【実施例】
【0071】
実施例及び比較例
I.炭素担持触媒の調製
実施例
酸化チタン中に度合いが異なる三通りのニオブドーピングした本発明の触媒を調製した。炭素担持触媒に含まれるニオブのモル量の、炭素担持触媒に含まれるニオブのモル量とチタンのモル量との合計に対する比(n
Nb/(n
Nb+n
Ti)は、実施例1〜3につき、それぞれ、0.08、0.05、0.46であった。
【0072】
実施例1
1a)混合ニオブ酸化チタン(mixed niobium titanium oxide)の炭素上への析出
炭素60g(Black Pearls(登録商標)2000、Cabot社製)、純度100%の酢酸455g、純度99.7%の2−プロパノール676g、金属含有量に基づいて、純度99.95%のニオブ(V)エトキシド10.4g、及び純度99%のチタン(IV)n−ブトキシド100gから1種の混合物を調製した。各成分を均質化するために、超音波処理を10分間適用した。その混合物を噴霧乾燥機で乾燥させた。混合物の沈降を防止するために、攪拌しながら噴霧塔に搬送した。噴霧乾燥すべき混合物の流速は636g/hであり、噴霧乾燥機のノズルの直径は1.4mmであり、ノズル圧力は3.5バール絶対圧、ノズルガスは窒素、ノズルガスの体積流量は3.5Nm
3/h、ノズルガスの温度は室温、乾燥用ガスは窒素、乾燥用ガスの体積流量は25Nm
3/h、乾燥用ガスの温度は190℃、噴霧乾燥機での滞留時間は15秒であった。粒子分離に当たっては、直径が少なくとも10μmの粒子を分離することができるサイクロンを使用した。噴霧乾燥機の排ガス温度に相当する、サイクロンの温度は102℃〜104℃であった。上記製造工程の全ては湿気を排除して実施した。上記のいずれの製造工程においても余分な水を添加することはなく、噴霧乾燥の対象となる混合物は窒素雰囲気中で調製した。
【0073】
元素分析は、噴霧乾燥した粒子を基準として、1.3質量%のニオブ含有量、及び6.5質量%のチタン含有量を示した。分析目的で180℃の空気流中で乾燥する間に、28.7質量%の質量損失が測定された。
【0074】
1b)洗浄
残留有機化合物を洗浄によって除去した。工程1a)で得られた固形物71gをフィルター上に置き、水を加えた。全容積7Lの水を洗浄に使用した。その後、洗浄した固体を80℃の真空オーブンで10時間乾燥させた。
【0075】
元素分析によると、洗浄し乾燥した固体を基準にして、1.7質量%のニオブ含有量及び7.7質量%のチタン含有量を示した。分析目的で180℃の空気流中で乾燥する間に、12.2質量%の質量損失が測定された。
【0076】
1c)白金の堆積
白金の堆積のために、工程1b)で得た固体15gをULTRA−TURRAX(登録商標)を用いて412mLの水に懸濁させた。次いで、161mLの水中の10.95gの硝酸白金(II)の溶液を添加した。撹拌しながら、354mLのエタノールと487mLの水との混合物を加え、懸濁液を82℃に加熱した。82℃で6時間後、懸濁液を室温まで冷却し、濾過し、固体残留物を6Lの水で洗浄した。生成した固体を80℃の真空オーブンで乾燥させた。
【0077】
1d)800℃での熱処理
工程1c)で生成した固体12gを回転式チューブ炉内で熱処理した。95体積%の窒素及び5体積%の水素を含むガス流中で、温度を10ケルビン(Kelvin)/分ずつ800℃まで上昇させた。800℃の温度に達したとき、温度を1時間一定に保った。続いて、炉の内部を室温に冷却し、50℃未満の温度で、そのガス流を100体積%の窒素を含む流れに切り替えた。次いで、熱処理した固体を、9体積%の空気と91体積%の窒素とを含むガス流で12時間不動態化して、炭素担持触媒を形成させた。空気は、典型的には、約78体積%の窒素と21体積%の酸素を含むものである。
【0078】
元素分析により、炭素担持触媒を基準にして、1.0質量%のニオブ含有量、5.8質量%のチタン含有量及び33質量%の白金含有量を測定した。
【0079】
炭素担持触媒について粉末X線回折法によりさらに分析を行った。シェラー(Scherrer)の式を適用した粉末X線回折測定結果から、炭素担持触媒に含まれる白金の平均微結晶サイズを計算した。3.2nmと32nmの二峰性分布が、白金微結晶について測定された。TEM結果を併用する、この積分法によれば、大部分の白金粒子が約3nmの小さなサイズであり、さらに約32nmの平均微結晶サイズを有するより大きな白金粒子群が存在することを示した。さらに、粉末X線回折法により、炭素担持触媒にTiO
2の結晶学的相(アナターゼ)が観察された。
【0080】
図1は、実施例1で製造した炭素担持触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた写真を示す。その透過型電子顕微鏡にエネルギー分散型X線分光分析(EDX)分析を併用した。最初の画像(高角度環状暗視野、HAADF)は、試料中の電子密度を基準とした、材料密度の分布の概要を示す。白金は最も高いコントラストを示し、灰色の領域は炭素、並びにニオブ及びチタンの酸化物に帰属する。他の3つの画像には、単一元素のニオブ、白金及びチタンの分布が別々に示されている。全ての画像に比較用目盛90nmが与えられている。白金、ニオブ及びチタンの各元素は、炭素担持触媒の表面上に均一に分布していた。
【0081】
実施例2
2a)混合ニオブ酸化チタン(mixed niobium titanium oxide)の炭素上への析出
炭素60g(Black Pearls(登録商標)2000、Cabot社製)、純度100%の酢酸455g、純度99.7%の2−プロパノール676g、金属含有量に基づいて、純度99.95%のニオブ(V)エトキシド4.92g、及び純度99%のチタン(IV)n−ブトキシド100gから1種の混合物を調製した。各成分を均質化するために、超音波処理を10分間適用した。その混合物を噴霧乾燥機で乾燥させた。混合物の沈降を防止するために、攪拌しながら噴霧塔に搬送した。噴霧乾燥すべき混合物の流速は743g/hであり、噴霧乾燥機のノズルの直径は1.4mmであり、ノズル圧力は3.5バール絶対圧、ノズルガスは窒素、ノズルガスの体積流量は3.5Nm
3/h、ノズルガスの温度は室温、乾燥用ガスは窒素、乾燥用ガスの体積流量は25Nm
3/h、乾燥用ガスの温度は190℃、噴霧乾燥機での滞留時間は15秒であった。粒子分離に当たっては、直径が少なくとも10μmの粒子を分離することができるサイクロンを使用した。噴霧乾燥機の排ガス温度に相当する、サイクロンの温度は101℃〜104℃であった。上記製造工程の全ては湿気を排除して実施した。上記のいずれの製造工程においても余分な水を添加することはなく、噴霧乾燥の対象となる混合物は窒素雰囲気中で調製した。
【0082】
元素分析は、噴霧乾燥した粒子を基準として、0.6質量%のニオブ含有量、及び5.6質量%のチタン含有量を示した。分析目的で180℃の空気流中で乾燥する間に、31質量%の質量損失が測定された。
【0083】
2b)洗浄
残留有機化合物を洗浄によって除去した。工程2a)で得られた固形物71gをフィルター上に置き、水を加えた。全容積7Lの水を洗浄に使用した。その後、洗浄した固体を80℃の真空オーブンで10時間乾燥させた。
【0084】
元素分析によると、洗浄し乾燥した固体を基準にして、0.9質量%のニオブ含有量及び8.6質量%のチタン含有量を示した。分析目的で180℃の空気流中で乾燥する間に、4.1質量%の質量損失が測定された。
【0085】
2c)白金の堆積
白金の堆積のために、工程2b)で得た固体15gをULTRA−TURRAX(登録商標)を用いて414mLの水に懸濁させた。次いで、159mLの水中の10.95gの硝酸白金(II)の溶液を添加した。撹拌しながら、354mLのエタノールと487mLの水との混合物を加え、懸濁液を82℃に加熱した。82℃で6時間後、懸濁液を室温まで冷却し、濾過し、固体残留物を6Lの水で洗浄した。生成した固体を80℃の真空オーブンで乾燥させた。
【0086】
2d)800℃での熱処理
工程2c)で生成した固体15gを回転式チューブ炉内で熱処理した。95体積%の窒素及び5体積%の水素を含むガス流中で、温度を10ケルビン/分ずつ800℃まで上昇させた。800℃の温度に達したとき、温度を1時間一定に保った。続いて、炉の内部を室温に冷却し、50℃未満の温度で、そのガス流を100体積%の窒素を含む流れに切り替えた。次いで、熱処理した固体を、9体積%の空気と91体積%の窒素とを含むガス流で12時間不動態化して、炭素担持触媒を形成させた。
【0087】
元素分析により、炭素担持触媒を基準にして、0.58質量%のニオブ含有量、6.2質量%のチタン含有量及び30質量%の白金含有量を測定した。
【0088】
炭素担持触媒について粉末X線回折法によりさらに分析を行った。シェラー(Scherrer)の式を適用した粉末X線回折測定結果から、炭素担持触媒に含まれる白金の平均微結晶サイズを計算した。3.2nmと32nmの二峰性分布が、白金微結晶サイズについて測定された。さらに、粉末X線回折法により、炭素担持触媒にTiO
2の結晶学的相(アナターゼ)が観察された。
【0089】
実施例3
3a)混合ニオブ酸化チタン(mixed niobium titanium oxide)の炭素上への析出
炭素60g(Black Pearls(登録商標)2000、Cabot社製)、純度100%の酢酸455g、純度99.7%の2−プロパノール676g、金属含有量に基づいて、純度99.95%のニオブ(V)エトキシド43.49g、及び純度99%のチタン(IV)n−ブトキシド46.51gから1種の混合物を調製した。各成分を均質化するために、超音波処理を10分間適用した。その混合物を噴霧乾燥機で乾燥させた。混合物の沈降を防止するために、攪拌しながら噴霧塔に搬送した。噴霧乾燥すべき混合物の流速は516g/hであり、噴霧乾燥機のノズルの直径は1.4mmであり、ノズル圧力は3.5バール絶対圧、ノズルガスは窒素、ノズルガスの体積流量は3.5Nm
3/h、ノズルガスの温度は室温、乾燥用ガスは窒素、乾燥用ガスの体積流量は25Nm
3/h、乾燥用ガスの温度は190℃、噴霧乾燥機での滞留時間は15秒であった。粒子分離に当たっては、直径が少なくとも10μmの粒子を分離することができるサイクロンを使用した。噴霧乾燥機の排ガス温度に相当する、サイクロンの温度は100℃〜107℃であった。上記製造工程の全ては湿気を排除して実施した。上記のいずれの製造工程においても余分な水を添加することはなく、噴霧乾燥の対象となる混合物は窒素雰囲気中で調製した。
【0090】
元素分析は、噴霧乾燥した粒子を基準として、5.3質量%のニオブ含有量、及び2.8質量%のチタン含有量を示した。分析目的で180℃の空気流中で乾燥する間に、26質量%の質量損失が測定された。
【0091】
3b)洗浄
残留有機化合物を洗浄によって除去した。工程3a)で得られた固形物71gをフィルター上に置き、水を加えた。全容積7Lの水を洗浄に使用した。その後、洗浄した固体を80℃の真空オーブンで10時間乾燥させた。
【0092】
元素分析によると、洗浄し乾燥させた固体を基準にして、6.4質量%のニオブ含有量及び3.9質量%のチタン含有量を示した。分析目的で180℃の空気流中で乾燥する間に、14.3質量%の質量損失が測定された。
【0093】
3c)白金の堆積
白金の堆積のために、工程3b)で得た固体15gをULTRA−TURRAX(登録商標)を用いて414mLの水に懸濁させた。次いで、159mLの水中の10.95gの硝酸白金(II)の溶液を添加した。撹拌しながら、354mLのエタノールと487mLの水との混合物を加え、懸濁液を82℃に加熱した。82℃で6時間後、懸濁液を室温まで冷却し、濾過し、固体残留物を6Lの水で洗浄した。生成した固体を80℃の真空オーブンで乾燥させた。
【0094】
3d)800℃での熱処理
工程3c)で生成した固体15gを回転式チューブ炉内で熱処理した。95体積%の窒素及び5体積%の水素を含むガス流中で、温度を10ケルビン/分ずつ800℃まで上昇させた。800℃の温度に達したとき、温度を1時間一定に保った。続いて、炉の内部を室温に冷却し、50℃未満の温度で、そのガス流を100体積%の窒素を含む流れに切り替えた。次いで、熱処理した固体を、9体積%の空気と91体積%の窒素とを含むガス流で12時間不動態化して、炭素担持触媒を形成させた。
【0095】
元素分析により、炭素担持触媒を基準にして、4.7質量%のニオブ含有量、2.9質量%のチタン含有量及び34質量%の白金含有量を測定した。
【0096】
炭素担持触媒について粉末X線回折法によりさらに分析を行った。シェラー(Scherrer)の式を適用した粉末X線回折測定結果から、炭素担持触媒に含まれる白金の平均微結晶サイズを計算した。2.9nmと27nmの二峰性分布が、白金微結晶サイズについて測定された。さらに、粉末X線回折法により、炭素担持触媒にTiO
2の結晶学的相(アナターゼ)が観察された。
【0097】
実施例4
4a)炭素上への混合ニオブ酸化チタンの反応性堆積
炭素15g(Black Pearls(登録商標)2000、Cabot社製)、純度100%の酢酸114g、純度99.7%の2−プロパノール169g、金属含有量に基づいて、純度99.95%のニオブ(V)エトキシド2.61g、及び純度99%のチタン(IV)n−ブトキシド24.99gから1種の混合物を調製した。この混合物を、マグネチックスターラー、オイルバス及び水冷凝縮器を備えたフラスコに移した。窒素でパージした後、混合物を94℃で1時間加熱還流した。混合物を室温に冷却し、濾過し、純度100%の酢酸570g、純度99.7%の2−プロパノール845gの混合物で洗浄した。その後、濾液のpHが7になるまで60℃の水で粉末を洗浄した。洗浄した固体を80℃の真空オーブンで10時間乾燥させた。
【0098】
乾燥した固体の元素分析によると、1.4質量%のニオブ含有量及び6.8質量%のチタン含有量を示した。分析目的で180℃の空気流中で乾燥させる間に、1.1質量%の質量損失が測定された。
【0099】
4c)白金の堆積
白金の堆積のために、工程4b)で得た固体10gをULTRA−TURRAX(登録商標)を用いて276mLの水に懸濁させた。次いで、106mLの水中の7.30gの硝酸白金(II)の溶液を添加した。撹拌しながら、236mLのエタノールと326mLの水との混合物を加え、懸濁液を82℃に加熱した。82℃で6時間後、懸濁液を室温まで冷却し、濾過し、固体残留物を6Lの水で洗浄した。生成した固体を80℃の真空オーブンで乾燥させた。
【0100】
4c)800℃での熱処理
工程3c)で生成した固体15gを回転式チューブ炉内で熱処理した。95体積%の窒素及び5体積%の水素を含むガス流中で、温度を10ケルビン/分ずつ800℃まで上昇させた。800℃の温度に達したとき、温度を1時間一定に保った。続いて、炉の内部を室温に冷却し、50℃未満の温度で、そのガス流を100体積%の窒素を含む流れに切り替えた。次いで、熱処理した固体を、9体積%の空気と91体積%の窒素とを含むガス流で12時間不動態化して、炭素担持触媒を形成させた。
【0101】
元素分析により、炭素担持触媒を基準にして、0.96質量%のニオブ含有量、4.8質量%のチタン含有量及び28質量%の白金含有量を測定した。
【0102】
炭素担持触媒について粉末X線回折法によりさらに分析を行った。シェラー(Scherrer)の式を適用した粉末X線回折測定結果から、炭素担持触媒に含まれる白金の平均微結晶サイズを計算した。3.1nmと29nmの二峰性分布が、白金微結晶サイズについて測定された。さらに、粉末X線回折法により、炭素担持触媒にTiO
2の結晶学的相(アナターゼ)が観察された。
【0103】
比較例
比較例1
C1a)未改質炭素上への白金の堆積
20gのBlack Pearls(登録商標)2000を、ULTRA−TURRAX(登録商標)を用いて550mLの水に懸濁させた。次いで、215mLの水中の14.6gの硝酸白金(II)の溶液を添加した。攪拌しながら、471mLのエタノールと650mLの水との混合物を懸濁液に加え、懸濁液を82℃に加熱した。82℃で6時間後、懸濁液を室温に冷却し、濾過し、固体残留物を6Lの水で洗浄した。生成した固体を80℃の真空オーブン中で乾燥させた。
【0104】
元素分析により、比較例1で生成した触媒を基準にして、28.1質量%の白金含有量を測定した。生成した触媒をX線回折法により分析し、Scherrer式を適用して白金の平均微結晶サイズを計算した。1.8及び6.5nmの二峰性分布が得られた。
【0105】
比較例2
C2a)炭素上への酸化ニオブの析出
炭素(Black Pearls(登録商標)2000、Cabot社製)120g、純度100%の酢酸1090g、純度99.7%の2−プロパノール1217g、金属含有量に基づいて、純度99.95%のニオブ(V)エトキシド104.9gから混合物を調製した。各成分を均質化するために、超音波処理を10分間適用した。その混合物を噴霧乾燥機で乾燥させた。混合物の沈降を防止するために、攪拌しながら噴霧塔に搬送した。噴霧乾燥すべき混合物の流速は700g/hであった。噴霧乾燥機のノズルの直径は2.3mmであり、ノズル圧力は3.5バール絶対圧、ノズルガスは窒素、ノズルガスの体積流量は3.5Nm
3/h、ノズルガスの温度は室温、乾燥用ガスは窒素、乾燥用ガスの体積流量は25Nm
3/h、乾燥用ガスの温度は190℃、噴霧乾燥機での滞留時間は15秒であった。粒子分離に当たっては、直径が少なくとも10μmの粒子を分離することができるサイクロンを使用した。噴霧乾燥機の排ガス温度に相当する、サイクロンの温度は101℃〜103℃であった。上記製造工程の全ては湿気を排除して実施した。上記のいずれの製造工程においても余分な水を添加することはなく、噴霧乾燥の対象となる混合物は窒素雰囲気中で調製した。
【0106】
元素分析により、噴霧乾燥した固体を基準にして、10.6質量%のニオブ含有量が観察された。分析目的で180℃の空気流中で乾燥させる間に、24.0質量%の質量損失が測定された。
【0107】
C2b)白金の堆積
工程C2a)で得た固体20gをULTRA−TURRAX(登録商標)を用いて444mLの水に懸濁させた。次いで、174mLの水中の11.98gの硝酸白金(II)の溶液を添加した。撹拌しながら、380mLのエタノールと524mLの水との混合物を加え、懸濁液を82℃に加熱した。82℃で6時間後、懸濁液を室温に冷却し、濾過し、固体残留物を6Lの水で洗浄した。生成した固体を80℃の真空オーブン中で乾燥させた。
【0108】
C2c)800℃での熱処理
工程C2b)で生成した固体を、それぞれ9.1g、10.4g及び10.5gを含む三部分について熱処理した。その熱処理は回転式チューブ炉内で行った。95体積%の窒素及び5体積%の水素を含むガス流中で、温度を10ケルビン/分ずつ800℃まで上昇させた。800℃の温度に達したとき、温度を1時間一定に保った。続いて、炉の内部を室温に冷却し、50℃未満の温度で、そのガス流を100体積%の窒素を含む流れに切り替えた。次いで、熱処理した固体を、9体積%の空気と91体積%の窒素とを含むガス流で12時間不動態化して、炭素担持触媒を形成させた。この固体の三つの部分をスパチュラで混合し、その後の全ての工程で、この三部分の混合物を使用した。
【0109】
元素分析により、炭素担持触媒を基準にして9.6質量%のニオブ含有量及び33質量%の白金含有量を測定した。
【0110】
炭素担持触媒を粉末X線回折法により分析し、Scherrerの式を適用して白金の平均微結晶サイズを計算した。3及び22nmの二峰性分布が得られた。
【0111】
比較例3
C3a)比表面積の小さい炭素上への酸化ニオブの析出
炭素(Vulcan XC72(登録商標)、Cabot社製)(BET比表面積約250m
2/g)120g、純度100%の酢酸1099g、純度99.7%の2−プロパノール1217g、金属含有量に基づいて、純度99.95%のニオブ(V)エトキシド209.8gから混合物を調製した。各成分を均質化するために、超音波処理を10分間適用した。178gの水と178gの2−プロパノールとの混合物を滴加した。その混合物を噴霧乾燥機で乾燥させた。混合物の沈降を防止するために、攪拌しながら噴霧塔に搬送した。噴霧乾燥すべき混合物の流速は521g/hであり、噴霧乾燥機のノズルの直径は2.3mmであり、ノズル圧力は3.0バール絶対圧、ノズルガスは窒素、ノズルガスの体積流量は3.5Nm
3/h、ノズルガスの温度は室温、乾燥用ガスは窒素、乾燥用ガスの体積流量は25Nm
3/h、乾燥用ガスの温度は190℃、噴霧乾燥機での滞留時間は15秒であった。粒子分離に当たっては、直径が少なくとも10μmの粒子を分離することができるサイクロンを使用した。噴霧乾燥機の排ガス温度に相当する、サイクロンの温度は104℃〜107℃であった。
【0112】
元素分析により、噴霧乾燥した固体を基準にして、13.5質量%のニオブ含有量が測定された。分析目的で180℃の空気流中で乾燥させる間に、12.8質量%の質量損失が測定された。
【0113】
C3b)白金の堆積
工程C3a)で得た固体10gをULTRA−TURRAX(登録商標)を用いて229mLの水に懸濁させた。次いで、89mLの水中の6.18gの硝酸白金(II)の溶液を添加した。撹拌しながら、196mLのエタノールと270mLの水との混合物を加え、懸濁液を82℃に加熱した。82℃で6時間後、懸濁液を室温に冷却し、濾過し、固体残留物を4Lの水で洗浄した。生成した固体を80℃の真空オーブン中で乾燥させた。
【0114】
C3c)800℃での熱処理
工程C3b)で生成した固体12.7gを回転式チューブ炉内で熱処理した。窒素を含む流れの中で、温度を毎分10ケルビンで400℃まで上昇させた。400℃の温度に達した後、そのガス流を、95体積%の窒素及び5体積%の水素を含む流れに切り替えた。温度を毎分10ケルビンで800℃まで上昇させた。800℃の温度に達したとき、温度を1時間一定に保った。続いて、炉の内部を室温に冷却し、50℃未満の温度で、そのガス流を100体積%の窒素を含むガス流に切り替えた。次いで、熱処理した固体を、9体積%の空気と91体積%の窒素とを含むガス流で12時間不動態化して、炭素担持触媒を形成させた。
【0115】
元素分析により、炭素担持触媒を基準にして13.5質量%のニオブ含有量及び28.5質量%の白金含有量を測定した。さらに、Nb
2O
5とNbO
2の結晶学的相が、それぞれ粉末X線回折法により炭素担持触媒中に観察された。
【0116】
II.炭素担持触媒の電気化学試験
実施例1及び比較例1、2及び3で得た炭素担持触媒について、室温の回転ディスク電極(RDE)上で酸素還元反応(ORR)に関し試験した。この装置には3つの電極が含まれていた。対電極として白金箔を、参照電極としてHg/HgSO
4電極を設置した。記した電位は、可逆水素電極(RHE)を基準とするものである。炭素担持触媒を含むインク(ink)を、0.055μS/cm未満の導電率を有する4.7gの脱塩超純水、シグマアルドリッチ社(Sigma−Aldrich Corp.)から市販されているパーフルオロ樹脂溶液の、ナフィオンNafion(登録商標)5質量%溶液であって80質量%〜85質量%の低級脂肪族アルコールと20質量%〜25質量%の水とを含む溶液0.04g、及び2−プロパノール1.2gからなる溶液に、約0.01gの炭素担持触媒を分散させることにより、調製した。そのインクを15分間超音波処理した。
【0117】
7.5μLのインクを直径5mmのガラス状炭素電極上にピペットで入れた。窒素流中で電極を回転させることなくインクを乾燥させた。電解質として、アルゴンで飽和させた0.1MのHClO
4溶液を使用した。
【0118】
最初に、洗浄(クリーニング)サイクル、及びバックグラウンド減算(background subtraction)(Ar−CV)用サイクロボルタモグラム(cyclovoltamograms)を使用した。これらの工程については、表1の工程1及び2としてさらにその内容を明示する。
【0119】
続いて、電解液を酸素で飽和させ、酸素還元活性を測定した(表1、工程3)。
【0120】
その後、促進劣化試験をアルゴン飽和電解液中にて適用した。したがって、矩形波サイクルに従って電位を変化させた(表1、工程5)。
【0121】
その後、電解液を新しい0.1MのHClO
4溶液と交換し、アルゴン飽和電解液中で洗浄工程及びAr−CV工程を繰り返し(表1の工程6及び7)、酸素還元(ORR)活性を酸素飽和電解液中で再び測定した(表1の工程8)。
【0122】
【表1】
【0123】
各種炭素担持触媒の電気化学的性能は、劣化試験(工程5)前後(工程3及び工程8)のORR活性を比較することによって示される。
【0124】
第3のORR−CVのアノード部分から、バックグラウンド電流を除去するために、前の工程からのAr−CVを差し引いた。0.9Vでの電流(I
0,9V)、約0.25Vでの限界電流(I
lim)、及び電極上の白金の質量(m
Pt)を考慮に入れて、白金−質量に関連する運動(kinetic)活性I
kinを計算した。
【0125】
I
kin=I
0.9V・I
lim/(I
lim−I
0.9V)/m
Pt
【0126】
この計算方法についての前提及びその詳細は、Paulusら、Journal of Electroanalytical Chemistry、495(2001)、134〜145頁に記載されている。
【0127】
【表2】
【0128】
例えば燃料電池の用途での、ある特定の性能を発揮するのに必要な白金の量は、炭素担持触媒の安定性及び新鮮な(製造したての)炭素担持触媒の初期活性に強く依存する。劣化試験後の使用済み炭素担持触媒がもつ残留活性は、実際の燃料電池における触媒活性金属相の劣化を大いに再現(mimicking)する重要なパラメータである。
【0129】
ニオブ及びチタンを含む酸化物で改質した、実施例1で調製した、本発明に係る触媒が、全ての実施例及び比較例の中で、劣化後残留活性に関し最も高い値287mA/mg
Ptを示した。実施例1、2及び3の本発明の触媒の全てが、改質剤を含まない触媒、又は改質剤としてニオブ及びチタンの両方を含む酸化物の代わりに酸化ニオブのみを含む触媒よりも、劣化後残留活性が高く、電気化学的劣化に対して高い安定性を示した。
【0130】
実施例1及び比較例2で得た炭素担持触媒に含まれる酸化物改質剤の濃度は同様であった。したがって、実施例1で得た本発明の炭素担持触媒の方がより高い残留活性を示したのは、ニオブとチタンの両方を含む酸化物で炭素担体を改質したことによるものと考えられる。
【0131】
さらに、比較例2で得た、酸化ニオブで改質した触媒は、比較例1で得た、改質剤を有しない触媒よりも、劣化試験後残留活性がより高い値を示すものであった。
【0132】
比較例3で得た触媒は、酸化ニオブで改質し、かつ、表面積の小さい炭素含有担体を含むものであるが、全ての実施例及び比較例を通じて、炭素担持触媒中の酸化ニオブ及び白金の含有量が同様であるにもかかわらず、残留活性が最も低い値を示した。