(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記相対位置算出部は、前記撮像装置を用いて得られた前記位置表示マークの撮像データを用いて、前記撮像装置と前記位置表示マークとの間の距離を前記プローブと前記測定対象物との相対位置として算出する請求項9に記載の三次元測定機。
前記衝突防止策実行部は、前記設定された退避面に沿って前記プローブを移動させ、前記退避面における前記測定対象物の測定位置との距離が最短となる位置から前記プローブを前記測定対象物の測定位置へ向けて移動させる請求項1から13のいずれか一項に記載の三次元測定機。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明がされる。本明細書では先に説明した構成と同一の構成には同一の符号が付され、説明が適宜される。
【0053】
[三次元測定機の全体構成]
図1は第一実施形態に係る三次元測定機の全体構成図である。
図1に示された三次元測定機10は自動測定型の三次元測定機であり、プローブ24を測定対象物42に接触させて測定対象物42を測定する三次元測定機である。
【0054】
すなわち、
図1に示された三次元測定機10は、プローブ24を自動で移動させ、測定対象物42の測定位置にプローブ24を接触させることにより、測定対象物42の測定空間における座標値を決定する装置である。
【0055】
測定空間における座標値として、ワーク座標系における座標値を適用することができる。ワーク座標系とは、測定対象物42における任意の位置が原点とされる座標系である。ワーク座標系として三次元直交座標系が用いられることが可能である。なお、本明細書における測定対象物は、ワーク、又は被測定物と呼ばれることがある。
【0056】
三次元測定機10には、予めマシン座標系が設定されている。本実施形態に示された三次元測定機10は、測定対象物42が配置されると、測定座標系としてワーク座標系が登録される。ワーク座標系が登録されると、マシン座標系とワーク座標系との変換関係が規定され、マシン座標系とワーク座標系との変換関係を用いて測定データがワーク座標系の座標値へ変換される。
【0057】
本実施形態では、門型移動の三次元測定機が例に挙げられる。三次元測定機は、Coordinate Measuring Machineと呼ばれることがある。Coordinate Measuring MachineはCMMと省略されることがある。
【0058】
図1に示された三次元測定機10は、架台12、及びテーブル14を備えている。三次元測定機10は、架台12の上にテーブル14が載置された構造を有している。
【0059】
テーブル14の上面14Aは、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16Lが立設される。テーブル14の下面14Cは、架台12に支持される。
【0060】
右Yキャリッジ16Rは、X軸方向におけるテーブル14の一方の端に立設される。左Yキャリッジ16Lは、X軸方向におけるテーブル14の他方の端に立設される。
図1では、テーブル14の右端がX軸方向の一方の端とされる。また、テーブル14の左端がX軸方向の他方の端とされる。
【0061】
右Yキャリッジ16Rの上部と左Yキャリッジ16Lの上部とはXガイド18を用いて連結される。すなわち、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L、及びXガイド18によって門型フレーム26が構成される。
【0062】
本明細書における上の用語は、特に断らない限り、重力方向と反対方向が表される用語である。同様に、本明細書における下の用語は、特に断らない限り、重力方向が表される用語である。
【0063】
テーブル14のY軸方向に沿う側面であり、X軸方向における一方の端部である右端部14Dの側の右側面14Bは、右Yキャリッジ16Rとの摺動面が形成される。右Yキャリッジ16Rはテーブル14の右側面14Bと対向する面にベアリングが設けられている。
【0064】
テーブル14の上面14AにおけるX軸方向の右端部14Dは、右Yキャリッジ16Rとの摺動面が形成される。右Yキャリッジ16Rはテーブル14の上面14AにおけるX軸方向の右端部14Dと対向する面にベアリングが設けられている。
【0065】
同様に、テーブル14のY軸方向に沿う側面であり、X軸方向における他方の端部である左端部14E側の左側面14Fは左Yキャリッジ16Lとの摺動面が形成される。左Yキャリッジ16Lはテーブル14の左側面14Fと対向する面にベアリングが設けられている。
【0066】
テーブル14の上面14AにおけるX軸方向の左端部14Eは、左Yキャリッジ16Lとの摺動面が形成される。左Yキャリッジ16Lはテーブル14の上面14AにおけるX軸方向の左端部14Eと対向する面にベアリングが設けられている。
【0067】
右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L、及びXガイド18から構成される門型フレーム26は、テーブル14によって、Y軸方向と平行方向について移動可能に支持されている。
【0068】
テーブル14におけるX軸方向の右側面14Bは、Y軸方向位置検出用リニアスケールが取り付けられている。Y軸方向位置検出用リニアスケールは、Y軸方向における右Yキャリッジ16Rの位置を検出し、Y軸方向における右Yキャリッジ16Rの位置を表す検出信号を生成する。なお、
図1において、Y軸方向位置検出用リニアスケールの図示は省略されている。
【0069】
Xガイド18は、Xキャリッジ20が取り付けられている。Xガイド18はXキャリッジ20との摺動面18Aを有している。Xキャリッジ20は摺動面18Aと対向する位置にエアベアリングが内蔵されている。
【0070】
すなわち、Xキャリッジ20は、Xガイド18によってX軸方向と平行方向について移動可能に支持されている。なお、Xキャリッジ20に内蔵されるエアベアリングの図示は省略されている。
【0071】
Xガイド18は、X軸方向位置検出用のリニアスケールが取り付けられている。X軸方向位置検出用のリニアスケールは、X軸方向におけるXキャリッジ20の位置を検出し、X軸方向におけるXキャリッジ20の位置を表す検出信号を生成する。なお、
図1において、Xガイド18に取り付けられているX軸方向位置検出用のリニアスケールの図示は省略されている。
【0072】
Xキャリッジ20は、Zキャリッジ22が取り付けられている。Xキャリッジ20は、Z軸方向案内用のエアベアリングが内蔵されている。すなわち、Zキャリッジ22は、XガイドによってZ軸方向と平行方向について移動可能に支持されている。なお、
図1において、Z軸方向案内用のエアベアリングの図示は省略されている。
【0073】
Xキャリッジ20は、Z軸方向位置検出用リニアスケールが取り付けられている。Z軸方向位置検出用リニアスケールは、Z軸方向におけるZキャリッジ22の位置を検出し、Z軸方向におけるZキャリッジ22の位置を表す検出信号を生成する。
【0074】
図1において図示が省略されたX軸方向位置検出用のリニアスケール、Y軸方向位置検出用リニアスケール、及びZ軸方向位置検出用リニアスケールは、
図2にリニアスケール132として図示される。
【0075】
Zキャリッジ22は、下端にプローブ24が取り付けられている。プローブ24はスタイラス支持部24A、スタイラス24B、及び接触子24Cを備えている。スタイラス支持部24Aの先端は、スタイラス24Bの基端が取り付けられる。スタイラス24Bの先端は接触子24Cが取り付けられる。
【0076】
プローブ24は、スタイラス24B、及び接触子24Cを互いに直交する二軸である回転軸24D、及び回転軸24Eの周りに回転させる構造を有している。スタイラス24B、及び接触子24Cを回転軸24Dの周りに回転させる構造の例として、モータ、及びモータの回転軸に連結される回転駆動機構が挙げられる。
【0077】
同様に、スタイラス24B、及び接触子24Cを回転軸24Eの周りに回転させる構造の例として、モータ、及びモータの回転軸に連結される回転駆動機構が挙げられる。モータ、及びモータの回転軸に連結される回転駆動機構の図示は省略される。
【0078】
すなわち、
図1に示されたプローブ24は、五軸同時制御が可能なプローブであり、回転軸24D、及び回転軸24Eの周りの回転動作のみを用いることで、より速い測定が可能となる。なお、ここでいう測定は測定座標系における座標値を決定させる動作であり、プロービングと呼ばれることがある。
【0079】
図1に示されたプローブ24は、無線通信装置親機40が取り付けられている。また、
図1に示された測定対象物42は、無線通信装置子機44が取り付けられている。無線通信装置親機40の例として非接触ICタグリーダが挙げられる。無線通信装置子機44の例として非接触ICタグが挙げられる。非接触ICタグは、RFIDタグ、又は無線タグと呼ばれることがある。
【0080】
無線通信装置子機44は、バッテリーが具備されたアクティブ型でもよいし、バッテリーが具備されていないパッシブ型でもよい。
【0081】
パッシブ型の無線通信装置子機44が適用される場合、適用される電波の周波数帯が135キロヘルツ以下では、データ通信が可能な距離は0.15メートル以下である。電波の周波数帯が13.56メガヘルツ以下では、データ通信が可能な距離は0.5メートル以下である。
【0082】
電波の周波数帯が952キロヘルツ以上954メガヘルツ以下では、データ通信が可能な距離は3.0メートル以上7.0メートル以下である。電波の周波数帯が2.54ギガヘルツ以下のでは、データ通信が可能な距離は1.0メートル以下である。
【0083】
なお、ICは、Integrated Circuitの省略語である。RFIDタグは、radio frequency identifierの省略語である。
【0084】
無線通信装置は、光学式読取装置を用いたバーコード、又は二次元バーコードなどの読み取りを適用してもよい。光学式読取装置はレーザ光、可視光、又は赤外光などが適用されてもよい。無線通信装置として超音波通信機が適用されてもよい。
【0085】
本実施形態に示された三次元測定機10は、プローブ24が危険な速度で測定対象物42に接近している場合に、衝突防止策が実行される。
【0086】
衝突防止策の例として、プローブ24の速度を落とし、予め決められている安全速度範囲でプローブを移動させる態様が挙げられる。プローブ24の移動経路が安全な範囲に設定される態様が挙げられる。また、更に、手動操作型の三次元測定機における衝突防止策の例として、警告音を鳴らすなど、プローブ24が危険な速度で測定対象物42に接近していることを表す報知情報を報知する態様が挙げられる。
【0087】
プローブ24と測定対象物42との相対位置の特定の詳細、及び衝突防止策の詳細は後述する。
【0088】
図1に示される三次元測定機10は、コントローラ28を備えている。コントローラ28は、プローブ24が用いられる自動測定の際にプローブ24の動作を制御する。すなわち、コントローラ28はXキャリッジ20を動作させる駆動部のドライバー、門型フレーム26を動作させる駆動部のドライバー、及びZキャリッジ22を動作させる駆動部のドライバーが含まれる。
【0089】
コントローラ28はXキャリッジ20を動作させる駆動部のドライバー、門型フレーム26を動作させる駆動部のドライバー、及びZキャリッジ22を動作させる駆動部のドライバーは、
図2にプローブ駆動部130として図示されている。
【0090】
また、コントローラ28はスタイラス24B、及び接触子24Cを回転軸24Dの周りに回転させる駆動部のドライバー、及びスタイラス24B、及び接触子24Cを回転軸24Eの周りに回転させる駆動部のドライバーが含まれる。
【0091】
コントローラ28は、図示しないジョイスティックが接続されてもよい。ジョイスティックは、手動で作業者が三次元測定機10を動作させる際に、三次元測定機10へ送出される手動操作指令信号を生成する。
【0092】
コントローラ28は、プローブ24から出力された検出信号が入力される。すなわち、コントローラ28は、プローブ24を用いて取得された、ワーク座標系における測定対象物42のX軸方向の座標値、Y軸方向の座標値、及びZ軸方向の座標値を取得する。
【0093】
コントローラ28によって取得されたワーク座標系における測定対象物42のX軸方向の座標値、Y軸方向の座標値、及びZ軸方向の座標値は、コンピュータ32へ送出される。
【0094】
図1に示されたコンピュータ32は、コントローラ28との間でデータ通信が可能に接続される。コンピュータ32とコントローラ28との接続形態は信号線30を用いた接続でもよいし、無線を用いた接続でもよい。コンピュータ32とコントローラ28とはネットワークを介して接続されてもよい。
【0095】
コンピュータ32は、三次元測定機10の自動測定を実行させるソフトウエア32Aがインストールされている。三次元測定機10の自動測定を実行させるソフトウエア32Aとしてパートプログラムが挙げられる。パートプログラムの詳細は後述する。
【0096】
ソフトウエア32Aには、コンピュータ32に三次元測定機10と測定対象物42の衝突を防止するための衝突防止策を実行させるソフトウエアが含まれている。
【0097】
[制御系、及び情報処理系の説明]
図2は
図1に示された三次元測定機における制御系、及び情報処理系のブロック図である。
図2に示されたように、コントローラ28は、プローブ駆動制御部28A、測定データ取得部28B、及び通信データ取得部28Cを備えている。
【0098】
プローブ駆動制御部28Aは、コンピュータ32から送出された指令に基づき、プローブ駆動部130の動作を制御する。
【0099】
図2に示されたプローブ駆動部130は、Xキャリッジ20を動作させる駆動部、門型フレーム26を動作させる駆動部、Zキャリッジ22を動作させる駆動部、プローブ24を回転軸24Dの周りに回転させる駆動部、及びプローブ24を回転軸24Eの周りに回転させる駆動部が含まれる。
【0100】
測定データ取得部28Bは、リニアスケール132から出力されるプローブ24の位置情報を取得する。プローブ24の位置情報として、マシン座標系におけるX軸方向座標値、Y軸方向座標値、及びZ軸方向座標値が適用される場合、マシン座標系におけるX軸方向座標値、Y軸方向座標値、及びZ軸方向座標値は、それぞれ、ワーク座標系におけるX軸方向座標値、Y軸方向座標値、及びZ軸方向座標値に変換される。なお、プローブ24の位置はスタイラス位置と呼ばれることがある。
【0101】
通信データ取得部28Cは、無線通信装置子機44から送信された測定対象物情報であり、無線通信装置親機40を介して取得された測定対象物情報を取得する。測定対象物情報は、
図1に示された測定対象物42に取り付けられた無線通信装置子機44の識別情報が含まれている。測定対象物42の設計情報が含まれていてもよい。
【0102】
測定対象物42の設計情報は、測定対象物42の形状を特定する情報である。測定対象物42の設計情報として、測定対象物42のCADデータが適用されてもよい。CADは、computer aided designの省略語である。
【0103】
無線通信装置子機44の識別情報は、測定対象物42における無線通信装置子機44の位置が表された情報が含まれる。
【0104】
コンピュータ32は、制御部102、記憶部104、及びプログラム実行部106を備えている。制御部102はコンピュータ32の各部を統括的に制御する。また、制御部102は入力された各種情報を記憶部104へ記憶させる。更に、制御部102は記憶部104に記憶されている各種情報を読み出し、コンピュータ32の各部へ送信する。
【0105】
記憶部104はコンピュータ32に取得された各種情報が一時的に記憶される一次記憶領域が含まれていてもよい。記憶部104は演算結果が記憶される演算結果記憶領域が含まれていてもよい。記憶部104は
図1に示されソフトウエア32Aがインストールされるソフトウエアインストール領域が含まれていてもよい。
【0106】
記憶部104は、半導体素子、磁気記憶素子、光学記憶素子などの記憶素子を適用可能である。半導体素子の例としてRAMと呼ばれる一次書き込み読み出し可能な記憶素子、及びROMと呼ばれる読み取り専用記憶素子が挙げられる。記憶部104は複数の種類の記憶素子を備えることが可能である。
【0107】
図2に示されたプログラム実行部106は、
図1に示されたソフトウエア32Aをコンピュータ32に実行させる処理部である。
【0108】
例えば、
図1に示されたソフトウエア32Aとして、測定位置、及び測定手順が記述されたパートプログラムがインストールされている場合に、
図2に示されたプログラム実行部106は、コンピュータ32にパートプログラムを実行させる。
【0109】
図2に示されたコンピュータ32は、測定指令部108を備えている。測定指令部108は、自動測定の際に、パートプログラムに記載された測定手順に従いプローブ24を移動させる指令をコントローラ28へ送出する。
【0110】
図2に示されたコンピュータ32は、測定データ取得部110、測定対象物情報取得部112、相対位置算出部114、測定対象物特定部115、及び退避面設定部116を備えている。
【0111】
測定データ取得部110は、コントローラ28の測定データ取得部28Bを介して、リニアスケール132から出力された測定データを取得する。
【0112】
測定対象物情報取得部112は、コントローラ28の通信データ取得部28Cを介して取得された測定対象物情報を取得する。測定データ取得部110を用いて取得された測定データ、及び測定対象物情報取得部112を用いて取得された測定対象物データは、記憶部104に記憶される。
【0113】
相対位置算出部114は、プローブ24と測定対象物42との相対位置を算出する。プローブ24と測定対象物42との相対位置として、プローブ24に取り付けられた無線通信装置親機40と、測定対象物42に取り付けられた無線通信装置子機44との距離が算出される。
【0114】
測定対象物特定部115は、相対位置算出部114を用いて算出されたプローブ24に取り付けられた無線通信装置親機40と、測定対象物42に取り付けられた無線通信装置子機44との距離、及び測定対象物42の設計情報を用いて、測定対象物42の位置、及び測定対象物42の姿勢を表す測定対象物42の外形を特定する。
【0115】
退避面設定部116は、特定された測定対象物42の外形を用いて退避面を算出し、退避面を設定する。測定対象物42の外形は、
図6に符号42Aが付されて図示される。
【0116】
退避面とは、測定対象物42の測定の際のプローブ24の安全な経路が設定可能な領域と、プローブ24が測定対象物42と衝突する可能性がある領域との境界を表す面である。すなわち、退避面の測定対象物42の側の領域は、プローブ24が測定対象物42と衝突する可能性がある領域である。一方、退避面の測定対象物42と反対側の領域は、プローブ24の安全な経路を設定可能な領域である。
【0117】
図2に示されたコンピュータ32は、設計情報取得部117を備えている。設計情報取得部117は、コントローラ28の通信データ取得部28C、及び測定対象物情報取得部112を介して取得された通信データに含まれる、
図1に示された測定対象物42の設計情報を取得する。
【0118】
図2に示されたコンピュータ32は、衝突防止策実行判断部120、及び衝突防止策制御部122を備えている。衝突防止策実行判断部120、及び衝突防止策制御部122は衝突防止策実行部の構成要素である。
【0119】
衝突防止策実行判断部120は、プローブ24と測定対象物42との距離に応じて、三次元測定機10に衝突防止策を実行させるか否かを判断する。衝突防止策制御部122は、衝突防止策実行判断部120によって三次元測定機10に衝突防止策を実行させると判断された場合に、衝突防止策を実行させる各部に指令を送出する。
【0120】
例えば、三次元測定機10に衝突防止策を実行させる場合、衝突防止策制御部122は、測定指令部108を介してコントローラ28のプローブ駆動制御部28Aに、プローブ24を減速させる指令を送出する。
【0121】
プローブ24を減速させる指令を取得したプローブ駆動制御部28Aは、プローブ24の動作パラメータを変更して、プローブ24の速さを安全な範囲に変更する。プローブ24の速さの安全な範囲にはプローブ24の停止が含まれる。
【0122】
図2では、コントローラ28、及びコンピュータ32を機能ごとの構成要素として説明した。
図2に示されたコントローラ28、及びコンピュータ32は、CPU、各種プロセッサー、メモリ、及び周辺回路を用いて構成することが可能である。また、各構成要素の機能は、ソフトウエアを介在させて実現されてもよい。なお、CPUは中央演算装置を表すCentral Processing Unitの省略語である。
【0123】
[自動測定手順の説明]
図3は
図1に示された三次元測定機に適用される自動測定方法の手順の流れが示されたフローチャートである。本実施形態に示される測定方法は、退避面設定工程S10、測定対象物登録工程S12、自動測定開始工程S14、測定データ取得工程S16、及び測定完了判断工程S18を含んで構成される。
【0124】
図3に示された退避面設定工程S10では、
図1に示された測定対象物42の退避面が設定される。退避面の一例は、
図7に符号48が付されて図示される。退避面の他の例は、
図13に符号48Aが付されて図示される。
【0125】
図3に示された退避面設定工程S10では、測定対象物情報の取得、プローブ24と測定対象物42との相対位置の算出、測定対象物42の位置、及び測定対象物42の姿勢の特定、及び退避面の算出を経て算出された退避面が、測定対象物42の自動測定が開始される前に設定される。
【0126】
図3に示された退避面設定工程S10では、測定対象物42の登録前に退避面が設定されるので、
図3に示された退避面設定工程S10において設定された退避面はマシン座標系の座標値が適用される。
【0127】
図3に示された退避面設定工程S10において退避面が設定されると、衝突防止策実行工程S11では、
図1に示されたプローブ24が退避面を超えて測定対象物42に近接した場合に、衝突防止策が実行される。衝突防止策実行工程S11は、自動測定中に実行されてもよい。
【0128】
退避面設定工程S10において退避面が設定されると、測定対象物登録工程S12へ進む。測定対象物登録工程S12では、
図1に示された測定対象物42の位置、及び測定対象物42の外形など、測定対象物42の測定に必要な測定対象物42の情報が登録される。
【0129】
また、測定対象物42の登録には、測定対象物42に対応してワーク座標系の登録が含まれる。測定対象物登録工程S12においてワーク座標系が登録されると、マシン座標系の座標値で表される退避面はワーク座標系の座標値で表される退避面に変換される。退避面の設定の詳細、及びワーク座標系の登録の詳細は後述する。
【0130】
自動測定開始工程S14では、測定対象物42の自動測定が開始される。自動測定開始工程S14において測定対象物42の自動測定が開始されると、測定データ取得工程S16においてパートプログラムに記載された測定位置における測定データが取得される。
【0131】
そして、測定完了判断工程S18において、パートプログラムに記載された全ての測定位置における測定データが取得されたか否かが判断される。測定完了判断工程S18におけるNO判定である、パートプログラムに記載された全ての測定位置における測定データが取得されていない場合は、測定データ取得工程S16に戻り、パートプログラムに記載された測定位置のうち、未測定の測定位置における測定データが取得される。
【0132】
測定データ取得工程S16は、パートプログラムに記載された全ての測定位置における測定データが取得されるまで、繰り返し実行される。
【0133】
一方、測定完了判断工程S18におけるYES判定である、パートプログラムに記載された全ての測定位置における測定データが取得された場合は、自動測定は終了される。
【0134】
三次元測定機の接触式のプローブが用いられて測定対象物42が登録される場合、操作者の操作ミスがない方法により、自動的に測定対象物42が登録されることが望まれる。しかし、従来の三次元測定機は接触式のプローブが手動で操作され、測定対象物42が登録される。そうすると、測定対象物42が登録される際に、プローブと測定対象物との衝突が生じる可能性ある。
【0135】
そこで、本実施形態に示された三次元測定機10では、自動測定の開始前に、
図1に示された測定対象物42に退避面が設定されることで、測定対象物42の登録を含む自動測定の全工程において、プローブ24が退避面を通過して測定対象物42に近接した場合に衝突防止策が実行されるので、測定対象物42の登録を含む自動測定の全工程において、プローブ24と測定対象物との衝突を回避しうる。
【0136】
[自動測定の変形例]
図4は
図3に示された自動測定方法の変形例の流れが示されたフローチャートである。以下の説明では、主として、
図3に示された自動測定方法との違いについて説明がされる。
【0137】
図4にフローチャートが示された自動測定方法の変形例では、自動測定開始工程S14において自動測定が開始されると、
図1に示された測定対象物42が最初に配置された位置から移動されたか否かが判断される。
【0138】
すなわち、
図4に示された自動測定開始工程S14において自動測定が開始されると、測定対象物情報取得工程S20において、測定対象物情報が取得される。測定対象物情報取得工程S20において取得される測定対象物情報は、退避面設定工程S10における測定対象物情報取得と同様である。
【0139】
図4に示された測定対象物情報取得工程S20において、測定対象物情報が取得されると、測定対象物移動判断工程S22へ進む。測定対象物移動判断工程S22では、退避面設定工程S10における退避面の設定に用いられたプローブ24と測定対象物42との相対位置と、測定対象物情報取得工程S20において取得された測定対象物情報を用いて算出されたプローブ24と測定対象物42との相対位置との一致、又は不一致が判定される。
【0140】
測定対象物移動判断工程S22におけるNO判定である、退避面設定工程S10における退避面の設定に用いられたプローブ24と測定対象物42との相対位置と、測定対象物情報取得工程S20において取得された測定対象物情報を用いて算出されたプローブ24と測定対象物42との相対位置とが一致する場合は、測定データ取得工程S16へ進む。
【0141】
以降、パートプログラムに記載された全ての測定位置の測定データが測定されるまで、測定データ取得工程S16、測定完了判断工程S18、測定対象物情報取得工程S20、測定対象物移動判断工程S22、及び退避面再設定工程S24が繰り返し実行される。
【0142】
一方、測定対象物移動判断工程S22におけるYES判定である、退避面設定工程S10における退避面の設定に用いられたプローブ24と測定対象物42との相対位置と、測定対象物情報取得工程S20において取得された測定対象物情報を用いて算出されたプローブ24と測定対象物42との相対位置とが不一致の場合は、退避面再設定工程S24へ進む。
【0143】
退避面再設定工程S24では、測定対象物情報取得工程S20において設定された測定対象物情報を用いて、測定対象物42の退避面が再設定される。退避面再設定工程S24において、測定対象物の退避面が再設定されると、衝突防止策実行工程S26へ進む。衝突防止策実行工程S26における処理は衝突防止策実行工程S11と同様であり、ここでの説明は省略される。衝突防止策実行工程S26において衝突防止策が開始されると、測定対象物再登録工程S28へ進む。
【0144】
測定対象物が移動された場合はワーク座標系の再設定が必要となるので、測定対象物再登録工程S28では、測定対象物登録工程S12と同様の手順が適用されて測定対象物の再設定が行われる。測定対象物再登録工程S28において測定対象物の再設定が行われると、測定データ取得工程S16へ進む。
【0145】
図4に示されたフローチャートにおいて、退避面再設定工程S24、衝突防止策実行工程S26、及び測定対象物再登録工程S28が省略され、測定対象物移動判断工程S22におけるYES判定の場合に、退避面設定工程S10へ戻り、退避面設定工程S10から測定対象物情報取得工程S20までの工程が実行されてもよい。
【0146】
測定対象物移動判断工程S22において、退避面設定工程S10における退避面の設定に用いられたプローブ24と測定対象物42との相対位置と、測定対象物情報取得工程S20において取得された測定対象物情報を用いて算出されたプローブ24と測定対象物42との相対位置とが不一致の場合に、警告音を発して測定対象物42が移動されている異常の発生を通知することが可能である。
【0147】
また、測定対象物移動判断工程S22において、退避面設定工程S10における退避面の設定に用いられたプローブ24と測定対象物42との相対位置と、測定対象物情報取得工程S20において取得された測定対象物情報を用いて算出されたプローブ24と測定対象物42との相対位置とが不一致の場合に、自動測定が一次中断されることも可能である。
【0148】
[退避面の設定の詳細な説明]
次に、退避面の設定の詳細について説明がされる。退避面設定には、プローブ24と測定対象物42との相対位置の算出、測定対象物の特定、及び退避面の算出が含まれる。
【0149】
<相対位置の算出>
図5は相対位置の算出の概念図である。
図5は、
図1に示されたテーブル14に載置された測定対象物42が模式的に示されている。
図5は
図1に示されたテーブル14に載置された測定対象物42を上側から見た図である。なお、
図5では
図1に示されたテーブル14の図示は省略されている。
【0150】
本実施形態では、
図1に示されたプローブ24と測定対象物42との相対位置として、プローブ24に取り付けられた無線通信装置親機40と、測定対象物42に取り付けられた無線通信装置子機44との間の距離が算出される例が示される。
【0151】
図5に示された測定対象物42は、無線通信装置子機44A、無線通信装置子機44B、及び無線通信装置子機44Cのそれぞれが、測定対象物42の任意の異なる位置に取り付けられている。
【0152】
無線通信装置子機44A、無線通信装置子機44B、及び無線通信装置子機44Cのそれぞれは、測定対象物42の設計情報、及び測定対象物42における取付位置を表す識別情報が記憶されている。
【0153】
無線通信装置子機44A、無線通信装置子機44B、及び無線通信装置子機44Cのそれぞれは、測定対象物情報として、測定対象物42の設計情報、及び識別情報を無線通信装置親機40へ送信する。
【0154】
無線通信装置親機40は、無線通信装置子機44A、無線通信装置子機44B、及び無線通信装置子機44Cのそれぞれから送信された測定対象物情報と、無線通信装置子機44A、無線通信装置子機44B、及び無線通信装置子機44Cのそれぞれとの通信期間を用いて、無線通信装置子機44A、無線通信装置子機44B、及び無線通信装置子機44Cのそれぞれとの距離R
1、R
2、及びR
3を算出する。
【0155】
図5に示されたR
1は無線通信装置子機44Aと、無線通信装置親機40との間の距離である。
図1に示されたプローブ24に取り付けられた無線通信装置親機40の位置は、プローブ24の位置とみなされ、
図5に示されたR
1は、
図1に示されたプローブ24と、
図5に示された測定対象物42における無線通信装置子機44Aの取付位置との距離とみなされる。
【0156】
同様に、R
2は、
図1に示されたプローブ24と、
図5に示された測定対象物42における無線通信装置子機44Bの取付位置との間の距離である。R
3は
図1に示されたプローブ24と、
図5に示された測定対象物42における無線通信装置子機44Cの取付位置との間の距離である。
【0157】
空気中の光速をC、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Aとの通信期間がτ
1、通信処理期間がT
1とされると、R
1は、次の式
R
1=C×(τ
1−T
1)/2
と表される。
【0158】
ここで、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Aとの通信期間τ
1は、無線通信装置親機40が無線通信装置子機44Aに対して発信し、無線通信装置子機44Aが無線通信装置親機40の発信を受信し、無線通信装置親機40に対して応答を発信し、無線通信装置親機40が無線通信装置子機44Aからの応答を受信するまでの期間である。
【0159】
通信処理期間T
1は、無線通信装置親機40における通信処理期間に、無線通信装置子機44Aにおける通信処理期間を加算して求められる。
【0160】
R
2、及びR
3も同様の式により表される。すなわち、無線通信装置親機40と任意の無線通信装置子機44との距離Rは、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44との通信期間がτ、通信処理期間がTとされると、Rは、次の式
R=C×(τ−T)/2
と表される。
【0161】
<測定対象物の特定>
図6は測定対象物特定の概念図である。ここでいう測定対象物の特定とは、
図1に示されたテーブル14の上における測定対象物42の位置、及び測定対象物42の姿勢を特定することである。
【0162】
無線通信装置親機40の数がn
1、無線通信装置子機44の数がn
2、無線通信装置親機40により算出された無線通信装置親機40が測定を行った場所の数がn
3とされると、プローブ24と測定対象物42との相対位置を算出するには、次の式(1)、及び(2)を満たす必要がある。
n
1×n
3≧3…(1)
n
2≧3…(2)
【0163】
図6に示されるように、プローブ24が一つの場合、無線通信装置親機40の数n
1は1である。
図6に示されるように、プローブ24を三か所について移動させることで、無線通信装置親機40が測定を行った場所の数n
3が3となり、上記式(1)が満たされる。そして、
図6に示されるように、測定対象物42に三つの無線通信装置子機44取り付けられることで、上記式(2)が満たされるので、測定対象物42の位置、姿勢を特定することができる。
【0164】
図6に符号40ABが付されて図示された矢印線は、位置40Aから位置40Bへのプローブ24の移動を表している。また、
図6に符号40BCが付されて図示された矢印線は、位置40Bから位置40Cへのプローブ24の移動を表している。
【0165】
図6に示される例では、位置40Aにおいて、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Aとの距離R
11、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Bとの距離R
12、及び無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Cとの距離R
13が算出される。
【0166】
図6に符号46Aが付されて示された円弧は、無線通信装置親機40から距離R
11だけ離れた位置を表す円弧である。無線通信装置子機44Aは、円弧46Aの上のいずれかの位置に配置されている。
【0167】
図6に符号46Bが付されて示された円弧は、無線通信装置親機40から距離R
12だけ離れた位置を表す円弧である。無線通信装置子機44Bは、円弧46Bの上のいずれかの位置に配置されている。
【0168】
図6に符号46Cが付されて示された円弧は、無線通信装置親機40から距離R
13だけ離れた位置を表す円弧である。無線通信装置子機44Cは、円弧46Cの上のいずれかの位置に配置されている。
【0169】
同様に、位置40Bにおいて、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Aとの距離R
21、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Bとの距離R
22、及び無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Cとの距離R
23が算出される。
【0170】
図6では図示の都合上、位置40Bにおける無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Aとの距離R
21、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Bとの距離R
22、及び無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Cとの距離R
23の図示は省略される。また、無線通信装置親機40と、無線通信装置子機44A、無線通信装置子機44B、及び無線通信装置子機44Cとのそれぞれの距離を表す円弧の図示は省略される。
【0171】
更に、位置40Cにおいて、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Aとの距離R
31、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Bとの距離R
32、及び無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Cとの距離R
33が算出される。
【0172】
図6では図示の都合上、位置40Cにおける無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Aとの距離R
31、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Bとの距離R
32、及び無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Cとの距離R
33の図示は省略される。また、無線通信装置親機40と、無線通信装置子機44A、無線通信装置子機44B、及び無線通信装置子機44Cとのそれぞれの距離を表す円弧の図示は省略される。
【0173】
測定対象物42における無線通信装置子機44Aの位置、測定対象物42における無線通信装置子機44Bの位置、及び測定対象物42における無線通信装置子機44Bの位置は、予め特定されている。
【0174】
したがって、無線通信装置親機40が用いられて測定が行われた三か所の場所について、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44との相対距離が測定対象物42の三か所について特定され、かつ、測定対象物42における各無線通信装置子機44の位置が特定されるので、
図1に示されたテーブル14の上における測定対象物42の位置、及び測定対象物42の姿勢が特定される。
【0175】
図6に符号42Aが付されて図示された破線は、特定された測定対象物42の位置、及び測定対象物42の姿勢が表されている。換言すると、符号42Aが付された破線は測定対象物42の外形を表している。
【0176】
図6において、測定対象物42の外形42Aは、平面における二次元の領域として図示されているが、測定対象物42は三次元形状を有しているので、測定対象物42の外形42Aは三次元形状となる。
【0177】
本実施形態では、n
1×n
3≧3を満たす例として、プローブ24が一つ備えられる態様において、無線通信装置親機40が測定を行った場所の数n
3が3以上とされる態様が例示されたが、無線通信装置親機40の数n
1が3以上とされてもよい。
【0178】
無線通信装置親機40の数n
1が3以上とされる例として、プローブ24の異なる三か所に無線通信装置親機40が取り付けられる態様が挙げられる。プローブ24が三つ以上備えられ、それぞれに無線通信装置親機40が取り付けられてもよい。
【0179】
<退避面の算出>
図7は退避面の設定の概念図である。
図7に示される退避面48として、測定対象物の外形42Aから距離Lだけ離された面が設定される。距離Lは、プローブ24の制動距離に、プローブ24の制動距離に対する余裕を表す安全距離を加算して算出することができる。
【0180】
プローブ24の制動距離とは、プローブ24の移動中に減速指令を与えた際に、減速指令の送信タイミングからプローブ24の減速が終了するまでの期間にプローブ24が移動する距離である。
【0181】
<衝突防止策>
図7に示された白抜き矢印線を用いて表されたV
1は、自動測定中のプローブ24の速さである。また、白抜き矢印線を用いて表されたV
2は、衝突防止策が実行された場合のプローブ24の速さである。
【0182】
図7に示された衝突防止策が実行された場合のプローブ24の速さV
2は、自動測定中のプローブ24の速さV
1未満とされる。すなわち、衝突防止策として、プローブ24が退避面48を通過して測定対象物42に近接した場合に、プローブ24を減速させるプローブ24の移動制御が実行可能である。
【0183】
衝突防止策実行中のプローブ24の速さV
2は、プローブ24を測定対象物42に接触させた際に、プローブ24、及び測定対象物42に破損が生じないプローブ24の速さである。
【0184】
衝突防止策実行中のプローブ24の速さV
2は、測定対象物42の材料、加工精度等の条件、及びプローブ24の性能等の条件を用いて決められることが可能である。
【0185】
他の衝突防止策として、プローブ24を退避面48に沿って移動させ、退避面48における測定位置との距離が最短となる位置から測定位置へ向けてプローブ24を移動させる態様が可能である。
【0186】
<無線通信装置におけるデータ通信の手順>
図8は無線通信装置親機と無線通信装置子機との間のデータ通信の説明図である。無線通信装置におけるデータ通信は以下の手順により実行される。
図8では、
図1に示された無線通信装置親機40は親機と記載する。無線通信装置子機44は子機と記載する。
【0187】
まず、親機は子機呼出を送信する。子機が複数の場合、各子機に対して子機呼出を送信する。親機から送信された子機呼出を受信した子機は、親機に対して子機呼出を受信したことを表す応答を送信する。
【0188】
子機から送信された応答を親機が受信すると、受信した応答に対応する子機に対して測定対象物情報の送信を要求する測定対象物情報送信要求を送信する。親機から送信された測定対象物情報送信要求を受信した子機は、子機に具備されるメモリに記憶されている測定対象物情報を読み出し、読み出した測定対象物情報を親機へ送信する。
【0189】
子機から送信された測定対象物情報を親機が受信すると、
図2に示された通信データ取得部28Cを介して、親機はコンピュータ32の測定対象物情報取得部112へ測定対象物情報が送出される。
【0190】
<退避面の設定の手順>
図9は退避面の設定の手順を示すフローチャートである。
図9に示された測定対象物配置工程S100では、
図1に示されたテーブル14に測定対象物42が配置される。
図9に示された通信確立工程S102では、
図1に示された無線通信装置親機40と無線通信装置子機44との間の通信を確立させる。
【0191】
図9に示された通信確立工程S102は、
図8に示された親機から子機への子機呼出送信、子機の子機呼出受信、子機から親機への相当送信、親機の応答受信に対応している。
【0192】
通信確立工程S102において、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44との間の通信が確立されると、測定対象物情報取得工程S104において、無線通信装置親機40は無線通信装置子機44から送信される測定対象物情報を取得する。
【0193】
測定対象物情報取得工程S104において、無線通信装置親機40が測定対象物情報を取得すると、設計情報取得工程S105において、
図1に示された測定対象物42の設計情報が取得される。
【0194】
図9に示された測定対象物情報取得工程S104において、測定対象物情報が取得され、設計情報取得工程S105において、
図1に示された測定対象物42の設計情報が取得されると、相対位置算出工程S106において、
図1に示されたプローブ24と測定対象物42との相対位置が算出される。
【0195】
そして、
図9に示された測定対象物特定工程S108において、
図1に示された測定対象物42の位置、及び測定対象物42の姿勢を表す測定対象物42の外形42Aが特定される。更に、
図9に示された退避面設定工程S110において、
図7に示された退避面48が算出され、設定される。
【0196】
図9に示された退避面設定工程S110において、
図7に示された退避面48が設定されると、退避面の定は終了される。
【0197】
[退避面の設定の変形例]
以下に示される退避面の設定の変形例は、無線通信装置子機44の数n
2が1の場合であり、無線通信装置親機40を三か所について移動させて、無線通信装置子機44一つあたりの無線通信装置親機40が測定を行った場所の数n
3が3とされることで、n
1×n
3≧3を満たすものの、式(3)
n
2<3…(3)
を満たし、測定対象物の姿勢が特定されない場合の例である。
【0198】
<相対位置の算出>
図10は退避面の設定の変形例における相対位置の算出の概念図である。
図10には、無線通信装置子機44の数n
2が1の場合であり、測定対象物42に無線通信装置子機44Dが一つだけ取り付けられている場合が示されている。
【0199】
図10に示された場合は、プローブ24と測定対象物42との相対位置として、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Dとの距離R
11のみが算出される。そうすると、測定対象物42の位置は特定することができるが、測定対象物42の姿勢を特定することができない。
【0200】
<測定対象物の特定>
図11は退避面の設定の変形例における相対位置の算出の説明図である。
図11に示されるように、無線通信装置親機40を移動させて、三か所以上の位置における無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Dとの距離が算出される。
【0201】
換言すると、
図11に図示された場合は、無線通信装置親機40により算出された無線通信装置親機40が測定を行った場所の数n
3が3とされるので、上記式(1)に示されたn
1×n
3≧3を満たしているので、無線通信装置子機44Dが取り付けられている測定対象物42の位置が特定される。
【0202】
図11に符号40ABが付されて図示された矢印線は、位置40Aから位置40Bへのプローブ24の移動を表している。また、
図11に符号40BCが付されて図示された矢印線は、位置40Bから位置40Cへのプローブ24の移動を表している。
【0203】
図11に示される例では、位置40Aにおいて、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Dとの距離R
11が算出される。
図11に示された無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Dとの距離R
11は、
図10に示された無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Dとの距離R
11と同一である。
【0204】
次に、無線通信装置親機40を位置40Bへ移動させ、位置40Bにおいて、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Dとの距離R
12が算出される。更に、無線通信装置親機40を位置40Cへ移動させ、位置40Cにおいて、無線通信装置親機40と無線通信装置子機44Dとの距離R
13が算出される。
【0205】
図11に示された円弧41Aは、位置40Aにおける無線通信装置親機40から距離R
11の位置を表している。
図11に示された円弧41Bは、位置40Bにおける無線通信装置親機40から距離R
12の位置を表している。
図11に示された円弧41Cは、位置40Cにおける無線通信装置親機40から距離R
13の位置を表している。
【0206】
図11に示された円弧41A、円弧41B、及び円弧41Cの交点が、無線通信装置子機44Dの位置として特定される。先に説明したように、無線通信装置子機44Dの位置、及び測定対象物42の設計情報を用いて、
図1に示されたテーブル14の上における測定対象物42の全体の位置は特定可能である。
【0207】
一方、n
2=1であり、n
2<3となるので、これらの情報を用いて測定対象物42の姿勢を特定することができない。そこで、以下に説明されるように測定対象物42が特定され、測定対象物42に対応する退避面が算出され、算出された退避面が設定される。
【0208】
<退避面の算出>
図12は退避面の設定の変形例における測定対象物の特定、及び退避面の設定の概念図である。
図12に示されるように、無線通信装置子機44Dの位置から最も離れた測定対象物42の位置までの距離R
10が算出される。そして、無線通信装置子機44Dの位置から距離R
10の範囲である測定対象物42の存在範囲42Bが測定対象物42として特定される。すなわち、特定された測定対象物42の存在範囲42Bは測定対象物42が存在しうる最大範囲を表している。
図12には二次元の測定対象物42の存在範囲42Bが例示されているが、実際の測定対象物42の存在範囲42Bは無線通信装置子機44Dの位置を中心とする半径R
10の球とされる。
【0209】
そして、測定対象物42の存在範囲42Bから距離LAだけ離された面が退避面48Aとして設定される。退避面48Aは、測定対象物42の存在範囲42Bに対応して、無線通信装置子機44Dの位置を中心とする半径R
10+LAの球とされる。
【0210】
先に説明した実施形態と同様に、距離LAは、プローブ24の制動距離にプローブ24の制動距離に対する余裕を表す安全距離を加算して算出することができる。
【0211】
図24は退避面の設定の他の変形例における測定対象物の特定、及び退避面の設定の概念図である。
図24に示された無線通信装置子機44の数n
2が2の場合は、無線通信装置子機44A、及び無線通信装置子機44Bの位置を通る直線が中心軸45であり、中心軸45から最も離れた測定対象物42の位置と、中心軸45との最短距離が半径とされる円柱の外周面が、測定対象物42の存在範囲42Cとされる。
【0212】
そして、測定対象物42の存在範囲42Cについて安全距離LAが考慮された円柱の外周面が退避面48Bとされる。
【0213】
図24において、外周面が退避面48Bとされる円柱の半径は符号48Cが付されて図示される。外周面が退避面48Bとされる円柱の軸方向の長さは測定対象物42の存在範囲42Cにおける軸方向の全長に2×LAが加算された値とされる。
【0214】
外周面が退避面48Bとされる円柱の端面48C、及び端面48Eは、測定対象物42において無線通信装置子機44A、及び無線通信装置子機44Bのそれぞれから、中心軸45の両端方向に突出した部分から決められる。
【0215】
<衝突防止策>
図13は退避面の設定の変形例における衝突防止策の概念図である。n
1×n
3≧3を満たさない場合に退避面48Aが設定されると、自動測定は以下の手順に従う。まず、プローブ24を測定対象物42に向けて移動させる。プローブ24を測定対象物42に向けて移動させる期間のプローブ24の速さはV
11である。
【0216】
プローブ24が退避面48Aに到達すると、プローブ24を退避面48Aに沿って移動させる。プローブ24を退避面48Aに沿って移動させる期間のプローブ24の速さはV
12である。
【0217】
プローブ24を退避面48Aに沿って移動させる期間のプローブ24の速さV
12は、プローブ24を測定対象物42に向けて移動させる期間のプローブ24の速さV
11未満とされる。
【0218】
プローブ24を退避面48Aに沿って移動させる期間のプローブ24の速さV
12は、プローブ24を測定対象物42に接触させた際に、プローブ24、及び測定対象物42に破損が生じないプローブ24の速さとされてもよい。
【0219】
退避面48Aに沿って移動させたプローブ24が、退避面48Aにおける測定対象物42の測定位置42Cとの距離が最短となる位置に到達すると、プローブ24を測定対象物42の測定位置42Cに向けて移動させる。
【0220】
プローブ24を測定対象物42の測定位置42Cに向けて移動させる期間のプローブ24の速さはV
13である。プローブ24を測定対象物42の測定位置42Cに向けて移動させる期間のプローブ24の速さV
13は、プローブ24を退避面48Aに沿って移動させる期間のプローブ24の速さV
12以下とされる。
【0221】
プローブ24を測定対象物42の測定位置42Cに向けて移動させる期間のプローブ24の速さV
13は、プローブ24を測定対象物42に接触させた際に、プローブ24、及び測定対象物42に破損が生じないプローブ24の速さとされる。
【0222】
本変形例では、一つの無線通信装置子機を用いて測定対象物情報が取得される態様を例示したが、二つの無線通信装置子機を用いて測定対象物情報が取得される態様も可能である。かかる態様では、無線通信装置親機は二か所について二つの無線通信装置子機のそれぞれを用いて測定対象物情報を取得する。
【0223】
<退避面の設定の手順>
図14は測定対象物の退避面の設定の変形例の手順を示すフローチャートである。
図14に示された測定対象物配置工程S200、及び通信確立工程S202は、
図13に示された測定対象物配置工程S100、及び通信確立工程S102に対応している。ここでは、測定対象物配置工程S200、及び通信確立工程S202の説明は省略する。
【0224】
図14に示された測定対象物情報取得工程S204では、
図11に示されるように、プローブ24を移動させて、プローブ24の三か所以上の位置において、測定対象物情報が取得される。
【0225】
図14に示された相対位置算出工程S206では、プローブ24と測定対象物42との相対位置として、
図12に示されたプローブ24に取り付けられた無線通信装置親機40と、測定対象物42に取り付けられた無線通信装置子機44Dとの距離R
11が算出される。
【0226】
プローブ24に取り付けられた無線通信装置親機40と、測定対象物42に取り付けられた無線通信装置子機44Dとの距離R
11が算出されると、
図14に示された測定対象物特定工程S208へ進む。
【0227】
図14に示された測定対象物特定工程S208では、
図13に示された測定対象物42の存在範囲42Bが特定される。
図13に示された測定対象物42の存在範囲42Bが特定されると、
図14に示された退避面設定工程S210において、
図13に示された退避面48Aが算出され、設定される。
【0228】
図14に示された退避面設定工程S210において、
図13に示された退避面48Aが設定されると、退避面の設定は終了される。
【0229】
[パートプログラムの説明]
図1に示された三次元測定機10を用いた自動測定に適用されるパートプログラムについて説明がされる。
図15はパートプログラムの一例の説明図である。
図15にはパートプログラムが模式的に図示されている。
【0230】
図15には円測定の際の四か所の測定位置の情報、平面測定の際の三か所の測定位置の情報が記載されたパートプログラムが例示されている。
図15に示されたパートプログラムは、X、Y、及びZで示されるワーク座標系の座標値を用いて測定位置が記載されている。
図15に示されたパートプログラムは、I、J、及びKを用いて、
図1に示されたプローブ24が測定ポイントに接触するときの移動方向であるプロービングベクトルが記載されている。Lには、ずれ距離、速度、加速度、又は接触角度等の警告を発する情報が数値として記載されてもよい。
【0231】
パートプログラムは、ワーク座標系が自動的に登録されるワーク座標系登録プログラムが含まれていてもよい。
【0232】
[ワーク座標系の登録]
次に、三次元測定機におけるワーク座標系の登録について説明がされる。一般に、測定対象物であるワークを測定する場合、ワークに合った基準であるワーク座標系が設定される。
【0233】
ワーク座標系の登録は、空間補正、原点設定、及び基準軸設定に大別される。以下に、空間補正、原点設定、及び基準軸設定の順に説明をする。
【0234】
図16は空間補正の説明図である。空間補正では、まず、測定対象物における任意の平面400が測定される。平面400の測定によって、平面400とZ
0軸の交点402、及び平面400の法線ベクトル404が決められる。
【0235】
次に、平面400の法線ベクトル404とZ軸が平行にされる。そうすると、
図16に実線を用いて図示されたX
0Y
0Z
0座標系は、破線を用いて図示されたX
1Y
1Z
1座標系に補正される。X
0Y
0Z
0座標系がX
1Y
1Z
1座標系に補正される処理は空間補正と呼ばれる。
【0236】
そして、交点402に原点406を平行移動させる。そうすると、X
1Y
1Z
1座標系は、長破線を用いて図示されたX
2Y
2Z
2座標系とされる。以上の処理を経て、ワーク座標系のZ軸の方向、及びワーク座標系の原点が決定される。
【0237】
図17は原点設定の説明図である。原点設定では、まず、穴410が測定される。穴410の測定によって、穴410の中心412が求められる。穴410の中心412に原点406を平行移動させる。
【0238】
そうすると、
図17に実線を用いて図示されたX
2Y
2Z
2座標系は、破線を用いて図示されたX
3Y
3Z
3座標系に補正される。以上の処理を経て、ワーク座標系のXY軸の原点がX
3Y
3Z
3座標系の原点として決定される。
【0239】
図18は基準軸設定の説明図である。基準軸設定では、まず、穴420が測定される。穴420の測定によって穴420の中心422が求められる。次に、X
3軸が穴420の中心422を通る位置までX
3軸を回転させる。αはX
3軸を回転させる角度を表している。
【0240】
そうすると、実線を用いて図示されたX
3Y
3座標系は、破線を用いて図示されたX
4Y
4座標系に補正される。以上の処理を経て、ワーク座標系のXY軸の方向として、
図18のX
4Y
4座標系が決定される。
【0241】
すなわち、空間補正、原点設定、及び基準軸設定を経て、
図18に示されたX
4軸はワーク座標系のX軸とされる。また、
図18に示されたY
4軸はワーク座標系のY軸とされる。
図17に示されたZ
3軸はワーク座標系のZ軸とされる。
【0242】
ここで説明したワーク座標系の登録方法は一例であり、ワーク座標系の登録方法は、三次元測定機に適用可能な公知の方法が適用されうる。ワーク座標系の登録は、
図2に示されたコンピュータ32を用いてワーク座標系を登録するプログラムを実行することで、操作者の操作を介さずにワーク座標系の登録が可能である。
【0243】
[第一実施形態の作用効果]
上記の如く構成された三次元測定機、及び測定方法によれば、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0244】
<作用効果1>
プローブ24に取り付けられた無線通信装置親機40を用いて、測定対象物42に取り付けられた無線通信装置子機44から測定対象物情報が測定対象物42と非接触で取得される。測定対象物情報は、無線通信装置子機44を識別する識別情報、及び測定対象物の設計情報が含まれる。
【0245】
無線通信装置親機40を用いて取得された測定対象物情報から、三次元測定機10における測定対象物42の位置、及び測定対象物42の姿勢を表す測定対象物42の外形42Aが特定され、又は三次元測定機10における測定対象物42が存在しうる範囲である、測定対象物42の存在範囲42Bが特定される。
【0246】
測定対象物42の外形42Aから、プローブの制動距離に余裕を表す安全距離が加算された距離Lだけ離された退避面48、又は測定対象物42の存在範囲42Bから、プローブの制動距離に余裕を表す安全距離が加算された距離LAだけ離された退避面48Aが設定される。
【0247】
三次元測定機10はプローブ24を移動させる際に、退避面48、又は退避面48Aにプローブ24が近接すると、衝突防止策の実行が可能である。
【0248】
<作用効果2>
三次元測定機10は、測定対象物42の位置が常に認識されて衝突防止策が実行されることが望まれる。従来の三次元測定機では、測定対象物の登録が測定前にのみ行われ、測定中には行われない。そうすると、測定中に測定対象物が移動されると、プローブと測定対象物との衝突の発生が懸念される。
【0249】
本実施形態に示された三次元測定機10は、自動測定期間中において、無線通信装置親機40を用いた測定対象物情報の取得が行われ、測定対象物42の外形42A、又は測定対象物42の存在範囲42Bが更新されることで、自動測定期間中において測定対象物42が移動された場合にも、測定対象物42の移動に対応した退避面48、又は測定対象物42の移動に対応した退避面48Aが設定される。そして、測定対象物42の移動に対応した衝突防止策の実行が可能である。
【0250】
<作用効果3>
衝突防止策として、退避面48、又は退避面48Aにプローブ24が近接すると、プローブ24の速さを減速することで、プローブ24と測定対象物42との衝突を回避することが可能である。
【0251】
<作用効果4>
三次元測定機における自動測定では、任意の測定位置と他の測定位置との間のプローブの移動は安全で最短の移動経路が設定されることが望まれる。しかし、従来の三次元測定機では、安全で最短のプローブの移動経路の設定は手動で実行される。
【0252】
本実施形態に示された三次元測定機10では、衝突防止策として、退避面48、又は退避面48Aにプローブ24が近接すると、退避面48、又は退避面48Aに沿ってプローブ24を移動させることで、退避面48、又は退避面48Aに沿う安全、かつ、最短のプローブ24の移動経路の設定が可能である。
【0253】
<他の変形例>
本実施形態では、無線通信装置子機44に測定対象物42の設計情報が記憶されており、無線通信装置親機40を介して無線通信装置子機44に記憶されている測定対象物42の設計情報が取得される態様が例示されるが、
図2に示されたコンピュータ32とデータ通信が可能に接続されたサーバ、又は記憶装置に測定対象物42の設計情報が記憶され、無線通信装置子機44は測定対象物42の識別情報が記憶されていてもよい。
【0254】
コンピュータ32は、無線通信装置親機40を介して測定対象物42の識別情報が取得されると、識別情報をインデックスとして、サーバ、又は記憶装置から、識別情報に対応する測定対象物42の設計情報を読み出すことが可能である。
【0255】
[第二実施形態に係る三次元測定機の全体構成]
次に、第二実施形態に係る三次元測定機について説明がされる。第二実施形態の説明では、主として第一実施形態と相違する点について説明がされることとし、第一実施形態と共通する点の説明は適宜省略される。
【0256】
図19は第二実施形態に係る三次元測定機の全体構成図である。
図19に示された三次元測定機10Aは、プローブ224にカメラユニット240A、及びカメラユニット240Bが取り付けられている。また、測定対象物242に、位置表示マーク244、及び二次元コード246が取り付けられている。カメラユニット240A、及びカメラユニット240Bは撮像装置の一態様である。
【0257】
カメラユニット240A、及びカメラユニット240Bは、位置表示マーク244、及び二次元コード246を撮像する二台のカメラユニットである。カメラユニット240A、及びカメラユニット240Bの詳細は後述する。
【0258】
図19に示されたコントローラ280は、カメラユニット240A、及びカメラユニット240Bを用いて撮像された位置表示マーク244の撮像データ、及び二次元コード246の撮像データを取得する。
【0259】
コンピュータ232は、コントローラ280を介して取得された位置表示マーク244の撮像データ、及び二次元コード246の撮像データを用いて、プローブ224と測定対象物242との相対位置を算出する。
【0260】
コンピュータ232は、プローブ224と測定対象物242との相対位置を用いて、測定対象物242の位置、及び測定対象物242の姿勢を特定する。コンピュータ232は、特定された測定対象物242の位置、及び測定対象物242の姿勢を用いて、退避面を設定する。測定対象物242の位置、及び測定対象物242の姿勢の特定に代わり、測定対象物242の存在範囲が特定されてもよい。
【0261】
三次元測定機10Aでは、測定対象物242の退避面を用いた衝突防止策であり、プローブ224と測定対象物242との衝突を回避する衝突防止策が実行される。
【0262】
[制御系、及び情報処理系]
図20は
図19に示された三次元測定機における制御系、及び情報処理系のブロック図である。
図20に示されたコントローラ280は、
図2に示されたコントローラ28の通信データ取得部28Cに代わり、
図3に示されたカメラユニット240A、及びカメラユニット240Bの撮像データを取得する撮像データ取得部280Cを備えている。
【0263】
ここでいうカメラユニット240の撮像データは、位置表示マーク244の撮像データ、及び二次元コード246の撮像データが含まれている。
【0264】
図20に示されたコンピュータ232は、
図2に示されたコンピュータ32の測定対象物情報取得部112に代わり、測定対象物情報取得部112Aを備えている。また、
図20に示されたコンピュータ232は、複数の測定対象物の設計情報が記憶される設計情報記憶部119を備えている。
【0265】
図20に示された相対位置算出部114Aは、測定対象物情報取得部112Aを用いて取得された撮像データであり、
図19に示された位置表示マーク244の撮像データを用いて、カメラユニット240Aと位置表示マーク244との距離、及びカメラユニット240Bと位置表示マーク244との距離を算出する。
【0266】
また、
図20に示された相対位置算出部114Aは、
図19に示された二次元コード246の撮像データから測定対象物242の識別情報を取得する。そして、
図20に示された相対位置算出部114Aは、取得された測定対象物242の識別情報をインデックスとして、設計情報記憶部119に記憶されている複数の測定対象物についての設計情報の中から、取得された個別情報に合致する測定対象物の設計情報を読み出す。
【0267】
相対位置算出部114Aは、カメラユニット240Aと位置表示マーク244との距離、カメラユニット240Bと位置表示マーク244との距離、及び測定対象物242の設計情報を用いて、プローブ224と測定対象物242との相対位置を算出する。
【0268】
図20には、コンピュータ232に設計情報記憶部119が備えられる態様が例示されるが、設計情報記憶部119はコンピュータ232との間でデータ通信が可能なサーバ、又は記憶装置に備えられていてもよい。
【0269】
[相対位置の算出の詳細な説明]
図21は
図19に示された三次元測定機に適用される対象物測定情報取得の概念図である。
図21に示されるように、カメラユニット240Aは、光学センサ300、及びフォーカスレンズユニット302を備えている。
【0270】
光学センサ300として、CCDイメージセンサ、又はCMOSイメージセンサなどの撮像素子が適用可能である。CCDはCharge Coupled Deviceの省略語である。CMOSはComplementary Metal Oxide Semiconductorの省略語である。
【0271】
フォーカスレンズユニット302は、光学センサ300の撮像面の前面に配置される。フォーカスレンズユニット302は複数のレンズが含まれていてもよい。
【0272】
カメラユニット240Aは、光源304、及び集光レンズ306を備えている。光源304は波長λ
1を中心波長とするレーザダイオードが適用可能である。集光レンズ306は、光源304の発光面の前面に配置されている。
【0273】
カメラユニット240Aは、光学フィルタ308を備えている。光学フィルタ308は、波長λ
1の光を反射させ、かつ、波長λ
2の光を通過させるダイクロイックミラーが適用可能である。
【0274】
位置表示マーク244として、中心励起波長がλ
1であり、中心蛍光波長がλ
2である蛍光染料が適用される場合、蛍光染料に中心波長λ
1の光が照射されると、蛍光染料から中心波長λ
2の光が放射される。
【0275】
測定対象物242に蛍光染料が塗布されてもよい。測定対象物242に蛍光染料が塗布されたシート等が貼り付けられてもよい。位置表示マーク244と二次元コード246とが一枚のシートに形成されてもよい。
【0276】
蛍光染料から放射された中心波長λ
2の光は、光学フィルタ308を通過して、光学センサ300の受光面に到達する。
図21に符号340が付されて図示された破線は、光源304を用いて発生させた光を表している。
図21に符号342が付されて図示された実線は、位置表示マーク244である蛍光染料を用いて発光させた光を表している。
【0277】
図21に示されたカメラユニット240Bは、カメラユニット240Aと同様の構成が適用される。カメラユニット240Bは、光学センサ320、フォーカスレンズユニット322、光源324、集光レンズ326、及び光学フィルタ328を備えている。
【0278】
図21に符号344が付されて図示された破線は、光源324を用いて発生させた光を表している。
図21に符号346が付されて図示された実線は、位置表示マーク244である蛍光染料を用いて発光させた光を表している。
【0279】
図22は相対位置の算出の原理の説明図である。光学センサ300の結像位置301と光学センサ320の結像位置321との距離がSとされる。光学センサ300の結像位置301と位置表示マーク244の位置245とを結ぶ線分350と、光学センサ300の結像位置301と光学センサ320の結像位置321と結ぶ線分352とのなす角度がθ
Aとされる。
【0280】
光学センサ320の結像位置321と位置表示マーク244の位置245とを結ぶ線分354と、光学センサ300の結像位置301と光学センサ320の結像位置321と結ぶ線分352とのなす角度がθ
Bとされる。
【0281】
距離Sは、光学センサ300の結像位置301と光学センサ320の結像位置321を用いて算出される。角度θ
A、及び角度θ
Bは、カメラユニット240A、及びカメラユニット240Bの位置表示マーク244の撮像データにおける、位置表示マーク244の位置と撮像画像の中心位置からのずれを用いて算出される。
【0282】
距離S、角度θ
A、及び角度θ
Bを用いて、光学センサ300の結像位置301と位置表示マーク244の位置245との間の距離を表す線分350の長さ、及び光学センサ320の結像位置321と位置表示マーク244の位置245との間の距離を表す線分354の長さが算出される。
【0283】
図23は相対位置から相対座標への変換の説明図である。
図23に示すように、光学センサ300の結像位置301が原点とされる。光学センサ300の結像位置301と光学センサ320の結像位置321とを結ぶ直線がu軸とされる。光学センサ300の結像位置301と光学センサ320の結像位置321とを結ぶ直線と直交する直線がv軸とされる。uv平面に位置表示マーク244の位置245が含まれる。
【0284】
位置表示マーク244の位置245は、uv座標系の座標値(u
2,v
2)を用いて表されることが可能である。
u
2=(u
1×tanθ
B)/(tanθ
A+tanθ
B)
v
2=(u
1×tanθ
B)/{1+(tanθ
B/tanθ
A)}
【0285】
但し、u
1は光学センサ320の結像位置321のu軸方向の座標値である。すなわち、u
1は、光学センサ300の結像位置301と光学センサ320の結像位置321との距離Sと置き換えることができる。位置表示マーク244の位置245は、uv座標系の座標値(u
2,v
2)を用いて、以下の式により表される。
u
2=(S×tanθ
B)/(tanθ
A+tanθ
B)
v
2=(S×tanθ
B)/{1+(tanθ
B/tanθ
A)}
【0286】
光学センサ300の結像位置301、及び光学センサ320の結像位置321は、プローブ224におけるカメラユニット240A、及びカメラユニット240Bの配置から特定される。そうすると、プローブ224と測定対象物242の位置表示マーク244との距離が算出される。
【0287】
プローブ224と測定対象物242との相対位置が算出されると、測定対象物242の特定、退避面の算出、退避面の設定がされる。測定対象物242の特定、退避面の算出、退避面の設定は、先に説明した第一実施形態と同様であり、ここでの説明は省略される。
【0288】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
【0289】
[プログラム発明への適用例]
以上説明した三次元測定機の各部に対応して、コンピュータに三次元測定機の各部の機能を実現させるプログラムを作成することができる。
【0290】
すなわち、コンピュータを、プローブ24に取り付けられた測定対象物情報取得手段であり、測定対象物42おける一か所以上の任意の位置において、測定対象物42を特定する際に用いられる測定対象物情報を測定対象物と非接触で取得する測定対象物情報取得手段、測定対象物情報を用いて、プローブ24と測定対象物42との相対位置を算出する相対位置算出手段、測定対象物42の設計情報を取得する設計情報取得手段、プローブ24と測定対象物42との相対位置、及び測定対象物42の設計情報を用いて、測定対象物42の位置、及び測定対象物42の姿勢を表す測定対象物42の外形42Aを特定するか、又は測定対象物42の存在範囲42Bを特定する測定対象物特定手段、測定対象物42の外形42Aに対応する退避面48、又は測定対象物42の存在範囲42Bに対応する退避面48Aを算出し、退避面48、又は退避面48Aを設定する退避面設定手段、及びプローブ24が退避面48、又は退避面48Aよりも測定対象物42に接近した場合に、プローブ24と測定対象物42との衝突を防止する衝突防止策を実行する衝突防止策実行手段として機能させる測定プログラムを構成することが可能である。