(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665501
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】クロロプレンゴム系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 111/00 20060101AFI20200302BHJP
【FI】
C09J111/00
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-233654(P2015-233654)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-101121(P2017-101121A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊裕
【審査官】
澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第1952031(CN,A)
【文献】
国際公開第2009/012545(WO,A1)
【文献】
特開2012−188618(JP,A)
【文献】
特開2005−350627(JP,A)
【文献】
特開2007−291188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンゴム及び溶剤を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物であって、溶剤として、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンを含まず、溶剤がブチルアセテート、又は、ブチルアセテート及びメチルエチルケトンであり、ブチルアセテート含有量が溶剤全体の50重量%以上であることを特徴とするクロロプレンゴム系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレンゴム系接着剤組成物に関するものであり、より詳しくはトルエンを用いなくても接着強度と安定性が良好なクロロプレンゴム系接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴム等をベースとした溶剤系接着剤は、その良好な作業性や接着物性から各種用途に用いられてきた。そのため、数多くのクロロプレン系接着剤が開発されている。これらのクロロプレンゴム系接着剤は、原料ゴムおよびその他の配合剤をトルエン、シクロヘキサン、アセトンなどの有機溶剤に溶解させているものがほとんどである(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
一方で、シックハウス症候群への対応として、ホルマリンや、トルエン、キシレンの使用ができなくなり、トルエン不含のクロロプレンゴム系接着剤が市場では要望されている。
【0004】
トルエン不含のクロロプレンゴム系接着剤としては、例えば特許文献4、5など、代替溶剤をもちいるものが挙げられるが、クロロプレンゴムを単独では溶解しない溶剤が多く、トルエンを用いているものよりも接着剤物性や安定性が劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−306341号公報
【特許文献2】特開2004−210995号公報
【特許文献3】特開2005−139279号公報
【特許文献4】特開2003−226852号公報
【特許文献5】特開2007−291188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであり、接着物性および安定性に優れたクロロプレンゴム系接着剤組成物を提供するものである
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、このような背景の下、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ブチルアセテートを含むことで、トルエンを用いなくてもクロロプレン系接着剤の接着物性および安定性を向上することを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、クロロプレンゴム及び溶剤を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物であって、溶剤がブチルアセテートであり、
溶剤として、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンを含まず、ブチルアセテート含有量が溶剤全体の
50重量%以上であることを特徴とするクロロプレンゴム系接着剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクロロプレンゴム系接着剤は、上記の通りすることにより、トルエンを用いなくても、接着物性と安定性に優れる接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0011】
本発明のクロロプレンゴムは、2−クロロ−1,3−ブタジエンであるクロロプレンの単量体を単独で重合して得られたもの、または、クロロプレンと共重合可能な1種類以上の単量体を用いて重合して得られたものであるである。
【0012】
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸等があげられる。
【0013】
溶剤としては、ブチルアセテート単独でも良いが、ブチルアセテート以外にもブチルアセテート以外のエステル系溶
剤を使用する事が可能である。ブチルアセテート以外のエステル系溶剤としては、アセトン、エチルアセテート、MEK(メチルエチルケトン)
等が挙げられる。溶剤としては、クロロプレンゴム系接着剤組成物の低温安定性に優れるため、シクロヘキサンを含まない方が好ましい。また、クロロプレンゴム系接着剤組成物の接着強さが低下しないため、ヘキサンまたはメチルシクロヘキサンを含まない方が好ましい。
【0014】
ブチルアセテート含有量は溶剤全体の
50重量%以上であることが必要であるが
、50重量%〜80重量%がより好ましい。ブチルアセテート含有量が50重量%未満であると、クロロプレンゴム系接着剤組成物の接着性が劣る。
【0015】
本発明のクロロプレンゴム系接着剤組成物は、その他に、一般的に用いられる金属酸化物や粘着付与樹脂、老化防止剤等を含ませることができる。金属酸化物としては酸化マグネシウムや酸化亜鉛が一般的には多く用いられ、粘着付与樹脂としては、アルキルフェノール樹脂や、テルペンフェノール樹脂などが用いられることが多い。
【0016】
本発明のクロロプレンゴム系接着剤組成物は、例えば、クロロプレンゴムを金属酸化物や粘着付与樹脂、老化防止剤などと共に、上記溶剤に混合し、撹拌して溶解させることで作成できる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明する。
クロロプレンゴム系接着剤組成物は下記に示す手法で作製・評価を行った。
【0018】
<接着剤の作製>
接着剤は、表1に記載の配合剤および溶剤を所定量瓶に投入し、密栓したうえでボールミル架台にて室温下にて48時間回転・混合させることで作製した。
【0019】
<低温安定性>
作製した接着剤を、−10℃にて2週間保管し、状態を観察した。
【0020】
○:変化なし ×:高粘度化・固化
<接着試験片作製>
9号帆布2枚(約150mm×60mm)それぞれの片面に、作製した接着剤を刷毛で約230g/m
2塗布し、80℃にて5分間乾燥した。室温で30分放冷した後、再度接着剤を刷毛にて約90g/m
2塗布し、80℃にて5分乾燥直後、もしくは、その後60分放冷した後にハンドローラーを用いて圧着した。150mm×25mmのサイズに切り出したものを測定用の試験片とした。
【0021】
<接着強さ>
圧着2分後にテンシロン型引っ張り試験機を用いて100mm/minの剥離速度で180°方向の引っ張りにて行った。
【0022】
<高温接着強さ>
接着3日後に、試験片を80℃雰囲気下にて5分間状態調整を実施し、テンシロン型引っ張り試験機を用いて80℃の雰囲気下にて100mm/minの剥離速度で180°方向の引っ張りにて行った。
【0023】
実施例1〜
3、比較例1〜
7
実施例および比較例を表1に示す。
【0024】
実施例では良好な安定性と接着強さが得られたことが分かる。
【0025】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のクロロプレンゴム系接着剤組成物は、家具、木工、建材など、広範囲の材料の接着分野で使用される。