特許第6669669号(P6669669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6669669
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】近接場リカバリを利用するレチクル検査
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20200309BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20200309BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   G03F1/84
   G01N21/956 A
   H01L21/66 J
【請求項の数】33
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-566907(P2016-566907)
(86)(22)【出願日】2015年5月4日
(65)【公表番号】特表2017-523444(P2017-523444A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】US2015029072
(87)【国際公開番号】WO2015171506
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2018年4月12日
(31)【優先権主張番号】61/988,909
(32)【優先日】2014年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/054,185
(32)【優先日】2014年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/702,336
(32)【優先日】2015年5月1日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セジナー アブドゥラフマン
(72)【発明者】
【氏名】シ ルイファン
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−215677(JP,A)
【文献】 特開2003−315981(JP,A)
【文献】 特開2003−330163(JP,A)
【文献】 特開2006−030518(JP,A)
【文献】 特開2013−246062(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0276935(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0297019(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0236294(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0058558(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/92
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチクル上の欠陥を検出する方法であって、
前記レチクル上の検査領域内のパターンを複数のセグメントに分割するステップと、
前記複数のセグメントをデータ構造に含まれる複数の所定のセグメントと個別に比較するステップであって、前記データ構造はレチクルパターンの前記所定のセグメントとそれに対応する近接場データとの組み合わせを含むステップと、
前記複数のセグメントの少なくとも1つのセグメントに前記近接場データを関連付けるステップであって、前記少なくとも1つのセグメントが最も類似する1つの前記所定のセグメントに基づき関連付けるステップと、
前記関連付けられた近接場データに基づき前記検査領域用の近接場データを生成するステップと、
前記生成された近接場データに基づき、前記検査領域の画像をシミュレーションするステップと、
前記レチクル上の前記検査領域の実際の画像を取得するステップと、
前記シミュレーションされた画像と前記実際の画像とを比較して前記レチクル上の欠陥を検出するステップと、を含み、
前記分割ステップと、前記個別比較ステップと、前記関連付けステップと、前記生成ステップと、前記シミュレーションステップと、前記取得ステップと、前記検出ステップは、1つまたは複数のコンピュータシステムによって実行する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記所定のセグメントと前記対応する近接場データとの前記組み合わせを決定するステップを更に含み、前記決定ステップは、前記レチクル用のパターン情報を前記複数の所定のセグメントに分割し、前記取得ステップで取得された前記レチクルの1つまたは複数の第2の実際の画像に基づき前記所定のセグメント用の前記近接場データを決定することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記パターン情報は、前記レチクル用の設計データから取得することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
前記レチクル用のパターン全体内の前記所定のセグメントのインスタンス数に基づき、前記パターン情報から前記所定のセグメントを選択するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、
前記レチクルの前記1つまたは複数の前記第2の実際の画像は、複数の焦点設定で取得されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であって、
前記所定のセグメント用の前記近接場データは、前記レチクルの1つまたは複数の前記第2の実際の画像に基づく回帰法によって決定されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記回帰法はホプキンス位相近似法を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、
前記回帰法は薄膜マスク近似法を含まないことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、
前記回帰法はキルヒホッフ近似法を含まないことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記所定のセグメントと前記対応する近接場データとの前記組み合わせを決定するステップを更に含み、前記決定ステップは、前記レチクル用のパターン情報を前記複数の所定のセグメントに分割し、前記レチクルパターンの前記所定のセグメントの電磁場を表わす方程式を数値的に解くことによって前記所定のセグメント用の前記近接場データを決定することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記パターン情報は、前記レチクル用の設計データから取得することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記レチクル用のパターン全体内の前記所定のセグメントのインスタンス数に基づき、前記パターン情報から前記所定のセグメントを選択するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
前記個別比較ステップは、前記取得ステップで取得された第2の実際の画像としての前記複数のセグメントのグレースケール画像を前記所定のセグメントのグレースケール画像と比較するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、
前記個別比較ステップは、前記複数のセグメントの1つのセグメント内における多角形の頂点座標を前記所定のセグメント内における多角形の頂点座標と比較するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数のセグメントの少なくとも1つのセグメントが最も類似する前記1つの所定のセグメントが、前記少なくとも1つのセグメントに対し完全な一致ではない場合、前記少なくとも1つのセグメントに前記近接場データを関連付けるステップは、前記少なくとも1つのセグメントに対する前記1つの所定のセグメントのマッピングを決定するステップと、前記1つの所定のセグメントに対応する前記近接場データに前記マッピングを適用して修正された近接場データを生成するステップと、前記修正された近接場データを前記少なくとも1つのセグメントに関連付けるステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
レチクル検査方法であって、
レチクル用のパターン情報を複数の所定のセグメントに分割するステップと、
前記レチクルの1つまたは複数の実際の画像に基づき前記所定のセグメント用の近接場データを決定するステップであって、前記所定のセグメント用の前記近接場データは前記レチクルの前記1つまたは複数の実際の画像に基づく回帰法によって決定されるステップと、
前記所定のセグメントと、前記所定のセグメントに対応する前記近接場データとの組み合わせを含むデータを生成するステップと、
前記生成されたデータをレチクル検査工程用のレシピに用いるステップであって、前記レチクル上の検査領域内の複数のセグメントを前記複数の所定のセグメントと比較し、前記複数のセグメントの少なくとも1つのセグメントが最も類似する1つの前記所定のセグメント用の前記近接場データを前記少なくとも1つのセグメントに関連付けることで用いるステップと、を含み、
前記分割ステップと、前記決定ステップと、前記生成ステップと、前記用いるステップは1つまたは複数のコンピュータシステムによって実行されることを特徴とする方法。
【請求項17】
レチクル検査方法であって、
レチクル用のパターン情報を複数の所定のセグメントに分割するステップと、
前記所定のセグメントの電磁場を表わす方程式を数値的に解くことによって前記所定のセグメント用の近接場データを決定するステップと、
前記所定のセグメントと前記所定のセグメントに対応する前記近接場データの組み合わせを含むデータを生成するステップと、
前記生成されたデータをレチクル検査工程用のレシピに用いるステップであって、前記レチクル上の検査領域内の複数のセグメントを前記所定のセグメントと比較し、前記複数のセグメントの少なくとも1つのセグメントが最も類似する1つの前記所定のセグメント用の前記近接場データを前記少なくとも1つのセグメントに関連付けることで用いるステップと、を含み、
前記分割ステップと、前記決定ステップと、前記生成ステップと、前記用いるステップは1つまたは複数のコンピュータシステムによって実行されることを特徴とする方法。
【請求項18】
レチクル上の欠陥を検出する方法を実行するコンピュータシステムで実行可能なプログラム指令を保存する非一過性コンピュータ可読記憶媒体であって、前記方法は、
前記レチクル上の検査領域内に含まれるパターンを複数のセグメントに分割するステップと、
前記複数のセグメントをデータ構造内の複数の所定のセグメントと個別に比較するステップであって、前記データ構造はレチクルパターンの前記所定のセグメントとそれに対応する近接場データとの組み合わせを含むステップと、
前記複数のセグメントの少なくとも1つのセグメントが最も類似する1つの前記所定のセグメントに基づき前記少なくとも1つのセグメントに近接場データを関連付けるステップと、
前記関連付けられた近接場データに基づき前記検査領域用の近接場データを生成するステップと、
前記生成された近接場データに基づき、検査領域の画像をシミュレーションするステップと、
前記レチクルの検査領域の実際の画像を取得するステップと、
前記シミュレーションされた画像と前記実際の画像とを比較することによって前記レチクル上の欠陥を検出するステップと、を含むこと特徴とする非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
レチクル上の欠陥を検出するように構成されるシステムであって、
実物の前記レチクル上の検査領域の実際の画像を生成するレチクル検査サブシステムと、
1つまたは複数のコンピュータサブシステムであって、
前記検査領域内のパターンを複数のセグメントに分割し、
前記複数のセグメントをデータ構造に含まれる複数の所定のセグメントと個別に比較し、前記データ構造はレチクルパターンの前記所定のセグメントとそれに対応する近接場データとの組み合わせを含み、
前記複数のセグメントの少なくとも1つのセグメントが最も類似する1つの前記所定のセグメントに基づき前記少なくとも1つのセグメントに近接場データを関連付け、
前記関連付けられた近接場データに基づき前記検査領域用の近接場データを生成し、
前記検査領域の画像を前記生成された近接場データに基づきシミュレーションし、
前記シミュレーションされた画像と前記実際の画像とを比較することによって前記レチクル上の欠陥を検出するよう構成されるコンピュータサブシステムと、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、
前記1つまたは複数のコンピュータサブシステムは、前記所定のセグメントと前記対応する近接場データとの前記組み合わせを決定するように更に構成され、前記決定ステップは、前記レチクル用のパターン情報を前記複数の所定のセグメントに分割し、前記レチクルの1つまたは複数の第2の実際の画像に基づき前記所定のセグメント用の前記近接場データを決定することを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムであって、
前記パターン情報は、前記レチクル用の設計データから取得することを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項20に記載のシステムであって、
前記1つまたは複数のコンピュータサブシステムは、前記レチクル用のパターン全体内の前記所定のセグメントのインスタンス数に基づき、前記パターン情報から前記所定のセグメントを選択するように更に構成されることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項20に記載のシステムであって、
前記レチクルの1つまたは複数の前記第2の実際の画像は、複数の焦点設定で取得されることを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項20に記載のシステムであって、
前記所定のセグメント用の前記近接場データは、前記レチクルの1つまたは複数の前記第2の実際の画像に基づく回帰法によって決定されることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項24に記載のシステムであって、
前記回帰法はホプキンス位相近似法を含むことを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項24に記載のシステムであって、
前記回帰法は薄膜マスク近似法を含まないことを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項24に記載のシステムであって、
前記回帰法はキルヒホッフ近似法を含まないことを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項19に記載のシステムであって、
前記1つまたは複数のコンピュータサブシステムは、前記所定のセグメントと前記対応する近接場データとの前記組み合わせを決定するように更に構成され、前記決定ステップは、前記レチクル用のパターン情報を前記複数の所定のセグメントに分割し、前記レチクルパターンの前記所定のセグメントの電磁場を表わす方程式を数値的に解くことによって前記所定のセグメント用の前記近接場データを決定することを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項28に記載のシステムであって、
前記パターン情報は、前記レチクル用の設計データから取得することを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項28に記載のシステムであって、
前記レチクル用のパターン全体内の前記所定のセグメントのインスタンス数に基づき、前記パターン情報から前記所定のセグメントを選択するように更に構成されることを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項19に記載のシステムであって、
前記個別比較ステップは、前記複数のセグメント用の実際のグレースケール画像を前記所定のセグメントのグレースケール画像と比較するステップを含むことを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項19に記載のシステムであって、
前記個別比較ステップは、前記複数のセグメント内における多角形の頂点座標と前記所定のセグメント内における多角形の頂点座標との任意の平行移動を比較するステップを含むことを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項19に記載のシステムであって、
前記複数のセグメントの少なくとも1つのセグメントが最も類似する前記1つの所定のセグメントが、前記少なくとも1つのセグメントに対し完全な一致ではない場合、前記少なくとも1つのセグメントに前記近接場データを関連付けるステップは、前記少なくとも1つのセグメントに対する前記1つの所定のセグメントのマッピングを決定するステップと、前記1つの所定のセグメントに対応する前記近接場データに前記マッピングを適用して修正された近接場データを生成するステップと、前記修正された近接場データを前記少なくとも1つのセグメントに関連付けるステップと、を含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的に近接場リカバリを利用するレチクル検査システムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の説明と例は、本セクションに含まれるからといって先行技術であると認められたものではない。
【0003】
ロジックデバイスやメモリデバイス等の半導体デバイスの製造は、一般的に半導体ウェハ等の基板を多数の半導体製造工程によって加工し、半導体デバイスの様々な形状や複数の層を形成をするステップを含む。例えばリソグラフィは、半導体製造工程であって、レチクルから半導体ウェハ上のレジストへパターンを転写するステップを含む。半導体製造工程の別の例としては、化学機械研磨(CMP)、エッチング、成膜、イオン注入等を含むが、これらに限定されない。複数の半導体デバイスを1枚の半導体ウェハ上に並べて形成して、その後独立した各半導体デバイスに分割してもよい。
【0004】
検査工程は、半導体製造工程中の様々な段階において実施され、レチクル上の欠陥を検出し、製造工程での歩留まりを高め、それによって利益を向上させる。検査はIC等の半導体デバイス製造において常に重要な工程である。半導体デバイスの小型化に伴い、検査は半導体デバイス製造の成功に益々重要となっている。
【0005】
レチクル検査は既存の方法では、多数の撮像技術のうちの1つを利用してマスクを検査する。レチクル面検査(RPI)として知られる最も一般的な検査方法は、レチクルの高分解能透過画像と反射画像とを取得し、両画像を一緒に処理するステップを含む。低開口数(NA)検査(LNI)として知られる他の検査方法では、ウェハスキャナ光学条件をエミュレートし、スキャナと近い照射条件でRPIよりも低いNAで照射された光で1つの画像を取得するステップを含む。SLとして知られる別の異物検査では、RPI透過画像と反射画像との2つの画像を分析し、背景パターンから突出する欠陥を検出するステップを含む。
【0006】
多くのレチクル検査方法は、ダイ対データベース型の比較を利用してレチクル上の欠陥を検出する。そのような検査は一般的にレチクルの顕微鏡画像を取得するステップを含む。レチクル上の意図されたパターンを含むデータベースから、検査顕微鏡がそのレチクルで観察すると予想される像が算出またはシミュレーションされる。次に取得された光学画像がその算出またはシミュレーションされた像と比較され、レチクル上の欠陥が検出される。
【0007】
上記のレチクル画像の算出は、レチクルによる光の回析の算出を含んでもよい。マックスウェルの方程式は、レチクルによる電磁波の回析を完全にかつ正確に表現する。しかしながら必要な検査時間内(1〜2時間)にレチクル全体に対してマックスウェルの方程式を正確に解く実際的な方法がない。現在使用されているいくつかの方法では、キルヒホッフ近似法のような近似法を使用し回析場を推定する。しかしながらこの方法では算出された画像の精度が制限され、このため検出できる欠陥の最小サイズが制限される。
【0008】
光近接効果補正(OPC)の進歩によって、フォトマスクまたはレチクル上に描かれるパターンがより複雑となっている。レチクル検査は、描かれたパターンを検査する高度なアルゴリズムを有する上記のような高機能の光学顕微鏡を利用して通常実施される。OPCが複雑化され、致命的な欠陥(転写される欠陥)と致命的ではない欠陥(非重大欠陥)とを区別することがより困難になった。この問題を克服する従来の方法は、(a)欠陥の形状やサイズに基づく経験則を利用して手動で処理する、(b)多数の欠陥を自動的に処理するように、経験則を確立し、自動欠陥分類(ADC)ソフトウェアを制作する、および(c)空間像形成ツールを利用して適切なリソグラフィ条件下で光学画像を取得し、欠陥を処理することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0276935号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら現在使用されているそのような方法やシステムには多くの問題点がある。例えば現在使用されている方法では、使用者が1つずつ欠陥を検査するように手動による欠陥の処理が必要である。OPCが益々複雑になるということは、経験則が少ないため使用者が転写される欠陥を転写されない欠陥と区別することが難しくなることを多くの場合意味する。更に潜在的な多くの欠陥が使用者の負担を増やし、妥当な時間内で欠陥の処理を終わらせることが不可能となる。ルールベースの方法は、欠陥が転写されるかどうかに直接関連しない。逆リソグラフィ技術(ILT)を使用するOPCがより複雑化されることによって、本方法の利用価値が制限される。更に、空間像形成ツールは、ハードウェアとアルゴリズムの組み合わせを利用してスキャナのベクタ画像効果を模倣する。しかしながらそのようなツールの精度は、完全に独立して確認されていない。より決定的には、そのような方法は、スキャナの撮像終了後における複雑なフォトレジスト現像やエッチング工程を考慮していない。空間像形成ツールによって測定された欠陥サイズとウェハ上で測定された欠陥サイズでは対応関係が薄いことを示す研究もある。
【0011】
そのため上記の問題点の1つまたは複数を解消するレチクル検査の方法またはシステムまたはその両方を開発することは効果的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
下記の様々な実施形態の説明は、添付する請求項の主題をいかようにも制限するよう解釈されるものではない。
【0013】
一実施形態は、レチクル上の欠陥を検出するコンピュータ実装方法に関する。本方法は、レチクル上の検査領域内のパターンを複数のセグメントに分割するステップと、これら複数のセグメントをデータ構造に含まれる複数の所定のセグメントと個別に比較するステップを含む。データ構造は、レチクルパターンの複数の所定のセグメントとそれに対応する近接場データとの組み合わせを含む。本方法は複数のセグメントの少なくとも1つのセグメントに近接場データを関連付けるステップを更に含み、関連付けは、少なくとも1つのセグメントが最も類似する所定のセグメントに基づき行なわれる。更に本方法は、関連付けられた近接場データに基づき検査領域用の近接場データを生成するステップと、生成された近接場データに基づき、レチクル検査システムの検出器によって形成されるであろう検査領域の画像をシミュレーションするステップとを含む。本発明は、検出器によって生成される実物のレチクル上の検査領域の実際の画像を取得するステップと、シミュレーションされた画像と実際の画像とを比較してレチクル上の欠陥を検出するステップとを更に含む。分割ステップ、個別比較ステップ、関連付けステップ、生成ステップ、シミュレーションステップ、取得ステップおよび検出ステップは、1つまたは複数のコンピュータシステムによって実行される。
【0014】
本コンピュータ実装方法の各ステップは、更にここに示すように実行されてもよい。また本コンピュータ実装方法は、ここに示す他の方法の他のステップを含んでもよい。更に本コンピュータ実装方法は、ここに示すどのシステムによって実行されてもよい。
【0015】
他の実施形態は、非一過性コンピュータ可読記憶媒体に関し、レチクル上の欠陥を検出するためのコンピュータ実装方法を実行する、コンピュータシステム上で実行できるプログラム指令を保存する。本コンピュータ実装方法は、上述した方法のステップを含む。本コンピュータ可読記憶媒体は、ここに示すように更に構成されてもよい。本コンピュータ実装方法の各ステップは、ここに更に示すように実行されてもよい。更に、プログラム指令を実行可能なコンピュータ実装方法は、ここに示す他のどの方法のどのステップを含んでもよい。
【0016】
更に他の実施形態は、レチクル上の欠陥を検出するように構成されるシステムに関する。本システムは、実物のレチクル上の検査領域の実際の画像を生成するように構成される検出器を含むレチクル検査サブシステムを含む。本システムは、上記方法の分割ステップ、個別比較ステップ、関連付けステップ、生成ステップ、シミュレーションステップ、取得ステップおよび検出ステップを実行するように構成された1つまたは複数のコンピュータサブシステムを更に含む。本システムは、ここに示すように更に構成されてもよい。
【0017】
更に他の実施形態は、レチクル検査工程を設定するコンピュータ実装方法に関する。本方法は、レチクル用のパターン情報を複数の所定のセグメントに分割するステップを含む。本方法は、レチクル検査システムの検出器によって取得されたレチクルの1つまたは複数の実際の画像に基づき所定のセグメント用の近接場データを決定するステップを更に含む。所定のセグメント用の近接場データは、レチクルの1つまたは複数の実際の画像に基づく回帰法によって決定される。更に本方法は、複数の所定のセグメントと所定のセグメントに対応する近接場データとの組み合わせを含むデータ構造を生成するステップを含む。本方法は、生成されたデータ構造用の情報をレチクル検査工程用のレシピ内に組み込むことによってレチクル検査工程を設定するステップを更に含み、レチクル検査工程中、レチクル上または他のレチクル上の検査領域内の複数のセグメントを前記複数の所定のセグメントと比較し、少なくとも1つのセグメントが最も類似する1つの所定のセグメント用の近接場データがその少なくとも1つのセグメントに関連付けられる。分割ステップ、決定ステップ、生成ステップおよび設定ステップは、1つまたは複数のコンピュータシステムによって実行される。
【0018】
本コンピュータ実装方法の各ステップは、ここに示すように更に実行されてもよい。更に本コンピュータ実装方法は、ここに示す他のどの方法の他のどのステップを含んでもよい。更に本コンピュータ実装方法は、ここに示すどのシステムによって実行されてもよい。
【0019】
更に他の実施形態は、レチクル検査工程を設定する他のコンピュータ実装方法に関する。本方法は、レチクル用のパターン情報を複数の所定のセグメントに分割するステップを含む。本方法は、所定のセグメントの電磁場を表わす方程式を数値的に解くことによって所定のセグメント用の近接場データを決定するステップを更に含む。更に本方法は、複数の所定のセグメントと所定のセグメントに対応する近接場データとの組み合わせを含むデータ構造を生成するステップを含む。本方法は、生成されたデータ構造用の情報をレチクル検査工程用のレシピ内に組み込むことによってレチクル検査工程を設定するステップを更に含み、レチクル検査工程中、レチクル上または他のレチクル上の検査領域内の複数のセグメントを前記複数の所定のセグメントと比較し、少なくとも1つのセグメントが最も類似する1つの所定のセグメント用の近接場データを少なくとも1つのセグメントに関連付ける。分割ステップ、決定ステップ、生成ステップおよび設定ステップは、1つまたは複数のコンピュータシステムによって実行される。
【0020】
本コンピュータ実装方法の各ステップは、ここに示すように更に実行されてもよい。更に本コンピュータ実装方法は、ここに示す他のどの方法の他のどのステップを含んでもよい。更に本コンピュータ実装方法は、ここに示すどのシステムによって実行されてもよい。
【0021】
本発明の更なる効果は、好適な実施形態に関する下記の詳細な説明と添付の図によって当業者に明らかになり、各図は下記を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】レチクル検査工程を設定するコンピュータ実装方法の一実施形態と、レチクル上の欠陥を検出するコンピュータ実装方法の一実施形態とを示すフローチャートである。
図2】コンピュータシステムがここに示すコンピュータ実装方法を実行するためのプログラム指令を保存する非一過性コンピュータ可読記憶媒体を示すブロック図である。
図3】レチクル上の欠陥を検出する一実施形態に係るシステムの側面を示す概略図である。
【0023】
本発明は様々な改良や形態の変更が可能であるが、具体的な実施形態を例として図に示し、ここに詳細を説明する。図は、実寸に比例しない場合もある。図と詳細な説明は、開示する特定の形態に発明を制限するためのものではなく、反対に本発明は、添付の請求項に定義する本発明の精神と範囲内のすべての改良、等価物、代替えを網羅するものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで図を見てみると、図は実寸に比例せずに描かれていることが分かる。特に、図内の要素のいくつかの寸法は、要素の特徴を強調するため大幅に誇張されている。また、図は同じ比率で描かれていない。複数の図に描かれている同様に構成された要素は、同一の参照番号によって示される。ここで明記しない限り、説明および示されている要素はすべて、市販の適切な要素を含んでもよい。
【0025】
ここに示す実施形態は、全般的にレチクルパターンを示すデータベースを利用するレチクル検査に関する。例えば下記に示すように、それらの実施形態は近接場リカバリを利用したダイ対データベース検査に利用してもよい。ここに示す実施形態は、パターン欠陥と異物に対するレチクル検査に利用可能である。
【0026】
ここでは「レチクル」、「マスク」、「フォトマスク」という用語は、同義的に使用され、パターンを他のウェハ等の基板に転写するように使用される、本分野で既知であるすべてのレチクルやマスクを意味することを意図する。
【0027】
レチクル検査分野でよく使用される「実質的高分解能画像」とは、レチクル上に印刷されたパターンが実質的にレチクル上に形成されたように現れるレチクル画像を意味する(画像の生成に使用されるレチクル検査システムの光学的制限の範囲内)。例えばレチクルの「実質的高分解能画像」は、実質的高分解能レチクル検査システム(例えば実質的高開口数(例えば0.8を超える開口数(NA))で画像を生成可能なレチクル検査システム)によって実物のレチクルをレチクル面で撮像して生成される画像である。対照的にレチクル画像を生成するために使用する「実質的低開口数」は、0.5未満の開口数である。更に、レチクル画像を生成するために使用する「実質的低開口数」は、レチクル画像をウェハ上に投影し、それによってレチクル上のパターンをウェハに転写するために露光システムによって使用されるレチクル側の開口数と実施的に同じでもよい。このため、実質的低開口数画像(LNI)においてレチクルパターンはレチクル上に形成されたものと実施的に異なるように見える場合もある。例えばLNIにおけるレチクルパターンは、レチクルに形成されたものよりも角が丸いように見える場合もある。
【0028】
ここで使用する「設計」および「設計データ」は、一般的にICの物理的な設計(レイアウト)と複雑なシミュレーション、または単純な幾何演算およびブール演算によって物理的な設計から得られるデータを意味する。設計は、GDSファイル等のデータ構造、他の標準的な機械可読ファイル、または本分野で既知である適切な他のファイルおよび設計データベースに保存できる。GDSIIファイルは、設計レイアウトデータ表示用に使用されるファイルの種類である。そのようなファイルの他の例は、GLIやOASISファイル等である。ここに示す実施形態の設計は、データ構造の構成、保存形式、または保存機構とは関係なくあらゆる種類のファイルに保存できる。またここに更に示すレチクル用のパターン情報は、レチクルパターンを示すデータベースに保存してもよい。このレチクルパターンは、マスク書き込み作業が完璧な場合にレチクル上に予想されるパターンである。データベースは、多角形の頂点座標を含んでもよく、またはグレースケール画像でもよい。
【0029】
本設計は、参照によりここに全体を援用し、同一の出願人による米国特許番号第7,570,796(2009年8月4日発行、発明者ザーファー(Zafar)他)と米国特許番号第7,676,077(2010年3月9日発行、発明者クルカニ(Kulkarni)他)の両特許文献で示される他のいかなる設計データやその設計データの等価物を含んでもよい。更にここに示す「設計」、「設計データ」は、設計工程において半導体デバイス設計者によって作成された情報およびデータを意味し、実際のレチクルとウェハの一方または両方にその設計を印刷するよりもかなり以前にここに示す実施形態で使用できる。
【0030】
一実施形態は、レチクル検査工程を設定するコンピュータ実装方法に関する。図1のステップ100に示すように、本方法はレチクルに関するパターン情報を複数の所定のセグメントに分割する。レチクルの「部分」、「セクション」、「セグメント」という用語は、すべてレチクルの2次元(2D)平面図上の点の集まりを意味する。これらの用語は同じ意味を持つように定義することもできるが、本出願では、各用語は異なる概念を示すものとする。
【0031】
一実施形態では、所定のセグメントの直径は、レチクルの光近接距離よりも長い。例えば上記のように、パターン情報はより小さなセグメントまたはセクションに分割できる。その後、ここに更に示すように、それらの所定のセグメントのうち、検査対象のレチクル用のデータベースのセグメントと一致するセグメントが検索される。一致の可能性を高めるため、所定のセグメントはデータベースのより小さなセクションとして選択される。ただし所定のセグメントが十分なパターン情報を含み、一致が妥当な信頼度を持って検出されることを確実にするように、所定のセグメントの直径は光近接距離よりも長い必要がある。
【0032】
一実施形態では、パターン情報はレチクルの設計データから取得する。レチクルの設計データは、上記のようなデータベースに保存してもよい。そのような実施形態によっては、本方法はレチクルパターンのデータベースを取得するステップを含む。データベースは適切ないかなる記憶媒体から適切ないかなる方法で取得してもよい。
【0033】
別の実施形態では、本方法はレチクルのパターン全体における所定のセグメントのインスタンス数に基づいてパターン情報から所定のセグメントを選択するステップを含んでもよい。例えばデータベースを使用し、そのレチクルまたは他のレチクルの残り部分のパターンを代表する部分を選択できる。
【0034】
図1のステップ102に示すように、本方法はレチクル検査システムの検出器によって取得される1つまたは複数のレチクルの実際の画像に基づき所定のセグメント用の近接場データを決定するステップを更に含む。例えば本方法は、レチクルの選択部分の光学顕微鏡の画像を1つまたは複数電子的に取得するステップを含んでもよい。1つまたは複数の実際の画像を取得する検出器およびレチクル検査システムは、ここに更に示すように構成できる。画像はレチクルの光LNI画像でもよい。レチクルの実際の画像は、近接場データの決定に使用される。これによって近接場は光LNI画像からリカバリできる。レチクルの近接場は、一般的にレチクル付近の面における電場であると定義できる。このため、ここに示す実施形態は、顕微鏡によって取得された画像からマスクの近接場をリカバリするステップを含んでもよい。
【0035】
ここに更に示すように、近接場データは、そのレチクルまたは他のレチクルの欠陥検出に使用されるレチクルまたは他のレチクルの検出画像をシミュレーションするためにそのレチクルまたは他のレチクルに対して使用される。このため、近接場データの決定が基づくレチクルの実際の画像は、そのレチクルまたは他のレチクルの検査に使用されるレチクル検査システムの検出器、または同様に構成されたレチクル検査システム(例えば検査に使用されるレチクル検査システムと同一メーカの同一モデルの別のレチクル検査システム)の同様に構成される検出器によって取得されるのが好適である。つまりここに更に示すように、近接場データは検出器の画像をシミュレーションするので、近接場データを決定する際に使用される実際の画像は、検査に使用されるものと同一の光条件下で取得されることが好適である。これによって、実際のレチクルまたは他のレチクルを使用して、できるだけ直接的にレチクルの照射電磁波との相互作用を測定できる。しかしながらレチクル検査に使用される光学条件を近接場を決定する際に使用される実際の画像の取得に使用できない場合は、実際の画像をいくらか修正し、検査光学条件でレチクルに対し取得されるレチクルの実際の画像をシミュレーションする。それらの修正された画像を使用して近接場データを決定できる。
【0036】
検査に使用されるものとは他のレチクルを使用して近接場データを決定する画像を取得する場合は、その他のレチクルは検査されるレチクルと実質的に同様の特徴を有する必要がある。例えばそのレチクルと他のレチクルは、実質的に同一の材料で、実質的に同一の厚みと構成を有すると好適である。更に両レチクルは同一の工程によって形成してもよい。両レチクルは、レチクル上のパターンが実質的に同一のセグメントに分解できるのであれば、同一のパターンを有する必要はない(例えば線幅が同じ等)。更に、検査されるレチクルと画像を取得する際に使用されるレチクルは、単一の同一のレチクルであってよい。
【0037】
所定のセグメントに対する近接場データは、レチクルの1つまたは複数の実際の画像に基づく回帰法によって決定できる。例えばレチクルの選択された部分の近接場は、検出面で記録された光学画像または画像強度からリカバリ(回帰)される。特に強度画像からのレチクルの近接場リカバリは、逆問題または回帰問題である。多くの逆問題においてそうであるように、費用関数(例えばエネルギー関数や損失関数)を最小限にすることによって近接場は再帰的にリカバリできる。最小限とされる量は、光学画像と近接場から算出された検出器における強度画像の間の差の2乗の和と定義できる。更に1つまたは複数の実際の画像から近接場データを決定するための適切な他のいかなる回帰法とアルゴリズムを使用してもよい。
【0038】
一実施形態では、レチクルまたは他のレチクルの1つまたは複数の画像は、検出器または他の検出器によって複数の焦点設定で取得される。この方法は、好適な実施例では、画像は複数の焦点設定(多焦点設定)によって取得される。近接場リカバリは、複数の焦点設定が使用されると堅牢となる。レチクルの画像は、ここに更に示すシステムを使用する、ここに更に示す検出器の複数の焦点設定によって取得できる。
【0039】
一実施形態では、回帰法はホプキンス位相近似法を含む。他の実施形態では、回帰法は薄膜マスク近似法を含まない。更に他の実施形態では、回帰法はキルヒホッフ近似法を含まない。例えばレチクルの近接場は、垂直入射平面波によって照射された場合のレチクルの表面に発生する電磁場である。リソグラフィと検査において、レチクルは多方向から入射される平面波によって照射される。入射方向が変化した場合、ホプキンス近似法によると回折次数の方向は変化するが振幅と位相はほぼ変化しない。ここに記載の実施形態はホプキンス位相近似法を使用できるが、いわゆる薄膜近似法またはキルヒホッフ近似法は適切ではない。
【0040】
図1のステップ104に示されるように、本方法は所定のセグメントと所定のセグメントに対応する近接場データの組み合わせを含むデータ構造を生成するステップを更に含む。実施形態によっては、データ構造はライブラリとして構成される。その場合本方法は、データベースのセグメントとそれに対応するレチクルのセグメント上の近接場の組み合わせを含むライブラリを形成するステップを含んでもよい。つまりライブラリは、レチクルパターンのより小さな部分片と、関連付けられたレチクル近接場とを含んでもよい。このためレチクルパターンの部分片と近接場は、組み合わせられたオブジェクトとしてライブラリに保存できる。ここでデータ構造は、本分野で既知である他の適切なファイルフォーマットであってよい。更にここでの説明では、データ構造は「ライブラリ」と言及されるが、ここに示すいずれの実施形態においてもデータ構造はライブラリである必要はない。ライブラリはレチクル(または他のレチクル)が検査されるより以前に生成される。
【0041】
図1のステップ106に示すように、本方法は生成されたデータ構造に関する情報をレチクル検査工程のレシピに組み入れることによってレチクル検査工程を設定するステップを更に含む。レチクル検査工程中、レチクルまたは他のレチクル上の検査領域内の複数のセグメントを所定のセグメントと比較し、複数のセグメントのうち少なくとも1つのセグメントが最も類似している1つの所定のセグメント用の近接場データを少なくとも1つのセグメントに関連付ける。つまりレチクルの検査中、パターン情報は複数のセグメントに分割され、ライブラリ内の所定のセグメントと比較される。所定のセグメント用のライブラリ内の近接場データを一致するセグメントに関連付ける。これらのステップは更にここに示すように実行されてもよい。
【0042】
この方法では、ここに示すレチクル検査工程の設定は、レチクル検査工程で使用されるライブラリの生成を含み、そのライブラリをレチクル検査工程で使用できるようにするステップを少なくとも含む。ただしここに示す実施形態は、レチクル検査項目の他のパラメータ(例えば光学パラメータ、欠陥検出パラメータ等)を含んでも含まなくてもよい。例えば他のパラメータは、他の方法または他のシステムで決定してもよい。ライブラリ用の情報(例えばライブラリへのリンクやライブラリ用のID等)を工程に組み込んでもよい。このためここに示す実施形態は、レチクル検査工程の1つの要素(ライブラリ)のみの設定を含んでもよい。レチクル検査工程用のレシピは、レチクル検査システムがレチクル検査工程を実行する際に使用するいかなる指令の集合でもよい。そのような指令は適切ないかなるフォーマットでもよく、適切ないかなるデータ構造に保存されてもよい。
【0043】
分離ステップ、決定ステップ、生成ステップおよび設定ステップは、1つ以上のコンピュータシステムで実行され、コンピュータシステムは、ここに示すどの実施形態に従って構成してもよい。
【0044】
上記の方法の各実施形態は、ここに示す他のどの方法の他のどのステップを含んでもよい。更に上記の方法の各実施形態は、ここに示すどのシステムによって実行されてもよい。
【0045】
他の実施形態は、レチクル検査工程を設定するコンピュータ実装方法に関し、上記分離ステップ、生成ステップおよび設定ステップを含む。この実施形態は、上記決定ステップを必ずしも含まなくてもよい。代わりにこの実施形態において本方法は、所定のセグメントの電磁場を表わす方程式を数値的に解くことによって所定のセグメント用の近接場データを決定するステップを含む。つまり本実施形態では、マックスウェルの方程式を使用し各所定のセグメントの近接場データを決定してもよい。マックスウェルの方程式によって決定された近接場と対応する所定のセグメントは、次にここに更に示すようにデータ構造(例えばライブラリ)に保存できる。次にこれらの近接場と所定のセグメントの組み合わせは、ここに更に示すレチクル検査工程中に使用できる。所定のセグメントの電磁場を表わす方程式(マックスウェルの方程式)は、適切ないかなる方法またはアルゴリズムまたはその両方を使用して適切ないかなる方法によって解いてもよい。
【0046】
分離ステップ、決定ステップ、生成ステップおよび設定ステップは、1つ以上のコンピュータシステムによって実行され、コンピュータシステムは、ここに示すどの実施形態に従って構成してもよい。
【0047】
上記の方法の各実施形態は、ここに示す他のどの方法の他のどのステップを含んでもよい。更に上記の方法の各実施形態は、ここに示すどのシステムによって実行されてもよい。
【0048】
他の実施形態は、レチクル上の欠陥を検出するコンピュータ実装方法に関する。つまり本実施形態は、レチクルを検査するステップ、つまりレチクル検査工程をレチクル上で実行するステップを含む。ここに更に示す実施形態で実行されるレチクル検査工程は、上記のように(少なくとも部分的に)設定してもよい。
【0049】
図1の工程108に示すように、本方法はレチクル上の検査領域に含まれるパターンを複数のセグメントに分割するステップを含む。例えばレチクルの1つの検査領域に対し、その検査領域用のデータベースをより小さなセグメントに分割することができる。本方法は、レチクル上の検査領域を選択するステップを含んでも含まなくてもよい。例えばレチクル上の検査領域は、他の方法またはシステムによって決定し、その検査領域に関する情報をレチクル検査工程用のレシピに含んでもよい。複数のセグメントは、ここに更に示すように構成してもよい。
【0050】
図1のステップ110に示すように、本方法は、複数のセグメントをデータ構造内の複数の所定のセグメントと個別に比較するステップを更に含む。データ構造は、レチクルパターンの所定のセグメントとそれに対応する近接場データとの組み合わせを含む。これによって、データベースの各セグメントをライブラリ内で検索できる。特に、個別比較ステップは、ライブラリ内の複数のデータベースセグメントから検査対象のレチクル用と一致するデータベースのセクションを検索するステップを含んでもよい。つまりこのステップは、ライブラリ内の一致するパターンを検索するステップを含んでもよい。
【0051】
一実施形態では、複数のセグメントの直径は、レチクルに対する光近接距離よりも長い。例えば上記のようにレチクルパターンは、より小さなセグメントまたはセクションに分割できる。次に、データベースのこのセクションに一致するデータベースのセグメントをライブラリ内で検索する。検出による一致の可能性を高めるため、データベースのより小さなセクションを一度に1つ処理する。ただしセクションの直径は、光近接距離よりも長い必要がある。
【0052】
一実施形態では本方法は、レチクルまたは他のレチクルのパターン情報を複数の所定のセグメントに分割し、検出器または他の検出器で取得したレチクルまたは他のレチクルの1つ以上の実際の画像に基づき所定のセグメント用の近接場データを決定することによって、所定のセグメントと対応する近接場データの組み合わせを決定するステップを含む。これらのステップは、ここに更に示すように実行してもよい。例えばここに示す実施形態で使用されるライブラリは、上記のように作成してもよい。
【0053】
そのような一実施形態では、所定のセグメント用の近接場データは、レチクルまたは他のレチクルの1つ以上の実際の画像に基づく回帰法によって決定される。近接場データはここにより詳細に示すような方法で決定されてもよい。
【0054】
更に他の実施形態では、本方法は所定のセグメントと対応する近接場データの組み合わせを決定するステップを含み、それはレチクルまたは他のレチクルのパターン情報を複数の所定のセグメントに分割し、所定のセグメント用の近接場データを決定することによって実行される。所定のセグメント用の近接場データは、レチクルパターンの所定のセグメントの電磁場を表わす方程式を数値的に解くことによって決定される。これらのステップは、ここに更に示すように実行してもよい。例えばここに示す実施形態で使用されるライブラリは、上記のように作成してもよい。
【0055】
他の実施形態では、複数のセグメントを複数の所定のセグメントと個別に比較するステップは、複数のセグメントのグレースケール画像を所定のセグメントのグレースケール画像と比較するステップを含む。例えばライブラリ内で一致を特定するステップは、グレースケールラスタ化データベース画像の相関関係を分析するステップを含む。更に他の実施形態では、複数のセグメントを所定の複数のセグメントと個別に比較するステップは、複数のセグメントの1つのセグメント内における多角形の頂点座標を所定のセグメント内における多角形の頂点座標と比較するステップを含む。個別比較ステップにおいて、複数のセグメントの1つのセグメントと所定のセグメントの頂点座標の剛体平行移動は、不一致とは判断されない。例えばデータベースが多角形の頂点座標を含む場合、頂点座標は任意の平行移動まで一致とすることができる。そのような個別比較ステップは、適切ないかなる方法またはアルゴリズムまたはその両方を使用して適切ないかなる方法によって実行してもよい。
【0056】
図1のステップ112に示すように、本方法は更に複数のセグメントの少なくとも1つに近接場データを関連付けるステップを含み、関連付けは少なくとも1つのセグメントが最も類似する所定のセグメントに基づく。少なくとも1つのセグメントに近接場データを関連付けるステップは、最も類似する所定のセグメントに対応する近接場をライブラリから抽出することを含む。抽出されたデータは、次に検査領域内の点に関連付けられる。検査対象であるレチクルのセグメントがライブラリ内の所定のセグメントに対しどの程度類似しているのか決定するステップは、適切ないかなる方法またはアルゴリズムまたはその両方を使用して適切ないかなる方法によって実行してもよい。これによってレチクルの近接場は、検査中にライブラリ内で検索することによって算出可能となる。
【0057】
一実施形態では、複数のセグメントの少なくとも1つのセグメントが最も類似する1つ所定のセグメントがその少なくとも1つのセグメントに対して完全な一致ではない場合、少なくとも1つのセグメントに対して近接場データを関連付けるステップは、少なくとも1つのセグメントへの1つの所定のセグメントのマッピングを決定し、1つの所定のセグメントに対応する近接場データにマッピングを適応し、修正された近接場データを生成し、修正された近接場データを少なくとも1つのセグメントに関連付けるステップを含む。これによって完全一致が得られなくともライブラリ内の最も類似する一致を選択することが可能になる。そのような実施例の1つにおいて、ライブラリデータベースのセグメントを検査領域のデータベースのセクションにマッピングするモルフォロジ演算を求めてもよい。同じモルフォロジ演算を次にライブラリの近接場に適用する。例えばクリアフィールド内の54nm線幅の近接場を検索している場合に、ライブラリ内の最も類似する一致が50nmだとする。50nm線幅の近接場マップを選択し、54nm線幅も網羅するように拡大解釈してもよい。
【0058】
他の実施形態において、少なくとも1つの他のセグメントが最も類似する所定のセグメントがその少なくとも1つの他のセグメントに対して見つからない場合、本方法は検出器によって生成された実際の画像に基づいてその少なくとも1つの他のセグメント用の近接場データを決定するステップと、決定された近接場データをデータ構造に追加するステップとを含む。例えば一致が見つからない場合、ここに示したように近接場リカバリが実行され、その結果をライブラリに含むことができる。
【0059】
図1のステップ114に示すように、本方法は、検査領域用の近接場データを、関連付けられた近接場データに基づいて生成するステップを含む。例えば検査領域用の近接場データの生成は、単一の近接場値を検査領域の各点に関連付けられるように抽出された近接場群の作成を含んでもよい。これによって、関連付けられた近接場から画像を算出できる。
【0060】
一実施形態では、本方法は、レチクル検査システムによって形成されるであろう検査領域の画像を生成された近接場データに基づきシミュレーションするステップも含む。例えば関連付けられた近接場値は、ホプキンス(Hopkins)またはガモ・ガボール(Gamo−Gabor)理論によって検出器アレイに伝播され、画像強度が決定される。
【0061】
図1のステップ116に示すように、本方法は、検出器によって生成される実物のレチクル上の検査領域の実際の画像を取得するステップを更に含む。これによって、検査対象領域の光学画像が取得される。実物のレチクル上の検査領域の実際の画像は、ここに示すどのシステムのどの検出器を使用してもよく、ここに更に示すように生成することができる。
【0062】
図1のステップ118に示すように、本方法はシミュレーションされた画像と実際の画像とを比較することによってレチクルの欠陥を検出するステップも含む。例えば取得された光学画像は、算出された画像強度と比較され、算出された画像と検索領域の取得された光学画像との大きな差は検出されレポートされる。しかしながらシミュレーションされた画像と実際の画像との比較結果に基づくレチクル上の欠陥の検出は、他の適切ないかなる方法またはアルゴリズムまたはその両方を使用する他の適切ないかなるやり方で実行してもよい。
【0063】
このようにここに示す実施形態は、現在使用されている他のレチクル検査方法に対し多くの利点がある。例えばここに更に示すように光学画像からレチクルの近接場をリカバリするステップは、マックスウェル方程式を解くよりも速い。更にリカバリされた近接場のライブラリを作成し、ライブラリから抽出された近接場をコラージュすることによって、近接場リカバリの計算を削減できる。
【0064】
他の実施形態では、本方法はレチクルを使用して実行される工程内においてウェハ上に形成されるパターン形状の少なくとも1つの特徴をシミュレーションするステップを含む。シミュレーションは、生成された近接場データを1つのモデルに入力し、その工程内でウェハに形成されたパターン形状の少なくとも1つの特徴を測定し、シミュレーションされた少なくとも1つの特徴を測定された少なくとも1つの特徴と比較し、この比較ステップの結果に基づきそのモデルの少なくとも1つのパラメータを変更するステップを含む。この方法では、リソグラフィ画像モデルをマスク近接場に適用してリソグラフィ画像を予測してもよい。このため本方法は、この予測されたリソグラフィ画像を使用してウェハ上の限界寸法やリソグラフィの結果を予測するステップを含んでもよい。更にリソグラフィの計算モデルは、リカバリされた近接場とウェハ画像(例えばウェハ走査電子顕微鏡(SEM)画像)を使用して較正できる。つまりここに示す実施形態は、リソグラフィ工程で低開口数画像(LNI)からモデルパラメータを較正でき、これはウェハのパターンを予測するのに重要である。
【0065】
このような実施形態によっては、モデルに入力される近接場データを決定するために画像が使用されるレチクルは、較正マスクであってもよい。較正マスクは、1次元パターンと2次元パターンのセットを含んでもよい。マスクは、OPCモデルを生成するために使用されるものと同一のものでよい。またはマスクは、ケーエルエー−テンカー株式会社(本社カリフォルニア州ミルピタス)等のレチクル検査機器製造業者によって設計されてもよい。
【0066】
較正用マスクのLNI画像集は、ここに示すように取得してもよい。これらの画像を取得する撮像条件として、検査対象側の光源の形状と開口数がスキャナ側のそれらと同一であるかそれに近いと好適である。LNI画像は、その後の計算をよりよい条件でできるようにするため、スルーフォーカス画像であるとよい。他の方法としては、LNI画像集を一貫した照射条件でただし入射角は変えて取得してもよい。
【0067】
次にマスク近接場(MNR)は、ここに更に示すようにリカバリしてもよい。例えば照射条件と撮像条件が既知であるLNI画像集を使用し、その取得されたLNI画像とマスク近接場から算出された画像との差を最小限とする目的関数によって、マスク面の振幅と位相情報を再帰的に再構築できる。
【0068】
リソグラフィ工程はモデル化可能である。例えばマスク近接場を演算処理エンジンに供給しウェハの画像を生成してもよい。演算処理エンジンは、好適には偏光効果とベクタ画像効果を明示的に考慮するフォトレジスト材料による走査撮像工程を含む。エンジンは好適には更に、例えば酸と塩基の拡散や塩基クエンチングを含むフォトレジスト現像工程も含む。演算処理エンジンは更に任意でエッチングのモデル化を含む。
【0069】
シミュレーションされたウェハ画像は、次に同一の較正マスクで転写されたウェハの実際に取得されたSEM画像と比較される。シミュレーションされたウェハ画像と実際に取得された画像との差を使用し、モデルパラメータを再帰的に調整することによって画像の差を減少させることができる(例えばシミュレーションされたウェハの画像が実際に取得された画像と実質的に一致するようにする)。この再帰工程によってリソグラフィモデルパラメータの抽出が可能となる。つまりここに示す実施形態は、リソグラフィモデルパラメータを抽出するための較正工程を実現する。更にここに示す実施形態は、完全なリソグラフィモデルのマスク近接場と較正マスクとを組み合わせてリソグラフィモデルパラメータを抽出する。その後これらのモデルパラメータを保存し、後で欠陥が見つかった場合に取得する。
【0070】
リソグラフィモデルの較正についてここに示す実施形態は、現在使用されているリソグラフィモデル較正方法やシステムに対し多くの利点がある。例えば現在使用されているリソグラフィモデルを較正する方法は、マックスウェル方程式を解く不正確な方法に基づく。更に現在使用されている方法によっては、幾何学的形状のデータベースがレチクル上の実際のパターンを表すことを前提にする。更に現在使用されている方法によっては、所定の3次元(3D)プロファイルが実際のレチクルにエッチングされたプロファイルを表すことを前提とする。更に現在使用されている方法によっては、材料パラメータセットがレチクルを構成する材料を表すと前提にする方法もある。現在使用されている方法とシステムの更なる問題点をこの出願の背景技術欄に示す。
【0071】
レチクル検査で検出される欠陥は、益々複雑になるOPCによって、転写の可能性に基づいて処理することが非常に難しい。単純なレジスト閾値モデルは、LNI画像や空間像に適していない。欠陥がウェハに対して与える影響をウェハが実際に物理的なスキャナを用いて印刷される前に正確に予測するためには、走査撮像モデルに加えてレジストモデル較正が必要である。そのため、レチクルが製造工場に出荷される前に欠陥がウェハに対して与える作用を実質的に正確に予測するため利用できる新たな方法を構築することが強く望まれている。
【0072】
そのような実施形態によって、本方法は、レチクル上で検出された少なくとも1つの欠陥に関し、この少なくとも1つの欠陥の実際の画像に基づいて近接場データを決定し、決定されたこの欠陥の近接場データをモデルに入力することによって、この欠陥が工程中ウェハにどのように転写されるかシミュレーションする。これによって本方法は、レチクル検査画像におけるウェハで欠陥が転写される可能性を実質的に正確に検出できる。つまりこれらの実施形態は、レチクルに欠陥が転写される可能性を分析するために使用できる。例えばレチクル上に欠陥が検出された場合、欠陥箇所においてまたはその付近でLNI画像群を取得でき、それらの画像はその欠陥のマスク近接場をリカバリするために利用できる。これらはここに示すように実行でき、ここに示す実施形態で抽出されたモデルパラメータを使用し、リソグラフィのモデル化を実行し、ウェハに対して欠陥が与える作用を正確に算出できる。更にウェハ上に欠陥がどのように転写されるかを示すシミュレーション画像をここに示したように較正されたモデルによって取得できれば、そのシミュレーション画像をレチクルのその領域がウェハ上にどのように転写されるよう意図されていたかを示す情報(そのレチクルについてのOPC前データベースから取得可能)と比較することができる。このためウェハに対するレチクル欠陥の転写への影響の大きさは、OPC前データベースを使用して算出可能である。つまりレチクルの欠陥がどのようにウェハ上のレチクルの転写を意図された転写から変えてしまうかをOPC前データベースを使用して算出されたウェハの画像と比較することによって、欠陥の影響を予測できる。
【0073】
ここに示す実施形態は、レチクルを製造工場に出荷しそのレチクルによって大量生産を実行する前に、レチクルを品質検査し、レチクル上の欠陥がウェハに対し与える影響や作用を正確に予測するために利用できる。それに続く欠陥の処理を実行し、重大な欠陥とそうでないものを区別する。例えばウェハ上のレチクルの転写に対する欠陥の影響が決定されれば、欠陥をそれによって処理または分類できる(例えば転写されない欠陥、転写される欠陥、重大な転写される欠陥(例えば歩留りに影響を与える欠陥)、転写されるが軽微な欠陥(例えば転写されるが歩留りには影響を与えない欠陥)等)。
【0074】
このようにここに示す欠陥の転写性に関する実施形態は、欠陥の転写性を予測するために利用される他の方法やシステムに対し多くの利点がある。例えばここに示す実施形態は、スキャン画像の特徴事項とフォトレジスト現像工程を含むリソグラフィモデルを使用してもよい。更に、マスク近接場リカバリとリソグラフィモデル較正の組み合わせ(例えば検査画像とリソグラフィ工程のステップを組み合わせリソグラフィモデルを較正する)は、検査画像からより正確なウェハに対する予測を可能にする。これによってここに示す実施形態は、転写性分析に対し、ウェハに対する欠陥の作用を実質的に正確に予測する較正結果をもたらす。
【0075】
ここに示す較正ステップは、既存のレチクル検査機器に実装可能である。更に、較正されたモデルでの欠陥処理も既存のレチクル検査機器に実装可能である。
【0076】
分離ステップ、比較ステップ、関連付けステップ、生成ステップ、シミュレーションステップおよび検出ステップは、ここに示す実施形態のいずれかに従って構成される少なくとも1つのコンピュータで実行する。
【0077】
上記方法の各実施形態は、ここに示す他のどの方法の他のどのステップを含んでもよい。更に上記方法の各実施形態は、ここに示すどのシステムによって実行されてもよい。
【0078】
ここに示すすべての方法は、方法に関する実施形態の少なくとも1つのステップの結果をコンピュータ可読媒体に保存するステップを含んでもよい。結果とは、ここに示すいかなる結果も含み、関連技術で既知であるいかなる方法で保存されてもよい。記憶媒体は、ここに示す記憶媒体のいずれかまたは関連技術で既知である他の適したいかなる記憶媒体を含んでもよい。結果は保存後、記憶媒体内でアクセス可能であって、ここに示すどの方法やシステムの実施形態によって使用されてもよく、ユーザに対し表示できるようにフォーマットされ、他のソフトウェアモジュール、方法またはシステム等に使用されてもよい。
【0079】
更に他の実施形態は、ここに示すコンピュータ実装方法の少なくとも1つを実行するようにコンピュータシステムで実行可能な非一過性コンピュータ可読記憶媒体のプログラム指令に関する。そのような実施形態の1つを図2に示す。例えば図2に示すように、非一過性コンピュータ可読記憶媒体200は、コンピュータシステム204で実行可能なここに示すコンピュータ実装方法の少なくとも1つを実行するプログラム指令202を保存する。コンピュータ実装方法は、ここに示すどの方法のどのステップを含んでもよい。
【0080】
ここに示すような方法を実行するプログラム指令202は、非一過性コンピュータ可読記憶媒体200に保存してもよい。コンピュータ可読媒体は、磁気ディスクや光学ディスク、磁気テープまたは関連技術で既知である他の適したいかなる非一過性コンピュータ可読媒体であってもよい。
【0081】
プログラム指令は、手順ベース技法、コンポーネントベース技法、オブジェクト指向技法やそれらの組み合わせを含む様々な方法のうちのいかなる方法で実装してもよい。例えばプログラム指令は、所望のMatlab、Visual Basic、ActiveXコントロール、C、C++オブジェクト、C♯、JavaBeans(登録商標)、MFC(Microsoft Foundation Classes)、および他の技術や方法論を使用して実装してもよい。
【0082】
コンピュータシステム204は、様々な形式を取ることができる。例えばパーソナルコンピュータシステム、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、システムコンピュータ、画像コンピュータ、プログラム可能画像コンピュータ、並列プロセッサまたは関連技術で既知である他のいかなる装置でもよい。一般的には「コンピュータシステム」という用語は、記憶媒体からの指令を実行する少なくとも1つのプロセッサを有するあらゆる装置を意味するように広く定義される。
【0083】
一実施形態では、上記のコンピュータシステムは、EDA(電子設計自動化)機器の一部である少なくとも1つのコンピュータサブシステム(図示せず)を含み、ここに更に示すレチクル検査システムは、EDA機器の一部ではない。EDA機器とそのような機器に含まれるコンピュータサブシステムは、少なくとも1つの上記ステップを実行するように構成できる市販のあらゆるEDA機器を含む。例えばレチクル上の検査領域に含まれるパターンを複数のセグメントに分割するように構成されるコンピュータサブシステムは、EDA機器の一部でもよい。これによって、レチクルの設計データをEDA機器によって処理し、ここに示すように他の異なるシステムや機器によって使用されるようにパターンを複数のセグメントに分割する。
【0084】
コンピュータサブシステムもEDA機器の一部でなくてもよく、他のシステムや機器に含んでもまたは単にスタンドアローン型コンピュータシステムとして構成してもよい。更に、ここに示すようにパターンを複数のセグメントに分割し、データ構造を生成し、またはレチクル検査工程を構成する、もしくはこれらの組み合わせを実行する機器またはコンピュータサブシステムは、その情報を他の機器やコンピュータサブシステムに供給するように構成してもよい。情報の供給は、そのようなステップによって生成された情報を製造工場のデータベースのような共有のコンピュータ可読記憶媒体に保存または転送して行なってもよいし、または情報を使用する機器に直接情報を送信して行なってもよい。
【0085】
他の実施形態は、レチクル上の欠陥を検出するように構成されるシステムに関する。そのようなシステムの1つの実施形態を図3に示す。本システムは、実物のレチクル上の検査領域の実際の画像を生成するように構成される検出器を含むレチクル検査サブシステムを含む。実際の画像とは、ここに更に示すどの画像でもよい。図3に示すように、本システムはレチクル検査サブシステム300を含む。
【0086】
図3に更に示すように、レチクル検査サブシステム300は、ここに更に詳細を示すように、照明サブシステムと集光サブシステムとを含む。照明サブシステムは、光源302を含む。光源302は、レーザのようなコヒーレント光源でもよい。光源は波長約248nm、約193nm、約157nm、または他の紫外線波長である単色光を発するように構成してもよい。または光源は、範囲内の波長の光を発するように構成し、光源をスペクトルフィルタ(図示せず)に接続してもよい。例としての広帯域光源は、深紫外波長領域の光を生成するヘリウムキセノンアーク灯を含むがこれに限らない。これにより光源とフィルタは上記の波長を有する単色光を発光する。例えば検査対象のレチクルの種類によってまたは実行される検査や測定の種類によって光源とフィルタから発せられる光の波長を変えるように光源とフィルタを構成してもよい。光源は更に紫外線以外の光を発するように構成してもよい。更に光源は、連続してまたは可変の時間間隔をおくパルスとして光を発するように構成してもよい。
【0087】
照明サブシステムは、光源に接続される複数の光学部品を更に含んでもよい。例えば光源302からの光は、最初にホモジナイザ304を通ってもよい。ホモジナイザ304は、光源からの光のスペックル(斑点)を低減するように構成してもよい。照明サブシステムは、開口部306を更に含んでもよい。開口部306は、開口数(NA)が調整可能であってもよい。例えば、ユーザからの制御信号またはシステム上で実行されるプログラムレシピから受けるプログラム指令からの制御信号に基づき機械的に開口数を変更するように構成された制御機構に開口部を接続してもよい。これによって、光は可変の部分コヒーレンス係数(σ)を有することになる。例えば開口部306は、集光レンズ308の瞳を調整するように調整してもよい。集光レンズの瞳がシステムのNAを制御する。集光レンズの瞳を小さくすると、照明のコヒーレンスが強まり、このため係数σは減少する。係数σは、対物レンズのNA対集光レンズのNAの比として表してもよい。露光システムの係数σは、約0.3〜約0.9の範囲としてもよい。つまり開口部306は、光学サブシステムの係数σが約0.3〜約0.9の範囲になるように調整してもよい。係数σは、レチクル上のパターンによって変更できる。例えば、レチクルがコンタクトホールを含む場合よりもレチクルが線と空間を含む場合の方が高い係数σを使用する。制御機構は、環状照明または軸外の照明を行なうように開口部を調整するように構成してもよい。開口部は、4重極照明や2重極照明等の他の種類の照明を行なうように構成してもよい。更に開口部は、光線の形状を変えるように構成してもよい。例えば開口部は、回折光学素子やアポダイゼーション開口部であってもよい。
【0088】
照明サブシステムは、更なる複数の光学部品(図示せず)を含んでもよい。例えば照明サブシステムは、光のビーム径を変えるように構成された顕微鏡を更に含んでもよい。更に照明サブシステムは、少なくとも1つのリレーレンズ、フィールドレンズ等の追加レンズ、折り畳みミラー、追加開口部およびビームスプリッタを含んでもよい。
【0089】
照明サブシステムは、集光レンズ308を更に含んでもよい。集光レンズ308は、システムの視野とほぼ同じまたはそれより大きくなるように対象物(レチクル)内の光径を変えるように構成してもよい。集光レンズから出る光は、ステージ312に支持されたレチクル310を照明する。ステージは、レチクルの外側縁部付近を接触することによってレチクルを支持するように構成する。ステージ内に開口部を設けることによって、照明サブシステムからの光がレチクルを照明できるようにする。ステージ312は、レチクルの配置を変え、光がレチクルの端から端までスキャンできるようにレチクルを動かすように構成してもよい。または照明サブシステムが超音波光学式デフレクタや機械的スキャンアセンブリ等のスキャン部(図示せず)を含み、レチクルの端から端まで光がスキャンする間、レチクルは実質的に動かないままとしてもよい。ステージ312は、焦点を合わせてレチクルを動かすように構成し、それによって光学サブシステムの焦点設定を変えるようにしてもよい。ステージは、ステージの位置を動かすことによってレチクルを動かし検査中に光学サブシステムの焦点設定を保持するように構成された自動焦点装置(図示せず)に接続してもよい。または自動焦点装置を対物レンズに接続して対物レンズの位置を動かし、検査中に焦点設定を保持してもよい。
【0090】
光学サブシステムは、集光サブシステムを形成するように構成された複数の光学部品を更に含んでもよい。例えば集光サブシステムは、対物レンズ314を含む。レチクルを透過した光は対物レンズ314によって集光される。集光サブシステムは、開口数(NA)が調節可能な開口部316を更に含んでもよい。開口部316のNAは、開口部から出る光が所定の倍率になるように選択してもよい。開口部316は、対物レンズ314とレンズ318の間に配置し、レンズ318はチューブレンズとして構成してもよい。レンズ318からの光をビームスプリッタ320へ向けてもよい。ビームスプリッタ320は、光を3つの検出器322a,322b,322cへ向けるように構成してもよい。集光サブシステムは、拡大レンズのような光学部品(図示せず)を更に含んでもよい。拡大レンズは、レンズ318とビームスプリッタの間に配置してもよい。
【0091】
検出器322a,322b,322cは、レチクルの照明された部分が透過する光の像を形成する。そのような画像を「空間像」いう。検出器は、上記の光の波長の少なくとも1つに対し高感度である必要がある。検出器は、更に他の領域に加えて深紫外領域の波長範囲に対しても高感度であってもよい。検出器は、例えばCCD(電荷結合素子)カメラやTDI(時間遅延積分方式)カメラを含んでもよい。検出器は、1次元または2次元配列のピクセルを更に含んでもよい。3つの検出器はそれぞれ焦点設定が異なってもよい。これによって3つの検出器は、実質的に同時に3つの異なる焦点設定の画像を形成することができる。例えば1つの検出器は実質的に焦点を合わせ、他の2つの検出器は焦点があっている状態に対しそれぞれ逆の方向において焦点があっていないようにしてもよい。更にレチクル検査サブシステムは、レチクル検査サブシステムの機械的または物理的な制約に応じてそのような検出器を何台含んでもよい。
【0092】
もしくはレチクル検査サブシステムは、レチクルの実際の画像を生成するように構成される検出器1つのみを含んでもよい。検出器は露光システムの焦点設定と略等しい焦点設定としてもよい。異なる焦点設定のレチクルの画像は、レチクルの画像を複数形成し、各画像を形成後検出器の焦点設定を変更することによって形成できる。そのような実施形態では、光を複数の検出器へ分割するビームスプリッタ320は必要ない。
【0093】
レチクル検査サブシステムは、図3に示した以外の部品を複数含んでもよい。例えばシステムは、装填機構、位置合わせ機構、ロボット型搬送アーム等の搬送装置および環境管理機構や関連技術で既知のそのようないかなる部品も含んでもよい。
【0094】
上記のようにレチクル検査サブシステムは、1組の複数の露光条件を使用してレチクルの空間像を形成するように構成してもよい。露光条件は、照明の波長、照明のコヒーレンス、照明ビームの形状、NA、焦点設定等を含むが、これらに限定されない。露光条件は、ウェハ上にレチクルの画像を転写する露光システムによって使用される露光条件と実質的に同一となるように選択してもよい。それによってレチクル検査サブシステム300によって形成される空間像は、その露光条件下で露光システムによってウェハ上に転写されるレチクルの画像と実質的に光学的に等価となる。
【0095】
本システムは、ここに記載の少なくとも1つのコンピュータ実装方法の少なくとも1つのステップを実行するように構成された少なくとも1つのコンピュータサブシステムを更に含む。1つの実施形態では、図3に示すように、システムはコンピュータサブシステム324を含む。図3に示す実施形態では、コンピュータサブシステム324はレチクル検査サブシステム300に接続される。例えばコンピュータサブシステムは、レチクル検査サブシステムの検出器に接続される。そのような例では、コンピュータサブシステム324は、図3に示すようにレチクル検査サブシステム300の検出器322a,322b,322cに接続される(例えば図3に破線で示す少なくとも1つの転送媒体であって、関連技術で既知である適切な転送媒体を含む)。コンピュータサブシステムは、検出器といかなる適切な方法で接続されてもよい。コンピュータサブシステムは、他の適切ないかなる方法でレチクル検査サブシステムと接続されてもよく、レチクル検査サブシステムによって生成されるレチクルの画像や他の情報は、コンピュータサブシステムに送信される。場合によってコンピュータサブシステムは、レチクル検査サブシステムに指令を送り、ここに示す少なくとも1つのステップを実行する。システムに含まれるコンピュータサブシステムは、ここに示すように更に構成されてもよい。
【0096】
図3は、ここに示すシステムの実施形態に含まれるレチクル検査サブシステムの1つの構成を一般的に図示する。明らかであるが、市販の検査システムを設計する際に通常行われるように、システムの性能を最適にするためにここに示すレチクル検査サブシステムの構成を変更してもよい。更に、ケーエルエー・テンコール社から市販されているレチクル検査機器のような既存のレチクル検査サブシステムを使用してここに示すシステムを実装してもよい(例えばここに示す機能を既存の検査システムに追加)。そのようなシステムによっては、ここに示す方法はシステムのオプション機能として提供してもよい(例えばシステムの他の機能に追加)。またはここに示すレチクル検査システムは、ゼロから設計し、完全に新たなシステムとして実現してもよい。
【0097】
本発明の様々な態様に対する更なる改良や代わりとなる実施形態は、本明細書を考慮すれば当業者に明らかであろう。レチクルの欠陥を検出するシステムと方法は、例として示されている。本明細書は例示としてのみ解釈されるべきであって、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示することを目的とする。ここに示し説明する本発明の形式は、現時点での好適な実施形態であると理解されるべきである。ここに示し説明する構成要素や材料は他に代替えしてもよく、部品の位置や工程の順番は逆にでき、本発明の特徴事項によっては独立して利用してもよく、それらはすべて本発明の本明細書を利用すれば当業者にとって明白であろう。添付の請求項に示す本発明の精神と範囲から逸脱することなく構成要素を変更することが可能である。
図1
図2
図3