特許第6671289号(P6671289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6671289耐熱保形性を有するナチュラルチーズおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671289
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】耐熱保形性を有するナチュラルチーズおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/068 20060101AFI20200316BHJP
   A23C 19/072 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   A23C19/068
   A23C19/072
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-548890(P2016-548890)
(86)(22)【出願日】2015年9月15日
(86)【国際出願番号】JP2015076105
(87)【国際公開番号】WO2016043177
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2018年9月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-188278(P2014-188278)
(32)【優先日】2014年9月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】城ノ下 兼一
(72)【発明者】
【氏名】小森 素晴
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 武志
【審査官】 竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0106423(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0165594(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 19/00−19/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料乳を凝乳させた後にホエイを排出してチーズカードを調製し、当該チーズカードにトランスグルタミナーゼを添加して熟成させることを含む、耐熱保形性を有し、加熱調理後に形を保つための加熱調理食品用熟成型ナチュラルチーズの製造方法。
【請求項2】
凝乳酵素と乳酸菌を添加して凝乳させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
熟成させることが、4〜20℃、1〜4ヶ月間で熟成させることである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
トランスグルタミナーゼを添加した後に、トランスグルタミナーゼが失活する温度および時間で加熱することを含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
トランスグルタミナーゼを添加した後かつ熟成する前に、トランスグルタミナーゼが失活する温度および時間で加熱することを含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により製造された、耐熱保形性を有し、加熱調理後に形を保つための加熱調理食品用熟成型ナチュラルチーズ。
【請求項7】
150〜250℃、5〜20分間の乾熱下の焼成および/または100〜200℃、5〜40分間の湿熱下の焼成において保形性を有する、請求項6に記載の加熱調理後に形を保つための加熱調理食品用熟成型ナチュラルチーズ。
【請求項8】
150〜250℃、5〜20分間の乾熱下の焼成において50%以上の保形性、および/または100〜200℃、5〜40分間の湿熱下の焼成において40%以上の保形性を有する、請求項6または7に記載の加熱調理後に形を保つための加熱調理食品用熟成型ナチュラルチーズ。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の加熱調理後に形を保つための加熱調理食品用熟成型ナチュラルチーズを含む、加熱調理食品。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の加熱調理後に形を保つための加熱調理食品用熟成型ナチュラルチーズを内包して含む、加熱調理食品。
【請求項11】
ゴーダ、チェダーまたはパルメザンである、請求項6〜8のいずれか一項に記載の加熱調理後に形を保つための加熱調理食品用熟成型ナチュラルチーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱保形性を有するナチュラルチーズおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の市場において、ナチュラルチーズが定着しつつある。ナチュラルチーズは、熟成の程度により、乳成分の熟成の風味を楽しめる、いわゆる熟成型ナチュラルチーズ、および新鮮な乳風味を味わえる、いわゆる非熟成型ナチュラルチーズに分類することができる。また、ナチュラルチーズは、その硬さから、特別硬質ナチュラルチーズ、硬質ナチュラルチーズ、半硬質ナチュラルチーズ、軟質ナチュラルチーズに分類することができる。このように、ナチュラルチーズには、熟成の程度(有無)や物性(食感)の違いなどにより、多くの種類が存在する。
【0003】
ナチュラルチーズは、その食シーンとして、そのまま食べる場合もあるが、チーズの特性を利用して調理・加工された状態で食べる場合もある。ここで、例えば、ピザ、グラタン、ラザニアなどのような場合には、チーズが加熱により溶融し、糸曳き性を増す特性が積極的に利用される。一方、製菓・製パン用、フライ・天ぷらなどの揚げもの、炒めもの、焼きものの具材などのような場合には、チーズが加熱により溶融し、糸曳き性が増す特性は求められておらず、チーズが加熱により溶融しにくく、ある程度で元の形状をそのまま維持できる耐熱保形性が求められる。なお、これらの耐熱保形性を増したチーズには、プロセスチーズやチーズフードの形態が多い。
【0004】
特許文献1には、ナチュラルチーズまたはプロセスチーズを主原料とし、これと水および溶融塩並びに所望により各種添加物、例えば、牛乳由来の蛋白質、調味料および香料、とを用いて融解調製したチーズ溶融物に、トランスグルタミナーゼを作用させることを特徴とする、加熱による融解変形性(易融性)および曳糸性を適度に併有する、または加熱による融解変形の生じない(耐熱保型性)、歯切れの良好なカマボコ様の組織を有するチーズフードの製造法が記載されている。
【0005】
ナチュラルチーズは一般的に、自然な乳風味と独自の組織、および物性を有しており、このようなナチュラルチーズの組織、および物性を好む消費者にとって、プロセスチーズやチーズフードでは物足りないことがある。耐熱性を有するナチュラルチーズでは、例えば、キプロスのハロウミが知られている。ハロウミは、耐熱保形性を得るために、乳酸菌を使用せずに、中性のpHのまま、原料乳を約90℃の高温のホエイ中で加熱して製造する。
【0006】
特許文献2には、乳タンパク質濃縮物粉末を水、生乳、または脱脂乳で溶解し、乳脂肪を添加後、均質処理を行って、原料乳を調製し、この原料乳に、乳酸菌スターターまたは酸性化剤、および凝乳酵素を添加してカードを形成させて得ることができる、耐熱性および耐水性を有することを特徴とするナチュラルチーズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−131537号公報
【特許文献2】特開2002−95410号公報
【特許文献3】特開平8−173032号公報
【特許文献4】特開2002−065158号公報
【特許文献5】特開2003−134997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のチーズフードは、本来のナチュラルチーズの有する自然な乳風味と独自の組織、および物性を欠くものとなっている。また、前記の耐熱保形性の有するナチュラルチーズであるハロウミの製造工程において、通常のナチュラルチーズの製造装置の他に、専用の加熱装置が必須である。そのため、その製造工程が煩雑となり、新たに設備投資する必要があることなどから、商業的な大量生産として実用化することは容易ではない。また、ハロウミでは、乳酸菌による発酵工程などが存在せず、原料乳のpHが中性のままであるため、衛生的な観点などを勘案し、全体の塩分が3〜4重量%になるまで加塩する必要がある。そのため、その塩分が高くなり、塩分の過剰摂取による健康への影響が懸念される。さらに、ハロウミの製造工程では、乳酸菌による熟成工程などが存在せず、いわゆる非熟成型のナチュラルチーズであるため、乳成分の熟成の風味を楽しめない。
【0009】
特許文献2の耐熱保形性を有するナチュラルチーズでは、乳タンパク質濃縮物(MPC)を溶解して、乳脂肪を添加するなどしており、本来のナチュラルチーズに比べて、高タンパク質、低乳糖などとなっている。そのため、牛乳を原料として製造したナチュラルチーズの組成とは大きく異なったものとなり、本来のナチュラルチーズの有する自然な乳風味や独自の組織、および物性を欠くものとなっている。
【0010】
特許文献3〜5には、ナチュラルチーズを調製するにあたり、その原料乳を凝乳させる前、または原料乳を凝乳させると同時に、トランスグルタミナーゼを添加して、ホエイの分離を抑制させる方法が記載されている。ただし、本発明者らによれば、この方法では、従来と品質が異なるホエイが発生することとなるため、ホエイの処理が煩雑になり、また、熟成中に離水が生じたり、食感が悪くなるなどの問題が見出されている。
【0011】
このような状況に対し、本発明は、ナチュラルチーズの本来の風味や組成を損なうことなく、耐熱保形性を有するナチュラルチーズおよびその製造方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、原料乳を凝乳させた後に、ホエイを排出した後のナチュラルチーズのチーズカードにトランスグルタミナーゼを添加(配合)して熟成させることにより、耐熱保形性を有するナチュラルチーズを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明の耐熱保形性を有するナチュラルチーズおよびその製造方法において、原料乳に水分および乳タンパク質の組成を調整することなく、耐熱保形性を有するナチュラルチーズを実現することができる。また、本発明の製造方法において、ホエイを排出するまでの工程は、通常(従来)の製造方法と同様の工程を採用することができ、本発明の原料乳の凝乳により発生するホエイは、通常のナチュラルチーズの製造方法により発生するホエイと同等の物性や品質(同量、同組成など)であるため、ホエイを再利用する工程が煩雑になる問題なども生じない。また、本発明の製造方法において、従来と品質が同じ通常のホエイが発生することとなるため、熟成中に離水が生じたり、食感が悪くなるなどの問題が起こらない。
【0014】
したがって、本発明は、以下に関する。
(1) 原料乳を凝乳させた後にホエイを排出してチーズカードを調製し、当該チーズカードにトランスグルタミナーゼを添加して熟成させることを含む、耐熱保形性を有するナチュラルチーズの製造方法。
(2) 凝乳酵素と乳酸菌を添加して凝乳させる、前記(1)に記載の製造方法。
(3) 熟成させることが、4〜20℃、1〜4ヶ月間で熟成させることである、前記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4) トランスグルタミナーゼを添加した後に、トランスグルタミナーゼが失活する温度および時間で加熱することを含まない、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5) トランスグルタミナーゼを添加した後かつ熟成する前に、トランスグルタミナーゼが失活する温度および時間で加熱することを含まない、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
【0015】
(6) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法により製造された、耐熱保形性を有するナチュラルチーズ。
(7) 150〜250℃、5〜20分間の乾熱加熱および/または100〜200℃、5〜40分間の湿熱加熱において保形性を有する、前記(6)に記載のナチュラルチーズ。
(8) 150〜250℃、5〜20分間の乾熱加熱において50%以上の保形性、および/または100〜200℃、5〜40分間の湿熱加熱において40%以上の保形性を有する、前記(6)または(7)に記載のナチュラルチーズ。
(9) 前記(6)〜(8)のいずれかに記載のナチュラルチーズを含む、加熱調理食品。
(10) 前記(6)〜(8)のいずれかに記載のナチュラルチーズを内包して含む、加熱調理食品。
(11) 加熱調理食品用である、前記(6)〜(8)のいずれかに記載のナチュラルチーズ。
【0016】
さらに、本発明は、次の通りとなる。
[1]原料乳を凝乳させた後にホエイを排出してチーズカードを調製し、当該チーズカードにトランスグルタミナーゼを添加し、熟成させることを特徴とする、耐熱保形性を有するナチュラルチーズの製造方法。
[2]凝乳酵素と乳酸菌を添加して凝乳させることを特徴とする、前記[1]に記載の耐熱保形性を有するナチュラルチーズの製造方法、
[3]ナチュラルチーズが熟成型ナチュラルチーズであることを特徴とする、前記[1]または[2]に記載の耐熱保形性を有するナチュラルチーズの製造方法、
[4]ナチュラルチーズが、150〜250℃にて5〜20分間の乾熱下での焼成を行い、保形性を有すること、および/または100〜200℃にて5〜40分間の湿熱下での焼成を行い、保形性を有することを特徴とする、前記[1]〜[3]に記載の耐熱保形性を有するナチュラルチーズの製造方法、
【0017】
[5]ナチュラルチーズが、150〜250℃にて5〜20分間の乾熱下での焼成を行い、50%以上の保形性を有すること、および/または100〜200℃にて5〜40分間の湿熱下での焼成を行い、40%以上の保形性を有することを特徴とする、前記[1]〜[3]に記載の耐熱保形性を有するナチュラルチーズの製造方法、
[6]熟成が4〜20℃で1〜4ヶ月間の条件であることを特徴とする、前記[1]〜[5]に記載の耐熱保形性を有するナチュラルチーズの製造方法、
[7]前記[1]〜[6]に記載の製造方法で製造された耐熱保形性を有するナチュラルチーズ。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、原料乳を凝乳させた後にホエイを排出してチーズカードを調製し、当該チーズカードにトランスグルタミナーゼを添加して熟成させることを特徴とし、フライパンやオーブンの加熱などで調理・加工したときに、溶融や変形することなく、耐熱保形性が良好な新規のナチュラルチーズおよびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明を詳細に説明するが、本発明は、個々の形態には限定されない。
本発明において「ナチュラルチーズ」とは、乳、バターミルク、脱脂乳、クリームまたはこれらを混合したもののほとんど全部、もしくは一部のタンパク質を酵素その他の凝固剤により凝固させた凝乳から、ホエイの一部を除去したもの、またはこれらを熟成したものをいう。
本発明において「原料乳」とは、原料として用いられる乳を意味し、典型的には、未殺菌の生乳のことをいい、牛乳、羊乳、水牛乳、山羊乳などの獣乳を用いることができる。そして、本発明において、実際に目的とするナチュラルチーズに応じて、原料乳の組成を調整することができる。例えば、クリームセパレーターなどを用いて、未殺菌の生乳から脱脂乳およびクリームを分離し、これら脱脂乳およびクリームを様々な混合比率で配合して、乳脂肪の含量を調整することができる。また、公知の分離膜などを用いて、ミネラル、ビタミン、乳糖、乳タンパク質、乳脂肪などを分離し、これらの成分を混合比率で配合して、これらの成分の含量を調整することもできる。また、生乳に、バターミルク、脱脂乳、クリームなどを混合し、乳脂肪の含量、無脂乳固形分の含量を調整することもできる。
【0020】
本発明の一態様において、前記の通り、原料乳の乳脂肪の含量を調整することができる。原料乳の乳脂肪分の含量は、原料乳の全固形分中の乳脂肪分の割合で表すことができる。例えば、原料乳の全固形分中の乳脂肪分の割合が低ければ、いわゆる低脂肪タイプのナチュラルチーズとなり、原料乳の全固形分中の乳脂肪分の割合が高ければ、いわゆる高脂肪タイプのナチュラルチーズとなる。原料乳の全固形分中の乳脂肪分の割合は、特に制限されないが、例えば、0〜80重量%、0〜70重量%、0.5〜65重量%、0.5〜60重量%、1〜55重量%、2〜55重量%、5〜55重量%、10〜55重量%、15〜55重量%、20〜55重量%、25〜55重量%、30〜55重量%、35〜55重量%である。
【0021】
本発明の一態様において、無脂肪タイプのナチュラルチーズの場合には、原料乳の全固形分中の乳脂肪分の割合は0重量%、低脂肪タイプのナチュラルチーズの場合には、原料乳の全固形分中の乳脂肪分の割合の下限値は0.5重量%、好ましくは1重量%、より好ましくは2重量%、さらに好ましくは5重量%であり、上限値は20重量%、好ましくは15重量%、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは5重量%である。このとき、原料乳の全固形分中の乳脂肪分の割合の下限値と上限値とを適宜組み合わせて設定することができる。本発明の一態様において、通常の脂肪含量のナチュラルチーズの場合には、原料乳の全固形分中の乳脂肪分の割合の下限値は20重量%、好ましくは25重量%、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは35重量%であり、上限値は80重量%、好ましくは70重量%、より好ましくは65重量%、さらに好ましくは60重量%、さらにより好ましくは55重量%である。このとき、原料乳の全固形分中の乳脂肪分の割合の下限値と上限値とを適宜組み合わせて設定することができる。
【0022】
本発明の一態様において、一般的に知られた原料乳の殺菌方法により、原料乳を殺菌処理してもよい。このとき、一般的に知られたナチュラルチーズの製造方法で用いられる低温殺菌方法により、原料乳を殺菌処理すると、殺菌処理する前の原料乳に存在するリパーゼを失活させながら、殺菌処理する前の原料乳に存在する一般細菌などの生菌数を低減できて、品質の良好なナチュラルチーズを製造する上で好ましい。
【0023】
本発明において「凝乳」とは、原料乳を固めることをいい、一般的に知られたチーズカードを形成させる作用を包含する。このとき、本発明において、原料乳を凝乳する方法では、公知の方法を使用することができる。例えば、原料乳にレンネットなどの凝乳酵素を添加(配合)する方法、原料乳のpHを調整してから加熱する方法、原料乳に乳酸菌を添加し、乳酸菌により発酵して、原料乳のpHを低下させ、原料乳を凝集させる方法などを使用することができる。そして、本発明において、原料乳にレンネットなどの凝乳酵素を添加(配合)する方法、原料乳のpHを調整してから加熱する方法、原料乳に乳酸菌を添加し、乳酸菌により発酵して、原料乳のpHを低下させ、原料乳を凝集させる方法では、これらを単独で使用してもよいし、これらを併用してもよい。ここで、乳酸菌は、ナチュラルチーズで使用することのできる乳酸菌であればよく、その属および種は任意であり、例えば、ラクチス菌、クレモリス菌、ブルガリア菌、サーモフィラス菌などの公知の乳酸菌を挙げることができる。
【0024】
本発明において「チーズカード」とは、例えば、原料乳の凝乳により分離したホエイの全部または一部を排出して得られるものをいう。このとき、本発明において、ホエイを排出する方法として、一般的に知られたナチュラルチーズの製造方法で用いられる方法を用いることができる。また、ホエイを排出する程度では、その後の熟成工程に耐えられる程度であれば、特に制限されないが、一般的に知られたナチュラルチーズの製造方法で用いられる程度と同量に設定することができる。本発明において「ホエイ」とは、例えば、原料乳の凝乳により生成した凝固物を分離して得られるものをいい、ホエイタンパク質などを含む水分をいう。本発明において「ホエイを排出する」とは、例えば、原料乳の凝乳により生成した凝固物とホエイが共存している状態から、ホエイを排出させることをいう。
【0025】
本発明では、原料乳を凝乳させた後に、ホエイを排出させたチーズカードに、トランスグルタミナーゼを添加することを特徴とする。そのため、この排出されたホエイでは、本発明以外の一般的に知られたナチュラルチーズの製造により生成されるホエイと、その生成量および組成が同じであり、その後に、従来と同様にして、効率良くホエイを加工することができる。ここで、ホエイを加工する方法では、公知の方法を使用することができる。例えば、ホエイパウダー、脱塩ホエイパウダー、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質単離物(WPI)、パーミエイト、脱乳糖パーミエイト、乳糖へ加工する方法を使用することができる。
【0026】
トランスグルタミナーゼは一般的に、タンパク質またはペプチド鎖内のグルタミン残基のγ−カルボキシアミド基と一級アミンとのアシル転移反応を触媒し、一級アミンがタンパク質のリジン残基である場合には、ε−(γ−Glu)−Lys架橋結合を形成させる作用があることが知られている。
【0027】
トランスグルタミナーゼを添加し、トランスグルタミナーゼを作用させたナチュラルチーズでは、これまでに、原料乳にトランスグルタミナーゼを添加し、ホエイの分離および排出を抑制して、原料乳を基準とした収率を向上することが知られていた。これに対して、本発明では、あえてホエイを分離および排出し、このホエイを排出した後のチーズカードにトランスグルタミナーゼを添加して、その後の熟成工程においてトランスグルタミナーゼを作用させることにより、従来のナチュラルチーズの組成(例えば、水分量)や品質などを維持しながら、ナチュラルチーズの耐熱保形性を向上することができた。
【0028】
一般的なナチュラルチーズの製造方法は、
(1)原料乳を凝集して、凝固物およびホエイを生成する工程、
(2)凝固物を切断し、凝固物(の内部)からホエイを分離する工程、
(3)ホエイを排出する工程、等を含む。
【0029】
これまでに知られている上述のナチュラルチーズの製造方法では、ホエイを排出する前、すなわち、上記工程(1)または(2)、もしくは、これらの直前または直後に、トランスグルタミナーゼを使用していた。これに対して、本発明では、ホエイを排出した後、すなわち、上記工程(3)の後に、トランスグルタミナーゼを使用する。なお、一般的な熟成型ナチュラルチーズの製造方法では、上記工程(3)の後に、チーズカードを熟成する工程を含む。そこで、本発明では、熟成型ナチュラルチーズを製造するためには、チーズカードを熟成する工程の前に、トランスグルタミナーゼを使用することとなる。
【0030】
本発明の好ましい一態様において、トランスグルタミナーゼを添加した後、トランスグルタミナーゼが失活するような温度および時間で加熱する工程を含まないことが好ましい。これにより、最終製品や中間製品の熟成型ナチュラルチーズにおいて、トランスグルタミナーゼの活性が残存している。また、本発明の好ましい一態様において、トランスグルタミナーゼを添加した後、チーズカードを熟成する工程が完了する前に、トランスグルタミナーゼが失活するような温度および時間で加熱する工程を含まないことが好ましい。ここで、チーズカードを熟成する工程が完了した後に、トランスグルタミナーゼが失活するような温度および時間で加熱する工程を含むのであれば、最終製品や中間製品の熟成型ナチュラルチーズにおいて、トランスグルタミナーゼの活性が残存していなくても、熟成期間において、トランスグルタミナーゼが十分に作用し、最終製品や中間製品の熟成型ナチュラルチーズにおいて、耐熱保形性が良好に付与されているためである。なお、チーズカードを熟成する工程が完了するとは、最終製品や中間製品の熟成型ナチュラルチーズにおいて、所望の熟成風味が得られている段階を意味する。
【0031】
ここで、「トランスグルタミナーゼが失活するような温度および時間で加熱する」とは、トランスグルタミナーゼの種類や状態によって条件が異なり、商品の情報または当該技術分野における通常の実験により、それを容易に理解することができる。例えば、KS−CT(味の素(株)製)の場合には、65℃、2時間以上の加熱で失活し、より高温で短時間の加熱では、例えば、72℃以上、15秒以上の加熱で失活する。
本発明において、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼの作用があるものであれば、その由来、酵素活性、精製度を任意に選択して使用することができる。例えば、市販のトランスグルタミナーゼ製剤を使用することができる。
【0032】
本発明において、チーズカードへトランスグルタミナーゼを添加する方法では、チーズカードにトランスグルタミナーゼが略均一に分散または混合されていればよく、その具体的な手段は限定されないが、例えば、チーズカードの粒に高濃度のトランスグルタミナーゼを添加してから、タンク(チーズバット)などで撹拌する方法、チーズカードの粒に高濃度のトランスグルタミナーゼを噴霧する方法、チーズカードの粒と高濃度のトランスグルタミナーゼをインライン(配管中)で流動させる方法などの一般的に知られた分散または混合する方法を用いることができる。
【0033】
本発明において、トランスグルタミナーゼは、チーズカードを形成した後に添加されることが好ましい。チーズカードを形成する前、例えば、原料乳が凝乳する前にトランスグルタミナーゼが添加される、または原料乳が凝乳している途中にトランスグルタミナーゼが添加されると、チーズカードを形成する際に、チーズカードからホエイが十分に分離および排出されず、チーズカードを熟成する工程において離水を起こし、ナチュラルチーズ本来の品質を確保しにくいためである。
【0034】
本発明の好ましい一態様において、原料乳を凝乳して得られた凝固物をカッティングし、ホエイを十分に排出した後に、この得られたチーズカードの粒にトランスグルタミナーゼを添加する。また、本発明の好ましい一態様において、ホエイのpHが5.8〜6.4、好ましくは5.9〜6.3、より好ましくは6.0〜6.2程度となった時点で、ホエイを排出する。
【0035】
本発明において、トランスグルタミナーゼの添加量は、任意であり、商品の情報または当該技術分野における通常の実験により、それを容易に調整することができる。ここで、例えば、トランスグルタミナーゼ濃度が1重量%、かつトランスグルタミナーゼ活性が86〜130U/gのトランスグルタミナーゼ製剤を使用する場合に、トランスグルタミナーゼの添加量の下限値は、本発明の効果が得られる最低限の添加量となり、チーズカードの重量比(カード粒比)として、トランスグルタミナーゼ濃度が0.0002重量%以上、0.0003重量%以上、0.0004重量%以上、0.0005重量%以上、0.0006重量%以上、0.0007重量%以上、0.0008重量%以上、0.0009重量%以上、0.001重量%以上、0.0012重量%以上、0.0014重量%以上、0.0016重量%以上、0.0018重量%以上、0.002重量%以上であることが好ましい。このとき、トランスグルタミナーゼの効果を十分に発揮させる観点から、トランスグルタミナーゼの添加量の下限値は、上述の高い数値であることが好ましい。
【0036】
一方、例えば、トランスグルタミナーゼ濃度が1重量%、かつトランスグルタミナーゼ活性が86〜130U/gのトランスグルタミナーゼ製剤をチーズカードに添加する場合に、トランスグルタミナーゼの添加量の上限値は、本発明の効果が得られる最大限の添加量となり、チーズカードの重量比(カード粒比)として、トランスグルタミナーゼ濃度が10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下、0.008重量%以下、0.006重量%以下、0.005重量%以下、0.004重量%以下、0.003重量%以下である。このとき、トランスグルタミナーゼの添加量が多すぎると、ナチュラルチーズが非常に硬くなる傾向があるため、耐熱保形性の効果に加えて、食感などを適度に調整する観点から、トランスグルタミナーゼの添加量の上限値は、上述の低い数値であることが好ましい。なお、これらの下限値および上限値は適宜、それぞれを組み合わせて設定することができる。また、トランスグルタミナーゼ濃度、およびトランスグルタミナーゼ活性が異なるトランスグルタミナーゼ製剤を使用する場合に、その必要なトランスグルタミナーゼの添加量は、それぞれの活性が同等となるように計算して設定することが可能である。
【0037】
本発明において、トランスグルタミナーゼ濃度が1重量%、かつトランスグルタミナーゼ活性が86〜130U/gのトランスグルタミナーゼ製剤を使用する場合に、例えば、トランスグルタミナーゼの添加量は、チーズカードの重量比(カード粒比)として、具体的には、トランスグルタミナーゼ濃度が0.0002〜10重量%、0.0003〜10重量%、0.0004〜5重量%、0.0005〜5重量%、0.0006〜1重量%、0.0007〜1重量%、0.0008〜0.1重量%、0.0009〜0.05重量%、0.001〜0.01重量%、0.0012〜0.008重量%、0.0014〜0.006重量%、0.0016〜0.005重量%、0.0018〜0.004重量%、0.002〜0.003重量%であることが好ましい。
【0038】
本発明において、必要に応じて、チーズカードに加塩することができる。このとき、チーズカードに加塩する時期は、チーズカードにトランスグルタミナーゼを添加する時期と同時でもよいし、チーズカードにトランスグルタミナーゼを添加した後に、チーズカードを成型して熟成する前でもよい。また、チーズカードに加塩する方法は、ブライン(塩水)へ浸漬させる方法などの公知の方法を用いることができる。
【0039】
本発明の好ましい一態様において、チーズカードを熟成する工程を設けて、熟成型ナチュラルチーズを製造することができる。このとき、本発明において、チーズカードを熟成するとは、通常のナチュラルチーズにおける熟成を意味し、熟成型のナチュラルチーズの製造方法における通常の公知の条件を用いることができる。そして、熟成型のナチュラルチーズにおいて公知の条件とは、例えば、温度が4〜20℃、湿度が50〜80%に保持することである。ここで、本発明において、実際に目的とする熟成型ナチュラルチーズの製造方法における公知の条件を用いることができ、例えば、4℃、7℃、15℃、20℃などの適切な温度を下限値および上限値として、それぞれ選択して設定することができる。また、本発明において、実際に目的とする熟成型ナチュラルチーズの製造方法における公知の条件を用いることができ、例えば、50%、60%、70%、80%、90%などの適切な湿度を下限値および上限値として、それぞれ選択して設定することができる。
【0040】
本発明において、チーズカードを熟成する期間は、実際に目的とする熟成型ナチュラルチーズの製造方法における公知の条件を用いることができる。つまり、本発明の効果である耐熱保形性が得られれば、チーズカードを熟成する期間は、特に限定されないが、トランスグルタミナーゼの作用が十分に発揮され、ナチュラルチーズの耐熱保形性を向上する観点から、1日以上、好ましくは2日以上、より好ましくは1週間以上、さらに好ましくは2週間以上、さらに好ましくは1ヶ月以上である。また、チーズカードを熟成する期間は、ナチュラルチーズの熟成風味を得る観点から、1年以上、好ましくは1.5年以上、より好ましくは2年以上、さらに好ましくは3年以上である。
【0041】
本発明において、チーズカードを熟成する期間は、本発明の効果である耐熱保形性が得られれば、特に限定されないが、具体的には、1日間〜2年間、2日間〜1年間、1週間〜6ヶ月間、2週間〜4ヶ月間、1ヶ月間〜4ヶ月間であることが好ましい。つまり、本発明において、チーズカードを熟成する条件および期間は、一般的なナチュラルチーズの製造方法で用いられる条件および期間を採用することができ、適宜、それぞれを選択して設定することができる。本発明の好ましい一態様において、熟成型ナチュラルチーズを製造するために、4〜20℃、1ヶ月以上、より好ましくは4〜20℃、1〜4ヶ月間で熟成することが好ましい。
【0042】
本発明は、熟成工程を要する全部のナチュラルチーズに応用することができる。すなわち、本発明は、ゴーダ、チェダー、パルメザンなどの熟成型ナチュラルチーズ、カマンベール、ブリーなどの白カビチーズ、ゴルゴンゾーラ、ロックフォールなどの青カビチーズを例示できるが、これら例示した以外の熟成工程を要するナチュラルチーズの全部に応用することができる。したがって、本発明のナチュラルチーズの製造方法は、熟成工程を要するナチュラルチーズの製造方法に用いることができる。
【0043】
本発明のナチュラルチーズには、耐熱保形性に大きく影響しない限り、製品の設計などを勘案し、必要に応じて、任意の食品原料および/または食品添加物を添加することができる。
【0044】
本発明のナチュラルチーズは、耐熱保形性を有する。本発明において「耐熱保形性を有する」とは、後述の測定法(試験法)によって評価(判断)した結果が所定値以上であることをいう。すなわち、この耐熱保形性の測定法では、例えば、試験例に示すように、ナチュラルチーズを13mm四方に切り出し、この切り出したナチュラルチーズを設置し、一定条件で加熱(焼成)し、加熱後に冷却したナチュラルチーズの高さを測定し、加熱前のナチュラルチーズの高さ(13mm)を基準にして、以下の計算式に基づき、耐熱保形性を算出する。
(耐熱保形性)(%)=(加熱後のチーズの高さ)(mm)/(加熱前のチーズの高さ)(13mm)×100
【0045】
この耐熱保形性の測定法では、乾熱下と湿熱下の2種類の焼成(加熱)を利用することができる。このとき、乾熱下の焼成(乾熱加熱時)の耐熱保形性では、アルミトレーにアルミ箔を敷き、ナチュラルチーズを切り出して設置する。そして、220℃、3分間で加熱した後に、室温(約20℃)、3分間で放冷して評価する。また、湿熱下の焼成(湿熱加熱時)の耐熱保形性では、シャーレに濾紙を敷き、水1mlを滴下して、ナチュラルチーズを切り出して設置してから、シャーレの蓋を閉じる。そして、130℃、20分間で加熱した後に、室温(約20℃)、3分間で放冷して評価する。なお、本発明の耐熱保形性では、例えば、乾熱加熱時に50%以上、湿熱加熱時に40%以上であれば、耐熱保形性を有すると評価することができる。そこで、本発明の好ましい一態様において、ナチュラルチーズの耐熱保形性は、乾熱加熱時に50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%である。また、本発明の好ましい一態様において、ナチュラルチーズの耐熱保形性は、湿熱加熱時に40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%である。
【0046】
本発明において、乾熱下の焼成の耐熱保形性は、チーズをパンなどの表面に置いてオーブンなどで焼成した場合を想定している。すなわち、本発明において、乾熱下の耐熱保形性の測定(評価)では、チーズを加熱する温度は、例えば、150〜250℃、170〜250℃、180〜250℃、200〜250℃、200〜240℃、210〜230℃である。そして、チーズを加熱する保持時間は、例えば、5〜20分間、5〜18分間、7〜17分間、8〜16分間、9〜15分間、10〜14分間、11〜13分間である。なお、これら加熱する温度および保持時間は、チーズの用途などに合わせて適宜、それぞれを組み合わせて設定することができる。
【0047】
本発明において、乾熱下の焼成の耐熱保形性の測定では、チーズを加熱する温度は、高温の耐熱保形性を効果的に評価する観点から、例えば、150℃以上、好ましくは170℃以上、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上、さらに好ましくは210℃以上であり、実際の調理温度を想定すると、例えば、250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下であり、これらの下限値および上限値は適宜、それぞれを組み合わせて設定することができる。また、本発明において、乾熱下の焼成の耐熱保形性の測定では、チーズを加熱する保持時間は、チーズを加熱する温度に依存して適宜選択して設定できるが、実際の調理温度を想定すると、例えば、5分以上、好ましくは7分以上、より好ましくは8分以上、さらに好ましくは9分以上、さらに好ましくは10分以上、さらに好ましくは11分以上であり、短時間で測定する観点から、例えば、20分以下、好ましくは18分以下、より好ましくは17分以下、さらに好ましくは16分以下、さらに好ましくは15分以下、さらに好ましくは14分以下、さらに好ましくは13分以下であり、これらの下限値および上限値は適宜、それぞれを組み合わせて設定することができる。
【0048】
本発明のナチュラルチーズは、上述したような温度および保持時間において、乾熱下の焼成の耐熱保形性を有するので、ピザ、グラタンなどのように、加熱調理食品などの表面にナチュラルチーズを載せて加熱する材料として使用することに適している。したがって、本発明は、本発明のナチュラルチーズを含む加熱調理食品にも関する。ここで、加熱調理とは、対象物の温度を上昇させる調理であれば、特に限定されず、焼く、煮る、蒸す、茹でる、炒める、炊く、揚げるなどの調理を挙げることができる。本発明のナチュラルチーズは、乾熱下の焼成の耐熱保形性を有することから、焼く加熱調理食品に用いることに適している。
【0049】
本発明において、湿熱下の焼成の耐熱保形性は、チーズをパンなどに包餡してから、オーブンなどで焼成した場合を想定している。すなわち、湿熱下の焼成の耐熱保形性の測定(評価)では、チーズを加熱する温度は、例えば、100〜200℃、100〜180℃、100〜170℃、100〜160℃、110〜150℃、120〜140℃である。そして、チーズを加熱する保持時間は、例えば、5〜40分間、10〜30分間、12〜28分間、15〜25分間、16〜24分間、17〜23分間、18〜22分間である。なお、これら加熱する温度および焼成時間は、チーズの用途に合わせて適宜、それぞれを組み合わて設定することができる。
【0050】
本発明の一態様において、湿熱下の焼成の耐熱保形性の測定では、チーズを加熱する温度は、高温の耐熱保形性を効果的に評価する観点から、例えば、100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上であり、実際の調理温度を想定すると、例えば、200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下であり、これらの下限値および上限値は適宜、それぞれを組み合わせて設定することができる。また、本発明において、湿熱下の焼成の耐熱保形性の測定では、チーズを加熱する保持時間は、チーズを加熱する温度に依存して適宜選択して設定できるが、実際の調理温度を想定すると、例えば、5分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは12分以上、さらに好ましくは15分以上、さらに好ましくは16分以上、さらに好ましくは17分以上であり、さらに好ましくは18分以上であり、短時間で測定する観点から、例えば、28分以下、好ましくは25分以下、より好ましくは24分以下、さらに好ましくは23分以下、さらに好ましくは22分以下であり、これらの下限値および上限値は適宜、それぞれを組み合わせて設定することができる。
【0051】
本発明のナチュラルチーズは、上述したような温度および保持時間において、湿熱下の焼成の耐熱保形性を有するので、例えば、パン、まんじゅう、ギョウザ、シュウマイ、春巻きなどのように、加熱調理食品などの内部にナチュラルチーズを包餡して加熱する材料として使用することに適している。したがって、本発明は、本発明のナチュラルチーズを内包して含む加熱調理食品にも関する。ここで、上述した通り、加熱調理とは、対象物の温度を上昇させる調理であれば、特に限定されず、焼く、煮る、蒸す、茹でる、炒める、炊く、揚げるなどの調理を挙げることができる。本発明のナチュラルチーズは、湿熱下の焼成の耐熱保形性を有することから、煮る、蒸す、茹でる加熱調理食品に用いることに適している。
【0052】
本発明の一形態は、150〜250℃、5〜20分間の乾熱下で焼成して耐熱保形性を有すること、および/または100〜200℃、5〜40分間の湿熱下で焼成して耐熱保形性を有することを特徴とする、耐熱保形性を有するナチュラルチーズの評価方法である。
【0053】
また、本発明の一形態は、150〜250℃、5〜20分間の乾熱で焼成して、50%以上の耐熱保形性を有すること、および/または100〜200℃、5〜40分間の湿熱下で焼成して、40%以上の耐熱保形性を有することを特徴とする、耐熱保形性を有するナチュラルチーズの評価方法である。
【0054】
本発明は、ホエイを分離して排出して得られたチーズカードに、トランスグルタミナーゼを添加することを特徴とし、トランスグルタミナーゼを添加する以外では、一般的なナチュラルチーズ、特に、一般的な熟成型ナチュラルチーズの製造工程を利用することができ、トランスグルタミナーゼ以外の原料では、一般的なナチュラルチーズの製造方法で用いられる原料を利用することができる。
【0055】
実施例
以下では、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これにより限定されない。
【0056】
[試験例1]
製品ナチュラルチーズの固形分中の脂肪濃度が45重量%となるように、原料乳を調製し、63℃、30分間で加熱殺菌した後に、33℃に冷却してから、塩化カルシウム(0.03重量%)を添加した。次に、これらの原料乳に、チーズ製造用の市販スターター(L. Lactis ダニスコ社製)を0.1%添加した。これらスターターを添加した後に、カーフレンネット(力価:15000ユニット)を0.003重量%で添加し、原料乳を凝固させた。この凝固物をカッティングしホエイのpHが6.1〜6.2となるまで攪拌して、ホエイを排出しカード粒を得た。
【0057】
次に、このカード粒に食塩を所定量で添加してから、20重量%のトランスグルタミナーゼ製剤水溶液をカード粒比1重量%で添加し、型詰めして圧搾し、ナチュラルチーズ(水分40.4重量%、乳脂肪分45.3重量%、塩分1.4重量%、pH5.23)を製造した。トランスグルタミナーゼ製剤としてはKS−CT(味の素(株)製:トランスグルタミナーゼ濃度1%、トランスグルタミナーゼ活性86〜130U/g)を使用した。トランスグルタミナーゼは、チーズカードに対して(カード粒比)0.002重量%添加した。また、同時にトランスグルタミナーゼを添加しないナチュラルチーズを上記と同様の方法で試作した。
これらのナチュラルチーズを4、7、12または20℃で熟成し、熟成4ヶ月間における耐熱保形性を測定した。ここで、トランスグルタミナーゼを添加した系を実施例1(4℃熟成)、実施例2(7℃熟成)、実施例3(12℃熟成)、実施例4(20℃熟成)と称し、トランスグルタミナーゼを添加しない系を比較例1(4℃熟成)、比較例2(12℃熟成)と称した。
【0058】
[耐熱保形性の評価]
耐熱保形性は以下の方法で測定し、数値化を行った。耐熱保形性は乾熱加熱と湿熱加熱の両方を測定した。
[乾熱加熱]
ナチュラルチーズを13mm×13mm×13mmのサンプルに切り出す。このサンプルの1種類について3個ずつで測定する。オーブン(SANSYO DRYING OVEN SDW27)を220℃に設定する。アルミトレーにアルミ箔を敷き、サンプルの3個を横一列に等間隔で並べる。アルミトレーごとでサンプルの3個をオーブンに入れて12分間で加熱する。加熱後にアルミトレーごとでサンプルの3個をオーブンから取り出して室温(常温)に置いて3分間で放冷する。放冷後にサンプルの高さをノギスで測定して記録する。加熱前と加熱後のサンプルの高さから、耐熱保形性を計算する。
ここで、耐熱保形性を以下の通りに算出し、乾熱加熱時の耐熱保形性が50%以上の場合、耐熱保形性があると評価した。
耐熱保形性(%)=加熱後のチーズの高さ/加熱前のチーズの高さ×100
【0059】
[湿熱加熱]
ナチュラルチーズを13mm×13mm×13mmのサンプルに切り出す。このサンプルの1種類について3個ずつで測定する。オーブン(SANSYO DRYING OVEN SDW27)を130℃に設定する。ガラスシャーレに濾紙(TOYO 2番 70mm)を敷き、濾紙に水1mlを塗布してから、サンプルの3個を三角形状に等間隔で並べてから、ガラスシャーレの蓋を閉じる。ガラスシャーレごとでサンプルの3個をオーブンに入れて20分間で加熱する。加熱後にガラスシャーレごとでサンプルの3個をオーブンから取り出して室温(常温)に置いて3分間で放冷する。放冷後にサンプルの高さをノギスで測定して記録する。加熱前と加熱後のサンプルの高さから、耐熱保形性を計算する。
ここで、耐熱保形性を以下の通りに算出し、湿熱加熱時の耐熱保形性が40%以上の場合、耐熱保形性があると評価した。
耐熱保形性(%)=加熱後のチーズの高さ/加熱前のチーズの高さ×100
【0060】
[耐熱保形性の評価]
表1〜2の通り、熟成後に耐熱保形性を測定した結果、トランスグルタミナーゼを0.002%添加した実施例1〜4では、熟成4ヶ月後で、耐熱保形性を有していた。一方、トランスグルタミナーゼを添加しない比較例1〜2では、熟成4ヶ月後で、耐熱保形性を有していなかった。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
[試験例2]
製品ナチュラルチーズの固形分中の脂肪濃度が47重量%となるように、原料乳を調製し、63℃、30分間で加熱殺菌した後に、33℃に冷却してから、塩化カルシウム(0.03重量%)を添加した。次に、これらの原料乳に、チーズ製造用の市販スターター(L. Lactis ダニスコ社製)を0.1%添加した。これらスターターを添加した後に、カーフレンネット(力価:15000ユニット)を0.003重量%で添加し、原料乳を凝固させた。この凝固物をカッティングしホエイのpHが6.1〜6.2となるまで攪拌して、ホエイを排出しカード粒を得た。
【0064】
次に、このカード粒に食塩を所定量で添加してから、20重量%のトランスグルタミナーゼ製剤水溶液をカード粒比1重量%で添加し、型詰めして圧搾し、ナチュラルチーズ(水分39.2重量%、乳脂肪分47.1重量%、塩分1.45重量%、pH5.39)を製造した。トランスグルタミナーゼ製剤としてはKS−CT(味の素(株)製:トランスグルタミナーゼ濃度1%、トランスグルタミナーゼ活性86〜130U/g)を使用した。
トランスグルタミナーゼは、カード粒比で0.002重量%添加した。また、同時にトランスグルタミナーゼを添加しないナチュラルチーズを上記と同様の方法で試作した。
これらのナチュラルチーズを12℃で熟成し、熟成1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間における耐熱保形性を試験例1と同様の方法で測定した。ここで、トランスグルタミナーゼを添加した系を実施例5(12℃熟成)と称し、トランスグルタミナーゼを添加しない系を比較例3(12℃熟成)と称した。
【0065】
[耐熱保形性の評価]
表3〜4の通り、熟成後に耐熱保形性を測定した結果、トランスグルタミナーゼを0.002%添加した実施例5は熟成1ヶ月後から耐熱保形性を有していた。一方、トランスグルタミナーゼを添加しない比較例3は耐熱保形性を有していなかった。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
[試験例3]
製品ナチュラルチーズの固形分中の脂肪濃度が51重量%となるように、原料乳を調製し、63℃、30分間で加熱殺菌した後に、33℃に冷却してから、塩化カルシウム(0.03重量%)を添加した。次に、これらの原料乳に、チーズ製造用の市販スターター(L.Lactis ダニスコ社製)を0.1%添加した。これらスターターを添加した後に、カーフレンネット(力価:15000ユニット)を0.003重量%で添加し、原料乳を凝固させた。この凝固物をカッティングしホエイのpHが6.1〜6.2となるまで攪拌して、ホエイを排出しカード粒を得た。
【0069】
次に、このカード粒に食塩を所定量で添加してから、20重量%のトランスグルタミナーゼ製剤水溶液をカード粒比1重量%で添加し、型詰めして圧搾し、ナチュラルチーズ(水分41.9重量%、乳脂肪分51.7重量%、塩分1.3重量%、pH5.27)を製造した。トランスグルタミナーゼ製剤としてはKS−CT(味の素(株)製:トランスグルタミナーゼ濃度1%、トランスグルタミナーゼ活性86〜130U/g)を使用した。トランスグルタミナーゼは、カード粒比で0.002重量%添加した。また、同時にトランスグルタミナーゼを添加しないナチュラルチーズを上記と同様の方法で試作した。
これらのナチュラルチーズを12℃で熟成し、熟成1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間における耐熱保形性を試験例1と同様の方法で測定した。ここで、トランスグルタミナーゼを添加した系を実施例6(12℃熟成)と称し、トランスグルタミナーゼを添加しない系を比較例4(12℃熟成)と称した。
【0070】
[耐熱保形性の評価]
表5〜6の通り、熟成後に耐熱保形性を測定した結果、トランスグルタミナーゼを0.002重量%添加した実施例6は熟成1ヶ月後から耐熱保形性を有していた。一方、トランスグルタミナーゼを添加しない比較例4は耐熱保形性を有していなかった。
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
[試験例4]
製品ナチュラルチーズの固形分中の脂肪濃度が2.8重量%となるように、原料乳を調製し、63℃、30分間で加熱殺菌した後に、33℃に冷却してから、塩化カルシウム(0.03重量%)を添加した。次に、これらの原料乳に、チーズ製造用の市販スターター(L. Lactis ダニスコ社製)を0.1%g添加した。これらスターターを添加した後に、カーフレンネット(力価:15000ユニット)を0.003重量%で添加し、原料乳を凝固させた。この凝固物をカッティングしホエイのpHが6.1〜6.2となるまで攪拌して、ホエイを排出しカード粒を得た。
次に、このカード粒に食塩を所定量で添加してから、20重量%のトランスグルタミナーゼ製剤水溶液をカード粒比1重量%で添加し、型詰めして圧搾し、ナチュラルチーズ(水分48.8重量%、乳脂肪分2.81重量%、塩分1.33重量%、pH5.28)を製造した。トランスグルタミナーゼ製剤としてはKS−CT(味の素(株)製:トランスグルタミナーゼ濃度1%、トランスグルタミナーゼ活性86〜130U/g)を使用した。
【0074】
トランスグルタミナーゼは、カード粒比で0.002重量%添加した。また、同時にトランスグルタミナーゼを添加しないナチュラルチーズを上記と同様の方法で試作した。
これらのナチュラルチーズを12℃で熟成し、熟成1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間における耐熱保形性を試験例1と同様の方法で測定した。ここで、トランスグルタミナーゼを添加した系を実施例7(12℃熟成)と称し、トランスグルタミナーゼを添加しない系を比較例5(12℃熟成)と称した。
【0075】
[耐熱保形性の評価]
表7〜8の通り、熟成後に耐熱保形性を測定した結果、トランスグルタミナーゼを0.002%添加した実施例7は熟成1ヶ月後から耐熱保形性を有していた。一方、トランスグルタミナーゼを添加しない比較例5は、実施例7と比較して耐熱保形性を有していなかった。
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
[試験例5]
製品ナチュラルチーズの固形分中の脂肪濃度が40重量%となるように、原料乳を調製し、63℃、30分間で加熱殺菌した後に、33℃に冷却してから、塩化カルシウム(0.03重量%)を添加した。次に、これらの原料乳に、チーズ製造用の市販スターターを添加した。これらスターターを添加した後に、カーフレンネット(力価:15000ユニット)を0.003重量%で添加し、原料乳を凝固させた。この凝固物をカッティングしホエイのpHが6.1〜6.2となるまで攪拌して、ホエイを排出しカード粒を得た。
【0079】
次に、このカード粒に食塩を所定量で添加してから、20重量%のトランスグルタミナーゼ製剤水溶液をカード粒比1重量%で添加し、型詰めして圧搾し、ナチュラルチーズ(水分45.5重量%、乳脂肪分40.0重量%、塩分1.43重量%、pH5.30)を製造した。トランスグルタミナーゼ製剤としてはKS−CT(味の素(株)製:トランスグルタミナーゼ濃度1%、トランスグルタミナーゼ活性86〜130U/g)を使用した。
トランスグルタミナーゼは、カード粒比で0.002重量%添加した。また、同時にトランスグルタミナーゼを添加しないナチュラルチーズを上記と同様の方法で試作した。これらのナチュラルチーズを12℃で熟成し、熟成1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間における耐熱保形性を試験例1と同様の方法で測定した。ここで、トランスグルタミナーゼを添加した系を実施例8(12℃熟成)と称し、トランスグルタミナーゼを添加しない系を比較例6(12℃熟成)と称した。
【0080】
[耐熱保形性の評価]
表9〜10の通り、熟成後に耐熱保形性を測定した結果、トランスグルタミナーゼを0.002%添加した実施例8は熟成1ヶ月後から耐熱保形性を有していた。一方、トランスグルタミナーゼを添加しない比較例6は耐熱保形性を有していなかった。
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
[試験例6]
比較例7:原料乳の凝乳中(ホエイ排出前)におけるトランスグルタミナーゼの添加
(乳酸発酵工程)
原料乳11kg(脂肪率3.40%)を殺菌冷却後、31℃まで加温して、混合乳酸菌スターター(L. lactisおよびL. Cremoris、Chris. Hansen's Laboratories製)を2.25g添加し、60分間31℃に保持した。
(レンネッティング工程)
乳酸発酵工程が35分間経過したところでアナトー色素0.72mlを加え、さらに5分後に塩化カルシウムを0.02%添加した。45分間の乳酸発酵工程終了後、カーフレンネット(single strength、Chris. Hansen's Laboratories製、力価14000ユニット)を2.25ml添加し、25〜30分間静置させ、凝固物を得た。
【0084】
(カッティング工程)
得られた凝固物をカッティングし、さらにホエイを分離させた。
(クッキング工程)
カッティング後5分間静置してから、静かに10分間攪拌し、引き続いて加温を開始した。クッキング工程では、まず31℃から33℃まで昇温させて15分間加温し、ここでトランスグルタミナーゼを添加した。トランスグルタミナーゼ製剤としてはKS−CT(味の素(株)製:トランスグルタミナーゼ濃度1%、トランスグルタミナーゼ活性86〜130U/g)を使用した。トランスグルタミナーゼの添加量は原料とした乳中のタンパク質1g当たり10Uとした(10U/gpと表記)。次いで33℃から35℃まで15分間かけて昇温させ、さらに35℃から38℃に10分間加温した。クッキング工程を通じて、常にゆっくりとカード粒を壊さないように攪拌し続けた。
【0085】
(チェダリング工程)
次いで38℃で15分間、攪拌を続けて保持し、5〜10分間静置してから、分離したホエイを排出させた。ホエイを排出させ、チーズカードを得たら、これを6インチ幅に切って積み重ねる。37℃〜38℃に保持して、15分おきに反転を繰り返し(チェダリング)て、ホエイ排出を促した。
(ミリングおよび食塩添加工程)
次に、チーズカードを砕くミリング操作を行う。砕いたチーズカードに食塩を徐々に混合し、食塩濃度がカードの4.5%になるように3回にわけて食塩を加えた。
(型詰工程)
常法に従って、型詰めし圧搾した。
【0086】
比較例8:原料乳の凝乳前(レンネッティング工程)におけるトランスグルタミナーゼの添加
原料乳の凝乳中(ホエイ排出前)のトランスグルタミナーゼの添加の代わりに、トランスグルタミナーゼの添加をレンネットの添加と同時に行った以外は、を比較例7と同様の工程で、チェダーチーズを製造した。
【0087】
実施例9:原料乳の凝乳後(ミリング・食塩添加工程)でのトランスグルタミナーゼの添加
原料乳の凝乳中(ホエイ排出前)のトランスグルタミナーゼの添加の代わりに、ホエイ排出後の砕いたチーズカードにトランスグルタミナーゼの添加をする以外は、比較例7と同様の工程で、チェダーチーズを製造した。トランスグルタミナーゼの添加量は、カード粒比で0.02重量%であった。
【0088】
[耐熱保形性の評価]
これらのチェダーチーズを、12℃で熟成し、熟成1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間における耐熱保形性を試験例1と同様の方法で測定した。結果を表11および表12に示す。
【0089】
【表11】
【0090】
【表12】
【0091】
表11および表12の通り、熟成後に耐熱保形性を測定した結果、トランスグルタミナーゼを凝乳・ホエイ排出後のチーズカードに添加した実施例9は熟成1ヶ月後から耐熱保形性を有していた。一方、トランスグルタミナーゼを凝乳中に添加した比較例7およびトランスグルタミナーゼを凝乳前、レンネットの添加と同時に添加した比較例8は耐熱保形性を有していなかった。また、比較例7および比較例8は熟成の過程で離水が発生した。
【0092】
[官能評価]
比較例7、比較例8、実施例9のナチュラルチーズを熟成期間1ヶ月〜6ヶ月の各時点における、目視での評価、および熟成風味の評価を表13に示す。
比較例7および比較例8は熟成の過程で離水が発生した。
熟成風味については、いずれも12℃での熟成を3カ月以上行うことにより強い熟成風味を有するナチュラルチーズとなった。
【0093】
【表13】
【0094】
以上の結果から、トランスグルタミナーゼをホエイの排出後に添加し、熟成させることにより、耐熱保形性および良好な熟成風味を有する熟成型ナチュラルチーズが得られることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の耐熱保形性を有するナチュラルチーズおよびその製造方法において、原料乳の水分および乳タンパク質の組成を調整することなく、耐熱保形性を有するナチュラルチーズおよびその製造方法を見出した。このナチュラルチーズは、フライパンやオーブンなどによる加熱などの調理・加工をした時にチーズが溶融や変形をすることなく、良好な耐熱保形性を有する新規のナチュラルチーズおよびその製造方法を提供できる。