(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記テンショナーは、前記複数のバンドガイドローラーのうちの少なくとも1つを前記円盤ヘッドから離れる方向に移動させる移動アクチュエータを備えていることを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
前記押し付けバンドからはみ出した前記研磨具の露出面は前記基板の前記エッジ部に接触する研磨面を構成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の研磨装置。
前記複数のバンドガイドローラーのうちの少なくとも1つを前記円盤ヘッドから離れる方向に移動させて、前記押し付けバンドにテンションを付与することを特徴とする請求項7に記載の研磨方法。
前記研磨具の一端部を保持した第1のリールと前記円盤ヘッドとの間に配置された第1の位置決めローラー、および前記研磨具の他端部を保持した第2のリールと前記円盤ヘッドとの間に配置された第2の位置決めローラーによって前記研磨具を案内し、
前記第1の位置決めローラーの第1の接触面および第2の位置決めローラーの第2の接触面に前記研磨具の側端を接触させながら、前記研磨具を進行させ、
前記第1の位置決めローラーの軸心および前記第2の位置決めローラーの軸心は、前記円盤ヘッドの軸心と平行であることを特徴とする請求項7または8に記載の研磨方法。
前記第1のリールと前記第1の位置決めローラーとの間に配置された第1の送りローラー、および前記第2のリールと前記第2の位置決めローラーとの間に配置された第2の送りローラーによって進行する前記研磨具を案内し、
前記第1の送りローラーの軸心および前記第2の送りローラーの軸心は、前記第1の位置決めローラーの軸心および前記第2の位置決めローラーの軸心に対して傾いていることを特徴とする請求項9に記載の研磨方法。
前記円盤ヘッドは、前記押し付けバンドからはみ出した前記研磨具の露出面を前記基板の前記エッジ部に押し付けて前記基板を研磨することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の研磨方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図14および
図15に示す研磨装置は、円盤ヘッド112の外周面に沿って密着する研磨テープ105をその表面側(すなわち研磨面側)から支持する構造を有していない。したがって、ウェハWの研磨中にウェハWの半径方向の力(
図15の矢印参照)が研磨テープ105に作用した場合、
図15の仮想線(二点鎖線)に示すように、研磨テープ105が所定の位置からずれる可能性がある。
【0006】
さらに、円盤ヘッド112の外周面が変形している場合においても、ウェハWの研磨中に研磨テープ105が所定の位置からずれる可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたもので、ウェハなどの基板の研磨中に研磨具の位置ずれを確実に防止することができ、滑らかな垂直面を基板のエッジ部に形成することができる研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板のエッジ部を帯状の研磨具を用いて研磨する少なくとも1つの研磨ユニットとを備え、前記研磨ユニットは、前記研磨具の裏面を支持する外周面を有する円盤ヘッドと、前記研磨具を前記円盤ヘッドの外周面に押し付ける押し付けバンドと、前記押し付けバンドを支持する複数のバンドガイドローラーとを備えることを特徴とする研磨装置である。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記研磨ユニットは、前記押し付けバンドにテンションを付与するテンショナーを備えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記テンショナーは、前記複数のバンドガイドローラーのうちの少なくとも1つを前記円盤ヘッドから離れる方向に移動させる移動アクチュエータを備えていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨ユニットは、前記研磨具の両端部をそれぞれ保持した第1のリールおよび第2のリールと、前記第1のリールと前記円盤ヘッドとの間に配置された第1の位置決めローラーと、前記第2のリールと前記円盤ヘッドとの間に配置された第2の位置決めローラーとをさらに備え、前記第1の位置決めローラーは、前記研磨具の側端が接触する第1の接触面を有する第1のフランジ部を備え、前記第2の位置決めローラーは、前記研磨具の側端が接触する第2の接触面を有する第2のフランジ部を備え、前記第1の位置決めローラーの軸心および前記第2の位置決めローラーの軸心は、前記円盤ヘッドの軸心と平行であることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記研磨ユニットは、前記第1のリールと前記第1の位置決めローラーとの間に配置された第1の送りローラーと、前記第2のリールと前記第2の位置決めローラーとの間に配置された第2の送りローラーとをさらに備え、前記第1の送りローラーの軸心および前記第2の送りローラーの軸心は、前記第1の位置決めローラーの軸心および前記第2の位置決めローラーの軸心に対して傾いていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記押し付けバンドからはみ出した前記研磨具の露出面は前記基板の前記エッジ部に接触する研磨面を構成することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様は、基板をその軸心まわりに回転させ、円盤ヘッドの外周面で帯状の研磨具の裏面を支持し、複数のバンドガイドローラーに支持された押し付けバンドで前記研磨具を前記円盤ヘッドの外周面に押し付けながら、進行する前記研磨具を前記基板のエッジ部に押し付けて前記基板を研磨することを特徴とする研磨方法である。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記複数のバンドガイドローラーのうちの少なくとも1つを前記円盤ヘッドから離れる方向に移動させて、前記押し付けバンドにテンションを付与することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨具の一端部を保持した第1のリールと前記円盤ヘッドとの間に配置された第1の位置決めローラー、および前記研磨具の他端部を保持した第2のリールと前記円盤ヘッドとの間に配置された第2の位置決めローラーによって前記研磨具を案内し、前記第1の位置決めローラーの第1の接触面および第2の位置決めローラーの第2の接触面に前記研磨具の側端を接触させながら、前記研磨具を進行させ、前記第1の位置決めローラーの軸心および前記第2の位置決めローラーの軸心は、前記円盤ヘッドの軸心と平行であることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記第1のリールと前記第1の位置決めローラーとの間に配置された第1の送りローラー、および前記第2のリールと前記第2の位置決めローラーとの間に配置された第2の送りローラーによって進行する前記研磨具を案内し、前記第1の送りローラーの軸心および前記第2の送りローラーの軸心は、前記第1の位置決めローラーの軸心および前記第2の位置決めローラーの軸心に対して傾いていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記円盤ヘッドは、前記押し付けバンドからはみ出した前記研磨具の露出面を前記基板の前記エッジ部に押し付けて前記基板を研磨することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、押し付けバンドは研磨具を円盤ヘッドの外周面に押し付けるため、押し付けバンドと研磨具との間および研磨具と円盤ヘッドとの間には大きな静止摩擦が働く。したがって、基板の研磨中に研磨具が所定の位置からずれることを確実に防止することができる。結果として、研磨具は、基板のエッジ部に滑らかな垂直面を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す正面図であり、
図2は、研磨装置の側面図である。研磨装置は、基板の一例であるウェハWを保持して回転させる基板保持部1と、帯状の研磨具である研磨テープ5を用いてウェハWのエッジ部を研磨する研磨ユニット7とを備えている。基板保持部1は、ウェハWの下面を保持し、ウェハWをその中心軸まわりに水平に回転させるように構成されている。基板保持部1の上面はウェハWを保持する基板保持面1aを構成している。
【0017】
基板保持部1に保持されたウェハWの中心部の上方には、純水などの研磨液をウェハWの上面に供給する研磨液供給ノズル10(
図2参照)が配置されている。ウェハWのエッジ部の研磨中は、研磨液供給ノズル10から研磨液がウェハWの中心部に供給される。研磨液は、遠心力によってウェハWの上面全体に広がり、ウェハWを研磨屑から保護する。
【0018】
研磨ユニット7は、研磨テープ5の裏面を支持する外周面を有する円盤ヘッド12と、研磨テープ5を円盤ヘッド12の外周面に押し付ける押し付けバンド14と、押し付けバンド14を支持する複数のバンドガイドローラー15A〜15Dと、円盤ヘッド12をその軸心Oまわりに回転させるヘッドモータ18とを備えている。研磨テープ5の一方の面(すなわち表面)は、砥粒を保持する研磨面を構成し、他方の面(すなわち裏面)は円盤ヘッド12の外周面に支持されている。
【0019】
図3はウェハWの接線方向を示す図である。
図3に示すように、ウェハWの上から見た時に、円盤ヘッド12はウェハWの接線上に位置している。円盤ヘッド12の軸心Oは、基板保持部1に保持されたウェハWの表面と平行であり、かつウェハWの接線方向に対して垂直である。
【0020】
図2に示すように、円盤ヘッド12は、ヘッドモータ18の駆動軸に連結されている。ヘッドモータ18は所定の速度で円盤ヘッド12を回転させるように構成されている。ヘッドモータ18は、基台25に固定されている。基台25は、ウェハWの接線方向と平行な方向に延びる水平リニアガイド30によって支持されており、この水平リニアガイド30によって基台25の移動はウェハWの接線方向と平行な方向に制限される。ヘッドモータ18は基台25に固定されているので、円盤ヘッド12およびヘッドモータ18は基台25とともに移動可能である。
【0021】
図1に示すように、研磨ユニット7は、円盤ヘッド12をウェハWの接線方向に移動させるヘッド移動装置としてのエアシリンダ50をさらに備えている。エアシリンダ50のピストンロッド51は、基台25(
図2参照)に連結されている。上述したように、円盤ヘッド12は基台25とともに移動可能である。したがって、エアシリンダ50は、研磨テープ5が円盤ヘッド12の外周面上に支持された状態で、円盤ヘッド12をウェハWの接線方向に移動させる。円盤ヘッド12の軸心OがウェハWの接線方向と垂直な状態で円盤ヘッド12をウェハWの接線方向に移動させるヘッド移動装置として、エアシリンダ50に代えて、ボールねじとサーボモータとの組み合わせを使用してもよい。
【0022】
エアシリンダ50は、円盤ヘッド12をウェハWの接線方向に移動させることによって、円盤ヘッド12の外周面上の研磨テープ5をウェハWのエッジ部に接触させる。研磨テープ5は円盤ヘッド12の下端部分によってウェハWのエッジ部に押し付けられる。
【0023】
研磨ユニット7は、研磨テープ5の両端部(一端部および他端部)をそれぞれ保持した第1のテンションリール(第1のリール)41および第2のテンションリール(第2のリール)42と、第1のテンションリール41および第2のテンションリール42を互いに反対方向に回転させるトルクを発生する第1のテンションモータ43および第2のテンションモータ44をさらに備えている。第1のテンションリール41および第2のテンションリール42は、円盤ヘッド12の上方に配置されている。
【0024】
第1のテンションリール41および第2のテンションリール42は、第1のテンションモータ43および第2のテンションモータ44の駆動軸にそれぞれ連結されている。テンションリール41,42の軸心はウェハWの接線方向と平行、つまり、円盤ヘッド12の軸心Oに対して垂直である。
【0025】
研磨テープ5は、第1のテンションリール41から円盤ヘッド12を経由して第2のテンションリール42に延びている。研磨テープ5は、円盤ヘッド12の外周面に沿って湾曲し、この湾曲した部分がウェハWに接触される。第1のテンションリール41および第2のテンションリール42には、これらテンションリール41,42を互いに反対方向に回転させるトルクが加えられているので、研磨テープ5にはテンションが与えられる。
【0026】
図2に示すように、円盤ヘッド12の外周面は、研磨テープ5の幅よりも広い幅を有してもよい。
【0027】
研磨ユニット7は、第1のテンションリール41と円盤ヘッド12との間に配置された第1の位置決めローラー27と、第2のテンションリール42と円盤ヘッド12との間に配置された第2の位置決めローラー28と、第1のテンションリール41と第1の位置決めローラー27との間に配置された第1の送りローラー52と、第2のテンションリール42と第2の位置決めローラー28との間に配置された第2の送りローラー53とをさらに備えている。位置決めローラー27,28および送りローラー52,53は回転自在に構成されている。
【0028】
テンションリール41,42と送りローラー52,53との間には、研磨テープ5の裏面を支持する2つの支持ローラー56,57が設けられている。第1のおよび第2の支持ローラー56,57は回転自在に構成されており、支持ローラー56,57の軸心はテンションリール41,42の軸心と平行である。研磨テープ5は、送りローラー52,53と支持ローラー56,57との間において鉛直方向に進行し、さらに、支持ローラー56,57とテンションリール41,42との間において水平方向に進行する。
【0029】
位置決めローラー27,28は、送りローラー52,53と円盤ヘッド12との間を進行する研磨テープ5を支持している。位置決めローラー27,28の軸心は、テンションリール41,42の軸心、支持ローラー56,57の軸心、および送りローラー52,53の軸心に対して傾いている。本実施形態では、位置決めローラー27,28の軸心は、テンションリール41,42の軸心、支持ローラー56,57の軸心、および送りローラー52,53の軸心に対して垂直であり、円盤ヘッド12の軸心Oと平行である。
【0030】
送りローラー52,53は、支持ローラー56,57と位置決めローラー27,28との間を進行する研磨テープ5を支持している。送りローラー52,53の軸心は、位置決めローラー27,28の軸心および円盤ヘッド12の軸心Oに対して傾いている。本実施形態では、送りローラー52,53の軸心は、位置決めローラー27,28の軸心および円盤ヘッド12の軸心Oに対して垂直であり、テンションリール41,42の軸心および支持ローラー56,57の軸心と平行である。
【0031】
第1の位置決めローラー27は、研磨テープ5の側端5aが接触する第1の接触面27aを有する第1のフランジ部29と、第1のフランジ部29が接続された第1のローラー部31とを備えている。第2の位置決めローラー28は、第1の位置決めローラー27と同様に、第2の接触面28aを有する第2のフランジ部32と、第2のフランジ部32が接続された第2のローラー部33とを備えている。研磨テープ5の側端5aは研磨テープ5の幅方向における端部である。位置決めローラー27,28は同一の構成を有しているため、以下、第2の位置決めローラー28の構成について
図2を参照しつつ説明する。
【0032】
図2に示すように、第2のローラー部33は研磨テープ5の裏面を支持する外周面28bを有しており、第2のフランジ部32は、第2の接触面28aが第2のローラー部33の軸心に対して垂直になるように第2のローラー部33に接続されている。フランジ部32の外周面の直径は外周面28bの直径よりも大きい。本実施形態では、第2のフランジ部32の第2の接触面28aと第2のローラー部33の外周面28bとのなす角は直角である。研磨テープ5の側端5aは、第2のフランジ部32の第2の接触面28aに接触しており、研磨テープ5の裏面は第2のローラー部33の外周面28bに接触している。
【0033】
円盤ヘッド12がヘッドモータ18によって回転されると、研磨テープ5は、第1のテンションリール41から引き出され、円盤ヘッド12の回転と同期して円盤ヘッド12の周方向に進行し、そして第2のテンションリール42に巻き取られる。研磨テープ5は、第1の支持ローラー56、第1の送りローラー52、第1の位置決めローラー27、円盤ヘッド12、第2の位置決めローラー28、第2の送りローラー53、および第2の支持ローラー57をこの順に経由して、第1のテンションリール41から第2のテンションリール42に進行する。なお、研磨テープ5は、第2の支持ローラー57、第2の送りローラー53、第2の位置決めローラー28、円盤ヘッド12、第1の位置決めローラー27、第1の送りローラー52、および第1の支持ローラー56をこの順に経由して、第2のテンションリール42から第1のテンションリール41に進行してもよい。
【0034】
上述したように、位置決めローラー27,28の軸心は送りローラー52,53の軸心に対して傾いており、研磨テープ5は位置決めローラー27,28および送りローラー52,53に支持されている。したがって、研磨テープ5をその進行方向から見たとき、第1の送りローラー52を進行した研磨テープ5は、その進行方向に対して所定の角度で傾斜し、傾斜した状態で第1の位置決めローラー27を進行する。同様に、第2の位置決めローラー28を進行した研磨テープ5は、その進行方向に対して所定の角度で傾斜し、傾斜した状態で第2の送りローラー53を進行する。
【0035】
このように、第1の送りローラー52と第1の位置決めローラー27との間および第2の送りローラー53と第2の位置決めローラー28との間を進行する研磨テープ5は、その進行方向に対して所定の角度で傾斜している。つまり、研磨テープ5は、第1の送りローラー52と第1の位置決めローラー27との間の位置および第2の送りローラー53と第2の位置決めローラー28との間の位置において捩られている。本実施形態では、研磨テープ5の傾斜角度は90度である。
【0036】
このような構成により、研磨テープ5には、その側端5aが接触面27a,28aに押し付けられる力が作用するため、研磨テープ5はフランジ部29,32の接触面27a,28aに押し付けられる。結果として、研磨テープ5の側端5aは常にフランジ部29,32の接触面27a,28aに接触することができる。
【0037】
さらに、
図2の両方向の矢印に示すように、位置決めローラー27,28は、円盤ヘッド12の軸心Oと平行に移動可能に構成されている。したがって、位置決めローラー27,28を基板保持部1から離れる方向に移動させることにより、研磨テープ5の側端5aをより積極的に接触面27a,28aに接触させることができる。
【0038】
本実施形態によれば、研磨テープ5の側端5aを位置決めローラー27,28(より具体的にはフランジ部29,32)の接触面27a,28aに接触させながら、研磨テープ5を進行させることにより、研磨テープ5を円盤ヘッド12の外周面上の所定の位置に精度よく位置させることができる。より具体的には、研磨テープ5の側端5aの位置を円盤ヘッド12の縁部の位置に精度よく一致させることができる。したがって、ウェハWのエッジ部を精度よく研磨することができる。結果として、研磨されたウェハWの形状を一定にすることができ、さらにウェハWの研磨レートを安定させることができる。
【0039】
さらに、位置決めローラー27,28は、回転自在に構成されており、研磨テープ5の進行とともに、それらの軸心まわりに回転することができる。したがって、研磨テープ5の側端5aの接触面27a,28aへの摺動に起因する接触面27a,28aの摩耗は発生しにくい。結果として、研磨テープ5の位置精度を長期的に維持することができる。
【0040】
図1に示すように、押し付けバンド14は、無端状のベルトであり、円盤ヘッド12および複数のバンドガイドローラー15A〜15Dの間に掛け渡されている。これら複数のバンドガイドローラー15A〜15Dはそれぞれ回転自在に構成されている。押し付けバンド14は、円盤ヘッド12の外周面に沿って曲げられており、研磨テープ5を円盤ヘッド12の外周面に押し付けている。押し付けバンド14として、金属製(例えばステンレス製)のバンドを使用することが好ましい。押し付けバンド14として樹脂製のバンドを使用してもよい。
【0041】
図2に示すように、押し付けバンド14からはみ出した研磨テープ5の露出面はウェハWのエッジ部に接触する研磨面を構成している。押し付けバンド14は、基板保持部1よりも外側の位置で研磨テープ5を支持しており、基板保持部1およびウェハWには接触しない。
【0042】
図2に示す実施形態では、押し付けバンド14は研磨テープ5の幅よりも狭い幅を有している。しかしながら、研磨テープ5が押し付けバンド14からはみ出した露出面を有していれば、
図4に示すように、押し付けバンド14は、研磨テープ5の幅L2よりも大きな幅L1を有していてもよい。なお、
図4において、研磨テープ5および押し付けバンド14を見やすくするために、これら研磨テープ5および押し付けバンド14は誇張して示されている。
【0043】
バンドガイドローラー15A〜15Dの軸心は円盤ヘッド12の軸心Oと平行である。本実施形態では、4個のバンドガイドローラーが設けられているが、バンドガイドローラーの数はこの実施形態に限定されない。以下、本明細書中において、円盤ヘッド12に近接して配置されたバンドガイドローラー15C,15Dを下側バンドガイドローラー15C,15Dと呼ぶ。下側バンドガイドローラー15C,15Dよりも円盤ヘッド12から離間して配置されたバンドガイドローラーを上側バンドガイドローラー15A,15Bと呼ぶ。
【0044】
上側バンドガイドローラー15A,15Bは、下側バンドガイドローラー15C,15Dの上方に配置されている。より具体的には、上側バンドガイドローラー15Aは第1の支持ローラー56と第1の送りローラー52との間に配置されており、上側バンドガイドローラー15Bは第2の支持ローラー57と第2の送りローラー53との間に配置されている。
【0045】
図5は下側バンドガイドローラー15C,15Dと基板保持部1との間、および円盤ヘッド12と基板保持部1との間の位置関係を示す図である。
図5に示すように、下側バンドガイドローラー15C,15Dは、円盤ヘッド12の両側に配置されており、円盤ヘッド12よりも基板保持部1の基板保持面1aから離間している。つまり、下側バンドガイドローラー15C,15Dの外周面の最下端部分と基板保持部1の基板保持面1aとの距離D1は、円盤ヘッド12の最下端部分と基板保持部1の基板保持面1aとの距離D2よりも長い(D1>D2)。
【0046】
図2に示すように、研磨ユニット7は、押し付けバンド14にテンションを付与するテンショナー35をさらに備えている。テンショナー35は、複数のバンドガイドローラー15A〜15Dのうちの少なくとも1つを円盤ヘッド12から離れる方向に移動させる移動アクチュエータ37を備えている。本実施形態では、上側バンドガイドローラー15A,15Bは連結部材36を介して移動アクチュエータ37に連結されており、移動アクチュエータ37は連結部材36および上側ガイドローラ15A,15Bを上昇および下降させるように構成されている。
【0047】
連結部材36は、上側バンドガイドローラー15A,15Bが連結された連結アーム36aと、送りローラー52,53が連結された連結アーム36bと、移動アクチュエータ37が連結された本体部36cとを有している。これら連結アーム36a,36bは本体部36cに固定されており、連結アーム36aは連結アーム36bの上方に位置している。送りローラー52,53は回転自在に連結アーム36bに連結されている。
【0048】
移動アクチュエータ37は、連結部材36を上昇および下降させることにより、連結部材36に連結された上側バンドガイドローラー15A,15Bを上昇および下降させる。押し付けバンド14を支持する上側バンドガイドローラー15A,15Bを上昇、すなわち、円盤ヘッド12から離間する方向に移動させることにより、円盤ヘッド12と上側ガイドローラ15A,15Bとの間の位置における押し付けバンド14にはテンションが付与される。結果として、押し付けバンド14は研磨テープ5を円盤ヘッド12の外周面に押し付ける。
【0049】
一実施形態では、複数のバンドガイドローラー15A〜15Dのうちの1つを連結部材36に連結してもよい。このような構成によっても、バンドガイドローラーが連結された連結部材36を円盤ヘッド12から離れる方向に移動させることにより、押し付けバンド14にテンションを付与することができる。
【0050】
本実施形態では、移動アクチュエータ37はエアシリンダであるが、エアシリンダに代えて、サーボモータとボールねじとの組み合わせなどの他の装置を用いてもよい。
図2に示すように、移動アクチュエータ37は、ピストンロッド37aとシリンダ本体37bとから構成されている。ピストンロッド37aの先端は連結部材36の本体部36cに固定されている。シリンダ本体37bの内部空間は、ピストンロッド37aにより第1圧力室38Aと第2圧力室38Bとに分けられている。
【0051】
シリンダ本体37bには2本の気体移送ライン39,40が接続されている。気体移送ライン39,40は気体供給源(図示しない)に接続されている。気体移送ライン39,40には圧力調整弁45,46がそれぞれ取り付けられている。気体移送ライン39を通じて第1圧力室38Aに圧縮気体を供給すると、ピストンロッド37aおよび連結部材36は上昇し、上側バンドガイドローラー15A,15Bは所定の下降位置から所定の上昇位置まで上昇する。
【0052】
気体移送ライン40を通じて第2圧力室38B内に圧縮気体を供給すると、ピストンロッド37aおよび連結部材36は下降し、バンドガイドローラー15A,15Bは所定の上昇位置から所定の下降位置まで下降する。
【0053】
上側バンドガイドローラー15A,15Bは送りローラー52,53の上方の位置において連結部材36に連結されているため、連結部材36が上昇および下降しても上側バンドガイドローラー15A,15Bと送りローラー52,53との間の相対位置は常に同じである。
【0054】
気体供給源からシリンダ本体37bに供給される気体の圧力は気体移送ライン39,40に取り付けられた圧力調整弁45,46によって自動的に調整(制御)される。一般的なレギュレータや手動弁などによって気体の圧力を調整してもよいが、圧力調整弁45,46によって気体の圧力を自動的に調整することにより、押し付けバンド14に与えられるテンションを一定にすることができる。したがって、押し付けバンド14は研磨テープ5をより安定的に円盤ヘッド12に押し付けることができ、結果的に、より安定的にウェハWを研磨することができる。
【0055】
テンショナー35によってテンションが与えられた押し付けバンド14は、研磨テープ5を円盤ヘッド12の中心に向かって押し付ける。したがって、研磨テープ5と円盤ヘッド12との間に大きな静止摩擦が働き、これと同時に、研磨テープ5と押し付けバンド14との間にも大きな静止摩擦が働く。つまり、押し付けバンド14によって、研磨テープ5を円盤ヘッド12の外周面に強固に拘束する。したがって、円盤ヘッド12の外周面と研磨テープ5との間の相対的な位置ずれを防止することができ、さらに、研磨テープ5と押し付けバンド14との間の相対的な位置ずれも防止することができる。
【0056】
このように、本実施形態によれば、ウェハWの研磨中に研磨テープ5が所定の位置からずれることを確実に防止することができるため、研磨テープ5は、ウェハWのエッジ部に滑らかな垂直面を形成することができる。なお、円盤ヘッド12に研磨テープ5を保持させるために、研磨テープ5を真空吸引するための真空吸引孔を円盤ヘッド12の外周面に形成してもよい。
【0057】
押し付けバンド14は、研磨テープ5の進行方向と同一の方向に進行する。円盤ヘッド12がヘッドモータ18によって回転されると、研磨テープ5は円盤ヘッド12の回転と同期して円盤ヘッド12の周方向に進行し、押し付けバンド14は円盤ヘッド12の周方向に進行する研磨テープ5を円盤ヘッド12の外周面に押し付ける。無端状の押し付けバンド14は、バンドガイドローラー15A〜15Dおよび円盤ヘッド12に掛け渡されている。したがって、押し付けバンド14は、押し付けバンド14と研磨テープ5との間に作用する静止摩擦によって、バンドガイドローラー15A〜15Dと円盤ヘッド12との間を回転する。
【0058】
研磨テープ5は押し付けバンド14と円盤ヘッド12との間に配置されており、研磨テープ5の軌道は押し付けバンド14の軌道と概ね同じである。上述したように、第1の送りローラー52と第1の位置決めローラー27との間、および第2の送りローラー53と第2の位置決めローラー28との間を進行する研磨テープ5は、その進行方向に対して所定の角度で傾斜している。したがって、研磨テープ5は、支持ローラー56,57と送りローラー52,53との間において押し付けバンド14の外側を進行するため、研磨テープ5が押し付けバンド14に接触する(すなわち、これらが互いに交差、干渉する)ことを回避することができ、研磨テープ5は、押し付けバンド14に阻害されることなく、進行することができる。
【0059】
ウェハWのエッジ部の研磨は、次のようにして行われる。ウェハWは基板保持部1によって水平に保持され、ウェハWの軸心まわりに回転される。ウェハWの中心部には研磨液供給ノズル10から研磨液(例えば純水)が供給される。ヘッドモータ18が円盤ヘッド12を所定の速度で回転させながら、ヘッド移動装置は、研磨テープ5とともに円盤ヘッド12をウェハWの接線方向に移動させ、円盤ヘッド12の外周面上の研磨テープ5をウェハWのエッジ部に接触させる。ヘッド移動装置が円盤ヘッド12を移動させるに従い、円盤ヘッド12の最下端部分は研磨テープ5の研磨面(露出面)をウェハWのエッジ部に押し付ける。ウェハWのエッジ部は研磨テープ5によって研磨され、段部がエッジ部に形成される。
【0060】
ウェハWの研磨中、テンショナー35によってテンションが付与された押し付けバンド14は、研磨テープ5を円盤ヘッド12の外周面上に押し付ける。押し付けバンド14と研磨テープ5との間、および研磨テープ5と円盤ヘッド12との間には比較的大きな静止摩擦が働き、これによって研磨テープ5の位置ずれが防止される。したがって、研磨テープ5は、ウェハWのエッジ部に滑らかな垂直面を形成することができる。
【0061】
図6は、研磨テープ5がウェハWのエッジ部に接触したときの円盤ヘッド12とウェハWのエッジ部との相対位置を示す平面図であり、
図7は、円盤ヘッド12が
図6に示す位置にあるときに研磨テープ5によって研磨されたエッジ部の断面図である。
図6に示すように、研磨テープ5は、円盤ヘッド12とともにウェハWの接線方向に移動する。したがって、
図7に示すように、研磨テープ5はウェハWのエッジ部の最も外側の部分を研磨し、エッジ部に小さな段部を形成する。
【0062】
図8は、円盤ヘッド12をウェハWの接線方向にさらに移動させたときの円盤ヘッド12とウェハWのエッジ部との相対位置を示す平面図であり、
図9は、円盤ヘッド12が
図8に示す位置にあるときに研磨テープ5によって研磨されたエッジ部の断面図である。円盤ヘッド12がさらに移動すると、
図9に示すように、研磨テープ5はウェハWのエッジ部のより内側の部分を研磨し、より大きな段部をエッジ部に形成する。
【0063】
図10は、ウェハWの上から見たときに円盤ヘッド12の軸心OがウェハWの半径方向に一致したときの、円盤ヘッド12とウェハWのエッジ部との相対位置を示す平面図であり、
図11は、円盤ヘッド12が
図10に示す位置にあるときに研磨テープ5によって研磨されたエッジ部の断面図である。研磨テープ5はウェハWのエッジ部の最も内側の部分を研磨し、
図11に示すように、より大きな段部をエッジ部に形成する。
【0064】
図7、
図9、および
図11に示すように、エッジ部の研磨は、該エッジ部の外側から内側に徐々に進行する。したがって、2種類の研磨テープを使用して、エッジ部の粗研磨と仕上げ研磨を実施することができる。すなわち、きめの粗い研磨面を有する第1の研磨テープでエッジ部を研磨して段部を形成し、きめの細かい研磨面を有する第2の研磨テープで段部をさらに研磨することで、滑らかな垂直面をエッジ部に形成することができる。
【0065】
図12は、2つの研磨ユニット7A,7Bを有する研磨装置を示す模式図である。
図12に示す第1の研磨ユニット7Aおよび第2の研磨ユニット7Bは、
図1および
図2に示す研磨ユニット7と同一の構成を有しているが、説明の簡略化のために、
図12では第1の研磨ユニット7Aおよび第2の研磨ユニット7Bの構成要素の一部は図示されていない。
【0066】
第1の研磨ユニット7Aおよび第2の研磨ユニット7Bは、基板保持部1に保持されたウェハWのエッジ部に沿って配列されている。
図12に示す例では、第1の研磨ユニット7Aおよび第2の研磨ユニット7Bは、基板保持部1に保持されたウェハWを中心として対称に配置されている。第1の研磨ユニット7Aにはきめの粗い研磨面を有する第1の研磨テープ5Aが取り付けられており、第2の研磨ユニット7Bにはきめの細かい研磨面を有する第2の研磨テープ5Bが取り付けられている。
【0067】
ウェハWのエッジ部の研磨は、次のようにして行われる。ウェハWは基板保持部1によって水平に保持され、ウェハWの軸心まわりに回転される。ウェハWの中心部には研磨液供給ノズル10(
図2参照)から研磨液が供給される。この状態で、第1の研磨ユニット7Aの円盤ヘッド12は、ウェハWの接線方向に移動し、第1の研磨テープ5AをウェハWのエッジ部に接触させる。第1の研磨テープ5Aは、第1の研磨ユニット7Aの円盤ヘッド12の外周面によってウェハWのエッジ部に押し付けられ、エッジ部に段部を形成する。
【0068】
第1の研磨テープ5AがウェハWのエッジ部に接触している間またはその後、第2の研磨ユニット7Bの円盤ヘッド12は、ウェハWの接線方向に移動し、第2の研磨テープ5BをウェハWのエッジ部に接触させる。第2の研磨テープ5Bは、第2の研磨ユニット7Bの円盤ヘッド12の外周面によって段部に押し付けられ、段部をさらに研磨する。
【0069】
第1の研磨テープ5Aは、きめの粗い研磨面を有する粗研磨テープであり、第2の研磨テープ5Bは、きめの細かい研磨面を有する仕上げ研磨テープである。本実施形態によれば、第1の研磨テープ5Aは高い研磨レート(除去レートともいう)でウェハWのエッジ部を研磨し、第2の研磨テープ5Bは、第1の研磨テープ5Aによって形成された段部の仕上げ研磨を行う。したがって、ウェハWの研磨レートを向上しつつ、段部の垂直面を滑らかにすることができる。
【0070】
3つ以上の研磨ユニット7を設けてもよい。この場合、表面粗さの異なる研磨面を有する3つ以上の研磨テープを用いてもよい。
【0071】
図13は、研磨装置の他の実施形態を示す側面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1および
図2に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図13に示すように、本実施形態の研磨ユニット7は、円盤ヘッド12およびヘッドモータ18を上昇および下降させる昇降機構60を備えている。この昇降機構60は、水平リニアガイド30を支持する昇降テーブル62と、この昇降テーブル62を上昇および下降させる昇降アクチュエータ64とを備えている。昇降テーブル62は鉛直リニアガイド65に連結されている。この鉛直リニアガイド65は、昇降テーブル62の移動を鉛直方向に制限するように構成されている。
【0072】
昇降アクチュエータ64は、昇降テーブル62に回転可能に連結されたボールねじ67と、このボールねじ67を回転させるサーボモータ68とを備えている。サーボモータ68がボールねじ67を回転させると、昇降テーブル62が上昇または下降する。円盤ヘッド12およびヘッドモータ18は、水平リニアガイド30および基台25を介して昇降テーブル62に連結されているので、昇降アクチュエータ64は、円盤ヘッド12およびヘッドモータ18を一体に上昇および下降させることができる。このように構成された研磨ユニット7は、ウェハWの研磨量(すなわち、エッジ部に形成される段部の深さ)を精密に制御することができる。
【0073】
このような昇降機構60を設けることにより、円盤ヘッド12の高さを精度よく調整することができ、ウェハWの研磨量(研磨深さ)を任意に制御することができる。
【0074】
昇降アクチュエータ64によって円盤ヘッド12が上昇するとき、移動アクチュエータ37によって上側ガイドローラ15A,15Bを上昇させて、押し付けバンド14にテンションを付与する。結果として、円盤ヘッド12が上昇しても押し付けバンド14は研磨テープ5を円盤ヘッド12の外周面に押し付けることができる。
【0075】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。