【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。実施例、比較例において配合に用いた各成分を下記に示す。なお、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドの略であり、その後の数字はそれぞれEO、POの平均付加モル数を表す。尚、表中における実施例及び比較例における各成分の配合の数値は純分の質量%を表す。また、各成分中のアルキル基の表記は、例えば、アルキル(C12〜16)の場合、炭素数12以上、16以下のアルキル基を有する混合物を表す。
【0035】
(A)成分
A−1:オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド
A−2:ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド
A−3:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド
A−4:アルキル(C12〜16)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド
(A´)成分〔(A)成分の比較成分〕
A´−1:ラウリルアミン
【0036】
(B)成分
B−1:水酸化カリウム
(B´)成分〔(B)成分の比較成分〕
B´−1:水酸化ナトリウム
【0037】
(C)成分
C−1:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(EDTA−4Na)
C−2:ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩(NTA−3Na)
C−3:メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩(MGDA−3Na)
C−4:グルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩(GLDA−4Na)
【0038】
(D)成分
D−1:イオン交換水
【0039】
(E)成分
E−1:非イオン界面活性剤1[ポリオキシエチレン(EO:6.5モル)アルキル(C9〜11)エーテル]
E−2:非イオン界面活性剤2[ポリオキシエチレン(EO:25モル)アルキル(獣脂脂肪)エーテル]
E−3:オクチルジメチルアミンオキシド
E−4:ドデシルジメチルアミンオキシド
【0040】
(F)成分
F−1:モノエタノールアミン
【0041】
実施例1から64、比較例1から7
表1から表7に示す配合に基づき水性除菌剤を調製した。表に示す再生繊維を含む不織布の基材シートに、基材シート100質量部当たり300質量部となるように各水性除菌剤を24時間含浸させて基材シートに除菌剤を十分に行き渡らせて清掃用シートとした。万力を用いて清掃用シートを10N・cmの力で10分間締め込み、搾出された溶液(以下、搾出液という)のpH、搾出液中の(A)成分量、清掃用シートによる拭き取り痕の軽減性、除菌性、ウイルス不活化、皮膚刺激性、抗菌持続性、抗ウイルス持続性、被清掃素材に対する腐食性の試験、除菌剤による不織布の変色性の試験、洗浄性試験を行った。また、水性除菌剤に対する清掃用シートの使用感の性状を評価した。結果を表1から表7にあわせて示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
【表7】
【0049】
搾出液のpHの測定方法
<pHメーターの校正>
pHメーター(HORIBA製;pH/イオンメーター F−23)にpH測定用複合電極(HORIBA製;ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を入れる。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)を使用した。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86標準液(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬した。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86、pH9.18、pH4.01の順に校正操作を行った。
<pH測定>
恒温槽内にて25℃の恒温に調整された搾出液100mLにpH測定用電極を3分間浸し、pHを測定した。
【0050】
搾出液中の(A)成分量(陽イオン界面活性剤量)測定方法
搾出液8mLをビーカーにとり、搾出液に0.25MのpH5.7の酢酸ナトリウム緩衝液1mL、6×10
-4MのクロムアズロールS溶液1mLを順次加え、磁気攪拌機で攪拌しながら、2.0mol/Lラウリル硫酸ナトリウム水溶液で滴定して搾出液中の(A)成分量を求めた。滴定の終点は、溶液が紫からオレンジに色調変化することを目視によって判定した。
【0051】
※1:清掃用シートによる拭き取り痕の軽減性試験
15cm×15cmのガラス板を用意し、表1から表7に示す各清掃用シートにより、ガラス板表面を上下5回、左右5回清拭を行った。その後、室温にて2時間ガラス板を乾燥させ、ガラス板表面に発生した拭き残り痕について目視によって評価した。
評価基準:
◎:拭き残り痕が全く気にならない。
〇:拭き残り痕がほとんど気にならない。
△:拭き残り痕がやや気になるが、問題ないレベル。
×:拭き残り痕が気になる。
とし、△、〇、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0052】
※2:除菌性試験(芽胞菌)
試験方法:
供試菌株をSCD寒天培地(日水製薬品)に塗抹し、37℃で培養し、培養後、顕微鏡観察にて芽胞が十分に形成されていることを確認した。平板培地上に滅菌済み純水を10mL入れ、コロニーを掻き取り懸濁液を収集した。収集した懸濁液に、10000rpmで、4℃、15分間の条件で遠心洗浄を3回実施し、遠心後、滅菌済み純水を適量加え、2.0×10
8〜9.0×10
8CFU/mL程度になるように菌数を調製し、ウォーターバスにて80℃、15分間の加熱処理をして芽胞菌液とした。
各搾出液10mLに、供試芽胞菌液0.1mLを添加し、25℃にて15分間接触させた後、滅菌中和溶液を加えよく攪拌した。
芽胞菌としてBacillus subtilis NBRC3134(10
8CFU/mLレベル)及びClostridium difficile ATCC9689(10
8CFU/mLレベル)を用いた。
この1mLをSCD寒天培地で混釈培養し生菌数を確認し、下記の基準で評価した。
評価基準:
1点:供試菌のlog reductionが3以上の菌数減少
2点:供試菌のlog reductionが2以上、3未満の菌数減少
3点:供試菌のlog reductionが2未満の菌数減少
として上記各菌種について菌数減少を点数で評価し、菌数減少の点数の平均値を求め、以下の基準で除菌性を評価した。
◎:平均値が1.0点以上、1.5点未満。
○:平均値が1.5点以上、2.0点未満。
△:平均値が2.0点以上、2.5点未満。
×:平均値が2.5点以上。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0053】
※3:ウイルス不活化試験
試験方法:
試験管に0.9mLの搾出液と、10
8TCID50/mLとなるように調整したウイルス液0.1mLを加え、ミキサーで混合し、25℃で10分間作用させた。作用後0.1mLをサンプリングし、9.9mLの作用停止液(2%チオ硫酸ナトリウム、0.2%レシチン及び1.5%ポリソルベート80を含む細胞増殖液)に添加して100倍希釈後、ウイルスに対する水性除菌剤(搾出液)の作用を停止させた。これをウイルス感染価測定用資料原液として感染価の測定に用いた。同様に、搾出液の代わりに、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate bufferred saline、以下、PBSと略すことがある)を用いた試験を実施し、コントロールとした。リン酸緩衝生理食塩水は、塩化ナトリウム8g、塩化カリウム0.2g、リン酸水素二ナトリウム1.44g、リン酸二水素カリウム0.24gの4種類の塩を混合し、超純水で900mLに溶解後、塩酸でpHを7.4に調整する。1Lにメスアップ後、オートクレーブにより滅菌する。ウイルスとして、ネコカリシウイルス、マウスノロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、アデノウイルス、AIDSウイルス、インフルエンザウイルスを用いた。
ウイルス感染価測定用試料原液をPBSで10倍段階希釈した後、感染価測定用試料原液及び希釈ウイルス液50μLとウシ胎仔血清(FBS)を5%添加したDulbecco‘s modified Eagle’s Medium(DMEM)に懸濁した細胞を96ウェルプレートに植え込んだ。その後、炭酸ガスふ卵器において37℃、5%CO
2の条件で4日間培養した。
培養後、倒立顕微鏡下でウイルスの増殖によるCPE(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed−Muench法を用いてウイルス感染価(TCID50/mL)を求め、下記の基準で評価した。
評価基準:
1点:ウイルス感染価のLog reductionが5以上の減少
2点:ウイルス感染価のLog reductionが4以上、5未満の減少
3点:ウイルス感染価のLog reductionが3以上、4未満の減少
4点:ウイルス感染価のLog reductionが3未満の減少
として上記各ウイルスについてウイルス感染価の減少を点数で評価し平均値を求め、以下の基準で除ウイルス性を評価した。
◎:平均値が1.0点以上、1.5点未満。
〇:平均値が1.5点以上、2.5点未満。
△:平均値が2.5点以上、3.5点未満。
×:平均値が3.5以上。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0054】
※4:皮膚刺激性に関する試験
表1から表7に示す各種清掃用シートを1枚とり出し、1cm四方に切り出し、粘着テープを使用して被験者(無作為に選定した成人)のひじの内側に貼り付け、24時間経過後に剥がした直後に、皮膚の状態を目視で確認して、皮膚刺激性を評価した。
評価基準:
◎:紅斑、浮腫が全く見られない。
〇:紅斑、浮腫がほとんど見られない。
△:やや赤みのある紅斑や軽度の浮腫が見られる。
×:赤みの強い紅斑や重度の浮腫が見られる。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0055】
※5:抗菌持続性試験
20mm×20mmのステンレス板を用意し、表1から表7に示す各清掃用シートで上下5回左右5回清拭を行い、25℃に設定したインキュベーターで所定時間(1時間、12時間、24時間、72時間)静置する。対照として未処理のステンレス板も用意した。所定時間静置した各テストパネルを滅菌したプラスチックボトルに入れ、除菌性試験で調整した各種菌液(細菌:Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Escherichia coli、Alcaligenes faecalis、Serratia marcescens、カビ:Aspergillus niger)を0.2mL接種して、パネル表面全体にまんべんなく塗布した。各テストパネルを25℃で2時間自然乾燥後、細菌についてはSCDLP培地20mL、カビについてはGPLP液体培地20mLを加え、ストマッカー袋に入れ、60回手で揉み細菌を洗い出した。洗い出した試験液について、細菌についてはSCD寒天培地、カビについてはPDA培地を用いて培養し、菌数(cfu/mL)を求め、対照と比較して下記の基準で評価した。
評価基準:
1点:静置時間72時間まで、対照と比較して菌数の常用対数値が3以上小さい。
2点:静置時間24時間まで、対照と比較して菌数の常用対数値が3以上小さい。
3点:静置時間12時間まで、対照と比較して菌数の常用対数値が3以上小さい。
4点:静置時間1時間まで、対照と比較して菌数の常用対数値が3以上小さい。
として上記抗菌持続性を点数で評価した。
細菌については、抗菌持続性の5種の細菌に対する平均値を求め、以下の基準で抗菌持続性効果を評価した。
◎:平均値が1.0点以上、1.5点未満。
〇:平均値が1.5点以上、2.5点未満。
△:平均値が2.5点以上、3.5点未満。
×:平均値が3.5以上。
またカビについては、抗菌持続性の1種のカビに対する平均値を求め、下記の基準で評価した。
◎:平均値が1.0点以上、1.5点未満。
〇:平均値が1.5点以上、2.5点未満。
△:平均値が2.5点以上、3.5点未満。
×:平均値が3.5以上。
細菌に対する抗菌持続性、カビに対する抗菌持続性ともに、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0056】
※6:抗ウイルス持続性試験
20mm×20mmのステンレス板を用意し、表1から表7に示す各清掃用シートでステンレス版表面を上下5回、左右5回清拭を行い、25℃に設定したインキュベーターで所定時間(1時間、12時間、24時間、72時間)静置する。対照として未処理のステンレス板も用意した。所定時間静置した各ステンレス板を滅菌したプラスチックボトルに入れ、ウイルス液(ネコカリシウイルス、マウスノロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス)を0.2mL接種して、パネル表面全体にまんべんなく塗布した。各ステンレス板を25℃で2時間自然乾燥後、SCDLP培地20mLを加え、ストマッカー袋に入れ、60回手で揉みウイルスを洗い出した。洗い出した試験液について、細胞培養用培地で10倍希釈法による希釈系列を作成した後、それぞれのウイルスに対応する宿主細胞(ネコカリシウイルス:Crandekk-Reese feline kidney cell、マウスノロウイルス:Mouse monocyte/macrophage cell line RAW264、アデノウイルス:Hela cell、インフルエンザウイルス:Madin-Darby canine kidney cell)に接種した。
一定時間後にウイルス感染の有無を観察し、ウイルス感染価(TCID50/mL)を求め、対照と比較して下記の基準で評価した。
評価基準:
1点:静置時間72時間まで、対照と比較してウイルス感染価の常用対数値が3以上小さい。
2点:静置時間24時間まで、対照と比較してウイルス感染価の常用対数値が3以上小さい。
3点:静置時間12時間まで、対照と比較してウイルス感染価の常用対数値が3以上小さい。
4点:静置時間1時間まで、対照と比較してウイルス感染価の常用対数値が3以上小さい。
として上記抗ウイルス持続性を点数で評価し、各ウイルスに対する抗ウイルス持続性の平均値を求め、以下の基準で抗ウイルス持続性効果を評価した。
◎:平均値が1.0点以上、1.5点未満。
〇:平均値が1.5点以上、2.5点未満。
△:平均値が2.5点以上、3.5点未満。
×:平均値が3.5以上。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0057】
※7:被清掃素材の腐食性に関する評価試験
試験方法:
表1から表7に示す各清掃用シートの搾出液に対して、3cm×5cmの大きさにカットされたステンレス板(SUS304)1枚を浸漬し、25℃で48時間保管後、各ステンレス板をイオン交換水ですすぎ24時間室温で乾燥した後、腐食度合いを目視で評価した。
評価基準:
◎:変色・さび・劣化などが全く見られない。
○:ほぼ変色・さび・劣化などが見られない。
△:一部に変色・さび・劣化などが見られるが、問題ないレベル。
×:全体に変色・さび・劣化などが見られる。とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0058】
※8:除菌剤による不織布の変色に関する評価試験
試験方法:
表1から表7に示す各清掃用シート(200mm×250mm)を10枚用い、40℃で1週間保存した後、清掃用シートの外観変化を目視によって観察した。
評価基準:
◎:変色や劣化は発生していない。
○:薄い変色や軽微な劣化がほとんど発生していない。
△:濃い変色や強い劣化が若干発生しているが、問題ないレベル。
×:全体的に濃い変色や強い劣化が発生している。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0059】
※9:洗浄性試験
試験方法:
質量を測定したSUS304試験板(15×50mm)に、牛脂:大豆油:クロロホルムを1:1:5で混合した擬似汚れを付着・乾燥させたものを試験片とし、質量を測定した。この試験片を平らな表面に固定し、表1から表7に示す各清掃用シートを50g分取り出し、2回折り畳んだ状態で、試験片の上に置き、さらに質量300gのおもりを乗せた。その状態で清掃用シートを1秒間に1回の間隔で上下に5回動かし清拭した。その後、試験片をイオン交換水ですすぎ、自然乾燥させた後、質量を測定した。洗浄率を清拭前後の試験片の質量変化により下記式より算出し、次の尺度で示した。
(数1)
洗浄率=(S−T)/(S−U)×100
S:清拭前の試験片の質量
T:清拭後の試験片の質量
U:ステンレス板の質量
評価基準:
○:洗浄率70%以上、100%以下
△:洗浄率30%以上、70%未満
×:洗浄率30%未満
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0060】
※10:使用感に関する評価試験
試験方法:
表1から表7に示す各清掃用シート(200mm×250mm)を10枚用い、薬液が染み込んだ不織布を1枚取り出し、清浄なステンレス表面を約30センチメートル四方に渡って、上下5回左右5回ふき取りを行い、泡立ちやべたつき水っぽさやごわごわ感・湿り気などの観点から官能試験によって使用感を確認した。また、パネラーは無作為に選定し、それぞれのサンプルにつきn=10とした。評価結果の解析には統計処理を行い、最も評価が多い項目を評価結果として採用した。
評価基準:
○:泡立ち・べたつき・水っぽさ・ごわごわ感がなく、適度な湿り気があり使用感が良い。
△:やや泡立ち・べたつき・水っぽさ・ごわごわ感がある、もしくは適度な湿り気がない。
×:泡立ち・べたつき・水っぽさ・ごわごわ感が非常に強い、もしくはほとんど湿り気がなく使用感が悪い。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。