特許第6672688号(P6672688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6672688樹脂組成物並びにこれよりなるフィルム及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672688
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】樹脂組成物並びにこれよりなるフィルム及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 31/04 20060101AFI20200316BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 25/14 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 57/00 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 65/04 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 45/02 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20200316BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20200316BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20200316BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200316BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   C08L31/04 S
   C08L101/12
   C08L33/12
   C08L25/14
   C08L45/00
   C08L29/04 B
   C08L57/00
   C08L93/04
   C08L65/04
   C08L45/02
   C08L65/00
   C08L23/00
   C08L23/06
   C08L23/12
   C08J5/18CER
   C08J5/18CEZ
   B32B7/027
   B32B27/00 B
   C03C27/12 F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-199574(P2015-199574)
(22)【出願日】2015年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-71697(P2017-71697A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】逸見 隆史
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−036018(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/073971(WO,A1)
【文献】 特開2013−124310(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0247987(US,A1)
【文献】 特開昭57−195759(JP,A)
【文献】 特開2001−226604(JP,A)
【文献】 特開2009−275133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C03C
C08J
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移点が0℃以下である熱可塑性樹脂(A)としてエチレン・酢酸ビニル共重合体、ガラス転移点が40℃以上である熱可塑性樹脂としてポリ(メタ)アクリル酸メチル、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、環状オレフィンコポリマー、ポリビニルアルコールおよびエチレン・ビニルアルコール共重合体からなる群の少なくとも一種の熱可塑性樹脂(B)並びに脂環構造を有する水添テルペン系オリゴマーまたは脂環構造および芳香族環状構造を有する水添石油樹脂オリゴマーの少なくともいずれかのオリゴマー(C)((A)、(B)及び(C)の合計は100重量)を含む樹脂組成物であって、25℃における熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の屈折率の差が0〜0.040であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(A)の割合が20〜99.8重量、熱可塑性樹脂(B)の割合が0.1〜50重量、オリゴマー(C)の割合が0.1〜30重量であり、(A)、(B)及び(C)の合計で100重量になることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含むことを特徴とするフィルム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の樹脂組成物が、一対の透明ガラス板および/または透明樹脂板で挟持されてなることを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用環境の温度に応じて光線の透過性が可逆的に変化する、温度感応性調光性能を有した樹脂組成物並びにこれよりなるフィルム及び積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、環境温度の変化に伴って透明性が変化する、温度感応性調光性能を持った材料が、主に農業や建築の分野で求められており、その利用が試みられている。
【0003】
すなわち、農業用ハウスや透明窓を有する建物においては、夏季には直射日光で必要以上に内部の温度が上昇するのを防止するために直達光を低減させる機能と、冬季には直射日光で内部の温度を上昇させるために直達光を増加させる機能という、相反する機能を兼ね備えた材料が必要とされている。
【0004】
例えば、炭素数14以上の直鎖α−オレフィン重合体と、他のα−オレフィン重合体またはメタクリル酸エステル重合体とから構成され、温度変化に伴って光線透過率が可逆的に変化する樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、樹脂と粒子を配合することにより、環境の温度変化に伴って光線拡散率が可逆的に変化する樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
さらに、25℃においては光散乱が少なく透明であり、50℃では高い光散乱性を示す調光性シートとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体と架橋アクリル粒子からなる組成物より成形されるシートが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
さらに、2つの互いに混和性でない成分からなり、2つの成分は屈折率の温度依存性が異なることを特徴とする成形材料が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0008】
いずれの例においても、互いに非相溶で屈折率の温度依存性が異なる2成分を混合した組成物であり、温度を変えると、各々両成分間の屈折率差が変化するために光線透過性が変化するという原理は同じである。したがって、調光性能を発現させる温度を微調整したい場合には、2成分間の屈折率差を微調整する必要がある。
【0009】
一定の温度においては、屈折率は各物質に固有の値であり、2成分間の屈折率の差は材料の選択によって決まる。2成分間の屈折率差を微調整するには、いずれか一方の材料もしくは両方の材料の屈折率を変更しなくてはならず、そのためには非常に煩雑な作業が必要になるという問題があった。例えば、これらの材料が単一モノマーの重合体の場合、屈折率を変更することは難しく、別の材料への変更が必要となるが、適切な屈折率を有する材料を見出すのは容易ではない。これらの材料が共重合体の場合は、共重合体を構成するモノマーの比率を変更することで屈折率を調節できる可能性があるが、モノマー比率の異なる新たな共重合体を設計し製造しなくてはならず、そのためには多大な労力が必要となることが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2706701号公報
【特許文献2】特開2001−226604号公報
【特許文献3】特開2009−275133号公報
【特許文献4】特開2000−95957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、2つの成分の屈折率差の調節がたやすく、調光性能が発現する温度を容易に制御することができる、感温性調光性能を有した組成物並びにこれよりなるフィルム及び積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の物性を有する2種類の樹脂を混合する際に、さらに特定の樹脂オリゴマーを配合することで、2つの成分の屈折率差の調節がたやすく行え、調光性能が発現する温度を容易に制御することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、ガラス転移点が0℃以下である熱可塑性樹脂(A)、ガラス転移点が40℃以上である熱可塑性樹脂(B)並びに脂環構造および/または芳香族環状構造を有するオリゴマー(C)((A)、(B)及び(C)の合計は100重量%)を含む樹脂組成物であって、25℃における熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の屈折率の差が0〜0.040であることを特徴とする樹脂組成物に関するものである。
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂(A)は、ガラス転移点が0℃以下である。ガラス転移点が0℃より高いと、成形品として使用する場合の実用温度範囲(0〜40℃)において熱可塑性樹脂(A)の屈折率は温度による変化が小さくなり、本願の樹脂組成物の温度感応性が不十分となる。
【0016】
ガラス転移点が0℃以下の熱可塑性樹脂としては特に制約はないが、オレフィン系樹脂であることが透明性や成形加工性が良好であるため好ましい。前記のオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体およびポリプロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも一種類であることが透明性が良好であるために好ましく、さらに好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体もしくはエチレン・酢酸ビニル共重合体である。
【0017】
前記の低密度ポリエチレンは、公知の高圧ラジカル重合法により製造される。
【0018】
前記のエチレン・α−オレフィン共重合体は、チーグラー触媒、フィリップス触媒およびメタロセン触媒等を用いてエチレンとα−オレフィンを共重合して得られ、エチレンから導かれる繰り返し単位と炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位からなる。炭素数3〜8のα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等が挙げられる。これら炭素数3〜8のα−オレフィンの少なくとも2種類を併用してもよい。
【0019】
前記のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体などが挙げられる。
前記のポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体およびプロピレン−エチレンブロック共重合体などが挙げられる。
【0020】
熱可塑性樹脂(A)は、透明性を大きく損ねない範囲で、上記の樹脂を2種以上混合して使用することができる。
【0021】
熱可塑性樹脂(A)の樹脂の密度は特に制約はないが、本発明の樹脂組成物を用いた製品が比較的軽量となることから870kg/m以上970kg/m以下が好ましく、さらに好ましくは900kg/m以上970kg/m以下である。
【0022】
本発明の樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂(B)は、ガラス転移点が40℃以上であり、より好ましくは50℃以上である。ガラス転移点が40℃より低いと、成形品として使用する場合の実用温度範囲(0〜40℃)において熱可塑性樹脂(B)の屈折率は温度による変化が大きくなり、本願の樹脂組成物の温度感応性が不十分となる。
【0023】
ガラス転移点が40℃以上の熱可塑性樹脂としては特に制約はないが、ポリ(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、環状オレフィンコポリマー、ポリビニルアルコールおよびエチレン・ビニルアルコール共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の熱可塑性樹脂であることが、熱可塑性樹脂(A)と屈折率が近いことから好ましい。
【0024】
また、25℃における熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の屈折率の差は0〜0.040であり、好ましくは0.003〜0.035である。両者の屈折率の差が0.040よりも大きいと、組成物の光線透過性が変化する温度が大幅に低温側に移動し、成形品の実用温度範囲である0〜40℃において温度感応性が発現しない。
熱可塑性樹脂(B)の形態としては、熱可塑性樹脂(B)(非架橋のポリマー)を熱可塑性樹脂(A)と溶融混練して分散させてもよく、あらかじめ成形された熱可塑性樹脂(B)の架橋ビーズを熱可塑性樹脂(A)中に分散させて使用することもできる。とりわけ、非架橋ポリマーを溶融混練で分散させる方法が、熱可塑性樹脂(B)のドメイン径の分布幅が大きくなり、界面が増加することにより温度変化に対する光線透過性の変化が大きくなるため、好ましい。
本発明の樹脂組成物を構成する脂環構造および/または芳香族環状構造を有するオリゴマー(C)については特に制約はないが、石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、キシレン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂およびクマロンインデン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種類であることが好ましい。
【0025】
前記の脂環構造および/または芳香族環状構造を有するオリゴマー(C)については、水添処理を施したものであることが好ましい。水添処理を施すことにより構造中の不飽和結合が減少するため、臭気の減少、色相の改善、加熱安定性の向上などの効果が期待できる。
【0026】
また、前記の脂環構造および/または芳香族環状構造を有するオリゴマー(C)は、軟化点が100℃以上であることが好ましい。これらのオリゴマーは、一般的に軟化点より40〜50℃低いガラス転移点を有しており、軟化点が100℃以上であれば本発明の樹脂組成物の実用温度域(0〜40℃)よりも高いガラス転移点を有する。よって、実用温度域においてはオリゴマー(C)の性質は変化することがなく、安定した温度感応性を示すことが期待できる。さらに、成形品表面への移動が抑制されてべたつき等の問題が起こりにくくなるため好ましい。
【0027】
本発明者らは、脂環構造および/または芳香族環状構造を有するオリゴマー(C)を熱可塑性樹脂(A)に配合することにより、両者の混合物の屈折率がオリゴマー(C)の濃度に比例して変化することを見出した。
【0028】
従来の温度感応性組成物は、混合する2成分の屈折率の差で温度感応性が発現する温度が決まってしまうため、その微調整にはいずれか1成分もしくは両方の成分の材質を変更しなくてはならず、非常に煩雑な調節を必要とした。本発明では、脂環構造および/または芳香族環状構造を有するオリゴマー(C)を配合することで熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の屈折率差を細かく調整することが可能であり、温度感応性が発現する温度の制御を容易に行うことができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物中に含まれる熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)は、各々が相を形成し、熱可塑性樹脂(A)がマトリックス(海部分)、熱可塑性樹脂(B)がドメイン(島部分)となる、いわゆる「海島構造」を形成することが多い。
【0030】
この時の熱可塑性樹脂(B)のドメイン径は0.1μm〜15μm程度の分布を持つことが、界面が増大し温度変化に対する光線透過性の変化が大きくなるため好ましい。また、3μm以上のドメインの体積が占める割合を、熱可塑性樹脂(B)の総体積の50%以上とすることが好ましい。
【0031】
本発明の樹脂組成物を構成する各成分の配合比率については特に制約はないが、熱可塑性樹脂(A)の割合が20〜99.8重量%、熱可塑性樹脂(B)の割合が0.1〜50重量%、脂環構造および/または芳香族環状構造を有するオリゴマー(C)の割合が0.1〜30重量%であり、合計で100重量%になるように配合することが、温度感応性調光性能を発揮しやすくなることから好ましい。
【0032】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、安定剤、耐侯剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロック剤、防曇剤、防霧剤、保温剤、可塑剤など、樹脂に一般的に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0033】
本発明の樹脂組成物の構成例としては、熱可塑性樹脂(A)/熱可塑性樹脂(B)/オリゴマー(C)として(1)エチレン・酢酸ビニル共重合体/ポリメタクリル酸メチル/石油樹脂オリゴマー、(2)エチレン・酢酸ビニル共重合体/ポリメタクリル酸メチル/テルペン樹脂オリゴマー、(3)エチレン・酢酸ビニル共重合体/スチレン・メタクリル酸メチル共重合体/石油樹脂オリゴマー、(4)エチレン・酢酸ビニル共重合体/スチレン・メタクリル酸メチル共重合体/テルペン樹脂オリゴマー、(5)エチレン・酢酸ビニル共重合体/環状オレフィンコポリマー/石油樹脂オリゴマー、(6)エチレン・酢酸ビニル共重合体/環状オレフィンコポリマー/テルペン樹脂オリゴマー、(7)エチレン・酢酸ビニル共重合体/ポリビニルアルコール/石油樹脂オリゴマー、(8)エチレン・酢酸ビニル共重合体/ポリビニルアルコール/テルペン樹脂オリゴマー、(9)エチレン・酢酸ビニル共重合体/エチレン・ビニルアルコール共重合体/石油樹脂オリゴマー、(10)エチレン・酢酸ビニル共重合体/エチレン・ビニルアルコール共重合体/テルペン樹脂オリゴマー、(11)エチレン・α−オレフィン共重合体/ポリメタクリル酸メチル/石油樹脂オリゴマー、(12)エチレン・α−オレフィン共重合体/ポリメタクリル酸メチル/テルペン樹脂オリゴマー、(13)エチレン・α−オレフィン共重合体/スチレン・メタクリル酸メチル共重合体/石油樹脂オリゴマー、(14)エチレン・α−オレフィン共重合体/スチレン・メタクリル酸メチル共重合体/テルペン樹脂オリゴマー、(15)エチレン・α−オレフィン共重合体/環状オレフィンコポリマー/石油樹脂オリゴマー、(16)エチレン・α−オレフィン共重合体/環状オレフィンコポリマー/テルペン樹脂オリゴマー、(17)エチレン・α−オレフィン共重合体/ポリビニルアルコール/石油樹脂オリゴマー、(18)エチレン・α−オレフィン共重合体/ポリビニルアルコール/テルペン樹脂オリゴマー、(19)エチレン・α−オレフィン共重合体/エチレン・ビニルアルコール共重合体/石油樹脂オリゴマー、(20)エチレン・α−オレフィン共重合体/エチレン・ビニルアルコール共重合体/テルペン樹脂オリゴマー、などを例示することができる。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、樹脂の混合に通常使用される方法を用いることができ、例えば溶融・混合方法として、単軸押出機や二軸押出機を用いた押出混練、ロール混練など公知の方法を挙げることができ、該方法で溶融混練することにより得ることができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、成形して該樹脂組成物を少なくとも1層含むフィルムとして使用することができる。その形態については特に制約はなく、単層のフィルム、該樹脂組成物からなる層の片面もしくは両面に透明樹脂層を配した多層フィルムを例示することができる。
【0036】
前記の多層フィルムを構成する透明樹脂層に用いる透明樹脂については特に制約はないが、透明性と成形加工性が良好であることからオレフィン系重合体が好ましい。オレフィン系重合体としては、低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体およびポリプロピレンなどが例示できる。
【0037】
前記フィルムの厚みについては特に制約はないが、本発明の樹脂組成物からなる層の厚みは、10μm〜5mmであることが好ましく、さらに好ましくは30μm〜2mm、特に好ましくは50μm〜1mmである。なお、フィルムはその厚みによっては、シートと呼ばれることもある。
【0038】
前記フィルムの成形方法には特に制約はなく、公知のフィルム成形方法を使用することができる。成形方法としては、インフレーション成形法、共押出インフレーション成形法、Tダイ成形法、共押出Tダイ成形法、ドライラミネート成形法、押出ラミネート成形法、共押出ラミネート成形法、サンドラミネート成形法、カレンダー成形法、圧縮成形法などを例示できる。
【0039】
また、本発明の樹脂組成物は、一対の透明ガラス板および/または透明樹脂板で挟持した積層体として使用することができる。
【0040】
前記の透明ガラス板および透明樹脂板の材質については特に制約はなく、市販のガラス板、ポリカーボネート樹脂板、アクリル樹脂板などを使用することができる。
【0041】
また、前記積層体の形態としては特に制約はなく、透明ガラス板/樹脂組成物/透明ガラス板、透明樹脂板/樹脂組成物/透明樹脂板、透明ガラス板/樹脂組成物/透明樹脂板などの形態を例示することができる。また、樹脂組成物と透明ガラス板の間および樹脂組成物と透明樹脂板の間には、それ以外の透明樹脂層を設けることもできる。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、夏季と冬季で異なった光線透過性能を要求される農業用フィルムや住居用資材、および自動車用資材などとして好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の樹脂組成物は、環境の温度によって光線透過性が変化する温度感応性調光性能を有する材料であり、調光性能の微調整が容易に行えるため、顧客の要求に合わせた調光性能を持った製品を供給することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)物性評価方法
以下に、各物性の評価方法を示す。
(1−1)光線透過性
厚み1mmのプレス板を評価用試料とし、文字の印刷された紙を試料から7mm離れた位置に試料と平行に配置した。試料を通して紙の文字を目視し、その見え方で光線透過性を判定した。以下にその基準を示す。
【0045】
5:クリアに判読可能
4:判読可能だが、若干かすむ
3:判読可能
2:文字と認識できるが、判読不可
1:文字と認識できない
0:不透明
環境温度が5℃、25℃および45℃の状態で光線透過性の試験を行った。
(2)材料
実施例および比較例に用いた材料は、以下のとおりである。
(2−1)熱可塑性樹脂(A)
PO−1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(商品名)「ウルトラセン634」(東ソー(株)製) 酢酸ビニル含量26重量%、190℃で測定したメルトフローレート(以下、MFR)4.3g/10分、ガラス転移点約−30℃、25℃における屈折率1.489
PO−2:エチレン・酢酸ビニル共重合体(商品名)「ウルトラセン626」(東ソー(株)製) 酢酸ビニル含量15重量%、MFR3.0g/10分、ガラス転移点約−30℃、25℃における屈折率1.498
なお、屈折率はJIS K7142 A法に準拠し、1−ブロモナフタレンを接触液としてアッベ屈折計NAR−1T(アタゴ社製)を用いて、25℃、50%Rhの条件下で測定した。
【0046】
各々の材料の性状を、表1にまとめた。
【0047】
【表1】
【0048】
(2−2)熱可塑性樹脂(B)
RE−1:ポリメタクリル酸メチル樹脂(商品名)「パラペットG−1000」((株)クラレ製) ガラス転移点100℃、25℃における屈折率1.493
RE−2:ポリビニルアルコール(商品名)「ポバールCP−1000」((株)クラレ製) ガラス転移点55℃、25℃における屈折率1.501
RE−3:環状オレフィンコポリマー(商品名)「ARTON F4520」(JSR(株)製) ガラス転移点164℃、25℃における屈折率1.512
RE−4:環状オレフィンコポリマー(商品名)「TOPAS6013」(Polyplastics(株)製) ガラス転移点138℃、25℃における屈折率1.530
RE−5:エチレン・1−ヘキセン共重合体(商品名)「ニポロン−Z ZF220」(東ソー(株)製) 密度913kg/m、MFR2.0g/10分、ガラス転移点約−20℃、25℃における屈折率1.511
各々の材料の性状を、表2にまとめた。
【0049】
【表2】
【0050】
(2−3)脂環構造および/または芳香族環状構造を有するオリゴマー(C)
OL−1:水添テルペン系樹脂オリゴマー(商品名)「クリアロンP−105」(ヤスハラケミカル(株)製) 軟化点105℃
OL−2:水添石油樹脂オリゴマー(C5/C9)(商品名)「アイマーブP−100」(出光興産(株)製) 軟化点100℃
OL−3:水添石油樹脂オリゴマー(C5/C9)(商品名)「アイマーブP−125」(出光興産(株)製) 軟化点125℃
各々の材料の性状を、表3にまとめた。
【0051】
【表3】
【0052】
〔実施例1〕
PO−1 55重量%とRE−1 25重量%およびOL−1 20重量%を、200℃に保持したミキサー((株)東洋精機製作所製 ラボプラストミル30C−150にR−100ミキサーを接続)に投入し、回転数30rpmで10分間混練した。混練後の樹脂組成物を溶融したまま取り出した後に冷却し、これを180℃で厚み1mmにプレス成形した。
【0053】
この試料を、(1−1)に示した方法で光線透過性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0054】
〔実施例2〕
RE−1の代わりにRE−2を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試料の調製および評価を行った。結果を表4に示す。
【0055】
〔実施例3〕
PO−1の代わりにPO−2を使用し、RE−1の代わりにRE−3を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試料の調製および評価を行った。結果を表4に示す。
【0056】
〔実施例4〕
OL−1の代わりにOL−2を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試料の調製および評価を行った。結果を表4に示す。
【0057】
〔実施例5〕
OL−1の代わりにOL−3を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試料の調製および評価を行った。結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
〔比較例1〕
PO−1の配合比率を75重量%に変更し、OL−1を配合しなかった以外は、実施例1と同様の方法で試料の調製および評価を行った。結果を表5に示す。5℃での光線透過性が低いため、5℃と45℃の光線透過性の差が小さく、調光性能が不十分であった。
【0060】
〔比較例2〕
PO−1の配合比率を75重量%に変更し、OL−1を配合しなかった以外は、実施例2と同様の方法で試料の調製および評価を行った。結果を表5に示す。5℃での光線透過性が低いため、5℃と45℃の光線透過性の差が小さく、調光性能が不十分であった。
【0061】
〔比較例3〕
PO−2の配合比率を75重量%に変更し、OL−1を配合しなかった以外は、実施例3と同様の方法で試料の調製および評価を行った。結果を表5に示す。5℃での光線透過性が低いため、5℃と45℃の光線透過性の差が小さく、調光性能が不十分であった。
【0062】
〔比較例4〕
RE−1の代わりにRE−4を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試料の調製および評価を行った。結果を表5に示す。PO−1とRE−4の25℃での屈折率差が0.041と大きいことから、5℃での光線透過性が非常に低いため、5℃と45℃の光線透過性の差がなく、調光性能が認められなかった。
【0063】
〔比較例5〕
RE−3の代わりにRE−5を使用した以外は、実施例3と同様の方法で試料の調製および評価を行った。結果を表5に示す。RE−5のガラス転移点が−20℃と低いことから、5℃と45℃の光線透過性の差がなく、調光性能が認められなかった。
【0064】
【表5】