(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各々が磁気抵抗素子と前記磁気抵抗素子の両端に配置された磁気収束板とを有する磁気センサを複数有し、磁場を3軸方向で検出可能な複数の磁気センサセルを三次元に配列して構成される磁気センサアレイと、
前記磁気センサアレイによって計測された計測データを取得する磁場取得部と、
前記計測データによって示される前記磁場の空間分布を、正規直交関数の空間分布を持つ磁場を前記磁気センサアレイで検出したときに複数の前記磁気センサのそれぞれが出力する信号ベクトルを基底ベクトルとして信号分離する信号空間分離部と、を備え、
前記複数の磁気センサセルのそれぞれは、
複数の前記磁気センサの各々が検出した入力磁場を低減させるフィードバック磁場をそれぞれ発生させる磁場生成部と、
前記磁場生成部が前記フィードバック磁場を発生するために流すフィードバック電流に応じた出力信号を出力する出力部と、を有し、
前記磁気センサアレイは、少なくとも一方向に湾曲させた曲面形状を有し、
前記複数の磁気センサセルは、前記三次元の空間において前記曲面形状に含まれる格子点に配置される、
磁場計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る磁場計測装置10の構成を示す。磁場計測装置10は、磁気抵抗素子を用いて磁場を計測する。磁場計測装置10は、心磁計測装置の一例であり、人間の心臓の電気活動により生成される磁場(「心磁」と示す。)を計測する。これに代えて、磁場計測装置10は、人間以外の生体の心磁を計測するために用いられてもよいし、脳磁場等の心磁以外の生体磁場を計測するために用いられてもよい。また、磁場計測装置10は、鉄鋼材料や溶接部の表面および表面下の傷等を検出するための磁気探傷検査のために用いられてもよい。
【0020】
磁場計測装置10は、本体部100と、情報処理部150とを備える。本体部100は、被験者の心磁をセンシングするためのコンポーネントであり、磁気センサユニット110と、ヘッド120と、駆動部125と、ベース部130と、ポール部140とを有する。
【0021】
磁気センサユニット110は、心磁計測時に被験者の胸部における心臓に向かう位置に配置され、被験者の心磁をセンシングする。ヘッド120は、磁気センサユニット110を支持し、磁気センサユニット110を被験者に対向させる。駆動部125は、磁気センサユニット110およびヘッド120の間に設けられ、キャリブレーションを行う場合にヘッド120に対する磁気センサユニット110の向きを変更する。本実施形態に係る駆動部125は、図中のZ軸を中心に磁気センサユニット110を360度回転させることができる第1アクチュエータと、Z軸と垂直な軸(図中の状態においてはX軸)を中心に磁気センサユニット110を回転させる第2アクチュエータとを含み、これらを用いて磁気センサユニット110の方位角および天頂角を変更する。図中の駆動部125として示したように、駆動部125は図中のY軸方向から見るとY字形状を有し、第2アクチュエータは、磁気センサユニット110を図中X軸中心に360度回転させることができる。
【0022】
ベース部130は、他の部品を支える基台であり、本実施形態においては心磁計測時に被験者が乗る台となっている。ポール部140は、ヘッド120を被験者の胸部の高さに支持する。ポール部140は、磁気センサユニット110の高さを被験者の胸部の高さに調整するべく上下方向に伸縮可能であってよい。
【0023】
情報処理部150は、本体部100による計測データを処理して表示・印刷等により出力するためのコンポーネントである。情報処理部150は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。これに代えて、情報処理部150は、心磁計測の情報処理用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回線によって実現された専用ハードウェアであってもよい。
【0024】
図2は、本実施形態に係る磁気センサユニット110の構成を示す。磁気センサユニット110は、磁気センサアレイ210およびセンサデータ収集部230を有する。磁気センサアレイ210は、各々が磁気抵抗素子と磁気抵抗素子の一端および他端の少なくともいずれか一方に配置されるか、または、磁気抵抗素子の両端に配置された磁気収束板とを有する磁気センサを複数有し、磁場を3軸方向で検出可能な複数の磁気センサセル220を三次元に配列して構成される。なお、磁気収束板は、磁気抵抗素子の両端に配置される方が、後述する磁場の空間分布のサンプリング精度を高くすることができる点で好適である。本図において、磁気センサアレイ210は、X方向、Y方向およびZ方向のそれぞれに複数の磁気センサセル220(例えば、X方向に8個、Y方向に8個、およびZ方向に2個の計128個の磁気センサセル220)が平面状に配置されている。
【0025】
センサデータ収集部230は、磁気センサアレイ210に含まれる複数の磁気センサセル220に電気的に接続され(図示せず。)、複数の磁気センサセル220からのセンサデータ(検出信号)を収集して情報処理部150へと供給する。
【0026】
図3は、本実施形態に係る磁気センサアレイ210中の磁気センサセル220の構成および配置を示す。各磁気センサセル220は、各々が磁気抵抗素子を有する複数のセンサ部300x〜z(以下、「センサ部300」と総称する)を有する。本実施形態において、センサ部300xはX軸方向に沿って配置されX軸方向の磁場を検出可能である。また、センサ部300yはY軸方向に沿って配置されY軸方向の磁場を検出可能である。また、センサ部300zはZ軸方向に沿って配置されZ軸方向の磁場を検出可能である。本図において一点鎖線で示される拡大図によって示されるように、本実施形態において、各センサ部300は、それぞれ、磁気抵抗素子の両端に磁気収束板が配置されている。したがって、各センサ部300は、磁気収束板に挟まれた狭い位置に配置された磁気抵抗素子を用いて磁場の空間分布をサンプリングすることにより、各軸方向において、空間におけるサンプリング点を明確にすることができる。各センサ部300の構成の詳細については後述する。
【0027】
複数の磁気センサセル220は、X軸方向に沿ってΔx、Y軸方向に沿ってΔy、Z軸方向に沿ってΔzの間隔でそれぞれ等間隔に配列されている。磁気センサアレイ210における各磁気センサセル220の位置は、X方向の位置i、Y方向の位置j、およびZ方向の位置kの組[i,j,k]により表される。ここで、iは0≦i≦Nx−1を満たす整数であり(NxはX方向に配列された磁気センサセル220の個数を示す)、jは0≦j≦Ny−1を満たす整数であり(NyはY方向に配列された磁気センサセル220の個数を示す)、kは0≦k≦Nz−1を満たす整数である(NzはZ方向に配列された磁気センサセル220の個数を示す)。
【0028】
本図において、センサ部300x、300y、および300zにより検出する磁場の3軸方向と、磁気センサセル220を配列する三次元の方向とが同一方向である。これにより、測定磁場の分布の各成分の把握が容易となる。また、センサ部300x、300y、および300zは、各磁気センサセル220内において、磁気センサセル220を配列する三次元方向それぞれから見て互いに重ならないように配置されている。また、本図において、センサ部300x、300y、および300zは、複数のセンサ部300の間に設けるギャップ側に一端が設けられ、他端が当該ギャップから離れるように3軸方向の各軸方向に延伸して配置されている。一例として、本図において、磁気センサセル220の正面視左下の角部に空隙(ギャップ)が設けられ、センサ部300x、300y、および300zは、一端が当該空隙に接するように設けられ、他端が当該空隙から離れるようにX軸、Y軸、およびZ軸方向の各軸方向に延伸して配置されている例を示す。本図において、センサ部300x、300y、および300zが、立方体状の磁気センサセル220の一角部から互いに垂直な3辺に沿って配置され、該一角部に空隙が設けられている。また、後に述べるセンサ部300x、300y、および300zが有するコイルまたは磁性体が、互いに重ならないように配置されていることが好ましい。これにより、測定点を明確にでき、測定磁場の各成分の把握がさらに容易となる。また、センサ部300x、300y、および300zが有する他軸感度を互いに等価なものとみなすことができる。この他軸感度は、センサ部300x、300y、および300zが有するコイル、または磁性体による相互干渉によって発生するものである。しかしながら、検出する磁場の3軸方向と磁気センサセル220を配列する三次元の方向とは異なっていてもよい。両者が異なる場合、磁気センサセル220内におけるセンサ部300の配置や、磁気センサセル220の配列方向に制約を受けることがなく、磁気センサアレイ210の設計の自由度を増すことができる。
【0029】
図4は、本実施形態に係る磁気抵抗素子を有する磁気センサの入出力特性の一例を示す。本図は、横軸が磁気センサに入力する入力磁場の大きさBを示し、縦軸が磁気センサの検出信号の大きさV_xMR0を示す。磁気センサは、例えば、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto−Resistance)素子またはトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magneto−Resistance)素子等を有し、予め定められた一軸方向の磁場の大きさを検出する。
【0030】
このような磁気センサは、入力磁場Bに対する検出信号V_xMR0の傾きである磁気感度が高く、10pT程度の微小な磁場を検出することができる。その一方で、磁気センサは、例えば、入力磁場Bの絶対値が1μT程度で検出信号V_xMR0が飽和してしまい、入出力特性の直線性が良好な範囲が狭い。そこで、このような磁気センサにフィードバック磁場を発生させる閉ループを加えると、磁気センサの直線性(または線形性と呼ぶ)を改善することができる。このような磁気センサについて次に説明する。
【0031】
図5は、本実施形態に係るセンサ部300の構成例を示す。センサ部300は、複数の磁気センサセル220のそれぞれの内部に設けられ、磁気センサ520と、磁場生成部530と、出力部540とを有する。なお、センサ部300の一部、例えば増幅回路532および出力部540は、磁気センサセル220側ではなくセンサデータ収集部230側に設けられてもよい。
【0032】
磁気センサ520は、
図4で説明した磁気センサと同様に、GMR素子またはTMR素子等の磁気抵抗素子を有する。また、磁気センサ520は、磁気抵抗素子の両端に配置された磁気収束板を有する。磁気センサ520が有する磁気抵抗素子は、感磁軸の正の方向を+X方向とした場合に、+X方向の磁場が入力すると抵抗値が増加し、−X方向の磁場が入力すると抵抗値が減少するように形成されてよい。即ち、磁気センサ520が有する磁気抵抗素子の抵抗値の変化を観測することにより、当該磁気センサ520に入力する磁場Bの大きさを検出することができる。例えば、磁気センサ520の磁気感度をSとすると、磁気センサ520の入力磁場Bに対する検出結果は、S×Bと算出できる。なお、磁気センサ520は、一例として、電源等が接続され、抵抗値の変化に応じた電圧降下を、入力磁場の検出結果として出力する。磁気センサ520の構成の詳細については後述する。
【0033】
磁場生成部530は、磁気センサ520が検出した入力磁場を低減させるフィードバック磁場を磁気センサ520に与える。磁場生成部530は、例えば、磁気センサ520に入力する磁場Bとは逆向きで、絶対値が当該入力磁場と略同一のフィードバック磁場B_FBを発生させ、入力磁場を打ち消すように動作する。磁場生成部530は、増幅回路532と、コイル534とを含む。
【0034】
増幅回路532は、磁気センサ520の入力磁場の検出結果に応じた電流をフィードバック電流I_FBとして出力する。磁気センサ520が有する磁気抵抗素子が、少なくとも1つの磁気抵抗素子を含むブリッジ回路により構成される場合、増幅回路532の入力端子対には、ブリッジ回路の出力がそれぞれ接続される。そして、増幅回路532は、ブリッジ回路の出力に応じた電流をフィードバック電流I_FBとして出力する。増幅回路532は、例えば、トランスコンダクタンスアンプを含み、磁気センサ520の出力電圧に応じたフィードバック電流I_FBを出力する。例えば、増幅回路532の電圧・電流変換係数をGとすると、フィードバック電流I_FBは、G×S×Bと算出できる。
【0035】
コイル534は、フィードバック電流I_FBに応じたフィードバック磁場B_FBを発生させる。コイル534は、磁気センサ520が有する磁気抵抗素子および磁気抵抗素子の両端に配置された磁気収束板を取り囲むように巻かれている。コイル534は、磁気センサ520の全体にわたって均一のフィードバック磁場B_FBを発生させることが望ましい。例えば、コイル534のコイル係数をβとすると、フィードバック磁場B_FBは、β×I_FBと算出できる。ここで、フィードバック磁場B_FBは、入力磁場Bを打ち消す向きに発生するので、磁気センサ520に入力する磁場は、B−B_FBに低減されることになる。したがって、フィードバック電流I_FBは、次式のように示される。
【数1】
【0036】
(数1)式をフィードバック電流I_FBについて解くと、センサ部300の定常状態におけるフィードバック電流I_FBの値を算出することができる。磁気センサ520の磁気感度Sおよび増幅回路532の電圧・電流変換係数Gが十分に大きいとすると、(数1)式から次式が算出される。
【数2】
【0037】
出力部540は、磁場生成部530がフィードバック磁場B_FBを発生するために流すフィードバック電流I_FBに応じた出力信号V_xMRを出力する。出力部540は、例えば、抵抗値Rの抵抗性素子を有し、当該抵抗性素子にフィードバック電流I_FBが流れることによって生じる電圧降下を出力信号V_xMRとして出力する。この場合、出力信号V_xMRは、(数2)式より次式のように算出される。
【数3】
【0038】
以上のように、センサ部300は、外部から入力する磁場を低減させるフィードバック磁場を発生するので、磁気センサ520に実質的に入力する磁場を低減させる。これにより、センサ部300は、例えば、磁気センサ520として
図4の特性を有する磁気抵抗素子を用い、入力磁場Bの絶対値が1μTを超えても、検出信号V_xMRが飽和することを防止できる。このようなセンサ部300の入出力特性を次に説明する。
【0039】
図6は、本実施形態に係るセンサ部300の入出力特性の一例を示す。本図は、横軸がセンサ部300に入力する入力磁場の大きさBを示し、縦軸がセンサ部300の検出信号の大きさV_xMRを示す。センサ部300は、磁気感度が高く、10pT程度の微小な磁場を検出することができる。また、センサ部300は、例えば、入力磁場Bの絶対値が100μTを超えても、検出信号V_xMRの良好な直線性を保つことができる。
【0040】
即ち、本実施形態に係るセンサ部300は、例えば、入力磁場Bの絶対値が数百μT以下といった、予め定められた入力磁場Bの範囲において、当該入力磁場Bに対する検出結果が線形性を有するように構成される。このようなセンサ部300を用いることにより、例えば、心磁信号といった微弱な磁気的信号を簡便に検出することができる。
【0041】
図7は、本実施形態に係る磁気センサ520の構成例を示す。一例として、本実施形態に係る磁気センサ520は、磁気抵抗素子702と、磁気抵抗素子702の一端および他端に配置された磁気収束板704、706を有する。磁気収束板704、706は磁気抵抗素子702を間に挟むように配置されている。すなわち、磁気抵抗素子702の両端に磁気収束板が配置されている。
図7において、正面視で感磁軸に沿って磁気抵抗素子702の右端に配置されている磁気収束板704が、感磁軸の正側に設けられた磁気収束板であり、磁気抵抗素子702の左端に配置されている磁気収束板706が、感磁軸の負側に設けられた磁気収束板である。感磁軸の負側から正側に向かって磁場が磁気収束板704、706に入力すると、磁気抵抗素子702の抵抗が増加または減少してよい。なお、感磁軸は、磁気抵抗素子702を形成する磁化固定層で固定された磁化の方向に沿っていてよい。磁気収束板704、706は、例えば鉄等の軟磁性体材料により構成される。軟磁性体材料により構成される磁気収束板704、706を磁気抵抗素子702の一端および他端に配置することにより、磁気抵抗素子702を通過する磁力線を増やすことができ、これにより磁気センサ520の感度を高めることができる。
【0042】
なお、本図においては、磁気収束板が、磁気抵抗素子702の一端および他端の両方に配置された例を示したが、磁気収束板は磁気抵抗素子702の一端および他端のいずれか一方のみに設けられてもよい。しかしながら、磁気センサ520の感度をより高めるためには磁気抵抗素子702の一端および他端の両方に磁気収束板を設けることが好ましい。また、磁気抵抗素子702の一端および他端の両方に磁気収束板を設けると、2つの磁気収束板704および706に挟まれた狭い位置に配置される磁気抵抗素子702の位置が感磁部、すなわち、空間サンプリング点となるため、感磁部が明確となり、後述する信号空間分離技術との親和性をより高めることができる。このように、磁気抵抗素子702の両端に磁気収束板704および706が配置された磁気センサ520を各センサ部300に用いることにより、本実施形態に係る磁場計測装置10は、
図3に示されるように、各軸方向において、両端を磁気収束板に挟まれた極めて狭い(例えば100μm以下)位置において、磁場の空間分布をサンプルすることができるので、生体磁場を計測するSQUIDコイル(〜2cm)を使用して磁場の空間分布をサンプリングする場合に比べて、サンプリングの精度(位置精度)が高くなる。
【0043】
図8は、本実施形態に係る磁気センサアレイ210、センサデータ収集部230、およびセンサデータ処理部800の構成を示す。
【0044】
磁気センサアレイ210は、複数の磁気センサセル220を有する。複数の磁気センサセル220のそれぞれは、上述のとおり複数のセンサ部300x〜zを有する。本図においては、磁気センサアレイ210が各次元方向に有する複数の磁気センサセル220のうち、位置[i,j,k]、[i+1,j,k]、[i,j+1,k]、および、[i,j,k+1]に関する部分を示す。
【0045】
センサデータ収集部230は、複数のAD変換器810およびクロック発生器812を有する。複数のAD変換器810は、磁気センサセル220の複数のセンサ部300x〜zのそれぞれに対応して設けられており、対応するセンサ部300が出力するアナログの検出信号(
図6のセンサ出力信号V_xMR)をデジタルの計測データ(Vx,Vy,Vz)に変換する。ここで、Vx、Vy、およびVzは、センサ部300x、300y、および300zからの検出信号をデジタルに変換した計測値(例えばデジタルの電圧値を表す)である。
【0046】
クロック発生器812は、サンプリングクロックを発生させ、共通のサンプリングクロックを複数のAD変換器810のそれぞれへ供給する。そして、複数のAD変換器810のそれぞれは、クロック発生器812から供給された共通のサンプリングクロックに応じてAD変換を行う。したがって、異なる位置に設けられた3軸のセンサ部300x〜zの出力をそれぞれAD変換する複数のAD変換器810の全てが同期動作をする。これにより、複数のAD変換器810は、異なる空間に設けられた3軸のセンサ部300x〜zの検出結果を同時にサンプリングすることができる。
【0047】
センサデータ処理部800は、複数の磁気センサセル220のそれぞれに対応して設けられた複数の磁場取得部820、複数の較正演算部830、複数のデータ出力部840、基底ベクトル記憶部850、および信号空間分離部860を有する。
【0048】
磁場取得部820は、それぞれ対応する磁気センサセル220に接続された3つのAD変換器810に接続され、磁気センサアレイ210を構成する複数の磁気センサセル220内のセンサ部300x〜zによって計測された計測データをそれぞれ取得する。具体的に、磁場取得部820は、AD変換器810によってデジタルに変換されたデジタルの計測データ(Vx,Vy,Vz)を所定のタイミングTでラッチして取得するフリップフロップ等を用いて構成されてよい。
【0049】
較正演算部830は、磁場取得部820に接続され、磁場取得部820が取得した計測データを較正パラメータを用いて較正する。較正演算部830による計測データの較正の概要は以下のとおりである。位置[i,j,k]にある磁気センサセル220に入力される磁場をB(Bx,By,Bz)とし、センサ部300x、300y、300zによる3軸磁気センサの検出結果をV(Vx,Vy,Vz)とする。この場合、3軸磁気センサの磁気センサ特性を行列Sとすると、3軸磁気センサの検出結果Vは次式のように示すことができる。
【数4】
【0050】
ここで、Sxx、Syy、およびSzzは、それぞれセンサ部300x、300y、および300zの主軸方向の感度(主軸感度)を表し、Sxy、Sxz、Syx、Syz、Szx、およびSzyは他軸方向の感度(他軸感度)を表している。また、Vos,x、Vos,y、およびVos,zは、それぞれセンサ部300x、300y、および300zのオフセットを表している。ここで主軸方向とは、センサ部300x、300y、および300zが主として計測する方向であり、他軸方向とは、それらが主として計測しない方向である。磁場の計測において、主軸方向は磁場が入力されたときに磁気センサが最大の感度を示す方向(入力軸方向、感度軸方向)である。そして、他軸方向は、主軸方向と垂直な軸とする。例えば、センサ部300xがX軸方向を計測する場合、主軸方向はX軸であり、他軸方向はY軸方向およびZ軸方向である。磁気センサ520は、主軸感度のみを持つことが理想的だが、プロセス因等により他軸感度を持つことがある。また、磁気センサ520は、上述した相互干渉によって発生する他軸感度も持つ。なお、センサ部300の主軸感度と他軸感度の3成分であらわされる縦ベクトルを、感度ベクトルと呼ぶ。例えばセンサ部300xの感度ベクトルnxは、(Sxx、Sxy、Sxz)の3成分で表される。この時、センサ部300xの出力は、センサへの入力磁場と、感度ベクトルnxとの内積となる。また、同様に、センサ部300yの感度ベクトルnyは、(Syx、Syy、Syz)の3成分で表され、センサ部300zの感度ベクトルnzは、(Szx、Szy、Szz)の3成分で表される。
【0051】
センサ部300のそれぞれが、検出すべき入力磁場の範囲において、当該入力磁場に対する検出結果が線形性を有するので、行列Sの各要素は、入力磁場Bの大きさとは無関係な略一定の係数となる。また、センサ部300が他軸感度を有していても、当該センサ部300の検出結果が線形性を有していれば、行列Sの各要素は、入力磁場Bの大きさとは無関係な略一定の係数となる。
【0052】
したがって、較正演算部830は、行列Sの逆行列S−1とオフセット(Vos,x,Vos,y,Vos,z)とを用いることで、次式のように、計測データV(Vx,Vy,Vz)を元の入力される磁場を示す磁場計測データB(Bx,By,Bz)に変換することができる。つまり、較正演算部830は、磁場取得部820からのデジタルの計測データVを、主軸感度、他軸感度、および、オフセットを用いて較正する。これにより、較正演算部830は、オフセット、主軸方向の感度、他軸方向の感度を補正する。なお、この変換は、センサ部300x〜zが上述の磁気収束板を備えている場合も成立する。これは、磁気センサセル220がセンサ部300x〜zを利用した3軸磁気センサとして構成されるためであり、線形代数を利用した変換が可能となるからである。なお、センサ部300の出力から較正演算部830までに、ハイパスフィルタ等を備えることにより、計測データVを交流成分とする場合は、オフセットの較正は省略してもよい。すなわち、較正演算部830は、磁場取得部820からのデジタルの計測データVを、主軸感度、他軸感度、および、オフセットの少なくともいずれかを用いて較正してもよい。なお、これらの較正パラメータは、あらかじめ既知の直流または交流の磁場を計測することによって算出されていてよい。また、本実施形態における較正演算部830は、各磁気センサセル220からの出力を、独立な3つのベクトルで形成される座標系として表現した成分として較正できればよく、必ずしも直交している3つのベクトルの座標系(いわゆる直交座標系)として表現した3軸成分に補正する必要はない。すなわち、すべての磁気センサセル220が同一の磁場を測定している場合に、各磁気センサセル220に対応したそれぞれの較正演算部830は、対応する磁場取得部820からのデジタルの計測データVを、独立な3軸成分で表現された、同一の磁場計測データBに較正してよい。
【数5】
【0053】
較正演算部830は、環境磁場計測データを用いて行列Sの逆行列S−1およびオフセット(Vos,x,Vos,y,Vos,z)を算出し、磁場取得部820により取得された磁場計測データを、これらの較正パラメータを用いて磁場計測データBに変換してデータ出力部840に供給する。
【0054】
以上のように、各センサ部300が線形性を有するので、較正演算部830は、略一定の係数を用いて計測データを磁場計測データBに変換することができる。すなわち、較正演算部830が用いる略一定の係数は、環境磁場データを用いて一組の較正パラメータとして定めることができる。
【0055】
データ出力部840は、較正演算部830によって較正された磁場計測データBを信号空間分離部860に供給する。
【0056】
基底ベクトル記憶部850は、信号空間分離部860が磁場計測データBを信号分離するために必要な基底ベクトルを予め記憶し、これを信号空間分離部860へ供給する。
【0057】
信号空間分離部860は、データ出力部840から供給された磁場計測データB、すなわち、デジタルの計測データVを較正した磁場計測データBによって示される磁場の空間分布を、正規直交関数の空間分布を持つ磁場を磁気センサアレイ210で検出したときに複数の磁気センサ520のそれぞれが出力する信号ベクトルを基底ベクトルとして信号分離する。この際、信号空間分離部860は、信号分離に必要な基底ベクトルを、基底ベクトル記憶部850から取得する。そして、信号空間分離部860は、基底ベクトル記憶部850から取得した基底ベクトルを用いて、磁場計測データBによって示される磁場の空間分布を、測定対象磁場(信号源空間信号)と外乱磁場(外乱空間信号)とに信号分離し、外乱磁場を抑制して測定対象磁場を算出し、これを出力する。
【0058】
図9は、本実施形態に係る磁場計測装置10が磁場の空間分布を信号分離するフローを示す。ステップ910において、基底ベクトル記憶部850は、基底ベクトルを記憶する。一例として、基底ベクトル記憶部850は、測定対象磁場の測定前に、球面調和関数の空間分布を持つ磁場を磁気センサアレイ210で検出したときに複数の磁気センサ520のそれぞれが出力する信号ベクトルを基底ベクトルとして記憶する。すなわち、基底ベクトルは、磁気センサアレイ210の各磁気センサの位置と感度ベクトルから計算によってあらかじめ算出し、基底ベクトル記憶部850に記憶しておいてよい。すなわち、基底ベクトル記憶部850は、空間内の予め定められた点を座標原点に指定した時に球面調和関数を空間サンプリングして得られる磁場信号ベクトルを基底ベクトルとして記憶する。換言すれば、基底ベクトル記憶部850は、空間の磁場を、球面調和関数の級数展開をもとに2つの部分空間(信号源空間と外乱空間)で表現した磁場信号ベクトルを、各磁気センサの位置と感度ベクトルから計算によって予め算出し、基底ベクトルとして記憶する。ここで、球面調和関数とは、n次元ラプラス方程式の解となる斉次多項式を単位球面に制限することで得られる関数であり、球面上での正規直交性を有する。なお、本図においては、一例として、基底ベクトル記憶部850が基底ベクトルを記憶するステップ910を、磁場計測装置10による磁場の空間分布を信号分離するフローにおける最初のステップとした場合について示す。しかしながら、基底ベクトル記憶部850は、磁場計測装置10による磁場の空間分布を信号分離するフローの前に、基底ベクトルを事前に記憶しておいてもよい。また、基底ベクトル記憶部850は、シミュレーション結果等により予め決められている信号ベクトルを基底ベクトルとして記憶してもよい。
【0059】
次に、ステップ920において、信号空間分離部860は、磁気センサアレイ210によって計測され、較正演算部830によって較正された磁場計測データBを、データ出力部840から取得する。
【0060】
また、ステップ930において、信号空間分離部860は、ステップ910において基底ベクトル記憶部850が基底ベクトルとして記憶した信号ベクトルを、基底ベクトル記憶部850から取得する。なお、本フローにおいて、ステップ920とステップ930とはどちらが先に行われてもよい。
【0061】
ステップ940において、信号空間分離部860は、ステップ920において取得した磁場計測データBによって示される磁場の空間分布を、ステップ930において取得した信号ベクトルを基底ベクトルとして利用して級数展開する。そして、信号空間分離部860は、級数展開によって得られたベクトルから、磁場の空間分布を測定対象磁場(信号源空間信号)と外乱磁場(外乱空間信号)とに信号分離する。なお、正規直交関数は球面調和関数であってよい。また、信号空間分離部860は、信号分離するにあたって、基底ベクトルの級数展開係数を最小2乗法により計算する。
【0062】
そして、ステップ950において、信号空間分離部860は、ステップ940において信号分離した結果に基づいて、外乱磁場を抑制して測定対象磁場だけを算出して出力し、処理を終了する。以下、これについて詳細に説明する。
【0063】
静磁場B(r)は、ラプラス方程式ΔV(r)=0を満たすポテンシャルV(r)を用いて、次式のように、ポテンシャルV(r)の空間勾配(gradient)として求められる。ここで、rは座標原点からの位置を表す位置ベクトルであり、Δはラプラシアンであり、μは透磁率であり、∇はベクトル微分演算を表す演算子である。
【数6】
【0064】
そして、ラプラス方程式の解は、一般に、正規直交関数系である球面調和関数Yl,m
(θ,φ)を使った級数展開の形での解を持つため、ポテンシャルV(r)は次式で表すことができる。ここで、|r|は位置ベクトルrの絶対値(座標原点からの距離)であり、θおよびφは球座標における2つの偏角であり、lは方位量子数であり、mは磁気量子数であり、αおよびβは多極モーメントであり、LinおよびLoutはそれぞれ被験者から見て磁気センサアレイ210の手前の空間と奥の空間のそれぞれについての級数の数である。方位量子数lは正の整数をとり、磁気量子数mは−lから+lまでの整数をとる。すなわち、例えばlが1のとき、mは−1、0、および1であり、例えばlが2のとき、mは−2、−1、0、1、および2である。なお、磁場においては単磁極が存在しないことから、(数7)において方位量子数lは、0からではなく1から始まっている。(数7)における第1項は、座標原点からの距離に反比例する項であり、被験者から見て磁気センサアレイ210の手前の空間に存在するポテンシャルを示している。また、(数7)における第2項は、座標原点からの距離に比例する項であり、被験者から見て磁気センサアレイ210の奥の空間に存在するポテンシャルを示している。
【数7】
【0065】
したがって、(数6)および(数7)によれば、静磁場B(r)は、次式で表すことができる。ここで、(数8)における第1項は、被験者から見て磁気センサアレイ210の手前の空間に存在する磁場源、すなわち、心臓の電気活動が作る心磁場(測定対象磁場)を示している。また、(数8)における第2項は、被験者から見て磁気センサアレイ210の奥の空間に存在する磁場源が作る外乱磁場を示している。
【数8】
【0066】
球面調和関数を使った級数展開の形でラプラス方程式の解を表した場合、その一般解は無限級数となるが、生体磁場を計測するのに十分なSNR(信号ノイズ比、すなわち、外乱磁場及びセンサノイズに対する測定対象磁場信号の比)が得られればよく、実際には10項程度の級数で表せば十分であると言われている。また、脳磁計における信号空間分離の級数については、Lin=8、Lout=3前後が一般的に利用されている。したがって、本実施形態においても、LinおよびLoutは、上記と同程度の値を用いればよい。しかしながら、LinおよびLoutの値は、これに限定されるものではなく、外乱磁場を十分抑制し測定対象磁場だけを算出するのに十分な、いかなる数値であってもよい。
【0067】
ここで、磁気センサアレイ210に用いられている全部でN個のセンサに対し、al,mおよびbl,mを次式のように定義する。ここで、n1、n2、・・・nNは、各センサ部の感度ベクトルである。なお、このal,mおよびbl,mは磁気センサセル220の個数を(センサ部300x、y、およびzがあるため)3倍した数の次元を持つベクトルとなる。つまり、全センサ数の次元を持つベクトルとなる。一例として、このベクトル(al,m、bl,m)は、各磁気センサセル220の出力から、較正演算部830における補正がなされたデータを用いて計算される。このように、センサ部300x、y、およびzの主軸方向の感度と他軸方向の感度補正(補正された感度ベクトル)を含めて計算されたal,mおよびbl,mの値は基底ベクトル記憶部850に記憶される。基底ベクトル記憶部850が、磁気感度(主軸感度、他軸感度)の補正を含めて計算されたal,mおよびbl,mの値を記憶する本実施形態に係る磁場計測装置10は、動作時に、磁場取得部820によって取得されたデータに対して較正演算部830における補正を行うことで、各磁気センサセル220の磁気感度(主軸感度、他軸感度)の補正を行うことが可能となる。また別の一例として、基底ベクトル記憶部850が、磁気感度(主軸感度、他軸感度)の補正がなされていない(補正されてない感度ベクトルによる)既定のal,mおよびbl,mの値を記憶している場合は、各磁気センサセル220の出力から、較正演算部830において、(数5)のように、各センサ部の既定の感度ベクトルに一致するように磁気感度の補正がなされたデータに変換し、データ出力部840へと出力し、その後、信号空間分離部860での演算が実施される。
【数9】
【0068】
このようにal,mおよびbl,mを定義したので、ある時刻にそれぞれの磁気センサセル220において出力されるセンサ出力ベクトルΦは、以下の式で表すことができる。
【数10】
【0069】
さらに、Sin、Sout、Xin、およびXoutをそれぞれ次のように定義する。すなわち、Sinを、l=1からl=Linまで、各lにおいてm=−lからlまでの整数をとった時の各ベクトルaを順に列に並べた、計Lin×(Lin+2)列のベクトルと定義する。また、Soutを、l=1からL=Loutまで、各lにおいてm=−lからlまでの整数をとった時の各ベクトルbを順に列に並べた、計Lout×(Lout+2)列のベクトルと定義する。また、Xinを、l=1からl=Linまで、各lにおいてm=−lからlまでの整数をとった時の各多極モーメントα
l,mを順に列に並べたベクトルを転置した、計Lin×(Lin+2)行のベクトルと定義する。また、Xoutを、l=1からl=Linまで、各lにおいてm=−1からlまでの整数をとった時の各多極モーメントβ
l,mを順に列に並べたベクトルを転置した、計Lout×(Lout+2)行のベクトルと定義する。
【数11】
【0070】
そうすると、センサ出力ベクトルΦは、次式に示すように、行列Sと縦ベクトルXの内積の形で表すことができる。ここで、行列Sは、基底ベクトルを示し、例えば、ステップ930において、信号空間分離部860が基底ベクトル記憶部850から取得したものである。また、縦ベクトルXは、基底ベクトルに係る係数を示す。
【数12】
【0071】
本実施形態に係る信号空間分離部860は、ステップ940において、この(数12)で得られたセンサ出力ベクトルΦのモデル式に基づいて、次式を用いてΦ=SXを最小2乗近似で満たす縦ベクトルXを決定する。これにより、信号空間分離部860は、ステップ940において、磁場の空間分布を解くことができる。つまり磁場の空間分布を推定できるようになる。すなわち、測定対象磁場をφin_h=SinXin、外乱磁場をφout_h=SoutXoutとして推定できる。この際、信号空間分離部860は、外乱磁場の大きさが予め定められた範囲を超える場合に、測定対象磁場を高精度に計測できない旨の警告を出してもよい。これにより、磁場計測装置10は、装置が故障している場合や、測定対象磁場を高精度に計測することができない程大きな外乱磁場が存在している場合等の状況において、測定対象磁場を計測してしまうことを事前に防止することができる。この場合に、信号空間分離部860は、例えば、SoutXoutの各成分のいずれかの大きさが予め定められた閾値を超える場合に外乱磁場の大きさが予め定められた範囲を超えると判断してもよいし、SoutXoutの各成分の大きさの和や平均が予め定められた閾値を超える場合に外乱磁場の大きさが予め定められた範囲を超えると判断してもよい。
【数13】
【0072】
そして、ステップ950において、信号空間分離部860は、ステップ940において決定した縦ベクトルを用いて、SoutXoutを減少させて外乱磁場成分、すなわち、(数8)における第2項の成分を抑制した結果を出力する。信号空間分離部860は、SinXinだけを結果として出力することで、外乱磁場成分を抑制して、測定対象磁場成分、すなわち、(数8)における第1項の成分だけを出力してもよい。
【0073】
これにより、本実施形態に係る磁場計測装置10によれば、磁場を3軸方向で検出可能な複数のセンサ部300を有する磁気センサセル220を三次元に配列して構成される磁気センサアレイ210を用いて計測された磁場計測データBによって示される磁場の空間分布を、測定対象磁場と外乱磁場とに信号分離することができる。また、磁場計測装置10は、外乱磁場成分を抑制して測定対象磁場成分だけを出力するので、測定対象磁場をより高精度に計測することができる。また、複数のセンサ部300がそれぞれ磁気収束板を有するので、センサ部300の磁気感度を高めるとともに、空間サンプリング点を明確化することができ、信号空間分離技術との親和性をより高めることができる。さらに、磁場計測装置10が較正演算部830を有する場合には、高精度な較正(主軸感度ミスマッチ、他軸感度、およびオフセット等)を実現でき、複数のセンサ部300のキャリブレーション誤差を、信号空間分離段階で処理するのではなく、その前段で低減させることができるので、より高精度に測定対象磁場成分を取り出すことができる。
【0074】
図10は、本実施形態の変形例に係る磁場計測装置10が曲面状に配置された磁気センサアレイ210を用いて心磁場を計測する例を示す。本変形例において、磁気センサアレイ210は、X方向、Y方向およびZ方向のそれぞれに複数の磁気センサセル220(例えば、X方向に12個、Y方向に8個、およびZ方向に2個の計192個の磁気センサセル220)が曲面状に配置されている。各磁気センサセル220は、三次元格子空間における曲面形状に含まれる格子点にそれぞれ配置されている。なお、ここで、格子点とは、X方向、Y方向およびZ方向にそれぞれ予め定められた間隔で等間隔に設けられた格子状の点である。一例として、各磁気センサセル220は、X方向、Y方向およびZ方向のいずれか一の方向から見たときに、一の方向に直交する方向に凸を有する曲面に沿うように配置されている。本図においては、各磁気センサセル220が、Y方向から見たときに、Z軸のプラス方向に凸を有する曲面に沿うように配置されている例を示す。この際、磁気センサアレイ210は、例えば、各磁気センサセル220の各頂点が、Z軸のプラス方向に凸を有する予め定められた曲面を超えない範囲で、できる限りZ軸のマイナス方向に配置されるように、各磁気センサセル220を三次元格子空間における格子点にそれぞれ配置することで、Z軸のプラス方向に凸を有する曲面形状を形成してよい。
【0075】
本実施形態に係る磁気センサアレイ210は、一例として磁気センサセル220を直方体状に形成しているため、磁気センサアレイ210の形状を容易に変更することができる。すなわち、本実施形態に係る磁気センサアレイ210は、磁気センサセル220を格子点に配置して構成可能な様々な形状を採ることができ、設計の自由度が高い。したがって、磁気センサアレイ210は、本図に示すように、複数の磁気センサセル220を三次元の空間において曲面形状に含まれる格子点に配置することで、三次元の空間において曲面形状を容易に形成することができる。
【0076】
そして、本変形例において、磁場計測装置10は、被験者の胸部が曲面の中心側に位置するように、すなわち、測定対象磁場源である心臓が曲面の中心側に位置するように磁気センサアレイ210を配置して磁場を計測する。これにより、磁場計測装置10は、測定対象磁場源である心臓に近い位置で計測した磁場計測データBを用いて信号空間分離することで、高精度に測定対象磁場と外乱磁場とを分離することができる。なお、この際、磁気センサアレイ210は、曲面の曲率が被験者の胸部周りの曲率と略同等であると、測定対象磁場源である心臓により近い位置で磁場を計測できるため、好ましい。
【0077】
図11は、本実施形態の変形例に係る磁場計測装置10が閉曲面状に配置された磁気センサアレイ210を用いて心磁場を計測する例を示す。本変形例において、磁気センサアレイ210は、X方向、Y方向およびZ方向のそれぞれに複数の磁気センサセル220(例えば、X方向に16個、Y方向に8個、およびZ方向に4個の計512個の磁気センサセル220)が閉曲面状に配置されている。各磁気センサセル220は、三次元格子空間における閉曲面形状に含まれる格子点にそれぞれ配置されている。本変形例においても、磁気センサアレイ210は、
図10と同様、X方向、Y方向およびZ方向のいずれか一の方向から見たときに、一の方向に直交する方向に凸を有する曲面に沿うように配置された複数の磁気センサセル220を有する。本変形例において、磁気センサアレイ210は、さらに、当該一の方向に直交する方向に凹を有する曲面に沿うように配置された複数の磁気センサセル220を有する。そして、磁気センサアレイ210は、凸を有する曲面形状と凹を有する曲面形状とを合わせて閉曲面形状を形成する。一例として、本図においては、磁気センサアレイ210が、Y方向から見たときに、Z軸のプラス方向に凸を有する曲面に沿うように配置された複数の磁気センサセル220と、Z軸のプラス方向に凹を有する曲面に沿うように配置された複数の磁気センサセル220とを有し、Z軸のプラス方向に凸を有する曲面形状と凹を有する曲面形状とを合わせて閉曲面形状を形成する例を示す。
【0078】
そして、本変形例において、磁場計測装置10は、被験者の胸部を閉曲面で囲むように、すなわち、測定対象磁場源である心臓を閉曲面で囲むように磁気センサアレイ210を配置して磁場を計測する。これにより、磁場計測装置10は、心臓の電気活動により被験者の前方に生成される磁場に加えて、被験者の後方に生成される磁場を計測し、前方および後方で計測した磁場計測データBを用いて信号空間分離することで、より高精度に測定対象磁場と外乱磁場とを分離することができる。なお、本変形例においても、
図10と同様、磁気センサアレイ210は、曲面の曲率が被験者の胸部周りの曲率と略同等であると、磁場源である心臓により近い位置で磁場を計測できるため、好ましい。
【0079】
ここで、磁気センサアレイ210の形状の違いによる磁場計測装置10の外乱磁場の減衰能力を示す外乱減衰率をシミュレーションした結果を示す。
【0080】
図12は、外乱減衰率のシミュレーションに用いた異なる形状の磁気センサアレイ210を示す。本図における(a)は、3軸の磁気センサセル220を1単位として、
図2の板型のタイプとして、縦8個(x軸方向)×横8個(y軸方向)×高さ1個(z軸方向)に並べた磁気センサアレイ210を示す。
【0081】
本図における(b)は、
図10の湾曲型のタイプとして、縦8個(x軸方向)×横8個(y軸方向)×高さ1個(z軸方向)に並べたものを少なくとも一方向に湾曲させた磁気センサアレイ210を示す。本図の(b)において、複数の磁気センサセル220は、XZ平面で見た場合に、磁気センサアレイ210におけるX軸方向の中心に向うにつれて、Z軸座標がプラス方向に増加するように配列されており、これにより磁気センサアレイ210はZ軸のプラス方向に凸の形状を有している。すなわち、磁気センサアレイ210は、少なくとも一方向に湾曲させた曲面形状を有し、当該曲面形状は略放物線状に形成されている。なお、本図においては、Y軸方向に沿った複数の磁気センサセル220のZ軸座標が全て等しい場合を一例として示しているが、Y軸方向に沿った複数の磁気センサセル220のZ軸座標の少なくとも一部は異なっていてもよい。また、本図の(b)においては、XZ平面で見た場合に、複数の磁気センサセル220は、磁気センサアレイ210におけるX軸方向の中心を境に左右対称に配置される場合を一例として示しているが、これに限定されるものではない。X軸方向において対になる複数の磁気センサセル220、例えば、X軸方向の両端に配置される複数の磁気センサセル220のZ軸座標の少なくとも一部は異なっていてもよい。また、本図の(b)において、複数の磁気センサセル220は、XY平面で見た場合に、X軸方向に沿った複数の磁気センサセル220のY軸座標が全て等しい場合を一例として示しているが、X軸方向に沿った複数の磁気センサセル220のY軸座標の少なくとも一部は異なっていてもよい。
【0082】
本図における(c)は、
図11の円筒型のタイプとして、横8個(y軸方向)×高さ1個(z軸方向)に磁気センサセル220を並べたセンサセルグループを1つとして、8つのセンサグループをXZ面で楕円を描くように配置したもので、少なくとも一方向に湾曲させたもの(この場合は4つのセンサグループで湾曲させた磁気センサアレイ)を2つ対称になるように環状に配置した磁気センサアレイ210を示す。
【0083】
本図における(2b)は、(b)をZ軸方向に2段並べた磁気センサアレイ210、すなわち、縦8個(x軸方向)×横8個(y軸方向)×高さ2個(z軸方向)に並べたものを少なくとも一方向に湾曲させた磁気センサアレイ210を示す。なお、段とは、磁気センサセル220を信号源空間を覆う曲面から離れる一の方向に階層構造で並べるレイアウトで、その階層の数え方、呼び方である。
【0084】
各磁気センサセル220同士の間隔は約40mmである。シミュレーションにあたり、Linは6、Loutは4とした。また、計算原点は、(a)の板型においては、磁気センサアレイ210の表面の中心から‐Z方向に4cm離間した位置とした。(b)および(2b)の湾曲型タイプの原点は、磁気センサアレイ210の内側表面の中心(XY平面上で見た中心)点から−Z方向に4cm離間した位置とした。(c)の円筒型タイプの原点は、磁気センサアレイ210のXY方向における中心をXY平面座標とし、磁気センサアレイ210をY方向から見たときの外形を円で近似したときの中心をXZ平面座標として配置されている。
【0085】
以下の表は、(a)板型、(b)湾曲型、および(c)円筒型のそれぞれの形状に対して、(1)3m離れた位置に外乱ノイズ源を置いた場合の外乱減衰率、および(2)センサノイズの低減率をシミュレーションしたものである。
【表1】
【0086】
以下の表は、湾曲型タイプにおいて、(b)Z軸方向に1個の磁気センサセル220を配置する1段構成と、(2b)Z軸方向に2個の磁気センサセル220を配置する2段構成の性能を比較したものである。
【表2】
【0087】
したがって、以上のことから本実施形態の
図2の例よりも
図10、
図11の変形例の方が、外乱磁場の減衰能力に優れていることがわかる。したがって、外乱磁場の影響を受けずに心臓磁場を観測するためには、
図10や
図11のように磁気センサセルが湾曲した面に沿うように配置されていることが好ましい。これは、板型に比べて湾曲した形状が(数式8)であらわされた磁場を近似しやすいためである。センサが持つノイズも、同様な理由で外乱とみなされやすくなり、低減される。また、
図10の湾曲型において、Z軸方向に1個の磁気センサセルを配置する1段構成よりも、2個の磁気センサセルを配置する2段構成の方が外乱減衰率がすぐれていることがわかる。これは、2段構成の場合、磁場の詳細な変化がとらえやすくなるためである。また、2段構成の場合、Z軸方向の磁場の変化が観測できるため、心臓磁場の3次元的な観測が可能となるため好ましい。また、さらに段を増やした2段以上の構成としてもよい。
【0088】
図13は、本実施形態の変形例に係る磁場計測装置10が磁気シールド1200を用いて心磁場を計測する例を示す。本変形例において、磁場計測装置10は、心磁場を計測する際に磁気シールド1200を用いる。
【0089】
磁気シールド1200は、例えば、パーマロイ(Ni−Feの合金)やミューメタル(パーマロイにCuやCrを加えた合金)等の高い透磁率の材料で形成される。一例として、磁気シールド1200は、中空円筒状に形成され、被験者の胸部および磁気センサアレイ210が中空空間に位置するように、被験者の胸部および磁気センサアレイ210を取り囲んで配置される。ここで、測定対象磁場源(心臓)が存在する被験者の胸部を磁場源空間、磁場源空間の外側であって磁気シールド1200の内壁に囲まれた空間をシールド空間、および、磁気シールド1200の外壁より外側の空間を外部空間とする。なお、この場合、磁気センサアレイ210は、シールド空間に位置する。
【0090】
磁気シールド1200は、先に述べたような高透磁率材料で形成されており、磁束をよく吸収するため、外部空間から来る外乱磁場(地磁気等を含む)を、磁気シールド1200の表面に沿って分布させることができる。これにより、磁気シールド1200は、シールド空間内に入ってくる外乱磁場(地磁気等を含む)を大幅に低減させることができるうえ、シールド空間内における磁場の空間分布が複雑化することを防止することができる。
【0091】
このため、本変形例において、磁場計測装置10は、信号空間分離をするにあたって、外乱磁場が低減および単純化されているので、より高精度に測定対象磁場と外乱磁場とを分離することができる。
【0092】
なお、
図13に示す変形例においては、磁場計測装置10が平面状に配置された磁気センサアレイ210を用いて心磁場を計測する場合において、磁気シールド1200を用いた例について説明した。しかしながら、磁場計測装置10は、
図10に示されるような曲面状、および、
図11に示されるような閉曲面状に配置された磁気センサアレイ210を用いて心磁場を計測する場合についても同様に、磁気シールド1200を用いることができる。
【0093】
図14は、本実施形態に係る磁気センサアレイ210の変形例を示す。
図14においては、
図3と同じ機能および構成を有する部材に対して同じ符号を付すとともに、以下相違点を除き説明を省略する。本図において、磁気センサアレイ210が有する複数の磁気センサセル220のそれぞれは、角部に空隙(ギャップ)を設けることなく、センサ部300x、300y、および300zが設けられている。このように、複数の磁気センサセル220のそれぞれは、センサ部300をこのように配置しても、各センサ部300x、300y、および300zが、X軸、Y軸、およびZ軸の三次元方向それぞれから見て互いに重ならないように配置することができる。このような配置とすることにより、複数のセンサ部300x、300y、および300zを磁気センサセル220内に分散して配置することができ、1つの角部に複数のセンサ部300x、300y、および300zが集中して配置されることを防ぐことができる。本実施形態の磁場計測装置10は、このようにセンサ部300が配置された磁気センサアレイ210を用いて計測データを取得してもよい。
【0094】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0095】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0096】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0097】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0098】
図15は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0099】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0100】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0101】
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD−ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD−ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0102】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0103】
プログラムが、DVD−ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0104】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0105】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROMドライブ2226(DVD−ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0106】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0107】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0108】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0109】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
各々が磁気抵抗素子と磁気抵抗素子の両端に配置された磁気収束板とを有する磁気センサを複数有し、磁場を3軸方向で検出可能な複数の磁気センサセルを三次元に配列して構成される磁気センサアレイと、磁気センサアレイによって計測された計測データを取得する磁場取得部と、計測データによって示される磁場の空間分布を、正規直交関数の空間分布を持つ磁場を磁気センサアレイで検出したときに複数の磁気センサのそれぞれが出力する信号ベクトルを基底ベクトルとして信号分離する信号空間分離部と、を備える磁場計測装置を提供する。