(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外側を周回する無端状の濾布ベルトと内側を周回する無端状の搬送コンベアとが上下に各1対設けられ、豆乳凝固物を上下の前記濾布ベルト及び前記搬送コンベアにより挟持しながら搬送して圧搾成型する豆腐類の連続成型装置であって、
前記濾布ベルトの周回軌道のうち、前記豆乳凝固物が挟持される搬送路の終端部から再び前記搬送路の始端部に戻されるまでの戻り工程において、前記濾布ベルトの周回方向上流側から下流側に向けて、前記濾布ベルトをアルカリ液により洗浄するアルカリ洗浄部と、前記濾布ベルトを酸液により洗浄する酸洗浄部と、前記戻り工程内の所定範囲を加熱して殺菌する加熱部と、がこの順で配置されることを特徴とする豆腐類の連続成型装置。
前記搬送コンベアの戻り工程内に、前記搬送コンベアの周回方向上流側から下流側に向けて、前記搬送コンベアをアルカリ液により洗浄するアルカリ洗浄部と、前記搬送コンベアを酸液により洗浄する酸洗浄部と、前記加熱部と、がこの順で配置されることを特徴とする請求項8に記載の豆腐類の連続成型装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1構成例)
図1は本発明の実施形態を説明するための図で、豆腐類の連続成型装置の概略的な全体構成図、
図2は
図1のII−II線断面図である。本構成の豆腐類の連続成型装置(以下、成型装置と略称する)100は、豆腐生地である豆乳凝固物Tの搬送路11の上方に、外側を周回する無端状の濾布ベルト13と、内側を周回する無端状の搬送コンベア15とが一対設けられ、搬送路11の下方に、外側を周回する無端状の濾布ベルト17と、内側を周回する無端状の搬送コンベア19とが一対設けられる。
【0011】
上下一対の無端状の濾布ベルト13,17(
図1中、実線で示す)、及びその内側を同調して同じく周回する上下一対の無端状の搬送コンベア15,19(
図1中、点線で示す)は、被搬送物である豆乳凝固物Tを上下方向に挟持して搬送方向Pに沿って搬送する。搬送路11の上下方向の間隔は、豆乳凝固物Tの厚さよりも狭いか同等の間隔であり、豆乳凝固物Tは、搬送コンベア15,19によって圧搾されながら、搬送方向Pに沿って搬送される。豆乳凝固物Tは、搬送路11で圧搾され、水分(「ホエー」、「しみず」、又は「湯」)が排出されることで、豆乳凝固物Tが圧密されて成型された豆腐類となる。
【0012】
本明細書における豆腐類とは、絹ごし豆腐、木綿豆腐(柔らかい木綿豆腐から非常に硬い木綿豆腐、堅豆腐、豆干等を含む)、ソフト木綿豆腐、生揚(厚揚)生地、絹生揚生地、薄揚や厚揚、味付寿司油揚等の油揚生地、ガンモドキ用生地やこれらの二次加工品(冷凍加工や凍結乾燥加工も含む)を意味する。なお、絹ごし豆腐を適用する場合は、絹・木綿兼用の凝固成型機ラインの成型装置において、搬送路11の上方のコンベアを浮上させ、プリン状豆乳凝固物に触れず又は強く圧搾せずに通過させ、熟成するものとする(特許文献2参照)。
【0013】
上方の搬送コンベア15は、搬送ローラ23により駆動され、搬送路11の上方を周回する。上方の濾布ベルト13は、ゴム製ローラに布を巻き付けた濾布ベルト駆動ローラ24により駆動され、搬送路11の上方を周回する。また、下方の搬送コンベア19は、搬送ローラ27により駆動され、搬送路11の下方を周回する。濾布ベルト17は、濾布ベルト駆動ローラ28により駆動され、搬送路11の下方を周回する。濾布ベルト13,17及び搬送コンベア15,19の周回軌道には、それぞれ複数の従動ローラ29が配置される。濾布ベルト13,17及び搬送コンベア15,19は、搬送方向片側の搬送ローラ(例えば23,27)のみが図示しないモータにより同期して駆動され、他方の搬送ローラ21,25が従動して、豆腐凝固物Tの搬送動作がなされる。
【0014】
濾布ベルト13,17は、例えば食品用のフッ素樹脂やポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、ポリプロピレン樹脂、アラミド繊維樹脂等からなる糸(モノフィラメントやマルチフィラメント、線径0.1〜1.0mm)を、平織、綾織等で編んだ濾布で、無端状に構成される。濾布は、機械的なテンションに耐え得る引張強度と比較的柔軟性があり、凹状に屈曲しやすい性状を有する。なお、濾布ベルトの材質等は特に限定しないが、詳細に関しては、例えば特許第4004413号を参照されたい。
【0015】
図2に示すように、搬送コンベア19は、基台31に立設された複数の支持レール33によって周回(搬送)方向(
図2の紙面垂直方向)に移動自在に支持される。基台31の上方には、図示しない昇降機構により上下動可能に支持された昇降部35が配置される。昇降部35には、複数の支持レール37が垂下して設けられ、搬送コンベア15を下方の豆乳凝固物Tに向けて均一に押圧する。
【0016】
図3は搬送コンベア15,19の一部を示す平面図、
図4は搬送コンベア15,19の進行方向の断面の一部を示す一部断面図である。
図3,
図4に示すように、搬送コンベア15,19は、キャタピラ(登録商標)式コンベアであって、多数の平板状のプレート部材であるキャタピラプレート38と、キャタピラプレート38の進行方向に直交する方向の両端部に設けられたチェーン39と、を有する。
【0017】
キャタピラプレート38は、進行方向に沿って連続的に略隙間なく配置されてもよく、進行方向に沿って所定間隔を空けて配置されてもよい。また、キャタピラプレート38は、排水機構を備え、水分が流れ出やすい構造であってもよい。
【0018】
チェーン39は、
図4に示すように、接続部材41を介してキャタピラプレート38に取り付けられる。このチェーン39を、図示しないモータにより搬送ローラ23,27(
図1参照)と、従動する搬送ローラ21,25(
図1参照)を介して周回駆動させることで、キャタピラプレート38が周回軌道に沿って移動する。各搬送コンベア15,19は、同一の周回速度で駆動される。濾布ベルト13,17は、図示しないモータにより濾布ベルト駆動ローラ24,28が駆動され、周回駆動されるキャタピラプレート38に合わせて同一の周回速度で周回駆動される。
【0019】
図1に示す濾布ベルト13と搬送コンベア15、及び濾布ベルト17と搬送コンベア19の各周回軌道のうち、搬送路11となる領域、すなわち、搬送ローラ22と24との間、及び搬送ローラ26と28との間が濾布ベルト13,17の送り工程の領域である。搬送ローラ21と23との間、及び搬送ローラ25と27との間が搬送コンベア15,19の送り工程の領域である。この送り工程の領域では、搬送路11に沿って濾布ベルト13,17と搬送コンベア15,19が直線状に配置される。搬送路11上の豆乳凝固物Tは、濾布ベルト13,17に上下方向に挟持されながら搬送されて、圧搾成型される。
【0020】
上記周回軌道のうち、豆乳凝固物Tが挟持される搬送路11の終端部から再び搬送路11の始端部に戻されるまでの間が広義の戻り工程である。つまり、広義の戻り工程には、送り工程の両端の転回工程が含まれる。転回工程は、搬送路11の下流側の終端部で豆乳凝固物Tから離れて進行方向を大きく転回させる周回軌道の領域、及び、搬送路11の上流側の始端部近傍で進行方向を大きく転回させて豆乳凝固物Tに近接する直前までの領域である。ただし、本明細書においては、戻り工程と転回工程とを併せて表記して説明している場合には、戻り工程は、広義の戻り工程から転回工程を除いた残りの領域を意味するものとする。
【0021】
成型装置100の送り工程においては、上述したように、豆乳凝固物Tが濾布ベルト13,17を介して搬送コンベア15,19に挟持されて圧搾される。これにより、豆乳凝固物Tは、濾布ベルト13,17を介して搬送コンベア15,19からの加圧力を受けてホエー等の水分を排出する。そして、濾布ベルト13,17と搬送コンベア15,19は、搬送ローラ23,27や24,28を通過し、豆乳凝固物Tから離間した戻り工程において、洗浄処理と殺菌処理がなされる。その後、搬送ローラ21,25や22,26の位置まで再度戻される。
【0022】
次に、成型装置100の戻り工程の構成について詳細に説明する。
本成型装置100は、濾布ベルト13及び搬送コンベア15の周回軌道における戻り工程の領域に、濾布ベルト13及び搬送コンベア15の周回方向上流側から下流側に向けて、アルカリ洗浄部としてのアルカリ洗浄槽43と、酸洗浄部としての酸洗浄槽47と、加熱部としての蒸気殺菌槽51とがこの順で配置される。また、濾布ベルト17及び搬送コンベア19の周回軌道における戻り工程の領域にも同様に、上記周回方向上流側から下流側に向けて、アルカリ洗浄槽45と、酸洗浄槽49と、蒸気殺菌槽53とがこの順で配置される。
【0023】
更に、濾布ベルト13及び搬送コンベア15の周回軌道におけるアルカリ洗浄槽43の周回方向上流側には、水洗洗浄部55が配置される。また、アルカリ洗浄槽43と酸洗浄槽47との間には、水洗洗浄部59が配置され、酸洗浄槽47と蒸気殺菌槽51との間には、水洗洗浄部63が配置される。
【0024】
同様に、濾布ベルト17及び搬送コンベア19の周回軌道におけるアルカリ洗浄槽45の周回方向上流側には、水洗洗浄部57が配置される。また、アルカリ洗浄槽45と酸洗浄槽49との間には、水洗洗浄部61が配置され、酸洗浄槽49と蒸気殺菌槽53との間には、水洗洗浄部65が配置される。
【0025】
アルカリ洗浄槽43,45は、濾布ベルト13及び搬送コンベア15をアルカリ液に浸漬させる。酸洗浄槽47,49は、濾布ベルト13及び搬送コンベア15を酸液に浸漬させる。図示例では、アルカリ洗浄槽43と酸洗浄槽47は、濾布ベルト13と搬送コンベア15とを共通に浸漬させ、アルカリ洗浄槽45と酸洗浄槽49は、濾布ベルト17と搬送コンベア19とを共通に浸漬させているが、それぞれを個別に浸漬させる槽を設けた構成であってもよい。また、生産中は各アルカリ洗浄槽や各酸洗浄槽には薬液を入れず、60〜100℃のお湯を入れて熱湯洗浄・殺菌を行うか、又は、お湯も入れずに各槽に設けられた蒸気供給手段により60〜105℃の蒸気加熱を行う蒸気殺菌槽として転用してもよい。
【0026】
アルカリ洗浄槽43,45に貯留されるアルカリ液としては、濃度0.5%以上、好ましくは1%以上、最も好ましくは2%以上、10%以下、pH9以上、好ましくはpH11以上、最も好ましくはpH13以上である、60〜100℃の水酸化ナトリウム溶液を使用できる。水酸化ナトリウムの他にも、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等の溶液(0.5〜10%、pH9〜14、40〜100℃の条件)が使用可能である。つまり、アルカリ液としては、濃度0.5%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上で、濃度10%以下、好ましくは5%以下のアルカリ液が使用可能である。アルカリ液を上記濃度範囲にするのは、濃度0.5%未満の場合は洗浄効果が低く、濃度10%を超える場合は、濃度増加に伴う洗浄効果の良化が特に認められず、パッキン等の樹脂やゴム等の劣化が起きやすく、取扱い作業が煩雑になるためである。
【0027】
酸洗浄槽47,49に貯留される酸液としては、濃度0.1%以上、好ましくは0.5%以上、最も好ましくは1%以上、10%以下で、pH5以下、好ましくはpH3以下のクエン酸溶液を使用できる。クエン酸の他にも、塩酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、ギ酸、リン酸、硝酸、スルファミン酸等の溶液(0.1〜10%、pH1〜5、40〜100℃の条件)が使用可能である。つまり、酸液としては、濃度0.1%以上、10%以下、好ましくは5%以下の酸液が使用可能である。酸液を上記濃度範囲にするのは、濃度0.1%未満の場合は洗浄効果が低く、濃度10%を超える場合は、濃度増加に伴う洗浄効果の良化が特に認められず、ステンレス等の腐食の虞があり、取扱い作業が煩雑になるためである。
【0028】
水洗洗浄部55,57,59,61,63,65で使用される洗浄水としては、清水(水道水、除菌フィルターを通した無菌水等)の他、オゾン水、次亜塩素酸ソーダ液、次亜塩素酸水等の殺菌作用のある中性薬液も使用可能である。なお、水洗洗浄部55,57は、豆腐粕を確実に除去することが必須であり、そのため、高圧ポンプによる強力な水流により除去する方式とするのが好ましい。水洗洗浄部59,61,63,65は、各々適宜低圧水による散水でもよく、場合によっては適宜省いてもよい。アルカリ液は、次の酸洗浄槽で中和できる。また、酸液は、次の蒸気殺菌槽で蒸気噴射と共にその蒸気凝縮水(飛沫)や、蒸気殺菌槽内に設けた熱湯水供給手段による熱湯を用いる濯ぎ効果によって取り除くようにしてもよく、酸性条件によって加熱殺菌効果を更に向上させる相乗効果も期待できる。
【0029】
蒸気殺菌槽51,53は、蒸気ノズル71と、仕切り部材73とを有する。蒸気ノズル71は、ボイラーから供給される0.5〜2.0MPaの水蒸気を減圧して得る0.05〜0.4MPaの水蒸気を、調整バルブを介して水蒸気を蒸気殺菌槽51,53内に均等に噴出する。噴出する水蒸気は90℃以上、105℃以下のほぼ大気開放された蒸気であって、大気圧乃至は大気圧より少し高めの蒸気圧であり、絶対圧力で0.10〜0.12MPa、ゲージ圧力で0.00〜0.02MPaになる。蒸気殺菌槽51の蒸気ノズル71は、1つ又は複数個が濾布ベルト13及び搬送コンベア15の周回軌道に沿って配置され、蒸気殺菌槽53の蒸気ノズル71は、1つ又は複数個が濾布ベルト17及び搬送コンベア19の周回軌道に沿って配置される。
【0030】
仕切り部材73は、蒸気殺菌槽51,53の出入り口に設けた暖簾や、槽周囲を覆うカバーを含んで構成される。蒸気殺菌槽51の仕切り部材73は、濾布ベルト13及び搬送コンベア15の周回軌道上の所定範囲を囲んで配置され、蒸気殺菌槽53の仕切り部材73は、濾布ベルト17及び搬送コンベア19の周回軌道上の所定範囲を囲んで配置される。仕切り部材73により囲まれた内部空間は、この内部空間に配置される蒸気ノズル71が、加熱された蒸気を噴射することで、少なくとも60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上で、105℃以下、好ましくは100℃以下の均一な雰囲気温度にされる。特に賞味期間の長期保証を実現する上では、90〜105℃の雰囲気温度や90〜100℃の豆乳凝固物品温にすることが好ましい。なお図示しないが、蒸気殺菌槽51,53の出入り口には、上記の暖簾以外に、水封式シール等の蒸気漏れ防止手段を備えてもよく、気密性を高め、仕切り部材73で囲まれた蒸気殺菌槽51,53内を少し有圧状態(大気圧より少し高い気圧)にして、100℃以上、105℃以下の雰囲気温度を維持するようにしてもよい。
【0031】
以上のように、蒸気殺菌槽51,53においては、蒸気ノズル71から濾布ベルト13,17及び搬送コンベア15,19に向けてそれぞれ蒸気が吹き付けられる。また、仕切り部材73により画成される内部空間には、蒸気ノズル71から吹き付けた蒸気が充満する。これにより、内部空間内全体が上記の雰囲気温度に熱せられ、濾布ベルト13,17及び搬送コンベア15,19が高効率で加熱殺菌される。
【0032】
<豆腐類の圧搾成型、及び洗浄、殺菌処理>
上記構成の成型装置100は、次の手順で豆乳凝固物Tを圧搾成型する。すなわち、搬送路11の上方及び下方にそれぞれ配置された一対の濾布ベルト13,17及び搬送コンベア15,19の間に、豆乳凝固物Tが供給される。この豆乳凝固物Tは、図示しない装置により製造された、豆乳にニガリ等の凝固剤が添加され、シート状に連続的に凝固・成型・熟成されたものである。
【0033】
豆乳凝固物Tは、搬送路11の上方及び下方の濾布ベルト13,17及び搬送コンベア15,19の間を通過する。その際、豆乳凝固物Tは、上方及び下方の搬送コンベア15,19により濾布ベルト13,17を介して加圧され、圧搾成型された豆腐類となる。上記処理を連続的に行うことで、例えば、成型寸法の高さ(厚さ)が1〜150mm、幅300〜3000mmである油揚生地、木綿豆腐、ソフト木綿、絹生揚生地等のシート状の豆腐類を、効率よく量産可能となる。
【0034】
豆乳凝固物Tを圧搾成型した後の濾布ベルト13,17及び搬送コンベア15,19は、周回軌道の戻り工程において、水洗洗浄部55,57に搬送される。以下、搬送路11の上方の濾布ベルト13及び搬送コンベア15について説明する。
【0035】
水洗洗浄部55においては、高圧の洗浄水を、濾布ベルト13と搬送コンベア15にスプレー噴射する。これにより、濾布ベルト13と搬送コンベア15の表面に付着した豆乳凝固物Tの残渣や排出されたホエー等が洗浄される。なお、水洗洗浄部55は、濾布ベルト13の裏側(豆腐非接触側)から高圧の洗浄水をスプレー噴射して、濾布ベルト13の表側に豆腐粕を落とす構成にするのが好ましい。また、表側(豆腐接触側)からスプレー噴射して豆腐粕を粉々に崩して裏側に落としてもよく、更に、裏側の次に表側からスプレー噴射するように構成してもよい。
【0036】
高圧洗浄された後の濾布ベルト13及び搬送コンベア15は、アルカリ洗浄槽43に搬送される。アルカリ洗浄槽43は、搬送される濾布ベルト13及び搬送コンベア15を、貯留されたアルカリ液中に浸漬させることで、油やタンパク質等の有機物を分解して洗浄する。これにより、濾布ベルト13や搬送コンベア15に付着した豆乳凝固物Tの細かな残渣が、アルカリ液によって取り除かれる。アルカリ液内への浸漬時間は、1秒以上、好ましくは60秒以上で、3600秒以下、好ましくは600秒以下とすることが好ましい。
【0037】
アルカリ洗浄槽43に浸漬された濾布ベルト13及び搬送コンベア15は、アルカリ液から引き上げられて、水洗洗浄部59に搬送される。水洗洗浄部59では、前述同様に洗浄水を濾布ベルト13及び搬送コンベア15にスプレー噴射して、濾布ベルト13及び搬送コンベア15のアルカリ液を洗い落とす。
【0038】
水洗洗浄部59を通過した濾布ベルト13及び搬送コンベア15は、酸洗浄槽47に搬送される。酸洗浄槽47は、搬送される濾布ベルト13及び搬送コンベア15を、貯留された酸液中に浸漬させることで、微量に残留し得るアルカリ分を中和すると共に、炭酸カルシウム等の無機塩(スケール)を溶解して洗浄する。酸液内への浸漬時間は、1秒以上、好ましくは60秒以上で、3600秒以下、好ましくは600秒以下とすることが好ましい。
【0039】
酸洗浄槽47に浸漬された濾布ベルト13及び搬送コンベア15は、酸液から引き上げられて、水洗洗浄部63に搬送される。水洗洗浄部63では、前述同様に洗浄水を濾布ベルト13及び搬送コンベア15にスプレー噴射して、濾布ベルト13及び搬送コンベア15の酸液を洗い落とす。
【0040】
水洗洗浄部63を通過した濾布ベルト13及び搬送コンベア15は、蒸気殺菌槽51に搬送される。蒸気殺菌槽51は、蒸気ノズル71から噴射される高温の常圧蒸気を、搬送される濾布ベルト13及び搬送コンベア15に吹き付ける。この蒸気殺菌槽51を濾布ベルト13及び搬送コンベア15が通過する際の1回当たりの通過時間(滞留時間)は、1秒以上、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上で、3600秒以下、好ましくは600秒以下とするのがよい。
【0041】
蒸気殺菌槽51においては、60℃以上、105℃以下の雰囲気温度で、1秒以上の滞留時間で加熱することにより、必要とされる殺菌作用が得られる。また、滞留時間を10秒以上とすれば、より顕著な殺菌作用を得ることができる。一方、滞留時間が3600秒を超える場合、殺菌効果が上がりにくく、豆腐の風味等の品質低下を招き、連続成型装置の機長やスペースの制約があることから、却って非効率的な処理となる。
【0042】
上記した浸漬時間、通過時間は、濾布ベルト13及び搬送コンベア15の周回速度を制御することで調整できる。また、各戻り部の周回軌道を複数の従動ローラ29によって多数折り返す、引き出す等によって、上記の浸漬時間や通過時間が長くなるよう予め設計してもよい。上記浸漬時間、通過時間の調整のための各駆動方式や調節、制御方法は、適宜なものが採用できる。
【0043】
上記は、搬送路11の上方の濾布ベルト13及び搬送コンベア15の動作であるが、搬送路11の下方の濾布ベルト17及び搬送コンベア19についても同様の構成であり、同様の洗浄、殺菌処理が施される。つまり、濾布ベルト17及び搬送コンベア19は、その戻り工程において、水洗洗浄部57、アルカリ洗浄槽45、水洗洗浄部61、酸洗浄槽49、水洗洗浄部65、蒸気殺菌槽53をこの順に通過し、洗浄、殺菌処理が施される。その後、再び送り工程に戻される。
【0044】
本構成の成型装置100は、濾布ベルト13,17及び搬送コンベア15,19から豆乳凝固物Tが離れた後の戻り工程において、(1)水洗洗浄、(2)アルカリ洗浄、(3)水洗洗浄、(4)酸洗浄、(5)水洗洗浄、(6)蒸気殺菌の各工程をこの順で実施する。これにより、濾布ベルト13,17や搬送コンベア15,19に付着した豆乳凝固物Tのタンパク汚れが完全に除去できる。特に濾布ベルト13,17は豆乳凝固物Tの残渣や菌等が付着しやすい布性状を有するが、上記の洗浄、殺菌処理により、確実に不要物が除去される。
【0045】
本構成によれば、蒸気殺菌の前段にアルカリ洗浄と酸洗浄を施すことで、仮に酸洗浄後に生菌が残存したとしても、生菌の活力を十分に弱めることができる。その結果、蒸気殺菌による殺菌効果が高められ、より完全な殺菌処理を実現できる。なお、アルカリ洗浄と酸洗浄とは洗浄順序を入れ替えてもよい。また、条件によっては酸洗浄を省いてもよい。
【0046】
このように、濾布ベルト13,17や搬送コンベア15,19に付着する栄養菌体、耐熱性芽胞菌等の菌体を、従来よりも確実に除去、殺菌できるため、成型後の豆腐類の初菌数を大幅に低減できる。よって、豆腐類の保存中における微生物(菌)の増殖を、長期にわたり抑制できる。その結果、豆腐類の長期保存が可能となり、賞味期限の延長が可能となる。
【0047】
また、搬送コンベア15,19及び濾布ベルト13,17は、蒸気殺菌槽51,53によって高温に加熱されるため、送り工程における豆乳凝固物Tとの接触の際に、豆乳凝固物Tの加熱効果又は保温効果が得られる。この加熱効果や保温効果によって、豆乳凝固物Tの温度低下に起因する柔化が防止され、豆腐(生地)の結着性が向上する。その結果、上方側や下方側の濾布ベルトに豆腐類が付着する「布付き」が発生することを大幅に軽減できる。
【0048】
従来の成型装置の場合、圧搾して搬送される際の豆腐類の放熱が顕著であり、そのために、布付きを抑制するため添加凝固剤量を少し多目に使用していた。このため、仕上がる豆腐類は、離水しやすく旨味が逃げ、脆さやザラツキ等の食感が出やすかった。しかし、本構成の成型装置100の場合、添加する凝固剤量を過剰気味にせず、適量にまで減らすことができ、昔ながらの風味や食感に近づくように豆腐類の品質向上が図れ、経済性も向上する。更に、凝固熟成時間や圧搾成型時間が短縮し、豆腐類の連続製造ラインの機長が短くなって、省スペース化が図れる。
【0049】
<キャタピラプレートの構成>
次に、上記の搬送コンベア15,19の構成について、更に詳細に説明する。
図3,
図4に示すように、搬送コンベア15,19を構成するキャタピラプレート38は、その進行方向に直交する方向に細長い形状であり、柔軟な濾布ベルト13,17を支持する。そのため、キャタピラプレート38の豆乳凝固物Tに向かう対向面は平坦面に形成される。換言すれば、キャタピラプレート38は、その断面の外周面の一辺に、少なくとも直線部を有する部材が用いられる。つまり、キャタピラプレート38は、少なくとも豆乳凝固物Tに向かう対向面が平坦面である部材であって、最低でも外周面のいずれか1面が平坦面を呈する部材であればよい。これにより、豆乳凝固物Tへの伝熱面積を広くして、豆腐類の加熱効率や保温効率が高められる。
【0050】
本構成のキャタピラプレート38は、肉厚の大きい平形鋼等の型鋼等を好適に用いることができる。そのため、従来の薄型のキャタピラプレートよりも断熱保温性や蓄熱性が向上し、加熱によって保有できる熱量が多くなる。よって、豆乳凝固物Tを、濾布ベルト13,17を介して間接的に伝熱させることができ、少なくとも放熱による豆腐類の温度低下を抑制できる。
【0051】
キャタピラプレート38は、アルミ、鉄、銅、チタン等の、表面が平滑で高い曲げ剛性を有する金属製板材であればよい。特に、熱伝導率の低い(<20W/mK)ステンレス鋼材(例えば、SUS304(熱伝導率:約15W/mK))がキャタピラプレート38に好適に使用される。キャタピラプレート38が熱伝導率の低い材料であると、熱せられた豆乳凝固物Tの熱量がキャタピラプレート38に伝達されにくくなり、その結果、豆乳凝固物Tを、豆腐成型における最適な所定温度範囲に維持しやすくなる。
【0052】
キャタピラプレート38は、金属以外にも、セラミック、樹脂(ポリプロピレン、フッ素樹脂、PEEK等のエンジニアリングプラスチック類)、FRP(ガラス繊維入り樹脂や炭素繊維入りPEEK等の補強芯材入り樹脂類)、天然又は合成石材、天然又は合成木材、等の所望の耐熱性と剛性がある部材が使用可能である。いずれにしても、例えば、米国ではFDA(アメリカ食品医薬品局、Food and Drug Administration)等の認証を受けた材料、日本では食品衛生法の規格試験等に適合した材料であればよい。
【0053】
なお、一般に樹脂類の熱伝導率は、炭素鋼の約47W/mK等と比較して十分低く、常温で概ね0.2W/mK前後である。そこで、比較的柔軟な樹脂類であっても、強度の高い材料(金属)を組み合わせて複合材とすれば、キャタピラプレート38に適用することができる。
【0054】
キャタピラプレート38の厚さは、4〜200mmの範囲にされる。特に重量と強度を考慮すれば、厚さ10〜25mmの範囲で、肉厚の大きな平鋼又は角鋼を用いることが好ましい。また、蓄熱材としての保有熱量を考慮すれば、キャタピラプレート38の厚さは、5〜50mmの範囲がよい。また、キャタピラプレート38の進行方向に沿った幅は、10〜100mmであり、進行方向に直交する方向の長さは300〜3000mmである。特に好ましい寸法は、幅20〜80mm、長さ1000〜2000mm、高さ(厚さ)10〜100mmである。
【0055】
キャタピラプレート38は、肉厚が大きいほど、また、重量があるほど保有熱量が多くなり蓄熱性が高められる。キャタピラプレート38は、熱せられた豆乳凝固物Tの熱量を受けて昇温するため、蓄熱性が高いほど、キャタピラプレート38により挟持される豆乳凝固物Tへの加熱効果や保温効果が高くなる。
【0056】
キャタピラプレート38の表面(裏側面のみ又は全体面)には、摺動性や平滑性や耐摩耗性を高める研磨加工(バフ研磨、電解研磨等)、硬質クロム・窒化クロム・窒化チタン・セラミック等の表面硬化・平滑化処理(セラミック溶射等)、フッ素樹脂や各種樹脂による表面処理(樹脂コーティング等)やこれらを複合した加工等を施してもよい。
【0057】
搬送コンベア15,19は、豆乳凝固物Tに接する濾布ベルト13,17を、濾布ベルト13,17の裏側から平坦面で支持できるコンベアであれば、いかなる形態であってもよい。好ましくは、剛性のある略平板のプレート部材がチェーン等の連結手段によって多数連なって構成されたキャタピラ式コンベアであればよい。その他にも、例えば、エプロンコンベア、スラットコンベア、トッププレートコンベア、トップチェーンコンベア、フラットトップチェーンコンベア等の多数の平板から成るエンドレス型コンベアであってもよい。
【0058】
キャタピラ式コンベアやトップチェーンコンベアは、平板と1〜数個のチェーンが一体になり、平板と平板とがチェーンで連結されて屈曲自在に構成される。搬送路の前後にはスプロケットが取り付けられ、このスプロケットに上記チェーンが噛み合わされる。コンベアは、このチェーンを駆動することで搬送駆動される。一方、プレートコンベア、エプロンコンベア、スラットコンベアは、周回するチェーンに平板の両端部が固定されて、多数の平板が連結される。このチェーンを搬送方向前後に配置されたスプロケットに噛み合わせて駆動させることにより、コンベアが搬送駆動される。
【0059】
いずれの場合も、コンベア駆動用のモータは、インバータや減速器等の回変数調節機器を介してコンベアの送り工程前端(上流側)の回転軸に配設される。この駆動用モータに上記のスプロケットが取り付けられて駆動部が構成される。また、コンベアの送り工程後端の回転軸にもスプロケットが取り付けられて従動部が構成される。
【0060】
<濾布ベルトと搬送コンベアの他の構成例>
次に、濾布ベルトと搬送コンベアの他の構成例について説明する。以降の説明においては、対応する部材又は同一の部材には同一の符号を付与することで、その説明を簡単化又は省略する。
【0061】
(第2構成例)
図5は第2構成例の成型装置を搬送方向に直交する面で切断した一部断面図である。本構成の成型装置100Aは、前述の第1構成例の搬送コンベア15,19におけるキャタピラプレート38の代わりに、鋼製の角パイプや鋼管材等の中空部を有する中空構造のキャタピラプレート38Aを用いている。その他の構成は、第1構成例の成型装置100と同様である。
【0062】
角パイプ等の断面中空の鋼管材は、一般的な鋼管であり比較的安価に入手可能である。また、特に角パイプは他の形鋼よりも表面形状の凹凸が少なく、洗浄がしやすい上、高い剛性を有しながら軽量化が可能である。鋼管材は、高さが5mm以上、好ましくは高さ10mm以上で、100mmまでが使用可能である。キャタピラプレート38Aを上方から見た短辺(進行方向に沿う辺)は、20〜150mm、長辺(進行方向に直交する辺)は、500〜2500mmが好ましい。キャタピラプレート38Aは、例えば、断面の一辺が10〜100mmの範囲で、断面長方形又は正方形の角形鋼管の肉厚を、1〜10mmの範囲で適宜選定できる。キャタピラプレート38Aは、重量と強度、熱伝導率の関係から、2〜8mmの肉厚の角パイプを用いることが好ましい。
【0063】
また、キャタピラプレート38Aは、戻り工程において加熱される区間が、短い区間である場合や、搬送路11の入口側の豆乳凝固物Tに近接する直前の区間である場合は、比熱が低めで、肉厚が薄めの金属製部材とすることが好ましい。加熱する区間が長ければ、比熱は高めで肉厚の大きい金属製や金属と同等以上の剛性を有する高剛性樹脂製部材とすることが好ましい。肉厚が薄めの板材は、放熱性が高く(冷めやすい)、豆乳凝固物Tに近接した後、熱移動の定常状態に早く落ち着く。また、肉厚が大きい部材は、保有する熱容量が大きいため、豆乳凝固物Tに近接した後、熱移動の定常状態に落ち着くのが遅いため、豆乳凝固物Tの放熱を抑制できる。
【0064】
キャタピラプレート38Aは、
図6Aに示すように、中空部に断熱保温材Hや蓄熱材Fが組み付けられていてもよい。断熱保温材Hと蓄熱材Fは、中空部内にいずれか一方のみ、又は双方が混在して配置されていてもよい。また、中空部内に、断熱保温材Hとして熱伝導率の低い空気だけが密封されている形態であってもよい。
【0065】
これら断熱保温材Hと蓄熱材Fは、中空構造体の中空部に略箱型に配置することや、材料を充填する以外にも、
図6Bに示すように、予め円筒状や角筒状、短冊状等にされたユニット単位の形態で配置してもよい。その場合、断熱保温材Hや蓄熱材Fの交換が容易となる。
【0066】
断熱保温材Hは、空気以外にも、市販の真空断熱材(熱伝導率:0.0012〜0.005W/mK)や発泡樹脂成形品等の断熱保温材料、又は、発泡樹脂(粒状発泡ウレタン樹脂、粒状発泡スチロール樹脂、発泡シリコーン樹脂)や発泡ゴム等の断熱性部材、或いは、木材チップや乾燥オカラ等の有機性乾燥物といった断熱原料で構成することもできる。この断熱保温材Hは、断熱保温材料を中空部に配置した形態、発泡樹脂類を中空部内で発泡させて成形させた形態、断熱原料である流体、粉体、液体のいずれかを中空部内に充填させた形態、中空部を脱気、減圧、真空として密封した真空断熱等の断熱領域を含んだ形態等、いずれであってもよい。
【0067】
中空部を空気が薄い減圧状態又は空気が殆ど存在しない真空状態で密封した形態においては、中空部内の空気の対流が起こりにくい。また、放熱が少なくなり、断熱保温性が一層高まる。したがって、この形態では高効率で、且つ比較的安価に豆乳凝固物Tの放熱を抑制でき、豆腐類の品質向上が図れる。
【0068】
なお、減圧状態や真空状態の圧力は、絶対圧力として0〜0.1MPa(相対圧力として−0.1〜0MPa)であって、大気圧以下であればよい。また、例えば、市販家電(冷蔵庫)用等に開発された真空断熱素材等の減圧又は真空部材を中空部に納めた形態であってもよい。中空部を減圧・真空にする方法や中空部の密封方法は特に限定しない。
【0069】
中空部に設ける断熱保温材Hは、空気以外のガスとして、炭酸ガス、エタンガス、エチレンガスや、窒素ガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス等の不活性ガス等、熱伝導性の低いガス等が使用可能である。空気の熱伝導率が0.0241W/mK、アルゴンガスの熱伝導率が0.0168W/mKであることに対し、クリプトンガスの熱伝導率は0.0087W/mK、キセノンガスの熱伝導率は0.0052W/mKである。そのため、クリプトンガスやキセノンガスを断熱保温材Hとして使用すれば、断熱保温効果を一層高めることができる。
【0070】
蓄熱材Fは、比熱が大きく、相変化による潜熱蓄熱材を好適に用いられる。例えば、市販品では「パッサーモ:登録商標」(玉井化成製)が50℃までの範囲で使用可能である。また、融点50℃〜120℃、好ましくは60℃〜105℃に凝固点又は融点を有する、糖アルコール、無機塩水和物、有機酸塩水和物等であってもよい。
【0071】
蓄熱材Fは、相変化型蓄熱材や顕熱型蓄熱材等が使用できる。例えば、水、油(特に固形脂や硬化油等)、無機物(砂、アルミナ、酸化マグネシウム、セラミックビーズ(粉)等)や、有機物(樹脂ビーズ、珪藻土等の有機性の潜熱型蓄熱材)等を用いることができる。特に、60℃〜105℃の融点又は凝固点を有する物質が使用可能である。なお、60℃〜105℃の範囲では、大気圧下の水も顕熱型蓄熱材に含まれる。蓄熱材Fは、キャタピラプレート38Aが重くなり、機械的強度を増加させて重厚な機械になりすぎない範囲、又は高価にならない範囲で適宜選択される。
【0072】
キャタピラプレート38Aは、その中空部の内側に、放射熱を防ぐ銅箔やアルミ箔や樹脂ライニング等を施すことで、放射熱や熱伝導率を一層下げることができる。また、断熱保温材Hや蓄熱材Fをキャタピラプレート38Aの部材周囲(表面、裏面、側面、内面等)に貼り合わせたり、含浸させたりする等、適宜組み合わせることによって、複合的に断熱保温機能や蓄熱機能を高めることができる。更に、キャタピラプレート38Aの部材表面に、樹脂コーティング等の熱伝達率を小さく抑える処理を施すことで、放熱抑制効果を一層高められる。なお、断熱保温材Hや蓄熱材Fは、交換可能に着脱自在としてもよく、それらの組み合わせ方については特に限定されない。
【0073】
潜熱型蓄熱材としては、例えば次の材料が利用できる。すなわち、低くても50℃、高くても120℃の範囲で、好ましくは60〜105℃の範囲で融点又は凝固点を有するスレイトール(融点90℃)、エリスリトール(融点90℃)、キシリトール(融点94℃)、ソルビトール(融点106℃)等のポリオールや糖アルコールや、酢酸ナトリウム三水和物(融点58℃)、リン酸三ナトリウム十二水和物(融点75℃)、四ホウ酸ナトリウム十水和物(融点75℃)、水酸化バリウム八水和物(融点78℃)、塩化クロム(III)六水和物(融点83℃)、塩化コバルト(II)六水和物(融点86℃)、硝酸マグネシウム六水和物(融点89℃)、硫酸アルミニウムカリウム十二水和物(融点93℃)、塩化マグネシウム六水和物(融点117℃)等の無機塩水和物等の相転移型蓄熱材や、水や油脂、脂肪酸(ステアリン酸)、有機酸、パラフィン等の液体や粘性液体やゼリー又はゲル状物(寒天・カラギーナンやカードランゲル)やコンニャクマンナンやペクチン・セルロース、ポリビニルアルコール等、乾燥オカラ等の有機材料、鉄粉等の金属粉や砂やアルミナ、セラミック、コンクリート等の鉱物性粉末や食塩や硫酸カルシウム等の無機塩等の粉末等、顕熱型蓄熱材料や、その他蓄熱効果が期待でき、中空部に充填できる材料であれば、特に限定されない。
【0074】
図7A〜
図7Hは、中空部を有する中空構造のキャタピラプレート38Aの断面図である。キャタピラプレート38Aは、前述した鋼管(四角形鋼管、角パイプ)111からなる
図7Aに示す断面形状に限らない。
図7Bに示す溝形鋼(C形鋼)113と平鋼115とを組み合わせて中空部117を画成する形態、
図7Cに示す2つの山形鋼(L形鋼)119を組み合わせて中空部117を画成する形態であってもよい。更に、
図7Dに示す三角形鋼管121、
図7Eに示す六角形鋼管123、
図7Fに示す八角形鋼管125、
図7Gに示すような長方形の一辺が半円形となった異形鋼管(蒲鉾形鋼管)127、
図7Hに示す台形鋼管129であってもよい。
【0075】
図7A〜
図7Hの図中下側の面は、いずれも平坦であり、濾布ベルト13,17を介して豆乳凝固物Tに近接する平面部130となる。図中下側の平面部130以外の面は、曲線状、直線状の面等、特に限定されない。また、上記例の他にも、キャタピラプレート38Aに使用可能な鋼管としては、角に丸みがある四角形、正方形、長方形、四角に近い台形、菱形等が挙げられる。その他、断面がH形、I形、T形、Z形等の形鋼や、断面が五角形等の多角形鋼管を用いた形態であってもよい。
【0076】
また、キャタピラプレート38Aは、角パイプ以外の、アングル鋼、不等辺アングル鋼、チャンネル鋼(C鋼)、ジョイスト鋼、エッチ鋼(H鋼)、リップ溝形鋼、やフラットバー(平鋼)等の形鋼を適宜組み合わせて、断面四角形の略角パイプ状又は断面略L字状等に構成して内部に中空部を設けた形態であってもよい。
【0077】
図8A〜
図8Oは、断熱保温材H又は蓄熱材Fを備えたキャタピラプレート38Aの断面図である。
図8A〜
図8C、
図8E〜
図8Iは、
図7A〜
図7Hに示す各キャタピラプレート38Aの中空部117に、断熱保温材H又は蓄熱材Fが組み入れた形態である。
【0078】
図8Dは、
図8Cに示す構成から山形鋼119を1つのみにした形態である。
図8Jは、溝型鋼(C形鋼)113の溝内側に断熱保温材H又は蓄熱材Fを組み入れた形態である。
図8Kは、
図8Jの溝型鋼113よりも溝深さの浅い溝型鋼114Aを用いて断熱保温材H又は蓄熱材Fを積層した形態である。
図8Lは、
図8Jの溝型鋼113より溝深さの深い溝型鋼114Bを用いた形態である。
【0079】
図8Mは、H形鋼131の中間部における一対の空間に、断熱保温材H又は蓄熱材Fをそれぞれ組み入れた形態である。
図8Nは、H形鋼131の一対の空間に蓄熱材Fを組み入れ、H形鋼131の片側側面(図中上面)に断熱保温材H又は蓄熱材Fを積層した形態である。また、
図8Oは、平鋼133の片面に断熱保温材H又は蓄熱材Fを積層した形態である。
【0080】
図9A〜
図9Oは、断熱保温材Hと蓄熱材Fとを共に備えたキャタピラプレート38Aの断面図である。
図9A〜
図9Oは、それぞれ
図8A〜
図8Oに対応しており、断熱保温材Hと蓄熱材Fとが積層して配置された形態である。
図9Aに示すように、鋼管111の中空部には、平面部130側から蓄熱材Fと、断熱保温材Hとがこの順で積層される。他の
図9B〜
図9Oについても同様に、平面部130側から蓄熱材Fと断熱保温材Hとがこの順で積層される。
【0081】
図9D,
図9E,
図9H,
図9Mの形態については、局所的に平面部130に断熱保温材Hが接続された形態である。これらの形態では、断熱保温材Hが蓄熱材Fを覆って形成されたものである。
【0082】
図9A〜
図9Oに示す各形態においては、図中下側の平面部130を通じて蓄熱材Fへ伝熱され、図中上側は断熱保温材Hにより放熱が抑制される。このため、蓄熱材Fに蓄熱された熱は、豆乳凝固物Tに指向して移動して、豆乳凝固物T以外には放熱しにくくなる。
【0083】
通常の豆腐、油揚等の製造においては、豆乳(60〜95℃)に凝固剤液を入れて凝固撹拌し熟成した後、凝固物を崩し、これにより得られた豆乳凝固物Tを成型装置100に移載(盛り込み)する。この豆乳凝固物Tが自然脱水、圧搾脱水されて、成型装置100Aの搬送路11の出口に到達すると、連続したシート状の豆腐類、例えば木綿豆腐(生地)が得られる。凝固前の豆乳温度を初期温度とすると、従来は、凝固工程、成型工程を経て、成型装置100の出口に生地が到達するときには、生地の品温は初期温度から大きく低下していた。この温度差ΔTは、マイナス15〜20℃かそれ以上が普通であった。
【0084】
しかし、本構成によれば、断熱保温材Hや蓄熱材Fを備えたキャタピラプレート38Aによって、成型装置100Aの搬送路11の入口における品温(凝固機出口の豆乳凝固物温度)に対して、搬送路11の出口における品温(出口における豆腐類の温度)との温度差ΔTを、マイナス10℃以内、好ましくはマイナス5℃以内にできる。
【0085】
成型装置100Aの搬送路11の出口における豆腐類の品温を、少なくとも60℃以上、好ましくは70℃以上に維持することは、豆腐類の物性向上のために好ましい。例えば、成型装置100Aの出口におけるシート状豆腐の品温(上下の表面温度や芯温)が、成型装置100Aへの豆乳凝固物の盛り込み時の温度(凝固熟成後から崩し・均し装置による処理前後の豆乳凝固物の品温)に対して低下する品温の温度差ΔTを、マイナス15℃以内にすることが好ましい。より好ましくは、ΔTをマイナス10℃以内とし、更に好ましくは、ΔTをマイナス5℃以下とする。こうすることで、成型装置100Aの搬送路11の出口における豆腐温度が60〜80℃に維持される。
【0086】
本構成の成型装置100Aによれば、積極的に加熱装置(詳細は後述)を用いることによって豆腐品温を上昇させることができる。豆腐類の品温を60〜100℃、好ましくは70〜95℃の範囲で所定の時間、加熱することによって、豆腐類の物性や風味を向上する効果と、豆腐類の周辺環境で細菌汚染や細菌増殖を抑制し衛生的環境を整備して、更には芽胞以外の栄養細胞である細菌(耐熱性の低い細菌)の殺菌効果が期待できる。ただし、あまり豆腐類を高温で加熱し過ぎると「す」の発生や、離水がしやすく肌荒れになるように、過度な加熱は豆腐類の品質を損なう虞があるので、直接に豆腐品温を加熱するよりも、搬送コンベア15,19を囲む雰囲気の温度を60〜105℃、好ましくは70〜95℃の範囲で加熱、維持することが好ましい。なお、加熱時間は、搬送路11を通過する成型時間とほぼ同じかそれ以下に設定し、少なくとも所定の品温維持や殺菌効果が得られるように、1〜3600秒間、好ましくは3〜1200秒間に設定する。
【0087】
上記の加熱装置は、搬送コンベア15,19の送り工程に適宜配置できるが、前述した戻り工程における蒸気殺菌槽51,53(
図1参照)を、加熱装置として用いることができる。つまり、蒸気殺菌槽51,53は、高温の蒸気による殺菌処理によって搬送コンベア15,19を加熱し、豆乳凝固物Tの搬送路11に到達する際の搬送コンベア15,19の温度を、上記した温度範囲に上昇、又は維持させる。蒸気殺菌槽51,53は、戻り工程の最終軌道部分に配置されるため、蒸気殺菌槽51,53で加熱された搬送コンベア15,19は、温度が大きく低下しないうちに送り工程の搬送路11に到達できる。
【0088】
上記構成によれば、加熱されて蓄熱した搬送コンベア15,19を介して、豆乳凝固物Tが加熱又は保温される。各キャタピラプレート38Aは、断熱保温材Hや蓄熱材Fの保有熱量を搬送中の豆乳凝固物Tに伝熱させて、豆乳凝固物Tを昇温させることができる。又は、それらの断熱保温性によって、放熱による豆乳凝固物Tの温度低下を遅らせることや温度低下を防ぐことができる。また、濾布ベルト13,17及び搬送コンベア15,19を、それらの周回軌道における戻り工程の領域で洗浄および加熱することができる。これらの効果により、従来よりも細菌汚染・増殖を防止しながら殺菌もでき、大豆タンパク質の結着やゲル化が促されて、豆腐類の弾力が増し、凝固温度や凝固剤量を適正にできる。また、豆腐類がきめ細かい組織になり、離水が抑制されて、旨味の流出も防止される。その結果、弾力のある、より高品質な豆腐類の衛生的な量産が可能になり、昔ながらの手作りに近い美味しい木綿豆腐や、きめ細かく皮の柔らかい油揚等の豆腐類を製造できる。
【0089】
また、高温の加熱媒体に豆腐類を直接接触させると、豆腐類の表面だけタンパク質の熱変性が過剰になり、離水して味抜けしたり脆くなったりする等の豆腐類の品質低下を招く場合もある。その点、本構成のように搬送コンベア15,19が濾布ベルト13,17を介して豆腐類を加熱することで、上記の品質低下を回避できる。また、「布付き」現象も抑制でき、製造ロスを低減できる。更に、圧搾成型時間が短縮され、成型装置100Aの装置全長を短く設計できるため、装置コストの低減や設置スペースの縮小を図ることができる。
【0090】
成型装置100Aは、上記の加熱装置として蒸気殺菌槽51,53を使用する構成の他にも、蒸気殺菌槽51,53とは別途に加熱装置を設けて併用する構成としてもよい。
【0091】
加熱装置は、濾布ベルト13,17及び搬送コンベア15,19の周回軌道の送り工程、戻り工程、転回工程のいずれか1工程、それらの複数工程、又は各工程の一部分に設けることができる。そして、加熱装置は、必要最小限の所定範囲を加熱する構成の他、全体を加熱する構成であってもよい。
【0092】
ここで、豆腐類の保温とは、搬送路11で搬送する豆腐類を囲むその近傍を好ましくは常に60℃〜105℃に、好ましくは短時間でも60℃〜105℃に維持することを意味する。また、60℃〜105℃の範囲で同じ温度に保持することや、昇温させることが好ましいが、放熱により温度が少し低下しても、60℃の下限温度未満にならないように保温又は加熱することを意味する。仮に温度が下がっても、一時的であって、成型装置100Aによる豆腐類の全加工時間(搬送路11の通過時間)の概ね50%以上、好ましくは70%以上で60〜105℃の雰囲気温度で豆腐品温が60〜100℃に維持できれば、商業的には十分許容できる範囲である。
【0093】
蒸気殺菌槽51,53とは別途に設ける加熱装置としては、大気圧下で60〜105℃の蒸気を直接吹き付けて加熱するスチーム加熱装置、60〜100℃に調整された熱湯槽の熱湯をスプレーして加熱する熱湯スプレー式加熱装置、60〜200℃に調整(例えば水蒸気との熱交換)された熱風を吹き付ける熱風吹き付け式加熱装置、60〜300℃の乾熱・熱風発生装置(送風ファンとニクロム線等からなるシーズヒータ、赤外線ヒータ、蓄熱ヒータ、ヒートポンプのようなヒータと送風ファンから成るヒータ)、スチーム間接ヒータ等を備えた熱風ヒータ、過加熱水蒸気ヒータ等の熱気加熱装置等が利用可能である。また、加熱装置は、60〜100℃の熱湯を供給してシャワー(散布、散水)して掛け流す(その排水を回収して、再加熱して循環供給する)熱湯散布加熱装置や、湯煎のような熱湯から再蒸発させた水蒸気を利用する湯煎加熱装置の形態であってもよい。また、上記の各加熱装置を適宜組み合わせて併用してもよい。
【0094】
蒸気、熱湯、熱風を噴射するノズルは、固定式、可動式、又は回転式のいずれであってもよい。更に、熱湯(60〜100℃)を常時貯留する熱湯槽を用い、濾布ベルト13,17や搬送コンベア15,19を熱湯内に潜らせる熱湯槽加熱式であってもよい。
【0095】
蒸気吹き付け式、熱湯散布式、熱風吹き付け式の加熱装置を用いる場合、濾布ベルト13,17や搬送コンベア15,19の周回軌道を屈曲させずフラットな周回軌道のままで設置できる。そのため、熱湯槽加熱式と比較して、部品点数を削減でき、排水量や凝縮水量を極力抑えることができる。また、熱湯槽内の汚れが製品に異物混入するリスクも軽減できる。
なお、上記の加熱装置は、温度調節機能や温度記録機能等の制御装置や計測・記録装置等を備えて、所望の温度に制御される。
【0096】
高温の豆乳凝固物の保有熱量を、搬送コンベア15,19に伝熱・蓄熱させる装置も加熱装置の一つである。例えば、豆乳凝固物の温度が概ね70〜95℃である場合は、加熱装置を用いなくても、搬送コンベアのキャタピラプレートの断熱保温機能や蓄熱機能によって豆乳凝固物自身の保有熱量を逃がさずに、放熱を抑制できる。その場合でも、従来方式よりも豆腐の結着を促進して弾力性を向上させ、豆腐類の品質を向上できる。また、豆乳凝固物を成型装置100Aの搬送路に受け入れる直前までの初期段階だけ、加熱装置を補助的に利用することでもよい。逆に、豆乳凝固物の温度が60〜70℃の場合は、その後の工程で放冷により豆乳凝固物の温度が60℃を下回る虞があるため、加熱装置を補助的に用いることが好ましい。
【0097】
搬送コンベア15,19や濾布ベルト13,17の洗浄、殺菌処理は、前述したように豆腐類の生産中に行うが、生産終了後の洗浄時や生産開始前のお湯通し時(ウォーミングアップ)等の非生産時において、上記した加熱装置を併用して実施できる。その場合には、加熱装置のノズルや配管等を、洗浄液をスプレーする洗浄ノズルや洗浄用配管として利用してもよい。
【0098】
加熱装置の配置領域以外の搬送コンベア15,19における各部は、カバー等で覆わずに一部開放状態にすることで、目視確認や装置の隅々の点検が行やすくなる。
【0099】
(第3構成例)
図10は第3構成例の成型装置を搬送方向に直交する面で切断した一部断面図である。本構成の成型装置100Bは、前述の第2構成例の搬送コンベア15,19に加えて、補助コンベア141,143を備え、濾布ベルト17を広幅にしている。その他の構成は第2構成例の成型装置100Aと同様である。
【0100】
本構成の補助コンベア141,143は、搬送コンベア15,19の周回方向に直交する方向の両脇側に配置され、それぞれが搬送コンベア15,19と同期して独立駆動される。濾布ベルト17は、その両端部が補助コンベア141,143の上部に届く形態の断面凹状に形成される。
【0101】
本構成の成型装置100Bによれば、豆乳凝固物Tを上方側、下方側、左右の側方側の4方向から囲むことによって、各方向からの自然放冷を抑制し、豆乳凝固物Tの保温性が高められる。これにより、豆腐の結着を促進して弾力性を向上させ、濾布ベルト13,17に豆腐類が付着する「布付き」現象を抑制できる。
【0102】
また、本構成の成型装置100Bによれば、厚みの大きな豆乳凝固物Tであっても安定した搬送が行え、高品質な豆腐類の製造が可能になる。例えば、豆腐類の成型寸法の高さが10〜150mmである比較的厚い豆腐類を成型する場合であっても、補助コンベア141,143が側方を支持することによって、型くずれなく、安定した圧搾成型が可能となる。
【0103】
(第4構成例)
図11は第4構成例の成型装置を搬送方向に直交する面で切断した一部断面図である。本構成の成型装置100Cは、前述の第3構成例の補助コンベア141,143に対応する濾布ベルト145,147を備える。濾布ベルト145の周回軌道は、補助コンベア141の外側(側方)に配置され、濾布ベルト147は、補助コンベア143の外側(側方)に配置される。搬送コンベア19に沿う濾布ベルト17は、その両端が補助コンベア141,143及び濾布ベルト145,147の下方に配置される。その他の構成は第3構成例の成型装置100Bと同様である。
【0104】
本構成の成型装置100Cによれば、豆乳凝固物Tが4方向から、それぞれ個別に濾布ベルトを介して搬送コンベア15,19及び補助コンベア141,143により囲まれる。このため、前述同様に自然放冷を抑制し、保温性を高め、効率よく加熱できる。また、厚みの大きな豆乳凝固物Tであっても安定した搬送が行え、豆腐の結着を促進して弾力性を向上させ、「布付き」現象も抑制できる。
【0105】
(第5構成例)
図12は第5構成例の成型装置を搬送方向に直交する面で切断した一部断面図である。本構成の成型装置100Dは、前述の第4構成例の成型装置100Cにおける濾布ベルト145,147を備えず、補助コンベア141,143が搬送コンベア19と一体に構成される。つまり、本構成の下方側の搬送コンベア149は、その両端が折り返して垂設された側壁部を有した断面略U字型に形成される。下方側の濾布ベルト17は、断面凹状に形成され、その両端部が搬送コンベア149の側壁部の上端まで届く形態になっている。その他の構成は第4構成例の成型装置100Cと同様である。
【0106】
本構成の成型装置100Dは、下方側の搬送コンベア149におけるキャタピラプレートの両端が側壁として垂設される。これにより、下方側の搬送コンベア149が送り工程において凹状に形成される。この構成により、成型装置100Dは、下方側と上方側に一対の搬送コンベア15,149を備えるだけで済み、独立した左右の側方側の補助コンベアは不要になる。よって、装置コストを低減できる。
【0107】
上記2つの搬送コンベア15,149により、豆乳凝固物Tを4方向から囲むことによって、簡単な構造でありながら、前述同様に自然放冷を抑制し、保温性を高め、効率よく加熱できる。また、厚みの大きな豆乳凝固物Tであっても、安定した搬送が行え、豆腐の結着を促進して弾力性を向上させ、「布付き」現象も抑制できる。
【0108】
(第6構成例)
次に、搬送コンベア15,19に対面して設けた加熱装置の外側に、この加熱装置を覆う部分カバーを備えた第6構成例を説明する。
図13は第6構成例の成型装置を搬送方向に沿った面で切断した一部断面図である。本構成の成型装置100Eは、搬送コンベア15の送り工程における豆乳凝固物Tの搬送路11とは反対側に、搬送コンベア15から離間して部分カバーEが配置される。また、部分カバーEと搬送コンベア15との間には、1つ又は複数の加熱装置Gが配置される。つまり、部分カバーEは、その内側に配置された加熱装置Gからの熱エネルギーが、搬送コンベア15に効率よく伝達されるように、搬送コンベア15の所定範囲を覆って配置される。
【0109】
搬送コンベア19についても同様に、1つ又は複数の加熱装置Gと部分カバーEが配置される。搬送コンベア15,19の各キャタピラプレートは、
図2に示す第1構成例のような平板状のキャタピラプレート38であってもよく、
図5に示す第2構成例のような中空部を有する中空構造のキャタピラプレート38Aであってもよい。加熱装置Gは、前述した各種構成の加熱装置が利用可能である。
【0110】
本構成の成型装置100Eによれば、搬送コンベア15,19の周回軌道を囲む部分カバーEが設けられ、この部分カバーE内が、蒸気や熱風の飛散式や温水散布(スプレー)式等の加熱装置Gにより加熱される。このため、加熱装置Gからの熱エネルギーが無駄に放散されることなく、部分カバーEが設けられた範囲内を効率よく加熱できる。本構成により、少なくとも豆腐類の生産中は、豆腐類の芯温や表面温度又は、搬送コンベア15,19やその周辺を、部分カバーE内の領域を60℃〜105℃に維持でき、豆腐類の物性を向上でき、細菌二次汚染・増殖を防止しながら殺菌できる。部分カバーEは、搬送コンベア15,19の周回軌道又はその周辺における、必要最小限の範囲を囲んで配置される。これにより、加熱装置Gの供給熱量を最小限に抑えつつ、必要な加熱処理を実施できる。
【0111】
また、部分カバーEと加熱装置Gは、搬送コンベア15,19の送り工程、戻り工程、転回工程等の任意の位置に配置され、適宜、複数個所に配置してもよい。部分カバーEは、搬送コンベア15,19を局所的に覆う場合、覆われた領域に対して、正確な温度制御を機敏に行え、最小限の熱量で高い応答性で加熱処理を施すことができる。また、部分カバーEは、搬送コンベア15,19の一部を覆うことに限らず、全体を覆うカバーとしてもよい。
【0112】
更に、成型装置100Eは、熱媒体(蒸気凝縮水や水蒸気や熱気等)を部分カバーEの外に排水する排水装置や、排気する排気装置を更に設けてもよい。これにより、搬送コンベア15,19を、長時間、円滑に連続運転できる。また、部分カバーEの外側の雰囲気を補助的に加熱する補助加熱部を設けることで、所望の加熱温度にいち早く到達させる構成にもできる。
【0113】
部分カバーEは、加熱装置Gを効率よく使用すること、外気への放熱や加熱媒体の放出ロスを抑制する観点から、ステンレス板や樹脂板(例えばアクリル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン樹脂(PP)等の透明性のある板材)から成るカバーや断熱材付カバーとすることが好ましい。
【0114】
部分カバーEは、搬送コンベア15,19の周回軌道や、その近傍の送り工程、戻り工程、転回工程の少なくともいずれかの一工程、一部分又は大部分に設けることができる。また、部分カバーEは、搬送コンベア15,19の所定の範囲をトンネル状に囲む形態にすることが好ましい。特に、搬送コンベア15,19の送り工程においては、搬送コンベア15,19、及び搬送される豆乳凝固物Tを、できるだけ最小限の範囲を囲むように局所的に設けるとよい。
【0115】
また、部分カバーEの内側に、洗浄液等を噴射する自動洗浄用のノズルを設けてもよい。その場合、部分カバーEによって洗浄液の散布範囲が必要最小限に抑えられ、効率よく搬送コンベア15,19の洗浄処理を行える。更に、その自動洗浄用のノズルは、搬送コンベア15,19の洗浄用に設けられる蒸気や熱湯や熱風を噴射するノズルと兼用すれば、より低コストな構成にすることができる。
【0116】
そして、部分カバーEは、部分的に開閉可能な窓等を設けてもよい。その場合、洗浄後の目視確認や装置の隅々の点検が実施しやすくなる。この部分カバーEは、搬送コンベア15,19の搬送路11の入口と出口、開口や隙間等に加熱媒体の漏れを防止するシール部材(暖簾状や密閉できる樹脂・ゴム製部材)や水封式シール手段等を適宜備えてもよい。
【0117】
上記の通り、部分カバーEは、搬送コンベア15,19の周回軌道や、搬送される豆乳凝固物Tや、それらの近傍を、必要最小限の範囲で覆うカバーであればよい。加熱装置Gや洗浄装置で部分カバーEの内側を加熱又は洗浄する場合は、部分カバーE内の容積が小さい方が加熱エネルギー(ランニングコスト)を抑え、温度不足や温度ムラを少なくできる。これにより、必要最小限の領域や、豆乳凝固物Tや豆腐類の近傍又は近接する部分のみを重点的に集中管理できる。また、重点的に洗浄する箇所を細部に絞り込むこともでき、衛生管理上も好ましい。なお、搬送路11の下方側に配置されるカバーは、加熱媒体の受け皿や貯留槽を兼ねてもよい。
【0118】
ところで、成型装置で発生する「布付き」問題は、特に下側の濾布ベルト17に発生することが多く、油揚生地類の成型装置で発生する「布付き」問題は、特に上側の濾布ベルト13に発生することが多いことが分かっている。木綿豆腐等の成型機では下側の濾布ベルト17の方で発生しやすい。そこで、この「布付き」問題をより確実に解消させるためには、搬送路11の下方側又は上方側の少なくともいずれか一方の搬送コンベアだけでも部分カバーEを設けて、更に、それらを加熱する加熱装置Gを設けるとよい。そして更に、キャタピラプレートに断熱保温材Hや蓄熱材Fを設けるとよい。
【0119】
(第7構成例)
図14は第7構成例の成型装置の搬送方向に直交する面で切断した模式的な一部断面図である。本構成の成型装置100Fは、
図11に示す成型装置100Cに部分カバーEと加熱装置Gを追加した構成であり、その他の構成は成型装置100Cと同様である。
【0120】
本構成の成型装置100Fは、送り工程の搬送コンベア15A,19A及び濾布ベルト13A,17Aと、送り工程の補助コンベア141A,143A及び濾布ベルト145A,147Aと、を囲む部分カバーEを備える。部分カバーEの外側には、戻り工程の搬送コンベア15B,19B及び濾布ベルト13B,17Bと、戻り工程の補助コンベア141B,143B及び濾布ベルト145B,147Bと、が配置される。
【0121】
部分カバーEの内側には、複数の加熱装置Gが配置される。加熱装置Gは、部分カバーEと搬送コンベア15A,19Aとの間、及び、部分カバーEと補助コンベア141A,143Aとの間にそれぞれ配置される。これら搬送コンベア15,19、補助コンベア141,143は、それぞれチェーン39により駆動され、豆乳凝固物Tを搬送する。
【0122】
部分カバーEが、搬送コンベア15,19、補助コンベア141,143、濾布ベルト13,17,145,147の送り工程の所定範囲を一体に覆うことで、部分カバーE内を効率よく加熱でき、部分カバーE内の雰囲気温度を一定に制御しやすくなる。これにより、搬送コンベア15,19、補助コンベア141,143に含まれる断熱保温材や蓄熱材を加熱しながら豆乳凝固物Tを搬送でき、豆乳凝固物Tの温度を所定の温度範囲に設定できる。以て、食感や味の良い高品質な豆腐類を衛生的に得ることができる。
【0123】
(第8構成例)
図15Aは第8構成例の成型装置の模式的な一部側面図である。本構成の成型装置100Gは、搬送コンベア15,19の送り工程の領域を覆う部分カバーEと、部分カバーEの内側に、蒸気噴射式や熱風吹付式や温水散布(スプレー)式等の加熱装置Gと、を備える。図示例の搬送コンベア15,19の周回軌道は、
図1に示す蒸気殺菌槽51,53、アルカリ洗浄槽43,45、酸洗浄槽47,49、及び水洗洗浄部55、57,59,61を通過しない軌道であるが、
図1に示す洗浄、殺菌用の上記各部位の搬送途中に、部分カバーEと加熱装置Gを設けた構成にしてもよい。
【0124】
本構成の部分カバーEと加熱装置Gは、搬送コンベア15,19の周回軌道内にそれぞれ配置される。部分カバーEは、加熱装置Gの搬送路11側とは反対側に配置される。搬送コンベア15,19は、豆乳凝固物Tの搬送方向下流側に向かって図示しない加圧手段(バネやエアシリンダー等)によって加圧力が大きくなるように、また、豆乳凝固物Tの圧密に応じて相互の接近距離が小さくなるように配置される。図示例では、搬送コンベア15が搬送コンベア19に対して傾斜した例を示している。これに限らず、搬送コンベア19が搬送コンベア15に対して傾斜していてもよい。本構成の成型装置100Gによれば、図示しない豆乳凝固物Tが搬送コンベア15,19により搬送方向下流側へ搬送されるに従って、豆乳凝固物が厚み方向に強く圧搾され、より確実にホエー等が排出される。これにより、豆乳凝固物Tをより濃厚な豆腐類に成型できる。
【0125】
部分カバーEは、側面視でトンネル状を呈して搬送コンベア15,19の所定範囲を覆う。そのため、加熱装置Gからの熱量は、搬送コンベア15,19の所定範囲内に高効率で伝達される。搬送コンベア15,19の加熱領域は、搬送コンベア15,19の送り工程の領域に限らない。
【0126】
図15Bに第1変形例の成型装置の模式的な一部側面図を示す。この成型装置100Hにおいては、搬送コンベア15,19の戻り工程における表裏両側に部分カバーEa,Ebがそれぞれ配置される。また、それぞれの部分カバーEa,Eb内に加熱装置Gが配置される。部分カバーEa,Ebと加熱装置Gが戻り工程に配置されることで、キャタピラプレート38Aが熱容量の大きな蓄熱材Fを備える場合でも、送り工程に戻るまでの間に必要十分な加熱処理が行える。
【0127】
図15Cに第2変形例の成型装置の模式的な一部側面図を示す。この成型装置100Iにおいては、搬送コンベア15,19の戻り工程の領域全体が、部分カバーEによりそれぞれ覆われる。加熱装置Gは、搬送コンベア15,19の周回軌道内と、搬送コンベア15,19の戻り工程の領域と部分カバーEとの間と、にそれぞれ配置される。戻り工程の領域全体が部分カバーEにより覆われることで、搬送コンベア15,19の全体が効率よく加熱される。これにより、搬送コンベア15,19を均一に温度制御でき、加熱ムラが生じにくくなる。
【0128】
図15Dに第3変形例の成型装置の模式的な一部側面図を示す。この成型装置100Jにおいては、搬送コンベア15,19の戻り工程の下流側の一部と転回工程の領域とが、部分カバーEによってそれぞれ覆われる。加熱装置Gは、部分カバーEと搬送コンベア15,19との間に配置される。つまり、本構成では、搬送コンベア15,19の戻り工程における、送り工程に到達する直前の領域に、部分カバーEと加熱装置Gが配置される。これにより、キャタピラプレート38Aを、送り工程に到達する直前に加熱することができ、周回軌道移動中の放熱による加熱ロスが少なくなる。よって、必要最小限の加熱エネルギーで加熱処理が行える。
【0129】
図15Eに第4変形例の成型装置の模式的な一部側面図を示す。この成型装置100Kにおいては、搬送コンベア15,19の戻り工程の一部の領域であって、送り工程に入る下流側の位置に、部分カバーEa,Ebと加熱装置Gがそれぞれ配置される。部分カバーEa,Ebと加熱装置Gは、搬送コンベア15,19の表裏両側にそれぞれ対向し合う位置に設けられ、搬送コンベア15,19の表裏両側の同じ領域を同時に加熱する。これにより、戻り工程の下流側で集中的に加熱処理が行え、加熱のためのスペースをコンパクトに纏めることができる。
【0130】
(第9構成例)
図16Aは第9構成例の成型装置の模式的な一部側面図である。本構成の成型装置100Lは、搬送コンベア15,19の送り工程、戻り工程、転回工程の略全てが、部分カバーEa,Eb,Ecによって覆われている。部分カバーEaは、搬送コンベア15,19の戻り工程と転回工程の略全てを覆い、搬送路11とは反対側に配置される。部分カバーEb,Ecは、搬送コンベア15,19の周回軌道内にそれぞれ配置される。部分カバーEbは戻り工程を覆い、部分カバーEcは送り工程を覆って配置される。
【0131】
加熱装置Gは、搬送コンベア15,19の戻り工程の領域と各部分カバーEaの間と、搬送コンベア15,19の送り工程の領域と各部分カバーEcとの間にそれぞれ配置される。そして、成型装置100Lの装置全体を覆う全体カバーEzが更に配置される。
【0132】
本構成の成型装置100Lは、これら部分カバーEa,Eb,Ecと、その外側に配置された全体カバーEzによって、二重(多重)カバー構造になっている。特に、全体カバーEzは、点検等の管理面から、略全面で透明度の高い全体カバーであることが好ましい。そのため、全体カバーEzの材質としては、耐熱性は求められず、透明性のある樹脂製板材(ポリエチレンテレフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂など)であることが好ましい。
【0133】
また、全体カバーEzに、排気設備、吸気設備、排水設備等を適宜設けることで、成型装置100L内の作業環境に加熱装置からの熱風、蒸気、温水等の加熱媒体が放散することが抑制され、作業環境が高温多湿になることを防止できる。更に、全体カバーEzを部分カバーEa,Eb,Ecと併用することにより、水滴落下や異物混入等による豆腐類の品質低下をより確実に防止できる。また、豆腐類の製造工程が、環境温度に左右されず、機械の初期温度の影響も少なくなり、豆腐類の品温変動への影響を軽減できる。
【0134】
一般に、位置センサやエアシリンダ等の部品類を、加熱される部分カバーEa,Eb,Ecの内側に設けた場合、高い耐熱性や高度の防水性が要求されて、装置コストが増加する。一方、本構成においては、部分カバーEa,Eb,Ecの外側の、全体カバーEzの内側に部品類を設ければ、特に耐熱性や防水性が要求されず、従来通りの標準的な部品や比較的安価な部品を採用できる。よって、本構成によれば各種の部品類を装置内に追加設置しても、装置コストの増加を抑制できる。
【0135】
図16Bに変形例の成型装置の模式的な一部側面図を示す。この成型装置100Mは、成型装置100Mの全体を覆う全体カバーEzと、この全体カバーEz内に配置された加熱装置Gとを備える。この構成においては、部分カバーは配置されていない。他の構成は
図16Aに示す成型装置100Lと同様である。
【0136】
本構成によれば、搬送コンベア15,19が全体カバーEzに覆われるため、部分カバーが配置されていなくても、豆腐類の放熱を抑制できる。更に、キャタピラプレート38Aが断熱保温機能や蓄熱機能を有する場合には、放熱抑制効果が相乗的に高められ、保温効果を向上できる。そして、加熱装置Gからの加熱エネルギーが、全体カバーEz内で滞留されやすくなるため、加熱装置Gの消費エネルギーを低減できる。
【0137】
以上説明したように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【実施例】
【0138】
上記の成型装置100が行う濾布ベルトの洗浄、殺菌処理と等価な処理を、要素テスト機を用いて検証した。以下にその内容と結果を説明する。
本検証の洗浄、殺菌条件は、賞味期限(4.4℃、65日)を保証できる衛生性を成型装置に持たせるために、過去に豆腐製品から分離された芽胞菌の中で最も耐熱性が強いもの(D
100℃=4.57分)と同等以上の芽胞菌と更に耐熱性が強いセレウス菌とを用いて、植菌、洗浄・殺菌テストを実施した。なお、上記したD値とは、微生物の耐熱性を示す数値で、所定の温度で菌数を1/10にする時間(分)を表す。
【0139】
<準備物>
・成型装置の濾布ベルトのサンプル布
材質:ポリプロピレン製濾布
サイズ:10cm×10cm
・ボイル殺菌された市販の木綿豆腐
・アルカリ洗浄槽
アルカリ液:水酸化ナトリウム溶液 濃度2% pH13.2 温度90℃
・酸洗浄槽
酸液:クエン酸溶液 濃度1% pH2.4 温度90℃
・高圧洗浄装置
水圧:1MPa
噴射条件:ノズルを、幅70cmの範囲を4秒で往復する速度で移動させながら噴射する。
・蒸気殺菌装置(バッチ釜)
蒸気殺菌温度:100℃
【0140】
<植菌する菌種>
・芽胞菌ミックス:100℃、20分以上の耐熱性を有するもの
菌濃度:1.0×10
7(個/g)以上、菌液量20.8(g)
・セレウス菌(B. cereus芽胞):100℃、30分以上の耐熱性を有するもの
菌濃度:1.0×10
7(個/g)以上、菌液量18.3(g)
【0141】
<検証方法>
以下の工程1〜6を実施し、各洗浄、殺菌条件による一般生菌数を測定した。
(工程1)
冷凍菌液を室温で解凍する。芽胞菌ミックスは、栄養菌体を殺菌し芽胞を活性化させるため100℃、10分間煮沸する。セレウス菌は既に芽胞のみにされているので、そのまま使用する。
(工程2)
市販の木綿豆腐300gと芽胞菌ミックス液20.8g(試験区1)を計量し、ミキサーでペースト(凝固状態の最悪条件を想定)になるまで撹拌する。市販の木綿豆腐300gとセレウス菌菌液18.3g(試験区2)を計量し、ミキサーでペースト(凝固状態の最悪条件を想定)になるまで撹拌する。
(工程3)
工程2で得られたペーストを濾布ベルトのサンプル布にヘラで塗布(10cm×10cmあたり約3gを塗布)し、20分間放置する。
(工程4)
洗浄前サンプルを、無菌袋に入れて雰囲気温度4℃の環境下で保管する。
(工程5)
洗浄後サンプルを、下記の表1に示す条件1−1〜3−2でSt.1からSt.6の順に洗浄、殺菌し、無菌袋に入れて雰囲気温度4℃の環境下で保管する。なお、アルカリ洗浄及び酸洗浄は、蒸気インジェクションで加熱できるタンクを使用して、サンプル布を所定時間浸漬する。なお、蒸気殺菌槽は、呉加熱用のクッカーを使用し、クッカー内に蒸気をインジェクションしながらサンプル布をクッカー中にセットする。その後、クッカーに蓋をして、クッカー内を密閉して殺菌する。
【0142】
【表1】
【0143】
(工程6)
保管した洗浄前サンプルと洗浄後サンプルとを開封し、それぞれの一般生菌数を測定する。一般生菌数は、サンプル布に滅菌済みのリン酸緩衝液100gを加えて菌を抽出し、抽出された菌数を測定して求める。
【0144】
<結果>
上記の各工程を実施した結果を下記の表2,表3に示す。
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
一般生菌数は、洗浄、殺菌を行わない実験例1,10においては、相当数の一般生菌が認められた。一方、アルカリ洗浄、酸洗浄、蒸気殺菌の全てを実施する試験区1の芽胞菌ミックスの実験例3〜5,7,9はいずれも陰性となった。また、試験区2のセレウス菌の実験例11〜18は、全て陰性となった。
今回検証した結果、豆腐製品から過去に分離された芽胞菌の中で最も耐熱性が強いもの(D
100℃=4.57分)よりも強い芽胞菌でサンプル布が汚染された場合でも、高圧洗浄、アルカリ洗浄、酸洗浄、蒸気殺菌を組み合わせて実施すれば、陰性を達成できることが明らかとなった。なお、成型装置のランニングコストを抑える観点から、アルカリ洗浄時間は111秒で十分と考えられる。