特許第6671732号(P6671732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6671732ホウケイ酸ガラス及びそれを用いたガラスフリット、並びに該ガラスフリットを用いたガラス成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671732
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】ホウケイ酸ガラス及びそれを用いたガラスフリット、並びに該ガラスフリットを用いたガラス成形品
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/064 20060101AFI20200316BHJP
   C03C 3/089 20060101ALI20200316BHJP
   C03C 8/02 20060101ALI20200316BHJP
   C03C 8/04 20060101ALI20200316BHJP
   C03C 8/14 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   C03C3/064
   C03C3/089
   C03C8/02
   C03C8/04
   C03C8/14
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-13536(P2019-13536)
(22)【出願日】2019年1月29日
(62)【分割の表示】特願2014-201721(P2014-201721)の分割
【原出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2019-69903(P2019-69903A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2019年2月27日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度戦略的基盤技術高度化支援事業「無電力で発光する蓄光陶磁器の高輝度化を目的とした釉薬塗布技術の高度化研究」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】509344618
【氏名又は名称】コドモエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝
(72)【発明者】
【氏名】赤井 智子
(72)【発明者】
【氏名】岩本 泰典
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−087029(JP,A)
【文献】 特開2006−273621(JP,A)
【文献】 特開平11−043349(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1397509(CN,A)
【文献】 赤井智子 他,蓄光材料とガラスの複合体の作製法とその残光特性,日本セラミック協会年会予稿集(1981−2012),2011年,2011,114頁、計3頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
C09K 11/00−11/89
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2及びB23を主成分とするホウケイ酸ガラスであって、
SiO2及びB23の合計含有量が45モル%以上であり、
Nb25、ZrO2及びLa23よりなる群から選ばれる少なくとも2種と、TiO2とを含有し、
Nb25の含有量が0〜3.8モル%であり、ZrO2の含有量が0〜4.3モル%であり、La23の含有量が0〜4モル%であり、TiO2の含有量が0.5〜3.8モル%であり、
ZnOの含有量が0〜17%であり、BaOの含有量が1〜8モル%である、ガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
【請求項2】
Nb25が含まれる場合の含有量は0.5〜3.8モル%であり、ZrO2が含まれる場合の含有量は0.5〜4.3モル%であり、La23が含まれる場合の含有量は0.5〜4.0モル%である、請求項1記載のガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
【請求項3】
TiO2の含有量が0.5〜2.8モル%である、請求項1又は2記載のガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
【請求項4】
Nb25の含有量が0〜2.8モル%である、請求項1〜3のいずれかに記載のガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
【請求項5】
ZnOの含有量が0〜7.5モル%である、請求項1〜4のいずれかに記載のガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
【請求項6】
ZnOの含有量が0〜3.8モル%である、請求項1〜5のいずれかに記載のガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスからなるガラスフリット。
【請求項8】
屈折率が1.64以上である、請求項7記載のガラスフリット。
【請求項9】
粘度が105〜106dPasとなる温度に30分間加熱した際に結晶化しない、請求項7又は8記載のガラスフリット。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載のガラスフリットと、蓄光体とを含有する、ガラス成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウケイ酸ガラス及びそれを用いたガラスフリット、並びに該ガラスフリットを用いたガラス成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高残光輝度を示す蓄光体が開発され、これを利用した蓄光体複合体が安全標識などに利用されるようになってきた。屋外で使用される複合体は耐候性の高いガラスフリットを使用したもの(ガラス蓄光体複合体)が主として用いられている。蓄光体用途を拡大するためには高輝度化が重要であり、高輝度を示す複合体の開発が行われている。
【0003】
蓄光体とガラスフリットとの複合体(ガラス蓄光体複合体)として、特許文献1には二酸化珪素、アルミナ、酸化硼素、アルカリ金属酸化物、希土類元素酸化物からなるフリットを使用することが記載されている。また、特許文献2には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、アルカリ金属酸化物を主成分とし、その含有量範囲が規定されたフリットを使用することが記載されている。これらの文献には屈折率は考慮されておらず、いずれも屈折率は1.60未満である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−133868号公報
【特許文献2】特開2012−87029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高輝度なガラス蓄光体複合体を得るためには、蓄光体の発光を有効に取り出すために屈折率が蓄光体に近いガラスフリットを用いることが好ましい。アルミン酸ストロンチウム系高輝度蓄光体の屈折率は1.65以上であり、最も一般的な、組成が74SiO−14NaO−11CaO−1Alであり、屈折率が1.51であるビンガラスに比べて高い。
【0006】
現在使用されているガラスフリットは使用する蓄光体に比べて屈折率が低いため、発光をすべて取り出せていない。発光を有効に取り出すには屈折率を蓄光体にそろえることが好ましい。このためガラスフリットの屈折率は1.64以上にすることが好ましい。複合体作製のためには、通常作製したガラスフリットを粉砕し、蓄光体と混合して再加熱される。この際、通常のガラス加工においては、結晶化温度域以上で加熱されるために結晶化は問題になりにくい。一方、ガラスフリットを蓄光体と複合化する際には、ガラスフリットが溶融して表面の光散乱が起こらなくなるように粘性が10dPas程度になる温度以上に加熱することが好ましく、また加熱によるガラスフリットと蓄光体との反応による劣化を防止するために複合化温度としてガラスフリットの粘性が10dPas程度になる温度以下に設定することが好ましいが、この温度域は特に結晶化の核生成及び成長が起きやすい温度であり、ガラス蓄光体複合体を作製する際には、高屈折率成分はガラス中で結晶化しやすく、再加熱によって結晶相が生じやすい。結晶相が生じると蓄光体からの発光を散乱させて有効に光を取り出せず、残光輝度が低下する。このため、通常の高屈折率ガラスは結晶化を起こすため使用することはできない。
【0007】
本発明は、ガラス組成を工夫することで、再加熱の際の結晶化を起こさずに屈折率を蓄光体に合わせたガラスを作製し、高輝度の蓄光体−ガラス複合体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した目的を達成すべく誠意研究を重ねてきた。その結果、ガラス組成を特定の成分とすることにより、蓄光体との複合化の際に必要な温度域で結晶化が起こらず透明性の高い複合体を作製できることを見出した。本発明は、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、完成させたものである。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.SiO2及びB23を主成分とするホウケイ酸ガラスであって、
SiO2及びB23の合計含有量が45モル%以上であり、
Nb25、ZrO2及びLa23よりなる群から選ばれる少なくとも2種と、TiO2とを含有し、
Nb25の含有量が0〜3.8モル%であり、ZrO2の含有量が0〜4.3モル%であり、La23の含有量が0〜4モル%であり、TiO2の含有量が0.5〜3.8モル%であり、
ZnOの含有量が0〜17%であり、BaOの含有量が1〜8モル%である、ガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
項2.Nb25が含まれる場合の含有量は0.5〜3.8モル%であり、ZrO2が含まれる場合の含有量は0.5〜4.3モル%であり、La23が含まれる場合の含有量は0.5〜4.0モル%である、項1に記載のガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
項3.TiO2の含有量が0.5〜2.8モル%である、項1又は2に記載のガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
項4.Nb25の含有量が0〜2.8モル%である、項1〜3のいずれかに記載のガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
項5.ZnOの含有量が0〜7.5モル%である、項1〜4のいずれかに記載のガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
項6.ZnOの含有量が0〜3.8モル%である、項1〜5のいずれかに記載のガラス蓄光体複合体用のホウケイ酸ガラス。
項7.項1〜6のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスからなるガラスフリット。
項8.屈折率が1.64以上である、項7に記載のガラスフリット。
項9.粘度が105〜106dPasとなる温度に30分間加熱した際に結晶化しない、項7又は8に記載のガラスフリット。
項10.項7〜9のいずれかに記載のガラスフリットと、蓄光体とを含有する、ガラス成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガラス蓄光体複合体を作製した際に発光を有効に取り出すために屈折率を向上させつつも、ガラス蓄光体複合体を作製する際の加熱の際の結晶化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.ホウケイ酸ガラス
本発明のホウケイ酸ガラスは、SiO及びBを主成分とするホウケイ酸ガラスであって、
SiO及びBの合計含有量が45モル%以上であり、
Nb、TiO、ZrO及びLaよりなる群から選ばれる少なくとも3種を含有し、ZrOの含有量が0〜4.3モル%である。
【0011】
本発明のホウケイ酸ガラスにおいて、SiOは、ガラスを構成する主成分であり、よりガラスを安定化させるとともに、より屈折率を低下させない観点から、その含有量は、20〜50モル%が好ましく、25〜45モル%がより好ましい。
【0012】
本発明のホウケイ酸ガラスにおいて、Bは、ガラスを構成する主成分であり、蓄光体との複合化のために必要な温度をより低くし、屈折率をより向上させ、ガラスをより安定にするとともに、蓄光体との反応性をより低下させる観点から、その含有量は、7〜30モル%が好ましく、10〜27モル%がより好ましい。
【0013】
本発明のホウケイ酸ガラスにおいて、SiO及びBの合計含有量は、45モル%以上(特に45〜65モル%)、好ましくは50〜60モル%である。SiO及びBの合計含有量が少なすぎるとガラスを安定化させることができない。一方、SiO及びBの合計含有量が多すぎると屈折率を十分に向上させることができないとともに、蓄光体との複合化のために必要な温度を十分に低くできないために蓄光体との複合化の際に蓄光体が劣化してしまう。
【0014】
本発明のホウケイ酸ガラスにおいては、高屈折率成分として、Nb、TiO、ZrO及びLaよりなる群から選ばれる少なくとも3種を含有する。高屈折率成分は、多ければ多いほどガラスの屈折率を向上させることができるが、1種の成分を多く含ませると、蓄光体と複合化する際に結晶化しやすいため、上記高屈折率成分を少量ずつ、多くの種類を含ませることが好ましい。このため、本発明においては、上記の高屈折率成分のうち少なくとも3種を含有する。
【0015】
これらの高屈折率成分のなかでも、最も屈折率を向上させることができることから、少なくともNbを含むことが好ましい。つまり、Nbを含み、さらに、TiO、ZrO及びLaの少なくとも2種を含有することが好ましい。なかでも、Nb、TiO及びLaを含有するか、Nb、TiO及びZrOを含有するか、Nb、TiO、ZrO及びLaを含有することが好ましい。
【0016】
高屈折率成分のうち、Nbは、最も屈折率を向上させる効果を有するが、蓄光体との複合化の際に必要な温度域で結晶化をより抑制するために含有量は多すぎないことが好ましい。また、Laと併用する場合は、より結晶化しやすくなるため、含有量をより低くすることが好ましい。このため、Nbの含有量は、より屈折率を向上させるとともに、より結晶化を抑制する観点から、0〜3.8モル%(特に0.5〜3.8モル%)が好ましく、0〜2.8モル%(特に0.5〜2.8モル%)がより好ましい。また、Laと併用する場合は、Nbの含有量は、0〜2.8モル%(特に0.5〜2.8モル%)が好ましく、0〜2.5モル%(特に0.5〜2.5モル%)がより好ましいが、ZnOの含有量が少ない(0〜17モル%、特に0〜7.5モル%)場合は、0〜3.8モル%(特に0.5〜3.8モル%)とすることもできる。
【0017】
高屈折率成分のうち、TiOは、屈折率を向上させる効果を有するが、蓄光体との複合化の際に必要な温度域で結晶化をより抑制するとともに、着色をより抑制するために含有量は多すぎないことが好ましい。このため、TiOの含有量は、より屈折率を向上させるとともに、蓄光体との複合化の際に必要な温度域でより結晶化を抑制し、着色をより抑制する観点から、0〜3.8モル%(特に0.5〜3.8モル%)が好ましく、0〜2.8モル%(特に0.5〜2.8モル%)がより好ましい。
【0018】
高屈折率成分のうち、ZrOは、屈折率及び耐火性(熱膨張率)を向上させる効果を有するが、含有量が多いと蓄光体との複合化の際に必要な温度域で結晶化する。このため、ZrOの含有量は、0〜4.3モル%(特に0.5〜4.3モル%)、好ましくは0〜3.3モル%(特に1.5〜3.3モル%)である。
【0019】
高屈折率成分のうち、Laは、屈折率を向上させる効果を有するが、蓄光体との複合化の際に必要な温度域で結晶化をより抑制するために含有量は多すぎないことが好ましい。また、Nbと併用する場合は、より結晶化しやすくなるため、含有量をより低くすることが好ましい。このため、Laの含有量は、より屈折率を向上させるとともに、蓄光体との複合化の際に必要な温度域でより結晶化を抑制する観点から、0〜4モル%(特に0.5〜4モル%)が好ましく、0〜2モル%(特に0.5〜2モル%)がより好ましい。また、Nbと併用する場合は、Laの含有量は、0〜2モル%(特に0.5〜2モル%)が好ましく、0〜1.5モル%(特に0.5〜1.5モル%)がより好ましいが、ZnOの含有量が少ない(0〜17モル%、特に0〜7.5モル%)場合は、0〜4モル%(特に0.5〜4モル%)とすることもできる。
【0020】
本発明のホウケイ酸ガラスには、ZnOが含まれていてもよい。ZnOは、ガラス転移温度を低減することができる(蓄光体との複合化の際に必要な温度を低減することができるため結晶化をより抑制することができる)とともに、屈折率を向上させる効果も有する。ただし、ガラスが柔らかくなると結晶化しやすくなるとともに、NbとLaとを併用する場合は、より結晶化しやすくなるため含有量は多すぎないことが好ましい。なお、屈折率向上の観点からはZnOの含有量は多いほうが好ましいが、結晶化抑制の観点からはZnOの含有量は少ないほうが好ましい。このため、ZnOの含有量は、結晶化抑制の観点からは、0〜17モル%が好ましく、0〜7.5モル%がより好ましく、0〜3.8モル%がさらに好ましい。また、ZnOの含有量は、屈折率向上の観点からは、0〜17モル%が好ましく、5〜16モル%がより好ましく、8〜15モル%がさらに好ましい。
【0021】
本発明のホウケイ酸ガラスには、Alが含まれていてもよい。Alは、耐水性を向上させる効果を有する。Alを含ませる場合、その含有量は、より耐水性を向上させる観点から、0.2〜5モル%が好ましく、0.5〜3モル%がより好ましい。
【0022】
本発明のホウケイ酸ガラスには、アルカリ金属酸化物が含まれていてもよい。アルカリ金属酸化物としては、例えば、LiO、NaO、KO等が挙げられ、ガラス転移温度を低減する(蓄光体との複合化の際に必要な温度を低減することができるため結晶化をより抑制する)とともにガラスを安定化しやすい効果を有するが、含有量が多すぎると屈折率及び耐水性が低下しやすく、蓄光体との複合化の際に必要な温度域で結晶化もしやすい。また、LiOとZnOとを併用する場合は結晶化しやすいが、本態様ではZnOの含有量が少ないため、LiOの含有量を若干多めにしても結晶化を抑制することができる。このような観点から、LiOの含有量は3〜20モル%(特に5〜15モル%)が好ましく、NaOの含有量は1〜5モル%(特に2〜4モル%)が好ましく、KOの含有量は0〜5モル%(特に0〜3モル%)が好ましい。また、アルカリ金属酸化物の含有量は5〜30モル%が好ましく、7〜25モル%がより好ましい。
【0023】
本発明のホウケイ酸ガラスには、アルカリ土類金属酸化物が含まれていてもよい。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、MgO、CaO、SrO、BaO等が挙げられ、ガラスを安定化しやすい効果を有するが、含有量が多すぎると耐水性が低下しやすく、蓄光体との複合化の際に必要な温度域で結晶化もしやすい。このような観点から、MgOの含有量は0〜5モル%(特に1〜4モル%)が好ましく、CaOの含有量は4〜15モル%(特に5〜10モル%)が好ましく、SrOの含有量は0〜5モル%(特に1〜4モル%)が好ましく、BaOの含有量は1〜8モル%(特に2〜6モル%)が好ましい。また、アルカリ土類金属酸化物の含有量は5〜25モル%が好ましく、6〜20モル%がより好ましい。
【0024】
本発明のホウケイ酸ガラスには、CaFが含まれていてもよい。CaFは、ガラス転移温度を低減する(蓄光体との複合化の際に必要な温度を低減する)効果を有するが、含有量が多すぎるとフッ化物の結晶が析出しやすい。このような観点から、CaFの含有量は0〜7モル%(特に1〜5モル%)が好ましい。
【0025】
本発明のホウケイ酸ガラスには、SnOが含まれていてもよい。SnOは、欠陥の生成による黒化を抑制する効果を有するが、含有量が多すぎると蓄光体との複合化の際に必要な温度域で結晶化しやすい。このような観点から、SnOの含有量は0〜2モル%(特に0.1〜1モル%)が好ましい。
【0026】
本発明のホウケイ酸ガラスには、Gdが含まれていてもよい。Gdは、Laと同様の効果を有するが、含有量が多すぎると蓄光体との複合化の際に必要な温度域で結晶化しやすい。このような観点から、Gdの含有量は0〜2モル%(特に0.1〜1モル%)が好ましい。
【0027】
2.ガラスフリット
本発明のホウケイ酸ガラスは、上記の組成を有していることから、本発明のホウケイ酸ガラスからなるガラスフリットは、種々の優れた特性を有している。
【0028】
本発明のガラスフリットの屈折率は、1.64以上(特に1.64〜1.67)が好ましく、1.65以上(特に1.65〜1.668)がより好ましい。屈折率を上記範囲内とすることにより、例えば、アルミン酸ストロンチウム系高輝度蓄光体の屈折率は1.65以上であることから、本発明のガラスフリットの屈折率を蓄光体の屈折率に近づけ、蓄光体を含有するガラス成形品を製造した際に蓄光体の発光をより有効に取り出すことができる。特に、特許文献2に記載のガラスフリットは、屈折率が1.52であることと比較すると、本発明のガラスフリットは、蓄光体に屈折率を近づけることができることから、蓄光体の発光をより有効に取り出すことができる。本発明のガラスフリットの屈折率は、アッベ屈折計を用いて屈折率1.70以上の中間液を使用して測定するものとする。
【0029】
本発明のガラスフリットの熱膨張係数は、耐熱性をより向上させる観点から、7.0×10−6〜15.0×10−6(1/℃)が好ましく、7.5×10−6〜13.0×10−6(1/℃)がより好ましく、7.8×10−6〜12.0×10−6(1/℃)がさらに好ましい。本発明のガラスフリットの熱膨張係数は、熱膨張計を用いて測定するものとする。
【0030】
本発明のガラスフリットのガラス転移温度は、耐熱性をより向上させるとともに、蓄光体との複合化の際に必要な温度を低減することができるため結晶化をより抑制することができる観点から、430〜600℃が好ましく、450〜570℃がより好ましく、460〜550℃がさらに好ましい。本発明のガラスフリットのガラス転移温度は、熱膨張計を用いて測定するものとする。
【0031】
本発明のガラスフリットは、上記のような組成を有するホウケイ酸ガラスからなるため、蓄光体との複合化の際に必要な温度域において結晶化しにくい。具体的には、粘度が10〜10dPasとなる温度(具体的には650〜800℃)に30分間加熱した際に結晶化しないことが好ましい。これにより、蓄光体との複合化の際に結晶化をより抑制することができる。
【0032】
本発明のガラスフリットは、ガラスフリット製造原料(ガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)の構成成分、又は該成分を含むもしくは焼成により該成分を生成しうる、天然鉱石、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)を、ガラスフリット組成が所望の組成となるように秤量して混合し、1000〜1500℃程度の温度で溶融させた後、溶融物を流し出してそのまま冷却(空気中で放冷)するか又は水中に入れて急冷することにより製造することができる。この後、必要に応じて、細かく粉砕(粗粉砕及び微粉砕)することにより粒径を制御してもよい。この場合、ガラスフリットの粒径は、取扱性を考慮して適宜選択することができるが、通常、平均粒径として、5〜100μmが好ましく、25〜75μmがより好ましい。
【0033】
本発明のガラスフリットは、上記のような特性を有していることから、蓄光体との複合化(蓄光体を含有するガラス成形品の製造)のために特に有用である。
【0034】
3.ガラス成形品
本発明のガラス成形品は、本発明のガラスフリットと蓄光体とを含有する。
【0035】
本発明のガラスフリットは、上記説明したものである。
【0036】
本発明のガラス成形品において、本発明のガラスフリットの含有量は、複合体の輝度を最大にするために蓄光体間の空隙を完全に埋めるという観点から、60〜90重量%が好ましく、70〜80重量%がより好ましい。
【0037】
蓄光体としては、特に制限はなく、ユーロピウム等で賦活され、マンガン、ジルコニウム、ニオブ、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等で共賦活されるとともに、一部をホウ素で置換してアルミン酸塩(マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、亜鉛塩等)を使用できる。このような蓄光体としては、例えば、特開平7−11250号公報、特開平8−73845号公報等に記載されている蓄光体(蓄光性蛍光体、残光性蛍光体)等を使用できる。これらの蓄光体は、公知又は市販の蓄光体から適宜選択し、単一種又は複数種を混合し発光色等の発光特性を調整して用いることができる。蓄光体の発光色は、特に限定されず、例えば、青色、緑色、青緑色等の何れであってもよい。
【0038】
蓄光体の平均粒子径は、特に制限はないが、大きい蓄光体のほうが、高い残光輝度が得られやすいことから、1〜400μmが好ましく、50〜300μmがより好ましい。蓄光体の平均粒子径は、光学顕微鏡により測定するものとする。
【0039】
本発明のガラス成形品において、蓄光体の含有量は、蓄光体間の空隙が完全に埋めて複合体の輝度を最大にするという観点から、10〜40重量%が好ましく、20〜30重量%がより好ましい。
【0040】
本発明のガラス成形品は、例えば、本発明のガラスフリットと、必要に応じて微細に粉砕された蓄光体とを混合し、得られた混合物を、ガラスフリットのガラス転移点よりも180〜280℃(特に200〜250℃)高い温度で焼成(溶融成形)することにより製造することができる。
【0041】
焼成(溶融成形)の際には、適宜な型に詰めてもよい。使用できる型としては、耐熱性の高い材質のものであればよく、金属製、セラミック製等の何れであってもよいが、得られるガラス成形品の取り出しやすさ等の点で、金属製、石膏製の型が好ましい。石膏製の型の場合は、焼成後、型を砕くことにより、ガラス成形品を容易に取り出すことができる。
【0042】
なお、本発明のガラスフリット及び蓄光体の他、さらに、有機バインダー、水、有機溶媒等を加えて混合又は混練し、これらの混合物又は混練物を必要に応じて上記の型に入れて焼成(溶融成形)してもよい。
【0043】
有機バインダーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース系樹脂;アラビアゴム等の水溶性乃至親水性高分子;スキージーオイル、アクリル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの有機バインダーは焼成時に焼失するものである。
【0044】
本発明のガラス成形品は、上記のようにして製造したガラス成形品を再度粉砕して、適宜な大きさの蓄光体入りのガラスフリットとし、この蓄光体入りガラスフリットを所望の型に入れて、上記の温度で焼成(溶融成形)することで、再度ガラス成形品を製造してもよい。
【0045】
本発明のガラス成形品の形状は特に制限されず、例えば、球状、半球状、楕球状、碁石状、平板状(底面が円形、四角形、三角形、星形、ハート形、花びら形状等)、角柱状、角錐状、円柱状、円錐状、不定形状等の何れであってもよい。
【0046】
本発明のガラス成形品の大きさも特に限定されない。本発明のガラス成形品の厚み(最大厚み)は、例えば、1〜30mmが好ましく、2〜10mmがより好ましい。
【0047】
本発明のガラス成形品は、その表面が透明ガラス層で被覆されていてもよい。本発明のガラス成形品の表面に透明ガラス層を設けることにより、表面を平滑化できるとともに、本発明のガラス成形品の表面付近に存在する蓄光体が空気、水等により変質及び/又は劣化することを防止することができる。この際、透明ガラス層は、本発明のガラスフリットからなるものを採用することが好ましい。透明ガラス層は、例えば、本発明のガラスフリットを含むコーティング組成物を用いて、本発明のガラス成形品の表面の一部又は全体に該コーティング組成物からなる被複層を設け、例えば700〜850℃(特に750〜830℃)の温度で焼成することにより形成できる。
【0048】
前記コーティング組成物は、例えば、本発明のガラスフリットを水溶きしたり、本発明のガラスフリットと有機バインダーと溶媒(水及び/又は有機溶剤)とを混練したりすることにより調製できる。有機バインダーとしては、前記例示のものを使用でき、焼成時に焼失する。また、コーティング組成物の形態は、塗布性等の観点から、分散液又はペーストが好ましい。
【0049】
前記コーティング組成物を用いた被複層の形成は、慣用の方法、例えば、印刷法(スクリーン印刷法等)、スプレー法、浸し掛け法、流し掛け法、刷毛法、筆塗り法、転写法等により行うことができる。
【0050】
透明ガラス層の厚みは特に限定されず、目的に応じて適宜設定できるが、通常、10〜2000μmが好ましく、20〜200μmがより好ましい。
【0051】
このような構成を有する本発明のガラス成形品は、本発明のガラスフリット(本発明のホウケイ酸ガラス)が上記構成を有していることから、製造時の結晶化を抑制することができるとともに、内在する蓄光体の発光を有効に取り出すことができる。このため、電力を用いない屋外照明、停電時の安全標識等の用途に有用である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0053】
実施例1
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化チタン、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化カルシウム、炭酸バリウム、酸化スズ、及び酸化ガドリニウムを所定量混合し、白金るつぼ内で1200℃で溶融し、空気中で放冷することで、表1に示す組成を有する実施例1のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0054】
実施例2
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1300℃で溶融し、空気中で放冷することで、表1に示す組成を有する実施例2のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0055】
実施例3
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1300℃で溶融し、空気中で放冷することで、表1に示す組成を有する実施例3のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0056】
実施例4
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1300℃で溶融し、空気中で放冷することで、表1に示す組成を有する実施例4のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0057】
実施例5
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1300℃で溶融し、空気中で放冷することで、表1に示す組成を有する実施例5のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0058】
実施例6
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1300℃で溶融し、空気中で放冷することで、表1に示す組成を有する実施例6のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0059】
実施例7
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1300℃で溶融し、空気中で放冷することで、表1に示す組成を有する実施例7のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0060】
実施例8
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1250℃で溶融し、空気中で放冷することで、表1に示す組成を有する実施例8のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0061】
実施例9
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、フッ化カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1200℃で溶融し、空気中で放冷することで、表1に示す組成を有する実施例9のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0062】
参考例1
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1300℃で溶融し、空気中で放冷することで、表2に示す組成を有する参考例1のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0063】
参考例2
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1300℃で溶融し、空気中で放冷することで、表2に示す組成を有する参考例2のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0064】
比較例1
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1250℃で溶融し、空気中で放冷することで、表2に示す組成を有する比較例1のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0065】
比較例2
二酸化ケイ素、ホウ酸、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1250℃で溶融し、空気中で放冷することで、表2に示す組成を有する比較例2のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0066】
比較例3
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、フッ化カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1300℃で溶融し、空気中で放冷することで、表2に示す組成を有する比較例3のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0067】
比較例4
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1150℃で溶融し、空気中で放冷することで、表2に示す組成を有する比較例4のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0068】
比較例5
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ジルコニウム、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1300℃で溶融し、空気中で放冷することで、表2に示す組成を有する比較例5のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0069】
比較例6
二酸化ケイ素、ホウ酸、酸化チタン、炭酸ランタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及び酸化スズを所定量混合し、白金るつぼ内で1300℃で溶融し、空気中で放冷することで、表2に示す組成を有する比較例6のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)を得た。
【0070】
屈折率
実施例1〜9、比較例1〜6及び参考例1〜2のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)について、アッベ屈折計を用いて屈折率1.70以上の中間液を使用して屈折率(nd)を測定した。結果を表1及び2に示す。
【0071】
熱膨張係数及びガラス転移温度
実施例1〜9、比較例1〜6及び参考例1〜2のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)について、熱膨張計を用いて熱膨張係数α及びガラス転移温度Tgを測定した。結果を表1及び2に示す。
【0072】
再加熱時結晶化
実施例1〜9、比較例1〜6及び参考例1〜2のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)について、蓄光体との複合化の際に必要な温度域である700℃まで30分間加熱し、結晶の析出の有無を目視及びX線回折測定により観測した。結晶の析出が観測されなかった場合を○、結晶の析出が観測された場合を×として、結果を表1及び2に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
以上の結果、実施例1〜9では、いずれも、屈折率は1.65以上であり、蓄光体の屈折率と近い結果となった。また、実施例1〜9では、いずれも結晶化を起こしやすい700℃での30分間の再加熱においても結晶析出は見られなかった。このことから、実施例1〜9のガラスフリットは、蓄光体との複合化に適していることが示唆された。
【0076】
一方、比較例1〜4及び参考例1〜2では、700℃での再加熱により結晶化した。比較例1及び参考例1〜2ではニオブ系の結晶が析出し、比較例1〜2では亜鉛シリケートの結晶が析出し、比較例3では酸化ジルコニウム系の結晶が析出し、比較例4ではバリウム系の結晶が析出した。また、比較例4ではガラス転移温度が低すぎるため、かえって結晶化しやすくなっていることが示唆された。
【0077】
比較例5〜6では、700℃での再加熱によっても結晶化しなかったが、屈折率の改善効果が不十分であった。
【0078】
実施例10
一例として、実施例1のガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)100重量部に対して、蓄光体(根本特殊化学製のユーロピウム、ジスプロシウム含有アルミン酸ストロンチウム、粒径150μm)を10重量部混合し、エタノールを添加して均一混合後に白金皿に入れ、減圧下で650℃まで加熱した。
【0079】
その結果、得られた複合体は、ガラスフリットと蓄光体との界面が見えにくく、半透明な複合体であり、蓄光体の発光を有効に取り出すことができることが示唆された。