【文献】
LUNN et al.,Controlled Thiol-Ene Functionalization of Polyferrocenylsilane-block-Polyvinylsiloxane Copolymers.,Macromolecular Chemistry and Physics,2013年,Vol.214,p.2813-2820
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪ブロック共重合体≫
ブロック共重合体は、複数種類のブロック(同種の構成単位が繰り返し結合した部分構成成分)が結合した高分子である。ブロック共重合体を構成するブロックは、2種類であってもよく、3種類以上であってもよい。
本発明の第一の態様は、一般式(1)で表される構造を有する第1ブロックを含むブロック共重合体である。以下、第1ブロックについて説明する。
【0015】
<第1ブロック>
本発明において、第1ブロックは下記一般式(1)で表される。
【0016】
【化2】
[式中、Rs
01及びRs
02の少なくとも一方は、極性基を有する有機基であり、Rs
01及びRs
02は同一であってもよく、異なっていてもよい。*は結合手を示す。]
【0017】
〔Rs
01及びRs
02〕
一般式(1)中、Rs
01及びRs
02の少なくとも一方は、極性基を有する有機基であり、Rs
01及びRs
02は同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rs
01及びRs
02の有機基としては、炭化水素基が好適な例として挙げられ、該炭化水素基は脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。
【0018】
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、アルキル基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。
アルキル基としては、部分的または完全にハロゲン化されたアルキル基(以下、ハロゲン化アルキル基ということがある)であってもよい。
より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、アルケニル基が好ましく、該アルケニル基は、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、及びヘプテニル基等が挙げられる。
【0019】
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0020】
環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
【0021】
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環;等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基);等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0022】
Rs
01及びRs
02の有機基が有する極性基としては、例えば下記式(Rs
01−1)〜(Rs
01−11)のいずれかで表される基が挙げられる。
本発明において、一般式(1)で表される構造を有する第1ブロックは、下記式(Rs
01−1)〜(Rs
01−11)からなる群より選択される1つ以上の官能基を有することが好ましい。
【0024】
一般式(1)において、Rs
01及びRs
02の少なくとも一方は、極性基を有する有機基であり、Rs
01及びRs
02は同一であってもよく、異なっていてもよい。
本発明において、前記一般式(1)で表される構造が、下記一般式(1−1)で表される構造であることが好ましい。
【0025】
【化4】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。Ys
01は2価の連結基である。Rs
01aは、極性基を有する有機基である。*は結合手を示す。]
【0026】
一般式(1−1)中、Rs
01aについての説明は前記Rs
01に関する説明と同様である。
Ys
01の2価の連結基としては特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
また、本発明においては、合成の際の操作性の向上やメタル軽減の観点から、Ys
01の2価の連結基として、ヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましく、硫黄原子又は珪素原子を含むものが好ましい。
【0027】
(置換基を有していてもよい2価の炭化水素基)
2価の連結基としての炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、前記Rs
01において例示した基から、2つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0028】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0029】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基としては、具体的には、前記Rs
01において例示した環状の脂肪族炭化水素基から、2つの水素原子を除いた基が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
また、置換基として、前記式(Rs
01−1)〜(Rs
01−11)からなる群より選択される1つ以上の官能基を有していてもよい。
環状の脂肪族炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、−O−、−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−が好ましい。
【0030】
2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基としては、具体的には、前記Rs
01において例示した芳香族炭化水素基から、2つの水素原子を除いた基が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。たとえば当該芳香族炭化水素基中の芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子およびハロゲン化アルキル基としては、前記環状の脂肪族炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基として例示したものが挙げられる。
【0031】
(ヘテロ原子を含む2価の連結基)
ヘテロ原子を含む2価の連結基におけるヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子以外の原子であり、たとえば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、珪素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記のなかでも、合成の際の操作性の向上やメタル軽減の観点から、Ys
01の2価の連結基として、硫黄原子又は珪素原子を含むものが好ましい。
【0032】
Ys
01がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、該連結基として好ましいものとして、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−、−NH−C(=NH)−(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−、−Si−、一般式−Y
21−O−Y
22−、−Y
21−O−、−Y
21−C(=O)−O−、−C(=O)−O−−Y
21、[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−または−Y
21−O−C(=O)−Y
22−で表される基[式中、Y
21およびY
22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m’は0〜3の整数である。]等が挙げられる。
前記へテロ原子を含む2価の連結基が−C(=O)−NH−、−NH−、−NH−C(=NH)−の場合、そのHはアルキル基、アシル等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8であることがさらに好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
式−Y
21−O−Y
22−、−Y
21−O−、−Y
21−C(=O)−O−、−C(=O)−O−Y
21、−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−または−Y
21−O−C(=O)−Y
22−中、Y
21およびY
22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記2価の連結基としての説明で挙げた「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
Y
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
Y
22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
式−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−で表される基において、m’は0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−で表される基としては、式−Y
21−C(=O)−O−Y
22−で表される基が特に好ましい。なかでも、式−(CH
2)
a’−C(=O)−O−(CH
2)
b’−で表される基が好ましい。該式中、a’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0033】
本発明において、Ys
01としては、硫黄原子又は珪素原子によって置換された、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましい。
【0034】
前記一般式(1−1)で表される構造は、下記一般式(1−1−1)又は(1−1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0035】
【化5】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。
Ys
011は硫黄原子又は珪素原子を含んでいてもよい2価の連結基である。
Yc
01は、2価の環式基であり、
Ya
01は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、
Rs
011は、前記式(Rs
01−1)〜(Rs
01−11)からなる群より選択される官能基である。*は結合手を示す。]
【0036】
一般式(1−1−1)又は(1−1−2)中、Rについての説明は前記同様である。
Ys
011は、硫黄原子又は珪素原子を含んでいてもよい2価の連結基であり、硫黄原子又は珪素原子を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本発明においては、製造容易の観点から、硫黄原子又は珪素原子を含む連結基であることが好ましく、硫黄原子を含む連結基であることがより好ましい。
硫黄原子又は珪素原子を含む連結基としては、硫黄原子又は珪素原子を含む炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
Yc
01は、2価の環式基であり、該2価の環式基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基や、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基(アリール基)等が挙げられる。
該モノシクロアルカンとしては炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
Ya
01は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。なかでも、Ya
01としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH
2−]、エチレン基[−(CH
2)
2−]、トリメチレン基[−(CH
2)
3−]、テトラメチレン基[−(CH
2)
4−]、ペンタメチレン基[−(CH
2)
5−]等が挙げられる。なかでも、メチレン基[−CH
2−]、エチレン基[−(CH
2)
2−]又はトリメチレン基[−(CH
2)
3−]が好ましく、エチレン基[−(CH
2)
2−]又はトリメチレン基[−(CH
2)
3−]がより好ましい。
Rs
011は、前記式(Rs
01−1)〜(Rs
01−11)からなる群より選択される官能基である。
【0037】
以下に、一般式(1−1−1)で表される構造の具体例を記載する。
【0042】
以下に、一般式(1−1−2)で表される構造の具体例を記載する。
【0047】
<第2ブロック>
本発明のブロック共重合体は、前記第1ブロックと、相分離が起こる組み合わせである第2ブロックを含むことが好ましい。
第2ブロックとしては、例えば、芳香族基を有する構成単位のブロック;(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位のブロック;(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位のブロック;シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位のブロック;アルキレンオキシドから誘導される構成単位のブロック;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位のブロック;シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位のブロック等が挙げられる。
【0048】
芳香族基を有する構成単位としては、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基を有する構成単位が挙げられ、本発明においてはスチレン又はその誘導体から誘導される構成単位であることが好ましい。
スチレンの誘導体としては、たとえば、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−n−オクチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−ニトロスチレン、3−ニトロスチレン、4−クロロスチレン、4−フルオロスチレン、4−アセトキシビニルスチレン、4−ビニルベンジルクロリド、1−ビニルナフタレン、4−ビニルビフェニル、1−ビニル−2−ピロリドン、9−ビニルアントラセン、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0049】
(α置換)アクリル酸は、アクリル酸、又は、アクリル酸におけるα位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されているもの、の一方又は両方を意味する。該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。
(α置換)アクリル酸としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0050】
(α置換)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル、又は、アクリル酸エステルにおけるα位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されているもの、の一方又は両方を意味する。該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。
(α置換)アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸アントラセン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメタン、アクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸アントラセン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメタン、メタクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
これらのなかでも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチルが好ましい。
【0051】
シロキサン又はその誘導体としては、たとえば、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
アルキレンオキシドとしては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソプロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
【0052】
かご型シルセスキオキサン(POSS)構造含有構成単位としては、下記一般式(a0−1)で表される構成単位が挙げられる。
【0053】
【化14】
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を表す。V
0は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。R
0は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表し、複数のR
0はそれぞれ同じであってもよく異なっていてもよい。*は結合手を示す。]
【0054】
前記式(a0−1)中、Rの炭素数1〜5のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基が最も好ましい。
【0055】
前記式(a0−1)中、R
0における1価の炭化水素基は、炭素数1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜8である。ただし、該炭素数には、後述の置換基における炭素数を含まないものとする。
R
0における1価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよく、なかでも脂肪族炭化水素基であることが好ましく、1価の脂肪族飽和炭化水素基(アルキル基)であることがより好ましい。
前記アルキル基として、より具体的には、鎖状の脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐鎖状のアルキル基)、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
直鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜8が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基又はイソブチル基がより好ましく、エチル基又はイソブチル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。
分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3〜5が好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、イソプロピル基又はtert−ブチル基であることが最も好ましい。
構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、該環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合するか、又は該環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3〜8であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから1つ以上の水素原子を除いた基が好ましく、該モノシクロアルカンとしては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式基としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから1つ以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0056】
鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0057】
R
0における1価の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基としては、芳香環を少なくとも1つ有する1価の炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5〜30であることが好ましく、5〜20がより好ましく、6〜15がさらに好ましく、6〜12が特に好ましい。ただし、該炭素数には、後述の置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基)等が挙げられる。
前記アリール基又はヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0058】
前記式(a0−1)中、V
0における2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。
V
0における2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0059】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH
2−]、エチレン基[−(CH
2)
2−]、トリメチレン基[−(CH
2)
3−]、テトラメチレン基[−(CH
2)
4−]、ペンタメチレン基[−(CH
2)
5−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−、−C(CH
2CH
3)
2−CH
2−等のアルキルエチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0060】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0061】
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5〜30であることが好ましく、5〜20がより好ましく、6〜15がさらに好ましく、6〜12が特に好ましい。ただし、該炭素数には、後述の置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。
前記アリール基又はヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0062】
以下に、前記式(a0−1)で表される構成単位の具体例を示す。以下の各式中、R
αは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0064】
上記のなかでも、第2ブロックは、スチレン若しくはスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位((α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位)が繰り返し結合したブロック、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸から誘導される構成単位((α置換)アクリル酸から誘導される構成単位)が繰り返し結合したブロック、シロキサン若しくはその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、又はシルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロックであることが好ましい。
【0065】
以下に第2ブロックを構成する構成単位の具体例を記載する。
【0067】
本発明においては、第1ブロックと、第2ブロックとの質量比が15:85〜85:15であることが好ましい。
第1ブロックと、第2ブロックとの割合が前記の好ましい範囲内であると、微細パターンに適した周期構造が得られやすい。
【0068】
ブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、4000以上であることが好ましい。本発明においては、5000以上であることが好ましく、8000以上であることがより好ましい。
また、2000000以下であることが好ましい。
またブロックコポリマーの分散度(Mw/Mn)は1.0〜3.0が好ましく、1.0〜1.5がより好ましく、1.0〜1.3がさらに好ましい。なお、Mwは質量平均分子量を示す。
【0069】
本発明のブロック共重合体は、相分離構造形成用樹脂組成物として好適に用いることができる。相分離形成用樹脂組成物として用いる場合には、本発明のブロック共重合体を有機溶剤に溶解して作製することが好ましい。
【0070】
・有機溶剤
有機溶剤としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、樹脂を主成分とする膜組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、ELが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。たとえば極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。また、極性溶剤としてPGMEおよびシクロヘキサノンを配合する場合は、PGMEA:(PGME+シクロヘキサノン)の質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。
【0071】
また、相分離構造形成用樹脂組成物中の有機溶剤として、その他には、PGMEA、EL、または前記PGMEAと極性溶剤との混合溶媒と、γ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
相分離構造形成用樹脂組成物中の有機溶剤の使用量は特に限定されるものではなく、塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはブロックコポリマーの固形分濃度が0.2〜70質量%、好ましくは0.2〜50質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0072】
なお、以下において、ブロックコポリマーを構成するブロックのうち、後の任意工程で選択的に除去されないブロックをP
Aブロック、選択的に除去されるブロックをP
Bブロックという。
【0073】
本発明のブロック共重合体は、前記第1のブロックを有することにより、微細加工に適した垂直パターンを含む構造体を良好に形成することができる。その理由としては、以下のように推察される。
本発明のブロック共重合体は、前記第1のブロックを有することにより、ブロック共重合体を構成する各ブロックの親水性・疎水性のバランスが、特に垂直配向パターンの形成に適したものとなり、微細加工に適した構造体を好適に製造できると推察される。なかでも、第1のブロックにおいて、極性基を第1ブロックの側鎖末端に有する場合には、より親水性・疎水性のバランスが良好になると考えられる。
【0074】
≪ブロック共重合体の製造方法≫
本発明の第2の態様は、ブロック共重合体前駆体を重合する工程Aと前記工程Aにおいて重合した前記ブロック共重合体前駆体の第1ブロックに、極性基を有する有機基を含む化合物を反応させる工程Bと、を有する。
【0075】
[工程A]
工程Aにおいては、ブロック共重合体前駆体を重合する。
工程Aにおいては、まず、例えばリビングアニオン重合等により、前記第2ブロックに相当するブロックを重合する。その後、下記の反応式に示す様に、例えば、シクロトリシロキサン化合物を反応させた後、トリメチルシリルクロライドを用いて一端反応を停止し、ブロック共重合体前駆体を得る。
【0076】
【化17】
[式中、Rs
01’及びRs
02’の少なくとも一方は、有機基であり、Rs
01’及びRs
02’は同一であってもよく、異なっていてもよい。]
【0077】
上記式中、Rs
01’及びRs
02’の有機基に関する説明は、前記Rs
01及びRs
02における有機基の説明と同様である。
【0078】
[工程B]
工程Bでは、前記工程Aにおいて重合した前記ブロック共重合体前駆体の第1ブロックに、極性基を有する有機基を含む化合物を反応させる。工程Bにおいて用いる極性基を有する有機基を含む化合物は、チオール基を有する化合物であることが好ましい。
チオール基を有する化合物を用いることにより、エン・チオール反応により、ブロック共重合体前駆体に極性基を導入することができる。
本発明のブロック共重合体の製造方法によれば、操作性が良好であり、金属触媒が不要であるエン・チオール反応によりブロック共重合体を製造することができる。
【0079】
【化18】
[式中、Rs
01’及びRs
02’、 Rs
01及びRs
02の説明は前記同様である。]
【0080】
≪相分離構造を含む構造体の形成方法≫
本発明の相分離構造形成用樹脂組成物を用いた相分離構造を含む構造体の形成方法について説明する。
相分離構造を含む構造体の製造方法は、基板上に、本発明のブロック共重合体を含む層を形成する工程1と、当該ブロック共重合体を含む層を相分離させる工程2と、を有する。
本発明の相分離構造を含む構造体の製造方法においては、前記工程1の前に、下地剤を塗布し、下地剤層を形成する工程0を有することが好ましい。
【0081】
[工程0]
工程0においては、表面処理剤を含む下地剤層を形成する。
【0082】
<基板>
基板は、その表面上に相分離構造形成用樹脂組成物を塗布し得るものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、シリコン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属、ガラス、酸化チタン、シリカ、マイカなどの無機物からなる基板、アクリル板、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、フェノール樹脂などの有機化合物からなる基板などが挙げられる。
また、本発明において用いられる基板の大きさや形状は、特に限定されるものではない。基板は必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な材質や形状の基板を適宜選択することができる。例えば、曲面を有する基板、表面が凹凸形状の平板、薄片状などの様々な形状のものまで多様に用いることができる。
【0083】
また、基板の表面には、無機系および/または有機系の膜が設けられていてもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。
【0084】
基板に下地剤層を形成する前に、基板の表面を洗浄してもよい。基板の表面を洗浄することにより、後の下地剤層形成工程が良好に行える場合がある。
洗浄処理としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。例えば、基板を硫酸/過酸化水素水溶液等の酸溶液に浸漬させた後、水洗し、乾燥させる。その後、当該基板の表面に、相分離構造形成用樹脂組成物層を形成することができる。
【0085】
<下地剤層形成工程>
本発明においては、まず、基板を中性化処理することが好ましい。なお、中性化処理とは、基板表面を、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有するように改変する処理をいう。中性化処理を行うことにより、相分離によって特定のポリマーからなる相のみが基板表面に接することを抑制することができる。このため、相分離によって基板表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造またはシリンダー構造を形成させるためには、ブロックコポリマーを含む層を形成する前に、基板表面に、用いるブロックコポリマーの種類に応じた下地剤層を形成しておく。
【0086】
具体的には、基板表面に、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有する表面処理剤を含む薄膜(下地剤層)を形成する。
このような下地剤層としては、樹脂組成物からなる膜を用いることができる。表面処理剤として用いられる樹脂組成物は、ブロックコポリマーを構成するポリマーの種類に応じて、薄膜形成に用いられる従来公知の樹脂組成物の中から適宜選択することができる。表面処理剤として用いられる樹脂組成物は、熱重合性樹脂組成物であってもよく、ポジ型レジスト組成物やネガ型レジスト組成物等の感光性樹脂組成物であってもよい。
その他、化合物を表面処理剤とし、当該化合物を塗布して形成された非重合性膜を中性化膜としてもよい。例えば、フェネチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等を表面処理剤として形成されたシロキサン系有機単分子膜も、中性化膜として好適に用いることができる。
これらの表面処理剤からなる下地剤層は、常法により形成することができる。
【0087】
このような表面処理剤としては、例えば、ブロック共重合体を構成する各ポリマーの構成単位をいずれも含む樹脂組成物や、ブロック共重合体を構成する各ポリマーと親和性の高い構成単位をいずれも含む樹脂等が挙げられる。
例えば、前述の、ブロック共重合体を用いる場合には、表面処理剤として、第1ブロックと第2ブロックの両方を構成単位として含む物樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0088】
[工程1]
本発明においては、前記工程0を行った後に、下地剤層上に、ブロック共重合体を含む層を形成することが好ましい。
【0089】
具体的には、適当な有機溶剤に溶解させたブロック共重合体を、スピンナー等を用いて、下地剤層上に塗布する。
【0090】
[工程2]
前記工程1の後、下地剤層上の、当該ブロック共重合体を含む層を相分離させる。
【0091】
ブロック共重合体を含む層(
図1における層3)の相分離は、相ブロック共重合体を含む層が形成された後に熱処理し、相分離構造を形成させる。熱処理の温度は、用いるブロックコポリマーの混合物を含む層のガラス転移温度以上であり、かつ熱分解温度未満で行うことが好ましい。熱処理の温度は、例えば、80〜270℃が好ましく、100〜250℃がより好ましく、120〜230℃が特に好ましい。熱処理時間としては、例えば、30〜3600秒間が好ましく、60〜600秒がより好ましい。
また、熱処理は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0092】
上記の熱処理により、ブロック共重合体を含む層を、P
Aブロックからなる相とP
Bブロックからなる相とに相分離させた相分離構造を含む構造体を得ることができる。
【0093】
上記の工程を経ることにより、感光性樹脂パターンの向きに沿った相分離構造を含む構造体を得ることができる。即ち、本発明により、相分離構造の配向性が制御可能となると考えられる。
【0094】
さらに、本発明は、感光性樹脂組成物等を物理的なガイドに用いて相分離パターンの配向性を制御する手法(グラフォエピタキシー)を用いてもよい。ガイドパターンを形成する工程は、工程1の前に、ガイドパターンを形成する工程01とすることが好ましい。
【0095】
<任意工程>
本発明において、前記工程2の後、前記ブロック共重合体を含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去することにより、パターンを形成してもよい。
具体的には、相分離構造を形成させた後の基板上のブロック共重合体を含む層のうち、P
Bブロックからなる相中のブロックの少なくとも一部(
図1における相3a)を選択的に除去(低分子量化)することにより、パターンを形成する方法が挙げられる。予めP
Bブロックの一部を選択的に除去することにより、現像液に対する溶解性を高められる結果、P
Bブロックからなる相がP
Aブロックからなる相よりも選択的に除去しやすくなる。
【0096】
このような選択的除去処理は、P
Aブロックに対しては影響せず、P
Bブロックを分解除去し得る処理であれば、特に限定されるものではなく、樹脂膜の除去に用いられる手法の中から、P
AブロックとP
Bブロックの種類に応じて、適宜選択して行うことができる。また、基板表面に予め中性化膜が形成されている場合には、当該中性化膜もP
Bブロックからなる相と同様に除去される。このような除去処理としては、例えば、酸素プラズマ処理、オゾン処理、UV照射処理、熱分解処理、及び化学分解処理等が挙げられる。
【0097】
上記の様にしてブロック共重合体を含む層の相分離によりパターンを形成させた基板は、そのまま使用することもできるが、さらに熱処理を行うことにより、基板上の高分子ナノ構造体の形状を変更することもできる。熱処理の温度は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ熱分解温度未満で行うことが好ましい。また、熱処理は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【実施例】
【0098】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
[共重合体合成例]
Ar雰囲気下でLiCl0.03gとTHF20mlを反応容器に仕込み、−78℃に冷却する。所定量のSecBuLi(ヘキサン・シクロヘキサン混合溶液)とスチレン2.7mlを添加後、−78℃のまま30分撹拌を行った。その後、トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン1.0mlを所定量添加し、−78℃で10分撹拌後、−20℃に液温を変更し、さらに48時間撹拌を行った後、トリメチルシリルクロリドを0.1ml添加し、反応溶液をメタノール200mlに注ぎ、析出した固体を濾過にて回収した。乾燥後の重量は2.6gであった。得られたブロック共重合体前駆体のMnは33300、PDIは1.08(GPC換算)、スチレン:メチルビニルシロキサン=77:23(mol比)(
1H−NMR)であった。
【0100】
【化19】
【0101】
窒素雰囲気下でブロック共重合体前駆体を1gとAIBN0.05gと6−メルカプト−1−ヘキサノール0.4gとトルエン10mlを反応容器に仕込み、80℃で2時間撹拌を行った。反応溶液をヘキサン100mlに注ぎ、析出した固体を濾過にて回収後、メタノール100mlにて洗浄を行った。乾燥後の重量は1.1gであった。得られたブロック共重合体1のMnは37800、PDIは1.16(GPC換算)、スチレン:シロキサン誘導体A(a:b)=77:23(mol比)(
1H−NMR)であった。
【0102】
【化20】
【0103】
[実施例1]
8インチのシリコンウェーハ上に、下地剤として、PGMEAを用いて1.0質量%の濃度に調整した樹脂組成物(メタクリル酸メチル/メタクリル酸=95/5からなるMw43400、Mw/Mn1.77の共重合体)を、スピンナーを用いて塗布し、200℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚20nmの下地剤層を基板上に形成した。
次いで、下地剤層の基板密着部以外の部分を溶剤(PGMEA)で除去し、下地剤層上にブロック共重合体1(実施例1)の溶液(溶媒;クロロホルム/メチルアミルケトン=3/1の混合溶媒。0.75質量%)をスピンコート(回転数4500rpm、60秒)した。
ブロック共重合体1を含む層(以下、「相分離構造形成用樹脂組成物層」と記載する)の塗布膜厚は、34nmとした。
相分離構造形成用樹脂組成物が塗布された基板を、減圧雰囲気下、130℃で12時間加熱させてアニールすることにより、相分離構造を形成させた。
その後、ブロックの選択的除去処理を行い、ライン&スペースパターンを形成した。形成されたパターンを画像解析し、垂直配向性を評価した。その結果を表1に示す。
【0104】
[比較例1〜4]
ブロック共重合体1の代わりに、下記に示すブロック共重合体2〜5を用いたこと以外は、実施例1と同様に比較例1〜4について相分離構造を形成させた。
その後、ブロックの選択的除去処理を行い、ライン&スペースパターンを形成した。形成されたパターンを画像解析し、垂直配向性を評価した。その結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
以下に、ブロック共重合体1〜5の構造を記載する。以下のブロック共重合体1〜5において、a:b=77:23(mol比)である。
【0107】
【化21】
【0108】
上記結果に示したとおり、本発明であるブロック共重合体1を用いた場合には、垂直配向性を示した。一方、比較例1〜4では、熱アニーリング後にパターンが得られなかった。