(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667517
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】シード構造からカーボン構造を分離する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/302 20060101AFI20200309BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20200309BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20200309BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
B82Y30/00
B82Y40/00
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-522588(P2017-522588)
(86)(22)【出願日】2015年10月12日
(65)【公表番号】特表2017-535953(P2017-535953A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】EP2015073553
(87)【国際公開番号】WO2016066413
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2018年10月4日
(31)【優先権主張番号】102014115708.7
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502010251
【氏名又は名称】アイクストロン、エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】テオ、ケネス・ビー・ケー
(72)【発明者】
【氏名】ジョウブレイ、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マザルー、ジャイ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、サイモン
【審査官】
鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−164935(JP,A)
【文献】
特開2006−108555(JP,A)
【文献】
特開2011−204749(JP,A)
【文献】
特表2012−532435(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0285656(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/094103(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102392226(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B82Y 30/00
B82Y 40/00
C01B 32/00−32/991
D01F 9/08−9/32
H01L 21/205−21/208
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/312−21/32
H01L 21/365−21/368
H01L 21/461
H01L 21/469−21/475
H01L 21/86
H01L 51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シード構造(2)の上に堆積したカーボン構造(1)、例えばグラフェン、カーボン・ナノチューブまたは半導体ナノワイヤを前記シード構造(2)から分離する方法であって、
CVD反応炉(4)のプロセスチャンバー(7)の中で炭素を含むプロセスガスを供給することにより前記シード構造(2)の上または下に前記カーボン構造(1)を堆積させる堆積ステップと、
前記堆積ステップの後に直ちに、同じ前記プロセスチャンバー(7)内で行われる分離ステップと、を有し、前記分離ステップが、
前記シード構造(2)と前記カーボン構造(1)とを含む基板(3)をプロセス温度に加熱するステップと、
分子式AOmXn,AOmXnYpまたはAmXnを持つ少なくとも1つのエッチングガスを前記プロセスチャンバー(7)に注入するステップと、
を備え、
Aが、S,C,Nを含む族の元素から選択され、
Oが、酸素であり、
X,Yが、異なるハロゲンであり、
m,n,pが、0より大きな自然数であり、さらに、
プラズマまたは熱により活性化された前記エッチングガスでの化学反応を通して前記シード構造(2)をガス状の反応生成物に変換するステップと、
キャリアガスの流れによって前記プロセスチャンバー(7)からガス状の反応生成物を除くステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記シード構造(2)が、金属の構造であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シード構造(2)が、次の族の元素、Cu,Ni,Co,Fe,Ru,Ir,Ga,Gd,Mo,Mn,Ag,Au,B,Si,Geから選択された少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シード構造(2)が、前記基板(3)と前記カーボン構造(1)との間に、または前記カーボン構造(1)の上および前記基板(3)内に配置され、前記基板(3)の上に粒子、層によって形成され、または前記シード構造(2)が前記基板(3)自体によって形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記エッチングガスが、熱の供給によって、紫外線によって、またはプラズマによって活性化され、
前記エッチングガスの活性化が、前記CVD反応炉(4)内の、ガス注入ボディ(8)の中または前記プロセスチャンバー(7)の中で加熱によって起こることが提供される、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エッチングガスが、SOCl2であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記エッチングガスが、お互いに異なる複数のガスで構成されるガス混合物であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記エッチングガスが、液体が気化されるエッチングガス源(11)で提供されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
分子式RXを持った追加のガスが、前記エッチングガスと共に前記プロセスチャンバー(7)の中に注入され、
Rが水素または金属であり、Xがハロゲンである、
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ガス状の反応生成物への前記シード構造(2)の転換の進行が、前記シード構造(2)の表面(2’)の反射率を決定することによって決定され、
前記シード構造(2)の表面(2’)で反射される入射光のビーム(19)を生成する光源(18)と、反射光のビーム(20)の強度を測定する検出器(21)とが、反射率を決定するために使用され、
前記入射光のビーム(19)が前記表面(2’)の表面延長に対して垂直にまたは斜めに向けられ、および/または前記入射光のビーム(19)が連続的にまたはパルス状に生成される、
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記検出器(21)によって決定される前記反射光のビーム(20)の強度が最小を経た後で最大に達したときに、前記プロセスチャンバー(7)の中へのエッチグガスの導入が終了することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シード構造(2)から前記カーボン構造(1)を分離することに先立って、同一の前記プロセスチャンバー(7)の中で前記カーボン構造(1)が前記シード構造(2)の上に堆積することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法を実行するための装置であって、
エッチングガスの提供源を備え、当該提供源が容器(11)を持ち、当該容器(11)の中に液体が蓄えられており、当該容器(11)から前記エッチングガスが気化によって生成されることができることを特徴とする装置。
【請求項14】
光源(18)と検出器(21)を備え、
前記光源(18)がカーボン構造(1)とシード構造(2)の間の境界層で反射される入射光のビーム(19)を生成し、前記検出器(21)が前記境界層で反射された反射光のビーム(20)の強度を決定する、
ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
制御装置を備え、
前記制御装置が前記検出器(21)と共に動作し、前記検出器(21)によって決定される反射光のビーム(20)の強度が最小を経た後で更に増加しないときにプロセスチャンバー(7)の中への前記エッチングガスの投入を停止する、
ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シード構造の上に堆積したカーボン構造、例えばグラフェン、カーボン・ナノチューブまたは半導体ナノワイヤをシード構造から分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボン構造、例えばグラフェン層、カーボン・ナノチューブおよび半導体ナノワイヤを基板の上に堆積させることは先行技術から知られている。数ある中でも、特許文献1にそのような方法が記載されている。従って、カーボン構造の堆積はシード構造、例えば金属の構造の上で起こる。その金属の構造は、金属の層、特に銅の層であることができる。 また、グラフェンの堆積は、特許文献2に記載されている。シード構造の上へのグラフェン層、カーボン・ナノチューブまたは半導体ナノワイヤの堆積の後で、お互いから構造または層を個々に開放することが必要である。先行技術では、これはウェットエッチング法によって起こる。この場合、シード構造は水溶液でエッチング除去される。
【0003】
ドライエッチング法においてCVD反応炉のプロセスチャンバーをクリーニングする方法が更に知られている。例えば、特許文献3は、プロセスチャンバーの中に塩化チオニルを導入することによって反応炉の壁のIII-V属被膜を除去するクリーニング法を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許8,685,843 B2号公報
【特許文献2】米国特許8,728,433 B2号公報
【特許文献3】国際公開第2014/094103 A1号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kenneth B.K. Teo, Charanjeet Singh, Manish Chhowalla and William I. Milne, “Catalytic Synthesis of Carbon Nanotubes and Nanofibers”, Encyclopedia of Nanoscience and Nanotechnology, Volume X: Pages 1-22.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カーボン構造の製造を単純化し、特に方法を詳細に示すことを目的とする。その方法によって、シード構造からのカーボン構造の分離が、堆積が起こるプロセスチャンバーの中で可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的は、請求項に記載された本発明によって達成される。特に、あらゆる請求項はその目的の独立した解決策である。その方法は、実質的に、
CVD反応炉のプロセスチャンバーの中でシード構造の上に堆積されたカーボン構造を与えるステップと、
シード構造とカーボン構造とを含む基板をプロセス温度に加熱するステップと、
分子式AOmXn,AOmXnYpまたはAmXnを持つ少なくとも1つのエッチングガスを注入するステップと、
を備え、
Aが、S,C,Nを含む属の元素から選択され、
Oが、酸素であり、
X,Yが、異なるハロゲンであり、
m,n,pが、0より大きな自然数であり、
エッチングガスでの化学反応を通してシード構造をガス状の反応生成物に変換するステップと、
キャリアガスの流れによってプロセスチャンバーからガス状の反応生成物を除くステップと、
を備える。
【0008】
望ましくは、これらの方法のステップは、コーティング方法のステップの後で直ちに実行される。この場合、上述した先行技術に記載されているように、カーボン構造は、シード構造に、またはその下に付けられる。”カーボン・ナノチューブ”と”カーボン・ナノファイバー”の触媒合成は、本発明に係る分離方法に先行するが、非特許文献1に記載されている。この論文の内容は、この特許出願の開示内容に属する。好ましくは、シード構造からのカーボン構造の分離は、堆積プロセスが起こり、カーボン構造を持つ物体なしにプロセスチャンバーから除去されたのと同一のプロセスチャンバーで起こる。カーボン構造を支える物体は、基板、例えば誘電性の基板であることができる。その基盤はシード構造を持って与えられる。シード構造は、Cu,Ni,Co,Fe,Ru,Ir,Ga,Gd,Mo,Mn,Ag,Au,B,Si,Geまたは金属で構成されることができるが、またこれらの元素を複数含む材料で構成されてもよい。シード構造は、基板上における粒子、構造化された層または構造化されていない層であることができる。特に、シード構造が基板とカーボン構造との間に配置されることが提供される。基板、シード構造およびカーボン構造から成るそのような物体は、シード構造の上に堆積するカーボン構造を含む。また、その物体は、シード構造の上に堆積するカーボン構造のみであることができる。この場合、シード構造は基板自体を形成する。シード構造は触媒要素を形成し、その上にナノ構造、すなわちナノチューブまたはナノワイヤが成長する。また、これらの触媒構造は、粒子によって形成されることができ、それらの粒子は基板によって支えられる。そのとき、カーボン構造は基板と粒子との間に成長する。本発明によれば、シード構造は、プロセスチャンバーの中に高温でエッチングガスを導入することによってガス状に至らせられる。 エッチングプロセスの結果として、カーボン構造は実質的に基板とサセプタのいずれか一方の上に緩く位置する。 エッチングガスは活性化されることができる。エッチングガスの活性化は、エネルギーの供給によって起こることができる。 熱源、特にヒーターまたはUVランプまたはプラズマ生成器がエネルギー源としての役目を果たすことができる。特に望ましくは、例えばエッチングガスがプロセスチャンバーの加熱された壁と接触したり、プロセスチャンバー内で加熱されたガスと接触したりすることで、プロセスチャンバーで生成された熱を使うことによってプロセスチャンバー内で活性化が起こる。特に加熱によって起こる活性化は、ガス注入ボディまたはプロセスチャンバー自体の中で起こることができる。けれどもまた、物体がサセプタの上に位置し、エッチングガスは、加熱されたサセプタによって放たれる熱によって活性化されることが可能である。更に、エッチングガスがお互いに異なる2つのガスで構成されることが提供される。望ましくは、エッチングガスは準備されているか、またはガス源で生成される。ガス源は液体タンクであることができ、液体タンクを通ってキャリアガス、例えばAr,N
2またはH
2が流れる。エッチングガスは、特にSOCl
2,SOBr
2,COCl
2,NOCl,NOBr,SOBrから成る。 特に望ましくは、塩化チオニルSOCl
2がエッチングガスとして使用される。特にガス状に至らされた液体であって、カルボニル、チオニルまたはニトロシル基と、ハロゲン、例えば塩化物、臭化物またはアイオダイト(iodite:ヨウ素と酸素で構成される陰イオン)とを持つ液体がエッチングガスとして使用される。本発明に係る方法は、反応炉ハウジングを持つ装置で実行される。反応炉ハウジングは外部に対して気密となるように密閉されている。反応炉ハウジングは、ポンプによって排気されることができる。少なくとも1つ、しかし望ましくは複数のガス出口穴を含むガス注入ボディが反応炉ハウジングの中に位置する。更に、サセプタがプロセスチャンバーの中に位置している。サセプタは、金属またはグラファイトで構成されることができ、ヒーターによって100℃と少なくとも1000℃との間のプロセス温度に加熱されることができる。基板がサセプタの上に位置している。また、基板はシード構造がカーボン構造、例えばグラフェン、ナノチューブまたは半導体ナノワイヤの上に堆積するようにコーティングプロセスにおいて処理される。堆積プロセスの後で、プロセスチャンバーは不活性ガスで洗い流される。その後に、プロセスチャンバーはプロセス温度に対応する反応温度にされる。そのプロセス温度でエッチングガスはシード層と化学的に反応する。この温度は、少なくとも800℃であることができる。カーボン構造を持ち、基板の上に位置している物体がプロセス温度に達するとすぐに、エッチングガス、特に塩化チオニルがプロセスチャンバーの中に導入される。例えば、900ミリバールの全圧で、分当たり120ミリモルがプロセスチャンバーの中に導入されることができる。エッチングガスはキャリアガスによってプロセスチャンバーの中に導入され、そこで熱くなる。それで、エッチングガスは活性化される。この活性化に反応して、エッチングガスは第1の反応生成物に事前分解することができる。シード構造とカーボン構造は、エッチングガスによって、またはそこから生じる事前分解生成物によってそれぞれお互いから分離される。エッチングプロセスは、典型的に5分間続く。この後に、エッチングガスの供給は停止され、不活性ガスのみがプロセスチャンバーの中に導入され、プロセスチャンバーはカーボン構造の除去のために冷却される。エッチングステップの終了の後に、また、反応生成物またはエッチングガスの除去がそれぞれ真空圧でプロセスチャンバーを排気することによって起こることができる。上述したエッチングガスに加えて、また、水素または金属とハロゲンとの間の化学結合である追加のガスがプロセスチャンバーの中に導入されることができる。本発明の選択肢では、プロセスチャンバーは検出器手段を持ち、その検出器手段によってガス状の反応生成物へのシード構造の転換の進行が連続的に観察されることができる。これは、光源であることができる。光源は連続的なまたはパルス状の光、例えば光線を放つ。光線は物体に到り、その物体によって反射される。反射された光線は検出器に到る。検出器は特に光線の強度を測定する。従って、物体の反射のレベルまたは反射能力、反射性または反射率が決定される。特に反射率の時間変化が検出器の配置によって決定される。望ましくは、光線は、カーボン構造を突き抜け、シード構造の表面で、従って、シード構造に対するカーボン構造の境界層で効率的に反射される。従って、エッチングプロセスの進行で変わる表面の反射能力が決定される。エッチングプロセスの始まりにおいて、その表面は滑らかな金属層であり、それに応じて高い反射能力を有することができる。エッチングプロセスの間、シード構造はその表面でエッチング除去される。それで、表面はより粗くなる。その表面の反射能力は、最小に低下し、シード構造の完全な除去に先立って再びすぐに増加する。シード構造の除去の後に、光線が基板の滑らかな表面で反射される。その表面は高い反射能力を持ち、エッチングガスによって浸食されない。エッチングガスは基板と反応しない。最小を経た後でのこの反射能力の増加の検出は、エッチングガスの供給を止めるために使われることができる。エッチングガスの注入の自動的な停止は、特に反射能力が最小を経た後で再び最大に達したときに起こる。
【0009】
本発明は、更に、エッチングガスの供給源を提供することを特徴とする方法を実行する装置に関する。更に、その装置は分離プロセスの進行を決定する光検出手段をもつことができる。その光検出手段はエッチングガスの供給を止めるための制御装置と共に動作する。
【0010】
添付図面を用いて本発明の実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態におけるCVD反応炉の配置を示す概略図である。
【
図2】第2の実施形態におけるCVD反応炉の配置を示す概略図である。
【
図3】分離方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【
図7】
図6に関連する、 時刻t
0におけるエッチングガスの導入より前の図である。
【
図8】
図7に続く、時刻t
1におけるエッチングプロセスの間の図である。
【
図10】エッチングプロセスの間におけるカーボン構造1に対するシード構造2の境界面2’の反射率を時系列で定性的にのみ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1と
図2に示されるCVD反応炉4はハウジングで構成される。ハウジングは外部に対して気密である。物体2,3を収容するためのグラファイト、クオーツ、または金属のサセプタ5がハウジングの中に位置している。物体2,3の上にはカーボン構造1が堆積する。サセプタ5の下にヒーター6が位置している。それは、抵抗ヒーター、IRヒーター、またはRFヒーターであることができる。円形ディスク状のサセプタ5はガス排出ボディによって囲まれており、ガス排気ボディはガス排気管16によってポンプ15に接続される。サセプタ5の上にプロセスチャンバー7が位置している。プロセスチャンバー7の天井は、ガス注入ボディ8のガス出口面によって形成される。ガス注入ボディ8は、シャワーヘッド状の空洞ボディであることができ、その底面に複数のガス出口穴9を持つ。供給ライン10によって、プロセスガスがガス注入ボディ8の中に注入されることができる。
【0013】
カーボン構造1、すなわち例えばカーボン・ナノチューブまたは半導体ナノワイヤのグラフェン層、複数の層からなるグラフェン層を堆積する方法を実行するために、炭素を含む適切なプロセスガス、例えばメタンが供給ライン10を通ってプロセスチャンバー7の中に注入される。その中でサセプタ5の上で支えられる物体は、銅からなるシード構造、例えばシード層または構造化シード層2を持つ。上述したカーボン・ナノ構造1は、このシード構造2の上に形成される。物体は基板3を持つことができる。基板3はシード構造2でコーティングされる。シード構造2は滑らかな表面を持つことができる。けれどもまた、触媒として作用する粒子が基板3の上で支えられることができ、それらの粒子はシード構造2を形成する。それらの粒子はナノメートル領域にある直径を有する。ナノ構造の堆積に反応して、ナノチューブまたはナノワイヤが基板と粒子との間に生じる。それらの粒子はお互いから離れて間隔を空けられることができる。
【0014】
シード構造2からカーボン・ナノ構造1を分離するためにエッチングガスが使用される。このエッチングガスはエッチングガス源11で生成される。エッチングガスはキャリアガスによってガス注入ボディ8の中に供給ライン10を通って案内される。キャリアガスは、Ar,N
2またはH
2からの不活性ガスであり、供給ライン12の中に注入される。供給ライン10において、更なる不活性ガス、例えばAr,N
2またはH
2が供給ライン13を用いて供給ライン10の中にさらに注入される。
【0015】
図1に示される実施形態の場合には、エッチングガス11はプロセスチャンバー7内でまたはガス注入ボディ8内でそれぞれ加熱されることによって活性化される。
図2に示されるように、エッチングガス源11は気泡管であることができる。
【0016】
図2に示される気泡管は、液体出発物質が蓄えられている容器である。出発物質は、SOCl
2,SOBr
2,COCl
2,NOCl
2,NOBr
2またはSOBrであることができる。望ましくは、液体は塩化チオニルである。エッチングガスは、不活性ガスを液体に通すことによって生成される。
【0017】
図2に示される実施形態において、外部活性化器14が提供され、外部活性化器14の中でエッチングガスが活性化される。これはUVまたはプラズマによってエッチングガスに熱を加えることにより起こることができる。従って、熱源、UV源またはプラズマ生成器が外部活性化器14の中に配置されることができる。
【0018】
エッチングガスの活性化に反応してエッチングガスの事前分解が起こることができる。
【0019】
エッチングプロセスを実行するために、サセプタ5は約800℃の温度に加熱される。エッチングガスまたは事前分解されたエッチングガスは、シード構造2で反応し、揮発性の出発物質に後者を変換する。揮発性の出発物質は、キャリアガスと共にプロセスチャンバー7からガス排気管16を通って除かれる。
【0020】
図3に示される実施形態は基板3で構成される物体を示す。それは誘電体であることができ、そこに付けられたシード構造2で構成される。シード構造2は、銅で構成されることができ、滑らかな面を含む層であることができる。グラフェン層1は、シード構造2の上に堆積する。それは単層のグラフェンであることができる。また、少数のグラフェン層がお互いの上に堆積することができる。上記エッチングプロセスに反応して、エッチングガスまたはエッチングガスの第1の反応生成物がグラフェン層1に浸透し、シード層2をガス状の第2の反応生成物に変換する。それで、
図3の右側に示される結果が形成され、その場合にはグラフェン層1が基板3の上で直接支えられる。
【0021】
図4の左側は、シード構造2の上に堆積したグラフェン層1を示す。シード構造2は銅板である。銅板(シード構造2)はエッチングプロセスによって除去され、
図4の右側に示すように、グラフェン層1のみが残る。
【0022】
図5に示される実施形態の場合には、カーボン構造1が例えばナノワイヤまたはナノチューブの形式で銅のシード構造2の下に成長し、それは基板3の表面上で支えられる粒子から成る。そのようなカーボン構造1を堆積させるために、銅の粒子または他の適切な触媒的に作用する材料の粒子が基板3に付けられる。そのとき、カーボン構造1が基板3とそれらの粒子との間に成長する。対応する構造が
図5の左側に概略的に示される。エッチングプロセスの後で、シード構造2は除去される。それで、
図5の右側に示すように、ナノチューブ1またはナノワイヤがそれぞれ基板3の上で直接支えられる。
【0023】
図6に示される実施形態の場合には、左側に示されるように物体において、基板3は横方向に構築されたシード構造2を持つ。ナノチューブ1がこのシード構造2の上に堆積する。
図6の右側に示される状態は上述したエッチングプロセスによって達成され、この場合にはナノチューブ1が基板3の上で直接支えられる。この場合、シード構造2はドライエッチング法によって除去される。
【0024】
堆積プロセスも、エッチングガスを導入することによって起こる分離プロセスも、
図1と
図2に示す装置で実行されることができる。
【0025】
図7から
図9は、基板3で構成される物体の横断面を示す概略図である。基板3には、滑らかな表面2’を含む金属のシード構造2が付けられる。カーボン構造1は、グラフェン層とグラフェン層の並びとナノチューブとナノワイヤのいずれかとして表面2’の上に堆積する。従って、表面2’はカーボン構造1とシード構造2との間の境界面を形成する。 入射光のビーム19が光源18によって生成される。入射光のビーム19は半導体レーザーであることができる。入射光のビーム19は境界面2’で反射される。反射光のビーム20が検出器21に入る。光源18と検出器21はプロセスチャンバーの中に配置されることができる。それで、境界面2’で反射される入射光のビーム19と反射光のビーム20の強度の変化をエッチングプロセスの間連続して測定することができる。1つの実施形態の場合には、入射光のビーム19は20°よりも大きな鋭角で境界面2’に入る。けれどもまた、入射光のビーム19は垂直に境界面2’に入ることも可能である。
【0026】
図7は、エッチングプロセスの始まりである時刻t
0での物体を示す。
【0027】
図10は、エッチングプロセスの間における境界面2’上での反射率の変化の経過を定性的に示す。時刻t
0で、入射光のビーム19は、高い反射能力を持つシード構造2の滑らかな表面上で反射する。それで、反射光のビームの強度を介して決定されることができる反射率Rは最大となる。
【0028】
シード構造2の材料はエッチングプロセスの間に境界面2’から除去される。それで、エッチングプロセスが続いている時に境界面2’はより粗くなる。反射能力は減少し、それで、検出器21は強度/反射率の減少を検出する。これは時刻t
1における
図8に示される。基板の表面3’の一部のみがまだシード構造2の材料でコーティングされているならば、強度/反射率は最小を経て、その後に再び増加する。基板の表面3’は、滑らかであるので、高い反射能力を持つ。時刻t
2において、強度/反射率は最大に達する。それは、それ以上増加しない。これは、入射光のビーム19が基板の表面3’のみでまだ反射されるという印である。基板の表面3’は今やカーボン構造1と基板3との間の境界面を形成する。
【0029】
強度/反射率Rが最小に続いて最大に達するならば、または反射率が更に増加しないことが決定されるならば、エッチングプロセスは終えられる。
【0030】
上記文章は本発明を説明する役目を果たす。本発明は本出願によって全体として把握され、いずれの場合にも次の特徴の組合せによって少なくとも独立して先行技術を更に発展させる。すなわち:
【0031】
シード構造2の上に堆積したカーボン構造1、例えばグラフェン、カーボン・ナノチューブまたは半導体ナノワイヤをシード構造2から分離する方法であって、
CVD反応炉4のプロセスチャンバー7の中でシード構造2の上に堆積されたカーボン構造1を与えるステップと、
シード構造2とカーボン構造1とを含む基板をプロセス温度に加熱するステップと、
分子式AOmXn,AOmXnYpまたはAmXnを持つ少なくとも1つのエッチングガスを注入するステップと、
を備え、
Aが、S,C,Nを含む属の元素から選択され、
Oが、酸素であり、
X,Yが、異なるハロゲンであり、
m,n,pが、0より大きな自然数であり、
エッチングガスでの化学反応を通してシード構造2をガス状の反応生成物に変換するステップと、
キャリアガスの流れによってプロセスチャンバー7からガス状の反応生成物を除くステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【0032】
シード構造が、金属の構造であることを特徴とする方法。
【0033】
シード構造が、次の族の元素、Cu,Ni,Co,Fe,Ru,Ir,Ga,Gd,Mo,Mn,Ag,Au,B,Si,Geから選択された少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする方法。
【0034】
シード構造2が、基板3とカーボン構造1との間に、またはカーボン構造1の上および基板3内に配置され、基板3の上に粒子、層によって形成され、またはシード構造2が基板3自体によって形成されることを特徴とする方法。
【0035】
エッチングガスが、特に熱の供給によって、紫外線によって、またはプラズマによって活性化され、
エッチングガスの活性化がCVD反応炉4の中で、特にCVD反応炉4内のガス注入ボディ8の中で、またはプロセスチャンバー7の中で加熱によって起こることが提供される、
ことを特徴とする方法。
【0036】
エッチングガスが、塩素元素を含み、特にSOCl
2であることを特徴とする方法。
【0037】
エッチングガスが、お互いに異なる複数のガスで構成されるガス混合物であることを特徴とする方法。
【0038】
エッチングガスが、エッチングガス源11、特に液体が気化されるエッチングガス源11で提供されることを特徴とする方法。
【0039】
分子式RXを持った追加のガスが、エッチングガスと共にプロセスチャンバーの中に注入され、
Rが水素または金属であり、Xがハロゲンである、
ことを特徴とする方法。
【0040】
ガス状の反応生成物へのシード構造2の転換の進行が、シード構造2の表面2’の反射率を決定することによって決定され、
表面2’で反射される入射光のビーム19を生成する光源18と、反射光のビーム20の強度を測定する検出器21とが、特に反射率を決定するために使用され、
入射光のビーム19が表面2’の表面延長に対して垂直にまたは斜めに向けられ、および/または入射光のビーム19が連続的にまたはパルス状に生成される、
ことを特徴とする方法。
【0041】
検出器21によって決定される反射光のビーム20の強度が最小を経た後で最大に達したときに、プロセスチャンバーの中へのエッチグガスの導入が終了することを特徴とする方法。
【0042】
シード構造2からカーボン構造1を分離することに先立って、同一のプロセスチャンバー7の中でカーボン構造1がシード構造2の上に堆積することを特徴とする方法。
【0043】
エッチングガスの提供源を備え、当該提供源が特に容器11を持ち、当該容器11の中に液体が蓄えられており、当該容器11からエッチングガスが気化によって生成されることができることを特徴とする装置。
【0044】
光源18と検出器21を備え、
光源18がカーボン構造1とシード構造2の間の境界層で反射される入射光のビームを生成し、検出器21が境界層で反射された反射光のビーム20の強度を決定する、
ことを特徴とする装置。
【0045】
制御装置を備え、
制御装置が検出器21と共に動作し、検出器21によって決定される反射光のビーム20の強度が最小を経た後で更に増加しないときにプロセスチャンバー7の中へのエッチングガスの投入を停止する、
ことを特徴とする装置。
【0046】
開示される全ての特徴は(単独で、しかしまたお互いに組み合わせて)本発明のために重要である。これによってまた、対応する/添付される優先権書類(先願のコピー)の開示内容が全体として本出願の開示に含められ、また、直ちに本出願の請求項にこれらの書類の特徴を追加する目的のために包含される。それらの特徴で、従属項は、特にこれらの請求項に基づいて分割出願を行うために、先行技術の独立した発明の更なる改良を特徴づける。
【符号の説明】
【0047】
1…カーボン構造
2…シード構造
2’…シード構造2の表面
3…基板
3’…基板の表面3’
4…CVD反応炉
5…サセプタ
6…ヒーター
7…プロセスチャンバー
8…ガス注入ボディ
9…ガス出口穴
10…供給ライン
11…エッチングガス源
12…供給ライン
13…供給ライン
14…外部活性化器
15…ポンプ
16…ガス排気管
18…光源
19…入射光のビーム
20…反射光のビーム
21…検出器
R…反射率
t
0…時刻
t
1…時刻
t
2…時刻