特許第6672481号(P6672481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6672481単結晶シリコンの半導体ウェハを製造するための方法、単結晶シリコンの半導体ウェハを製造するための装置および単結晶シリコンの半導体ウェハ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672481
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】単結晶シリコンの半導体ウェハを製造するための方法、単結晶シリコンの半導体ウェハを製造するための装置および単結晶シリコンの半導体ウェハ
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20200316BHJP
   C30B 30/04 20060101ALI20200316BHJP
   C30B 15/14 20060101ALI20200316BHJP
   C30B 15/04 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   C30B29/06 502E
   C30B30/04
   C30B29/06 502G
   C30B15/14
   C30B15/04
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-559312(P2018-559312)
(86)(22)【出願日】2017年5月17日
(65)【公表番号】特表2019-514836(P2019-514836A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2017061784
(87)【国際公開番号】WO2017202656
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2018年11月9日
(31)【優先権主張番号】102016209008.9
(32)【優先日】2016年5月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘウビーザー,バルター
(72)【発明者】
【氏名】クネーラー,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】シャヒンガー,ベルナー
(72)【発明者】
【氏名】大久保 正道
【審査官】 谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−292309(JP,A)
【文献】 特開2005−145742(JP,A)
【文献】 特開平10−101482(JP,A)
【文献】 特開2015−226066(JP,A)
【文献】 特開2016−050140(JP,A)
【文献】 特開2008−189544(JP,A)
【文献】 特開2001−031495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素および少なくとも1つのn型ドーパントを備える、単結晶シリコンの半導体ウェハを製造するための方法であって、
n型ドーパントを備えるシリコンの融液を石英るつぼ内に供給することを備え、前記融液の表面は、初期高さhMを有し、前記方法は、さらに、
初期高さhmを有する前記融液の上方部分へと選択的に熱を供給することによって前記融液を側方から加熱することとを備え、前記高さhmは、前記高さhMよりも小さく、前記方法は、さらに、
シリコンの単結晶をCZ法によって引き上げ速度Vで前記融液から引き上げることと、
成長している前記単結晶と前記融液との間の相境界の領域内で、前記融液を上方から加熱することと、
前記融液の表面の領域内で、熱シールドと前記石英るつぼの壁部との間で前記融液を上方から加熱することと、
前記融液を磁場にさらすことと、
前記融液をp型ドーパントでカウンタードーピングすることと、
単結晶シリコンの前記半導体ウェハを前記単結晶から分離することとを備える、方法。
【請求項2】
前記融液を下方から第1の加熱出力によって加熱することをさらに備え、前記第1の加熱出力は、前記融液を側方から加熱する第2の加熱出力の5%以下の割合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記相境界の領域内で前記融液を上方から第3の加熱出力によって加熱することを備え、前記第3の加熱出力は、総加熱出力の5%以上かつ15%以下の割合である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記融液の前記表面の領域内で前記融液を上方から第4の加熱出力によって加熱することを備え、前記第4の加熱出力は、前記総加熱出力の5%以上かつ15%以下の割合である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
カウンタードーピング中に、p型ドーパントを備える気体は、前記融液上方で5mm〜50mmだけ前記融液の前記表面から離れて雰囲気内に導入される、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
カウンタードーピングが開始される前に、均一の直径を有する前記単結晶の一部分の少なくとも20%を引き上げることをさらに備える、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
成長している前記単結晶内のシリコン格子間原子が凝集物を形成せず、自由空孔の濃度が3×1014/cm以下であるように、前記引き上げ速度Vを制御することを備える、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記成長しているシリコンの単結晶を、500°Cから400°Cの範囲の温度において、0.15°C/分以上かつ0.6°C/分以下の冷却速度で冷却することをさらに備える、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記融液をカスプ型磁場にさらすことを備える、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
単結晶シリコンの半導体ウェハをCZ法によって製造するための装置であって、
シリコンの融液を受けるための石英るつぼであって、前記融液の表面が初期高さhMを有している、石英るつぼと、
前記融液を磁場にさらすためのデバイスと、
成長しているシリコンの単結晶をシールドするための熱シールドと、
前記融液の前記初期高さhMよりも小さい距離hsだけ前記融液の表面から離れた下方境界を有する、前記融液を側方から加熱するための第1の加熱手段と、
成長している前記単結晶と前記融液との間の相境界の領域内で、前記融液を上方から加熱するための第2の加熱手段と、
前記石英るつぼの壁部と前記熱シールドとの間で、前記熱シールドの周りに配置された、前記融液を上方から加熱するための第3の加熱手段とを備える、装置。
【請求項11】
前記第3の加熱手段は、0.35以下の幅対高さの断面アスペクト比を有する環状部を備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記融液を磁場にさらすための前記デバイスは、カスプ型磁場を生成する、請求項10または請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第3の加熱手段の上方に配置され、前記第3の加熱手段を上方から断熱するカバーをさらに備える、請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記石英るつぼを下方から加熱するための第4の加熱手段をさらに備える、請求項10〜請求項13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
成長している前記単結晶を囲む冷却手段をさらに備える、請求項10〜請求項14のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃度および酸素濃度の径方向の変動が比較的低い、酸素および少なくとも1つのn型ドーパントを備える単結晶シリコンの半導体ウェハを製造するための方法に関する。本発明はまた、半導体ウェハを製造するために適切な装置と、また上述の特性を有し、少なくとも300mmの直径を有する半導体ウェハとに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術/問題点
上述の特性を有する単結晶シリコンの半導体ウェハは、特に絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、すなわちIGBTに基づく電子部品を製造するために使用される基板である。電子部品の製造過程で、部品の電気的抵抗を変え得、保守性を損なう可能性があるサーマルドナーの形成に酸素が寄与するので、基板の酸素濃度は、可能な限り低くなければならない。基板の酸素濃度が比較的低くなければならないという要件は、特に半導体ウェハが同時に少なくとも300mmの直径を有することを期待されるときに困難である。
【0003】
そのような状況では、半導体ウェハが分離される単結晶は、CZ法によって成長されなければならない。シリコンの単結晶をCZ法によって成長させることは、多結晶シリコンを石英るつぼ内で溶融させ、種結晶を得られる融液内に沈漬し、種結晶の下側で材料の結晶化を開始しつつ、石英るつぼおよび種結晶が回転されるように種結晶を上向きに引き上げることを備える。この材料の部分は、シリコンの単結晶半導体ウェハが一般に分離されるシリコンの単結晶を形成する。
【0004】
シリコン融液は、酸素をるつぼ材料から溶出し、この酸素は、成長している単結晶内へと部分的に取り込まれ、融液から気相SiOの形態で脱する。単結晶材料がIGBTを製造するために適切であるように、単結晶内の酸素濃度が十分に低い状態を維持することを確実にするために、特別な措置がとらなければならない。
【0005】
他方では、結晶格子内の酸素の存在は、単結晶シリコンの半導体ウェハの熱的にまたは機械的に導入された応力によるすべりに対する抵抗を強化する。単結晶内の酸素濃度が比較的低いときに、そのような単結晶から分離された単結晶シリコンの半導体ウェハがエッジ領域内の酸素濃度の低下を呈し、エッジ領域が特にすべりの影響をうけやすい、という問題に直面するだろう。
【0006】
融液をn型ドーパントで、たとえばリンでドーピングするときに、ドーパントは、融液内で蓄積し、単結晶の結晶化を増加させる。この偏析効果のために、比抵抗は、単結晶内の単結晶の下端部に向かう方向に下がる。単結晶から分離され、IGBTを製造するための基板として適切となるべき半導体ウェハは、それらの電気的特性の面では、非常にわずかにのみ異なってもよい。単結晶の長さにわたる比抵抗の減少を打ち消す目的で、偏析によって誘起された電荷キャリアにおける増加を補償するために、融液にp型ドーパント、たとえばホウ素を添加することが可能である。この措置は、カウンタードーピングとも称され、たとえば米国特許出願公開第2015/0349066A1号明細書に詳細に説明される。
【0007】
米国特許出願公開第2007/0193501A1号明細書は、4.33×1017原子/cm以下の酸素濃度である単結晶シリコンの半導体ウェハの製造を説明し、報告された値は、新しいASTMに換算される。文献に含まれる例は、2.6×1017原子/cmの換算濃度を有する半導体ウェハが実際に生産されることを示す。文献において説明される製造方法は、歩留まりを強化するために、カウンタードーピングを使用したCZ法によってシリコンの単結晶を成長させることを備える。
【0008】
欧州特許出願公開第0926270A1号明細書は、環状形状の加熱装置を開示し、この使用は、融液の表面を介するSiOの脱気を容易にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、一層低い酸素濃度を有する単結晶シリコンのn型ドープされた半導体ウェハ、特に酸素濃度の径方向の変動が削減されたウェハがどのように提供され得るかと、そのような半導体ウェハの歩留まりがどのように最適化され得るかと、を示すことをその目的として有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、酸素および少なくとも1つのn型ドーパントを備える単結晶シリコンの半導体ウェハを製造するための方法であって、
n型ドーパントを備えるシリコンの融液を石英るつぼ内に供給することを備え、融液は、その内部で初期高さhMを有し、上記方法は、さらに、
初期高さhmを有する融液の上方部分に選択的に熱を供給することによって、融液を側方から加熱することを備え、高さhmは、高さhMよりも小さく、上記方法は、さらに、
シリコンの単結晶を融液からCZ法によって引き上げ速度Vで引き上げることと、
成長している単結晶と融液との間の相境界の領域内で、融液を上方から加熱することと、
融液の表面の領域内で、融液を上方から加熱することと、
融液を磁場にさらすことと、
融液をp型ドーパントでカウンタードーピングすることと、
単結晶シリコンの半導体ウェハを単結晶から分離することと、を備える方法によって達成される。
【0011】
本発明は、酸素、サーマルドナーおよび少なくとも1つのn型ドーパントを備え、300mm以上の直径を有する、単結晶シリコンの半導体ウェハをさらに提供する。半導体ウェハの酸素濃度は、2.2×1017原子/cmよりも少なく、好ましくは、2.0×1017原子/cmよりも少なく、径方向において平均値から5%以下だけ逸脱する。半導体ウェハ内のサーマルドナーの密度は、3×1013/cm以下である。
【0012】
130mm〜150mmの径方向の位置を構成するエッジ領域内において平均値から酸素濃度が逸脱する場合は、10%以下であることが好ましい。
【0013】
発明者は、目的を達成するために測定範囲が考慮されなければならないことを見いだした。融液内のフロー状態および温度場が生成され、これが、るつぼ材料から酸素の溶出を妨げ、融液からの融液の表面を介するSiOの脱気を促進し、そして、成長している単結晶内で単結晶の中心からエッジへと均質な分布で酸素が吸収されることを容易にする。さらに、単結晶の引き上げ中に、単結晶の引き上げ速度および冷却速度は、単結晶内のサーマルドナーの濃度を低く維持するように制御される。
【0014】
n型ドーパントを備えるシリコンの融液は、好ましくは、多結晶シリコンおよびn型ドーパント、たとえばリンを、石英るつぼ内で溶融することによって供給される。
【0015】
単結晶の引き上げの間に、熱は、融液に少なくとも3つの場所から供給される。上方から成長している単結晶と融液との間の相境界の領域内と、上方から融液の表面の領域内と、側方から選択的に融液の半分より上と、である。さらに、融液は、たとえば総加熱出力が維持された状態で、少なくとも3つの場所のうちの少なくとも1つにおいて加熱出力を緩和するために、追加的に下方から加熱されてもよい。たとえば、石英るつぼを保護し、るつぼ壁部の上方部分がその形状を失い融液へと入り込むことを防ぐために、側方からの熱の供給を削減することが有利であり得る。
【0016】
融液への熱の供給は、好ましくは、総加熱出力の割合としての加熱出力が、相境界の領域内で融液を上方から加熱する場合に5%以上かつ15%以下であり、表面の領域内で融液を上方から加熱する場合に5%以上かつ15%以下であるように実現される。融液が追加的に下方から加熱される場合、そのため費やされる加熱出力は、融液を側方から加熱するために費やされる加熱出力の割合として、好ましくは、5%以下である。
【0017】
側方からの熱の供給は、選択的に融液の上方部分に向かって配向されなければならない。換言すると、融液の下方部分の側方からの意図的な加熱は、結晶成長過程の始まりで、好ましくは、融液の初期容積の70%が単結晶の構成成分になるまで起こらない。融液内の所望のフロー状態および所望の温度場は、そうでなければ生成されることができない。方法は、したがって、初期高さhmを有する融液の上方部分に選択的に熱を供給することを備え、高さhmは、融液の初期高さhMよりも小さい。hm:hMの比は、好ましくは、0.75以下である。単結晶の結晶化によって引き起こされる融液の低下は、石英るつぼの持ち上げによって補償される。
【0018】
さらに融液を上方から加熱することは、特に成長している単結晶と融液との間の相境界の領域内と、融液の表面の領域内と、より具体的には、成長している単結晶を囲む熱シールドと石英るつぼの壁部との間の融液の表面の領域内と、の両方で起こる。両方の領域を加熱することは、熱シールドが2つの加熱手段のうちの1つによるそれぞれの他の領域の追加的加熱を遮断するために、仮想的には互いによって影響されない2つの加熱手段を使用することで実現する。
【0019】
成長している単結晶と融液との間の相境界の領域内での融液の上方からの加熱は、特に成長している単結晶と融液との間の相境界の領域内で軸上温度勾配Gを制御することに役立つ。引き上げ速度Vおよび軸上温度勾配Gの割合V/Gは、内部点欠陥(シリコン格子間原子および空孔)およびその凝集物の形成の際に決定的影響を有することが既知である。軸上温度勾配Gは、シミュレーションによっておおよそ計算され得、成長している単結晶の直接の環境の構造であるホットゾーンを通して、実質的に影響され得る。シリコンの単結晶は、CZ法によって引き上げ速度Vで、好ましくは、成長している単結晶シリコン格子間原子内で凝集物が形成されず、その存在がサーマルドナーの形成を容易にする自由空孔の濃度を可能な限り低く、好ましくは、3×1014/cm以下となるようなV/Gを課す引き上げ速度Vで引き上げられる。したがって、単結晶空孔が中心からエッジまでCOP欠陥(結晶由来粒子)として検出可能な凝集物を形成することなく支配し、および/または、単結晶シリコン格子間原子が中心からエッジまでLピット欠陥(大きなエッチピット)として検出可能な凝集物を形成することなく支配するように、割合V/Gを制御することが特に好ましい。
【0020】
融液の表面の領域内での融液の上方からの加熱は、シリコンの単結晶内の酸素濃度を2.2×1017原子/cmよりも少なく制限するために必要な、融液内のフロー状態および温度場の生成に寄与する。
【0021】
さらに磁場、好ましくは、CUSP場、すなわち、石英るつぼの回転軸の周りに軸対称的である磁力線構造を有する磁場は、融液に印加される。磁場は、好ましくは、700〜1300ガウスの最大フラックス密度を有する。最も低い磁気的フラックス密度を有する磁場の平面は、好ましくは、80mm〜160mmだけ融液の表面上方に離れているか、120mm〜220mmだけ融液の表面下方に離れている。
【0022】
サーマルドナーの形成のさらなる縮小のために、方法は、好ましくは、成長しているシリコンの単結晶を500°C〜400°Cの範囲の温度において、0.15°C/分以上かつ0.6°C/分以下の、好ましくは、0.25°C/分以下の冷却速度において冷却することを備える。サーマルドナーの濃度は、冷却速度の増加とともに減少するということが見いだされた。しかし、0.6°C/分よりも大きい冷却速度は、これが径方向の空孔の濃度の均質性に有害であるため、求められるべきではない。したがって、冷却速度が例示的に引き上げ速度の増加とともに増加するという事実に着目するべきである。
【0023】
単結晶シリコンの半導体ウェハへとさらに加工される単結晶の一部分における電気比抵抗の変動の縮小のために、融液は、p型ドーパントで、好ましくは、p型ドーパントを備える気体、たとえばジボランおよびアルゴンの混合物を融液の表面に通過させることによって、カウンタードーピングされる。この気体は、そして融液上方で、好ましくは、5mm〜50mmだけ融液の表面から離れて雰囲気内へと導入される。
【0024】
単結晶シリコンの半導体ウェハの歩留まりを強化するために、半導体ウェハを製造するのに適した単結晶の一部分の、少なくとも20%、特に好ましくは、少なくとも30%のみ、一度にカウンタードーピングを開始することが、その均一の直径が結晶化されるので有利でありこのため好ましい。カウンタードーピングがまだ開始されていなければ、単結晶内の転位の形成の場合には、材料を再溶融される際まで結晶化し、新しい結晶の成長を試みるために再溶融された材料をともに用いることが可能であるが、これは、その後に得られる融液が結晶成長工程の状態において元々用いられた融液と同じ組成を有するためである。再溶融される材料が既に両方の種類のドーパントを含有するならば、このことは、もはや当てはまらない。転位の形成の相対的頻度は、結晶成長工程の始まりで最大であり、したがってカウンタードーピング前に可能な限り待機することが有利である。
【0025】
本発明また単結晶シリコンの半導体ウェハをCZ法によって製造するための装置を提供し、装置は、
シリコンの融液を受けるための石英るつぼであって、その内部で融液が初期高さhMを有する石英るつぼと、
融液を磁場にさらすためのデバイスと、
成長しているシリコンの単結晶をシールドするための熱シールドと、
融液の初期高さhMよりも小さい距離hsだけ融液の表面から離れている下方境界を有する、融液を側方から加熱するための第1の加熱手段と、
成長している単結晶と融液との間の相境界の領域内で、融液を上方から加熱するための第2の加熱手段と、
るつぼの壁部と熱シールドとの間で熱シールドの周りに配置される、融液を上方から加熱するための第3の加熱手段と、を備える。
【0026】
融液を磁場にさらすためのデバイスは、好ましくは、融液をカスプ型磁場にさらすためのデバイスである。
【0027】
融液の高さhMは、融液の最大の初期高さを意味する。石英るつぼが凸状の下向きに曲がった底部を有するならば、融液の初期高さhMは、石英るつぼの中間における融液の初期高さを意味する。
【0028】
融液を側方から加熱するための第1の加熱手段は、好ましくは、抵抗加熱手段であり、下方境界を有する。第1の加熱手段の下方境界と融液の表面との間の初期距離hsは、融液の上方部分の初期高さhm長さとおおよそ等しく、融液の初期高さhMよりも小さい。hs:hMの比は、好ましくは、0.75以下である。
【0029】
融液を上方から加熱するための第2の加熱手段および第3の加熱手段は、好ましくは、環状形状にされる加熱素子を有する抵抗加熱手段を備える。第3の加熱手段の場合、環状部は、最大割合の熱を融液の表面に与えることを可能とするために、好ましくは、0.3以下の断面アスペクト比(幅対高さ)を有する。第3の加熱手段の環状部と石英るつぼの壁部との間の距離および熱シールドからの上記環状部の距離は、各々好ましくは、10mm以上である。第3の加熱手段は、好ましくは、その上方に配置された断熱カバーによって上方から断熱されてもよい。
【0030】
好ましくは、本発明に係る装置の構成要素は、融液の表面に向かって配向され、その下端部が5mm〜50mmだけ融液の表面から離れているガラス管である。カウンタードーピング中に、p型ドーパントを備える気体は、ガラス管を通過させられる。
【0031】
本発明に係る装置は、成長している単結晶を囲む冷却装置をさらに備えてもよい。
本発明に係る方法の上述の実施形態に関する特性は、本発明に係る装置に対応するように適用されてもよい。逆に、本発明に係る装置の上述の実施形態に関する特性は、本発明に係る方法に対応するように適用されてもよい。本発明による実施形態のこれらのおよび他の特性は、図面および特許請求の範囲の説明において説明される。個々の特性は、本発明の実施形態として別々にまたは組み合わせて実現されてもよい。上記特性は、それ自体の保護のために適格である有利な実施態様をさらに説明し得る。
【0032】
本発明は、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の特徴を有する単結晶シリコンの半導体ウェハをCZ法によって製造するための装置の単結晶の引き上げ前の概略図である。
図2】単結晶の引き上げ中の図1に係る装置を示す図である。
図3】融液の表面の領域内で融液を上方から加熱するための加熱手段の可能な構成を示す図である。
図4径方向の位置rの関数として半導体ウェハに対する格子間酸素[O]の濃度の例示的プロファイルを示す。
図5より高い解像度で130mm〜150mmの径方向の位置を構成するエッジ領域内の対応する濃度プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に係る装置は、ハウジング1を備え、その内部に石英るつぼ2が収容される。石英るつぼ2は、回転され、上げ下げされ得る。石英るつぼ2内に位置されるのは、シリコンの融液3であり、これは、上方から、側方から、示される実際の例では、また下方から、加熱される。ハウジング1の外側に提供されるのは、融液3を磁場にさらすためのデバイス9である。石英るつぼ2の周りに配置された第1の加熱手段4は、融液3を側方から加熱するために利用できる。成長している単結晶6と融液3との間の相境界の領域内で融液3を上方から加熱するための第2の加熱手段5は、融液3の表面7から短い距離に配置され、同じく融液を上方から加熱するための第3の加熱手段8は、融液3の表面7の領域内に提供される。第2の加熱手段と第3の加熱手段との間に位置されるのは、上向きに融液3の表面7から離れて引き上げられる成長している単結晶6を囲む、熱シールド10である。融液3の表面7が単結晶6の成長にもかかわらず下がりも上がりもしないように石英るつぼ2が持ち上げられるので、熱シールド10の下端部11と融液3の表面7との間の距離は、単結晶6の成長中に実質的に変化なく維持される。熱シールド10に対して同心円状に配置され、これによって囲まれるのは、冷却装置15である。石英るつぼ2の下方に位置されるのは、融液を下方から加熱するための第4の加熱手段12である。
【0035】
図2に示されるように、熱シールドの下端部11間の距離は、単結晶6の引き上げ中に実質的に変化しない。同じことは、第1の加熱手段4の下方境界と単結晶6の融液の表面7との間の距離hsには当てはまらず、これは、成長工程にわたる石英るつぼ2の持ち上げのために下がる。
【0036】
第3の加熱手段8は、図3に示されるように構成されてもよい。上記加熱手段は、実質的に、加熱素子として機能する環状部13と、電力を環状部内に供給するためのおよび融液の表面7の上方で環状部を保持するための電源14を備える。
【0037】
発明の実際の例の詳細な説明
シリコンの単結晶は、CZ法によって本発明に係る特性を有する装置において引き上げられ、300mmの直径を有するドープされた半導体ウェハへと加工される。半導体ウェハの大部分の酸素濃度は、2.2×1017原子/cm(新ASTM)よりも少なく、酸素濃度の径方向のプロファイルは、まさにエッジ領域まで非常に均一であった。
【0038】
図4は、径方向の位置rの関数としてそのような半導体ウェハに対する格子間酸素[O]の濃度の例示的プロファイルを示し、図5は、より高い解像度で130mm〜150mmの径方向の位置を構成するエッジ領域内の対応する濃度プロファイルを示す。
【0039】
これらの半導体ウェハ内のサーマルドナーの密度は、3×1013/cmよりも少なく、抵抗測定によって決定された。抵抗測定は、10秒間にわたって743°CにおいてRTA熱処理の前後に実施された。抵抗における差分から計算されたドーパント濃度は、サーマルドナーの密度に対応する。
【0040】
いくつかの場合では、均一の直径を有する単結晶の一部分の引き上げとカウンタードーピングは、同時に開始され、いくつかの場合では、カウンタードーピングは、一部分の長さの40%が結晶化された後にのみ導入された。後者のカウンタードーピングは、半導体ウェハの中心からエッジまで酸素濃度が2.2×1017原子/cmよりも少なく、比抵抗が平均値から13%以下だけ逸脱するという規定に半導体ウェハが適合することが要求される場合に、10%の歩留まりの増加を達成するということが見いだされた。
【0041】
図示される実施形態の上記の説明は、例示的であると理解されるべきである。これにより、当業者は、本発明およびそれに関連する利点を理解することができ、当業者に明らかである記載された構造および方法に対する変更および改変も理解することができる。したがって、そのような変更および修正、ならびに均等物は、全て、請求項の保護の範囲に含まれるものである。
【0042】
使用される参照番号の一覧
【符号の説明】
【0043】
1 ハウジング
2 石英るつぼ
3 融液
4 第1の加熱手段
5 第2の加熱手段
6 単結晶
7 融液の表面
8 第3の加熱手段
9 融液を磁場にさらすためのデバイス
10 熱シールド
11 熱シールドの下端部
12 第4の加熱手段
13 環状部
14 電源
15 冷却装置
図1
図2
図3
図4
図5