特許第6672849号(P6672849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672849
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】新規ゼオライト
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20200316BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200316BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20200316BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   C01B39/48ZAB
   B01D53/94 223
   B01J29/70 A
   B01J29/76 A
【請求項の数】13
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-19663(P2016-19663)
(22)【出願日】2016年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-147801(P2016-147801A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2019年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-20805(P2015-20805)
(32)【優先日】2015年2月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】楢木 祐介
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−522688(JP,A)
【文献】 R. F. LOBO et al.,Synthesis and Rietveld Refinement of the Small-Pore Zeolite SSZ-16,Chem. Mater.,1996年,8,2409-2411.,DOI: 10.1021/cm960289c
【文献】 D. W. FICKEL et al.,The ammonia selective catalytic reduction activity of copper-exchanged small-pore zeolites,Applied Catalysis B: Environmental,2011年,102,441-448.,DOI: 10.1016/j.apcatb.2010.12.022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
B01D 53/94
B01J 29/70
B01J 29/76
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(004)面の格子面間隔dが4.84Å以上5.00Å以下であり、なおかつ、アルミナに対するシリカのモル比が13以上32以下であることを特徴とするAFX型ゼオライト。
【請求項2】
前記(004)面の格子面間隔dが4.925Å以上5.00Å以下である請求項1記載のAFX型ゼオライト。
【請求項3】
前記アルミナに対するシリカのモル比が15以上30以下である請求項1又は2のいずれかに記載のAFX型ゼオライト。
【請求項4】
下表の格子面間隔dを有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のAFX型ゼオライト。
【表1】
【請求項5】
双六角錐形状を有する一次粒子を含む請求項1乃至4のいずれか一項に記載のAFX型ゼオライト。
【請求項6】
一次粒子同士が化学結合により凝集した結晶粒子を含む請求項1乃至5のいずれか一項に記載のAFX型ゼオライト。
【請求項7】
周期表の8族、9族、10族及び11族からなる群の1種以上の遷移金属を含有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のAFX型ゼオライト。
【請求項8】
ケイ素源、アルミニウム源、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオン及びアルカリ金属を含み、シリカに対する水酸化物イオンのモル比が0.25未満又はアルミナに対するシリカのモル比が27以下の少なくともいずれかであり、なおかつ、シリカに対する1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオンのモル比が0.20未満である組成物を160℃以上で結晶化する結晶化工程、を有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載のAFX型ゼオライトの製造方法。
【請求項9】
前記組成物が1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムヒドロキシド、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムブロミド、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムクロリド及び1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムヨージドからなる群の少なくとも1種を含む請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記組成物が以下の組成を有する請求項8又は9のいずれかに記載の製造方法。
SiO/Al 10以上、100未満
OH/SiO 0.06以上、0.25未満
アルカリ金属/SiO 0.06以上、0.25未満
1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオン/SiO
0.02以上、0.20未満
O/SiO 5以上、60未満
【請求項11】
前記組成物が以下の組成を有する請求項8又は9のいずれかに記載の製造方法。
SiO/Al 10以上、25以下
OH/SiO 0.25以上、0.40未満
アルカリ金属/SiO 0.25以上、0.40未満
1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオン/SiO
0.02以上、0.20未満
O/SiO 5以上、60未満
【請求項12】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のAFX型ゼオライトを含む触媒。
【請求項13】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のAFX型ゼオライトを使用する窒素酸化物の還元除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な結晶構造を有するAFX型ゼオライトに関する。更には、本発明はAFX構造を有する高耐熱性のゼオライト及びこれを含む触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
AFX型ゼオライトは酸素8員環を有する小細孔ゼオライトである。これはMTO(メタノールのオレフィン転化)反応で高活性を示す触媒として使用されている。近年、AFX型ゼオライトは、窒素酸化物を還元して無害化する選択的接触還元(Selective catalytic reduction;以下、「SCR」とする。)に用いられる触媒(以下、「SCR触媒」とする。)に適したゼオライトとして期待されている。
【0003】
ところで、ゼオライトは予測設計が困難であり、原料や合成条件から、得られるゼオライトの構造や物性を予測することはできない。そのため、目的のゼオライトを得るためには実際にゼオライトを合成する必要がある。AFX型ゼオライトの合成条件も予測ができず、これまで報告されたAFX型ゼオライトの製造方法に以下のものがある。
【0004】
例えば、特許文献1では、有機構造指向剤(以下、「SDA」とする。)としてキヌクリジン誘導体を使用して得られたAFX型ゼオライトが、SSZ−16として開示されている。
【0005】
特許文献1とは異なるSDA及び原料を用いて得られたSSZ−16が複数の発明者により開示されている(特許文献2及び3、非特許文献1乃至4)。
【0006】
非特許文献1では、SiO/Alが9のSSZ−16が開示されている。開示されたSSZ−16は欠陥が多い結晶であり、なおかつ、良好な粒子形状ではなかった。また、非特許文献2では、SiO/Alが9のSSZ−16を銅でイオン交換して得られた銅イオン交換体を用いたSCR反応が検討されている。当該SSZ−16は、良好な初期活性を有すること、及び、比較的熱負荷の小さい温度下、すなわち750℃の水熱雰囲気下、での処理に対して高い耐久性を有することが開示されている。
【0007】
特許文献3、並びに、非特許文献3及び4では、SiO/Alの高いSSZ−16が開示されている。
【0008】
非特許文献3には、SiO/Alが33.4のSSZ−16が開示されている。その一方、SiO/Alが33.4以外ではAFX型ゼオライトが得られない旨が開示されている。また、非特許文献4には、Y型ゼオライトを原料とした場合に限り、AFX型ゼオライトが得られる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許4508837号
【特許文献2】米国特許5194235号
【特許文献3】国際公開2010/118377A2号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】The Journal of Physical Chemistry C 114 (2010) 1633−1640
【非特許文献2】Applied Catalysis B:Environmental 102 (2011) 441−448
【非特許文献3】ACS Catalysis 2 (2012) 2490−2495
【非特許文献4】Microporous and Mesoporous Materials 130 (2010) 255−265
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、新規な構造を有するAFX型ゼオライトを提供することを目的とする。また、800℃以上での水熱耐久処理に対する耐久性(以下、「高温水熱耐久性」ともいう。)が高いAFX型ゼオライトを提供することを別の目的とする。さらには、このような水熱耐久処理後に窒素酸化物還元特性の低下が少なく、当該処理後も低温から高温までの幅広い温度領域で高い窒素酸化物還元特性を有するAFX型ゼオライト及びその製造方法を提供することを目的とする。更には、遷移金属を含有し、800℃以上での水熱耐久処理後に窒素酸化物還元特性の低下が少なく、当該処理後も低温から高温までの幅広い温度領域で高い窒素酸化物還元特性を有するAFX型ゼオライトを提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、耐熱性に優れるAFX型ゼオライト、更には高温水熱耐久性に優れるAFX型ゼオライトについて検討した。その結果、特定の結晶構造を有するAFX型ゼオライトを見出した。さらに、この様なAFX型ゼオライトが耐熱性に優れること、特に800℃以上の熱水雰囲気下に晒されても劣化が抑制されることを見出した。更に、AFX型ゼオライトは、遷移金属を含有する場合に高温度の熱水雰囲気下に晒されても窒素酸化物還元特性の低下が少なく、なおかつ、低温から高温までの幅広い温度領域でも高い窒素酸化物還元特性を有することを見出した。これにより本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0014】
[1] (004)面の格子面間隔dが4.84Å以上5.00Å以下であり、なおかつ、アルミナに対するシリカのモル比が10以上32以下であることを特徴とするAFX型ゼオライト。
【0015】
[2] 前記(004)面の格子面間隔dが4.925Å以上5.00Å以下である上記[1]に記載のAFX型ゼオライト。
【0016】
[3] 前記アルミナに対するシリカのモル比が10以上30以下である上記[1]又は[2]に記載のAFX型ゼオライト。
【0017】
[4] 下表の格子面間隔dを有する上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のAFX型ゼオライト。
【0018】
【表1】
【0019】
[5] 双六角錐形状を有する一次粒子を含む上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のAFX型ゼオライト。
【0020】
[6] 一次粒子同士が化学結合により凝集した結晶粒子を含む上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のAFX型ゼオライト。
【0021】
[7] 周期表の8族、9族、10族及び11族からなる群の1種以上の遷移金属を含有する上記[1]乃至[6]のいずれかのAFX型ゼオライト。
【0022】
[8] ケイ素源、アルミニウム源、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオン及びアルカリ金属を含み、シリカに対する水酸化物イオンのモル比が0.25未満又はアルミナに対するシリカのモル比が27以下の少なくともいずれかであり、なおかつ、シリカに対する1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオンのモル比が0.20未満である組成物を160℃以上で結晶化する結晶化工程、を有する上記[1]乃至[7]のいずれかに記載のAFX型ゼオライトの製造方法。
【0023】
[9] 前記組成物が1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムヒドロキシド、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムブロミド、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムクロリド及び1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムヨージドからなる群の少なくとも1種を含む上記[8]に記載の製造方法。
【0024】
[10] 前記組成物が以下の組成を有する上記[8]又は[9]に記載の製造方法。
SiO/Al 10以上、100未満
OH/SiO 0.06以上、0.25未満
アルカリ金属/SiO 0.06以上、0.25未満
1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオン/SiO
0.02以上、0.20未満
O/SiO 5以上、60未満
【0025】
[11] 前記組成物が以下の組成を有する上記[8]又は[9]に記載の製造方法。
SiO/Al 10以上、25以下
OH/SiO 0.25以上、0.40未満
アルカリ金属/SiO 0.25以上、0.40未満
1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオン/SiO
0.02以上、0.20未満
O/SiO 5以上、60未満
【0026】
[12] 上記[1]乃至[7]のいずれかに記載のAFX型ゼオライトを含む触媒。
【0027】
[13] 上記[1]乃至[7]のいずれかに記載のAFX型ゼオライトを使用する窒素酸化物の還元除去方法。
【0028】
以下、本発明のAFX型ゼオライトについて説明する。
【0029】
本発明はAFX型ゼオライトに係る。AFX型ゼオライトとは、AFX構造を有するゼオライトであり、特にAFX構造を有するアルミノシリケートである。
【0030】
アルミノシリケートは、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰返しからなる構造(以下、「ネットワーク構造」とする。)、及び、ネットワーク構造の末端や欠陥などの端部(以下、「骨格端部」とする。)にシラノール基(Si−OH)を、その骨格に含む。
【0031】
AFX構造とは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association;以下、「IZA」とする。)のStructure Commissionが定めているIUPAC構造コードで、AFX型となる構造である。
【0032】
本発明のAFX型ゼオライトは、(004)面の格子面間隔d(以下、「d(004)」ともいう。)が4.84Å以上である。d(004)は、AFX型ゼオライトの結晶の単位格子のc軸の長さ(以下、「c軸長」とする。)を示す指標となる。例えば、特許文献1等で開示されたSSZ−16はd(004)が4.83Åであり、当該SSZ−16のc軸長が本発明のAFX型ゼオライトのc軸長よりも短いことを意味する。従来のSSZ−16と比べてd(004)が大きいことで、本発明のAFX型ゼオライトは水熱雰囲気下に晒された後の劣化に対する耐久性(以下、「水熱耐久性」ともいう。)が高くなると考えられる。本発明のAFX型ゼオライトのd(004)の下限値として4.84Å、更には4.88Å、また更には4.90Å、また更には4.925Åを挙げることができる。このようなd(004)であることで、高温水熱耐久性が高くなる。一方、d(004)の上限値として5.00Å、更には4.99Å、また更には4.98Å、また更には4.97Åを挙げることができる。特に好ましいd(004)の範囲として4.90Å以上4.98Å以下、更には4.92Å以上4.98Å以下、また更には4.925Å以上4.98Å以下を挙げることができる。
【0033】
AFX型ゼオライトはSDAを含有することで結晶格子が大きくなり、c軸長が長くなる。これにより、SDAを含有するAFX型ゼオライトは、SDAを含有しないAFX型ゼオライトと比べてd(004)が大きくなる傾向がある。これに対し、本発明のAFX型ゼオライトは、SDAを含有する状態及びSDAを含有しない状態のいずれの状態であっても、d(004)が4.84Å以上であり、更には、SDAを含有しない状態で上記のd(004)が4.84Å以上であり、上記の範囲のd(004)を有することが好ましい。SDAを含有しない状態として、例えば、4級アンモニウムカチオン含有量が0.1重量%以下、更には4級アンモニウムカチオン含有量が検出限界以下であることが挙げられる。
【0034】
(004)はc軸長を反映する格子面間隔であり、これは粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)測定により求めることができる。XRD測定条件として、以下の条件を挙げることができる。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件: 毎秒0.01°
発散スリット: 1.00deg
散乱スリット: 1.00deg
受光スリット: 0.30mm
計測時間 : 1.00秒
測定範囲 : 2θ=3.0°〜43.0°
【0035】
焼成によりSDAを除去したSSZ−16のd(004)は4.83Åであることが特許文献1に開示されている。本発明のAFX型ゼオライト及びSSZ−16はいずれもAFX構造を有するゼオライトであるため、両者は類似したXRDパターンを有する。そのため、本発明のAFX型ゼオライトは、d(004)以外のピークはSSZ−16と同様な格子面間隔dに相当するピークを有するXRDパターンであってもよい。しかしながら、本発明のAFX型ゼオライトのXRDパターンは、少なくともd(004)が4.84Å以上、更にはd(004)が4.96±0.035Åである点で、SSZ−16のXRDパターンと異なる。
【0036】
本発明のAFX型ゼオライトは、下表の格子面間隔dを有することが好ましい。
【0037】
【表2】
【0038】
このような結晶構造を有することで本発明のAFX型ゼオライトがより耐熱性及び高温水熱耐性に優れたものとなる。上記表において、d(004)に相当する格子面間隔d=4.96±0.035は、d=4.96±0.03であること、更にはd=4.96±0.02であることがより好ましい。
【0039】
本発明のAFX型ゼオライトは、下表の格子面間隔d、及びXRDピーク強度比を有することが好ましい。当該ピーク強度比を示すことにより、耐熱性が向上する。
【0040】
【表3】
【0041】
ここで、上表のXRDピーク強度比と、実際のXRDパターンにおけるI/I×100で示されるXRDピークの数値との関係は下表に示す通りである。上記表3において、d(004)に相当する格子面間隔d=4.96±0.035は、d=4.96±0.03であること、更にはd=4.96±0.02であることがより好ましい。ここで、IおよびIは以下のとおりである。
【0042】
I :各格子面間隔dにおけるXRDピーク強度
:XRDパターンにおいて最大のXRDピーク強度を有するXRDピーク強度
【0043】
【表4】
【0044】
AFX型ゼオライトのアルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al」ともいう。)が高い程耐熱性が向上し、かつ、疎水性となる。本発明のAFX型ゼオライトのSiO/Alは10以上であることで、特に高温熱水耐久性が高くなる。SiO/Alは11以上、更には12以上、また更には13以上、また更には15以上、また更には16以上、また更には19以上であることが好ましい。固体酸量が多くなり、触媒活性が向上し、親水性となるため、SiO/Alは32以下であり、31以下、更には30以下、また更には28以下、また更には27以下であることが好ましい。
【0045】
本発明のAFX型ゼオライトは上記のd(004)及びSiO/Alを兼備することで、水熱耐久性、特に高温水熱耐久性が高くなり、触媒や触媒担体などに特に適したAFX型ゼオライトとなる。高い窒素酸化物還元率を示す触媒となるため、SiO/Alは12以上32以下であることが好ましく、12以上30以下であることが特に好ましい。SiO/Alが32以下であれば優れた触媒特性を有し、なおかつ、工業的に利用しやすいAFX型ゼオライトとなる。例えば、SiO/Alが32超44.5以下のAFX型ゼオライトなど、SiO/Alが32を超えるAFX型ゼオライトも触媒や吸着剤として使用することができる。しかしながら、SiO/Alが高いゼオライトはイオン交換容量が小さいため、例えば、窒素酸化物還元触媒として使用する場合、AFX型ゼオライトのSiO/Alを32超とする必要はない。
【0046】
本発明のAFX型ゼオライトは双六角錐形状を有する一次粒子を含む。更に、本発明のAFX型ゼオライトの一次粒子は双六角錐形状であることが好ましい。形状が双六角錐形状である一次粒子は、結晶面が良好に成長したAFX型ゼオライトの結晶粒子である。一次粒子が双六角錐形状であることで、本発明のAFX型ゼオライトの結晶面が良好に成長していることが確認できる。このような結晶粒子により結晶の欠陥が少なくなり、耐熱性や高温水熱耐久性が向上する。
【0047】
ここで、本発明における一次粒子とは、単結晶が集合して形成された多結晶体の粒子である。本発明のAFX型ゼオライトは、一次粒子が走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう。)観察において観察される最小単位の粒子である。
【0048】
本発明のAFX型ゼオライトは、一次粒子が独立した結晶粒子であってもよく、また、一次粒子が凝集して二次粒子を形成してもよい。二次粒子は、一次粒子同士が化学結合により凝集した結晶粒子(以下、「双晶粒子」ともいう。)である。本発明のAFX型ゼオライトは二次粒子(双晶粒子)を含んでいてもよく、また更には一次粒子及び二次粒子(双晶粒子)を含んでいてもよい。
【0049】
本発明のAFX型ゼオライトの一次粒子や二次粒子の形状はSEM観察によって確認できる。例えば、独立した一次粒子は、その形状が双六角錐形状を有する結晶からなる結晶粒子であることが明確に観察できる。図4に独立した一次粒子を含む本発明のAFX型ゼオライトの結晶粒子の形状の一例を示す。一次粒子が独立している場合、SEM観察において、結晶粒子の結晶面及び稜線が明確に観察できる。一方、図6に二次粒子を含む本発明のAFX型ゼオライトの結晶粒子の形状の一例を示す。SEM観察において、二次粒子は、結晶粒子の結晶面及び稜線が部分的に観察できる。
【0050】
これに対し、双六角錐形状を有さない一次粒子からなるAFX型ゼオライトの一例を図8に示す。図8より明らかなように、双六角錐形状を有さない一次粒子は、SEM観察において、結晶面及び稜線を観察することができず、略球状又は不定形状をしている。
【0051】
本発明のAFX型ゼオライトは、平均一次粒子径が0.5μm以上であることが好ましい。平均一次粒子径が0.5μm以上であることで、耐熱性が高くなりやすい。平均一次粒子径は0.8μm以上、更には1.0μm以上、また更には1.2μm以上であることで、耐熱性がより高くなりやすい。本発明のAFX型ゼオライトの平均一次粒子径は5μm以下であることが好ましい。平均一次粒子径が5.0μm以下であることで、当該ゼオライトをハニカム等へのコーティングする際の操作性が良好になる。より好ましい平均一次粒子径として、3.0μm以下が挙げられる。
【0052】
本発明における平均一次粒子径とは、一次粒子の平均粒子径である。従って、SEM観察において複数の一次粒子の凝集体として観察される粒子、いわゆる二次粒子(双晶粒子)の粒子径を平均して求まる平均二次粒子径、並びに、一次粒子や二次粒子が物理的な力で凝集した凝集粒子の凝集径を平均して求まる平均凝集子径と、本発明における平均粒子径は異なるものである。
【0053】
本発明において、平均一次粒子径は、SEM観察によって一次粒子を無作為に100個以上観察し、観察された一次粒子の水平フェレ径の平均値から求めることができる。
【0054】
本発明のAFX型ゼオライトはシラノール基(Si−OH)が少ないことが好ましい。シラノール基の含有量(以下、「シラノール量」とする。)が少ないことにより、AFX型ゼオライトが800℃以上での熱水雰囲気下に晒された後であっても高い結晶性や細孔構造を維持し、低温下における窒素酸化物還元特性、特に150℃以下の低温においても窒素酸化物還元特性等の触媒特性が高くなる。そのため、熱水雰囲気下に晒された前後における、物性及び特性の変化が小さくなりやすく、より寿命の長い触媒や吸着剤として利用できる。
【0055】
AFX型ゼオライトに含まれるシラノール基は骨格端部に含まれる。より具体的には、シラノール基はAFX型ゼオライト結晶の欠陥として、結晶内部に存在するシラノール基(以下、「内部シラノール」とする。)、及びゼオライト結晶の末端として、結晶の外表面に存在するシラノール基(以下、「表面シラノール」とする。)に分けられる。本発明のAFX型ゼオライトは、内部シラノール及び表面シラノールのいずれもが少ないことが好ましい。
【0056】
本発明のAFX型ゼオライトのケイ素に対するシラノール基のモル比(以下、「SiOH/Si」とする。)は0.5×10−2以下、更には0.4×10−2以下、また更には0.3×10−2以下であることが好ましい。
【0057】
AFX型ゼオライトのSiOH/Siは、AFX型ゼオライトのケイ素の含有量に対する1H MAS NMRスペクトルから求まるシラノール量、から求めることができる。
【0058】
AFX型ゼオライトのケイ素の含有量はICP法その他の組成分析により求めることができる。シラノール量の求め方として、例えば、脱水処理をしたAFX型ゼオライトを1H MAS NMR測定し、得られた1H MAS NMRスペクトルから検量線法により、シラノール量を算出することが挙げられる。
【0059】
より具体的なシラノール量の測定方法として、AFX型ゼオライトを真空排気下にて400℃で5時間保持して脱水処理し、脱水処理後のAFX型ゼオライトを窒素雰囲気下で採取し秤量し、1H MAS NMR測定をすることが挙げられる。当該測定により得られる1H MAS NMRスペクトルのシラノール基に帰属されるピーク(2.0±0.5ppmのピーク)の面積強度から、検量線法によりAFX型ゼオライト中のシラノール量を求めることが挙げられる。
【0060】
本発明のAFX型ゼオライトは、その細孔中に実質的にSDAを含まないことが好ましい。
【0061】
本発明のAFX型ゼオライトは水熱耐久性に優れ、特に高温水熱耐久性に優れている。そのため、本発明のAFX型ゼオライトは触媒又は吸着剤、並びに、これらの基材の少なくともいずれか、更には高温高湿下に晒される触媒又は吸着剤の少なくともいずれか、並びに、触媒基材又は吸着剤基材の少なくともいずれとして使用することができ、特に触媒又は触媒基材として使用することが好ましい。
【0062】
これらの用途で使用する場合、本発明のAFX型ゼオライトを任意の形状、大きさで使用すればよい。例えば、本発明のAFX型ゼオライトを粉砕し、粉砕した本発明のAFX型ゼオライトを触媒又は吸着剤、並びに、これらの基材の少なくともいずれかとして使用してもよい。
【0063】
触媒又は吸着剤としての使用において、本発明のAFX型ゼオライトは遷移金属を含有していてもよい。遷移金属を含むことでゼオライトと遷移金属の間に相互作用が生じ、炭化水素吸着等の吸着特性、窒素酸化物還元等の触媒特性が向上する。本発明のAFX型ゼオライトが含有する遷移金属は、周期表の8族、9族、10族及び11族からなる群の1種以上であることが好ましく、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びインジウム(In)からなる群の1種以上であることがより好ましく、鉄又は銅の少なくともいずれかであることが更により好ましく、実質的に、銅のみであることが好ましい。
【0064】
本発明のAFX型ゼオライトが遷移金属を含有する場合、XRDパターンがシフトする場合がある。遷移金属を含有する本発明のAFX型ゼオライト(以下、「本発明の金属含有AFX型ゼオライト」ともいう。)の格子面間隔dとして下表の格子面間隔dを挙げることができる。
【0065】
【表5】
【0066】
上記表において、d(004)に相当する格子面間隔d=4.96±0.035は、d=4.96±0.03であること、更にはd=4.96±0.02であることがより好ましい。
【0067】
本発明の金属含有AFX型ゼオライトは、アルミニウムに対する遷移金属の原子割合(以下、「Me/Al」とする。)が0.20以上、更には0.30以上であることが好ましい。Me/Alが大きくなることで炭化水素吸着等の吸着特性や、窒素酸化物還元等の触媒特性などの特性が高くなる傾向がある。一方、Me/Alが小さいほど遷移金属が分散して存在しやすくなる。触媒反応における反応物質と遷移金属が効率よく接触するため、Me/Alは0.50以下、更には0.47以下、また更には0.45以下であることが好ましい。例えば、窒素酸化物還元触媒とする場合、Me/Alは0.2以上0.5以下、更には0.23以上0.47以下であることが好ましい。
【0068】
本発明の金属含有AFX型ゼオライトは、遷移金属の含有量が1.0重量%以上、更には1.5重量%以上、また更には2.0重量%以上であることが好ましい。遷移金属の含有量が1.0重量%以上であることで、本発明の金属含有AFX型ゼオライトの特性が向上しやすい。一方、遷移金属の含有量が5.0重量%以下、更には4.0重量%以下、また更には3.5重量%以下であることが好ましい。遷移金属の含有量が5.0重量%以下であることで、余剰な遷移金属とゼオライト骨格のアルミニウムとの副反応が起こりにくくなる。遷移金属含有量は2重量%以上4重量%以下、更には2.6重量%以上3.5重量%以下であることが好ましい。
【0069】
ここで、遷移金属の含有量(重量%)は、本発明のAFX型ゼオライトの乾燥重量に対する遷移金属の重量である。当該遷移金属の重量は、例えば、誘導結合プラズマ発光分析法による組成分析などにより求めることができる。
【0070】
本発明のAFX型ゼオライトは、その細孔中に実質的にSDAを含まないことが好ましい。
【0071】
本発明の金属含有AFX型ゼオライト、特に遷移金属として鉄又は銅の少なくともいずれかを含む金属含有AFX型ゼオライトは、高い窒素酸化物還元特性を有し、かつ、耐熱性に優れる。そのため、特に水熱耐久処理後であっても窒素酸化物還元特性の低下が少ない。
【0072】
ここで、水熱耐久処理とは、高温下で、含水蒸気の空気にゼオライトを晒す処理である。水熱耐久処理は標準化又は規定化された条件がない。その一方で、処理温度を高くすること、又は、処理時間を長くすることのいずれかにより、水熱耐久処理によるゼオライトへの熱負荷が大きくなる。熱負荷が大きくなることでゼオライト骨格からのアルミニウムの脱離をはじめとする、ゼオライトの崩壊が起こりやすくなる。ゼオライトの崩壊により、水熱耐久処理後のゼオライトの窒素酸化物還元特性は低下する。
【0073】
本発明のおける水熱耐久処理として、以下の条件による処理を挙げることができる。
【0074】
処理温度 :900℃
雰囲気 :10体積%のHOを含む空気
空間速度(SV) :6,000hr−1
処理時間 :1時間〜5時間
【0075】
次に、本発明のAFX型ゼオライトの製造方法について説明する。
本発明のAFX型ゼオライトは、ケイ素源、アルミニウム源、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオン及びアルカリ金属を含み、シリカに対する水酸化物イオンのモル比が0.25未満又はアルミナに対するシリカのモル比が27以下の少なくともいずれかであり、なおかつ、シリカに対する1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオンのモル比が0.20未満である組成物を160℃以上で結晶化する結晶化工程、を有する製造方法により製造することができる。
【0076】
本発明の製造方法は、ケイ素源、アルミニウム源、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオン(以下、「DAdI」ともいう。)及びアルカリ金属源を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化する。
【0077】
ケイ素源は、シリカ(SiO)又はその前駆体となるケイ素化合物であり、例えば、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート、沈殿法シリカ、ヒュームドシリカ、ゼオライト及びアルミノシリケートゲルからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0078】
アルミニウム源は、アルミナ(Al)又はその前駆体となるアルミニウム化合物であり、例えば、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノシリケートゲル、ゼオライト及び金属アルミニウムからなる群の少なくとも1種を用いることができる。
【0079】
アルカリ金属(M)は、アルカリ金属の水酸化物又はアルカリ金属のハロゲン化物として原料組成物に含まれていればよく、特に塩基性を示すアルカリ金属の水酸物として原料組成物に含まれていればよい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウムからなる群の少なくとも1種、並びに、ケイ素源及びアルミニウム源の少なくともいずれかに含まれるアルカリ成分として原料組成物に含まれていることが挙げられる。
【0080】
DAdIはSDAとして機能する。DAdIは、その水酸化物又はハロゲン化物の少なくともいずれかの化合物として原料組成物に含まれていることが好ましい。具体的なDAdI含有化合物として、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムヒドロキシド(以下、「DAdIOH」とする。)、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムブロミド(以下、「DAdIBr」とする。)、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムクロリド(以下、「DAdICl」とする。)及び1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムヨージド(以下、「DAdII」とする。)からなる群の少なくとも1種であり、更にはDAdIBr、DAdICl及びDAdIIからなる群の少なくとも1種であり、更にはDAdIBrが挙げられる。
【0081】
原料組成物のシリカに対する1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムカチオンのモル比(以下、「DAdI/SiO」ともいう。)は0.20未満である。DAdI/SiOは0.20未満、更には0.15以下、また更には0.10以下、また更には0.06以下であることが好ましい。これにより原料組成物の結晶化に寄与しないSDAがより少なくなる。DAdI/SiOは、0.02以上、更には0.03以上、また更には0.04以上であることが好ましい。これによりAFX型以外の構造を有するゼオライトの生成がより抑制される。
【0082】
原料組成物の組成において、シリカに対する水のモル比(以下、「HO/SiO」とする。)は、5以上、60以下であることが好ましい。HO/SiOがこの範囲であれば、結晶化中に適度な攪拌が可能な粘度の混合物となる。またHO/SiOは60未満、更には45以下、また更には40以下であることが好ましい。これによりシリカに対する溶液中の水酸化物イオンのモル比(以下、「OH/SiO」とする。)が低くても結晶化が容易になる。
【0083】
原料組成物は、シリカに対する水酸化物イオンのモル比(以下、「OH/SiO」ともいう。)が0.25未満又はアルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al」ともいう。)が27以下の少なくともいずれかであり、さらに、OH/SiOが0.06以上0.25未満又はSiO/Alが10以上27以下の少なくともいずれかであることが好ましい。DAdIを含む組成物を原料とするゼオライトの結晶化挙動は水酸化物イオン濃度の影響を大きく受ける。
【0084】
組成物の水酸化物イオン濃度が低い場合、AFX型ゼオライトが結晶化しやすくなり、なおかつ、原料組成物と得られるAFX型ゼオライトとのSiO/Alの差が小さくなりやすい。OH/SiOが0.25未満の原料組成物(以下、「低アルカリ原料」ともいう。)は、AFX型ゼオライトの結晶化が促進されやすい。そのため、低アルカリ原料においては、原料組成物のSiO/Alが広い範囲でAFX型ゼオライトが結晶化しやすく、更には目的とするSiO/Alを有するAFX型ゼオライトが得られやすくなる。低アルカリ原料はOH/SiOが0.25未満であり、OH/SiOが0.06以上0.25未満であることが好ましい。
【0085】
一方、組成物の水酸化物イオン濃度が高い場合、結晶化速度が速くなるが、AFX型ゼオライト以外の構造のゼオライトが結晶化しやすくなる。OH/SiOが0.25以上の原料組成物(以下、「高アルカリ原料」ともいう。)では、特にAFX型ゼオライトの結晶化が進行しにくくなる。そのため、高アルカリ原料においては、原料組成物のSiO/Alが27を超えると、DAdIを含む組成物からAFX型ゼオライトを結晶化が特に進みにくくなる。仮に、SiO/Alが27を超える高アルカリ原料からAFX型ゼオライトが結晶化した場合であっても、結晶成長が十分にされないため、得られるAFX型ゼオライトは高温熱水耐久性が低くなりやすい。高アルカリ原料はOH/SiOが0.25以上であり、OH/SiOが0.25以上0.40未満、更には0.25以上0.35未満であることが好ましい。
【0086】
原料組成物のOH/SiOは、0.06以上、更には0.08以上、また更には0.10以上、また更には0.12以上、また更には0.14以上であることが好ましい。これにより原料の溶解が促進され、結晶成長が速くなる。
【0087】
低アルカリ原料は、SiO/Alが10以上、更には12以上、また更には14以上、また更には15以上であることが好ましい。これにより得られるAFX型ゼオライトの耐熱性がより向上する。一方、SiO/Alは100以下であることが好ましく、45以下、更には35以下、また更には32以下、また更には30以下であることが好ましい。これにより得られるAFX型ゼオライトの固体酸量が増加するため、化学吸着特性が向上し、また、より多くの金属イオンを交換できる。
【0088】
低アルカリ原料は、シリカに対する溶液中のアルカリ金属のモル比(以下、「M/SiO」とする。)が、0.06以上、更には0.08以上、また更には0.10以上、また更には0.12以上、また更には0.14以上であることが好ましい。これにより原料の溶解が促進され、結晶成長が速くなる。また、M/SiOは0.25未満、更には0.22以下、また更には0.20以下、また更には0.18以下であることが好ましい。これにより不純物の生成が抑制されるため、シリカの回収率が高くなる。
【0089】
低アルカリ原料は以下の組成を有することが好ましい。なお、以下の組成におけるMはアルカリ金属であり、各割合はモル(mol)割合である。
SiO/Al 10以上、100未満
OH/SiO 0.06以上、0.25未満
M/SiO 0.06以上、0.25未満
DAdI/SiO 0.02以上、0.20未満
O/SiO 5以上、60未満
【0090】
また、低アルカリ原料は以下の組成を有していることが更に好ましい。
SiO/Al 15以上、45以下
OH/SiO 0.08以上、0.22以下
M/SiO 0.08以上、0.22以下
DAdI/SiO 0.03以上、0.15以下
O/SiO 5以上、60未満
【0091】
また更には、低アルカリ原料は以下の組成を有していることがより好ましい。
SiO/Al 15以上、30以下
OH/SiO 0.10以上、0.20以下
M/SiO 0.10以上、0.20以下
DAdI/SiO 0.04以上、0.10以下
O/SiO 5以上、60未満
【0092】
高アルカリ原料は、SiO/Alが10以上、更には12以上、また更には14以上、また更には15以上であることが好ましい。これにより得られるAFX型ゼオライトの耐熱性がより向上する。また、SiO/Alは27以下であり、25以下、更には22以下であることが好ましい。これにより固体酸量が増加し、化学吸着特性が向上し、また、より多くの金属イオンを交換できる。
【0093】
高アルカリ原料は、M/SiOが0.40未満、更には0.35以下、また更には0.30以下であることが好ましい。これによりAFX型以外の構造のゼオライトの生成が抑制される。M/SiOは0.1以上、更には0.15以上であればよい。
【0094】
高アルカリ原料は以下の組成を有することが好ましい。
SiO/Al 10以上、25以下
OH/SiO 0.25以上、0.40未満
M/SiO 0.25以上、0.40未満
DAdI/SiO 0.02以上、0.20未満
O/SiO 5以上、60未満
【0095】
高アルカリ原料は以下の組成を有していることが更に好ましい。
SiO/Al 15以上、25以下
OH/SiO 0.25以上、0.35以下
M/SiO 0.25以上、0.35以下
DAdI/SiO 0.03以上、0.15以下
O/SiO 5以上、60未満
【0096】
結晶化工程は、160℃以上で行う。結晶化温度が160℃未満では、AFX型ゼオライトが得られないだけでなく、原料組成物が結晶化しない場合がある。より好ましい結晶化温度として、160℃以上、190℃以下、更には170℃以上、190℃以下が挙げられる。これにより高結晶性のAFX型ゼオライトが得られやすい。
【0097】
原料組成物の結晶化方法は適宜選択することができる。好ましい結晶化方法として、原料組成物を水熱処理することが挙げられる。水熱処理は、原料組成物を密閉耐圧容器に入れ、これを加熱すればよい。水熱処理条件として以下のものを挙げることができる。
【0098】
処理時間 :2時間以上、500時間以下
処理圧力 :自生圧
より好ましい水熱処理時間として、10時間以上240時間以下が挙げられる。
【0099】
水熱処理の間、原料組成物は静置された状態又は攪拌された状態のいずれでもよい。得られるAFX型ゼオライトの組成がより均一になるため、結晶化は原料組成物が攪拌された状態で行うことが好ましい。
【0100】
本発明の製造方法では、結晶化工程の後、洗浄工程、乾燥工程又はSDA除去工程のいずれかを含んでもよい。
【0101】
洗浄工程は、結晶化工程後の生成物からAFX型ゼオライトと液相とを固液分離する。洗浄工程は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるAFX型ゼオライトを純水で洗浄すればよい。具体的には、水熱処理を行った混合物をろ過、洗浄し、液相と固相に分離し、AFX型ゼオライトを得る方法が挙げられる。
【0102】
乾燥工程は、結晶化工程後又は洗浄工程後のAFX型ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の条件は任意であるが、結晶化工程後の混合物、又は洗浄工程後で得られたAFX型ゼオライトを、大気中、100℃以上、150℃以下の条件下で2時間以上処理することが例示できる。乾燥方法として、静置又はスプレードライヤーが例示できる。
【0103】
SDA除去工程では、例えばSDAの除去を焼成、又は分解により行うことができる。
【0104】
焼成は400℃以上、800℃以下の温度で行う。更には700℃以下の温度で行うことが好ましい。これにより脱アルミニウムの少ないAFX型ゼオライトが得られやすい。具体的な熱処理条件としては、大気中、600℃、1〜2時間を挙げることができる。
【0105】
本発明の製造方法では、必要に応じてアンモニウム処理工程を有していてもよい。
【0106】
アンモニウム処理工程は、AFX型ゼオライトに含有されるアルカリ金属を除去し、カチオンタイプをアンモニウム型(以下、「NH型」とする。)にするために行う。アンモニウム処理工程は、例えば、アンモニウムイオンを含有する水溶液をAFX型ゼオライトと接触させることで行う。
【0107】
NH型のAFX型ゼオライトである場合、再度熱処理を行なってもよい。当該熱処理により、カチオンタイプがプロトン型(以下、「H型」とする。)のAFX型ゼオライトとなる。より具体的な熱処理条件としては、大気中、500℃、1〜2時間を挙げることができる。
【0108】
本発明のAFX型ゼオライトに遷移金属を含有させる場合、本発明の製造方法は、AFX型ゼオライトに遷移金属を含有させる遷移金属含有工程を有していてもよい。
【0109】
遷移金属含有工程で使用する遷移金属としては、周期表の8族、9族、10族及び11族からなる群の1種以上の遷移金属を含む化合物であることが好ましく、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びインジウム(In)からなる群の1種以上を含む化合物であることがより好ましく、鉄又は銅の少なくともいずれかを含む化合物であることが更により好ましく、銅を含む化合物であることが好ましい。遷移金属を含む化合物として、これらの遷移金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、錯塩、酸化物及び複合酸化物からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0110】
AFX型ゼオライトに遷移金属を含有させる方法としては、AFX型ゼオライトと遷移金属化合物とを混合する方法(以下、「後含有法」とする。)、又は、原料組成物に少なくとも1種類以上の遷移金属化合物を加え、当該原料組成物を結晶化させる方法(以下、「前含有法」とする。)が挙げられる。
【0111】
後含有法として、例えば、イオン交換法、含浸担持法、蒸発乾固法、沈殿担持法、及び物理混合法からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0112】
前含有法として、遷移金属を含む原料組成物を結晶化する方法が挙げられる。前記遷移金属を含む原料組成物は、混合工程で遷移金属化合物を加えた原料組成物、又は、ケイ素源、アルミニウム源、アルカリ源及びDAdIのいずれかひとつ以上に、遷移金属を含有する化合物を用いた原料組成物を挙げることができる。
【0113】
本発明のAFX型ゼオライトは、遷移金属を含有させることにより、これを窒素酸化物還元触媒として、特にSCR触媒として使用することができる。さらには、排気ガス温度が高いディーゼル車用のSCR触媒として使用することができる。
【0114】
本発明のAFX型ゼオライトを含む窒素酸化物還元触媒は、窒素酸化物還元方法に使用することができる。
【発明の効果】
【0115】
本発明のAFX型ゼオライトは、耐熱性に優れることから、800℃以上での水熱耐久処理後に窒素酸化物還元特性の低下が少なく、当該処理後も低温から高温までの幅広い温度領域で高い窒素酸化物還元特性を有する。そのため、窒素酸化物還元触媒として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】実施例1のAFX型ゼオライトのXRDパターン
図2】実施例1のAFX型ゼオライトのSEM観察像
図3】実施例2のAFX型ゼオライトのSEM観察像
図4】実施例3のAFX型ゼオライトのSEM観察像
図5】参考例1のAFX型ゼオライトのSEM観察像
図6】実施例6のAFX型ゼオライトのSEM観察像
図7】実施例1及び比較例9で得られた焼成後のAFX型ゼオライトのXRDパターン(実線:実施例1、破線:比較例9)
図8】比較例9のAFX型ゼオライトのSEM観察像
【実施例】
【0117】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0118】
(粉末X線回折)
一般的なX線回折装置(装置名:MXP−3、マックサイエンス社製)を使用し、試料のXRD測定を行った。測定条件は以下のとおりである。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件: 毎秒0.01°
発散スリット: 1.00deg
散乱スリット: 1.00deg
受光スリット: 0.30mm
計測時間 : 1.00秒
測定範囲 : 2θ=3.0°〜43.0°
得られたXRDのパターンから、結晶化工程で得られる生成物の結晶相、格子面間隔d、及びXRDピーク強度比を確認した。
【0119】
(ケイ素、アルミニウム、及び銅の定量)
一般的な誘導結合プラズマ発光分析装置(装置名:OPTIMA3000DV、PERKIN ELMER製)を用いて、試料の組成分析を行った。試料をフッ酸と硝酸の混合溶液に溶解させ、測定溶液を調製した。得られた測定溶液を装置に投入して試料の組成を分析した。得られたケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、及び銅(Cu)のモル濃度から、SiO/Al、及びCu/Alを算出した。
【0120】
(窒素酸化物還元率のSCR触媒活性評価)
試料の窒素酸化物還元率は、以下に示すアンモニアSCR方法により測定した。
試料をプレス成形し、得られた成形体を12メッシュ〜20メッシュのふるいに通し、ふるいを通過した成形体を整粒物とした。得られた整粒物から1.5mL量りとり、これを反応管に充填した。その後、当該反応管を150℃、200℃、300℃、400℃及び500℃の各温度に加熱し、以下の組成からなる処理ガスを流通させた。
NO :200ppm
NH :200ppm
: 10容量%
O : 3容量%
残部 : N
処理ガスの流量は1.5L/min、及び空間速度(SV)は60,000hr−1として測定を行った。
【0121】
反応管に流通させた後の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)を求め、以下の式に従って、窒素酸化物還元率を求めた。
【0122】
窒素酸化物還元率(%)
={1−(反応管流通後の処理ガス中の窒素酸化物濃度
/反応管流通前の処理ガス中の窒素酸化物濃度)}×100
【0123】
(シラノール基の含有量の測定方法)
1H MAS NMRにより、AFX型ゼオライトのシラノール基の含有量を測定した。
測定に先立ち、試料を真空排気下にて400℃で5時間保持し脱水することで前処理とした。前処理後、室温まで冷却した試料を窒素雰囲気下で採取し秤量した。測定装置は一般的なNMR測定装置(装置名:VXR−300S、Varian製)を使用した。測定条件は以下のとおりとした。
共鳴周波数 :300.0MHz
パルス幅 :π/2
測定待ち時間 :10秒
積算回数 :32回
回転周波数 :4kHz
シフト基準 :TMS
得られた1H MAS NMRスペクトルからシラノール基に帰属されるピークを波形分離し、その面積強度を求めた。得られた面積強度から検量線法により試料中のシラノール量を求めた。
【0124】
(AFX型ゼオライトの合成)
実施例1
3号珪酸ソーダ(SiO;30%、NaO;9.1%、Al;0.01%)、98%硫酸、水及び硫酸アルミニウムの所定量を混合し、生成したゲルを固液分離し、純水により洗浄した。洗浄後のゲルに所定量の水、DAdIBr、及び48%NaOHを加えて十分に撹拌混合した。得られた混合物(原料組成物)の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 27.5
OH/SiO = 0.15
Na/SiO = 0.15
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0125】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。焼成後の生成物に対して20%塩化アンモニウム水溶液を用いてイオン交換を行った。XRD測定の結果、イオン交換後の生成物はAFX型ゼオライトであること、また、下表に示すように、本発明の格子面間隔d、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンを図1に示す。当該ゼオライトのSiO/Alは25.6であった。当該ゼオライトの一次粒子は双六角錐形状であることを確認した。SEM観察像を図2に示す。図2より、本実施例のAFX型ゼオライトは、独立した双六角錐形状の粒子と双晶粒子とを含むことが確認できる。また当該ゼオライトのSiOH/Siは0.28×10−2であった。d(004)から求められたc軸長は19.84Åであった。
【0126】
【表6】
【0127】
実施例2
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 23.7
OH/SiO = 0.15
Na/SiO = 0.15
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0128】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はAFX型ゼオライトであること、また、表3と同様の格子面間隔dでありd(004)が4.96であること、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンは図1と同様のパターンであった。当該ゼオライトのSiO/Alは23.2であった。当該ゼオライト粒子は双六角錐形状であることを確認した。SEM観察像を図3に示す。
【0129】
実施例3
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 19.8
OH/SiO = 0.15
Na/SiO = 0.15
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0130】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はAFX型ゼオライトであること、また、表3と同様の格子面間隔dでありd(004)が4.96であること、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンは図1と同様のパターンであった。当該ゼオライトのSiO/Alは19.7であった。当該ゼオライト粒子の結晶形態は、実施例1と同様の双六角錐形状であることを確認した。
【0131】
実施例4
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 19.8
OH/SiO = 0.25
Na/SiO = 0.25
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0132】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はAFX型ゼオライトであること、また、下表の格子面間隔d、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンは図1と同様のパターンであった。当該ゼオライトのSiO/Alは16.9であった。当該ゼオライト粒子は双六角錐形状であることを確認した。
【0133】
【表7】
【0134】
実施例5
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 15.8
OH/SiO = 0.20
Na/SiO = 0.20
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0135】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はAFX型ゼオライトであること、また、下表の格子面間隔d、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンは図1と同様のパターンであった。当該ゼオライトのSiO/Alは14.6であった。当該ゼオライト粒子は双六角錐形状であることを確認した。
【0136】
【表8】
【0137】
参考例1
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 43.4
OH/SiO = 0.12
Na/SiO = 0.12
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0138】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、
600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はAFX型ゼオライトであること、また、下表の格子面間隔d、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンは図1と同様のパターンであった。当該ゼオライトのSiO/Alは42.9であった。当該ゼオライト粒子は双六角錐形状であることを確認した。
【0139】
【表9】
【0140】
参考例2
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で反応混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 43.4
OH/SiO = 0.15
Na/SiO = 0.15
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0141】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はAFX型ゼオライトであること、また、表3と同様の格子面間隔dでありd(004)が4.96であること、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンは図1と同様のパターンであった。当該ゼオライトのSiO/Alは44.2であった。当該ゼオライト粒子は、実施例1と同様の双六角錐形状であることを確認した。
【0142】
実施例6
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 32.0
OH/SiO = 0.15
Na/SiO = 0.15
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0143】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はAFX型ゼオライトであること、また、表3と同様の格子面間隔dでありd(004)が4.96であること、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンは図1と同様のパターンであった。当該ゼオライトのSiO/Alは29.9であった。当該ゼオライト粒子は、実施例1と同様の双六角錐形状であることを確認した。
【0144】
実施例7
沈降法シリカ(商品名:Nipsil VN−3、東ソー・シリカ社製)に水、アルミン酸ソーダ(NaO;19.1%、Al;19.6%)、DAdIBr、48%NaOH及び種晶を加えて十分に撹拌混合した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 19.8
OH/SiO = 0.20
Na/SiO = 0.20
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0145】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はAFX型ゼオライトであること、また、表3と同様の格子面間隔dでありd(004)が4.93であること、及び表2と同様のXRDピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンは図1と同様のパターンであった。当該ゼオライトのSiO/Alは18.9であった。
【0146】
実施例8
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例7と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 32.0
OH/SiO = 0.15
Na/SiO = 0.15
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0147】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はAFX型ゼオライトであること、また、表3と同様の格子面間隔dでありd(004)が4.928であること、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンは図1と同様のパターンであった。当該ゼオライトのSiO/Alは30.6であった。
【0148】
実施例9
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 34.0
OH/SiO = 0.15
Na/SiO = 0.15
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0149】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はAFX型ゼオライトであること、また、表3と同様の格子面間隔dでありd(004)が4.96であること、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンは図1と同様のパターンであった。当該ゼオライトのSiO/Alは31.7であった。
【0150】
以下、非特許文献3及び非特許文献4に開示された方法に準じた処方により検討を行った。
【0151】
比較例1
沈降法シリカ(商品名:Nipsil VN−3、東ソー・シリカ株式会社製)に所定量の水、DAdIOH、48%NaOH及びY型ゼオライト(商品名:HSZ−320NAA、東ソー株式会社製)を加えて十分に撹拌混合した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 25.0
OH/SiO = 0.25
Na/SiO = 0.05
DAdIOH/SiO = 0.20
O/SiO = 30
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、150℃で192時間(8日)加熱して生成物を得た。
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。XRD測定の結果、乾燥後の生成物は、FAU型の結晶相と非晶質の相の両方を含んでいた。
【0152】
本比較例は、非特許文献4に開示された方法において、混合物のSiO/Alを変更した例であるが、AFX型ゼオライトは得られなかった。
【0153】
比較例2
沈降法シリカ(商品名:Nipsil VN−3、東ソー・シリカ株式会社製)に所定量の水、DAdIBr、48%NaOH及びY型ゼオライト(東ソー株式会社製HSZ−320NAA)を加えて十分に撹拌混合した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 35.0
OH/SiO = 0.25
Na/SiO = 0.25
DAdIBr/SiO = 0.10
O/SiO = 30
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、150℃で192時間(8日)加熱して生成物を得た。
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。XRD測定の結果、乾燥後の生成物は、非晶質であった。
【0154】
本比較例は、非特許文献3に開示された方法において、SDAとしてDAdIBrを用い、なおかつ、混合物のOH/SiO、及びDAdI/SiOを変更した例であるが、AFX型ゼオライトは得られなかった。
【0155】
比較例3
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は比較例2と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 25.0
OH/SiO = 0.15
Na/SiO = 0.15
DAdIBr/SiO = 0.10
O/SiO = 30
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、150℃で192時間(8日)加熱して生成物を得た。
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。XRD測定の結果、乾燥後の生成物は、FAU型の結晶相と非晶質の相の両方を含んでいた。
【0156】
本比較例は、非特許文献3に開示された方法において、SDAとしてDAdIBrを用い、なおかつ、混合物のSiO/Al、及びOH/SiOを変更した例であるが、AFX型ゼオライトは得られなかった。
【0157】
比較例4
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は比較例2と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 35.0
OH/SiO = 0.25
Na/SiO = 0.25
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。XRD測定の結果、乾燥後の生成物はFER型の結晶相のゼオライトであった。
【0158】
本比較例は、非特許文献4に開示された方法において、SDAとしてDAdIBrを用い、なおかつ、混合物のDAdI/SiO、及び結晶化温度を変更した例であるが、AFX型ゼオライトは得られなかった。
【0159】
比較例5
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 27.5
OH/SiO = 0.25
Na/SiO = 0.25
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、180℃で48時間加熱して生成物を得た。
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。XRD測定の結果、乾燥後の生成物は、FER型の結晶相と非晶質の相の両方を含んでいた。
【0160】
本比較例は、実施例1の方法において、OH/SiO、及びM/SiOを変更した例であり、更に、非特許文献4に開示された方法において、SDAとしてDAdIBrを用い、なおかつ、混合物のSiO/Al、結晶化温度、ケイ素源、及びアルミニウム源を変更した例でもあるが、AFX型ゼオライトは得られなかった。
【0161】
比較例6
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 27.5
OH/SiO = 0.20
Na/SiO = 0.20
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、150℃で192時間(8日)加熱して生成物を得た。
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。XRD測定の結果、乾燥後の生成物は非晶質であった。
【0162】
本比較例は、実施例1の方法において、OH/SiO、M/SiO、結晶化温度、及び結晶化時間を変更した例であり、更に、非特許文献4に開示された方法において、SDAとしてDAdIBrを用い、なおかつ、混合物のSiO/Al、OH/SiO、ケイ素源、及びアルミニウム源を変更した例であるが、AFX型ゼオライトは得られなかった。
【0163】
比較例7
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 43.4
OH/SiO = 0.15
Na/SiO = 0.15
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、150℃で93時間加熱して生成物を得た。
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。XRD測定の結果、乾燥後の生成物は非晶質であった。
【0164】
本比較例は、実施例1の方法において、SiO/Al、結晶化温度、及び結晶化時間を変更した例であるが、AFX型ゼオライトは得られなかった。
【0165】
比較例8
混合物が以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で混合物を調製した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 19.8
OH/SiO = 0.15
Na/SiO = 0.15
DAdIBr/SiO = 0.05
O/SiO = 40
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、150℃で93時間加熱して生成物を得た。
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。XRD測定の結果、乾燥後の生成物は非晶質であった。
【0166】
本比較例は、実施例1の方法において、SiO/Al、結晶化温度、及び結晶化時間を変更した例であるが、AFX型ゼオライトは得られなかった。
【0167】
比較例7、及び8は、非特許文献4に開示された方法において、SDAとしてDAdIBrを用い、なおかつ、混合物のSiO/Al、OH/SiO、結晶化時間、ケイ素源、及びアルミニウム源を変更した例であるが、AFX型ゼオライトは得られなかった。
【0168】
以上の結果を下表に示す。
【0169】
【表10】
【0170】
比較例9
非特許文献3に記載の方法でAFX型ゼオライトを合成した。すなわち、ヒュームドシリカ(商品名:aerosil 300、日本アエロジル株式会社製)に所定量の水、DAdIOH、48%NaOH及びY型ゼオライト(商品名:HSZ−320NAA、東ソー株式会社製)を加えて十分に撹拌混合した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 35.7
OH/SiO = 0.35
Na/SiO = 0.10
DAdIOH/SiO = 0.25
O/SiO = 30
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、150℃で288時間加熱して生成物を得た。
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はSiO/Alが32.6のAFX型ゼオライトであること、また、下表の格子面間隔d、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。
【0171】
実施例1で得た焼成後のAFX型ゼオライトとXRDパターンの比較を行った結果を図7に示す。004面に帰属される、XRD回折角2θ=18°付近のピークの位置のみが両者で異なっている。
当該ゼオライト粒子は不明瞭であった。結晶形態のSEM観察像を図8に示す。
【0172】
【表11】
【0173】
比較例10
非特許文献1を参照して、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]−オクタン−C4−ジクアットジブロミド(以下、「DC4Br」とする。)を合成した。すなわち、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]−オクタン(試薬特級)20.00gをメタノール(試薬特級)19.77gに溶解し、得られた溶液を溶液Aとした。次に、1,4−ジブロモブタン(試薬特級)12.83gをメタノール6.6gに加え、15分間攪拌して得られた溶液を溶液Bとした。氷冷下、撹拌しながら溶液Aに溶液Bを滴下し、滴下後、2時間攪拌することで白色沈殿を得た。白色沈殿にジエチルエーテル100mLを添加後、これを濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。洗浄後の白色沈殿を風乾した後、重量減少が無くなるまで50℃で真空乾燥してDC4Brを得た。
合成したDC4Brを40重量%となるように純水に溶解させ、40%DC4Br水溶液を調製した。
【0174】
3号珪酸ソーダに所定量の水、40%DC4Br、48%NaOH及びY型ゼオライト(商品名:HSZ−320NAA、東ソー株式会社製)を加えて十分に撹拌混合した。混合物の組成はモル比で以下のとおりであった。
SiO/Al = 29.7
OH/SiO = 0.80
Na/SiO = 0.80
DC4Br/SiO =0.096
O/SiO =28.4
得られた混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、140℃で48時間加熱して生成物を得た。
【0175】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。乾燥後の生成物を空気中、600℃で2時間焼成した。XRD測定の結果、焼成後の生成物はAFX型ゼオライトであるが、表2の格子面間隔dとは異なる格子面間隔dを有することを確認した。当該ゼオライトのSiO/Alは8であった。当該ゼオライト粒子は双六角錐形状ではなかった。
【0176】
(銅含有AFX型ゼオライトの合成)
実施例2−1
銅の含有は含浸担持法により行った。硝酸銅三水和物1.08gを純水3.1gに溶解して硝酸銅溶液を調製した。当該硝酸銅溶液を、実施例1で得られたNH型のAFX型ゼオライト9gに滴下し、乳鉢により5分間混合し、さらに110℃で一晩乾燥させた。乾燥後のゼオライトを、空気中、550℃で2時間焼成した。
焼成後のゼオライトは、銅が3.2重量%、及びCu/Alが0.43であった。
XRD測定の結果、焼成後のゼオライトは下表の格子面間隔d、及びXRDピーク強度比を有することを確認した。
【0177】
【表12】
【0178】
(004)は4.95Åであり、銅担持AFX型ゼオライトとした場合であっても、本発明のAFX型ゼオライトのc軸長と同程度のc軸長であることが確認できた。
【0179】
実施例2−2
20%塩化アンモニウム水溶液を用いて実施例3のAFX型ゼオライトをイオン交換してNH型のAFX型ゼオライトとした。当該NH型のAFX型ゼオライトを用いたこと以外は、実施例2−1と同じ方法で、銅の含有を行った。焼成後のゼオライトは、銅が3.0重量%、及びCu/Alが0.29であった。
【0180】
実施例2−3
20%塩化アンモニウム水溶液を用いて実施例5のAFX型ゼオライトをイオン交換してNH型のAFX型ゼオライトとした。当該NH型のAFX型ゼオライトを用いたこと以外は、実施例2−1と同じ方法で、銅の含有を行った。焼成後のゼオライトは、銅が3.0重量%、及びCu/Alが0.24であった。
【0181】
実施例2−4
20%塩化アンモニウム水溶液を用いて実施例6のAFX型ゼオライトをイオン交換してNH型のAFX型ゼオライトとした。当該NH型のAFX型ゼオライトを用いたこと以外は、実施例2−1と同じ方法で、銅の含有を行った。焼成後のゼオライトは、銅が2.9重量%、及びCu/Alが0.45であった。
【0182】
比較例2−1
20%塩化アンモニウム水溶液を用いて比較例10のAFX型ゼオライトをイオン交換してNH型のAFX型ゼオライトとした。当該NH型のAFX型ゼオライトを用いたこと以外は、実施例2−1と同じ方法で、銅の含有を行った。焼成後のゼオライトは、銅が3.0重量%、及びCu/Alが0.15であった。
【0183】
(水熱耐久処理及びSCR触媒活性評価)
測定例1(フレッシュ状態のSCR触媒活性)
実施例2−1乃至2−4で得られたゼオライトについて、水熱耐久処理を行わずにSCR触媒活性評価を行った。窒素酸化物還元率の評価結果を表13に示す。
【0184】
比較測定例1(フレッシュ状態のSCR触媒活性)
比較例2−1で得られたゼオライトについて、水熱耐久処理を行わずにSCR触媒活性評価を行った。得られた窒素酸化物還元率を表13に示す。
【0185】
【表13】
【0186】
測定例2(水熱耐久処理後のSCR触媒活性)
実施例2−1で得られたゼオライトについて次のように水熱耐久処理を行った。触媒評価用に成形体としたゼオライト3mLを常圧固定庄流通式反応管に充填し、10体積%のHOを含む空気を流通させながら、900℃で1時間の熱処理を行った。処理ガスの流量は0.3L/min、及び空間速度(SV)は6,000hr−1として処理を行った。水熱耐久処理後のゼオライトについてSCR触媒活性評価を行った。得られた窒素酸化物還元率を表14に示す。
【0187】
比較測定例2(水熱耐久処理後のSCR触媒活性)
比較例2−1で得られたゼオライトについて、測定例2と同様の条件で水熱耐久処理を行った。
水熱耐久処理後のゼオライトについてSCR触媒活性評価を行った。得られた窒素酸化物還元率を表14に示す。
【0188】
【表14】
【0189】
上表より、水熱耐久処理を施す前の150℃及び200℃における窒素酸化物還元率は、実施例2−1が67%及び87%であり、また、比較例2−1が61%及び88%と、いずれも高い値を示すことが確認できる。これに対し、1時間の水熱耐久処理後、実施例9の窒素酸化物還元率は、水熱耐久処理前と同程度の水準であった。一方、比較例2−1のゼオライトは900℃、1時間の水熱耐久処理で結晶構造が崩壊し、活性は大幅に低下することを確認した。
【0190】
測定例3(水熱耐久処理後のSCR触媒活性)
実施例2−1乃至2−4で得られたゼオライトについて、時間を4時間としたこと以外は測定例2と同様の条件で水熱耐久処理を行った。水熱耐久処理後のゼオライトについてSCR触媒活性評価を行った。得られた窒素酸化物還元率を下表に示す。
【0191】
【表15】
【0192】
表15より、本発明のAFX型ゼオライトが良好な窒素酸化物還元特性を示すことが確認された。すなわち、本発明のAFX型ゼオライトは極めて耐熱性が高いため、900℃、4時間の水熱耐久処理後もほとんど活性の低下がないこと、及び水熱耐久処理後においても広い温度領域でも高い窒素酸化物還元特性を有することが確認された。
【0193】
比較例3−1
20%塩化アンモニウム水溶液を用いて比較例9で得られたゼオライトをイオン交換し、NH型のAFX型ゼオライトとした。
【0194】
測定例4(耐熱水性評価)
水熱耐久処理前後の結晶性を比較することで、耐熱性の評価を行った。実施例1で得られたゼオライト及び比較例3−1で得られたゼオライトについて、時間を4時間としたこと以外は測定例2と同様の条件で水熱耐久処理を行った。水熱処理前後の試料についてXRD測定を行い、d(004)に相当するXRDピークのピーク面積を測定した。水熱耐久処理前の当該ピーク面積に対する水熱耐久処理後の当該ピーク面積の割合を求め、これをピーク面積残存率とした。結果を下表に示す。
【0195】
【表16】
【0196】
表16より、本発明のAFX型ゼオライトが高い高温水熱耐久性を有することが確認できた。特に、実施例1のゼオライトが比較例3−1のゼオライトよりも低いSiO/Alを有しているにもかかわらず、高い耐熱水性を示していることから、本発明のAFX型ゼオライトが特に優れた高温水熱耐性を有することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明のAFX型ゼオライトは、例えば排気ガス処理システムに組み込まれる吸着剤又は触媒として使用でき、特に還元剤の存在下で自動車、特にディーゼル車の排ガス中の窒素酸化物を還元除去するSCR触媒、更にはDPFと一体化されたSCR触媒として使用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8