(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671277
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】ラジカル重合可能なモノマーを再安定化するための方法及び供給ユニット
(51)【国際特許分類】
C08F 2/40 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
C08F2/40
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-509479(P2016-509479)
(86)(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公表番号】特表2016-520137(P2016-520137A)
(43)【公表日】2016年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2014058414
(87)【国際公開番号】WO2014174057
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年4月17日
【審判番号】不服2019-3324(P2019-3324/J1)
【審判請求日】2019年3月11日
(31)【優先権主張番号】102013007298.0
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/816,175
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100129735
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 顕学
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ−ゲオアク マーティン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー オーデンヴァルト
【合議体】
【審判長】
大熊 幸治
【審判官】
井上 猛
【審判官】
佐藤 健史
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−515328(JP,A)
【文献】
特開昭63−100927(JP,A)
【文献】
特開昭52−088580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
B01J 4/00-4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合可能なモノマーを安定化するための方法であって、
a)ラジカル重合の禁止剤溶液を、不活性の加圧ガスと一緒に、少なくとも1つの導管(10)を介してモノマー含有容器(1)に入れる工程であって、前記導管(10)は、上昇する部分を含み、かつ前記導管(10)の端部で、前記容器中に前記禁止剤溶液を導入するための及びガスを吹き込むための手段を有し、並びに
b)前記容器の中身と前記禁止剤溶液とを、前記導管(10)にガスを吹き込むことによって混合する工程
を含み、ここで、工程(a)において、前記禁止剤溶液の流動様式として栓流又は環状流が前記導管(10)の前記上昇する部分中で生じるように、前記加圧ガスの流速を8〜12m/sに調節し、かつ工程(b)において、オリフィス板(26)を含む接続ピース(23)によって前記容器(1)中のガス空塔速度を0.1〜10mm/sに調節し、前記接続ピース(23)は加圧ガス貯蔵容器(14)と禁止剤溶液のための槽(13)を連結する、方法。
【請求項2】
前記導管(10)はさらに、少なくとも一つの水平な部分および/または下降する部分を含み、
前記導管(10)の水平な部分および/または下降する部分の直径は、前記導管(10)の上昇する部分の直径よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記禁止剤溶液及びガス溜めを、少なくとも1つの供給ユニット(11)によって準備し、前記供給ユニット(11)が、前記禁止剤溶液のための槽(13)及び少なくとも1つの加圧ガス貯蔵容器(14)を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記供給ユニット(11)が前記容器(1)と間隔を空けて配置されており、かつ前記導管(10)を介して前記容器(1)と連結されている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記導管(10)が、前記供給ユニット(11)から前記容器(1)に前記モノマー容器(1)の蓋を通って延びる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
1つ以上の供給ユニット(11)が直列又は並列で前記導管(10)につながれている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法を実施するための供給ユニット(11)であって、
(a)前記禁止剤溶液に届く採取管を有する、前記禁止剤溶液のための槽(13)、
(b)ガス送り管(17)を介して前記禁止剤溶液のための槽(13)と連結されている少なくとも1つの加圧ガス貯蔵容器(14)、
(c)前記加圧ガス貯蔵容器(14)に備わった減圧手段(21)、
(d)前記ガス送り管(17)における前記ガス空塔速度の調節手段(26)であって、オリフィス板(26)を含む接続ピース(23)を有する調節手段(26)及び
(e)前記容器(1)に通じる前記導管(10)への前記採取管の接続手段(12a,12b)
を含む、供給ユニット(11)。
【請求項8】
1〜6つの加圧ガス貯蔵容器(14)を有する、請求項7記載の供給ユニット(11)。
【請求項9】
可搬式ユニットとして形成されている、請求項7または8記載の供給ユニット(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル重合可能なモノマーを再安定化するための方法及び当該方法を実施するための供給ユニットに関する。
【0002】
ラジカル重合可能であるモノマー、例えば(メタ)アクリル酸及びその誘導体は、化学工業において、比較的大型の容器、例えば貯蔵タンク(Lagertank)又は塔内で取り扱われる。その際、温度の上昇、冷却障害、安定化剤の失活若しくは不足によってモノマーの重合が望ましくない形で始まってしまう恐れがある。それによって、開始し始めた重合を迅速かつ効果的に阻止して停止させることができない場合、製造プラントの危険性が著しく高まりかねない。このために重合禁止剤を使用することが知られている。ここで重要なことは、重合禁止剤を必要とされる量で添加し、かつモノマーとの十分な混合をもたらし得ることである。重合禁止剤の慣例的な導入及びポンプを使った混合は、ポンプの運転のために必要とされる電力供給が非常時には保証されていないという理由で欠点である。それゆえ、WO99/59717は、禁止剤溶液を、加圧ガスにより、例えばモノマー含有貯蔵タンクに入れる供給系を記載している。モノマーと禁止剤溶液の混合は、不活性ガス、例えば窒素をさらに導入することによって行われる。しかしながら、WO99/59717の中に記載されている供給系は、なお改善の余地があることがわかっている。
【0003】
それゆえ、本発明の基礎を成している課題は、禁止剤溶液を実質的に完全にモノマー容器に入れてモノマー容器の中身と禁止剤溶液が十分に混合し得ることを保証する、ラジカル重合可能なモノマーを再安定化するための方法及び当該方法を実施するための装置を提供することである。
【0004】
この課題は、
a)ラジカル重合の禁止剤溶液を、不活性の加圧ガスと一緒に、少なくとも1つの導管(供給管)を介してモノマー含有容器に入れる工程であって、当該導管は、上昇領域を含み、かつ当該導管の端部で容器中に禁止剤溶液を導入するための及びガスを吹き込むための手段を有し、並びに
b)容器の中身と禁止剤溶液を、導管にガスを吹き込むことによって混合する工程
を含み、ここで、工程(a)において、加圧ガスの流速を、禁止剤溶液の流動様式として栓流又は環状流が導管の上昇領域中で生じるように調節し、かつ工程(b)において、容器中のガス空塔速度を≧0.1mm/sに調節する、ラジカル重合可能なモノマーの再安定化法によって解決される。
【0005】
禁止剤溶液は、
(a)禁止剤溶液に届く採取管を有する禁止剤溶液のための槽(Kessel)、
(b)ガス供給管を介して禁止剤溶液のための槽と連結されている少なくとも1つの加圧ガス貯蔵容器、
(c)加圧ガス貯蔵容器に備わった減圧手段、
(d)ガス供給管におけるガス空塔速度の調節手段及び
(e)モノマー容器に通じる導管への採取管の接続手段
を含む、供給ユニットの形態で提供される。
【0006】
本明細書中で“再安定化”とは、既に開始しているラジカル重合可能なモノマーの重合の禁止及び残留モノマーの更なる重合に対する安定化を意味する。或いはまた“再安定化”との言い回しは、重合が早くも開始してしまうことなくモノマーを後安定化すること、並びに重合を誘起するか若しくは促進し得る材料とのコンタミネーションがあるか若しくは懸念される可能性がある場合、又は火炎が発生するか若しくは火炎の恐れがある場合にモノマーを安定化することも含む。
【0007】
本明細書中で“容器”とは、例えば円筒形、長方形、正方形又は球形の槽といった任意の形状を意味する。好ましくは、実質的に円筒形の容器、殊に縦型の円筒形の容器である。縦型の円筒形の容器の高さ対直径の比は、一般的に、≧0.1であり、好ましくは0.1〜8、殊に0.1〜5の範囲にある。槽の体積は、殊に20〜10000m
3の範囲にあり、これは3〜20mの槽の高さに相当する。
【0008】
禁止剤溶液のための槽は、目的に応じて、ほぼ円筒形の、好ましくはステンレス鋼製の容器である。一般に加圧ガス貯蔵容器は、加圧ガス貯蔵容器のガス出口を制御する減圧手段を有する。減圧手段を開くことによって、加圧ガスがガス供給管を介して禁止剤溶液のための槽に流れ込み、かつ禁止剤溶液を採取管(これは、禁止剤溶液、好ましくは禁止剤溶液のための槽の底部にまでほぼ届く)によりモノマー含有容器に通じる導管に圧し込む。この導管は、好ましくは少なくとも1つの水平かつ/又は下降する部分と、上昇する、殊に実質的に鉛直の部分とを含む。ここで、導管の水平若しくは下降する部分の直径を、上昇する導管の直径より大きく選択することが好ましくあり得る。それによって、殊に供給ユニットが安全上の理由からモノマー容器と比較的間隔を大きく空けて(20〜100m)配置されている場合、圧力降下と禁止剤溶液の供給時間とが最小に抑えられる。有利には、導管は、その長さ全体にわたって実質的に同じ直径を有する。
【0009】
禁止剤溶液及び混合ガスの導入手段は、有利には、モノマー容器の底部領域に達する管である。目的に応じて、管は、破裂板、殊にデッドスペースのない破裂板によって塞がれ、当該破裂板は、供給ユニットの運転開始時に破壊される。
【0010】
更なる実施形態によれば、禁止剤溶液及び混合ガスの導入手段は、伸縮ランス(Teleskoplanze)である。この種の伸縮ランスは、WO99/24161の中に記載されており、この内容を参照をもって全面的に取り込む。
導管中に存在するすべての禁止剤溶液がタンクに確実に輸送されるように、加圧ガスの流速は、禁止剤溶液の流動様式として栓流又は環状流が、殊に導管の上昇部で生じるように調節される。栓流又は環状流の形成は、なかでも加圧ガスの流速及び導管直径に依存する。好ましくは、加圧ガスの流速は、6〜12m/s、殊に8〜12m/sの範囲にある。流速の突き止め方は当業者に知られている。例えば、それはA.E.Dukler及びY.Taitel著のMultiphase Science and Technology,第1章,第1頁〜第94頁に記載の方法に従って行われることができる。
【0011】
禁止剤溶液の導入は、好ましくは容器の底部領域で行われる(底部との間隔は、有利には容器の高さの1/100〜1/10;球形の容器の場合、壁から1/100〜1/10の間隔が空けられる)。しかしながら、底部若しくは壁とより大きく間隔を空けて導入を行ってもよい。
【0012】
導管の上昇部は、殊に、容器の高さの1/10〜10/10の高さにわたって延びる。
【0013】
禁止剤溶液が、すでに進行している重合を禁止するか又は重合の開始を妨げるように、当該禁止剤溶液はモノマー容器の中身と効果的に混合されなければならない。このために、ガスが容器底部の領域に吹き込まれる。容器に存在するモノマー液中で上昇する気泡は、容器の中身の鉛直循環流を引き起こし、そうして混合が生じる(容器の中身の粘度が<350mPasであることを前提にしており、このことは、ここで考慮の対象になるモノマー液及び温度の場合に一般的に該当する)。混合が特に効果的であるのは、壁付近に導管が配置されており、かつガス流出が容器の底部領域で行われる場合である。しかしながら、禁止剤溶液は、混合が十分に迅速かつ均一に行われる場合に限ってのみその目的を果たし得る。そのために容器中で≧0.1mm/sの最小空塔速度が必要であることがわかった。一般的に、ガス空塔速度は、0.1〜20mm/s、殊に0.1〜10mm/sの範囲にある。これを達成するために、ガス供給管において、加圧ガス貯蔵容器を禁止剤溶液のための槽と連結する手段が備えられる。有利には、この手段は、殊にDIN ISO 5167−2に依拠して形成されているオリフィス板(Blende)である。ここで、オリフィス板は、開口部を含む。その際、開口部の大きさは、ガス供給管の直径及び容器の大きさに依存して選択されるべきである。それ以外に、この手段によって一定の質量流がもたらされる。
【0014】
ガス空塔速度は、以下の式に従って計算され得る:
【数1】
[式中、
は、ガスの体積流であり、
は、モノマー容器の断面積であり、
は、ガスの質量流であり、かつ
は、ガス密度である]。
【0015】
禁止剤溶液と容器の中身を混合させるのに必要な加圧ガスの量は、容器の大きさ若しくは容器中に存在するモノマー液の体積に依存する。供給ユニットが、混合のために必要な時間のあいだ最小ガス空塔速度を維持するのに十分ではない場合、1つ以上の追加的な加圧ガス貯蔵容器を有する供給ユニットか又は1つ以上の更なる直列に接続された供給ユニットを使用することが好ましい。ガス空塔速度を調節するために、1つ以上の更なる並列に接続された供給ユニットを使用することが必要であり得る。
【0016】
殊に、加圧ガスとして、窒素、又は酸素5〜21体積%、殊に5〜8体積%の体積比を有する窒素と酸素の混合物が使用される。
【0017】
本発明による供給ユニットは、1つ以上の、有利には1〜6つの加圧ガス貯蔵容器を含んでよく、これらは場合により減圧手段を有する。特に有利には、供給ユニットは、可搬式ユニットとして形成されている。
【0018】
採取管の端部には、当該採取管を槽に通じる導管につなぐための手段が備わっている。
【0019】
容器中に届く導管の場合、デッドスペース等において又は低温表面でのモノマーの凝縮によって、禁止剤の量が減少した若しくは禁止剤不含のモノマーが形成する可能性があり、当該モノマーは重合し易くかつそれゆえスケール形成が起こり得ることが考慮されるべきである。スケール形成の恐れは、導管を僅かな流の窒素又は窒素と酸素より成る混合物(酸素5〜21体積%)で連続的にフラッシングすることによって軽減することができるか又はそれどころか回避することがき、ここで、当該流は、弁を介して導管に送り込まれる。ガス圧が一定の値を下回ると、警報信号を作動させることが好ましい。
【0020】
代替的に、スケール形成は、言及した破裂板によって防止することができる。その際、タンク中に届く導管は、その端部が破裂板により、好ましくはデッドスペースのない破裂板により塞がれ、これは供給ユニットの運転開始時に破壊される。更なる代替案は、言及した伸縮ランスの使用であって、これは、使用されない場合は容器の中身の液面上方に存在し、かつモノマー蒸気及びモノマー液から保護されている。本発明による方法及び本発明による供給ユニットは、ラジカル重合可能なモノマーの効果的な安定化をもたらすか若しくはラジカル重合可能なモノマーの既に開始した重合を禁止するのに適している。ラジカル重合可能なモノマーは、一般的にビニルモノマーである。これに関する例は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、置換されたアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、例えばヒドロキシアルキルアクリラート及びヒドロキシアルキルメタクリラート、イタコン酸及びアクリル酸について挙げたその誘導体、マレイン酸及びアクリル酸について挙げたその誘導体、スチレン及びその誘導体、N−ビニルラクタム、例えばN−ビニルピロリドン等である。
【0021】
適した禁止剤は、例えばフェノチアジン及びその誘導体、例えばN−アルキル化されたフェノチアジン、例えばN−ベンジルフェノチアジン又はN−(1−フェニルエチル)フェノチアジン、N−(ジフェニルメチル)フェノチアジン、N,N’−ジメチルフェナジン、フェノキサジン、プロマジン及びその塩酸塩、カルバゾール、N−エチルカルバゾール、ヒドロキノン及びその誘導体、例えばヒドロキノンエーテル、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル(MeHQ)、アルキル置換されたヒドロキノン、例えばモノ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン又はトルヒドロキノンである。
【0022】
禁止剤は、有機溶媒中での溶液として用いられる。適した溶媒は、殊にアセトン、酢酸エチル及び有利にはN−アルキルピロリドン、例えばN−メチルピロリドン(NMP)及び/又はN−エチルピロリドンである。特に有利な禁止剤溶液は、NMP中でのフェノチアジンの溶液である。さらに、溶液の禁止剤含有率が、禁止剤溶液の質量を基準として少なくとも10質量%〜55質量%である場合に好ましい。特に有利なのは、NMP中でのフェノチアジンの30〜40質量%溶液であり、当該溶液は、場合により10質量%までのヒドロキノンエーテル、殊にMEHQを含有してよい。
【0023】
禁止剤の必要な量は、タンクの大きさに左右し、ここで、量の計算は100%の充填高さに基づく。さらに、禁止剤量は、使用される禁止剤と安定化されるべきモノマーに依存する。たいていの場合、約200ppm〜300ppmのフェノチアジン濃度でモノマーの重合を禁止することができる。たいていの場合、もはや危険ではなくなる程度に重合を禁止するためには、50〜1000ppmのフェノチアジン濃度で十分であることがわかった。モノマーを安定化させるための供給ユニットの禁止剤溶液の量が十分ではない場合、1つ以上の更なる直列に接続された供給ユニットが使用される。
【0024】
N−メチルピロリドン中でのフェノチアジンの35%溶液の場合、−10℃又はそれより高い温度において、実際の使用のために十分な流動性が生じる。それにも関わらず、溶液及び供給ユニットを>0℃の温度で貯蔵することが好ましい。N−メチルピロリドン中でのフェノチアジンの35%溶液(w/w)は、通常の貯蔵条件(0〜60℃)下でおよそ5年間の貯蔵寿命を有する。
【0025】
本発明による方法及び本発明による供給ユニットは、信頼でき、迅速かつ経済的な手法でラジカル重合可能なモノマーの再安定化を可能にし、並びにエネルギー源及び混合装置に依存しておらず、このことは特に電力供給の中断に伴う非常時において意味を持つ。禁止剤は素早くタンク中に入れられ、そしてタンクの中身と混合され、ひいてはラジカル重合が進んだ段階でも確実に禁止することができる。
【0026】
本発明を、実施例に基づき、図面を引き合いに出して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】タンクにつながれた供給ユニットの概略図を示す
【0028】
図1は、容器1と連結された本発明による供給ユニット11の概略図を示す。ここで、容器はタンク1として形成されている。タンク1は、鉛直の接続フランジ3を備えた開口部2を有する。開口部2には、禁止剤溶液及び混合ガスをタンク1の内部空間5に導入するための装置の管4が突き出ている。タンク1の底部付近にある端部6を有する管4は、禁止剤溶液及び混合ガスを送り込むために用いられる。管4のもう一方の端部には、タンク1のフランジ3に固定するための支持フランジ9が備わっており、ここで、固定は、直接又は中間フランジを使用して行ってよい。この管4には、内部空間5に導入されるべき禁止剤溶液及び混合ガス用の供給管10が接続されている。供給管10は、実質的に水平な部分と実質的に鉛直に上昇する部分とを含む。代替的に、水平部分は降下する形で形成されていてもよい。
【0029】
本発明による供給ユニット11は、危険に際して初めて供給管10につながれ、そのために連結手段12a及び12bが備え付けられている。禁止剤溶液は、推進ガスボンベ14の形態の2つの加圧ガス貯蔵容器と連結されている供給ユニット11の槽13に存在する。側面図であることから、2つの推進ガスボンベ14の一方のみを確認することができる。槽13の貯蔵スペース内には採取管が存在し、これはその一方の端部が槽13のほぼ底部にまで延び、ここで、もう一方の端部はホース15につながれている。推進ガスボンベ14を開くことによって、加圧ガス供給管17を介して加圧ガスが槽13に導入され、そうして禁止剤溶液が槽13から採取管により送り出され、かつ管4を通ってタンクの中身に入れられる。引き続き、推進ガスボンベ14からのガスが、槽13及び供給管10を介してタンク1に、ガス空塔速度が≧0.1m/sとなるように導入される。上昇する気泡に基づき、上方向の流がタンク1の内部空間5で引き起こされ、これを矢印7によって明示する。管4の領域中でのこの上方向の流は、隣接した領域中でも、矢印8で示される相応の流を誘起する。ガスの導入によって、タンクの中身と禁止剤溶液との集中的な混合が生じる。特に効果的な混合を作り出すために、管4の端部6は、タンク1の壁付近に、殊にタンク1の底部付近に配置されている。代替的に、管4は、タンク1の側壁を通してタンクの内部空間5に導いてもよい。
【0030】
供給ユニット11は、タンク1とは間隔を空けて配置されている。安全上の理由から、供給ユニット11とタンク1との間隔は、少なくとも20mであることが望ましい。しかしながら、許容され得る供給時間を保証するために、間隔は最大200mであることが望ましい。
【0031】
連結手段12aは、可撓性ホース15を介して採取管とつながれており、他方で、連結手段12bは、供給管10の端部に固定されている。槽13には、ローラー18,19及びグリップ20が備わっており、そうして供給ユニット11は手で動かすことができる。ここで、ホイール18は、実質的に供給ユニットの重さを支え、かつホイール19は、ステアリングローラーとして設計されている。槽13と推進ガスボンベ14との間には減圧弁21が接続されており、これによって、高い圧力のもと推進ガスボンベ14を抜けるガスが、約10barの一定の圧力に放圧される。槽13は、注入口を有し、その閉じ蓋22には安全逃がし弁が備わっている。供給ユニット11が作動させられると、管4の中に圧力が発生する。それによって、禁止剤溶液は、管4を通ってタンクの内部空間5に圧し込められる。この場合、加圧ガスの流速は、供給管10の鉛直の上昇部において禁止剤溶液の流動様式として栓流又は環状流が生じるように調節される。それによって、導管10の中に存在するすべての禁止剤溶液がタンク1に輸送されることが保証される。そのために、流速は6〜12m/sの値、殊に8〜12m/sの値に調節される。
【0032】
必要とされる禁止剤溶液の量は、タンク1の大きさに従って算出されるので、タンク1が大きい場合、1つより多い供給ユニット11をタンク1につなぐ必要がある。そのために、複数の供給ユニット11を並列に接続してよい。混合ガスの必要に応じて、供給ユニット11は、1つ以上の加圧ガス貯蔵容器14を含んでよい。
【0033】
図2には、直立の供給ユニットの平面図が示される。槽13、当該槽13に固定された推進ガスボンベ14及びグリップ20を確認することができる。槽13の周りにはホース15が巻かれており、ホース端部には連結手段12aが備わっている。2つの推進ガスボンベ14の加圧ガス供給管19は、3方向接続ピース28において共通の供給管17に導かれる。共通の供給管17は、推進ガスボンベ14からの加圧ガスを接続ピース23により容器中に導く。
【0034】
図3には、共通の供給管17を槽13と連結する接続ピース23を詳細に示している。ここで、接続ピース23は、上部24及び下部25を含み、さらに、下部25は上部24を取り囲む。加圧ガス供給管17は、上部24の中で終わる。上部24と下部25との間には、開口部27を有するオリフィス板26が存在する。ここで、開口部27の大きさは、供給管10の直径及びタンク1の大きさに従って選択される。それによって、必要とされる空塔速度を調節することができる。殊に、開口部の直径の選択により、ガス空塔速度は、それが≧0.1mm/sとなるように調節される。それによって、禁止剤溶液とタンク1の中身との十分に迅速かつ均一な混合が保証される。
【符号の説明】
【0035】
1 タンク、 2 開口部、 3 接続フランジ、 4 管、 5 タンクの内部空間、 6 管の端部、 7 管の領域中での上方向の流、 8 管に隣接した領域中での上方向の流、 9 支持フランジ、 10 供給管、 11 供給ユニット、 12a、b 連結手段、 13 禁止剤溶液のための槽、 14 加圧ガス貯蔵容器、 15 ホース、 16 加圧ガス供給管の接続部、 17 加圧ガス用供給管、 18 ホイール、 19 ホイール、 20 グリップ、 21 減圧弁、 22 加圧ガス貯蔵容器の注入口の閉じ蓋、 23 接続ピース、 24 弁の上部、 25 弁の下部、 26 オリフィス板、 27 オリフィス板の開口部、 28 3方向接続ピース