル機構の構成」の章で説明する。
ガントリ6a,6bは、ノズル機構5を水平面内の任意の方向(ここでは、X軸方向)に移動させる移動機構である。
主制御部7aは、ペースト塗布装置1の全体の動作を制御する制御部である。
副制御部7bは、ペースト塗布装置1の各部位(例えば、ガントリ6や後記する電空レギュレータ15a,15b(
図2参照)等)の動作を制御する制御部である。
モニタ8は、各種の情報が表示される表示装置である。
キーボード9は、各種の情報をペースト塗布装置1に入力する入力装置である。
【0018】
架台2の上には、基板載置テーブル3やθ軸回転機構4、ガントリ6等が搭載されている。ここでは、ノズル機構5を移動体とし、ペースト塗布装置1がノズル機構5の移動機構としてガントリ6を有する場合を想定して説明する。また、ガントリ6がノズル機構5をX軸方向に移動させるX軸方向移動機構である場合を想定して説明する。
【0019】
ガントリ6aは、X軸方向に摺動するフレーム61aを備えている。フレーム61aには、2つのノズル機構5a,5bがフレーム61aの長手方向(すなわち、Y軸方向)に沿って移動可能に取り付けられている。同様に、ガントリ6bは、X軸方向に摺動するフレーム61bを備えている。フレーム61bには、2つのノズル機構5c,5dがフレーム61bの長手方向(すなわち、Y軸方向)に沿って移動可能に取り付けられている。以下、ガントリ6a,6bを総称する場合に「ガントリ6」と称する。
【0020】
架台2の上には、基板載置テーブル3が配置されている。また、基板載置テーブル3の下には、θ軸回転機構4が配置されている。ガラス基板19は基板載置テーブル3の上に吸着保持される。モニタ8及びキーボード9は架台2の周囲に配置されている。主制御部7a及び副制御部7bは架台2に内蔵されている。
【0021】
(ペースト塗布装置の主要部の構成)
図2に示すように、ペースト塗布装置1は、ノズル機構5の周囲に、保持部10、位置検出部11、上下動機構12、及び、固定部14を有している。
【0022】
保持部10は、フレーム61の長手方向(すなわち、Y軸方向)に沿って移動可能にノズル機構5を保持する機構である。
位置検出部11は、ノズル機構5のフレーム61上の位置(すなわち、Y軸方向の位置)を検出する機構である。
上下動機構12は、ノズル機構5を上下方向(すなわち、Z軸方向)に移動させるZ軸方向移動機構である。
固定部14は、ノズル機構5を後記するZ軸方向移動部材12bに固定させる機構である。
【0023】
ペースト塗布装置1は、保持部10によってフレーム61の長手方向(すなわち、Y軸方向)に沿って移動可能にノズル機構5を保持している。ペースト塗布装置1は、ノズル機構5をY軸方向に移動させたときに、位置検出部11によって、ノズル機構5のフレーム61上の位置(すなわち、Y軸方向の位置)を検出する。
【0024】
ペースト塗布装置1は、上下動機構12によってノズル機構5を上下動させる。上下動機構12は、Z軸ガイド12a、Z軸方向移動部材12b、及び、Z軸サーボモータ12cを備えている。
【0025】
Z軸ガイド12aは、Z軸方向移動部材12bのZ軸方向の移動を案内する部材である。
Z軸方向移動部材12bは、ノズル機構5が取り付けられる部材である。
Z軸サーボモータ12cは、Z軸方向移動部材12bとともに、ノズル機構5を上下動させる駆動源である。
【0026】
Z軸ガイド12aとZ軸方向移動部材12bとは、それぞれ、互いに当接する当接面と互いを係合させる図示せぬ係合部とを備えている。Z軸方向移動部材12bは、図示せぬ係合部によって当接面に沿って摺動可能な状態でZ軸ガイド12aと係合している。Z軸ガイド12aは、Z軸方向移動部材12bの摺動方向が上下方向になるように、保持部10に取り付けられている。Z軸ガイド12aには、Z軸サーボモータ12cが内蔵されている。Z軸サーボモータ12cは、Z軸ガイド12aの当接面に沿ってZ軸方向移動部材12bを上下動させる。これによって、上下動機構12は、ノズル機構5を上下動させる。
【0027】
Z軸方向移動部材12bには、図示せぬ光学式距離計と図示せぬ画像認識カメラとが取り付けられている。また、Z軸方向移動部材12bの下方には、後記するノズル52(
図3参照)が配置される。副制御部7b(
図1参照)は、図示せぬ光学式距離計から出力される検出信号の値に基づいて後記するノズル52(
図3参照)とガラス基板19(
図1参照)との間の上下方向の距離を計測しながら、Z軸サーボモータ12cを駆動させる。これによって、副制御部7b(
図1参照)は、ノズル機構5を上下動させて、ノズル機構5を好適な高さに配置する。また、副制御部7b(
図1参照)は、図示せぬ画像認識カメラから出力される画像信号に基づいてガラス基板19(
図1参照)の画像を取得して、その画像を認識する。これによって、副制御部7b(
図1参照)は、ガラス基板19に予め描画された図示せぬ個体識別情報や図示せぬアライメントマーク等の情報を読み取り、ガラス基板19の個体識別情報を識別したり、シール材の塗布部分を特定したりする。
【0028】
なお、ペースト塗布装置1は、電空レギュレータ15a,15bを有している。電空レギュレータ15aは、補充圧付加用の第1加圧機構である。一方、電空レギュレータ15bは、塗布圧付加用の第2加圧機構である。ここで、「補充圧」とは、後記するシリンジ51内のシール材を後記する貯留部53a(
図4及び
図5参照)に送り込むための圧力を意味している。また、「塗布圧」とは、後記する貯留部53a(
図4及び
図5参照)内のシール材を後記するノズル52(
図3〜
図5参照)に送り込むための圧力を意味している。
【0029】
電空レギュレータ15aは、ノズル機構5から離れた場所に配置されており、チューブ16aを介してノズル機構5の後記するシリンジ51と接続されている。一方、電空レギュレータ15bは、ノズル機構5の後記するシリンジホルダ53の近傍に配置されており、チューブ16bを介して後記する封止部材56と接続されている。
【0030】
なお、電空レギュレータ15bは、ノズル機構5と一緒に移動できるように、上下動機構12に取り付けられていてもよい。また、この構造の場合に、電空レギュレータ15bは、上下方向に移動可能な状態(
図2中の矢印参照)でノズル機構5の後記するシリンジホルダ53の直上に配置されるようにしてもよい。このようにすることによって、ペースト塗布装置1は、チューブ16bを介することなく、電空レギュレータ15bと後記する封止部材56とを直結させる構造にすることができる。
【0031】
<ノズル機構の構成>
以下、
図3〜
図5を参照して、ノズル機構5の構成につき説明する。
図3はノズル機構5の構成を示す斜視図である。
図4はノズル機構5の分解した構成を示す斜視図である。
図5はノズル機構5及び逆止弁機構110の内部の構成を示す断面図である。なお、ノズル機構5は、従来のノズル機構の親ペースト収納筒に相当する構成要素として後記するシリンジ51(
図2参照)を有している。また、ノズル機構5は、従来のノズル機構の子ペースト収納筒が削除されている代わりに、後記する貯留部53a(
図4参照)を後記するシリンジホルダ53の内部に有している。
【0032】
図3に示すように、ノズル機構5は、シリンジ51、ノズル52、シリンジホルダ53、封止部材56、及び、ジョイント111を備えている。
シリンジ51は、ノズル機構5に補充されたシール材を貯蔵するタンクである。
ノズル52は、シール材を吐出する部材である。
シリンジホルダ53は、シリンジ51とノズル52を保持するブロック部材である。
封止部材56は、シリンジホルダ53に形成された後記する取込口53fを封止する部材である。
ジョイント111は、シリンジ51とシリンジホルダ53との間に接続される部材である。
【0033】
シリンジ51は、電空レギュレータ15a(
図2参照)と接続される接続部51aを備えている。また、封止部材56は、電空レギュレータ15b(
図2参照)と接続される接続部56aを備えている。
【0034】
電空レギュレータ15aは、圧縮エアをシリンジ51内に送り込み、圧力(補充圧)をシリンジ51内に加える。これによって、ペースト塗布装置1は、シリンジ51内のシール材をシリンジホルダ53の後記する貯留部53aに送り込む。
【0035】
一方、電空レギュレータ15bは、圧縮エアをシリンジホルダ53の後記する取込口53f(
図4及び
図5参照)内に送り込み、圧力(塗布圧)をシリンジホルダ53の後記する貯留部53a(
図4及び
図5参照)内に加える。これによって、ペースト塗布装置1は、貯留部53a内のシール材をノズル52に送り込み、シール材をノズル52から吐出させて、シール材をガラス基板19の基板面に塗布させる。
【0036】
ここでは、ペースト塗布装置1がシール材を加圧する気体としてエアを用いる場合を想定して説明する。ただし、ペースト塗布装置1は、エア以外の気体を用いてシール材を加圧することもできる。
【0037】
シリンジホルダ53は、ノズル52がZ軸方向移動部材12b(
図2参照)の下方に配置されるように、ノズル52側を上下動機構12側に向けて、上下動機構12に装着されている。
【0038】
図4に示すように、シリンジホルダ53には、貯留部53a、シリンジ取付部53b、ノズル取付部53c(詳しくは、
図5参照)、及び、取込口53fが形成されている。
貯留部53aは、ノズル52に送り込むシール材を一時的に貯留する部位である。
シリンジ取付部53bは、ジョイント111を介して、シリンジ51が取り付けられる部位である。
ノズル取付部53cは、ノズル52が取り付けられる部位である。
取込口53fは、電空レギュレータ15b(
図2参照)から送られた圧縮エアを取り込む開口部である。
【0039】
シリンジ51は、ジョイント111に対して取り付け及び取り外しが自在な構成になっている。そのジョイント111は、シリンジ取付部53bに対して取り付け及び取り外しが自在な構成になっている。ジョイント111の先端部(下端部)には、シール材の送り込み方向(軸方向)に突出するシャフト112が形成されている。本実施形態1では、シリンジ取付部53bは、取込口53fから離間する方向に傾斜している。また、ノズル52は、ノズル取付部53cに対して取り付け及び取り外しが自在な構成になっている。また、封止部材56は、取込口53fに対して取り付け及び取り外しが自在な構成になっている。取込口53fは、貯留部53aに連通している。
【0040】
取込口53fの内部には、シート状体54とスペーサ55とが配置されている。
シート状体54は、弾性材によってシート状に形成された部材である。
スペーサ55は、シート状体54よりも高い剛性の材料でシート状に形成された、シート状体54とは別のシート状体である。
【0041】
図5に示すように、前記した貯留部53a、シリンジ取付部53b、ノズル取付部53c、及び、取込口53fに加え、シリンジホルダ53の内部には、送込流路53d、及び、吐出流路53eが形成されている。
送込流路53dは、シリンジ取付部53bと貯留部53aとをつなぐシール材の流路である。
吐出流路53eは、貯留部53aとノズル52(ノズル取付部53c)とをつなぐシール材の流路である。
【0042】
本実施形態1では、シリンジホルダ53は、シリンジ取付部53bが送込流路53dの内部に到達するように形成されている。
送込流路53dは、後記するジョイント内流路115a及び後記するリング溝内流路115bとともに、シリンジ51から貯留部53aに補充用のシール材を送り込む補充流路116を形成している。ノズル機構5は、補充流路116に対し、シール材の逆流(ここでは、貯留部53a側からシリンジ51側に向かう流れ)を止めるための逆止弁機構110を有している。
【0043】
<逆止弁機構の構成及び動作>
以下、
図5及び
図6を参照して、逆止弁機構110の構成及び動作につき説明する。
図6は、逆止弁機構110の動作を示す模式図である。
図6(a)は、シール材の吐出前又は吐出中の逆止弁機構110の状態を示しており、
図6(b)は、シール材の吐出後におけるシール材の補充中の逆止弁機構110の状態を示している。
【0044】
図5に示すように、逆止弁機構110は、シャフト112と、Oリング121と、を有している。ただし、逆止弁機構110は、Oリング121の代わりに、他の形状のリング(例えば、角リングやDリング等)を用いることもできる。
シャフト112は、ジョイント111の先端部(下端部)に形成された突出部である。本実施形態1では、シャフト112は、Oリング121を支持する支持部材として機能する。
Oリング121は、ゴム等の弾性体によってリング状に形成されたリング部材である。
【0045】
シャフト112は、ジョイント111の軸方向に突出するように、ジョイント111の下端部に形成されている。シャフト112は、円柱状を呈している。
【0046】
ジョイント111の内部には、支持部材内流路としてのジョイント内流路115aが形成されている。ジョイント内流路115aは、シリンジ51の内部と後記するリング溝内流路115bとをつなぐ流路である。ジョイント内流路115aは、シャフト112の突出方向に向かって直進状に形成されている。
【0047】
シャフト112は、先端部の近傍の周面にリング溝112aを備えている。リング溝112aは、Oリング121が嵌め込まれる溝部である。シャフト112の先端部(少なくともリング溝112aが形成された部分)は、送込流路53dの内部に到達するように、シリンジホルダ53のシリンジ取付部53bに差し込まれている。
【0048】
リング溝112aの内部には、リング溝流路115bが形成されている。リング溝流路115bは、ジョイント内流路115aと送込流路53dとをつなぐ流路である。
【0049】
したがって、本実施形態1では、シリンジ51を流動元側とし、貯留部53aを流動先側とし、シリンジ51から、ジョイント内流路115aとリング内流路115bと送込流路53dとを通って、貯留部53aに到達するように、補充流路116が形成されている。
【0050】
Oリング121のリング内流路115b側の面には、シリンジ51に貯蔵されているシール材を介して第1圧力P1がかかっている。また、Oリング121の送込流路53d側の面には、貯留部53aに貯留されているシール材を介して第2圧力P2がかかっている。
【0051】
ここで、「第1圧力P1」とは、電空レギュレータ15a(
図2参照)がシリンジ51内のシール材にかけている圧力(補充圧)を意味している。また、「第2圧力P2」とは、電空レギュレータ15b(
図2参照)が貯留部53a内のシール材にかけている圧力(塗布圧)を意味している。
【0052】
図6(a)に示すように、ペースト塗布装置1は、シール材の吐出前又は吐出中において、第1圧力P1が第2圧力P2よりも低い状態になっている。このとき、Oリング121は、リングがリング溝112aに嵌まることによって、リング内流路115b(つまり、リング溝112aが形成された部分)で補充流路116を塞いでいる。
【0053】
一方、
図6(b)に示すように、ペースト塗布装置1は、シール材の補充中において、第1圧力P1が第2圧力P2よりも高い状態になっている。このとき、Oリング121は、径が大きくなるように弾性変形する。つまり、Oリング121は、シャフト112(支持部材)の先端部を中心にして径方向に広がるように弾性変形する(矢印A121参照)。これにより、Oリング121とリング溝112aとの間に隙間が生じる。その結果、リング溝内流路115bが開放されて、シール材がシリンジ51(流動元)側から貯留部53a(流動先)側に流れる(矢印Alq参照)。
【0054】
なお、「第1圧力P1が第2圧力P2よりも高い状態」は、ペースト塗布装置1が取込口53fの圧力を大気圧と同じにすることによって実現される。なお、「取込口53fの圧力を大気圧と同じにする」動作は、例えば、電空レギュレータ15b(
図2参照)とチューブ16b(
図2参照)との間に介装されている図示せぬ弁を開放することによって行われる。このとき、貯留部53aの内部がシール材で満杯になるように、シール材がシリンジ51から貯留部53aに送り込まれる。その結果、シール材が貯留部53aの内部に補充される。
【0055】
ペースト塗布装置1は、シール材が補充されると、
図6(a)に示す状態(つまり、第1圧力P1が第2圧力P2よりも低い状態)に戻る。このとき、Oリング121は、復元する。つまり、Oリング121は、径が元の大きさに戻るように弾性変形する。これにより、Oリング121とリング溝112aとの間の隙間が閉じられる。その結果、リング溝内流路115bが閉鎖されて、シリンジ51(流動元)側から貯留部53a(流動先)側へのシール材の流れが止められる。
【0056】
<実施形態1に係る逆止弁機構の主な特徴>
本実施形態1に係る逆止弁機構110は、Oリング121にかかる第1圧力P1と第2圧力P2とを利用して、Oリング121を逆止弁として機能させている。このような逆止弁機構110は、従来の逆止弁機構と比較した場合に、以下のような効果を得ることができる。
【0057】
すなわち、従来の逆止弁機構は、外部装置で逆止弁を駆動する構造であった。そのため、従来の逆止弁機構は、複雑でかつ比較的大型な構造のものになっていた。また、従来の逆止弁機構は、複雑な構造であるため、メンテナンス時に、分解し難かった(つまり、ノズル機構から取り外し難かった)。さらに、従来の逆止弁機構は、外部装置があるため、分解時(取り外し時)にノズル機構を汚し易かった。このような従来の逆止弁機構は、メンテナンスに手間がかかり、作業者に比較的大きな負担をかけるものであった。
【0058】
これに対して、本実施形態1に係る逆止弁機構110は、Oリング121にかかる第1圧力P1と第2圧力P2とを利用して、Oリング121を弾性変形させたり、復元させたりする。これにより、逆止弁機構110は、Oリング121を逆止弁として機能させている。このような逆止弁機構110は、従来の逆止弁機構と異なり、逆止弁(Oリング121)を駆動する外部装置を必要としない。そのため、逆止弁機構110は、簡素でかつ小型な構造のものにすることができる。また、逆止弁機構110は、簡素な構造であるため、メンテナンス時に、容易に分解すること(つまり、ノズル機構5から容易に取り外すこと)ができる。さらに、逆止弁機構110は、外部装置を必要としないため、分解時(取り外し時)にノズル機構5を汚さないようにすることができる。このような逆止弁機構110は、メンテナンスに手間がかからず、作業者の負担を軽減することができる。
【0059】
また、ノズル機構5やペースト塗布装置1は、このような逆止弁機構110を用いることにより、小型化することができる。
【0060】
以上の通り、本実施形態1に係る逆止弁機構110によれば、簡素でかつ小型な構造にすることができる。
【0061】
[実施形態2]
実施形態1に係る逆止弁機構110は、逆止弁用のリング部材(Oリング121)が径方向に広がるように弾性変形する構造になっている。
これに対して、本実施形態2では、逆止弁用のリング部材(Oリング171)が斜め方向にずれるように弾性変形する構造になっている逆止弁機構110Aを提供する(
図7及び
図8参照)。
【0062】
以下、
図7及び
図8を参照して、本実施形態2に係る逆止弁機構110Aの構成及び動作につき説明する。
図7は、逆止弁機構110Aの構成を示す断面図である。
図8は、逆止弁機構110Aの動作を示す模式図である。
図8(a)は、シール材の吐出前又は吐出中の逆止弁機構110Aの状態を示しており、
図8(b)は、シール材の吐出後におけるシール材の補充中の逆止弁機構110Aの状態を示している。
【0063】
図7に示すように、逆止弁機構110Aは、シャフト162と、Oリング171,172と、を有している。ただし、逆止弁機構110Aは、Oリング171,172の代わりに、他の形状のリング(例えば、角リングやDリング等)を用いることもできる。
シャフト162は、Oリング171,172を支持する支持部材である。
Oリング171は、逆止弁用のリング部材(つまり、後記する第2流路157から後記する第1流路156へのシール材の逆流を止める逆止弁として機能させるためのリング部材)である。
Oリング172は、封止用のリング部材(つまり、シール材が後記する差込部154から外部に漏れ出ることを防止するためのリング部材)である。
Oリング171,172は、ともに、ゴム等の弾性体によってリング状に形成されている。
【0064】
シャフト162は、後記する差込部154に差し込むことが可能な形状に形成されている。シャフト162は、突起部163と、押さえ部164と、リング溝165と、を備えている。
突起部163は、押さえ部164からシャフト162の軸方向に突出するように形成された部位である。
押さえ部164は、シャフト162が後記する差込部154に差し込まれたときに、Oリング171を後記する傾斜面部155に押さえ付ける部位である。
リング溝165は、Oリング172が嵌め込まれる溝部である。
【0065】
突起部163は、円柱状を呈している。突起部163は、Oリング171のリングの中を貫通するように配置されている。また、押さえ部164も、円柱状を呈している。押さえ部164の先端面は、突起部163を中心にして、Oリング171の内径よりも広い円形の平坦面として形成されている。そのため、シャフト162は、後記する差込部154に差し込まれたときに、押さえ部164でOリング171を後記する傾斜面部155に押さえ付けることができる。
リング溝165は、押さえ部164の周面に形成されている。
【0066】
なお、本実施形態2では、実施形態1のジョイント111の代わりに、ジョイント161を用いている。また、本実施形態2では、実施形態1のシリンジホルダ53の代わりに、シリンジホルダ153を用いている。ジョイント161は、シリンジ51とシリンジホルダ153との間に接続される部材である。シリンジホルダ153は、シリンジ51とノズル52を保持するブロック部材である。
【0067】
ジョイント161は、実施形態1のジョイント111と比較すると、シャフト161aがリング溝を備えていない点、及び、ジョイント内流路161bがシリンジ51の内部と後記する第1流路156とをつなぐように形成されている点で相違している。
シャフト161aは、シリンジ取付部53bに差し込まれる部位である。
ジョイント内流路161bは、ジョイント161の内部に形成された流路である。
【0068】
シャフト161aは、ジョイント161の軸方向に突出するように、ジョイント161の下端部に形成されている。ジョイント内流路161bは、シリンジ51の内部と後記する第1流路156とをつなぐように、シャフト161aの突出方向に向かって直進状に形成されている。
【0069】
シリンジホルダ153は、実施形態1のシリンジホルダ53と比較すると、差込部154を備える点、シリンジ取付部53bが差込部154の内部に到達しない点、及び、第1流路156と第2流路157とを備える点で相違している。
【0070】
差込部154は、シャフト162が差し込まれる部位である。
第1流路156は、シリンジホルダ153の側面部分(具体的には、シリンジ取付部53bの開口部分)から差込部154の終端部分154aに亘って形成された流路である。
第2流路157は、差込部154の終端部分154aからノズル機構5の奥方向に向かって形成された流路である。第2流路157は、貯留部53aに接続されている。
【0071】
第1流路156の差込部154側の端部は、押さえ部164の先端面とリング溝165との間の位置に設けられている。第1流路156は、差込部154の終端部分154aと第2流路157とともに、送込流路53dを構成している。その送込流路53dは、ジョイント内流路161bとともに、補充流路116Aを構成している。
【0072】
したがって、本実施形態2では、シリンジ51を流動元側とし、貯留部53aを流動先側とし、シリンジ51から、ジョイント内流路161bと第1流路156と差込部154の終端部分154aと第2流路157とを通って、貯留部53aに到達するように、補充流路116Aが形成されている。
【0073】
差込部154の終端部分154aは、円錐状を呈しており、奥方向に向かって傾斜して狭くなる傾斜面部155を備えている。シャフト162は、突起部163でOリング171のリングの中を貫通した状態で、差込部154に差し込まれる。このとき、Oリング171は、押さえ部164及び傾斜面部155の双方と同時に当接した状態になる。このとき、Oリング171は、断面が潰れるように弾性変形する。その結果、Oリング171は、押さえ部164と傾斜面部155との間の空間を閉鎖する。したがって、Oリング171は、押さえ部164及び傾斜面部155の双方と同時に当接することによって、差込部154の終端部分154aで補充流路116Aを塞ぐ構造になっている。
【0074】
Oリング171の第1流路156側の面には、シリンジ51に貯蔵されているシール材を介して第1圧力P1がかかっている。また、Oリング171の第2流路157側の面には、貯留部53aに貯留されているシール材を介して第2圧力P2がかかっている。
【0075】
図8(a)に示すように、ペースト塗布装置1は、シール材の吐出前又は吐出中において、第1圧力P1が第2圧力P2よりも低い状態になっている。このとき、Oリング171は、押さえ部164及び傾斜面部155の双方と同時に当接することによって、差込部154の終端部分154aで補充流路116Aを塞いでいる。
【0076】
一方、
図8(b)に示すように、ペースト塗布装置1は、シール材の補充中において、第1圧力P1が第2圧力P2よりも高い状態になっている。このとき、Oリング171は、傾斜面部155に沿って貯留部53a(流動先)側にずれるように弾性変形する(矢印A171参照)。つまり、Oリング171は、径が小さくなるように弾性変形する。これにより、Oリング171と押さえ部164との間に隙間が生じる。その結果、差込部154の終端部分が開放されて、シール材がシリンジ51(流動元)側から貯留部53a(流動先)側に流れる(矢印Alq参照)。
【0077】
ペースト塗布装置1は、シール材が補充されると、
図8(a)に示す状態(つまり、第1圧力P1が第2圧力P2よりも低い状態)に戻す。このとき、Oリング171は、傾斜面部155に沿ってシリンジ51(流動元)側に戻る(ずれる)ように復元する。つまり、Oリング171は、径が元の大きさに戻るように弾性変形する。これにより、Oリング171と押さえ部164との間の隙間が閉じられる。その結果、差込部154の終端部分が閉鎖されて、シリンジ51(流動元)側から貯留部53a(流動先)側へのシール材の流れが止められる。
【0078】
<実施形態2に係る逆止弁機構の主な特徴>
本実施形態2に係る逆止弁機構110Aは、Oリング171にかかる第1圧力P1と第2圧力P2とを利用して、Oリング171を逆止弁として機能させている。このような逆止弁機構110Aは、逆止弁(Oリング171)を駆動する外部装置を必要としないため、実施形態1に係る逆止弁機構110と同様に、簡素でかつ小型な構造にすることができる。
【0079】
しかも、逆止弁機構110Aは、実施形態1に係る逆止弁機構110と比較した場合に、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、実施形態1に係る逆止弁機構110は、第1圧力P1と第2圧力P2との関係に応じて逆止弁用のリング部材としてのOリング121を径方向に弾性変形させている。かかる構成では、Oリング121を弾性変形させようとする圧力に抗する反力が分散し難い。そのため、反力が比較的強い。このような逆止弁機構110では、設計に手間がかかる可能性がある。つまり、逆止弁機構110では、Oリング121が第1圧力P1と第2圧力P2との関係に応じてリング溝内流路115bを適切に閉鎖したり開放したりするように設計・検証するための比較的長い時間が必要になる可能性がある。
【0080】
これに対して、本実施形態2に係る逆止弁機構110Aは、第1圧力P1と第2圧力P2との関係に応じて逆止弁用のリング部材としてのOリング171を傾斜面部155に沿ってずれるように弾性変形させている。かかる構成では、Oリング171を弾性変形させようとする圧力に抗する反力が分散し易い。そのため、反力が比較的弱い。このような逆止弁機構110Aでは、比較的容易に設計することができる。つまり、逆止弁機構110Aでは、Oリング171が第1圧力P1と第2圧力P2との関係に応じて差込部154の終端部分を適切に閉鎖したり開放したりするように設計・検証するための時間を短縮することができる。
その結果、逆止弁機構110Aは、実施形態1に係る逆止弁機構110に比べて、逆止弁用のリング部材(Oリング171)を適切な形状に弾性変形し易くすることができる。
【0081】
以上の通り、本実施形態2に係る逆止弁機構110Aによれば、実施形態1に係る逆止弁機構110と同様に、簡素でかつ小型な構造にすることができる。
しかも、本実施形態2に係る逆止弁機構110Aによれば、実施形態1に係る逆止弁機構110に比べて、逆止弁用のリング部材(Oリング171)を適切な形状に弾性変形し易くすることができる。
【0082】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0083】
また、例えば、逆止弁機構110,110Aは、ペースト塗布装置1に限らず、様々な装置に用いることができる。