(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Ag,Zn,Ni,Sn,Zr,P,Mg,及びTiの群から選ばれる1種以上の添加元素を合計で5〜500質量ppm含有し、残部不可避的不純物からなる圧延銅箔であって,
100〜600℃の温度範囲でそれぞれ1000秒の熱処理を行ったとき、圧延面のX線回折で求めた200回折強度(I)と、微粉末銅(325mesh,水素気流中で300℃で1時間加熱してから使用)のX線回折で求めた200回折強度(Io)との比(I/Io)の最大値Aとなる温度が150〜380℃であり、
100〜600℃の温度範囲でそれぞれ1秒の熱処理を行ったとき、前記比(I/Io)の最大値Bとなる温度が250〜380℃であり、かつ、
100〜600℃の温度範囲でそれぞれ10秒の熱処理を行ったとき、前記比(I/Io)の最大値Cとなる温度が200〜350℃である圧延銅箔。
Ag:70〜250質量ppm、Sn:10〜100質量ppm、Zn:50〜300質量ppm、Zr:1質量ppm以上、(P,Mg及びTi)の合計が10質量ppm以下、の範囲で含有する請求項1又は2記載の圧延銅箔。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る圧延銅箔の実施の形態について説明する。なお、本発明において%、ppmは特に断らない限り、それぞれ質量%、質量ppmを示すものとする。
【0015】
<組成>
本発明に係る圧延銅箔は、Ag,Zn,Ni,Sn,Zr,P,Mg,及びTiの群から選ばれる1種以上の添加元素を合計で5〜500質量ppm含有し、残部不可避的不純物からなる。特に、JIS−H3100(C1100)に規格するタフピッチ銅(TPC)、又はJIS−H3100(C1020)の無酸素銅(OFC)に対し、上記添加元素を含有することが好ましい。
純銅は、再結晶後に回復(室温での静的回復を含む)が進むため、これを抑制するために添加元素を加えることで、Cube方位を発達させ、後述する比(I/Io)を向上させることができる。上記添加元素の含有量が合計で5質量ppm未満であると回復の抑制効果が生じず、Cube方位を発達させることが困難である。上記添加元素の含有量が合計で500質量ppmを超えると、CCL製造の加熱条件では再結晶されず、Cube方位を発達させることが困難である。
なお、添加元素の種類によっても上述の効果の度合が異なることから、Ag:70〜250質量ppm、Sn:10〜100質量ppm、Zn:50〜300質量ppm、Zr:1質量ppm以上、(P,Mg及びTi)の合計が10質量ppm以下の範囲で含有されることが好ましい。
【0016】
上述のようにCCLの種類や加熱条件によらずに銅箔の屈曲性を向上させるには、種々の加熱条件でCube方位が発達するように銅箔を設計する必要がある。
そこで、本発明者らは、CCLの代表的な加熱条件として、(1)3層CCLやキャスト法による2層CCLを想定した100〜600℃の温度範囲で1000秒の長時間熱処理、(2)ラミネート法による2層CCLを想定した100〜600℃の温度範囲で1秒の極短時間熱処理、(3)2層両面CCLを製造するダブルベルト法を想定した100〜600℃の温度範囲で10秒の短時間熱処理、を挙げた。
そして、本発明者らは、(1)〜(3)のそれぞれの条件で、比(I/Io)の最大値が所定の温度範囲内にあれば、種々の加熱条件でCube方位を発達させることができ、CCLの種類や加熱条件によらずに銅箔の屈曲性を向上できることを見出した。
【0017】
上記条件(1)〜(3)の温度範囲は、100℃以下で全面が再結晶する銅箔を製造することは工業的に難しく、600℃以上では銅箔に防錆処理を行っても表面が酸化してしまうことから、100〜600℃とした。
上記条件(1)の熱処理時間は、CCLの製造時に最も長時間熱処理する場合を想定して1000秒とした。又、2000秒で試験したが1000秒の場合と差異がなかったため、1000秒で十分とみなした。
上記条件(2)の熱処理時間は、CCLの製造時に最も短時間熱処理する場合を想定して1秒とした。又、1秒未満でCCLを製造することはない。
上記条件(3)の熱処理時間は、ダブルベルト方式による2層CCLの熱処理時間を想定して10秒とした。
【0018】
そして、上記条件(1)の熱処理を行ったとき、圧延面のX線回折で求めた200回折強度(I)と、微粉末銅(325mesh,水素気流中で300℃で1時間加熱してから使用)のX線回折で求めた200回折強度(Io)との比(I/Io)の最大値Aとなる温度が150〜380℃であることが必要である。150〜380℃の温度は、3層CCLやキャスト法による2層CCLの製造時の実際の熱処理温度に匹敵するので、この温度範囲に比(I/Io)の最大値Aが存在すれば、3層CCLやキャスト法による2層CCLの製造時の熱処理により、確実にCube方位が発達し、銅箔の屈曲性が向上することになる。最大値Aとなる温度が150〜250℃であると好ましい。
【0019】
同様に、上記条件(2)の熱処理を行ったとき、比(I/Io)の最大値Bとなる温度が250〜380℃であることが必要である。250〜380℃の温度は、1秒程度の極短時間熱処理を行って製造するCCLの実際の熱処理温度に匹敵する。
同様に、上記条件(3)の熱処理を行ったとき、比(I/Io)の最大値Cとなる温度が200〜350℃であることが必要である。200〜350℃の温度は、10秒程度の短時間熱処理を行って製造するダブルベルト方式による2層CCLの実際の熱処理温度に匹敵する。
圧延銅箔の特性を以上のように設計することで、CCLの種類や加熱条件によらずに銅箔の屈曲性を向上できる。
【0020】
特に、最大値A≧最大値C≧最大値Bの関係を満たすと、CCL製造時に低温で熱処理した際に、I/Ioをより大きくすることができ,積層する樹脂の自由度を増やすことができる。例えばPIに比べて熱に弱いPETなどの樹脂を銅箔と積層してもI/Ioの値を高くすることができる。
この理由は明確ではないが、再結晶でCube方位を生成する部位が、より低温で再結晶を開始することが考えられる。つまり、温度を急激に上げると、Cube方位以外の他の方位の再結晶粒生成サイトもほぼ同時に再結晶を開始するため、I/Ioが高くなりにくくなることが考えられる。
又、最大値A〜Cがいずれも40以上であることが好ましい。最大値A〜Cのいずれかが40未満であると、(I/Io)を十分に向上できない場合がある。
【0021】
<圧延銅箔の製造>
本発明の圧延銅箔は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、銅インゴットに上記添加物を添加して溶解、鋳造した後、熱間圧延及び面削し、冷間圧延と焼鈍を行い、さらに最終焼鈍した後、最終冷間圧延を行うことにより箔を製造することができる。最終冷間圧延の後、脱脂し、さらに樹脂との密着性を向上させるために銅箔の片面に粗化処理し、最後に防錆処理を行うとよい。
【0022】
最終冷間圧延の加工度は95%以上とする必要がある。最終冷間圧延の加工度が95%未満であると、上記最大値Bを示す温度が380℃を超える。これは、低温短時間で再結晶させるためには、再結晶前の圧延加工度を高くし、歪エネルギーを蓄積する必要があるが、加工度が95%未満であると歪エネルギーの蓄積が不足し、再結晶温度が上昇するからであると考えられる。
なお、加工度が95%未満であると上記最大値A、Cを示す温度も上昇するが、これらの熱処理時間は、それぞれ1000秒、10秒と長いので、短時間(1秒)の最大値Bほど大幅に変化しない。
【0023】
さらに、最終冷間圧延の各パス通過後の圧延銅箔の光沢度のうち、最終パスの1つ前のパスを通過後の光沢度が最も高くなるようにし、かつ厚さ80μm以下のパスであって最終パスの1つ前のパスまでは常に次パスの方が光沢度が高くなるようにする。
圧延で表面近傍にせん断帯が生成して凹凸を形成すると光沢度が低下する。そして、せん断帯が発生した組織は再結晶し難く(再結晶温度が上昇し)、再結晶してもI/Ioが発達しないため、せん断帯の発生を抑える必要がある。そして、前パスと次パスの光沢度が同じであると、次パスでせん断帯が増えていることがわかった。
そこで、常に次パスの方が光沢度が高くするようにすると、せん断帯の発生が抑えられていることになるので、せん断帯の発生を管理する指標として光沢度を用いた。但し、最終パスの光沢度が最も高いいと、室温で回復し、蓄積したひずみが低下するため、時間が経ってから再結晶させるとI/Ioが低くなる。そのため、最終冷間圧延後すぐ((例えば圧延後1日後まで)に再結晶させる必要があり、工業的に実用が困難である。このような理由から、最終パスで1つ前のパスより光沢度を低下させることで、せん断帯はある程度増えるが回復が起こし難くなるので、最終冷間圧延後に時間が経過してから再結晶させてもよく、工業的に実用が可能となる。
但し、厚さが80μm以上では,せん断帯がそもそも発生し難く、光沢度を制御する必要がないので、厚さ80μm以下のパスを対象とする。
【0024】
各パス通過後の圧延銅箔の光沢度を高くする方法としては、圧延ワークロールの直径を小さくする、ロールの表面粗さを低くする、圧延荷重を大きくする、圧延油の粘度を下げるなどの方法が挙げられる。
最終冷間圧延の最終パスを通過後の光沢度が最も高い場合、せん断帯は大幅に減少するが、再結晶温度が低下して室温で回復するので、最大値A,B、Cの少なくとも1つを示す温度が上述の範囲未満となる。
また、最終パスの1つ前のパスよりも前のパスを通過後の光沢度が最も高い場合、上述のように、そのパスを通過してから少なくとも2つのパス(最終パスの1つ前、及び最終パス)で圧延されてせん断帯が増えるので、最大値A,B、Cの少なくとも1つを示す温度が上述の範囲を超える。
また、1パスから最終パスの1つ前のパスまでの間で、次パスの方が光沢度が高いパスがあると、上述のように、そのパスで圧延されてせん断帯が増えるので、最大値A,B、Cの少なくとも1つを示す温度が上述の範囲を超える。
【0025】
また、最終焼鈍後の平均結晶粒径が5〜30 μmである。平均結晶粒径が5 μm未満であると、上記最大値Aを示す温度が150℃未満になる。この理由は、圧延前の結晶粒径が小さいほどひずみが蓄積されるが、ひずみが蓄積し過ぎて再結晶温度が低下するためである。そのため、室温で回復してしまい、最終冷間圧延後すぐに再結晶させる必要があり、工業的に実用が困難である。
なお、平均結晶粒径が5 μm未満であると上記最大値B、Cを示す温度も低下するが、これらの熱処理時間は、それぞれ1秒、10秒と短いので、長時間(1000秒)の最大値Aほど大幅に変化しない。
一方、平均結晶粒径が30μmを超えると、その後の圧延でひずみの蓄積量が少なくなるため駆動力が小さくなり、再結晶温度が上昇して上記最大値Bを示す温度が380℃を超える。なお、上記最大値A、Cを示す温度も上昇するが、これらの熱処理時間は短時間(1秒)の最大値Bよりも長いので、最大値Bほど大幅に変化しない。
【0026】
最終焼鈍後の平均結晶粒径を5〜30 μmに管理する方法としては、例えば最終焼鈍の時間を短くし(例えば1分以内、)最終焼鈍の温度を600℃〜700℃とすることが好ましい。最終焼鈍の温度が600℃未満であると、再結晶が短時間で完了せずに部分再結晶した混粒状態になり、銅箔内に硬い場所と軟らかい場所が混在するため、樹脂層と積層したときに銅箔が破断しやすくなる。又、部分再結晶された材料を焼鈍してもI/Ioが向上しない場合がある。一方、最終焼鈍の温度が700℃を超えると、結晶粒が成長しすぎて粗大になってしまう。
【0027】
平均結晶粒径の測定は、誤差を避けるため、箔表面を100μm×100μmの視野で3視野以上を観察して行う。箔表面の観察は、SIM(Scanning Ion Microscope)またはSEM(Scanning Electron Microscope)を用い、JIS H 0501に基づいて平均結晶粒径を求めることができる。
なお、本発明の圧延銅箔は、樹脂と積層する前の圧延銅箔に上記(1)〜(3)の熱処理を別個に行ったときの状態を規定している。具体的には、圧延銅箔の試験片を複数用意し、そのうち一部の試験片は上記(1)の熱処理を行い、他の試験片は上記(2)の熱処理を行い、別の試験片は上記(3)の熱処理を行う。
【0028】
<銅張積層体及びフレキシブルプリント基板>
又、本発明の圧延銅箔に(1)樹脂前駆体(例えばワニスと呼ばれるポリイミド前駆体)をキャスティングして熱をかけて重合させること、(2)ベースフィルムと同種の熱可塑性接着剤を用いてベースフィルムを本発明の圧延銅箔にラミネートすること、により、圧延銅箔と樹脂基材の2層からなる銅張積層体(CCL)が得られる。又、本発明の圧延銅箔に接着剤を塗着したベースフィルムをラミネートすることにより、圧延銅箔と樹脂基材とその間の接着層の3層からなる銅張積層体(CCL)が得られる。(3)又、本発明の圧延銅箔とベースフィルムを2本のスチールベルト間に挟んで熱プレスするダブルベルト法により、接着剤なしで2層両面CCLが得られる。
これらのCCL製造時に圧延銅箔が熱処理されて再結晶化する。
これらにフォトリソグラフィー技術を用いて回路を形成し、必要に応じて回路にめっきを施し、カバーレイフィルムをラミネートすることでフレキシブルプリント基板(フレキシブル配線板)が得られる。
【0029】
従って、本発明の銅張積層体は、銅箔と樹脂層とを積層してなる。又、本発明のフレキシブルプリント基板は、銅張積層体の銅箔に回路を形成してなる。
樹脂層としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、LCP(液晶ポリマー)、PEN(ポリエチレンナフタレート)が挙げられるがこれに限定されない。また、樹脂層として、これらの樹脂フィルムを用いてもよい。
樹脂層と銅箔との積層方法としては、銅箔の表面に樹脂層となる材料を塗布して加熱成膜してもよい。又、樹脂層として樹脂フィルムを用い、樹脂フィルムと銅箔との間に以下の接着剤を用いてもよく、接着剤を用いずに樹脂フィルムを銅箔に熱圧着してもよい。但し、樹脂フィルムに余分な熱を加えないという点からは、接着剤を用いることが好ましい。
樹脂層としてフィルムを用いた場合、このフィルムを、接着剤層を介して銅箔に積層するとよい。この場合、フィルムと同成分の接着剤を用いることが好ましい。例えば、樹脂層としてポリイミドフィルムを用いる場合は、接着剤層もポリイミド系接着剤を用いることが好ましい。尚、ここでいうポリイミド接着剤とはイミド結合を含む接着剤を指し、ポリエーテルイミド等も含む。
【0030】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。又、本発明の作用効果を奏する限り、上記実施形態における銅箔がその他の成分を含有してもよい。
例えば、銅箔の表面に、粗化処理、防錆処理、耐熱処理、またはこれらの組み合わせによる表面処理を施してもよい。
【実施例】
【0031】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
JIS−H3100(C1100)に規格するタフピッチ銅(TPC)、又はJIS−H3100(C1020)の無酸素銅(OFC)のインゴットに対し、表1に示す添加元素をそれぞれ添加して溶解、鋳造した。この鋳塊を熱間圧延及び面削し、冷間圧延と焼鈍を行い、さらに最終焼鈍した後、最終冷間圧延を行って銅箔を製造した。最終冷間圧延の後、脱脂し、さらに樹脂との密着性を向上させるために銅箔の片面に粗化処理し、最後に防錆処理を行った。
【0032】
<評価>
1.最終焼鈍後の平均結晶粒径
最終焼鈍後の各銅箔サンプル表面をSIM(Scanning Ion Microscope)を用いて観察し、JIS H 0501に基づいて平均粒径を求めた。
2.最終冷間圧延の各パス通過後の圧延銅箔の光沢度
各パス通過後の圧延銅箔の表面の圧延直角方向の60°光沢度を、JIS-Z8741に従って測定した。
【0033】
3.200回折強度の比(I/Io)
100〜600℃の間で10℃間隔で温度を調整した厚さ10mmの2枚の鉄板の間に、防錆処理した上記銅箔サンプルを挟み、その鉄板と同一温度に保持された大気雰囲気の乾燥機に1000秒又は10秒間保持した後、銅箔を取り外し、上記条件(1)、(3)の試料を得た。又、上記条件(2)の試料は、上記鉄板の間に上記銅箔サンプルを挟んで1秒後に取り外した。
これらの上記条件(1)〜(3)の試料につき、圧延面のX線回折で求めた(200)面の回折強度の積分値(I)を求めた。この値を、あらかじめ測定しておいた微粉末銅(325mesh,水素気流中で300℃で1時間加熱してから使用)の(200)面の回折強度の積分値(Io)で割り、比(I/Io)値を計算した。
X線回折装置として、リガク社製の型番RINT2500を用い、X線源にはCoを用いて測定した。
4.屈曲性
銅箔の粗化処理面に樹脂を積層し、それぞれラミネート法,キャスト法,及びダブルベルト法による2層CCLを製造した。
なお、ラミネート法及びダブルベルト法は、樹脂フィルム(宇部興産社製 ユーピレックスVT 25μm厚)を用い、熱圧着温度350℃、通箔速度2m/minで熱圧着して行った。
キャスト法は、ワニス(宇部興産社製Uワニス)を、硬化後のフィルムの厚さが25μmになるよう量を塗布後に180℃で3min乾燥し、その後に180〜350℃に温度を上げながら30min間ワニスを硬化させた。
【0034】
各CCLサンプルの銅箔部分に線幅300μm(回路Line and Space = 0.3mm /0.3mm)の所定の回路を形成し、FPCを得た。
図1に示すIPC(アメリカプリント回路工業会)屈曲試験装置により、屈曲性の測定を行った。この装置は、発振駆動体4に振動伝達部材3を結合した構造になっており、FPC1は、矢印で示したねじ2の部分と振動伝達部材3の先端部の計4点で装置に固定される。振動伝達部材3が上下に駆動すると、FPC1の中間部は、所定の曲率半径rでヘアピン状に屈曲される。
なお、試験条件は次の通りである:試験片幅:12.7mm、試験片長さ:200mm、試験片採取方向:試験片の長さ方向が圧延方向と平行になるように採取、曲率半径r:1.5mm、振動ストローク:20mm、振動速度:1500回/分
以下の基準で屈曲性を評価した。評価が◎、○であれば屈曲性が優れている。
◎:20000回屈曲しても、ラミネート法,キャスト法,及びダブルベルト法のすべてのCCLが割れなかった。
○:15000回屈曲しても、ラミネート法,キャスト法,及びダブルベルト法のすべてのCCLが割れなかった。20000回屈曲するとラミネート法,キャスト法,及びダブルベルト法の1又は2つの方法のCCLが割れた。
△:15000回屈曲したとき、ラミネート法,キャスト法,及びダブルベルト法の1又は2つの方法のCCLが割れた。
×:15000回屈曲したとき、ラミネート法,キャスト法,及びダブルベルト法のすべてのCCLが割れた。
【0035】
得られた結果を表1に示す。なお、すべての実施例の場合、最終冷間圧延の各パスにおいて、1パスから最終パスの1つ前のパスまでは、常に次パスの方が光沢度が高くなるようにした。なお、表中のOFC−70ppmAgは、JIS−H3100(C1020)の無酸素銅(OFC)に対し、Agを70質量ppm添加した組成を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から明らかなように、所定の添加元素を用い、最終焼鈍後の平均結晶粒径を5〜30 μmとし、さらに最終冷間圧延での各パス後の光沢度のうち、最終パスの1つ前のパスを通過後の光沢度が最も高くなるようにした各実施例の場合、比(I/Io)の最大値A〜Cとなる温度がそれぞれ所定範囲内にあり、銅張積層体の種類に応じた種々の加熱条件のいずれにおいても、屈曲性に優れていた。
【0038】
一方、最終冷間圧延で、最終パスを通過後の光沢度が最も高くなるようにした比較例1の場合、最大値Aを示す温度が150℃未満となり、キャスト法によりCCLを製造した場合の屈曲性に劣った。
最終冷間圧延で、最終パスの1つ前のパスよりも前のパスを通過後の光沢度が最も高くなるようにした比較例2〜4の場合、最大値B、Cを示す温度がそれぞれ上述の範囲を超え、ラミネート法及びダブルベルト法によりCCLを製造した場合の屈曲性に劣った。
添加元素を合計で500質量ppmを超えて含有した比較例5の場合、最大値A〜Cを示す温度がそれぞれ上述の範囲を超え、各法によりCCLを製造したときに銅箔が再結晶されず、すべてのCCLの屈曲性に劣った。
【0039】
添加元素を含まない純銅からなる比較例6の場合、常温で回復が起こったと考えられ、最大値Aを示す温度が150℃未満となり、キャスト法によりCCLを製造した場合の屈曲性に劣った。
最終焼鈍後の平均結晶粒径が5μm未満である比較例7の場合、最大値Aを示す温度が150℃未満となり、キャスト法によりCCLを製造した場合の屈曲性に劣った。
最終焼鈍後の平均結晶粒径が30μmを超えた比較例8の場合、最大値Bを示す温度が380℃を超え、ラミネート法によりCCLを製造した場合の屈曲性に劣った。
最終冷間圧延の加工度が95%未満である比較例9の場合、最大値Bを示す温度が380℃を超え、ラミネート法によりCCLを製造した場合の屈曲性に劣った。
最終冷間圧延で、最終パスの1つ前のパスを通過後の光沢度が最も高くなるようにしたが、1パスから最終パスの1つ前のパスまでの間で、次パスよりも光沢度が高いパスが存在した比較例10の場合、最大値B、Cを示す温度がそれぞれ上述の範囲を超えたため、ラミネート法、ダブルベルト法によりCCLを製造した場合の屈曲性に劣った。