特許第6664073号(P6664073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6664073測定支援方法、三次元測定機、及び測定支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6664073
(24)【登録日】2020年2月20日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】測定支援方法、三次元測定機、及び測定支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/20 20060101AFI20200302BHJP
   G01B 5/20 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   G01B21/20 101
   G01B5/20 C
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-25930(P2016-25930)
(22)【出願日】2016年2月15日
(65)【公開番号】特開2017-146114(P2017-146114A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】外川 陽一
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−224947(JP,A)
【文献】 特開2009−069067(JP,A)
【文献】 特開平11−023253(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0050255(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00−21/32
G01B 5/00− 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブを用いて測定対象物を測定する三次元測定機における測定支援方法であって、
要素間計算の対象とされる測定対象物の要素の情報を取得する要素情報取得工程と、
前記要素情報取得工程において情報が取得された要素について、計算結果が算出可能である要素間計算の候補が全て抽出され、かつ、前記要素情報取得工程において情報が取得された要素について、計算結果が算出不可能である要素間計算が非抽出とされる要素間計算候補抽出工程と、
前記要素間計算候補抽出工程において抽出された要素間計算の候補の中から、一種類以上の要素間計算が選択される要素間計算選択工程と、
前記要素情報取得工程において情報が取得された要素について、前記要素間計算選択工程において選択された要素間計算が実行される要素間計算実行工程と、
を含み、
前記要素情報取得工程は、前記測定対象物の要素の情報として、点、直線、円、楕円、球、平面、円筒及び円錐の少なくともいずれかを含む要素一覧から要素を選択し、前記選択した要素の識別情報に基づき前記選択した要素の測定データを取得する測定支援方法。
【請求項2】
前記要素間計算実行工程において実行された要素間計算の結果を表示させる要素間計算結果表示工程を含む請求項1に記載の測定支援方法。
【請求項3】
前記要素情報取得工程は、要素間計算の対象とされる測定対象物の要素の情報として、前記要素の識別情報を取得する請求項1又は2に記載の測定支援方法。
【請求項4】
測定データが取得されている測定対象物の要素を、要素間計算の対象の候補として表示させる要素候補表示工程を含む請求項1からのいずれか一項に記載の測定支援方法。
【請求項5】
前記要素間計算実行工程は、前記要素間計算選択工程において二種類以上の要素間計算が選択された場合に、一回の前記要素情報取得工程において情報が取得された要素について、前記要素間計算選択工程において選択された前記二種類以上の要素間計算が実行される請求項1からのいずれか一項に記載の測定支援方法。
【請求項6】
前記要素間計算候補抽出工程において抽出された要素間計算の候補における要素間計算の内容が視覚的に表されたボタンを表示させる要素間計算候補表示工程を含む請求項1からのいずれか一項に記載の測定支援方法。
【請求項7】
プローブを用いて測定対象物を測定する三次元測定機であって、
要素間計算の対象とされる測定対象物の要素の情報を取得する要素情報取得部と、
前記要素情報取得部において情報が取得された要素について、計算結果が算出可能である要素間計算の候補が全て抽出され、かつ、前記要素情報取得部において情報が取得された要素について、計算結果が算出不可能である要素間計算が非抽出とされる要素間計算候補抽出部と、
前記要素間計算候補抽出部において抽出された要素間計算の候補の中から、一種類以上の要素間計算が選択される要素間計算選択部と、
前記要素情報取得部において情報が取得された要素について、前記要素間計算選択部において選択された要素間計算が実行される要素間計算実行部と、
を備え
前記要素情報取得部は、前記測定対象物の要素の情報として、点、直線、円、楕円、球、平面、円筒及び円錐の少なくともいずれかを含む要素一覧から要素を選択し、前記選択した要素の識別情報に基づき前記選択した要素の測定データを取得する三次元測定機。
【請求項8】
プローブを用いて測定対象物を測定する三次元測定機における測定支援プログラムであって、
コンピュータを、
要素間計算の対象とされる測定対象物の要素の情報を取得する要素情報取得手段、
前記要素情報取得手段において情報が取得された要素について、計算結果が算出可能である要素間計算の候補が全て抽出され、かつ、前記要素情報取得手段において情報が取得された要素について、計算結果が算出不可能である要素間計算が非抽出とされる要素間計算候補抽出手段、
前記要素間計算候補抽出手段において抽出された要素間計算の候補の中から、一種類以上の要素間計算が選択される要素間計算選択手段、及び
前記要素情報取得手段において情報が取得された要素について、前記要素間計算選択手段において選択された要素間計算が実行される要素間計算実行手段、
として機能させ
前記要素情報取得手段は、前記測定対象物の要素の情報として、点、直線、円、楕円、球、平面、円筒及び円錐の少なくともいずれかを含む要素一覧から要素を選択し、前記選択した要素の識別情報に基づき前記選択した要素の測定データを取得する測定支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定支援方法、三次元測定機、及び測定支援プログラムに係り、特に三次元測定機における測定支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、測定対象物を測定するメニューとして、要素間計算が具備される三次元測定機が記載されている。要素間計算とは、測定された要素について、二点間の距離、二点間の座標差などが算出される機能である。
【0003】
要素間計算の結果は、測定対象物の加工精度の検証などに用いることが可能である。なお、本明細書における要素間計算の用語は、特許文献1における要素測定の用語に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−339630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、要素間計算が行われる際に用いられるプログラムは操作手順が多いという課題を有している。例えば、同一の要素について、二点間の距離、及び二点間の座標差の要素間計算が行われる場合、要素の特定、二点間の距離の計算の選択、計算結果の取得の後に、再度、要素の特定がされ、二点間の座標差の計算の選択、計算結果の取得といった手順となる場合がある。
【0006】
すなわち、同一の要素が用いられているにも関わらず、要素の選択が二回行われることがある。このような場合は、要素間計算の種類が増えると、要素間計算の種類の数だけ要素の特定が実行されることとなる。
【0007】
測定対象物が一品製作品、又は試作品などの場合、プログラムによる自動測定ではなく、手動オペレーションによる手動測定が適用されることが多い。操作手順が多い場合は、操作者の負担となる。また、操作手順が多い場合は、測定スループットの低下を招く。そうすると、生産性の低下が懸念される。
【0008】
また、要素間計算を行う際に、どの要素とどの要素とが選択されると、どのような種類の要素間計算が実行可能であるかを操作者が直ちに判断することは難しい。また、選択された要素を用いて、実行すべき要素間計算が可能であるか否かを操作者が直ちに判断することも難しい。
【0009】
そうすると、操作者は要素間計算が実行される度に手順書等の確認が発生してしまう。また、要素の選択、又は要素間計算の選択を誤ると操作の戻りが発生してしまう。このような状況は操作者の負担となる。
【0010】
特許文献1に記載の三次元測定機は、測定メニューとして要素間計算が選択可能な測定指示表示画面が表示されるものの、上記した要素間計算における課題を解決するものではない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、要素間計算が効率的に実行される測定支援方法、三次元測定機、及び測定支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0013】
第1態様の測定支援方法は、プローブを用いて測定対象物を測定する三次元測定機における測定支援方法であって、要素間計算の対象とされる測定対象物の要素の情報を取得する要素情報取得工程と、要素情報取得工程において情報が取得された要素について、計算結果が算出可能である要素間計算の候補が全て抽出され、かつ、要素情報取得工程において情報が取得された要素について、計算結果が算出不可能である要素間計算が非抽出とされる要素間計算候補抽出工程と、要素間計算候補抽出工程において抽出された要素間計算の候補の中から、一種類以上の要素間計算が選択される要素間計算選択工程と、要素情報取得工程において情報が取得された要素について、要素間計算選択工程において選択された要素間計算が実行される要素間計算実行工程と、を含む測定支援方法である。
【0014】
第1態様によれば、情報が取得された要素について、計算結果の算出が可能な要素関係計算の候補が全て抽出され、計算結果の算出が不可能な要素間計算の候補が非抽出とされるので、操作者は計算結果の算出が可能な要素関係計算の候補を全て把握することが可能である。
【0015】
したがって、要素間計算の選択において、操作者が取扱説明書を参照する手間を減らすことができ、要素間計算の選択において、操作者による誤った操作を減らすことができるので、手戻りが抑制される。第1態様において、要素間計算実行工程において実行された要素間計算の結果が記憶される要素間計算結果記憶工程が含む態様も可能である。
【0016】
第2態様は、第1態様の測定支援方法において、要素間計算実行工程において実行された要素間計算の結果を表示させる要素間計算結果表示工程を含まれる。
【0017】
第2態様によれば、操作者は要素間計算の結果を視覚的に把握することができる。
【0018】
第3態様は、第1態様又は第2態様に記載の測定支援方法において、要素情報取得工程は、要素間計算の対象とされる測定対象物の要素の情報として、要素の測定データを取得する。
【0019】
第3態様によれば、測定データを用いた要素間計算が可能である。
【0020】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか一態様の測定支援方法において、要素情報取得工程は、要素間計算の対象とされる測定対象物の要素の情報として、要素の識別情報を取得する。
【0021】
第4態様によれば、要素の識別情報を用いて、要素の測定データを取得することが可能である。
【0022】
第4態様における要素の識別情報は、要素の形状を表す要素の名称が適用されてもよい。
【0023】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか一態様の測定支援方法において、測定データが取得されている測定対象物の要素を、要素間計算の対象の候補として表示させる要素候補表示工程が含まれる。
【0024】
第5態様によれば、操作者は視覚的に要素間計算の候補を把握することができる。
【0025】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか一態様の測定支援方法において、要素間計算実行工程は、要素間計算選択工程において二種類以上の要素間計算が選択された場合に、一回の要素情報取得工程において情報が取得された要素について、要素間計算選択工程において選択された二種類以上の要素間計算が実行される。
【0026】
第6態様によれば、同一の要素の組み合わせについて、二種類以上の要素間計算が実行される場合に、要素間計算ごとに要素情報取得工程が実行されずに済む。
【0027】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか一態様の測定支援方法において、要素間計算候補抽出工程において抽出された要素間計算の候補における要素間計算の内容が視覚的に表されたボタンを表示させる要素間計算候補表示工程が含まれる。
【0028】
第6態様によれば、操作者は要素間計算の内容を視覚的に把握することが可能である。
【0029】
第8態様の三次元測定機は、プローブを用いて測定対象物を測定する三次元測定機であって、要素間計算の対象とされる測定対象物の要素の情報を取得する要素情報取得部と、要素情報取得部において情報が取得された要素について、計算結果が算出可能である要素間計算の候補が全て抽出され、かつ、要素情報取得部において情報が取得された要素について、計算結果が算出不可能である要素間計算が非抽出とされる要素間計算候補抽出部と、要素間計算候補抽出部において抽出された要素間計算の候補の中から、一種類以上の要素間計算が選択される要素間計算選択部と、要素情報取得部において情報が取得された要素について、要素間計算選択部において選択された要素間計算が実行される要素間計算実行部と、を備えた三次元測定機。
【0030】
第8態様によれば、第1態様と同様の効果を得ることができる。
【0031】
第8態様において、第2態様から第7態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、測定支援方法において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担う三次元測定機の構成要素として把握することができる。
【0032】
第9態様の測定支援プログラムは、プローブを用いて測定対象物を測定する三次元測定機における測定支援プログラムであって、コンピュータを、要素間計算の対象とされる測定対象物の要素の情報を取得する要素情報取得手段、要素情報取得手段において情報が取得された要素について、計算結果が算出可能である要素間計算の候補が全て抽出され、かつ、要素情報取得手段において情報が取得された要素について、計算結果が算出不可能である要素間計算が非抽出とされる要素間計算候補抽出手段、要素間計算候補抽出手段において抽出された要素間計算の候補の中から、一種類以上の要素間計算が選択される要素間計算選択手段、及び要素情報取得手段において情報が取得された要素について、要素間計算選択手段において選択された要素間計算が実行される要素間計算実行手段、として機能させる測定支援プログラムである。
【0033】
第9態様によれば、第1態様と同様の効果を得ることができる。
【0034】
第9態様において、第2態様から第7態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、測定支援方法において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担う測定支援プログラムの構成要素として把握することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、情報が取得された要素について、計算結果の算出が可能な要素関係計算の候補が全て抽出され、計算結果の算出が不可能な要素間計算の候補が非抽出とされるので、操作者は計算結果の算出が可能な要素関係計算の候補を全て把握することが可能である。
【0036】
したがって、要素間計算の選択において、操作者が取扱説明書を参照する手間を減らすことができ、要素間計算の選択において、操作者による誤った操作を減らすことができるので、手戻りが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は三次元測定機の全体構成図である。
図2図2図1に示された三次元測定機の情報処理部の概略構成が示されたブロック図である。
図3図3図2に示された要素間計算部の概略構成が示されたブロック図である。
図4図4は要素間計算の手順の流れが示されたフローチャートである。
図5図5は要素情報取得画面の説明図である。
図6図6は要素間計算候補表示画面の説明図である。
図7図7は要素間計算結果出力画面の説明図である。
図8図8はパートプログラムの一例の説明図である。
図9図9は空間補正の説明図である。
図10図10は原点設定の説明図である。
図11図11は基準軸設定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。本明細書では、先に説明した構成と同一の構成には同一の符号を付し、説明を適宜省略することとする。
【0039】
[三次元測定機の全体構成]
図1は測定支援方法が適用される三次元測定機の全体構成図である。本実施形態では、門型移動の三次元測定機を例に説明する。三次元測定機は、Coordinate Measuring Machineと呼ばれることがある。Coordinate Measuring MachineはCMMと省略されることがある。
【0040】
図1に示されたXはマシン座標系におけるX軸方向を表している。図1に示されたYはマシン座標系におけるY軸方向を表している。図1に示されたZはマシン座標系におけるZ軸方向を表している。
【0041】
図1に示された三次元測定機におけるマシン座標系は、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向から構成される三次元直交座標系である。マシン座標系は三次元測定機に予め設定された座標系である。
【0042】
三次元測定機を用いた測定対象物の測定では、測定対象物であるワークの任意の位置を原点として表された座標系であり、測定対象物固有の座標系であるワーク座標系の適用が可能である。
【0043】
本実施形態において説明される三次元測定機は、マシン座標系、又はワーク座標系のいずれが適用されてもよい。以下、マシン座標系とワーク座標系とが一致しているものとして説明する。
【0044】
図1に示された三次元測定機10は手動操作型の三次元測定機である。三次元測定機10は、架台12、及びテーブル14が備えられている。三次元測定機10は、架台12の上にテーブル14が載置された構造を有している。
【0045】
本明細書における上の用語は、特に断らない限り、重力方向と反対方向を表すこととする。同様に、本明細書における下の用語は、特に断らない限り、重力方向を表すこととする。
【0046】
テーブル14の上面14Aは、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16Lが立設される。テーブル14の下面14Cは、架台12に支持される。
【0047】
右Yキャリッジ16Rは、X軸方向におけるテーブル14の一方の端部14Dに立設される。左Yキャリッジ16Lは、X軸方向におけるテーブル14の他方の端部14Eに立設される。図1では、テーブル14の右端がX軸方向の一方の端とされる。また、テーブル14の左端がX軸方向の他方の端とされる。
【0048】
右Yキャリッジ16Rの上部と左Yキャリッジ16Lの上部とはXガイド18を用いて連結される。すなわち、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L、及びXガイド18によって門型フレーム26が構成される。
【0049】
テーブル14のY軸方向に沿う側面であり、X軸方向における一方の端部14Dの側の側面14Bは、右Yキャリッジ16Rとの摺動面が形成される。右Yキャリッジ16Rはテーブル14の側面14Bと対向する面にベアリングが設けられている。
【0050】
テーブル14の上面14AにおけるX軸方向の一方の端部14Dは、右Yキャリッジ16Rとの摺動面が形成される。右Yキャリッジ16Rはテーブル14の上面14AにおけるX軸方向の一方の端部14Dと対向する面にベアリングが設けられている。
【0051】
同様に、テーブル14のY軸方向に沿う側面であり、X軸方向における他方の端部14E側の側面14Fは左Yキャリッジ16Lとの摺動面が形成される。左Yキャリッジ16Lはテーブル14の側面14Fと対向する面にベアリングが設けられている。
【0052】
テーブル14の上面14AにおけるX軸方向の他方の端部14Eは、左Yキャリッジ16Lとの摺動面が形成される。左Yキャリッジ16Lはテーブル14の上面14AにおけるX軸方向の他方の端部14Eと対向する面にベアリングが設けられている。
【0053】
右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L、及びXガイド18から構成される門型フレーム26は、テーブル14によって、Y軸方向と平行方向について移動可能に支持されている。
【0054】
テーブル14の側面14Bは、Y軸方向位置検出用リニアスケールが取り付けられている。Y軸方向位置検出用リニアスケールは、Y軸方向における右Yキャリッジ16Rの位置を検出し、Y軸方向における右Yキャリッジ16Rの位置を表す検出信号を生成する。なお、図1において、Y軸方向位置検出用リニアスケールの図示は省略されている。
【0055】
Xガイド18は、Xキャリッジ20が取り付けられている。Xガイド18はXキャリッジ20との摺動面18Aを有している。Xキャリッジ20はエアベアリングが内蔵されている。
【0056】
すなわち、Xキャリッジ20は、Xガイド18によってX軸方向と平行方向について移動可能に支持されている。なお、Xキャリッジ20に内蔵されるエアベアリングの図示は省略されている。
【0057】
Xガイド18は、X軸方向位置検出用のリニアスケールが取り付けられている。X軸方向位置検出用のリニアスケールは、X軸方向におけるXキャリッジ20の位置を検出し、X軸方向におけるXキャリッジ20の位置を表す検出信号を生成する。なお、図1において、Xガイド18に取り付けられているX軸方向位置検出用のリニアスケールの図示は省略されている。
【0058】
Xキャリッジ20は、Zキャリッジ22が取り付けられている。Xキャリッジ20は、Z軸方向案内用のエアベアリングが内蔵されている。すなわち、Zキャリッジ22は、XガイドによってZ軸方向と平行方向について移動可能に支持されている。なお、図1において、Z軸方向案内用のエアベアリングの図示は省略されている。
【0059】
Xキャリッジ20は、Z軸方向位置検出用リニアスケールが取り付けられている。Z軸方向位置検出用リニアスケールは、Z軸方向におけるZキャリッジの位置を検出し、Z軸方向におけるZキャリッジの位置を表す検出信号を生成する。
【0060】
図1において図示が省略されたX軸方向位置検出用のリニアスケール、Y軸方向位置検出用リニアスケール、及びZ軸方向位置検出用リニアスケールは、図2にリニアスケール124として図示される。
【0061】
X軸方向位置検出用のリニアスケールの出力値は、マシン座標系におけるX方向の座標値とすることができる。同様に、Y軸方向位置検出用リニアスケールの出力値は、マシン座標系におけるY方向の座標値とすることができる。Z軸方向位置検出用リニアスケールの出力値は、マシン座標系におけるZ方向の座標値とすることができる。
【0062】
ワーク座標系が設定された場合は、マシン座標系の座標値はワーク座標系の座標値に変換されることが可能である。
【0063】
Zキャリッジ22は、下端にプローブ24が取り付けられている。プローブ24はハンドル24A、スタイラス24B、及び接触子24Cを含んで構成される。ハンドル24Aの基端はZキャリッジ22の下端に取り付けられる。ハンドル24Aの先端は、スタイラス24Bの基端が取り付けられる。スタイラス24Bの先端は接触子24Cが取り付けられる。
【0064】
ハンドル24Aは測定の際に操作者が手で掴む部材である。スタイラス24B、及び接触子24Cは、プローブ24の測定子を構成する。
【0065】
操作者はハンドル24Aを掴んでプローブ24を移動させる。そして、測定対象物の測定位置に接触子24Cを接触させる。プローブ24から接触子24Cを接触させた測定対象物の位置を表す検出信号が出力される。
【0066】
図1に示される三次元測定機10は、コントローラ28が備えられている。コントローラ28は、プローブ24から出力された検出信号が入力される。すなわち、コントローラ28は、プローブ24を用いて取得された、測定対象物の測定位置におけるX軸方向の座標値、Y軸方向の座標値、及びZ軸方向の座標値を取得する。
【0067】
コントローラ28によって取得された測定対象物の測定位置におけるX軸方向の座標値、Y軸方向の座標値、及びZ軸方向の座標値は、コンピュータ32へ送出される。
【0068】
図1に示されたコンピュータ32は、コントローラ28との間でデータ通信が可能に接続される。コンピュータ32とコントローラ28との接続形態は信号線30を用いた接続でもよいし、無線を用いた接続でもよい。コンピュータ32とコントローラ28とはネットワークを介して接続されてもよい。
【0069】
コンピュータ32は、三次元測定機10の測定結果を確認するソフトウエア32Aがインストールされている。ソフトウエア32Aの詳細は後述する。本実施形態におけるソフトウエアは、コンピュータに三次元測定機の任意の機能を実行させるプログラムに相当する。
【0070】
図1に示された三次元測定機10は表示部34が備えられている。表示部34はコンピュータ32と接続される。表示部34は三次元測定機10における諸情報を表示させる。
【0071】
詳細は後述するが、図1に示された三次元測定機10は、要素間計算が実行可能に構成されている。要素間計算とは、測定対象物の穴、凹部、凸部など構造を要素として、二つの要素間の距離、座標差などの機械的指標が計算される機能である。
【0072】
例えば、ノギス、又はスケールなどを使用することが困難な、測定対象物の内部の穴間の距離などが、測定対象物の測定データを用いて計算される。要素間計算の計算結果は、測定対象物の検査等に用いられることが可能である。なお、要素間計算の詳細は後述する。
【0073】
[情報処理部の説明]
図2図1に示された三次元測定機の情報処理部の概略構成が示されたブロック図である。図2に示された情報処理部100は、図1に示されたコンピュータ32に内蔵されている。
【0074】
図2に示された情報処理部100は、制御部102、操作部104、表示制御部106、及びプログラム実行部108が備えられている。
【0075】
制御部102は図2に示されている情報処理部100の各部を統括的に制御する。制御部102の構成と例として、CPU、及びメモリが具備される構成が挙げられる。なお、CPUはCentral Processing Unitの省略語である。
【0076】
制御部102は、情報処理部100に具備される記憶部のコントローラとして機能する。すなわち、制御部102は情報処理部100に具備される記憶部へのデータの書き込みを制御する。
【0077】
また、制御部102は、情報処理部100に具備される記憶部からのデータの読み出しを制御する。更に、制御部102は、情報処理部100に具備される記憶部から読み出されたデータを各部へ送出する。
【0078】
図2に図示された情報処理部100は、記憶部としてCADデータ記憶部110、及び測定データ記憶部122が具備される。情報処理部100に具備される記憶部は半導体素子、磁気記憶素子、光学記憶素子などの記憶素子を適用可能である。
【0079】
情報処理部100に具備される記憶部は、複数の種類の記憶素子を備えることができる。半導体素子の例としてRAMと呼ばれる一次書き込み読み出し可能な記憶素子、及びROMと呼ばれる読み取り専用記憶素子が挙げられる。
【0080】
操作部104は、キーボード、マウスなど、操作者により操作される操作部材が含まれる。操作部104は、情報処理部100への情報入力手段として機能する。
【0081】
表示制御部106は、表示部34を制御するドライバーとして機能する。表示制御部106は、表示部34に表示させる情報を表示部34の表示形式に合わせて変換する。
【0082】
プログラム実行部108は、図1に示されたソフトウエア32Aをコンピュータ32に実行させる処理部である。例えば、図1に示されたソフトウエア32Aとして、測定位置と測定手順が記述されたパートプログラムがインストールされている場合に、図2に示されたプログラム実行部108は、コンピュータ32にパートプログラムを実行させる。
【0083】
図2に示された情報処理部100は、CADデータ記憶部110が備えられている。CADデータ記憶部110は、測定対象物のCADデータが記憶される。CADデータは測定対象物の外形寸法、構造物の位置、構造物の寸法等など、測定対象物の構造を特定しうる測定対象物の設計情報である。
【0084】
なお、CADはコンピュータ支援設計を表すcomputer aided designの省略語である。CADデータは、図示されない入力インターフェースを介して、ネットワークを経由して取得することが可能である。
【0085】
また、メモリーカード、CD−ROM等記憶媒体に記憶されたCADデータを、図示されない読取装置を用いて読み取ることも可能である。図2に示されたCADデータ記憶部110は、CADデータが作成された際の形式のまま記憶されてもよいし、他の形式に変換されて記憶されてもよい。
【0086】
CDはCompact Discの省略語である。ROMはRead Only Memoryの省略語である。
【0087】
図2に示された情報処理部100は、測定データ取得部120、及び測定データ記憶部122が備えられている。
【0088】
測定データ取得部120は、コントローラ28を介して、測定対象物の測定位置の測定データを取得する。具体的には、図1に示されたプローブ24の位置を表す座標値を取得する。なお、プローブ24の位置は、スライタス中心位置と呼ばれることがある。
【0089】
プローブ24の位置を表す座標値は、図2に示されたリニアスケール124の出力信号から読み取ることが可能である。図2に示されたリニアスケール124は、先に説明したX軸方向位置検出用のリニアスケール、Y軸方向位置検出用のリニアスケール、及びZ軸方向位置検出用のリニアスケールが含まれている。
【0090】
測定データ記憶部122は、測定データ取得部120を用いて取得された測定データが測定対象物の測定位置と対応付けされて記憶される。また、測定データ記憶部122に記憶される測定データは、複数の測定位置から構成される測定対象物の要素と関連付けされて記憶される。
【0091】
図2に示された情報処理部100は、要素間計算部130が備えられている。要素間計算部130は、測定データ記憶部122に記憶されている測定対象物の各要素について、要素間計算を実行する。要素間計算部130の詳細は後述する。
【0092】
図2では、情報処理部100を機能ごとの構成要素として説明した。図2に示された情報処理部100は、CPU、各種プロセッサー、メモリ、及び周辺回路を用いて構成することが可能である。また、各構成要素の機能は、ソフトウエアを介在させて実現されてもよい。
【0093】
[要素間計算の詳細な説明]
<要素間計算部の構成>
次に、要素間計算について詳細に説明する。図3図2に示された要素間計算部の概略構成が示されたブロック図である。
【0094】
図3に示された要素間計算部130は制御部150が備えられている。図3に示された制御部150の構成、及び機能は図2に示された制御部102と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。図3に示された制御部150と、図2に示された制御部102とが兼用されてもよい。
【0095】
図3に示された要素間計算部130は、要素情報取得部152が備えられている。要素情報取得部152では、要素間計算の対象とされる要素の情報が取得される。要素の情報には、要素の測定データ、及び要素の識別情報が含まれる。
【0096】
要素の識別情報とは、要素の形状が表される要素の名称を適用することができる。同一名称の要素が複数存在する場合は、1から順に識別番号が付与されてもよい。
【0097】
要素の情報の取得の一例として、図2に示された表示部34に表示された要素一覧から選択された要素について、要素の識別情報をインデックスとして、測定データ記憶部122から要素の識別情報に対応する測定データが読み出される態様が挙げられる。
【0098】
要素の情報の取得の他の例として、図2に示された操作部104を用いて識別情報が入力された要素について、測定データ記憶部122から測定データが読み出される態様が挙げられる。
【0099】
図3に示された要素間計算部130は、要素間計算候補抽出部154、要素間計算記憶部156、及び要素間計算候補出力部158が備えられている。
【0100】
要素間計算候補抽出部154では、要素情報取得部152を用いて情報が取得された要素について、計算結果が算出可能な要素間計算が抽出される。また、要素間計算候補抽出部154では、計算結果が算出不可能な要素間計算は非抽出とされる。
【0101】
要素間計算候補抽出部154は、要素の種類と計算結果の算出が可能な要素間計算との関係が記憶されている要素間計算記憶部156を参照して、要素情報取得部152を用いて情報が取得された要素の種類をインデックスとして、計算結果の算出が可能な要素間計算を抽出する。
【0102】
ここでいう要素の種類の例として、点、直線、円、楕円、球、平面、円筒、及び円錐が挙げられる。ここに列挙された要素の種類は、要素の識別情報における名称として用いられてもよい。
【0103】
例えば、第一要素、及び第二要素が点の場合、計算結果算出可能な要素間計算として、二点間距離、二点の座標差、及び二点の中点が抽出される。
【0104】
要素間計算候補出力部158は、要素間計算候補抽出部154を用いて抽出された要素間計算の候補の情報が出力される。要素間計算候補出力部158を用いて出力された要素間計算の候補の情報は、図2に示された表示制御部106を介して表示部34に表示される。ここでいう要素間計算の候補の情報とは、要素間計算の候補を識別する識別情報が含まれている。
【0105】
図3に示された要素間計算部130は、要素間計算選択部160が備えられている。要素間計算選択部160では、要素間計算候補出力部158から情報が出力された要素間計算の候補の中から、実行される要素間計算が選択される。
【0106】
要素間計算選択部160では、複数の要素間計算を選択することが可能である。すなわち、要素間計算選択部160では、一回の要素情報の取得において情報が取得された要素について、一種類以上の要素間計算の選択が可能である。
【0107】
要素間計算選択部160における要素間計算の一例として、操作者が図2に示された操作部104を用いて、表示部34に表示された要素間計算の候補の中から要素間計算を選択する態様が挙げられる。
【0108】
要素間計算部130は、要素間計算実行部162、要素間計算結果記憶部164、及び要素間計算結果出力部166が備えられている。要素間計算実行部162では、要素情報取得部152を用いて情報が取得された要素について、要素間計算選択部160を用いて選択された要素間計算が実行される。
【0109】
要素間計算実行部162は、要素情報取得部152を用いて情報が取得された要素について、図2に示された測定データ記憶部122に記憶されている要素の測定データが読み出され、読み出された測定データを用いて、要素間計算選択部160を用いて選択された要素間計算の計算結果が算出される。
【0110】
要素間計算実行部162では、要素間計算選択部160を用いて二種類以上の要素間計算が選択された場合に、要素情報取得部152を用いて情報が取得された要素について、選択された全ての要素間計算が実行される。
【0111】
すなわち、要素情報取得部152を用いた一回の処理によって情報が取得された要素について、二種類以上の要素間計算が選択された場合に、二種類以上の要素間計算が実行される。
【0112】
要素間計算結果記憶部164では、要素間計算実行部162を用いて算出された要素間計算の結果が、実行された要素間計算、及び要素間計算に用いられた要素と関連付けされて記憶される。
【0113】
要素間計算結果出力部166は、要素間計算実行部162を用いて算出された要素間計算の結果が出力される。要素間計算結果出力部166を用いて出力された要素間計算の結果は、図2に示された表示部34に表示させることができる。
【0114】
図3には、要素間計算部130の構成を機能ごとの構成要素として説明した。図3に示された要素間計算部130は、CPU、各種プロセッサー、メモリ、及び周辺回路を用いて構成することが可能である。また、各構成要素の機能は、ソフトウエアを介在させて実現されてもよい。
【0115】
また、図3に示された要素間計算部130の各部は、図2に示された情報処理部100の各部と兼用されてもよい。
【0116】
<要素間計算の手順の説明>
図4は要素間計算の手順の流れが示されたフローチャートである。図3に示された要素間計算部130では、以下の手順に従い要素間計算が実行される。
【0117】
要素間計算が開始されると、要素情報取得工程S10において、要素間計算の対象とされる要素の情報が取得される。要素情報取得工程S10は、図3に示された要素情報取得部152において実行される。
【0118】
図2に示された表示部34に、測定データが取得されている要素であり、要素間計算の対象とされる要素の候補を表示させる要素候補表示工程が含まれる態様も可能である。図2に示された表示部34は要素候補表示部、又は要素候補表示手段として機能させることが可能である。
【0119】
図4に示された要素情報取得工程S10において、要素間計算の対象とされる要素の情報が取得されると、要素間計算候補抽出工程S12へ進む。
【0120】
要素間計算候補抽出工程S12では、要素情報取得工程S10において情報が取得された要素について、計算結果が算出可能な要素間計算が抽出される。すなわち、要素間計算候補抽出工程S12では、図3に示された要素間計算記憶部156に記憶されている要素間計算の中から、要素情報取得工程S10において情報が取得された要素を用いて計算結果の算出が可能な要素間計算の候補が全て抽出される。
【0121】
また、要素間計算候補抽出工程S12では、計算結果が算出不可能な要素間計算は非抽出とされる。図4に示された要素間計算候補抽出工程S12は、図3に示された要素間計算候補抽出部154において実行される。図4に示された要素間計算候補抽出工程S12において、要素間計算の候補が抽出されると、要素間計算候補出力工程S14へ進む。
【0122】
要素間計算候補出力工程S14では、要素間計算候補抽出工程S12において抽出された全ての要素間計算の候補が出力される。要素間計算候補出力工程S14は、図3に示された要素間計算候補出力部158において実行される。
【0123】
要素間計算候補出力工程S14では、要素間計算候補抽出工程S12において抽出された全ての要素間計算の候補を、図2に示された表示部34に表示させることができる。すなわち、要素間計算候補抽出工程S12の出力結果を表示させる要素間計算候補表示工程が含まれる態様も可能である。図2に示された表示部34は、要素間計算候補表示部、又は要素間計算候補表示手段として機能させることが可能である。
【0124】
図4に示された要素間計算候補出力工程S14において要素間計算の候補が出力されると、要素間計算選択工程S16へ進む。
【0125】
要素間計算選択工程S16では、要素間計算候補出力工程S14において出力された要素間計算の候補の中から、一種類以上の要素間計算が選択される。要素間計算選択工程S16では、図2に示された表示部34に表示された一種類以上要素間計算の中から、操作者が操作部104を操作して、一種類以上の要素間計算を選択することができる。
【0126】
図4に示された要素間計算選択工程S16は、図3に示された要素間計算選択部160において実行される。図4に示された要素間計算選択工程S16において、要素間計算が選択されると、要素間計算実行工程S18へ進む。
【0127】
要素間計算実行工程S18では、要素情報取得工程S10において情報が取得された要素について、要素間計算選択工程S16において選択された全ての要素間計算が実行される。要素間計算実行工程S18は、図3に示された要素間計算実行部162において実行される。
【0128】
すなわち、要素情報取得工程S10における一回の処理によって情報が取得された要素について、要素間計算選択工程S16において二種類以上の要素間計算が選択された場合に、二種類以上の要素間計算が実行される。
【0129】
図4に示された要素間計算実行工程S18において、要素間計算が実行されると、要素間計算結果記憶工程S20へ進む。
【0130】
要素間計算結果記憶工程S20では、要素間計算実行工程S18において実行された要素間計算の結果が、要素、及び要素間計算と関連付けされて、図3に示された要素間計算結果記憶部164に記憶される。図4に示された要素間計算結果記憶工程S20において、要素間計算の結果が記憶されると、要素間計算結果出力工程S22へ進む。
【0131】
要素間計算結果出力工程S22では、要素間計算実行工程S18において算出された要素間計算の結果が出力される。要素間計算結果出力工程S22は、図3に示された要素間計算結果出力部166において実行される。
【0132】
図4に示された要素間計算結果出力工程S22では、要素間計算実行工程S18において算出された要素間計算の結果を、図2に示された表示部34に表示させることができる。すなわち、要素間計算結果出力工程S22における出力結果を表示させる要素間計算結果表示工程が含まれる態様も可能である。図2に示された表示部34は、要素間計算結果表示部、又は要素間計算結果表示手段として機能させることが可能である。
【0133】
図4に示された要素間計算の手順は、三次元測定機における測定支援方法の一態様である。図4に示された要素間計算の手順は、測定支援プログラムを用いて自動的に実行されてもよい。
【0134】
<プログラム発明への適用例>
図3に示された要素間計算部130の各部の機能は、コンピュータを用いたプログラム発明を用いて実現させてもよい。すなわち、要素情報取得部152、要素間計算候補抽出部154、要素間計算記憶部156、要素間計算候補出力部158、要素間計算選択部160、要素間計算実行部162、要素間計算結果記憶部164、及び要素間計算結果出力部166は、プログラム発明における要素情報取得手段、要素間計算候補抽出手段、要素間計算記憶手段、要素間計算候補出力手段、要素間計算選択手段、要素間計算実行手段、要素間計算結果記憶手段、及び要素間計算結果出力手段として構成されてもよい。また、要素間計算候補出力手段、要素間計算結果出力手段を備える態様も可能である。
【0135】
<表示画面の具体例の説明>
次に、本実施形態に係る測定支援方法に適用可能なユーザインターフェースとして、図2に示された表示部34に表示させる表示画面の具体例について説明する。図5は要素情報取得画面の説明図である。図6は要素間計算候補表示画面の説明図である。図7は要素間計算結果出力画面の説明図である。なお、図5から図7に示された数値は任意の数値である。
【0136】
図5に示された要素情報取得画面200は、要素表示領域202、第一測定データ表示領域204、及び第二測定データ表示領域206が含まれている。要素表示領域202は、測定データが取得されている要素の中から、二つ以上の要素が表示される。
【0137】
図5では、名称がCircle1である円、名称がCircle2である円が要素表示領域202に表示されている。操作者は、図2に示された操作部104に含まれるマウスを操作して、要素間計算の対象とされる要素として、Circle1、及びCircle2を選択することができる。
【0138】
図5では、第一測定データ表示領域204にCircle1の測定データが表示され、第二測定データ表示領域206にCircle2の測定データが表示されているが、第一測定データ表示領域204、及び第二測定データ表示領域206は省略可能である。図5に示された要素情報取得画面200は、図4における要素情報取得工程S10において表示させることができる。
【0139】
図6に示された要素間計算候補表示画面220は、要素表示領域202、及び要素間計算候補表示領域222が表示される。要素間計算候補表示領域222は、図3に示された要素間計算候補抽出部154において抽出された全ての要素間計算の候補が表示される。
【0140】
図6に示された要素間計算候補表示領域222には、二つの円について計算結果の算出が可能な六種類の要素間計算の内容が視覚的に表されたボタンが表示されている。第一ボタン224は中心間の座標差が算出される要素間計算を表している。
【0141】
第二ボタン226は最小距離が算出される要素間計算を表している。第三ボタン228は中心間距離が算出される要素間計算を表している。第四ボタン230は最大距離が算出される要素間計算を表している。第五ボタン232は中心間の中点が算出される要素間計算を表している。第六ボタン234は交点が算出される要素間計算を表している。
【0142】
操作者は、図2に示された操作部104に含まれるマウスを操作して、一種類以上の要素間計算を表すボタンを選択することができる。図6に示された要素間計算候補表示画面220は、図4における要素間計算選択工程S16において表示させることができる。
【0143】
図7に示された要素間計算結果出力画面240は、項目表示領域242、及び第一測定データ表示領域204、第二測定データ表示領域206、要素間計算結果領域244が含まれている。
【0144】
図7に示された項目表示領域242は、要素間計算結果出力画面240に表示される項目が一覧形式で表示される。項目表示領域242は、Circle1のX座標値を表すCircle1_X、Circle1のY座標値を表すCircle1_Y、Circle1の直径を表すCircle1_D、Circle2のX座標値を表すCircle2_X、Circle2のY座標値を表すCircle2_Y、及びCircle2の直径を表すCircle2_Dが表示されている。
【0145】
また、項目表示領域242は、二つの円の中心間距離の要素間計算結果を表すD、二つの円の最大距離の要素間計算結果を表すD、及び二つの円の最小距離の要素間計算結果を表すDが表示されている。
【0146】
要素間計算結果領域244は、項目表示領域242に示された二つの円の中心間距離の要素間計算結果D、二つの円の最大距離の要素間計算結果D、及び二つの円の最小距離の要素間計算結果Dが表示されている。これらは、図6に示された要素間計算候補表示画面220に表示された要素間計算の候補のうち、選択された要素間計算である。
【0147】
なお、図7に示された第一測定データ表示領域204、及び第二測定データ表示領域206は、図5に示された第一測定データ表示領域204、及び第二測定データ表示領域206と同一であり、ここでの説明は省略される。
【0148】
図7では、要素間計算結果領域244は空欄とされているが、実際の要素間計算結果出力画面240では、要素間計算の計算結果が表示される。
【0149】
<要素間計算の具体例の説明>
次に、要素間計算の具体例について説明する。要素間計算が可能な要素として、点、直線、円、楕円、球、平面、円筒、及び円錐が例示される。これらの要素は以下のように測定点を用いて表される。
【0150】
要素と測定点との関係は、下記[表1]に示されるとおりである。ここうでいう測定点とは要素ごとの要素間計算に用いられる座標値により表される点である。
【0151】
【表1】
【0152】
Xを任意のX軸方向の座標値とされ、Yを任意のY軸方向の座標値とされ、ZをZ軸方向の任意の座標値とされる。
【0153】
測定平面がXY平面の場合の直線は、座標が(X,Y,0)で表される測定点を用いて表される。測定平面がYZ平面の場合の直線は、座標が(0,Y,Z)で表される測定点を用いて表される。
【0154】
測定平面がXZ平面の場合の直線は、座標が(X,0,Z)で表される測定点を用いて表される。要素が円、楕円、及び球の場合は、中心の座標が代表点として用いられる。
【0155】
要素が平面の場合の測定点は次のとおりとされる。Xを任意のX軸方向の座標値とし、Yを任意のY軸方向の座標値とし、ZをZ軸方向の任意の座標値とする。測定平面がXY平面の場合の直線の座標値は(0,0,Z)と表される。測定平面がYZ平面の場合の直線の座標値は点(X,0,0)と表される。測定平面がZX平面の場合の直線の座標値は(0,Y,0)と表される。
【0156】
要素が円筒、又は円錐の場合は、中心軸が上記した直線とみなされ、測定点が決められる。
【0157】
要素と要素間計算との関係は、下記[表2]のとおりである。
【0158】
【表2】
【0159】
二点間の距離が算出される要素間計算、及び二点間の座標差が算出される要素間計算は、全ての要素の組み合わせについて算出が可能である。
【0160】
上記[表2]におけるAは、中点が算出される要素間計算が可能であることが表されている。Bは点から線、面、又は軸へ下ろした垂線と線、面、又は軸の交点が算出される要素間計算が可能であることが表されている。
【0161】
ここでいう点は、球と円筒との要素間計算、及び球と円錐との要素間計算における球の中心が含まれている。
【0162】
Cは点から下ろした垂線の長さが算出される要素間計算が可能であることが表されている。Dは最短距離、及び最長距離が算出される要素間計算が可能であることが表されている。二つの要素が両者とも直線の場合は最短距離が算出可能である。なお、二本の直線が交差する場合はD=0である。
【0163】
Eは交角が算出される要素間計算が可能であることが表されている。直線と平面との要素間計算において、直線と平面とが平行の場合は交角を算出することができない。直線と円筒との要素間計算、直線と円錐との要素間計算、及びにおいて、直線と円筒との交点が存在しない場合は交角を算出することができない。
【0164】
このように、要素間計算の対象となる要素の条件によって要素間計算の結果が算出できない場合が決められているので、取得された要素の条件が要素間計算の結果を算出できない場合は、図4に示された要素間計算候補抽出工程S12において抽出される要素間計算から除外される。
【0165】
以下に説明するFからIを用いて表される要素間計算についても同様である。なお、FからIを用いて表される要素間計算についての、要素ごとの条件と要素間計算の可否等の詳細な説明は省略される。
【0166】
Fは交点が算出される要素間計算が可能であることが表されている。Gは交角を等分二等分する直線が算出される要素間計算が可能であることが表されている。Hは距離が算出される要素間計算が可能であることが表されている。Iは交線が算出される要素間計算が可能であることが表されている。
【0167】
但し、要素間計算の対象とされる要素間の位置等によって、上記[表2]において計算結果が算出可能な要素間計算に該当する場合であっても、図4に示された要素間計算候補抽出工程S12において抽出される要素間計算から除外される。
【0168】
例えば、円と円との要素間計算において、円と円とが非交差の場合、上記[表2]においてFで表されている円と円との交点が算出される要素間計算は、図4に示された要素間計算候補抽出工程S12において抽出される要素間計算から除外される。
【0169】
一方、上記[表2]におけるNULは、算出可能な要素間計算が存在しないことが表されている。図4に示された要素間計算候補抽出工程S12では、上記[表2]において、AからIのいずれかが記載されているセルに対応する要素の情報が取得されると、上記[表2]に基づいて、計算結果の算出が可能な全ての要素間計算が抽出される。
【0170】
図3に示された要素間計算記憶部156には、上記[表1]、及び上記[表2]に対応する要素間計算情報が記憶されていてもよい。図6に示された要素間計算を表すボタンに代わり、上記[表2]に対応する要素間計算情報を、要素間計算候補表示画面220に表示させてもよい。
【0171】
なお、ここで説明した要素と測定点との関係、及び要素と要素間計算との関係は一例であり、測定対象物の測定条件等に基づいて、要素と測定点との関係、及び要素と要素間計算との関係は適宜変更、追加、削除が可能である。
【0172】
[パートプログラムの説明]
本実施形態に示された三次元測定機10は、手動測定の際にパートプログラムに含まれる測定対象物の設計情報を利用することができる。
【0173】
ここで、パートプログラムとは、測定位置ごとの座標値、測定位置の測定順序等が記載されたプログラムであり、主として、自動測定型三次元測定機における自動測定に適用されている。
【0174】
自動測定型三次元測定機は、パートプログラムに記述された測定位置ごとの座標値、及び測定位置の測定順序に従ってプローブを自動的に移動させ、各測定位置におけるプローブの位置を表す座標値を測定値として自動的に取得している。
【0175】
また、図5に示された手順を自動的に実行させる測定支援プログラムは、パートプログラムに含まれていてもよい。
【0176】
本実施形態に示された三次元測定機10は、測定対象物について、自動測定型三次元測定機用のパートプログラムが予め準備されている場合に、パートプログラムに記述された測定位置ごとの座標値が、目標測定位置の座標値として利用される。
【0177】
図8はパートプログラムの一例の説明図である。図8にはパートプログラムが模式的に図示されている。図8には円測定の際の四か所の測定位置の情報、平面測定の際の三か所の測定位置の情報が記載されたパートプログラムが例示されている。
【0178】
図8に示されたパートプログラムは、X、Y、及びZで示されるワーク座標系の座標値を用いて測定位置が記載されている。図8に示されたパートプログラムは、I、J、及びKを用いて、図1に示されたプローブ24が測定ポイントに接触するときの移動方向であるプロービングベクトルが記載されている。Lには、ずれ距離、速度、加速度、又は接触角度等の警告を発する情報が数値として記載されてもよい。
【0179】
パートプログラムは、図2に示された情報処理部100において生成することが可能である。図2に示された情報処理部100においてパートプログラムが生成される場合、プロービングベクトルI、プロービングベクトルJ、プロービングベクトルK、及び情報Lの生成は省略可能である。
【0180】
三次元測定機の外部において、予めパートプログラムが作成される場合、CADデータ記憶部110に代わり、パートプログラム記憶部が具備されてもよいし、CADデータ記憶部110とは別にパートプログラム記憶部が具備されてもよい。
【0181】
[ワーク座標系の設定]
次に、図9から図11を用いて、三次元測定機におけるワーク座標系の設定について説明する。一般に、測定対象物であるワークを測定する場合、ワークに合った基準であるワーク座標系が設定される。
【0182】
ワーク座標系の設定は、空間補正、原点設定、及び基準軸設定に大別される。以下に、空間補正、原点設定、及び基準軸設定の順に説明をする。
【0183】
図11は空間補正の説明図である。空間補正では、まず、測定対象物における任意の平面400が測定される。平面400の測定によって、平面400とZ軸の交点402、及び平面400の法線ベクトル404が決められる。
【0184】
次に、平面400の法線ベクトル404とZ軸が平行にされる。そうすると、図11に実線を用いて図示されたX座標系は、破線を用いて図示されたX座標系に補正される。X座標系がX座標系に補正される処理は空間補正と呼ばれる。
【0185】
そして、交点402に原点406を平行移動させる。そうすると、X座標系は、長破線を用いて図示されたX座標系とされる。以上の処理を経て、ワーク座標系のZ軸の方向、及びワーク座標系の原点が決定される。
【0186】
図10は原点設定の説明図である。原点設定では、まず、穴410が測定される。穴410の測定によって、穴410の中心412が求められる。穴410の中心412に原点406を平行移動させる。
【0187】
そうすると、図10に実線を用いて図示されたX座標系は、破線を用いて図示されたX座標系に補正される。以上の処理を経て、ワーク座標系のXY軸の原点がX座標系の原点として決定される。
【0188】
図11は基準軸設定の説明図である。基準軸設定では、まず、穴420が測定される。穴420の測定によって穴420の中心422が求められる。次に、X軸が穴420の中心422を通る位置までX軸を回転させる。αはX軸を回転させる角度を表している。
【0189】
そうすると、実線を用いて図示されたX座標系は、破線を用いて図示されたX座標系に補正される。以上の処理を経て、ワーク座標系のXY軸の方向として、図11のX座標系が決定される。
【0190】
すなわち、空間補正、原点設定、及び基準軸設定を経て、図11に示されたX軸はワーク座標系のX軸とされる。また、図11に示されたY軸はワーク座標系のY軸とされる。図10に示されたZ軸はワーク座標系のZ軸とされる。
【0191】
ここで説明したワーク座標系の設定方法は一例であり、ワーク座標系の設定方法は、三次元測定機に適用可能な公知の方法が適用されうる。
【0192】
本実施形態では、手動測定型三次元測定機における要素間計算が例示されているが、ここで説明した要素間計算は自動測定型三次元装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0193】
10…三次元測定機、24…プローブ、28…コントローラ、32…コンピュータ、34…表示部、100…情報処理部、122…測定データ記憶部、130…要素間計算部、152…要素情報取得部、154…要素間計算候補抽出部、156…要素間計算記憶部、158…要素間計算候補出力部、160…要素間計算選択部、162…要素間計算実行部、164…要素間計算結果記憶部
図1
図2
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図10
図11