【文献】
Scientific Reports,2017年,7:1080,pp.1-12,DOI:10.1038/s41598-017-01087-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
補体系は、免疫複合体のクリアランスにおいて、ならびに感染性病原体、外来抗原、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞に対する免疫応答において、中心的な役割を果たしている。約25〜30種の補体タンパク質が存在しており、これらは血漿タンパク質と膜補因子の複雑な集合体として見出される。補体成分は、一連の複雑な酵素切断および膜結合事象において相互作用することによって、それらの免疫防御機能を達成する。結果として生じる補体カスケードは、オプソニン機能、免疫調節機能、および細胞溶解機能を有する産物の製造を導く。
【0003】
補体系は3つの異なる経路:古典経路、レクチン経路、および副経路を介して活性化されることが、現在、広く受け入れられている。これらの経路は多くの要素を共有しており、初期の段階では異なっているが、収束し、標的細胞の活性化および破壊に関与する同じ終末補体成分(C5からC9)を共有している。
【0004】
古典経路は、通常、抗原-抗体複合体の形成によって活性化される。これとは無関係に、レクチン経路の活性化の第1段階は、マンナン結合レクチン(MBL)、H-フィコリン、M-フィコリン、L-フィコリン、およびC型レクチンCL-11などの特定のレクチンの結合である。対照的に副経路は、低レベルのターンオーバー活性化を自発的に受け、これは、外来のまたは他の異常な表面(細菌、酵母、ウイルス感染細胞、または損傷組織)上で容易に増幅され得る。これらの経路は、補体成分C3が活性プロテアーゼによって切断されてC3aとC3bをもたらす箇所で収束する。
【0005】
C3aはアナフィラトキシンである。C3bは、細菌および他の細胞だけでなく、特定のウイルスおよび免疫複合体にも結合し、循環からの除去のためにそれらをタグ付けする(オプソニンとして知られる役割)。C3bはまた、他の成分と複合体を形成してC5転換酵素を形成し、これはC5をC5aとC5bに切断する。
【0006】
C5は、約80μg/ml(0.4μM)で正常血清中に見出される190kDaのタンパク質である。C5はグリコシル化されており、その質量の約1.5〜3%が炭水化物に起因する。成熟C5は、75kDaのβ鎖にジスルフィド結合された115kDaのα鎖のヘテロダイマーである。C5は、1676アミノ酸の単鎖前駆タンパク質(プロC5前駆体)として合成される(例えば、特許文献1および特許文献2を参照されたい)。プロC5前駆体は切断され、アミノ末端断片としてβ鎖を、カルボキシル末端断片としてα鎖をもたらす。α鎖およびβ鎖ポリペプチド断片は、ジスルフィド結合を介して相互に連結されて、成熟C5タンパク質を構成する。
【0007】
成熟C5は、補体経路の活性化の間にC5aおよびC5b断片に切断される。C5aは、C5転換酵素によって、α鎖の最初の74アミノ酸を含むアミノ末端断片としてC5のα鎖から切断される。成熟C5の残りの部分は断片C5bであり、これはβ鎖にジスルフィド結合されたα鎖の残部を含む。11kDa質量のC5aの約20%は炭水化物に起因する。
【0008】
C5aは別のアナフィラトキシンである。C5bは、C6、C7、C8およびC9と結合して、標的細胞の表面で膜侵襲複合体(MAC、C5b-9、終末補体複合体(TCC))を形成する。充分な数のMACが標的細胞膜に挿入されると、MAC孔が形成され、標的細胞の急速な浸透圧溶解を媒介する。
【0009】
上述したように、C3aおよびC5aはアナフィラトキシンである。これらは、マスト細胞の脱顆粒を誘発することができ、これによりヒスタミンおよび他の炎症メディエーターが放出され、このことが平滑筋の収縮、血管透過性の増加、白血球の活性化、および他の炎症現象、例えば、細胞過形成をもたらす細胞増殖をもたらす。C5aはまた、好中球、好酸球、好塩基球および単球などの顆粒球を補体活性化部位に引き寄せるのに役立つ走化性ペプチドとしても機能する。
【0010】
C5aの活性は、C5aからカルボキシ末端アルギニンを除去してC5a-des-Arg誘導体を形成する血漿酵素カルボキシペプチダーゼNによって、調節される。C5a-des-Argは、未改変C5aのアナフィラキシー活性および多形核球走化活性(polymorphonuclear chemotactic activity)のうちたった1%しか示さない。
【0011】
適切に機能する補体系は、感染微生物に対する強固な防御を提供するが、補体の不適切な調節または活性化は、例えば以下を含む、種々の障害の病因に関与している:関節リウマチ(RA);ループス腎炎;虚血再灌流障害;発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH);非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS);デンスデポジット病(DDD);黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性症(AMD));HELLP(hemolysis, elevated liver enzymes, and low platelets)症候群;血栓性血小板減少性紫斑病(TTP);自然胎児消失;寡免疫性血管炎;表皮水疱症;習慣性流産;多発性硬化症(MS);外傷性脳損傷;ならびに、心筋梗塞、心肺バイパスおよび血液透析に起因する損傷(例えば、非特許文献1を参照されたい)。したがって、補体カスケードの過剰な活性化または制御されない活性化の抑制は、このような疾患を有する患者に臨床的恩恵をもたらすことができる。
【0012】
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)はまれな血液障害であり、この疾患では赤血球が傷つけられ、そのため正常な赤血球よりも急速に破壊される。PNHは、X染色体上に位置するPIG-A(ホスファチジルイノシトールグリカンクラスA)遺伝子の体細胞変異を有する造血幹細胞のクローン増殖に起因する。PIG-Aの変異は、多くのタンパク質を細胞表面につなぎ止めるのに必要とされる分子、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)の合成の初期阻害を導く。その結果、PNHの血液細胞は、補体調節タンパク質CD55およびCD59を含むGPIアンカー型タンパク質が不足している。正常な状況下では、これらの補体調節タンパク質は細胞表面上でのMACの形成を阻止し、それによって赤血球の溶解を防止している。GPIアンカー型タンパク質が存在しないことは、PNHにおける補体介在性溶血を引き起こす。
【0013】
PNHは、溶血性貧血(赤血球数の減少)、ヘモグロビン尿症(尿中のヘモグロビンの存在、特に睡眠後に顕著)、およびヘモグロビン血症(血流中のヘモグロビンの存在)によって特徴づけられる。PNHに罹患した個体は、暗色の尿の出現としてここでは定義される発作を有することが、知られている。溶血性貧血は、補体成分による赤血球の血管内破壊によるものである。その他の知られている症状としては、言語障害、疲労、勃起不全、血栓症および再発性腹痛が挙げられる。
【0014】
エクリズマブは、補体タンパク質C5に対するヒト化モノクローナル抗体であり、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)および非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の治療のために承認された最初の治療薬である(例えば、非特許文献2を参照されたい)。エクリズマブは、C5転換酵素によるC5のC5aおよびC5bへの切断を阻害し、これによって、終末補体複合体C5b-9の生成を防止する。C5aとC5b-9はどちらも、PNHおよびaHUSに特徴的である終末補体介在性の事象を引き起こす(さらに、特許文献3、特許文献4、特許文献5、および特許文献6も参照されたい)。
【0015】
いくつかの報告が抗C5抗体を記述している。例えば、特許文献7は、C5のα鎖に結合するがC5aには結合せず、C5の活性化を阻止する抗C5抗体を記載し、一方で、特許文献8は、C5aの形成を阻害する抗C5モノクローナル抗体を記載した。他方、特許文献9は、C5のα鎖上のC5転換酵素のためのタンパク質分解部位を認識して、C5のC5aおよびC5bへの転換を阻害する抗C5抗体を記載した。特許文献10は、少なくとも1×10
7M
-1のアフィニティ定数を有する抗C5抗体を記載した。
【0016】
抗体(IgG)は、新生児型Fc受容体(FcRn)に結合し、長い血漿滞留時間を有する。IgGのFcRnへの結合は、典型的には酸性条件(例えば、pH6.0)下で観察され、中性条件(例えば、pH7.4)下ではめったに観察されない。典型的には、IgGは、エンドサイトーシスを介して細胞内に非特異的に取り込まれ、エンドソーム内の酸性条件下でエンドソームのFcRnに結合することによって細胞表面に戻る。その後、IgGは、血漿中の中性条件下でFcRnから解離する。FcRnに結合できなかったIgGは、リソソームで分解される。酸性条件下でのIgGのFcRn結合能が、そのFc領域に変異を導入することによって失われた場合、IgGはエンドソームから血漿中へとリサイクルされず、このことは、IgGの血漿中滞留性の著しい低下を導く。IgGの血漿中滞留性を向上させるために、酸性条件下でのそのFcRn結合を高める方法が報告されている。酸性条件下でのIgGのFcRn結合がそのFc領域にアミノ酸置換を導入することによって改善された場合、IgGはエンドソームから血漿中へとより効率的にリサイクルされ、かつそれによって、向上した血漿中滞留性を示す。その一方で、中性条件下で増強されたFcRn結合を有するIgGは、それがエンドソーム内の酸性条件下でのFcRnへのその結合を介して細胞表面に戻る場合でさえ、血漿中で中性条件下でFcRnから解離せず、かつ結果的に、その血漿中滞留性は変化しないままであるか、あるいはむしろ悪化することも、報告されている(例えば、非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5を参照されたい)。
【0017】
最近、pH依存的様式で抗原に結合する抗体が報告されている(例えば、特許文献11および特許文献12を参照されたい)。これらの抗体は、血漿中の中性条件下で抗原に強く結合し、エンドソーム中の酸性条件下で抗原から解離する。抗原から解離した後、該抗体は、FcRnを介して血漿へとリサイクルされた際に抗原に再び結合できるようになる。こうして、単一の抗体分子が、複数の抗原分子に繰り返し結合することができる。一般に、抗原の血漿中滞留性は、上述したFcRn介在性のリサイクル機構を有する抗体のそれよりもはるかに短い。したがって、抗原が抗体に結合すると、該抗原は通常、延長された血漿中滞留性を示し、これは、該抗原の血漿中濃度の増加をもたらす。一方、pH依存的様式で抗原に結合する上記の抗体は、FcRn介在性のリサイクル過程の間にエンドソーム内で抗原から解離するため、典型的な抗体よりも迅速に血漿から抗原を排除することが報告されている。特許文献13もまた、C5に対してpH依存的結合する抗体が抗原のノックダウンを引き延ばすことができることを示すコンピュータモデリング解析を記載している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
態様の説明
本明細書に記載または引用される手法および手順は、概して充分に理解されており、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3d edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al. eds., (2003));the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney), ed., 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995);およびCancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)に記載された広範に利用されている技法などの従来の技法を用いて、当業者により一般的に使用される。
【0026】
I. 定義
「間隔」(個々の投与間の間隔)とは、n番目の用量(nは1以上の整数)の投与と (n+1) 番目の用量の投与の間の間隔を示す。
【0027】
II. 皮下注射用の医薬組成物
C5関連疾患の治療または予防法のための医薬組成物が提供される。該医薬組成物は皮下注射用に製剤化されかつ抗C5抗体を含み、該組成物は二段階で皮下投与され、両段階において、どの2回の皮下投与の間にも間隔があり、各段階は少なくとも1つの間隔を含み、第1段階において、
(i) 少なくとも1つの間隔は、第2段階における少なくとも1つの間隔よりも短く、かつ
(ii) 投与あたりの抗体の用量は、第2段階における投与あたりの抗体用量よりも低いかまたは同じである。
【0028】
皮下注射は、注射によって皮下組織に医薬組成物を投与するための一般的な装置および方法を用いて実施できる。また、皮下注射専用の装置および方法を選択してもよい。
【0029】
例示的な抗C5抗体
抗C5抗体は、特定の態様に限定されるものではなく、抗C5抗体として知られる抗体から適宜選択可能である。用語「抗C5抗体」または「C5に結合する抗体」は、抗体がC5の標的化に際して治療剤として有用であるような、充分なアフィニティでC5と結合することのできる抗体を指す。
【0030】
一局面において、抗C5抗体はC5の活性化を阻害する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5aおよびC5bを形成するためのC5の切断を防止し、それにより、C5aに関連するアナフィラトキシン活性の発生を防止するだけでなくC5bに関連するC5b-9膜侵襲複合体(MAC)のアセンブリをも防止する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5転換酵素によるC5のC5aおよびC5bへの変換を阻止する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5上の切断部位へのC5転換酵素の接近を阻止する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5の活性化によって引き起こされる溶血活性を阻止する。さらなる態様において、抗C5抗体は、古典経路および/または副経路を介したC5の活性化を阻害する。
【0031】
一局面において、本発明の医薬組成物は、C5の活性化の阻害における抗C5抗体の上記活性に少なくとも部分的に基づいてC5関連疾患を治療または予防するのに有用である。
【0032】
特定の態様において、C5活性は、対象者の体液中でのその細胞溶解能力の関数として測定され得る。C5の細胞溶解能力またはその低下は、当技術分野で周知の方法により測定することができ、例えば、従来の溶血測定法、例えばKabat and Mayer(編), Experimental Immunochemistry, 第2版, 135-240, Springfield, IL, CC Thomas (1961), 135-139ページに記載される溶血測定法、または該測定法の通常の変法、例えばHillmen et al., N. Engl. J. Med. 350(6): 552-559 (2004)に記載されるようなニワトリ赤血球溶血法により測定される。特定の態様において、C5活性またはその阻害は、CH50eq測定法を用いて定量される。CH50eq測定法は、血清中の総古典的補体活性を測定するための方法である。この試験は、溶解測定法であって、古典的補体経路の活性化因子としての抗体感作赤血球と、50%溶解(CH50)を与えるのに必要な量を決定するための試験血清の種々の希釈物とを使用する。溶血のパーセンテージは、例えば、分光光度計を用いて、決定することができる。測定される溶血の直接の原因が終末補体複合体(TCC)それ自体であるため、CH50eq測定法は、TCC形成の間接的な尺度を提供する。C5活性化の阻害はまた、実施例に記載され例示された方法を用いて検出および/または測定することもできる。これらのまたは他の適切なタイプの測定法を用いて、C5の活性化を阻害することができる候補抗体がスクリーニングされ得る。特定の態様において、C5活性化の阻害は、類似条件下での陰性対照の効果と比較して、測定法におけるC5活性化の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、もしくは40%、またはそれ以上の減少を含む。いくつかの態様において、それは、C5活性化の少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、またはそれ以上の阻害を指す。
【0033】
好ましい態様において、抗C5抗体のエピトープはエクリズマブのエピトープとは異なる。
【0034】
特定の態様において、本発明に関する抗C5抗体は、C5のβ鎖内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5のβ鎖のMG1-MG2ドメイン内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5のβ鎖のアミノ酸19-180からなる断片内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5のβ鎖のMG1ドメイン(配列番号:1のアミノ酸20-124)内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5のβ鎖(配列番号:1)のアミノ酸33-124からなる断片内のエピトープに結合する。
【0035】
特定の態様において、本発明に関する抗C5抗体は、MG1ドメインからなる、C5のβ鎖内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、アミノ酸47-57、70-76、および107-110からなる群より選択される少なくとも1つの断片を含む、C5のβ鎖(配列番号:1)内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、Thr47、Glu48、Ala49、Phe50、Asp51、Ala52、Thr53、Lys57、His70、Val71、His72、Ser74、Glu76、Val107、Ser108、Lys109、およびHis110からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む、C5のβ鎖(配列番号:1)の断片内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、Glu48、Asp51、His70、His72、Lys109、およびHis110からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む、C5のβ鎖(配列番号:1)の断片内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体のC5変異体への結合は、野生型C5へのその結合と比較して低下し、ここで該C5変異体はGlu48、Asp51、His72、およびLys109からなる群より選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。別の態様において、抗C5抗体のC5変異体へのpH依存的結合(後述)は、野生型C5へのそのpH依存的結合と比較して低下し、ここで該C5変異体は、His70、His72、およびHis110からなる群より選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。さらなる態様において、C5変異体において、Glu48、Asp51、およびLys109から選択される位置のアミノ酸はアラニンで置換され、His70、His72、およびHis110から選択される位置のアミノ酸はチロシンで置換される。
【0036】
別の局面において、本発明に関する抗C5抗体は、pH依存的結合特性を示し得る。本明細書で使用される表現「pH依存的結合」は、該抗体が、「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」を示すことを意味する(本開示の目的で、両表現は交換可能に使用され得る)。例えば、「pH依存的結合特性を有する」抗体には、酸性pHに比べて中性pHにおいての方がより高いアフィニティでC5に結合する抗体が含まれる。特定の態様において、抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいての方が少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上高いアフィニティで、C5に結合する。いくつかの態様において、該抗体は、pH5.8に比べてpH7.4においての方がより高いアフィニティでC5に結合する。さらなる態様において、抗体は、pH5.8に比べてpH7.4においての方が少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上高いアフィニティで、C5に結合する。
【0037】
C5に対する抗体の「アフィニティ」とは、本開示の目的では、抗体のKDで表される。抗体のKDとは、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。抗原に結合する抗体に関してKD値が大きければ大きいほど、該特定の抗原に対するその結合アフィニティは弱くなる。したがって、本明細書で使用される表現「酸性pHに比べて中性pHにおいての方がより高いアフィニティ」(または同等の表現「pH依存的結合」)は、酸性pHでC5に結合する抗体のKDが中性pHでC5に結合する抗体のKDよりも大きいことを意味する。例えば、本発明の文脈において、酸性pHでC5に結合する抗体のKDが中性pHでC5に結合する抗体のKDよりも少なくとも2倍大きい場合、該抗体は、酸性pHに比べて中性pHにおいての方がより高いアフィニティでC5に結合すると考えられる。したがって、本発明に関する抗C5抗体は、中性pHにおいてC5に結合する抗体のKDよりも少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上大きいKDで酸性pHにおいてC5に結合する抗体を包含する。別の態様において、中性pHでの該抗体のKD値は、10
-7M、10
-8M、10
-9M、10
-10M、10
-11M、10
-12M、またはそれ以下であり得る。別の態様において、酸性pHでの該抗体のKD値は、10
-9M、10
-8M、10
-7M、10
-6M、またはそれ以上であり得る。
【0038】
さらなる態様において、pH5.8でC5に結合する抗体のKDが、pH7.4でC5に結合する抗体のKDよりも少なくとも2倍大きい場合、該抗体は、酸性pHに比べて中性pHにおいての方がより高いアフィニティでC5に結合すると考えられる。いくつかの態様において、抗体は、pH7.4においてC5に結合する抗体のKDよりも少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上大きいKDでpH5.8においてC5に結合する。別の態様において、pH7.4での該抗体のKD値は、10
-7M、10
-8M、10
-9M、10
-10M、10
-11M、10
-12M、またはそれ以下であり得る。別の態様において、pH5.8での該抗体のKD値は、10
-9M、10
-8M、10
-7M、10
-6M、またはそれ以上であり得る。
【0039】
特定の抗原に対する抗体の結合特性はまた、抗体のkdで表すことができる。抗体のkdは、特定の抗原に対する抗体の解離速度定数を指し、秒の逆数(すなわち、sec
-1)の単位で表される。kd値の増加は、抗体のその抗原への結合がより弱いことを意味する。したがって、本発明は、中性pHに比べて酸性pHにおいての方がより高いkd値でC5に結合する抗体を包含する。本発明に関する抗体は、中性pHにおいてC5に結合する抗体のkdよりも少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上大きいkdで酸性pHにおいてC5に結合する抗体を包含する。別の態様において、中性pHでの該抗体のkd値は、10
-21/s、10
-31/s、10
-41/s、10
-51/s、10
-61/s、またはそれ以下であり得る。別の態様において、酸性pHでの該抗体のkd値は、10
-31/s、10
-21/s、10
-11/s、またはそれ以上であり得る。本発明に関する抗体はまた、pH7.4に比べてpH5.8においての方がより高いkd値でC5に結合する抗体を包含する。本発明に関する抗体は、pH7.4においてC5に結合する抗体のkdよりも少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上大きいkdでpH5.8においてC5に結合する抗体を包含する。別の態様において、pH7.4での該抗体のkd値は、10
-21/s、10
-31/s、10
-41/s、10
-51/s、10
-61/s、またはそれ以下であり得る。別の態様において、pH5.8での該抗体のkd値は、10
-31/s、10
-21/s、10
-11/s、またはそれ以上であり得る。
【0040】
特定の例では、「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」は、中性pHでC5に結合する抗体のKD値に対する酸性pHでC5に結合する抗体のKD値(またはその逆)の比で表される。例えば、抗体が2以上の酸性/中性KD比を示す場合、本発明の目的に関して、その抗体は「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」を示しているとみなすことができる。特定の例示的な態様において、抗体のpH5.8/pH7.4 KD比は2以上である。特定の例示的な態様において、抗体の酸性/中性KD比は、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれ以上であり得る。別の態様において、中性pHでの該抗体のKD値は、10
-7M、10
-8M、10
-9M、10
-10M、10
-11M、10
-12M、またはそれ以下であり得る。別の態様において、酸性pHでの該抗体のKD値は、10
-9M、10
-8M、10
-7M、10
-6M、またはそれ以上であり得る。さらなる例では、抗体が2以上のpH5.8/pH7.4 KD比を示す場合、本発明の目的に関して、その抗体は「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」を示しているとみなすことができる。特定の例示的な態様において、抗体のpH5.8/pH7.4 KD比は、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれ以上であり得る。別の態様において、pH7.4での該抗体のKD値は、10
-7M、10
-8M、10
-9M、10
-10M、10
-11M、10
-12M、またはそれ以下であり得る。別の態様において、pH5.8での該抗体のKD値は、10
-9M、10
-8M、10
-7M、10
-6M、またはそれ以上であり得る。
【0041】
特定の例では、「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」は、中性pHでC5に結合する抗体のkd値に対する酸性pHでC5に結合する抗体のkd値(またはその逆)の比で表される。例えば、抗体が2以上の酸性/中性kd比を示す場合、本発明の目的に関して、その抗体は「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」を示しているとみなすことができる。特定の例示的な態様において、抗体のpH5.8/pH7.4 kd比は2以上である。特定の例示的な態様において、抗体の酸性/中性kd比は、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれ以上であり得る。さらなる例示的な態様において、抗体のpH5.8/pH7.4 kd比は、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれ以上であり得る。別の態様において、中性pHでの該抗体のkd値は、10
-21/s、10
-31/s、10
-41/s、10
-51/s、10
-61/s、またはそれ以下であり得る。さらなる態様において、pH7.4での該抗体のkd値は、10
-21/s、10
-31/s、10
-41/s、10
-51/s、10
-61/s、またはそれ以下であり得る。別の態様において、酸性pHでの該抗体のkd値は、10
-31/s、10
-21/s、10
-11/s、またはそれ以上であり得る。さらなる態様において、pH5.8での該抗体のkd値は、10
-31/s、10
-21/s、10
-11/s、またはそれ以上であり得る。
【0042】
本明細書で使用される表現「酸性pH」は、4.0〜6.5のpHを意味する。表現「酸性pH」には、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、および6.5のいずれか1つのpH値が含まれる。特定の局面において、「酸性pH」とは5.8である。
【0043】
本明細書で使用される表現「中性pH」は、6.7〜約10.0のpHを意味する。表現「中性pH」には、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、および10.0のいずれか1つのpH値が含まれる。特定の局面において、「中性pH」とは7.4である。
【0044】
本明細書で表現されるKD値およびkd値を、表面プラズモン共鳴に基づくバイオセンサーを用いて決定して、抗体-抗原相互作用を特徴付けることができる。KD値およびkd値は25℃または37℃で測定することができる。
【0045】
別の局面において、抗C5抗体は、配列番号:2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン (VH) 配列を含む。特定の態様において、VH配列は配列番号:2のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:2において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:2におけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VHは、(a)配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号:4のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:5のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0046】
本明細書で用いられる用語「HVR」は「超可変領域」を表し、用語「FR」は「フレームワーク」を表す。
【0047】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域 (HVR) 残基以外の、可変ドメイン残基のことをいう。可変ドメインのFRは、通常4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。それに応じて、HVRおよびFRの配列は、通常次の順序でVH(またはVL)に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0048】
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」(complementarity determining region))、および/または構造的に定まったループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体の可変ドメインの各領域のことをいう。通常、抗体は6つのHVRを含む:VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)である。本明細書での例示的なHVRは、以下のものを含む:
(a) アミノ酸残基26-32 (L1)、50-52 (L2)、91-96 (L3)、26-32 (H1)、53-55 (H2)、および96-101 (H3)のところで生じる超可変ループ (Chothia, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b) アミノ酸残基24-34 (L1)、50-56 (L2)、89-97 (L3)、31-35b (H1)、50-65 (H2)、 および95-102 (H3)のところで生じるCDR (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, NIH, Bethesda, MD (1991));
(c) アミノ酸残基27c-36 (L1)、46-55 (L2)、89-96 (L3)、30-35b (H1)、47-58 (H2)、および93-101 (H3) のところで生じる抗原接触 (MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996));ならびに、
(d) HVRアミノ酸残基46-56 (L2)、47-56 (L2)、48-56 (L2)、49-56 (L2)、26-35 (H1)、26-35b (H1)、49-65 (H2)、93-102 (H3)、および94-102 (H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
【0049】
別の局面において、抗C5抗体は、配列番号:6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン (VL) を含む。特定の態様において、VL配列は配列番号:6のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:6において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:6におけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VLは、(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:8のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0050】
別の態様において、抗体は、全長抗体、例えばIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4完全抗体であるか、または、IgGサブクラスの中で相同な領域内のIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4より選択される2つ以上のIgG由来の領域を有するよう組み換えによって操作された抗体である。抗体は、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトのIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含む任意の好適なFc領域を含んでもよい。
【0051】
Fc領域変異体
特定の態様において、本発明に関する抗C5抗体は、抗体の天然型配列Fc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾が導入されたFc領域変異体を含む。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸ポジションのところでアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。
【0052】
特定の態様において、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を備える抗体変異体も、本発明の考慮の内であり、当該エフェクター機能は、抗体を、そのインビボでの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体およびADCCなど)は不要または有害である場合の適用に望ましい候補とするものである。CDCおよび/またはADCC活性の減少/欠乏を確認するために、インビトロおよび/またはインビボの細胞傷害測定を行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合測定は、抗体がFcγR結合性を欠く(よってADCC活性を欠く蓋然性が高い)一方でFcRn結合能を維持することを確かめるために行われ得る。ADCCを媒介するプライマリ細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、一方単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991) の第464頁のTable 3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロ測定法(アッセイ)の非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986) 参照)および Hellstrom et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987) 参照)に記載されている。あるいは、非放射性の測定法を用いてもよい(例えば、ACT1(商標)non-radioactive cytotoxicity assay for flow cytometry (CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);および、CytoTox 96(登録商標)non-radioactive cytotoxicity assays 法 (Promega, Madison, WI) 参照)。このような測定法に有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞 (peripheral blood mononuclear cell: PBMC) およびナチュラルキラー (natural killer: NK) 細胞を含む。あるいはまたは加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998) に記載されるような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。また、抗体がC1qに結合できないこと、よってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合測定を行ってもよい。例えば、WO2006/029879 および WO2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。また、補体活性化を評価するために、CDC測定を行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg et al., Blood 101:1045-1052 (2003);およびCragg et al., Blood 103:2738-2743 (2004) 参照)。さらに、FcRn結合性およびインビボでのクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野において知られた方法を用いて行い得る(例えばPetkova et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006) 参照)。
【0053】
減少したエフェクター機能を伴う抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329の1つまたは複数の置換を伴うものを含む(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、残基265および297のアラニンへの置換を伴ういわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸ポジション265、269、270、297、および327の2つ以上の置換を伴うFc変異体を含む。
【0054】
FcRへの改善または減弱した結合性を伴う特定の抗体変異体が、記述されている。(例えば、米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、およびShields et al., J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604 (2001) を参照のこと。)
【0055】
特定の態様において、抗体変異体は、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換(例えば、Fc領域のポジション298、333、および/または334(EUナンバリングでの残基)のところでの置換)を伴うFc領域を含む。
【0056】
いくつかの態様において、例えば米国特許第6,194,551号、WO1999/51642、およびIdusogie et al., J. Immunol. 164:4178-4184 (2000) に記載されるように、改変された(つまり、改善したか減弱したかのいずれかである)C1q結合性および/または補体依存性細胞傷害 (CDC) をもたらす改変が、Fc領域においてなされる。
【0057】
増加した半減期、および新生児型Fc受容体(FcRn:母体のIgG類を胎児に移行させる役割を負う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994)))に対する改善した結合性を伴う抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号(Hinton et al.) に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合性を改善する1つまたは複数の置換をその中に伴うFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つまたは複数のところでの置換(例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号))を伴うものを含む。
【0058】
Fc領域変異体の他の例については、Duncan, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO1994/29351も参照のこと。
【0059】
特定の態様において、本発明に関する抗C5抗体は、上述の態様のいずれかにおけるVHと、配列番号:10、11、12、13、14、および15のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖定常領域とを含む。特定の態様において、抗C5抗体は、上述の態様のいずれかにおけるVLと、配列番号:16、17、および18のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域とを含む。
【0060】
特定の態様において、本発明に関する抗C5抗体は、WO2016/098356、WO2017/123636、およびWO2017/132259に記載された抗体のいずれか1つである。
【0061】
皮下投与
本発明のための組成物は、二段階で皮下投与される。両段階において、どの2回の皮下投与の間にも間隔がある。各段階は少なくとも1つの間隔を含む。第1段階の最後の間隔は、第1段階の最後の皮下投与と第2段階の1回目の皮下投与の間である。
【0062】
特定の態様において、第1段階における少なくとも1つの間隔は1日〜2ヶ月である。第1段階における適切な間隔は、対象または患者の状態に応じて好適な範囲内で決定することができる。皮下注射間の具体的な投与間隔は、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、または42日である。好ましい態様において、第1段階における間隔は4日〜35日である。さらに好ましい態様において、第1段階における間隔は5日〜14日である。最も好ましい態様において、第1段階における間隔は7または14日である。医薬組成物は、第1段階において週1回(毎週)または2週に1回(2週間毎または隔週)、投与され得る。
【0063】
特定の態様において、第2段階における少なくとも1つの間隔は2日〜6ヶ月である。第2段階における少なくとも1つの間隔の適切な長さは、対象または患者の状態に応じて好適な範囲内で決定することができる。第2段階における少なくとも1つの間隔の例示的な長さは、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日、60日、61日、62日、63日、64日、65日、66日、67日、68日、69日、70日、71日、72日、73日、74日、75日、76日、77日、78日、79日、80日、81日、82日、83日、84日、85日、86日、87日、88日、89日、90日、91日、92日、93日、94日、95日、96日、97日、98日、99日、100日、101日、102日、103日、104日、105日、106日、107日、108日、109日、110日、111日、112日、113日、114日、115日、116日、117日、118日、119日、120日、121日、122日、123日、124日、125日、126日、127日、128日、129日、130日、131日、132日、133日、134日、135日、136日、137日、138日、139日、140日、141日、142日、143日、144日、145日、146日、147日、148日、149日、150日、151日、152日、153日、154日、155日、156日、157日、158日、159日、160日、161日、162日、163日、164日、165日、166日、167日、168日、169日、170日、171日、172日、173日、174日、175日、176日、177日、178日、179日、180日、181日、182日、183日、または184日である。好ましい態様において、第2段階における少なくとも1つの間隔の長さは15日〜3ヶ月である。第2段階において、医薬組成物は、月1回(毎月)、2ヶ月に1回(2ヶ月毎または隔月)または3ヶ月に1回(3ヶ月毎(three-monthly)または3ヶ月毎(trimonthly))、投与され得る。より長い期間は、患者の負担や苦痛を低減することができる。
【0064】
特定の態様において、医薬組成物は、第1および第2段階において抗体の17〜6,000 mgの一用量で皮下投与される。適切な用量は、対象または患者の状態に応じて好適な範囲内で決定することができる。医薬組成物が対象に繰り返し皮下投与される場合、用量は必ずしも常に同じである必要はなく、好適な範囲内で決定され得る。例えば、用量は徐々に減少してもよい。
【0065】
特定の態様において、第1段階の皮下投与における用量は抗体50〜350 mgである。第1段階における皮下投与あたりの抗体用量が第2段階における皮下投与あたりの抗体用量よりも低い場合、第1段階における皮下投与あたりの抗体の用量は、好ましくは150〜200 mgである。この場合、特に好ましい用量は170 mgを含む。第1段階における皮下投与あたりの抗体用量が第2段階における皮下投与あたりの抗体用量と同じである場合、第1段階における皮下投与あたりの用量は、好ましくは抗体300〜350 mgである。この場合、特に好ましい用量は340 mgを含む。第1段階において医薬組成物が毎週(約7日間隔で)投与される場合、好ましい用量は170 mgまたは340 mgである。第1段階において医薬組成物が2週間毎に(約14日間隔で)投与される場合、好ましい用量は340 mgである。
【0066】
特定の態様において、第2段階における投与あたりの抗体の用量は、350 mg〜1,000 mgである。好ましい態様において、用量は650〜700 mgである。医薬組成物が4週間毎に(約28日間隔で)または毎月投与される場合、好ましい用量は680mgである。抗体680mgを4週間毎または毎月皮下投与する投薬レジメンは患者の負担や苦痛を低減することができるので、特に好ましい。
【0067】
特定の態様において、第1段階における投与あたりの抗C5抗体用量は、第2段階における投与あたりの抗C5抗体用量よりも3〜5倍低い。好ましい態様において、第1段階における皮下投与あたりの抗体の用量は、第2段階における皮下投与あたりの抗体用量よりも4倍低い。
【0068】
特定の態様において、第1段階における皮下投与の回数は、1〜12回である。好ましい態様において、該回数は5〜10回である。さらに好ましい態様において、第1段階における皮下投与は8回である。
【0069】
特定の態様において、皮下注射のための一般的な組成物について利用可能な任意の薬学的に許容される担体を、医薬組成物に含めることができる。皮下注射のために使用されるある種の担体は、当技術分野で一般的に知られる担体から好適に選択することができる。
【0070】
特定の態様において、医薬組成物の製剤は、液体、半固体、および固体からなる群より選択されるいずれかであることができる。固体組成物は通常、液体製剤から凍結乾燥によって作製される。凍結乾燥された組成物は通常、皮下注射直前に水または生理食塩水を用いて再構成される。
【0071】
組成物が皮下投与される場合、該組成物の液体製剤中の抗C5抗体の濃度は、当技術分野で一般的な範囲内で決定される。特定の態様において、皮下注射用の組成物の量は、当技術分野で一般的な範囲内で決定される。
【0072】
特定の態様において、C5関連疾患とは、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う、補体介在性の疾患または状態である。特定の態様において、C5関連疾患は、以下からなる群より選択される少なくとも1つである:関節リウマチ(RA);ループス腎炎;虚血再灌流障害;発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH);非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS);デンスデポジット病(DDD);黄斑変性症;HELLP(hemolysis, elevated liver enzymes, and low platelets)症候群;血栓性血小板減少性紫斑病(TTP);自然胎児消失;寡免疫性血管炎;表皮水疱症;習慣性流産;多発性硬化症(MS);外傷性脳損傷;ならびに、心筋梗塞、心肺バイパスまたは血液透析に起因する損傷;難治性の全身性重症筋無力症(gMG);視神経脊髄炎(NMO)。好ましい態様において、C5関連疾患は、PNH、aHUS、gMG、およびNMOからなる群より選択される少なくとも1つである。さらに好ましい態様において、C5関連疾患はPNHである。
【0073】
特定の局面では、静脈内投与用に製剤化されかつ抗C5抗体を含む医薬組成物は、第1段階の1回目の皮下投与の前に投与される。好ましくは、静脈内投与される組成物の抗C5抗体は、皮下投与される組成物の抗C5抗体と同じである。静脈内投与される医薬組成物は、後述されるものと同じである。
【0074】
特定の態様において、皮下注射用の組成物は、静脈内注射用の組成物の一用量が静脈内投与されるのと同じ日に、またはその1日以上後に、皮下投与される。静脈内注射用の組成物の1回または複数回の用量が、皮下注射用の組成物の1回目の用量の投与の前に対象または患者に投与されてもよい。好ましい態様において、静脈内注射用の組成物の最終用量の後に、皮下注射用の組成物の1回目の用量が投与される。
【0075】
特定の態様において、第1段階の1回目の皮下投与は、静脈内投与される医薬組成物の最後の投与から0日〜1ヵ月後に施される。具体的には、1回目の皮下投与と最後の静脈内投与の間の期間は、0日(すなわち、24時間以内)、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、または31日である。好ましい態様において、期間は0日(すなわち、24時間以内)〜14日である。さらに好ましい態様において、期間は0日(すなわち、24時間以内)〜10日である。最も好ましい態様において、期間は0日(すなわち、24時間以内)〜8日である。
【0076】
III. 静脈内注射用の医薬組成物
本発明の特定の局面において、本発明のための医薬組成物の第1段階における1回目の皮下投与は、静脈内投与のための組成物の最後の投与の後に施される。
【0077】
したがって、本発明の一態様において、静脈内投与用に製剤化されかつ抗C5抗体を含む組成物は、第1段階の1回目の皮下投与の前に、静脈内投与される。好ましい態様において、静脈内組成物の抗C5抗体は皮下組成物の抗C5抗体と同じである。
【0078】
好ましくは、1回目の皮下投与の後には静脈内投与を行わない。したがって、さらなる態様において、最後の静脈内投与は1回目の皮下投与の前になされる。
【0079】
本発明における静脈内注射用に製剤化された医薬組成物は、C5関連疾患の治療または予防用であり、抗C5抗体を含み、静脈内投与される。静脈内注射は、注射によって静脈に医薬組成物を投与するための一般的な装置および方法を用いて実施できる。また、静脈内注射専用の装置および方法を選択してもよい。
【0080】
静脈内注射のために使用される抗C5抗体は、皮下注射用の医薬組成物に関して上述された任意の抗体であり得る。静脈内注射用の医薬組成物および皮下注射用の医薬組成物は、同じ抗C5抗体を含んでもよく、異なる抗C5抗体を含んでもよい。好ましい態様において、静脈内注射のために使用される抗C5抗体は、上記の皮下注射に関するものと同じ抗体である。
【0081】
特定の態様において、医薬組成物は、抗体の50〜5,000 mgの一用量で静脈内投与される。適切な用量は、対象または患者の状態に応じて好適な範囲内で決定することができる。医薬組成物が対象に繰り返し静脈内投与される場合、用量は必ずしも常に同じである必要はなく、用量が好適な範囲内にある限り任意に決定され得る。例えば、用量は徐々に減少してもよい。好ましい態様において、用量の範囲は抗体55〜4,000 mgである。さらに好ましい態様において、用量の範囲は抗体60〜2,500 mgである。最も好ましい態様において、用量の範囲は抗体100〜2,000 mgである。特に好ましい用量は、75 mg、125 mg、150 mg、300 mg、375 mg、500 mg 、および1,000 mgである。さらに好ましい用量は、375 mg、500 mg、および1,000 mgであり、とりわけ最も好ましいのは1,000 mgである。
【0082】
特定の態様において、静脈内注射によって医薬組成物を投与する回数は特に制限されず、1回またはそれ以上の回数であり得る。好ましい態様において、回数は1回、2回、または3回である。さらに好ましい態様において、回数は1回または2回である。最も好ましい態様において、回数は1回である。より少ない回数の方が、患者の負担や苦痛を低減することができる。
【0083】
特定の態様において、医薬組成物が対象または患者に繰り返し静脈内投与される場合、該組成物は1時間に1回〜14日毎に1回投与される。静脈内注射の適切な投与間隔は、対象または患者の状態に応じて好適な範囲内で決定することができる。静脈内注射の具体的な投与間隔は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、32時間、33時間、34時間、35時間、36時間、37時間、38時間、39時間、40時間、41時間、42時間、43時間、44時間、45時間、46時間、47時間、48時間、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日である。好ましい態様において、投与間隔は24時間〜10日である。さらに好ましい態様において、投与間隔は48時間〜7日である。最も好ましい態様において、投与間隔は3〜5日である。
【0084】
特定の態様において、静脈内注射のための一般的な組成物について利用可能な任意の薬学的に許容される担体を、組成物に含めることができる。静脈内注射のために使用されるある種の担体は、当技術分野で一般的に知られる担体から好適に選択することができる。
【0085】
特定の態様において、医薬組成物の製剤は、液体、半固体、および固体からなる群より選択されるいずれかであることができる。固体組成物は通常、液体製剤から凍結乾燥によって作製される。凍結乾燥された組成物は通常、静脈内注射直前に水または生理食塩水を用いて再構成される。静脈内注射用の医薬組成物の製剤は、皮下注射用の医薬組成物の製剤と同じものまたは違うものであることができる。好ましい態様において、静脈内注射用の医薬組成物の製剤は、製造コストを抑えるために、皮下注射用の医薬組成物の製剤と同じものである。
【0086】
組成物が静脈内投与される場合、該組成物の液体製剤中の抗C5抗体の濃度は、当技術分野で一般的な範囲内で決定される。特定の態様において、静脈内注射用の組成物の量は、当技術分野で一般的な範囲内で決定される。
【0087】
特定の局面では、静脈内注射用の組成物の一用量が、別の医薬組成物の初回用量が皮下投与される前に投与される。皮下注射用の医薬組成物は、上記されたのと同じものである。
【0088】
特定の態様において、静脈内注射用の組成物は、皮下注射用の組成物の1回目の用量が皮下投与されるのと同じ日に、またはその1日以上前に、静脈内投与される。静脈内注射用の組成物の1回または複数回の用量が、皮下注射用の組成物の1回目の用量の投与の前に対象または患者に投与されてもよい。好ましい態様において、皮下注射用の組成物の1回目の用量の前に、静脈内注射用の組成物の最終用量が投与される。
【0089】
特定の態様において、静脈内注射用の組成物の一用量は、皮下注射用の組成物の1回目の用量と同じ日に、またはその1日〜1ヵ月前に投与される。静脈内注射用の組成物の用量と皮下注射用の組成物の1回目の用量の間の具体的な間隔は、0日(すなわち、24時間以内)、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、または31日である。好ましい態様において、間隔は0日(すなわち、24時間以内)〜14日である。さらに好ましい態様において、間隔は0日(すなわち、24時間以内)〜10日である。最も好ましい態様において、間隔は0日(すなわち、24時間以内)〜8日である。
【0090】
IV. 他の医薬品からのスイッチング
別の局面において、上記の皮下注射または静脈内注射用の医薬組成物は、C5関連疾患の治療または予防用の少なくとも1つの医薬品を用いて1回または複数回治療されてきた対象における該疾患の治療または予防のために有用である。例えば、本発明の医薬組成物は、C5関連疾患の治療または予防のための少なくとも1つの医薬品を用いて先に治療を受けているが本発明の医薬組成物による治療に対してより良好に応答すると予想される、該疾患を有する患者を治療するために有用であり得る。そのような場合、該医薬品から本発明の医薬組成物へ、薬物療法をスイッチすることができる。好ましい態様において、本発明における静脈内注射用の組成物の初回用量は、先の治療において使用されている医薬品の最終用量の後に投与される。
【0091】
特定の態様において、医薬品は、皮下注射および静脈内注射用の上記組成物中の抗C5抗体とは異なる作用物質を含む。いくつかの態様において、医薬品の作用物質は、C5 mRNAを標的とするsiRNA、または、皮下注射および静脈内注射用の上記組成物に含まれる抗C5抗体とは異なる抗C5抗体である。好ましい態様において、医薬品は、皮下注射および静脈内注射用の上記組成物中のものとは異なる抗体である抗体を含む。最も好ましい態様において、先の治療において使用されている医薬品に含まれる抗体は、エクリズマブまたはその誘導体である。
【0092】
特定の態様において、本発明における静脈内注射用の組成物の初回用量は、医薬品の最終用量が投与されるのと同じ日に、またはその1日以上後に、投与される。医薬品の最終用量と本発明の静脈内注射用の組成物の初回用量の間の具体的な間隔は、0日(静脈内注射用の組成物の初回用量が医薬品の最終用量と同じ日に投与されることを意味する)、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、または21日である。好ましい態様において、本発明の静脈内注射用の組成物は、医薬品の最終用量の3日以上後に投与される。より好ましい態様において、本発明の静脈内注射用の組成物は、医薬品の最終用量の7日以上後に投与される。さらに好ましい態様において、本発明の静脈内注射用の組成物は、医薬品の最終用量の14日以上後に投与される。最も好ましい態様において、本発明の静脈内注射用の組成物は、医薬品の最終用量の21日以上後に投与される。
【0093】
V. 治療または予防するための方法
他の局面において、本発明は、C5関連疾患を治療または予防するための方法を包含する。
【0094】
一態様において、方法は、皮下注射用に製剤化されかつ抗C5抗体を含む医薬組成物を対象に皮下投与する工程を含み、該組成物は二段階で皮下投与され、両段階において、どの2回の皮下投与の間にも間隔があり、各段階は少なくとも1つの間隔を含み、第1段階において、
(i) 少なくとも1つの間隔は、第2段階における少なくとも1つの間隔よりも短く、かつ
(ii) 投与あたりの抗体の用量は、第2段階における投与あたりの抗体用量よりも低いかまたは同じである。
皮下投与される医薬組成物は、本明細書で上記されたものと同じである。
【0095】
特定の態様において、静脈内投与用に製剤化されかつ抗C5抗体を含む医薬組成物は、第1段階の1回目の皮下投与の前に投与される。静脈内投与される医薬組成物は、本明細書で上記されたものと同じである。
【0096】
本方法において用いられる皮下または静脈内注射用の医薬組成物の条件および標的疾患は、上記「II. 皮下注射用の医薬組成物」および「III. 静脈内注射用の医薬組成物」の章で言及されたものと同じである。
【0097】
VI. ワクチン接種
抗C5抗体が投与された対象において、感染性疾患、例えば髄膜炎菌感染症が発生する可能性がある。そのような感染性疾患を予防するために、皮下および静脈内注射用の上記組成物が投与される前、後、または該投与時に、該疾患を治療または予防することが知られているワクチンによって対象を免疫化してもよい。
【0098】
VII. 製造品
本発明の別の局面において、上述のC5関連疾患の治療または予防に有用な器材を含んだ製造品または製品が、提供される。製造品または製品は、1つまたは複数の容器、および、当該容器上のまたは当該容器に付属するラベルまたは添付文書を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、SC溶液シリンジなどが含まれる。容器類は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は組成物を単体で保持するか、当該状態の治療または予防のために有効な別の組成物と組み合わせて保持し、かつ、無菌のアクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き通すことのできるストッパーを有するバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの有効な剤は、上述の抗C5抗体である。ラベル、添付文書、またはそのような文書は、選ばれた状態、例えば、上述のC5関連疾患のいずれかを治療するために組成物が使用されるものであることを示す。
【0099】
特定の態様において、製造品または製品の容器に含まれる組成物は、皮下注射用に製剤化されている。この態様における製造品または製品は、以下の投与方法を示す添付文書をさらに含んでもよい。医薬組成物は二段階で皮下投与され、両段階において、どの2回の皮下投与の間にも間隔がある。各段階は少なくとも1つの間隔を含む。第1段階において、(i) 少なくとも1つの間隔は、第2段階における少なくとも1つの間隔よりも短く、かつ (ii) 投与あたりの抗体の用量は、第2段階における投与あたりの抗体用量よりも低い。
【0100】
特定の態様において、製造品または製品は、さらなる治療的な剤を含む組成物が中に収められた、追加の容器をさらに含んでもよい。この態様における製造品は、組成物が特定の状態を治療するために使用され得ることを示す添付文書をさらに含んでもよい。あるいはまたは加えて、製造品は、注射用制菌水 (BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む別の追加の容器をさらに含んでもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどの、商業的観点またはユーザの立場から望ましい他の器材をさらに含んでもよい。
【実施例】
【0101】
以下は、本発明の方法および組成物の実施例である。上述の一般的な記載に照らし、種々の他の態様が実施され得ることが、理解されるであろう。
【0102】
[実施例1]
抗C5抗体の生成
WO2016/098356における抗C5抗体である305LO15を、一般的な方法によって調製した。簡潔に言うと、305LO15の重鎖可変ドメイン(VH)をコードする遺伝子を、改変ヒトIgG1重鎖定常ドメイン(CH)変異体SG115(配列番号:13)をコードする遺伝子と組み合わせた。305LO15の軽鎖可変ドメイン(VL)をコードする遺伝子を、ヒト軽鎖定常ドメイン(CL)(SK1、配列番号:18)をコードする遺伝子と組み合わせた。重鎖および軽鎖の発現ベクターの組み合わせを同時トランスフェクトしたHEK293細胞において抗体を発現させ、プロテインAにより精製した。
【0103】
[実施例2]
タンパク質を濃縮するのが難しいため、タンパク質医薬、例えば抗体薬は、典型的には静脈内投与される。実際、現時点で治療のために使用することができる唯一の承認された抗体であるエクリズマブは、静脈内投与される。皮下注射が使用可能になれば、自己注射が可能であるので、患者の負担、例えば静脈内注射のための通院治療および長期入院が低減すると考えられる。
【0104】
抗C5抗体の皮下投与の実現性を調べるために、WO2016/098356にて開示された305LO15をその高い溶解度により選択した。より高い溶解度は、皮下注射を可能にする、より小さな体積でタンパク質医薬が投与され得る可能性を与えると考えられた。静脈内注射および皮下注射のための医薬製剤は、以下の一般的な製剤となるように調製された。
170mg/mL 305LO15
30 mM ヒスチジン/アスパラギン酸
100 mM 塩酸アルギニン
0.05% ポロキサマー188
pH 5.8
【0105】
皮下注射または静脈内注射の後の305LO15の薬物動態を比較するために、カニクイザルを、皮下注射群と静脈内注射群の2群に分けた。305LO15を、第一群(雄3頭および雌3頭)の該動物に週1回、計22回にわたり、各投薬について抗体40 mg/kgで皮下投与した。これらの動物の血漿中305LO15濃度を、
図1aに示す時点で、ELISA分析を用いて測定した。305LO15を、第二群(雄6頭および雌6頭)の動物に週1回、計5回にわたり、各投薬について抗体40 mg/kgで静脈内投与した。動物の血漿中305LO15濃度を、
図1bに示す時点で、ELISA分析によって測定した。
【0106】
図1aに示すとおり、カニクイザルの血漿中305LO15濃度は皮下注射によって上昇し、これにより、305LO15を治療のために皮下注射によって投与できることが立証された。初回用量後の血漿中濃度における初回上昇速度は、静脈内注射(
図1b)に比べて皮下投与において(
図1a)の方がより低い。
【0107】
[実施例3]
次に、初回用量の皮下注射後の血漿中濃度における相対的に遅い上昇速度を305LO15の静脈内注射によって補償できるかを調べた。カニクイザルの雄5頭および雌5頭に、初回用量の305LO15を、抗体100 mg/kgの用量で1回、静脈内投与した。初回静脈内投与から1週間後に、305LO15の皮下注射を開始した。各投薬について抗体40 mg/kgの用量で、週1回のペースで計26回の皮下注射を施した。
【0108】
図2に示すとおり、305LO15の血漿中濃度の上昇速度は、皮下注射による維持用量の前に静脈内注射として初回用量の抗体が投与された場合の方が、初回用量の静脈内注射を伴わない場合よりも、早かった。305LO15の血漿中濃度は
図1aに示されたものに匹敵するレベルに達し、維持された。血漿中305LO15濃度のこのより迅速な上昇は当該薬物による治療効果のより迅速な達成に寄与すると考えられた。
【0109】
[実施例4]
305LO15の有効血漿中濃度を推定するために、カニクイザルにおいて、遊離抗原(C5)の血漿中濃度または補体活性と抗体(305LO15)の血漿中濃度との間の関係を決定した。305LO15を、静脈内投与(0.8 mg/kg、4 mg/kg、または20 mg/kg)または皮下投与(4 mg/kg)した。抗体と遊離C5の血漿中濃度を、ELISAによって測定した。補体活性を、RBC溶血測定法によって測定した。
図3に示すとおり、305LO15の血漿中濃度が305LO15 40μg/mL(
図3a)超で維持されている場合には、遊離C5濃度はμg/mL未満のレベルを下回るまで抑制され、40μg/mL以上の血漿中濃度の305LO15は、補体活性(溶血)をベースライン(すなわち抗体の適用なし)の20%未満まで阻害した(
図3b)。40μg/mL以上の濃度の305LO15が血漿中で維持されている場合は、ベースライン(すなわち抗体の注射なし)の20%未満まで補体活性が抑制されると推定された。
【0110】
[実施例5]
臨床試験用の有効血漿中305LO15濃度を維持するのに好適な305LO15の用法用量を決定するために、ヒトにおける血漿中305LO15濃度の経時変化をシミュレーションによって予測した。まず、各投薬について抗体0.8、4、20 mg/kgでカニクイザルに抗体を投与した後、血漿中305LO15濃度を経時的に測定した。2コンパートメントモデルを用いてデータを解析することによって、カニクイザルのPKパラメータを推定した。アロメトリック・スケーリング(allometric scaling)を用いて、カニクイザルのPKパラメータに基づき、ヒトのPKパラメータを推定した。ヒトの推定PKパラメータを表1に示す(表1におけるパラメータの略称:BW、体重;CL、薬物の総クリアランス;F、生物学的利用能すなわち、薬物の投与用量のうち全身的に利用可能となる割合;Ka、吸収速度定数;mAb、モノクローナル抗体;PK、薬物動態;Q、コンパートメント間クリアランス;SC、皮下;Vc、中央コンパートメントの分布容積;Vp、末梢コンパートメントの分布容積)。
【0111】
【表1】
【0112】
第1/2相試験に予定される各コホートについて、ヒトのPKプロファイルを推定した(
図4)。試験の第1パートは、3群の被験体を含むよう設計した。第1群は、305LO15が75 mg/bodyの用量で1回静脈内投与される被験体の群である。第2群は、305LO15が150 mg/bodyの用量で1回静脈内投与される被験体の群である。第3群は、305LO15が170 mg/bodyの用量で1回皮下投与される被験体の群である。上記用量のいずれか1つを受ける被験体における血漿中305LO15濃度は、1週間超にわたり閾値(40μg/mL)を上回って維持されることはないと予測された(
図4a)。
【0113】
試験の第2パートは、1群の被験体を含むよう設計し、該被験体に、305LO15を3回(まず300 mg/bodyの用量で、次に、初回投与の1週間後に500 mg/bodyで、最後に、2回目の投与の2週間後に1000 mg/bodyで)静脈内投与し、そして、最後の静脈内投与の2週間後から、305LO15を170 mg/bodyの用量で週1回皮下投与する。305LO15濃度は、第2パート試験の投薬レジメンによってPD閾値(40μg/mL)よりも高く維持されると予測された(
図4b)。
【0114】
試験の第3パートは、3群の被験体を含むよう設計された。まず、全群の被験体に、305LO15を500 mg/bodyの用量で1回静脈内投与する。初回投与の翌日から、305LO15を、第1群の被験体に170 mg/bodyの用量で週1回、第2群の被験体に340 mg/bodyの用量で2週に1回、第3群の被験体に600 mg/bodyの用量で4週に1回、皮下投与する。305LO15濃度は、第3パート試験における3群の全てにおいてPD閾値(40μg/mL)よりも高く維持されると予測された(
図4c)。
【0115】
[実施例6]
PNHまたはaHUSを有する患者を治療するために、エクリズマブが使用されている。305LO15がPNHまたはaHUS患者に対してエクリズマブよりも望ましい効果を有することが予想される場合には、当該患者に対する薬物療法がエクリズマブから305LO15にスイッチされる可能性がある。その一方で、305LO15のエピトープがエクリズマブのエピトープとは異なっている、すなわち、エクリズマブはC5のα鎖と結合するが305LO15はC5のβ鎖と結合するため、305LO15は体内でC5およびエクリズマブと免疫複合体を形成する可能性がある。そのような免疫複合体の形成は異常な活性化を引き起こし得、したがって、可能な限りこれを防止することが望ましい。
【0116】
305LO15がエクリズマブ(ECZ、重鎖配列を配列番号:19に示し、軽鎖配列を配列番号:20に示す)およびヒトC5(hC5、配列番号:21)と免疫複合体を形成するかどうかを調べるため、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いたインビトロ分析を実施した。hC5を、WO2016/098356に開示された方法に従って調製した。緩衝液交換のため、ECZ、hC5、および305LO15をDPBS pH7.4に対して透析した。次に、ECZおよびhC5を混合して37℃で3〜4時間インキュベートした。インキュベーションの後、ECZおよびhC5を含むこの混合物に305LO15を添加した。ECZおよびhC5の最終濃度を200μg/mLに調整し、305LO15濃度を0、25、125、250、または1250μg/mLに調整した。これらの混合物を37℃で3〜4時間インキュベートした後、pH7.4およびpH6.0でSEC分析を実施した。具体的なSEC条件を以下に示す。
HPLCシステム:Waters Alliance e2695 HPLCシステム
カラム:TSKgel G4000SWXL
カラム温度:25℃
溶出液:50 mM Na-PB/300 mM NaCl、pH7.4またはpH6.0
流速:0.5 mL/min
検出:220 nm UV吸収
注入:10μL
【0117】
結果として、濃度125〜1250μg/mLの305LO15はSECプロファイルに対し、pH6.0では影響を与えなかったが、pH7.4では影響を与えた。より具体的には、305LO15をECZおよびhC5と混合した時に、pH7.4では、小さな複合体のピーク(
図5上図のピーク「2Ag+Ab」および「Ag+Ab」を参照されたい)に加えて、pH6.0で検出されなかった大きなECZ/hC5/305LO15免疫複合体のピークが検出された(
図5上図の矢印で示されたピークを参照されたい)。pH6.0では、小さな複合体のピークのみが検出された(
図5上図の「2Ag+Ab」および「Ag+Ab」に対応する
図5下図のピークを参照されたい)。これは、305LO15の結合特性(pH7.4ではhC5に結合するがpH6.0では結合しない)と一致して、305LO15が、pH7.4ではECZ/hC5複合体に結合するがpH6.0では結合しないことを意味する。これらの結果から、対象への305LO15およびECZの同時投与は、血漿中で大きな免疫複合体の形成をもたらす可能性があることが示唆された。
【0118】
[実施例7]
アダプティブI/II相試験である試験BP39144によって、健常志願者および発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者における305LO15の安全性、有効性、薬物動態(PK)、および薬力学(PD)を評価した。
【0119】
試験BP39144の第1パート(ランダム化、二重盲検、アダプティブ、プラセボ対照、並行群間試験)により、健常志願者における単回用量の305LO15の安全性および忍容性を評価した。各用量レベル/コホートにおいて、計5名の健常志願者をランダム化し、305LO15またはプラセボの単回の静脈内(IV;コホート1および2)または皮下(SC;コホート3)投与を受けさせた。当該試験はアダプティブデザインであり、次の投与開始前に、入手可能な安全性、忍容性、PK、およびPDデータの継続評価を伴った。コホート1、2、および3について計画された用量レベルは、それぞれ75 mg IV、150 mg IV、および170 mg SCであった(
図4a)。コホート1からのPKおよびPDデータの予備調査に基づいて、コホート2および3の用量を125 mg IV(コホート2)および100 mg SC(コホート3)まで減少させた。
【0120】
IV注入については、血液試料を、投薬前、IV注入(1時間)の終了時、投薬後2、6、12、24、48、72、96、および144時間、ならびに、第14日、第21日、第28日、第35日、第42日、第56日、第84日、および第91日に採取した。SC投与については、血液試料を、投薬前、投薬後12、24、48、72、96、および144時間、ならびに、第14日、第21日、第28日、第35日、第42日、第56日、第84日、および第91日に採取した。
【0121】
試験BP39144の第1パートからの安全性の予備的結果により、評価された全ての用量レベル(75および125 mg IV ならびに100 mg SC)において305LO15が十分な忍容性を有したことが示される。入手可能な臨床的安全性の情報からは、いかなる重大な安全上の懸念も生じず、有害事象または臨床検査異常のパターンを示唆する証拠も全く示されなかった。治療群のいずれにおいても、バイタルサインまたは12誘導心電図において注目すべき知見や傾向はみられなかった。
【0122】
305LO15に関する血清におけるPKの予備的結果および濃度-時間模擬プロファイルを、
図6、
図7、および
図8に示す。これらのデータに基づくと、健常被験体における305LO15のPKは、カニクイザルPKデータに基づくヒトPKの最初の予測(実施例5)と一致していた。IV用量の後、曝露は、75から125 mgまで用量比例的であるように見えた。体重70 kgの典型的患者の終末半減期(t
1/2)は、約25日と推定された。SC投与の後、PKの予備的結果によって、305LO15の曝露はおよそ第7日でピークになり、かつ生物学的利用能はおよそ90%であったことが示された。吸収後、t
1/2はIV注入のt
1/2と同等であった。
【0123】
曝露-応答の関係の予備的評価により、最初の予測、すなわち、完全な補体阻害を達成するためには血液1mLあたりおよそ40μgの305LO15が必要であることが裏付けられた(
図9)。
【0124】
[実施例8]
試験BP39144の第2パート(非盲検、複数用量、多施設共同、個人内用量漸増試験)により、総期間5ヶ月にわたる安全性および忍容性、ならびに、未治療PNH患者における補体活性に対する305LO15の複数回用量の薬力学的効果を評価した。この試験では、6名のPNH患者が治験参加した。治験参加した患者は、いかなる補体阻害因子でも治療されたことがない、または、以前治療されたことはあるが単一のミスセンスC5ヘテロ接合変異に基づき効果が無かったために治療を中止されており、かつ、スクリーニングにおいて上昇した血清LDHレベル(>1.5 x ULN)を示した(ULN:正常値の上限)。
【0125】
患者6名のうち1名(患者X)はPNH患者であり、補体阻害因子による治療の候補であった。患者Xは、3回の単回漸増IV用量を受けた;第1日における375 mgの305LO15の単回注入、続いて、第8日における500 mgの305LO15の単回注入、およびさらに続いて、第22日における1000 mgの305LO15の単回注入。1回目のSC投与(170 mg)は第36日に開始され、続いて、総治療期間5ヶ月にわたって続けられる、毎週(QW)の305LO15のSC注射(170 mg)が行われた。
【0126】
患者Xからの薬力学の予備的結果は、表2および
図10に示されている。溶血の薬力学的マーカーとしてのLDHレベルは、第15日までに正常範囲の限度内のレベルに低下し、第36日までにさらに低下して、第43日には正常化レベルで維持されていた(表2および
図10a)。表2および
図10bに示すとおり、リポソーム免疫測定法(LIA)の結果によって、試験開始日である第1日の注入終了時には補体活性が完全に阻害されたことが示された。第1日における375 mg 305LO15である用量は、第8日における500 mg 305LO15である次回用量まで、完全な補体阻害を維持した。第8日における500 mg 305LO15である用量は、第22日における1000 mg 305LO15である次回用量まで、完全な補体阻害を維持した。第22日における1000 mg 305LO15である用量は、第36日における170 mg 305LO15である次回SC用量まで、完全な補体阻害を維持した。第36日におけるSC用量は、第43日に、完全な補体阻害を維持していた。
【0127】
305LO15は十分な忍容性を有し、治療とは無関係の軽い腹痛のみを伴った。
【0128】
【表2】
【0129】
[実施例9]
試験BP39144の第3パート(非盲検、複数用量、多施設共同試験)により、総期間5ヶ月にわたる安全性および忍容性、ならびに、エクリズマブで現在治療されているPNH患者における補体活性に対する305LO15の複数回用量の薬力学的効果を評価した。この試験では、18名のPNH患者が治験参加予定である。治験参加した患者は、治験参加直前の少なくとも3ヶ月間にわたってエクリズマブで継続的に治療されており、該患者は、エクリズマブの規則的な注入を受ける必要があった。
【0130】
患者18名のうち1名(患者Y)は、エクリズマブで治療されたPNH患者であり、エクリズマブが最後に投与されたのは305LO15の1回目のIV注入の14日前であった。患者Yは、単回のIV負荷用量を受けた;第1日における1000 mgの305LO15の単回注入。1回目のSC投与(680 mg)は第8日に与えられ、続いて、総治療期間5ヶ月にわたって続けられる、4週間毎(Q4W)の305LO15のSC注射(680 mg)が行われた。
【0131】
患者Yからの薬力学の予備的結果は、表3に示されている。溶血の薬力学的マーカーとしてのLDHレベルは、1回目の用量から第43日まで、ベースラインレベルであり続けた(表3)。表3に示すとおり、リポソーム免疫測定法(LIA)の結果によって、試験開始日である第1日の注入終了時には補体活性が完全に阻害されたことが示された。第1日における1000 mg 305LO15である用量は、第8日における680 mg 305LO15であるSC用量まで、完全な補体阻害を維持した。第8日におけるSC用量は、第43日に、完全な補体阻害を維持していた。
【0132】
【表3】
【0133】
[実施例10]
PMH患者における用量レジメンの知見
エクリズマブで治療されたPNH患者における、非盲検、複数用量、国際多施設共同試験である(「実施例9」も参照されたい)。エクリズマブで治療されたおよそ18名の成人男女PNH患者が治験参加した。第3パートの目的は、患者の治療負担が小さい、最適なSC用量レジメンを決定することである。それぞれ試験された投薬レジメンは、投薬期間全体を通した、終末補体経路の活性化を阻害する305LO15曝露を達成することを目的とする。目標曝露量は、入手可能な第2パートからのPK、PD、および有効性データに基づいて定義された。第3パートの患者全員に関して、該患者のエクリズマブの最終用量から2週間後以内に305LO15投薬を開始した。IV負荷用量の後に、反復SC維持投薬を行った。
【0134】
第3パートの際、さらなる安全性向上のために、元のSC投薬レジメンの一部を変更した。305LO15の3種類の異なるSC投薬レジメン(毎週[QW]、隔週[Q2W]、または毎月[Q1M] 投薬を含む)を評価する(
図11を参照されたい)。アームAに割り当てられた患者は、第1段階において170 mg QWのSC 投薬を8回受ける。第2段階における1回目の投与である9番目のSC用量(試験第64日)により、アームAの患者は680 mg Q4Wの維持レジメンを開始する。IV負荷用量は、例えば患者の1回目のSC用量のおよそ24時間前に投与される。第3パートにおいて、患者は最長5ヵ月にわたって治療を受ける。患者が、急性疾患、外傷、または外科手術などの急性事象に起因し得るブレイクスルー溶血などの自身の基礎疾患の徴候および症状を呈する場合、305LO15の追加の1または複数のIV用量を投与してもよい。ブレイクスルー溶血の根本原因を評価するために、このIV用量に先だって臨時でバイオマーカーPD試料を得るものとする。
【0135】
アームAの患者Z1およびZ2からの薬力学の予備的結果は、表4に示されている。溶血の薬力学的マーカーとしてのLDHレベルは、1回目の用量から第106日までベースラインレベルであり続けた(表4)。表4に示すとおり、リポソーム免疫測定法(LIA)の結果によって、試験開始日である第1日の注入終了時には補体活性が完全に阻害されたことが示された。第1日における1000 mg 305LO15である用量は、第8日における170 mg 305LO15である1回目SC用量まで、完全な補体阻害を維持した。9番目のSC用量(試験第64日)以降、患者は、680 mg Q4Wの維持レジメンを受けた。SC用量(第64日〜第106日)の間、患者Z2における完全な補体阻害(LIA [U/mL] < 10)が維持されている。患者Z1における補体阻害は、SC用量(第64日〜第106日)の間、完全にまたは有意に阻害されている。アームAのレジメンは十分な忍容性を有し、治療とは無関係の軽い有害事象(患者Z1における肩の感覚異常、患者Z2における感冒)のみを伴っている。
【0136】
【表4】
【0137】
[実施例11]
PMH患者における非盲検継続投与OLE
第3パートに参加して305LO15による治療の恩恵を受けた患者のOLEである。治験参加した患者の数は、「実施例10」の第3パート試験に治験参加した数を超えていない。第3パート試験から移行する患者は、最初は、第3パートで受けていたのと同じSC用量レジメンのままとする。第3パート試験から明らかになる安全性、PK、およびPDデータに応じて、OLEに治験参加した患者のSC投薬レジメンをしかるべく適合化させる。治療期間は、OLEへの登録から最長2年間までである。