特許第6667650号(P6667650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667650
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】断熱構造体
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/065 20060101AFI20200309BHJP
【FI】
   F16L59/065
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-540336(P2018-540336)
(86)(22)【出願日】2017年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2017034537
(87)【国際公開番号】WO2018056439
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2019年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-186055(P2016-186055)
(32)【優先日】2016年9月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 義勝
(72)【発明者】
【氏名】青木 博史
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−220620(JP,A)
【文献】 特開2001−091172(JP,A)
【文献】 特開2004−238672(JP,A)
【文献】 特開2016−035357(JP,A)
【文献】 特開2003−042674(JP,A)
【文献】 特開2008−311399(JP,A)
【文献】 特開2009−229764(JP,A)
【文献】 特開2008−153423(JP,A)
【文献】 特開2010−190257(JP,A)
【文献】 特開2013−170652(JP,A)
【文献】 特開2011−122610(JP,A)
【文献】 特開2006−275188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の板状体と、該第1の板状体と対向する第2の板状体と、前記第1の板状体と前記第2の板状体とを仕切る仕切り板とを備え、前記第1の板状体と前記仕切り板により第1の空洞部が形成され、前記第2の板状体と前記仕切り板により第2の空洞部が形成されたコンテナを有し、
前記第2の空洞部に、ウィック構造体と作動流体が封入され、
前記第1の空洞部に、支柱部が設けられ、
該支柱部が、多孔質体であり、前記第1の空洞部に複数配置され、前記仕切り板から前記第1の板状体まで延在して前記第1の板状体を前記仕切り板側から支えている断熱構造体。
【請求項2】
第1の板状体と、該第1の板状体と対向する第2の板状体と、前記第1の板状体と前記第2の板状体とを仕切る仕切り板とを備え、前記第1の板状体と前記仕切り板により第1の空洞部が形成され、前記第2の板状体と前記仕切り板により第2の空洞部が形成されたコンテナを有し、
前記第2の空洞部に、ウィック構造体と作動流体が封入され、
前記第1の空洞部に、支柱部が設けられ、
該支柱部が、毛細管力を生じるウィック構造であり、前記第1の空洞部に複数配置され、前記仕切り板から前記第1の板状体まで延在して前記第1の板状体を前記仕切り板側から支えている断熱構造体。
【請求項3】
前記第1の板状体、前記第2の板状体及び前記仕切り板が、それぞれ、1枚の金属板状体であり、熱溶着にて一体形成されている請求項1または2に記載の断熱構造体。
【請求項4】
前記第2の板状体の熱伝導度が、前記第1の板状体の熱伝導度よりも高い請求項1乃至3のいずれか1項に記載の断熱構造体。
【請求項5】
前記第1の板状体が、熱可塑性樹脂である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の断熱構造体。
【請求項6】
前記第1の空洞部が減圧されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の断熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧された内部空間を有する断熱構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の電子機器の小型化、高機能化に伴い、電子機器に搭載された電子部品は、発熱量がますます増大している。上記電子部品であっても、伝熱部材によって確実に冷却されることが要求される。また、人が触れる部位や熱に弱い部品等が搭載された部位及びその近傍には、上記電子部品の熱が伝達することを防止するために、伝熱部材に、さらに、断熱材が設けられる場合がある。
【0003】
上記断熱材として、例えば、伝熱作用を有する空気を極力排除することで、良好な断熱効果を有する真空断熱材が用いられることがある。伝熱部材と真空断熱材との構造体としては、例えば、芯材であるシリカ繊維等の繊維状材料を外被材で被覆した後、外被材の内部を真空状態として外被材の端部を封止した真空断熱材を、アルミニウムや黒鉛シート等の伝熱部材に積層させた構造体を挙げることができる(特許文献1)。なお、芯材は、真空空間を維持するための補強部材である。
【0004】
しかし、特許文献1では、冷却作用を有する部材として、アルミニウムや黒鉛シート等といった熱伝導性を有する部材を使用しており、熱輸送機能が十分には得られないので、発熱量の増大した電子部品等に対して、冷却効果が十分ではないという問題があった。また、特許文献1では、真空断熱材の真空空間に芯材が充填されているので、芯材によって、真空断熱材の断熱効果が低減される場合があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−14326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、発熱量が大きい被冷却体に対しても、優れた断熱効果を発揮し、また、優れた熱輸送特性を有することで、優れた冷却効果を発揮できる断熱構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、第1の板状体と、該第1の板状体と対向する第2の板状体と、前記第1の板状体と前記第2の板状体とを仕切る仕切り板とを備え、前記第1の板状体と前記仕切り板により第1の空洞部が形成され、前記第2の板状体と前記仕切り板により第2の空洞部が形成されたコンテナを有し、前記第2の空洞部に、ウィック構造体と作動流体が封入された断熱構造体である。
【0008】
上記態様では、第2の空洞部には作動流体が封入され、また、ウィック構造体が収容されているので、第2の空洞部は、ベーパーチャンバ(平面型ヒートパイプ)として機能する。
【0009】
本発明の態様は、前記第1の空洞部に、さらに支柱部が設けられている断熱構造体である。
【0010】
本発明の態様は、前記支柱部が、多孔質体である断熱構造体である。
【0011】
本発明の態様は、前記第1の板状体、前記第2の板状体及び前記仕切り板が、それぞれ、1枚の金属板状体であり、熱溶着にて一体形成されている断熱構造体である。
【0012】
本発明の態様は、前記第2の板状体の熱伝導度が、前記第1の板状体の熱伝導度よりも高い断熱構造体である。
【0013】
本発明の態様は、前記第1の板状体が、熱可塑性樹脂である断熱構造体である。
【0014】
本発明の態様は、前記第1の空洞部が減圧されている断熱構造体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、断熱構造体は、空間部である第1の空洞部を備えているので、優れた断熱効果を発揮する。このように、本発明の第1の空洞部は、優れた断熱性能を有するので、被冷却体である発熱体から人が触れる部位や熱に弱い部品等が搭載された部位へ、熱が伝達されるのを防止でき、結果、該部位の温度上昇を抑制できる。また、本発明の態様によれば、コンテナの第2の空洞部には、ウィック構造体が収容され、作動流体が封入されていることから、ベーパーチャンバとして機能するので、優れた熱輸送特性を有し、結果、優れた冷却効果を発揮できる。
【0016】
本発明の態様によれば、第2の板状体の熱伝導度が第1の板状体の熱伝導度よりも高いことにより、熱輸送効果(すなわち、被冷却体の冷却効果)と被冷却体に対する断熱性能、ともに優れた断熱構造体を得ることができる。
【0017】
本発明の態様によれば、第1の空洞部が減圧されていることにより、断熱性能がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態例に係る断熱構造体で使用する断熱材の側面断面図である。
図2】(a)図は、本発明の第1実施形態例に係る断熱構造体の側面図、(b)図は、本発明の第1実施形態例に係る断熱構造体の正面断面図である。
図3】本発明の第2実施形態例に係る断熱構造体の説明図である。
図4】本発明の第2実施形態例に係る断熱構造体の説明図である。
図5】本発明の第3実施形態例に係る断熱構造体の説明図である。
図6】本発明の第4実施形態例に係る断熱構造体の説明図である。
図7】本発明の第5実施形態例に係る断熱構造体の説明図である。
図8】(a)図は、本発明の第6実施形態例に係る断熱構造体の平面図、(b)図は、本発明の第6実施形態例に係る断熱構造体の、断熱材の部位の正面断面図、(c)図は、本発明の第6実施形態例に係る断熱構造体の使用態様例の側面断面図である。
図9】本発明の第7実施形態例に係る断熱構造体の説明図である。
図10】本発明の第8実施形態例に係る断熱構造体の説明図である。
図11】本発明の第6実施形態例に係る断熱構造体の他の製造方法例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の第1実施形態例に係る断熱構造体で使用する断熱材について、図面を用いながら説明する。図1に示すように、本発明の第1実施形態例に係る断熱構造体で使用する断熱材1は、空洞部13を有する凸部14が形成されたコンテナ10と、空洞部13内部に設けられた支柱部15とを備えている。空洞部13の外周部は、熱溶着にて封止されている。
【0020】
断熱材1のコンテナ10は、対向する2枚の金属板状体、すなわち、一方の板状体11と他方の板状体12とを重ねることにより形成されている。断熱材1では、コンテナ10は、平面視矩形状であり、その中央部に空洞部13を有する凸部14が設けられている。空洞部13内部は、脱気されて減圧状態となっている。断熱材1では、空洞部13内部は真空状態まで脱気されている。このように、コンテナ10の空洞部13は、減圧(断熱材1では、真空状態まで減圧)されているので、伝熱作用を有する気体(空気)が排除されている。
【0021】
一方の板状体11は平板状である。他方の板状体12も平板状であるが、中央部が凸状に塑性変形されている。他方の板状体12の、外側に向かって突出し、凸状に塑性変形された部位が、コンテナ10の凸部14となる。凸部14の内部が、空洞部13となっている。
【0022】
一方の板状体11の厚さ、他方の板状体12の厚さは、いずれも、特に限定されず、優れた剛性が付与されつつ、減圧されている空洞部をより確実に維持する点から、0.05〜1.0mmが好ましく、0.1〜0.4mmが特に好ましい。また、一方の板状体11、他方の板状体12の材質は、いずれも、特に限定されず、例えば、ステンレス、銅、キプロニッケル等の銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、スズ、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金等を挙げることができる。これらのうち、剛性を有し、平面度を確保しやすく、また、樹脂とのモールド成形性に優れる点からステンレスが好ましい。
【0023】
空洞部13の内部には、支柱部15が設けられている。支柱部15は、減圧されている空洞部13を維持するための部材である。従って、空洞部13内部のうち、支柱部15以外の部位は、空間部となっている。支柱部15の位置は、特に限定されないが、断熱材1では、空洞部13の両端部と中央部に配置されている。なお、空洞部13の内部には、水等の作動流体は封入されていない。
【0024】
また、支柱部15の側面視の断面形状は、特に限定されないが、断熱材1では、矩形の柱状となっている。支柱部の材質は、特に限定されず、例えば、金属(例えば、銅、銅合金等)の多孔質体、銅、銅合金等の金属メッシュ、樹脂、セラミック等を挙げることができる。
【0025】
断熱材1では、一方の板状体11は、空洞部13の外周部、すなわち、空洞部13の周りを囲むように、他方の板状体12と熱溶着されている。空洞部13の外周部が熱溶着されることで、空洞部13が封止され、空洞部13に気密性が付与される。熱溶着手段は、特に限定されず、例えば、レーザー溶接や抵抗溶接等の溶接手段を挙げることができる。
【0026】
断熱材1では、コンテナ10の空洞部13内部のうち、支柱部15以外の部位は空間部となっており、該空間部は減圧されているので、熱伝導性を有する空気等の気体が低減、排除されている。従って、空洞部13は、優れた断熱効果を発揮する。このように、断熱材1は、優れた断熱効果を発揮するので、狭い空間に発熱体が設置されても、人が触れる部位や熱に弱い部品等が搭載された部位と発熱体との間に断熱材1を配置することで、上記部位の温度上昇を抑制できる。また、断熱材1は、対向する2枚の金属板状体から形成されていることから、剛性を有するので、ねじ等の固定部材を用いて所定の取り付け部位に取り付けできる。また、断熱材1は、曲げ等の塑性変形により、所望の形状に加工できるので、狭く複雑な空間、例えば、電子部品が実装されている回路基板等への取り付けが容易である。
【0027】
次に、上記断熱材1を用いた断熱構造体について、図面を用いながら説明する。ここでは、断熱構造体が、パーソナルコンピュータの筐体内に収容された電子部品(例えば、中央演算処理装置(CPU))に設置された場合を例にとって説明する。
【0028】
図2(a)、(b)に示すように、本発明の第1実施形態例に係る断熱構造体2は、パーソナルコンピュータの筐体100内に収容された、上記した断熱材1と、ヒートパイプ21と、を有している。また、ヒートパイプ21は、電子部品102(被冷却体である発熱体)と熱的に接続されている。ヒートパイプ21の蒸発部22が、回路基板101に実装された電子部品102から、受熱プレート103を介して受熱し、蒸発部22の受けた熱が、蒸発部22からヒートパイプ21の凝縮部23へ輸送される。凝縮部23へ輸送された熱が、凝縮部23から熱交換手段としての放熱フィン24を介して、ヒートパイプ21の外部へ放出されることで、電子部品102が冷却される。
【0029】
断熱構造体2では、ヒートパイプ21のコンテナは管状体である。断熱構造体2の断熱材1は、対向する2枚の金属板状体を重ねることにより形成されている平板であり、剛性を有するので、断熱材1は曲げ加工(図では、凹状に加工)が可能である。断熱材1の凹部にヒートパイプ21が嵌合されることで、断熱材1にヒートパイプ21が固定されている。従って、断熱構造体2では、断熱材1とヒートパイプ21が、直接接した状態となっている。断熱構造体2では、断熱材1が凹状に曲げ加工されていることにより、コンテナが管状体であるヒートパイプ21に対し、優れた固定性を有する。
【0030】
また、断熱材1と被冷却体である電子部品102は、ヒートパイプ21を介して、対向するように配置されている。従って、ヒートパイプ21の蒸発部22が、断熱材1の凹部に嵌合されている。上記から、断熱材1は、ヒートパイプ21の蒸発部22と電子部品102に対して、優れた断熱性能を有する。筐体100内における断熱材1の設置範囲は、特に限定されないが、筐体100表面に対して10〜80%の範囲が好ましく、15〜50%の範囲が特に好ましい。
【0031】
図2(a)、(b)に示すように、断熱材1は、固定手段(図では、ねじ104)にて、電子部品102の実装された回路基板101に固定(図では、ねじ止め)されている。このように、断熱構造体2の断熱材1は、剛性を有する平板なので、ねじ止め用のねじ穴を設けることができる。
【0032】
断熱構造体2は、熱輸送効率(すなわち、冷却効率)に優れたヒートパイプ21と、優れた断熱性能を有する断熱材1とを備えるので、断熱性能と熱輸送特性に優れた断熱構造体である。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態例に係る断熱構造体について、図面を用いながら説明する。なお、第1実施形態例に係る断熱構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0034】
図3、4に示すように、本発明の第2実施形態例に係る断熱構造体3は、第1実施形態例に係る断熱構造体の、管状体であるコンテナを有するヒートパイプに代えて、平面型ヒートパイプ(ベーパーチャンバ)31が使用されている。つまり、第2実施形態例に係る断熱構造体3では、断熱材1は、平面型ヒートパイプ31に対する断熱部材として機能する。
【0035】
断熱構造体3では、平面型ヒートパイプ31が使用されることに対応して、断熱材1は凹状に曲げられていない。断熱材1と平面型ヒートパイプ31は積層されることで、相互に、直接接した態様となっている。また、図3に示す断熱構造体3では、断熱材1の平面視の形状と面積は、平面型ヒートパイプ31の平面視の形状、面積と略同じとなっており、断熱材1は、発熱体102の直上部だけではなく、その外側にまで延在した態様となっている。一方で、図4に示す断熱構造体3では、断熱材1の平面視の面積は平面型ヒートパイプ31の平面視の面積よりも小さく、発熱体102の直上部にのみ断熱材1が配置された態様となっている。平面型ヒートパイプ31は、曲げ加工されていない平面型である断熱材1と電子部品102との間に狭持されることで固定されている。断熱材1は、平面型ヒートパイプ31と同様に、対向する2枚の金属板状体により形成された平板なので、凹部を設けなくても、ねじ104等の固定手段によって、平面型ヒートパイプ31とともに、回路基板101に固定することができる。断熱構造体3でも、第1実施形態例に係る断熱構造体と同様に、断熱材1は、平面型ヒートパイプ31と電子部品102に対して優れた断熱性能を有する。
【0036】
次に、本発明の第3実施形態例に係る断熱構造体について、図面を用いながら説明する。なお、第1、第2実施形態例に係る断熱構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0037】
図5に示すように、本発明の第3実施形態例に係る断熱構造体4は、上記第1実施形態例に係る断熱構造体に、さらに、断熱材1と同じ部材である他の断熱材1’が、回路基板101の裏面側、すなわち、電子部品102の実装されていない面側に、設けられている。つまり、第3実施形態例に係る断熱構造体4では、回路基板101の裏面側に設けられた他の断熱材1’は、回路基板101に対する断熱部材且つ補強部材として機能する。
【0038】
他の断熱材1’は、回路基板101の裏面に直接接する態様にて、固定手段(図では、ねじ104)にて、断熱材1とともに、回路基板101に固定(図では、ねじ止め)されている。他の断熱材1’は、回路基板101の裏面に直接接する態様にて固定されているので、曲げ加工等がされていない平面型となっている。
【0039】
他の断熱材1’は、平面型であり剛性を有するので、回路基板101に応力がかかって撓み等が生じても、回路基板101に対する補強部材として機能する。
【0040】
次に、本発明の第4実施形態例に係る断熱構造体について、図面を用いながら説明する。なお、第1〜第3実施形態例に係る断熱構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0041】
図6に示すように、本発明の第4実施形態例に係る断熱構造体5は、第3実施形態例に係る断熱構造体のヒートパイプ21と断熱材1との間に、さらにスペーサー30が設けられている。つまり、第4実施形態例に係る断熱構造体5では、ヒートパイプ21と断熱材1は直接接していない態様となっている。
【0042】
断熱構造体5では、スペーサー30はナットであり、スペーサー30であるナットは、断熱材1の固定手段であるねじ104のねじ溝に螺合されている。断熱材1は、管状体であるコンテナを有するヒートパイプ21に接しない態様にて回路基板101に固定されているので、曲げ加工等がされていない平面型となっている。
【0043】
なお、断熱構造体5では、回路基板101と他の断熱材1’との間にも、他のスペーサー30’が設けられている。従って、回路基板101と他の断熱材1’は、直接接していない態様となっている。他のスペーサー30’は、スペーサー30と同じくナットであり、ねじ104のねじ溝に螺合されている。
【0044】
断熱構造体5では、ヒートパイプ21と断熱材1との間にスペーサー30を配置することにより、断熱材1と電子部品102(被冷却体である発熱体)との間の距離をとることができるので、ヒートパイプ21と電子部品102に対して優れた断熱性能を有する。
【0045】
次に、本発明の第5実施形態例に係る断熱構造体について、図面を用いながら説明する。なお、第1〜第4実施形態例に係る断熱構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0046】
第4実施形態例に係る断熱構造体では、ナットがスペーサーとして作用し、ヒートパイプと断熱材とは直接接していない態様であったが、これに代えて、第5実施形態例に係る断熱構造体5’では、図7に示すように、ヒートパイプ21と断熱材1とが直接接するように、ねじ104にナット50が位置している。すなわち、断熱材1とヒートパイプ21とが直接接するように、ナット50が断熱材1の位置決めをしている。
【0047】
断熱構造体5’のように、曲げ加工等がされていない平面型の断熱材1が、管状体であるコンテナを有するヒートパイプ21と接した態様にて回路基板101に固定されてもよい。
【0048】
次に、本発明の第6実施形態例に係る断熱構造体について、図面を用いながら説明する。なお、第1〜第5実施形態例に係る断熱構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0049】
上記第1〜第5実施形態例に係る断熱構造体では、断熱材とヒートパイプは別体であったが、これに代えて、図8(a)、(c)に示すように、本発明の第6実施形態例に係る断熱構造体6は、断熱材1と平面型ヒートパイプ31が一体となっている。つまり、対向する2枚の金属板64、65のうち、中央部61から一方の端部62までの部位は、断熱材1の対向する2枚の金属板状体(すなわち、一方の板状体11と他方の板状体12)として機能し、中央部61から他方の端部63までの部位は、平面型ヒートパイプ31のコンテナとして機能する。
【0050】
断熱構造体6では、中央部61を境に、断熱材1の部位と平面型ヒートパイプ31の部位が形成されている。また、中央部61では、対向する2枚の金属板64、65は、熱溶着により封止されている。よって、断熱材1の内部空間と平面型ヒートパイプ31の内部空間は、相互に連通していない態様となっている。
【0051】
また、図8(b)に示すように、断熱材1の部位の内部には、支柱部15が配置されている。支柱部15は、例えば、金属メッシュ、または銅粉等の金属粉を焼結させた金属焼結体からなる金属多孔質体である。また、支柱部15は、毛細管力を生じるウィック構造となっている。支柱部15の平面視の形状は、特に限定されないが、断熱構造体6では、図8(a)に示すように、格子状となっている。また、支柱部15は、対向する2枚の金属板64、65の間に配置されている。
【0052】
平面型ヒートパイプ31の部位の内部にも、断熱材1の部位と同じく、支柱部15が配置されている。上記の通り、支柱部15は、毛細管力を生じるウィック構造となっているので、平面型ヒートパイプ31の部位では、凝縮部にて気相から液相へ相変化した作動流体を、蒸発部へ還流させるウィック構造体として機能する。
【0053】
図8(c)に示すように、断熱構造体6では、例えば、中央部61にて折り曲げ加工することにより、断熱材1の部位は、平面型ヒートパイプ31の部位及び平面型ヒートパイプ31の部位に熱的に接続された電子部品(図示せず)に対して、優れた断熱性能を有する。また、断熱構造体6では、断熱材1の部位と平面型ヒートパイプ31の部位が一体となっているので、断熱材1の部位は、平面型ヒートパイプ31の部位に対して優れた固定性を発揮する。
【0054】
次に、本発明の第7実施形態例に係る断熱構造体について、図面を用いながら説明する。なお、第1〜第6実施形態例に係る断熱構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0055】
第6実施形態例に係る断熱構造体では、対向する2枚の金属板が熱溶着により封止された中央部を境に、断熱材の部位と平面型ヒートパイプ(ベーパーチャンバ)の部位が、一体的に形成されていたが、これに代えて、第7実施形態例に係る断熱構造体7では、図9に示すように、対向する2枚の板状体、すなわち、第2の板状体である一方の板状体11と該一方の板状体11と対向する第1の板状体である他方の板状体12との間に、一方の板状体11と他方の板状体12を仕切る仕切り板70が設けられている。
【0056】
断熱構造体7では、他方の板状体(第1の板状体)12だけではなく、一方の板状体(第2の板状体)11も、中央部が凸状に塑性変形されている。一方の板状体11の、外側に向かって突出し、凸状に塑性変形された部位も、コンテナ10の凸部となる。該凸部の内部が、後述する第2の空洞部72となっている。
【0057】
断熱構造体7では、コンテナ10は、他方の板状体(第1の板状体)12と一方の板状体(第2の板状体)11と平板状の仕切り板70とからなっている。また、第1の板状体12、第2の板状体11及び仕切り板70は、いずれも、1枚の板状体(すなわち、一枚板)から形成されている。断熱構造体7では、コンテナ10の外周部に位置する熱溶着部は、他方の板状体(第1の板状体)12と平板状の仕切り板70と一方の板状体(第2の板状体)11の3層構造となっている。
【0058】
図9に示すように、仕切り板70は、一方の板状体11の平面方向及び他方の板状体12の平面方向に沿って延在し、コンテナ10の内部空間を2つの領域に分割している。すなわち、仕切り板70によって、コンテナ10の空洞部13は、他方の板状体(第1の板状体)12と仕切り板70との間に形成された第1の空洞部71と、一方の板状体(第2の板状体)11と仕切り板70との間に形成された第2の空洞部72とに分割されている。従って、仕切り板70を介して、第1の空洞部71に対応するコンテナ10の部位と第2の空洞部72に対応するコンテナ10の部位とが一体化されている。
【0059】
仕切り板70の材質としては、例えば、ステンレス、銅、キプロニッケル等の銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、スズ、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金等を挙げることができる。
【0060】
断熱構造体7では、第1の空洞部71と第2の空洞部72は、仕切り板70によって、相互に、連通されていない態様となっている。また、第1の空洞部71と第2の空洞部72は、いずれも、密閉空間であり、脱気されて減圧状態となっている。断熱構造体7では、第1の空洞部71と第2の空洞部72は、いずれも、真空状態まで脱気されている。
【0061】
また、第2の空洞部72には、作動流体(図示せず)が封入されている。さらに、第2の空洞部72には、支柱部15が配置されている。支柱部15は、例えば、金属メッシュ、または銅粉等の金属粉を焼結させた金属焼結体からなる金属多孔質体である。従って、支柱部15は、毛細管力を生じるウィック構造体となっている。上記から、コンテナ10の空洞部13のうち、第2の空洞部72の部位は、ベーパーチャンバ(平面型ヒートパイプ)の空洞部として機能する。よって、第2の板状体11と仕切り板70の部位は、ベーパーチャンバのコンテナとして機能する。
【0062】
一方で、第1の空洞部71には、支柱部73が設けられている。支柱部73の形状は、特に限定されないが、断熱構造体7では、仕切り板70から第1の板状体12まで延在している形状が好ましい。支柱部73は、減圧されている第1の空洞部71を維持するための部材である。従って、第1の空洞部71内部のうち、支柱部73以外の部位は、空間部となっている。また、第1の空洞部71には、作動流体は封入されていない。従って、コンテナ10の空洞部13のうち、第1の空洞部71の部位は、断熱材として機能する。よって、第1の板状体12と仕切り板70の部位は、断熱材のコンテナとして機能する。第1の空洞部71は、減圧状態となっているので、断熱特性がさらに向上する。
【0063】
支柱部73の材質は、特に限定されないが、例えば、金属、樹脂を挙げることができ、より具体的には、金属製または樹脂製の多孔質体を挙げることができる。多孔質体を使用することにより、機械的強度を損なうことなく、軽量化することができる。また、支柱部73が金属メッシュの場合であった場合は、目の粗いメッシュの方が断熱性能には良い。さらには、支柱部73が金属メッシュであって、支柱部15も金属メッシュの場合は、メッシュの開口率は、支柱部73の方が、支柱部15に比べて大きいほうが好ましい。
【0064】
断熱構造体7では、第2の板状体11の外面に、被冷却体が熱的に接続される。
【0065】
また、第1の板状体12及び第2の板状体11の材質としては、上記した一方の板状体と他方の板状体の材質が挙げられるが、断熱構造体7では、第2の板状体11の熱伝導度が、第1の板状体12の熱伝導度よりも高い態様となっている。すなわち、第1の板状体12の材質は、第2の板状体11の材質と異なる態様となっている。従って、断熱構造体7では、第1の板状体12と仕切り板70の部位は、断熱材としての機能が向上し、第2の板状体11と仕切り板70の部位は、ベーパーチャンバとして、熱輸送機能、すなわち、冷却性能が向上する。
【0066】
第2の板状体11としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金が挙げられ、第1の板状体12としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等が挙げられる。また、第2の板状体11の厚さ及び第1の板状体12の厚さは、いずれも、特に限定されないが、上記した一方の板状体と他方の板状体と同様に、優れた剛性が付与されつつ、減圧されている空洞部をより確実に維持する点から、0.05〜1.0mmが好ましく、0.1〜0.4mmが特に好ましい。
【0067】
なお、断熱構造体7では、上記した第1の空洞部71は、減圧状態となっていたが、必要に応じて、減圧状態としなくてもよい。
【0068】
断熱構造体7では、コンテナ10内部に第1の空洞部71を備えているので、優れた断熱効果を発揮する。このように、第1の空洞部71は、優れた断熱性能を有するので、被冷却体である発熱体(図示せず)から人が触れる部位や熱に弱い部品等が搭載された部位へ、熱が伝達されるのを防止でき、結果、該部位の温度上昇を抑制できる。また、断熱構造体7では、コンテナ10内部の第2の空洞部72には、ウィック構造体として機能する支柱部15が設けられ、作動流体が封入されていることから、ベーパーチャンバとして機能するので、優れた熱輸送特性を有し、結果、優れた冷却効果を発揮できる。
【0069】
また、断熱構造体7では、優れた断熱性能を有する部位と優れた熱輸送特性を有する部位が、仕切り板70を介して一体化されているので、断熱構造体7はコンパクト化され、狭小な空間へも設置することができる。
【0070】
次に、本発明の第8実施形態例に係る断熱構造体について、図面を用いながら説明する。なお、第1〜第7実施形態例に係る断熱構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0071】
第7実施形態例に係る断熱構造体では、第1の板状体12は金属部材であり、第1の空洞部は、減圧状態であり、支柱部73を備えていたが、これに代えて、図10に示すように、第8実施形態例に係る断熱構造体8では、第1の空洞部71に支柱部が設けられておらず、また、第1の板状体12は樹脂製であり、第1の空洞部71は減圧されていない。
【0072】
断熱構造体8では、第1の板状体12が樹脂製であることにより、軽量化できるとともに、射出成形等を用いることで一体型に成形できる、すなわち、コンテナ10の外周部を熱溶着せずに成形できるので、製造が容易化される。
【0073】
なお、断熱構造体8では、上記態様に代えて、必要に応じて、第1の空洞部71に支柱部を設けてもよく、第1の空洞部71は減圧されていてもよい。
【0074】
断熱構造体8でも、第7実施形態例に係る断熱構造体と同様に、優れた断熱性能を有する部位と優れた熱輸送特性を有する部位を有しており、且つ両部位が仕切り板70を介して一体化されているので、狭小な空間へ設置することができる。
【0075】
次に、上記した本発明の実施形態例に係る断熱構造体で使用する断熱材1の製造方法例について説明する。まず、一方の板状体11上に支柱部15を載置し、さらに、支柱部15の上に、他方の板状体12を載置して、一方の板状体11、支柱部15及び他方の板状体12からなる三層構造を形成する。このとき、支柱部15は空洞部13に収容され、一方の板状体11の周縁部と他方の板状体12の周縁部が、相互に重なるように設置する。次に、対向する一方の板状体11と他方の板状体12の周縁部を熱溶着にて封止する。このとき、前記周縁部の一部は熱溶着せずに、空洞部13の内部空間を脱気するための開口部とする。次に、前記開口部から空洞部13の内部空間を脱気した後、前記開口部を熱溶着にて封止することで、空洞部13が減圧された断熱材1を作製することができる。
【0076】
次に、本発明の第6実施形態例に係る断熱構造体6の製造方法例について説明する。まず、対向する2枚の金属板64、65間に、支柱部15を挿入して三層構造を形成する。対向する2枚の金属板64、65の周縁部を熱溶着にて封止する。このとき、周縁部の一部は熱溶着せずに、作動流体を注入するための開口部とする。図8(a)に示すように、この開口部は、平面型ヒートパイプ31の部位にあたる他方の端部63に1か所形成する。次に、上記開口部から、対向する2枚の金属板64、65間に形成された空間に、作動流体(例えば、水)を注入する。次に、中央部61を熱溶着し、上記開口部を介して対向する2枚の金属板64、65間に形成された空間を脱気して、上記開口部を熱溶着にて封止する。上記方法により、平面型ヒートパイプ31の部位に作動流体が封入され、断熱材1の部位には作動流体が封入されていない断熱構造体6を作製することができる。
【0077】
また、本発明の第6実施形態例に係る断熱構造体6の他の製造方法例として、図11に示すように、対向する2枚の金属板64、65の周縁部を熱溶着にて封止する際に、開口部を2か所設けてもよい。図11では、平面型ヒートパイプ31の部位にあたる他方の端部63に1か所の開口部と、断熱材1の部位にあたる一方の端部62に1か所の開口部が、形成されている。中央部61を熱溶着し、平面型ヒートパイプ31の部位にあたる他方の端部63の開口部を介して、2枚の金属板64、65間に形成された空間に作動流体(例えば、水)を注入後に脱気して、他方の端部63の開口部を熱溶着にて封止する。断熱材1の部位にあたる一方の端部62の開口部では、上記中央部61の熱溶着後、2枚の金属板64、65間に形成された空間に作動流体(例えば、水)を注入せず脱気して、一方の端部62の開口部を熱溶着にて封止する。上記方法により、平面型ヒートパイプ31の部位に作動流体が封入され、断熱材1の部位には作動流体が封入されていない断熱構造体6を作製してもよい。
【0078】
次に、本発明の断熱構造体で使用する断熱材について、他の実施形態例を説明する。上記実施形態例に係る断熱材では、支柱部は、空洞部の両端部と中央部に配置されていたが、これに代えて、空洞部の両端部にのみ配置されてもよく、空洞部の中央部にのみ配置されてもよい。
【0079】
次に、本発明の断熱構造体について、他の実施形態例を説明する。本発明の第1実施形態例に係る断熱構造体では、熱交換手段として放熱フィンを用いたが、これに代えて、ヒートシンクを用いてもよい。また、本発明の第3実施形態例に係る断熱構造体では、回路基板と他の断熱材との間にも、他のスペーサーが配置されていたが、使用状況等に応じて、他のスペーサーは設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の断熱構造体は、発熱量が大きい被冷却体に対しても、優れた断熱効果を発揮し、また、優れた熱輸送特性を有することで、優れた冷却効果を発揮できるので、広汎な分野で利用可能であり、例えば、回路基板に実装された電子部品を冷却する分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0081】
1 断熱材
2、3、4、5、5’、6、7、8 断熱構造体
10 コンテナ
11 一方の板状体
12 他方の板状体
13 空洞部
15 支柱部
21 ヒートパイプ
31 平面型ヒートパイプ
70 仕切り板
71 第1の空洞部
72 第2の空洞部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11