特許第6671686号(P6671686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671686
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】斜傾矯正装置および斜傾矯正方法
(51)【国際特許分類】
   F41B 5/14 20060101AFI20200316BHJP
   F41B 5/00 20060101ALI20200316BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20200316BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20200316BHJP
   G01C 9/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   F41B5/14 Z
   F41B5/00 D
   A63B69/00 515A
   A63B71/06 T
   G01C9/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-131338(P2016-131338)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-4157(P2018-4157A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 隆行
(72)【発明者】
【氏名】笠原 亮一
(72)【発明者】
【氏名】深町 花子
(72)【発明者】
【氏名】青柳 健隆
(72)【発明者】
【氏名】岡 浩一朗
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−233092(JP,A)
【文献】 特開2011−183054(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102989156(CN,A)
【文献】 国際公開第2013/088879(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102706270(CN,A)
【文献】 特表2001−520903(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0258628(US,A1)
【文献】 特開2009−002744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41B 5/00
A63B 69/00
A63B 71/06
G01C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
競技者が持つ弓の斜傾を計測し、前記競技者に対して矯正を促す斜傾矯正装置であって、
前記弓に装着された加速度センサと、
前記加速度センサによって計測された加速度をセンサデータとして入力する子端末とを備え、
前記子端末は、
前記加速度センサによって計測された加速度から前記競技者が持つ弓の斜傾を算出する斜傾算出手段と、
前記斜傾算出手段によって算出された前記弓の斜傾を表示する斜傾表示手段と
を備えることを特徴とする斜傾矯正装置。
【請求項2】
請求項1に記載された斜傾矯正装置において、
前記子端末は、
前記加速度センサによって計測された加速度に基づいて前記競技者が矢を射る際の特定の動作の型をイベントとして検出するイベント検出手段
を備えることを特徴とする斜傾矯正装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された斜傾矯正装置において、
前記子端末は、
前記斜傾算出手段によって算出された弓の斜傾の大小を予め定められている閾値と比較することによって判定する傾斜判定手段と、
前記傾斜判定手段によって判定された前記弓の斜傾の大小に基づいて前記競技者に対して音声で矯正を促す発呼手段と
を備えることを特徴とする斜傾矯正装置。
【請求項4】
請求項3に記載された斜傾矯正装置において、
前記発呼手段は、
前記弓の斜傾が前記閾値を超えた場合に前記競技者に対して音声で矯正を促す第1の発呼手段と、
前記閾値を超えていた前記弓の斜傾が前記閾値を下回った場合に所定の間隔で音声による発呼を繰り返す第2の発呼手段と
を備えることを特徴とする斜傾矯正装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載された斜傾矯正装置において、
前記子端末は、
前記加速度センサからのセンサデータの受信開始をもって起動され前記競技者の動きを撮影する動画撮影手段と、
前記動画撮影手段によって撮影された撮影データを格納する撮影データ格納手段と、
前記撮影データ格納手段に格納されている撮影データを編集加工する撮影データ編集手段と
を備えることを特徴とする斜傾矯正装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載された斜傾矯正装置において、
前記加速度センサに代えてジャイロセンサを備える
ことを特徴とする斜傾矯正装置。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載された斜傾矯正装置において、
前記斜傾算出手段は、
前記加速度センサによって計測された加速度から前記加速度センサの鉛直方向に対するY軸の傾きθを下記(1)式を用いて算出し、前記加速度センサの鉛直方向に対するX軸の傾きφを下記(2−1)式または(2−2)式を用いて算出する
ことを特徴とする斜傾矯正装置。
【数1】
【数2】
但し、上記(1)式および(2−1)式,(2−2)式において、Ax,out、Ay,out、Az,outは加速度センサのX軸,Y軸,Z軸方向の出力値。
【請求項8】
競技者が持つ弓の斜傾を計測し、前記競技者に対して矯正を促す斜傾矯正方法であって、
前記弓に装着されたセンサ端末が備える加速度センサによって加速度を計測する第1ステップと、
前記センサ端末が、前記第1ステップで計測された加速度をセンサデータとして子端末に入力する第2ステップと
を備え、
前記第2ステップは、
前記子端末が備える斜傾算出手段が、前記第1ステップによって計測された加速度から前記競技者が持つ弓の斜傾を算出する第ステップと、
前記子端末が備える斜傾表示手段が、前記第ステップによって算出された前記弓の斜傾を表示する第ステップと
を備えることを特徴とする斜傾矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、競技者が持つ弓の斜傾を計測し、競技者に対して矯正を促す斜傾矯正装置および斜傾矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アーチェリー競技では、正確に矢を的に向けるために照準器(サイト)が用いられている。競技者が照準器を覗き込むことで的の中央部への狙いを定める(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】山本博、“山本博のゼロから始めるアーチェリー”、実業之日本社、2010
【非特許文献2】アナログデバイセズ株式会社、“AN-1057 アプリケーション・ノート”、2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、照準器により狙いを定めたとしても、弓が地面に対して正立していなければ、矢は照準器により定められた的の中央へ向かう軸上を飛ぶことができない。的に対して正面方向から見て弓が時計回りに傾いていれば、矢は照準器の定めた場所より右側にずれる傾向にあり、反時計回りに傾いていれば左側にずれる傾向にあるためである。
【0005】
図13に照準器が装着された弓を示す。なお、図13において、21aはリム、21bはハンドル、21cは照準器であり、この照準器21−1をはじめとした弓21の構成器具には弓21の傾きを把握する機能はなく、競技者は自らの弓21の傾き(斜傾)を把握できない。このため、わざわざ傍で他人に見て指摘してもらう必要があり、独力による矯正がしにくい、指摘が目測の精度となってしまう、という課題があった。動画を撮影し、事後確認するという方法もあるが、リアルタイムな矯正がしにくいという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、アーチェリー競技に際する弓の斜傾を定量化し、競技者の試技中の動作傾向をリアルタイムで把握することが可能な斜傾矯正装置および斜傾矯正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために本発明は、競技者が持つ弓(21)の斜傾を計測し、競技者に対して矯正を促す斜傾矯正装置(100)であって、弓(21)に装着された加速度センサ(1−1)と、加速度センサ(1−1)によって計測された加速度をセンサデータとして入力する子端末(2)とを備え、子端末(2)は、加速度センサ(1−1)によって計測された加速度から競技者が持つ弓(21)の斜傾を算出する斜傾算出手段(2−3)と、斜傾算出手段(2−3)によって算出された弓(21)の斜傾を表示する斜傾表示手段(2−4)とを備えることを特徴とする。
【0008】
この発明では、弓(21)に加速度センサ(1−1)を装着し、この加速度センサ(1−1)によって計測された加速度を子端末(2)へ送る。子端末(2)は、加速度センサ(1−1)によって計測された加速度から競技者が持つ弓(21)の斜傾を算出し、この算出した弓(21)の斜傾を表示する。これにより、アーチェリー競技に際する弓(21)の斜傾を定量化し、競技者の試技中の動作傾向をリアルタイムで把握することが可能となる。
【0009】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって示している。また、本発明において、加速度センサに代えてジャイロセンサを設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したことにより、本発明によれば、アーチェリー競技に際する弓の斜傾を定量化し、競技者の試技中の動作傾向をリアルタイムで把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る斜傾矯正装置の要部を示す図である。
図2図2は、この斜傾矯正装置のセンサ端末の弓への設置状況を子端末と合わせて示す示す図である。
図3図3は、この斜傾矯正装置における斜傾算出部で算出された弓の斜傾θの例を示す図である。
図4図4は、アーチェリー競技を行う際のドローイング動作、アンカーリング動作、リリース動作、フォロースルー動作を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態2に係る斜傾矯正装置の要部を示す図である。
図6図6は、この斜傾矯正装置における加速度センサの鉛直方向に対するX軸の傾きφの計測値を示す図である。
図7図7は、φの差分値φ’を示す図である。
図8図8は、リリース動作発生時刻を0秒として揃えて3回の射撃動作によるθの計測値θ1〜θ3を子端末の表示部において重ねて描画した図である。
図9図9は、本発明の実施の形態3に係る斜傾矯正装置の要部を示す図である。
図10図10は、この斜傾矯正装置における発呼部の有無による斜傾の変化を示す図である。
図11図11は、実施の形態3の斜傾矯正装置において発呼部を第1の発呼部と第2の発呼部とで構成した例を示す図である。
図12図12は、本発明の実施の形態4に係る斜傾矯正装置の要部を示す図である。
図13図13は、照準器が装着された弓を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
〔実施の形態1〕
図1は本発明の実施の形態1に係る斜傾矯正装置100の要部を示す図である。図1において、1はセンサ端末、2はセンサ端末1からのセンサデータを受け取る子端末である。センサ端末1は図2に示すように弓21に設置されている。
【0014】
この斜傾矯正装置100は、例えば3軸の加速度センサや3軸のジャイロセンサを備えたセンサ端末1と、センサ端末1と無線通信を行う子端末2とから構成されている。本実施の形態において、センサ端末1は、センサとして3軸の加速度センサ1−1を備えているものとする。子端末2には、スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどが用いられる。加速度センサ1−1の3軸は例えば図2のXYZに示す軸にそれぞれ配置される。
【0015】
センサ端末1において、加速度センサ1−1は、試技中の加速度を25Hzのサンプリングレートで計測する。この計測された加速度は、センサデータとしてHDDやメモリ等の記憶部1−2へ格納された後、「BlueTooth(登録商標)」や「WiFi(登録商標)」、「LTE(登録商標)」などの無線通信機能により、送信部1−3を介して子端末2へ送信される。
【0016】
子端末2は、受信部2−1と記憶部2−2と斜傾算出部2−3と表示部2−4とを備えており、受信部2−1で受信したセンサ端末1からのセンサデータを記憶部2−2に格納する。子端末2において、斜傾算出部2−3は、記憶部2−2に格納されたセンサデータから競技者M(図4参照)が持つ弓21の斜傾を算出する。表示部2−4は斜傾算出部2−3で算出された弓21の斜傾をディスプレイ上に描画(表示)する。
【0017】
斜傾算出部2−3は、加速度センサ1−1によって計測された加速度から競技者Mが持つ弓21の斜傾を算出する。この場合、弓21の斜傾は、非特許文献2の記載を参考にこれを改変し、下記の(1)式および(2−1)式または(2−2)式により求める。
【0018】
【数1】
【0019】
【数2】
【0020】
上記の(1)式および(2−1)式,(2−2)式において、θは鉛直方向に対する加速度センサ1−1のY軸の傾き、φは鉛直方向に対する加速度センサ1−1のX軸の傾きであり、単位は度[degree]である。Ax,out、Ay,out、Az,outは加速度センサ1−1の出力値であり、単位は重力加速度G(1.0G≒9.8m/s2)である。
【0021】
上記の(1)式および(2−1)式,(2−2)式では、加速度センサ1−1の出力値の合成ベクトルの大きさ(ノルム)に対する単軸の計測値の比を求め、さらに余弦(コサイン)の逆関数を求めることで、角度の次元をもつ値として加速度センサ1−1のY軸の傾きθおよびX軸の傾きφを算出している。図2に示す軸の向きによると弓21の斜傾を把握するために必要な情報はθである。この加速度センサ1−1のY軸の傾きθを弓21の斜傾(大地の法線方向に対する弓21の傾き)として算出する。
【0022】
図3に斜傾算出部2−3算出された弓21の斜傾θの例を示す。図3において、S1はアーチェリー競技を行う際のドローイング動作(図4(a)参照)の期間を示し、S2はアンカーリング動作(図4(b)参照)の期間を示し、S3はリリース動作(図4(c)参照)の期間を示し、S4はフォロースルー動作(図4(d)参照)の期間を示している。Mは弓21を持つ競技者である。
【0023】
図3中、ドローイング動作の期間S1と比べてアンカーリング動作の期間S2には角度変化が低減しており、弓21を動かさないようにしながら狙いを定めている状況を把握できる。また、リリース動作の期間S3の後のフォロースルー動作の期間S4において、弓21が下を向く際に、θ方向にも変化が生じている様子が確認できる。このように、加速度センサ1−1のY軸の傾きθを算出することにより、弓21の斜傾を定量化することができ、ひいては競技者Mの試技中の動作傾向を把握することができる。
【0024】
〔実施の形態2〕
図5に本発明の実施の形態2に係る斜傾矯正装置200の要部を示す。同図において、図1と同一符号は図1を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0025】
この実施の形態2の斜傾矯正装置200は、実施の形態1の斜傾矯正装置100の変形例であり、子端末2がイベント検出部2−5を備えていることを特徴とする。
【0026】
イベント検出部2−5でのイベントとは、試技中のリリース動作および、フォロースルー動作の発生を指し、イベント検出部2−5は、これらの動作を上記の(2−1)式,(2−2)式によって算出されるφの値を用いて検出する。
【0027】
図6にφの計測値を、図7にφの差分値φ’を示す。横軸は時間であり、リリース動作の発生時刻を0秒とした。縦軸は角度である。なお、計測開始からt番目におけるφをφtとすると、差分値φ'tは、φ't=φt+1−φt(t=1、2、3・・・)として求めるものとする。
【0028】
リリース動作の検出はφの差分値φ’(図7)を用いて行う。リリース時には弦の激しい反動動作により、鋭いアーチファクトが計測される。このアーチファクトを用いてリリース動作を次の条件1を持って検出する。
・条件1:計測開始からt番目におけるφの差分値をφ'tとすると、φ't-1≧−3、φ't≦−3、φ't+1≧−3、を満たすこと.
【0029】
この条件を満たす場合に「1」、満たさない場合に「0」とする。図7に示した差分値φ’と合わせて示した線Iは、この条件を満たしているか否かを示す線(検出結果を示す線)であり、この検出結果を示す線Iにおいて「0」から「1」へと値が変化しているところがリリース動作が発生しているところを示す。すなわち、上記の条件1を用いることによって、リリース動作を正確に検出できている。
【0030】
フォロースルー動作の検出は、計測値φ(図6)を用いて行う。フォロースルー動作では、弓21のφ方向への回転により、φの値が0゜程度から−90゜程度にまで変化することが図6より確認できる。この特徴を利用し、次の条件2をもってφの値を検出する。
・条件2:−10゜より大きな値をとっていたφの値が−10゜以下に減少し、この変化が発生したのち1秒以内に−60゜以下となること.
【0031】
この条件2によるフォロースルー動作の検出結果を示す線を図6中に線IIとして示す。この検出結果を示す線IIでは計測値φが−60゜を下回った時刻に「0」から「1」へと変化している。これにより、フォロースルー動作を検出できていることがわかる。
【0032】
本実施の形態では、条件1および2が偶発的に満たしてしまう場合を考慮し、条件1と条件2の単独の発生ではなく、2秒以内に先に条件1が、後に条件2が発生することをもってイベント検出とする。こうしたイベント検出を行うことで、リリース動作やフォロースルー動作の検出を自動化することができるため、複数回の射撃がなされた際にも所望の動作期間中の弓21の斜傾θを簡便に把握することができる。
【0033】
図8は、リリース動作発生時刻を0秒として揃えて3回の射撃動作によるθの計測値θ1〜θ3を子端末2の表示部2−4において重ねて描画したものである。各回における弓21の斜傾θや、アンカーリング動作の期間S2の長さを容易に比較することができるため、動作の確認や改善を促すことができる。
【0034】
〔実施の形態3〕
図9に本発明の実施の形態3に係る斜傾矯正装置300の要部を示す。同図において、図5と同一符号は図5を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0035】
この実施の形態3の斜傾矯正装置300は、実施の形態2の斜傾矯正装置200の変形例であり、任意の斜傾の値をもって閾値を設定する斜傾閾値設定部2−6と、斜傾閾値設定部2−6によって設定される閾値との比較により弓21の斜傾θの大小を判定する斜傾判定部2−7と、斜傾判定部2−7によって判定された弓21の斜傾θの大小に基づいて音声を発呼することによって競技者Mへの矯正を促す発呼部2−8とを備えていることを特徴とする。
【0036】
斜傾閾値設定部2−6では、例えばスマートフォンのタッチパネル等の入力機能を用いて、斜傾の閾値を±1゜とし、射撃動作前にあらかじめ設定する。設定された閾値は斜傾判定部2−7に送信され、閾値条件を満たした場合に、すなわち射撃動作中の弓21の斜傾θが+1゜を上回った場合と−1゜を下回った場合に、発呼部2−8に通知信号を送信する。通知信号を受信した発呼部2−8は、2種類の音声を発呼し、競技者Mへ合図とすることで、斜傾が著しい競技者Mに対して矯正を促す。
【0037】
2種類の音声には、例えばスマートフォンが備える複数の発振音(ビープ音)のうち、明瞭に識別が可能な2種類を用い、+1゜を上回った場合には高音、−1゜を下回った場合には低音を発呼する。発振音は、上記閾値条件を満たす場合には発呼し続け、閾値条件から外れた場合に発呼を停止させる。
【0038】
このようにして、本実施の形態では、競技者Mに音声による発呼によってリアルタイムに自らの斜傾が著しいことを認識させることができ、発呼が停止する傾度(−1゜以上かつ+1゜以下)へと矯正させる訓練を実施可能とすることにより、斜傾を低減させることができる。図10に発呼部2−8の有無による斜傾の変化(θA:発呼有り、θB:発呼無し)を示す。アンカーリングの動作期間S2における斜傾が低減されており、斜傾の矯正が確認できる。
【0039】
なお、図11に示すように、発呼部2−8を第1の発呼部2−81と第2の発呼部2−82とで構成し、第1の発呼部2−81で斜傾が著しい競技者Mに対して矯正を促す一方、第2の発呼部2−82を用いてアンカーリング動作の期間の一定化を促すようにしてもよい。この第1の発呼部2−81と第2の発呼部2−82とを備えた斜傾矯正装置を斜傾矯正装置300’とする。
【0040】
この斜傾矯正装置300’では、閾値条件から外れることにより第1の発呼部2−81が停止した後に、第2の発呼部2−82を起動させる。第2の発呼部2−82は、メトロノームのように発振音を定期的に1秒間隔で発呼する。これにより、競技者Mはアンカーリング動作に入った後の第2の発呼部2−82による発呼回数を数え、同じ発呼回数でリリースすることで、アンカーリングの動作期間において矯正完了後からリリースまでを同じ時間間隔に揃えて矢を発射することができる。これにより、動作の安定化を促すことができる。
【0041】
また、この実施の形態3では、競技者Mへ音声で矯正を促すが、スマートフォンやタブレットのモニタを利用した発光や映像手段を用いてもよい。また、スマートフォンやタブレットの振動子(アクチュエータ)を利用した振動手段を用いてもよい。
【0042】
なお、図9図11には実施の形態2の斜傾矯正装置200の変形例を示したが、実施の形態1の斜傾矯正装置100においても、実施の形態3の斜傾矯正装置300(300’)と同様、子端末2に斜傾閾値設定部2−6,斜傾判定部2−7,発呼部2−8(2−81,2−82)を設けるようにしてもよい。
【0043】
〔実施の形態4〕
図12に本発明の実施の形態4に係る斜傾矯正装置400の要部を示す。同図において、図11と同一符号は図11を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0044】
この実施の形態4の斜傾矯正装置400は、実施の形態3の斜傾矯正装置300’の変形例であり、弓21を持った競技者Mの動画を撮影する動画撮影部2−9と、動画撮影部2−9によって撮影された撮影データを格納する撮影データ格納部2−10と、イベント検出部2−5が検出したイベントの発生時刻を参考に撮影データ格納部2−10に格納されている撮影データを編集加工する撮影データ編集部2−11とを備えていることを特徴とする。
【0045】
この実施の形態4の斜傾矯正装置400において、動画撮影部2−9は、スマートフォン等に内蔵されているカメラを用いて競技者Mの動きを撮影する。動画撮影部2−9の起動は、センサ端末1からのセンサデータの受信開始をきっかけに行われ、受信終了をもって撮影が停止される。格納された撮影データは、射撃動作期間中以外の映像が含まれ、射撃動作の閲覧のためには冗長なため、射撃動作期間の映像のみが抽出されることが望ましい。
【0046】
このため、本実施の形態では、撮影データ編集部2−11において、イベント検出部2−5によって検出したリリース動作の発生時刻を基準とし、例えばその前後10秒間を含めた計20秒間のみを切り出すことで短い動画として編集する。この機能により、センサ端末1からのセンサデータから得た射撃動作中の弓21の斜傾θと、動画から得た外見からの動作の様子とを照らして閲覧することが可能となる。
【0047】
なお、図12には実施の形態3の斜傾矯正装置300’の変形例を示したが、実施の形態1,2の斜傾矯正装置100,200においても、また実施の形態3の斜傾矯正装置300においても、実施の形態4の斜傾矯正装置400と同様、子端末2に動画撮影部2−9,撮影データ格納部2−10,撮影データ編集部2−11を設けるようにしてもよい。また、実施の形態1〜4において、加速度センサ1−1に代えてジャイロセンサを設けるようにしてもよい。
【0048】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施の形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…センサ端末、1−1…加速度センサ、1−2…記憶部、1−3…送信部、2…子端末、2−1…受信部、2−2…記憶部、2−3…斜傾算出部、2−4…表示部、2−5…イベント検出部、2−6…斜傾閾値設定部、2−7…斜傾判定部、2−8…発呼部、2−81…第1の発呼部、2−82…第2の発呼部、2−9…動画撮影部、2−10…撮影データ格納部、2−11…撮影データ編集部、21…弓、100〜400…斜傾矯正装置。
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