(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
波長λnmの光に対する複屈折率Δn(λ)が、Δn(450)/Δn(550)≦1.05である光学補償フィルムを製造する方法である、請求項1〜3のいずれかに記載の光学補償フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
「液晶化合物」とは、液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称をいう。液晶相はネマティック相、スメクティック相、コレステリック相などであり、多くの場合ネマティック相を意味する。重合性は、光、熱、触媒などの手段により重合し、より大きな分子量を有する高分子へと変化する能力を有すること、または該能力を有する官能基を含むことを意味する。化合物(1)とは、式(1)で表わされる化合物を、意味する。他の式で表される化合物についても同様の簡略化法に従って称する。
「液晶性」の意味は、液晶相を有することだけに限定されない。それ自体は液晶相を持たなくても、他の液晶化合物と混合したときに、液晶組成物の成分として使用できる特性も、液晶性の意味に含まれる。
「芳香環」とは、環状に共約した分子の単位(縮合環や環集合(ring assemlies)を含む)であって、価電子の非局在化によって価電子の局在化を仮定したときよりも熱力学的に安定な状態となる環構造を意味する。また、該環構造は酸素、窒素、または硫黄原子を有するものも含まれる。
環を構成する炭素との結合位置が明確でない置換基は、その結合位置が化学的に問題のない範囲内で選択できることを意味する。
化合物が重合性基を1つ有する場合を、単官能性と呼ぶ。また、化合物が重合性基を複数有する場合は、多官能性、あるいは重合性基の数に対応した呼称で呼ぶ。
【0020】
化学式として、下記に示す内容の記載があった場合には、BからAへの直線は結合を意味しており、Aにおける水素が基Bで置き換えられていて、その位置は任意であることを意味している。Xは置き換えられる基Bの数を示している。Xが0の場合は、Bは存在せず、また、置き換えられていないことを示す。
【化5】
また、化学式として、下記Cに示すような基の記載があった場合には、波線部が基としての結合位置であることを意味するものとする。
【化6】
【0021】
<光学補償フィルムの製造方法>
本発明の一態様である光学補償フィルムの製造方法は、4つの工程からなる。第一の工程は、重合性液晶化合物、光重合開始剤、界面活性剤、および溶剤を含む重合性液晶組成物を支持基材上に塗布する塗布工程である。第二の工程は、溶剤を蒸発させるために塗布工程で得られた塗膜を温度T
Hに加熱する加熱工程である。第三の工程は、加熱工程を経た塗膜を室温T
Rに冷却する冷却工程である。および、第四の工程は、冷却工程を経た塗膜に光を照射し、含まれる重合性液晶化合物を重合させる重合工程である。
本発明は、前記冷却工程が、下記(i)および(ii)の少なくとも1つの条件を満たすことを特徴とする。
(i)前記塗膜が室温T
Rに冷却される前に、温度T
iで保持する期間を1回以上含み、かつ温度T
iで保持する期間がそれぞれ30秒以上である。すなわち、温度T
iで30秒以上保持する期間を、少なくとも1回含む。
ここで、温度T
iはT
H>T
i≧T
R+20℃を満たす。
(ii)前記塗膜が温度T
Hから室温T
Rに冷却されるまでの平均冷却速度が20℃/分以下である。
「本発明の製造方法」は、光学補償フィルムの製造方法をいう。
光学補償フィルムの製造プロセスにおける冷却過程を上記(i)や(ii)のようにコントロールし、冷却条件を制御することにより、従来の制御しない場合と比較し、構成分子の配向がより均一で良質な光学補償フィルムが得られることを見出したのである。この方法は、比較的簡便に適用できる方法であり、生産性を損なうことなく、良質な光学補償フィルムを製造することができる優れた方法であると言える。また、この方法は、優れた波長分散制御特性を有する光学補償フィルムの製造にも応用できる特長がある。
【0022】
(塗布工程)
塗布工程は、重合性液晶化合物、光重合開始剤、界面活性剤、および溶剤を含む重合性液晶組成物を支持基材上に塗布する工程をいう。塗布方法は、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、ダイコート法を含むがこれらに限定されない。塗布の際に溶液にせん断応力が加わるワイヤーバーコート法等を応用すると、ラビング等による基板の表面処理を行わずに、重合性液晶化合物の配向を制御できる。
ここで、重合性液晶化合物は、棒状の分子構造を有し、該分子構造における長軸の長さをL、短軸の長さをDとした場合のアスペクト比(L/D)が3以下である。
【0023】
(加熱工程)
加熱工程は、溶剤を蒸発させるために塗布工程で得られた塗膜を温度T
Hに加熱する工程である。加熱方法は、公知の方法や条件を適宜選択することができる。加熱方法は、ホ
ットプレート、乾燥炉、温風・熱風の吹き付け装置等を利用する方法を含むがこれらに限定されない。このときの、基板表面の温度、または装置の設定温度の温度を温度T
Hとする。
温度T
Hは、重合性液晶化合物や溶剤の種類等に応じて適宜選択することができる。温度T
Hは、重合性液晶化合物が均一に配向する温度であることが好ましい。
温度T
Hとしては、好ましくは45℃〜200℃、より好ましくは60℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜120℃である。加熱温度が低すぎる場合は、配向の均一性が確保しにくい。また、加熱温度が高すぎる場合は、生産性が低下する。
塗膜を加温開始してから塗膜を温度T
Hにするまでの時間を加熱時間とする。
加熱する時間は、通常5秒〜2時間、好ましくは10秒〜30分、より好ましくは20秒〜10分以下である。上記範囲内であると、構成分子の配向が均一な光学補償フィルムを効率良く製造し易くなる。加熱時間が短すぎる場合は、配向の均一性が確保しにくい。また、加熱時間が長すぎる場合は、生産性が低下する。
さらに、重合性液晶組成物を支持基材上に塗布し、溶剤を蒸発させることで得られた塗膜の液晶相から等方相への相転移温度を温度T
NIとすると、温度T
Hと温度T
NIはT
H>T
NIであることが好ましい。より好ましくはT
H≧T
NI+10℃、さらに好ましくはT
H≧T
NI+15℃である。ここで、上記範囲内であると、構成分子の配向が均一な光学補償フィルムをより製造し易くなる。
【0024】
(冷却工程)
冷却工程は、加熱工程を経た塗膜を室温T
Rに冷却する工程であり、下記(i)および(ii)の少なくとも1つの条件を満たすことを特徴とする。
(i)前記塗膜が室温T
Rに冷却される前に、温度T
iで保持する期間を1回以上含み、かつ温度T
iで保持する期間が30秒以上である。ここで、温度T
iはT
H>T
i≧T
R+20℃を満たす。
(ii)前記塗膜が温度T
Hから室温T
Rに冷却されるまでの平均冷却速度が20℃/分以下である。
ここで、室温T
Rは、20℃〜28℃を意味する。室温T
Rは、塗膜が形成されている支持基材の表面温度、または実験室内の温度を意味するものとする。
【0025】
冷却工程の第一の態様(i)としては、加熱工程により前記液晶組成物が等方相を示す温度以上まで塗膜を加熱し、次いでネマティック液晶相を示す温度範囲内の温度T
iで保持することで、塗膜中の液晶組成物にネマティック配向を概ね完成させ、次いでさらに室温T
Rまで温度を下げることによって、さらに秩序だった配向にする方法である。
ここで、「温度T
iで保持する」という表現の温度は、基板表面の温度、または塗膜を加熱するために用いられる装置の設定温度を意味するものとする。
また、「温度T
i」は、保持しているときの温度を意味し、複数回温度が保持される場合は、温度が高い順にT
1,T
2,T
3,…,T
jとする。
温度T
iは、T
H>T
i>T
R+20℃を満たすものであれば、具体的な温度は特に限定されないが、好ましくはT
H−10℃≧T
i≧T
R+20℃である。上記範囲内であると、構成分子の配向が均一な光学補償フィルムを効率良く製造し易くなる。
また、温度T
iの保持期間は、30秒〜30分が好ましく、より好ましくは30秒〜10分、さらに好ましくは1分〜10分である。上記範囲内であると、構成分子の配向が均一な光学補償フィルムを効率良く製造し易くなる。
さらに、重合性液晶組成物を支持基材上に塗布し、溶剤を蒸発させることで得られた塗膜の液晶相から等方相への相転移温度を温度T
NIに対して、温度T
iは、T
NI+5℃≧T
i≧45℃が好ましく、T
NI≧T
i≧45℃がより好ましい。また、T
NIはT
NI≧45℃となる重合性液晶組成物であることが好ましい。
【0026】
冷却工程の第二の態様(ii)としては、第一の態様と同様に、均一配向性を得るため
に、加熱工程により前記液晶組成物が等方相を示す温度T
NI以上まで塗膜を加温して、その後、室温T
Rまでゆっくりと温度を下げることによって、秩序だった配向にする方法である。
「塗膜が温度T
Hから室温T
Rに冷却されるまでの平均冷却速度」とは、下記式に示されるように、温度T
Hと室温T
Rの温度差を、塗膜が温度T
Hから室温T
Rに冷却されるまでの総期間で除した値を意味するものとする。
(平均冷却速度)=(温度T
H−室温T
R)/(冷却までの総期間[分])
塗膜が温度T
Hから室温T
Rに冷却されるまでの平均冷却速度は20℃/分以下であり、好ましくは15℃/分以下である。
冷却工程は、基板を空気中に保持して冷却するほかに、ゴムなどの熱伝導性が低い材質の土台等に静置させて行ってもよい。生産性を低下させないためには、加熱期間を2時間以内にすることが好ましい。
【0027】
(重合工程)
重合工程は、冷却工程を経た塗膜に光を照射し、含まれる重合性液晶化合物を重合させる重合工程である。この重合によって構成分子の配向が固定される。
重合工程における光を照射光の種類は特に限定されない。この光は、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)等を含む。具体的な波長は、150nmから500nmが望ましい。250nmから450nmがより望ましい。300nmから400nmがさらに望ましい。上記範囲内であると、重合開始剤の吸収波長に適応するため、より強固な光学補償フィルムを製造しやすくなる。
光源は、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等を含む。メタルハライドランプやキセノンランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプが好ましい。
塗膜に照射する光量は、2から5000mJ/cm
2が好ましい。10から3000mJ/cm
2がより好ましい。100から2000mJ/cm
2がさらに好ましい。光量が少なすぎる場合は、硬化性が不十分になりやすい。また、光量が多すぎる場合は、生産性が低下する。
重合工程は、不活性ガス(窒素、アルゴン等)、空気等のいずれの雰囲気下で行ってもよい。硬化性を向上させる観点から不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
このようにして本発明の光学補償フィルムが得られる。
【0028】
(重合性液晶化合物)
分子構造のアスペクト比の算出において、長軸の長さとは分子構造を最適化した場合の分子モデルの最長の長さを意味し、短軸の長さとは長軸に垂直な方向の最長の長さを意味する。
「アスペクト比」とは、長軸の長さLを短軸の長さDで割った値L/Dとする。
分子構造の最適化には分子計算の手法が用いられ、例えばB3LYP/6-31G(d)などが挙げられる。本発明では、GAMSS(M.W. Schmidt et al., J. Comput. Chem. 14, 1347 (1993).)を用い、B3LYP/6-31G(d)の手法にて分子構造を最適化した。
本発明の製造方法は、アスペクト比が3以下の重合性液晶化合物を用いる場合に好適であり、アスペクト比は通常1.2以上、好ましくは1.5以上である。
重合性液晶化合物は、少なくとも一つの重合性液晶化合物がネマティック相を示し、分子構造のアスペクト比が3以下である化合物であればよい。
なお、重合性液晶化合物は、1種類に限られず、2種類以上を組み合せて使用してもよい。なお、2種類以上の重合性液晶化合物を含む場合、少なくとも1種類が分子構造のアスペクト比が3以下の化合物であればよい。
【0029】
重合性液晶化合物としては、式(1−1)〜式(1−4)で表される化合物が挙げられ
る。
【化7】
式(1−1)〜式(1−4)中、
X
1、X
3およびX
4はそれぞれ独立して−O−または−S−であり;
X
2は−CH=または−N=であり;
W
1は、単結合または−C≡C−によって連結した芳香環(該芳香環中の水素がフッ素、塩素、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルキルエステル、炭素数1〜5のアルカノイル、または炭素数1〜5のチオアルキルに置換されているものも含む)であって、非局在化している電子数が6〜16である一価の基であり、
W
2は酸素、硫黄、または、炭素数5〜10の単環もしくは縮合環(ただし該単環または縮合環において、−CH=は−N=に置き換えられてもよく、−CH
2−は−O−、−NH−、−S−または−CO−に置き換えられてもよく、炭素または窒素上の水素が、フッ素、塩素、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルキルエステル、炭素数1〜5のアルカノイル、または炭素数1〜5のチオアルキルに置換されているものも含む)であり、
W
3はそれぞれ独立してシアノ、炭素数1〜10のアルコキシカルボニルまたは炭素数1〜10のアルカノイルであり、該アルコキシカルボニルおよびアルカノイルにおいて少なくとも一つの−CH
2−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、
W
4は−CH=CH−、−C≡C−、ヘテロ原子を含んでもよい芳香環またはそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、
R
1はそれぞれ独立して式(2−1)で表される基であり、
【化8】
式(2−1)中、A
1はそれぞれ独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロへキシレンであり、この1,4−フェニレンにおいて、少なくとも一つの水素はフッ素、シアノ、ホルミル、トリフルオロアセチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルコキシカルボニルまたは炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよく、Z
1はそれぞれ独立して単結合、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−OCH
2CH
2O−、−CH
2CH
2COO−、−OCOCH
2CH
2−、−CH
2CH
2OCO−または−COOCH
2CH
2−であり、mはそれぞれ独立して1または2の整数であり、Y
1は単結合、−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−であり、Q
1は単結合または炭素数1〜20を有するアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも一つの−CH
2−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、PGは式(PG−1)〜式(PG−8)のい
ずれか1つで表される重合性の基である。
【化9】
式(PG−1)〜式(PG−8)中、R
3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルであり;
式(1−1)〜式(1−4)中、
R
2はそれぞれ独立して式(2−2)で表される基であり、
【化10】
式(2−2)中、A
2はそれぞれ独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロへキシレンであり、1,4−フェニレンにおいて、少なくとも一つの水素はフッ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルコキシカルボニルまたは炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよく、Z
2は単結合であり、nはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、R
4は水素、フッ素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルコキシまたは炭素数1〜20のアルコキシカルボニルである。
【0030】
式(1−1)〜式(1−4)で表される化合物としては、式(2−1)におけるZ
1は、それぞれ独立して−COO−、−OCO−、−CH
2CH
2COO−または−OCOCH
2CH
2−であり;PGは式(PG−1)で表される重合性の基である化合物が好ましい。
また、重合性液晶化合物としては、式(1−1)または式(1−3)で表される化合物を少なくとも一つ含むことがより好ましい。
重合性液晶化合物が、式(1−1)または式(1−3)を有する場合、液晶性が高く、波長分散特性を制御しやすい傾向にある。
【0031】
式(1−1)において、W
1は式(W
1−1)〜式(W
1−12)で表される基から選択されることが、さらに好ましい。W
1が式(W
1−1)〜式(W
1−12)で表される基である場合、波長分散特性の制御が容易であり、合成が容易となる。
【化11】
式(W
1−1)〜式(W
1−12)中、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルキルエステル、炭素数1〜5のアルカノイル、または炭素数1〜5のチオアルキルで置き換えられてもよい。
【0032】
式(1−2)において、W
2は酸素、硫黄、または式(W
2−1)〜式(W
2−12)で表される基から選択されることが、さらに好ましい。W
2が式(W
2−1)〜式(W
2−12)で表される基である場合、波長分散特性の制御が容易であり、合成が容易となる。
【化12】
式(W
2−1)〜式(W
2−12)中、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルキルエステル、炭素数1〜5のアルカノイル、または炭素数1〜5のチオアルキルで置き換えられてもよい。
【0033】
式(1−4)において、W
4は、式(W
4−1)〜式(W
4−3)で表される基から選択されることが、さらに好ましい。W
4が式(W
4−1)〜式(W
4−3)で表される基である場合、波長分散特性の制御が容易であり、合成が容易となる。
【化13】
【0034】
以下、式(1−1)で表される化合物の好ましい例を示す。
【化14】
【0037】
以下、式(1−2)で表される化合物の好ましい例を示す。
【化17】
【0039】
以下、式(1−3)で表される化合物の好ましい例を示す。
【化19】
【0040】
以下、式(1−4)で表される化合物の好ましい例を示す。
【化20】
【0041】
式(1−1−1)〜式(1−4−4)において、R
4は水素、フッ素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルコキシまたは炭素数1〜20のアルコキシカルボニルであり、R
5は水素、フッ素、塩素、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロ
メトキシ、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルキルエステル、炭素数1〜5のアルカノイル、または炭素数1〜5のチオアルキルであり、Y
1は単結合、−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−であり、Q
1は単結合または炭素数1〜20を有するアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも一つの−CH
2−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、PGは式(PG−1)〜式(PG−8)のいずれか1つで表される重合性の基である。
【0042】
【化21】
式(PG−1)〜式(PG−8)中、R
3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである。
【0043】
その他の重合性液晶化合物としては、下記式(M1)で表される化合物および(M2)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【化22】
式(M1)および(M2)中、A
Mはそれぞれ独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1−シクロヘキセン−1,4−イレン、2−シクロヘキセン−1,4−イレン、3−シクロヘキセン−1,4−イレン、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイルまたはフルオレン−2,7−ジイルであり、これらにおいて、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルコキシカルボニルまたは炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよく、Z
Mはそれぞれ独立して単結合、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−OCOO−、−CONH−、−NH
CO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH
2CH
2COO−、−OCOCH
2CH
2−、−CH=CH−、−N=CH−、−CH=N−、−N=CCH
3−、−CCH
3=N−、−N=N−、−C≡C−または−C≡C−C≡C−であり、X
Mは水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルコキシまたは炭素数1〜20のアルコキシカルボニルであり、qは1〜4の整数であり、
aは0〜20の整数であり、R
Mは水素またはメチルであり、Y
Mは単結合、−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−である。ここで、qが2以上である場合、このA
MおよびZ
Mはその繰り返し毎に異なっていてもよい。
【0045】
式(M1)中、A
Mはそれぞれ独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、またはナフタレン−2,6−ジイルであるが、A
Mのうち少なくとも一つは1,4−シクロへキシレンであり、該1,4−フェニレンまたは1,4−シクロへキシレンにおいて、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルコキシカルボニルまたは炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよく、Z
Mはそれぞれ独立して単結合、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2COO−または−OCOCH
2CH
2−であり、qは1または2の整数であり、X
Mは水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルコキシまたは炭素数1〜20のアルコキシカルボニルであり、aは0〜20の整数であり、R
Mは水素またはメチルであり、Y
Mは単結合、−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−である化合物が好ましい。
【0046】
その他の重合性液晶化合物としては、下記式(M3)で表される化合物が挙げられる。
【化23】
式(M3)中、A
Mはそれぞれ独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロへキシレンであり、これらにおいて、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルコキシカルボニルまたは炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよく、Z
Mはそれぞれ独立して単結合、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−OCOO−、−CONH−、−NHCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH
2CH
2COO−、−OCOCH
2CH
2−、−CH=CH−、−N=CH−、−CH=N−、−N=CCH
3−、−CCH
3=N−、−N=N−または−C≡C−であり、cおよびdはそれぞれ0〜3の整数であり、かつ1≦c+d≦4の関係であり、aは0〜20の整数であり、R
Mは水素またはメチルであり、Y
Mは単結合、−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−であり、Q
Mは単結合、−O−または−COO−である。ここで、c、dが2以上である場合、このA
MおよびZ
Mはその繰り返し毎に異なっていても
よい。
【0047】
式(M1)で表される化合物は単官能性重合性液晶化合物であり、液晶組成物の液晶温度範囲、光学特性および配向性を制御できる。式(M2)で表される化合物は2官能性重合性液晶化合物である。この重合体は三次元構造になる。故に、1つの重合性基を有する式(M1)で表される化合物よりも比較して硬い重合体となる。式(M3)で表される化合物は3官能性重合性液晶化合物である。この重合体はさらに強固なネットワークを形成することができる。故に、この重合体は、1つおよび2つの重合性基を有する化合物と比較してさらに硬い重合体になる。式(M1)〜(M2)においてA
Mのうち少なくとも一つに1,4−シクロへキシレンを有する化合物は、より低い波長分散特性を示すため、波長分散特性をより制御しやすい。今後、式(M1)、(M2)および(M3)で表される化合物や、これらから派生する化合物の総称として式(M)と称することがある。
【0048】
以下、式(M1)で表される化合物の好ましい例を示す。
【0051】
【化26】
式(M1−1)〜(M1−24)において、R
Mはそれぞれ独立して水素またはメチルであり、aはそれぞれ独立して1〜12の整数である。
【0052】
以下、式(M2)で表される化合物の好ましい例を示す。
【0055】
【化29】
式(M2−1)〜(M2−31)において、R
Mはそれぞれ独立して水素またはメチルであり、aはそれぞれ独立して1〜12の整数である。式中に2つ以上のaがあるとき、任意の2つのaは同一でもよく、異なっていてもよい。
【0056】
以下、式(M3)で表される化合物の好ましい例を示す。
【0058】
【化31】
式(M3−1)〜(M3−10)において、R
Mはそれぞれ独立して水素またはメチルであり、aはそれぞれ独立して1〜12の整数である。式中に2つ以上のaがあるとき、任意の2つのaは同一でもよく、異なっていてもよい。
【0059】
重合性液晶組成物における重合性液晶化合物の含有量は、5から95重量%である。10から70重量%が好ましい。15から60重量%がより好ましい。
重合性液晶化合物として、式(1−1)〜(1−4)で表される化合物を含む場合、屈折率異方性の波長分散制御が容易で、良好な塗布性を確保することができるため、重合性液晶化合物の総含有量に対し、式(1−1)〜(1−4)で表される化合物が10〜100重量%含むことが好ましい。50〜100重量%含むことがより好ましい。
【0060】
(重合開始剤)
重合性液晶組成物は光重合開始剤を含む。より具体的には光ラジカル重合開始剤を含む。
光ラジカル重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュアー1173)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュアー651)、イルガキュアー127、イルガキュアー500(イルガキュアー184とベンゾフェノンの混合物)、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379、イルガキュアー754、イルガキュアー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1700、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、イルガキュアー1870、ダロキュアー4265、ダロキュアーMBF、ダロキュアーTPO、イルガキュアー784、イルガキュアー754等が挙げられる。上記のダロキュアーおよびイルガキュアーはどちらもBASFジャパン(株)から販売されている商品の名称である。
【0061】
光ラジカル重合開始剤としては、オキシムエステルを有する光重合開始剤を用いてもよい。以下に、オキシムエステルを有する光重合開始剤を例示する。
具体的には、特開2011−132215号公報の段落0032〜0046記載の化合物No.1〜No.108、特表2004−534797号公報記載の化合物、国際公開公報WO2009/147031号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報記載の化合物、特開2006−251374号公報記載のオキシムエステル部位を有する化合物、特開2009−286976号公報記載のオキシムエステル部位を有する化合物、特開2009−29929号公報記載のオキシムエステル部位を有する化合物等が挙げられる。
【0062】
光ラジカル重合開始剤の中でも、NCI−930、N−1919(以上、(株)ADEKA製)、イルガキュアー907、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、イルガキュアー369、またはイルガキュアー379等が挙げられる。これらは、BASFジャパン株式会社製である。
【0063】
光ラジカル重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤も使用することができる。
光ラジカル重合開始剤は、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物が挙げられる。
【0064】
重合性液晶組成物における光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物全体の重量に対して0.1から20重量%が好ましい。0.5から10重量%がより好ましい。1から8重量%がさらに好ましい。
【0065】
また、これらの光重合開始剤は、増感剤を併用して使用してもよい。増感剤は、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチル−4ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアーEDB)、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアーEHA)などが挙げられる。
【0066】
光重合開始剤および増感剤はそれぞれ単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0067】
(界面活性剤)
重合性液晶組成物は界面活性剤を含む。界面活性剤により、配向の形態や均一性、塗布性およびリコート性などを調整することが出来る。
界面活性剤は、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられる。なお、界面活性剤は、1種類に限られず、2種類以上を組み合せて使用してもよい。また、重合性液晶化合物との相溶性や溶剤への溶解性の観点から、非イオン性界面活性剤を使用することがより好ましい。
【0068】
イオン性界面活性剤は、チタネート系化合物、イミダゾリン、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族または芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等の化合物が挙げられる。
【0069】
非イオン性界面活性剤の種類は、ビニル系、シリコーン系、フッ素系、または炭化水素系等が挙げられる。
【0070】
ビニル系の界面活性剤は、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルビニルエーテル、ポリブタジエン、ポリオレフィン、ポリビニルエーテル等
が挙げられる。たとえば、ポリフローNo.7、ポリフローNo.50EHF、ポリフローNo.54N、ポリフローNo.75、ポリフローNo.77、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95、ポリフローNo.99C、BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK−358N、BYK−361N、BYK−380N、BYK−381、BYK−392、BYK−399、BYK−Silclean3700、TEGOFlow300、TEGOFlow370、およびTEGOFlowZFS460、などが挙げられる。
【0071】
シリコーン系の界面活性剤は、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルシロキサン、特殊変性シロキサン、フッ素変性シロキサン、表面処理シロキサン等が挙げられる。例えば、ポリフローKL−400HF、ポリフローKL−401、ポリフローKL−402、ポリフローKL−403、ポリフローKL−404、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−342、BYK−344、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−370、BYK−371、BYK−375、BYK−377、BYK−378、BYK−3455、BYK−3500、BYK−3510、BYK−3530、BYK−3570、BYK−Silclean3720、およびTEGOFlow425、などが挙げられる。
【0072】
フッ素系の界面活性剤はフッ素系ポリマー等が挙げられる。例えば、BYK−340、フタージェント251、フタージェント212M、フタージェント215M、フタージェント250、フタージェント222F、フタージェント245F、フタージェント208G、フタージェント240G、フタージェント220P、フタージェント228P、フタージェントFTX−218、フタージェントDFX−18、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント730LM、メガファックF−251、メガファックF−410、メガファックF−430、メガファックF−444、メガファックF−477、メガファックF−551、メガファックF−553、メガファックF−554、メガファックF−556、メガファックF−557、メガファックF−558、メガファックF−559、メガファックF−562、メガファックF−563、メガファックF−565、メガファックF−570、メガファックR−40、メガファックR−41、メガファックR−43、またはメガファックR−94などが挙げられる。
【0073】
炭化水素系の界面活性剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、パラフィン、流動パラフィン、塩素化ポリプロピレン、塩素化パラフィン、塩素化流動パラフィン等が挙げられる。
【0074】
重合性液晶化合物を含む溶液における界面活性剤の含有量は、重合性液晶化合物全体の重量に対する重量比で、通常0.001から5.0重量%である。好ましくは0.003から4.0重量%であり、より好ましくは0.005から3.0重量%である。上記範囲内であると、屈折率異方性の波長分散制御が容易で、良好な塗布性を確保することができる。
【0075】
(溶剤)
溶剤は、重合性液晶化合物を溶解することができるものであれば、その種類は特に限定されないが、具体的にはエステル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤、脂環式炭
化水素系溶剤、ケトン系溶剤、およびアセテート系溶剤等が挙げられる。なお、溶剤は、1種類に限られず、2種類以上を組み合せて使用してもよい。
溶剤は、重合性液晶化合物の溶解性の観点から、アミド系溶剤、芳香族炭化水素系、ケトン系溶剤が好ましく、溶剤の沸点を考慮すると、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤の併用も好ましい。また、溶剤は、配向膜として光配向膜を適用する場合は、光配向膜への侵食をしないようにする、あるいは溶剤ダメージを低減するために加熱温度を低くする必要がある。このような場合に好ましく用いられる溶剤としては、芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、アセテート系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤である。
【0076】
エステル系溶剤としては、酢酸アルキル(例:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチルおよび酢酸イソペンチル)、酢酸シクロヘキシル、トリフルオロ酢酸エチル、プロピオン酸アルキル(例:プロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルおよびプロピオン酸ブチル)、酪酸アルキル(例:酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソブチルおよび酪酸プロピル)、マロン酸ジアルキル(例:マロン酸ジエチル)、グリコール酸アルキル(例:グリコール酸メチルおよびグリコール酸エチル)、乳酸アルキル(例:乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、乳酸n-プロピル、乳酸ブチルおよび乳酸エチルヘキシル)、ピルビン酸アルキル(例:ピルビン酸エチル)モノアセチン、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0077】
アミド系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、N−メチルカプロラクタムおよびジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。
【0078】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ブタノール、2−エチルブタノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、1−ドデカノール、エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、n−アミルアルコール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−3−メトキシブタノール、シクロヘキサノールおよびメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
【0079】
エーテル系溶剤としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ビス(2−プロピル)エーテル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサンおよびテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0080】
グリコールモノアルキルエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例:エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリ
コールモノアルキルエーテル(例:プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、トリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、およびジエチレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。
【0081】
芳香族炭化水素系溶剤としては、ベンゼン、トルエン、アニソール、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、テルペン誘導体(p−サイメン、1,4−シネオール、1,8−シネオール、D−リモネン、D−リモネンオキサイド、p−メンタン、α−ピネン、β−ピネン、γ−テルピネン、ターピノーレン)およびテトラリン等が挙げられる。
ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤としては、クロロベンゼンが挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、ヘキサンおよびヘプタンが挙げられる。
ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤としては、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンが挙げられる。
脂環式炭化水素系溶剤としては、シクロヘキサンおよびデカリンが挙げられる。
【0082】
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、およびメチルプロピルケトンが挙げられる。
【0083】
アセテート系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、および1−メトキシ−2−プロピルアセテートが挙げられる。
【0084】
重合性液晶組成物における溶剤の含有量は、通常5重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上であり、通常95重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。上記範囲の下限は、重合性液晶化合物の溶解性およびこの溶液を塗布する際のその最適粘度を考慮した数値である。そしてその上限は、溶剤コストおよび溶剤を蒸発させる際の時間や熱量といった経済的観点を考慮した数値である。
【0085】
重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物、光重合開始剤、界面活性剤および溶剤以外の化合物を含んでいてもよい。具体的には、非液晶性の重合性化合物、シランカップリング剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤)、および光学活性化合物等が挙げられる。以下、それぞれの添加剤について具体例を挙げて詳細に説明する。
【0086】
(非液晶性の重合性化合物)
重合性液晶組成物は、非液晶性の重合性化合物(重合性液晶化合物以外の重合性化合物)を含んでいてもよい。
非液晶性の重合性化合物としては、ビニル誘導体、スチレン誘導体、(メタ)アクリル
酸誘導体、オキシラン誘導体、オキセタン誘導体、ソルビン酸誘導体、フマル酸誘導体、イタコン酸誘導体などの化合物であって液晶性を有しないものが挙げられる。この液晶性を有しないその他の重合性化合物には、重合性基を1つ有する化合物、重合性基を2つ有する化合物および重合性基を3つ以上有する多官能化合物などがある。なお、重合性液晶化合物以外の重合性化合物は、1種類に限られず、2種類以上を組み合せて使用してもよい。
【0087】
重合性基を1つ有する化合物としては、例えば、スチレン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、脂肪酸ビニル(例:酢酸ビニル)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸(例:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸など)、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(アルキルの炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(ヒドロキシアルキルの炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル(アミノアルキルの炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸のエーテル酸素含有アルキルエステル(エーテル酸素含有アルキルの炭素数3〜18、例:メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、メトキシプロピルエステル、メチルカルビルエステル、エチルカルビルエステル、およびブチルカルビルエステル)、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、重合度1〜100のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステルまたはジ(メタ)アクリル酸エステル、若しくは末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0088】
重合性基を2つ有する化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート(ビスコート V#700)、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびこれらの化合物のメタクリレート化合物などが挙げられる。
【0089】
重合性基を3つ以上有する化合物としては、例えば、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールEO付加トリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペン
タエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスコート V#802(官能基数=8)、ビスコート V#1000(官能基数=平均14)などが挙げられる。「ビスコート」は大阪有機化学株式会社の商品名である。官能基が16以上のものはPerstorp Specialty Chemicalsが販売しているBoltorn H20(16官能)、Boltorn H30(32官能)、Boltorn H40(64官能)を原料にそれらをアクリル化することで得られる。
【0090】
その他の重合性液晶化合物以外の重合性化合物としては、さらに、カルド構造を有する重合性フルオレン誘導体が挙げられる。これらの化合物は、配向方向の制御や重合体の硬化度をさらに高めるのに適している。カルド構造を有する重合性フルオレン誘導体の例を式(α−1)〜(α−3)に示す。
【化32】
式(α−1)〜(α−3)において、R
αはそれぞれ独立して水素またはメチルであり、sはそれぞれ独立して0〜4の整数である。式中に2つ以上のsがあるとき、任意の2つのsは同一でもよく、異なっていてもよい。
【0091】
また、その他の重合性液晶化合物以外の重合性化合物としては、さらに、ビスフェノール構造を有する重合性化合物が挙げられる。これらの化合物は、被膜形成能や配向均一性の補助に適している。重合性ビスフェノール誘導体の例を式(N−1)〜(N−6)に示す。
【化33】
【0092】
重合性液晶組成物における非液晶性の重合性化合物の含有量は、液晶相を損なわない限り添加してもよい。好ましくは、重合性液晶化合物全体の重量に対する重量比で、0.01以上かつ0.50以下であり、より好ましくは、0.03以上かつ0.30以下である。
【0093】
(シランカップリング剤)
重合性液晶組成物は、例えば基材との密着性を制御する等のためにシランカップリング剤を含んでいてもよい。
シランカップリング剤としては、ビニルトリアルコキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−(1,3-ジメチルブチリデン)−3−(トリアルコキシシリル)−1−プロパンアミン、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−クロロトリアルコキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられる。また、これらの化合物において、アルコキシ(3つ)のうちの1つをメチルに置き換えられたジアルコキシメチルシランもシランカップリング剤として用いることが出来る。
【0094】
重合性液晶組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、重合性液晶化合物全体の重量に対する重量比で、通常0.01以上、好ましくは0.03以上であり、通常0.2以下、好ましくは0.1以下である。これらシランカップリング剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0095】
(連鎖移動剤)
重合性液晶組成物は、例えば重合体の重合反応率、密着性または機械特性を制御する等のために連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤を含むことにより、ポリマー鎖の長さまたはポリマーフィルムにおける2つの架橋ポリマー鎖の長さを制御することができる。これらの長さを同時に制御することもできる。連鎖移動剤の量を増大させると、重合反応率が低下し、ポリマー鎖の長さは減少する。好ましい、連鎖移動剤としては、チオール化合物およびスチレンダイマーである。これら連鎖移動剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0096】
チオール系連鎖移動剤としては、例えば、ドデカンチオール、2−エチルへキシル−(3−メルカプトプロピオネートなどの単官能性チオール化合物や、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(カレンズMT BD1)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMT PE1)、および1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(カレンズMT NR1)などの多官能チオール化合物などが挙げられる。「カレンズ」は昭和電工株式会社の商品名である。上記以外のチオール化合物としては、国際公報2013/080855号公報の段落0042〜0043に記載のチオール化合物や、国際公報2008/077261号公報のp.23の11行目〜p.24の27行目に記載の化合物が挙げられる。スチレンダイマーの例は、α―メチルスチレンダイマー(2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン)、1,1−ジフェニルエチレンである。また、キノエクスター QE−2014も利用できる。「キノエクスター」は川崎化成工業株式会社の商品名である。
【0097】
スチレンダイマー系連鎖移動剤としては、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンおよび2,4−ジフェニル−1−ブテンなどが挙げられる。
【0098】
(酸化防止剤)
重合性液晶組成物は、保存安定性や耐候性を向上させる等のために酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤を利用できる。これら酸化防止剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0099】
酸化防止剤としては、ADEKA社製のアデカスタブAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−80、住友化学(株)から販売されているスミライザーBHT、スミライザーBBM−S、およびスミライザーGA−80、並びにBASFジャパン(株)から販売されているIrganox1010、Irganox1035、Irganox1076、Irganox1098、Irganox1135、Irganox1330、Irganox1425、Irganox1520、Irganox1726、Irganox245、Irganox259、Irganox3114、Irganox3790、Irganox5057およびIrganox565などが挙げられる。
【0100】
(紫外線吸収剤)
重合性液晶組成物は、例えば耐候性を向上させる等のために紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、チヌビンPS、チヌビンP、チヌビン99−2、チヌビン109、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン328、チヌビン329、チヌビン384−2、チヌビン571、チヌビン900、チヌビン928、チヌビン1130、チヌビン400、チヌビン405、チヌビン460、チヌビン479、チヌビン5236、ホスタビンPR−25、ホスタビンB−CAP、ホスタビンVSU、
アデカスタブLA−32、アデカスタブLA−34、アデカスタブLA−36、アデカスタブLA−31、アデカスタブ1413、およびアデカスタブLA−51が挙げられる。「チヌビン」はBASFジャパン(株)の商品名であり、「ホスタビン」はクラリアントジャパン(株)の商品名であり、「アデカスタブ」はADEKAの商品名である。これら紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0101】
(光安定剤)
重合性液晶化合物を含む溶液は、例えば耐候性を向上させる等のために光安定剤(ラジカル捕捉剤)を含んでいてもよい。
光安定剤としては、チヌビン111FDL、チヌビン123、チヌビン144、チヌビン152、チヌビン292、チヌビン622、チヌビン770、チヌビン765、チヌビン780、チヌビン905、チヌビン5100、チヌビン5050、5060、チヌビン5151、キマソーブ119FL、キマソーブ944FL、キマソーブ944LD、アデカスタブLA−52、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87、サイテック社製のサイアソーブUV−3346、およびグッドリッチ社のグッドライトUV−3034が挙げられる。「キマソーブ」はBASFジャパン(株)の商品名である。これら光安定剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0102】
(光学活性化合物)
重合性液晶組成物は、キラルな化合物、即ち光学活性化合物を含んでいてもよい。光学活性化合物としては、式(Op−1)〜(Op−25)で表される化合物が挙げられる。
【化34】
【0104】
式(Op−1)〜(Op−25)において、Akは炭素数1〜15のアルキルまたは炭素数1〜15のアルコキシを、Me、EtおよびPhはそれぞれ、メチル、エチルおよびフェニルを表す。P
2は重合性の基であり、(メタ)アクリロイルオキシ、ビニルオキシ、オキシラニル、またはオキセタニルを含む基であることが好ましい。
光学活性化合物として、特開2011−148762号公報のp.70の段落0159〜p.81の段落0170記載のものがある。
【0105】
光学活性を有する化合物を含有した溶液、または光学活性を有する重合性化合物を含有した溶液を、配向処理した支持基材上に塗布して重合することによって、らせん構造(ツイスト構造)を示す位相差フィルムが得られる。重合性液晶化合物の重合によって、このらせん構造が固定される。得られる液晶フィルムの特性は、得られたらせん構造のらせんピッチに依存する。このらせんピッチ長は、光学活性化合物の種類および添加量により調整できる。添加する光学活性化合物は1つでもよいが、らせんピッチの温度依存性を相殺する目的で複数の光学活性化合物を用いてもよい。
【0106】
重合性液晶組成物としては本発明の製造方法により、良質な光学補償フィルムを製造するためには重合性液晶組成物を支持基材上に塗布し、溶剤を蒸発させることで得られた塗膜の液晶相から等方相への相転移温度を温度T
NIとした場合、120℃≧T
NI≧45℃であることが好ましい。T
NIが120℃より高い場合、室温下において結晶化や配向の均一性の低下が起こりやすい。また、T
NIが45℃未満の場合は、均一な配向を得ることが難しい。
【0107】
(支持基材)
重合性液晶組成物を塗布する支持基材は、特に限定されず、公知のものを適宜選択することができるが、材質としては、プラスチック、アルミニウム、鉄、銅等の金属、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラス等のガラス等が挙げられる。
【0108】
プラスチックとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース、トリアセチルセルロースおよびその部分鹸化物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびシクロオレフィン系樹脂などが挙げられる。
【0109】
シクロオレフィン系樹脂としてノルボルネン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中で、不飽和結合を有さないか、または不飽和結合が水素添加されたものが好適に用いられる。例えば、1種または2種以上のノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体の水素添加物、1種または2種以上のノルボルネン系モノマーの付加(共)重合体、ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマー(エチレン、α−オレフィン等)との付加共重合体、ノルボルネン系モノマーとシクロオレフィン系モノマー(シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等)との付加共重合体、および、これらの変性物等が挙げられ、具体的には、ZEONEX、ZEONOR(共に商品名、日本ゼオン(株)製)、ARTON(商品名、JSR(株)製)、TOPAS(商品名、ティコナ社製)、APEL(商品名、三井化学(株)製)、エスシーナ(商品名、積水化学工業(株)製)、OPTOREZ(商品名、日立化成(株)製)が挙げられる。
【0110】
支持基材の形態は、通常シート状またはフィルム状である。
フィルム状の支持基材の場合、一軸延伸フィルムであってよく、二軸延伸フィルムであってもよい。
また、フィルムは、例えば、コロナ処理やプラズマ処理などの親水化処理、あるいは疎水化処理などの表面処理を施したものであってもよい。親水化処理の方法は特に制限はないが、コロナ処理あるいはプラズマ処理が好ましく、特に好ましい方法はプラズマ処理である。プラズマ処理は、特開2002−226616号公報、特開2002−121648号公報などに記載されている方法を用いてもよい。また、液晶フィルムとプラスチックフィルムとの密着性を改良するためにアンカーコート層を形成させてもよい。このようなアンカーコート層は液晶フィルムとプラスチックフィルムの密着性を高めるものであれば、無機系材料、有機系材料のいずれであっても何ら問題はない。また、プラスチックフィルムは積層フィルムであってもよい。
【0111】
支持基材には、ホモジニアス配向およびハイブリッド配向の光学補償フィルムを形成する場合には、重合性液晶組成物を塗布するに先立ち、ラビング等による物理的、機械的な表面処理を行ってもよい。ホメオトロピック配向の光学補償フィルムを形成する場合はラ
ビング等の表面処理を行わない場合が多いが、配向欠陥等を防止する点でラビング処理を行ってもよい。ラビング処理には任意の方法が採用できるが、通常はレーヨン、綿、ポリアミドなどの素材からなるラビング布を金属ロールなどに捲き付け、支持基材または重合体被膜に接した状態でロールを回転させながら移動させる方法、ロールを固定したまま支持基材側を移動させる方法などが採用される。ラビング処理は支持基材に直接施されていてもよく、または支持基材上に予め一般に配向膜と呼ばれるポリイミドなどの重合体被膜を設け、その重合体被膜にラビング処理を施してもよい。ラビング処理の方法は前述のとおりである。支持基材の種類によっては、その表面に酸化ケイ素を傾斜蒸着して配向能を付与することもできる。
【0112】
また、ホモジニアス配向およびハイブリッド配向の光学補償フィルムを形成する場合には、ラビング等による物理的、機械的な表面処理を行う以外に、支持基材上に予め一般に光配向膜と呼ばれるポリイミドやポリアクリレートなどの重合体被膜を設け、その重合体被膜に偏光UV処理を施してもよい。
【0113】
<光学補償フィルム>
本発明の製造方法は、構成分子の配向が均一な光学補償フィルムを製造することができる製造方法であるが、製造される光学補償フィルムの配向の種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
光学補償フィルムの構成分子の配向は、チルト角の大きさなどに基づいてホモジニアス(homogeneous;平行)、ホメオトロピック(homeotropic;垂直)、チルト(tilted;傾き)、ツイスト(twisted;ねじれ)等に分類される。チルト角とは、構成分子の配向と支持基材の間の角度である。ホモジニアスは、配向状態が基材に平行で、かつ一方向に並んでいる状態をいう。ホモジニアス配向のチルト角の例は0°〜5°である。ホメオトロピックは、配向状態が基材に垂直である状態をいう。ホメオトロピック配向におけるチルト角の例は85°〜90°である。チルトは、配向状態が基材から離れるにしたがって、平行から垂直に立ちあがっている状態をいう。チルト配向におけるチルト角(傾き角)の例は5°〜85°である。ツイストは、配向状態が基材に平行ではあるが、らせん軸を中心に階段状にねじれている状態をいう。ツイスト配向におけるチルト角の例は0°〜5°である。
【0114】
構成分子の配向は、例えばラビング処理等の配向処理がなされているプラスチック上やプラスチックの薄膜で表面が被覆された支持基材上に塗工して製膜する場合、ホモジニアス配向やハイブリッド配向の光学補償フィルムを製造することができる。また、前述した光学活性化合物を溶液に添加した場合、ツイスト配向の光学補償フィルムを製造することができる。さらに、前述したカルド構造を有する化合物、または単官能の液晶化合物を溶液に添加した場合、ホメオトロピック配向の光学補償フィルムを製造することができる。また、チルト角は、例えば重合性液晶化合物、溶剤、溶液に添加される化合物の種類、組成比等を調整することによって制御することができる。また、支持基材や被膜の種類、ラビング条件、塗膜の乾燥条件や熱処理条件、重合工程での照射雰囲気や照射時の温度等によってもチルト角を制御することができる。
【0115】
本発明の製造方法によって製造される光学補償フィルムの形態、物性等は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
光学補償フィルムの厚さは、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
光学補償フィルムの複屈折率Δn(550)は、通常0.03以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.4、より好ましくは0.3以下である。
光学補償フィルムの複屈折率(光学異方性を示す値)が高いほど厚みを薄くできる。厚みが薄いほどヘイズ値や透過率などの光学特性は良くなる傾向がある。
光学補償フィルムは、波長λnmの光に対する複屈折率Δn(λ)が、Δn(450)/Δn(550)≦1.05であることが好ましく、Δn(450)/Δn(550)≦1.00であることがより好ましく、Δn(450)/Δn(550)≦0.95であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、優れた波長分散制御特性を有する光学補償フィルムとして様々な用途に活用することができる。
【0116】
本発明の製造方法によって製造される光学補償フィルムは、可視光線を選択的に反射させる選択反射特性を有するものであってもよい。選択反射特性は、らせん構造が入射光に作用し、円偏光や楕円偏光を反射させるものである。選択反射特性はλ=n・Pitch(λは選択反射の中心波長、nは平均屈折率、Pitchはらせんピッチ)で表されるため、nまたはPitchを変えることにより中心波長(λ)および波長幅(Δλ)を適宜調整することができる。色純度を良くするには波長幅(Δλ)を小さくすればよいし、広帯域の反射を所望する際には波長幅(Δλ)を大きくすればよい。
らせんピッチを可視光線の波長よりさらに短くすることで、W. H. de Jeu, Physical Properties of Liquid Crystalline Materials, Gordon and Breach, New York(1980)に記載のネガティブ型Cプレート(Negative C plate)を調製できる。らせんピッチを短くするためには、ねじり力(HTP:ヘリカル・ツイスティング・パワー)の大きな光学活性化合物を用い、さらにその添加量を増やすことで達成できる。具体的にはλを350nm以下、好ましくは200nm以下とすることで、ネガティブ型Cプレートを調製できる。このネガティブ型Cプレートは液晶表示素子のうちVAN型、VAC型、OCB型等の表示素子に適した光学補償フィルムとなる。また、光学補償フィルムは、らせんピッチを可視光より長くすることで特開2004−333671号公報に記載されているような反射波長領域を近赤外(波長800〜2500nm)に設定した反射フィルムとして用いることができる。らせんピッチを長くするためには、例えば、ねじり力の小さな光学活性化合物を用いること、または光学活性化合物の添加量を減らすことにより達成できる。
光学活性化合物は、らせん構造を誘起し、ベースとなる液晶組成物と適切に混合できれば、いずれの光学活性化合物を用いてもよい。また、重合性化合物でも非重合性化合物のいずれでもよく、目的に応じて最適な化合物を添加することができる。耐熱性および耐溶剤性を考慮した場合、重合性化合物の方が好適である。さらに光学活性化合物の中でも、ねじり力(HTP:ヘリカル・ツイスティング・パワー)が大きいものは、らせんピッチを短くする上で好適である。ねじり力の大きな化合物の代表例が、英国特許出願公開第2298202号明細書、独国特許出願公開第10221751号明細書で開示されている。
【0117】
<光学素子、液晶表示装置、有機EL表示装置>
本発明の製造方法によって製造される光学補償フィルムの用途は、特に限定されないが、直接または偏光板等と一体化した光学素子等として液晶表示装置(特にアクティブマトリックス型およびパッシブマトリックス型の液晶表示素子)や有機EL表示装置に利用することが挙げられる
【0118】
液晶表示装置への利用例としては、液晶表示装置の液晶セルに充填された液晶への不純物の溶出が非常に少ないため、液晶セルの内部に配置させることも可能である。例えば、特開2008−01943号公報に開示されている方法を応用すれば、カラーフィルター上に本発明の重合性液晶層を形成することでカラーフィルターの機能を更に向上させることが可能となる。
また、偏光板等と一体化した光学素子として利用する場合、液晶セルの外側に配置させられる。なお、偏光板の種類は、特に限定されないが、広く実用されているヨウ素をドープした吸収型の偏光板、ワイヤーグリッド偏光板等の反射型偏光板等があげられる。偏光
板が延伸フィルムを構成要素として含む場合は液晶セルの外側に配置される。偏光板が無機膜を構成要素とする場合は、液晶セルの外側あるいは液晶セルの内側のいずれの配置でもよい。
液晶表示装置の型としては、IPS型(イン・プレーン・スイッチング)、OCB型(光学的に補償された複屈折)、TN型(ツィステッド・ネマティック)、STN型(スーパー・ツィステッド・ネマティック)、ECB型(電気的に制御された複屈折)、DAP型(整列相の変形効果)、CSH型(カラー・スーパー・ホメオトロピック)、VAN/VAC型(垂直配向したネマティック/コレステリック)、OMI型(光学モード干渉)、SBE型(超複屈折効果)等が挙げられる。さらにゲスト−ホスト型、強誘電性型、反強誘電性型などの表示素子用の位相レターダーとして、光学補償フィルムを使用することもできる。
【0119】
液晶表示装置の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜選択することができる。例えば、本発明の製造方法によって製造された光学補償フィルムにITO等の透明電極をスパッタリング等の真空成膜法により形成し、電極形成後に垂直配向モードの配向膜を形成し、対向基板と間隙を設けて貼りあわせ、負の誘電率異方性を有する液晶を注入して、垂直配向モードである液晶表示装置を得ることができる。光学補償フィルムは、追加の熱硬化処理により強固なものとなるため、液晶セル内に配置することができるようになり、これまで用いられてきた延伸タイプの光学補償フィルムと液晶セルを貼りあわせるための接着剤が不要となる。その結果、接着剤の界面反射によるコントラスト低下を防ぐことができるようになるため、垂直配向モードの液晶ディスプレイの高コントラスト化(高品位化)に有用である。
なお、ツイスト配向を有する光学異方体に求められるツイスト配向の螺旋ピッチや厚みなどのパラメーターの最適値は、補償すべき液晶表示装置の種類とその光学パラメーターに強く依存するので、素子の種類によって異なる。
【0120】
有機EL表示装置への利用例としては、反射防止を目的として偏光板等と一体化した円偏光板として用いられる。有機EL表示装置は反射性の高い金属層を有するため、外光反射や背景の映り込み等の問題を生じやすい。そこで、円偏光板を視認側に設けることにより、これらの問題を防ぐことを目的としている。円偏光板としての機能を発現させるためには、光学補償フィルムは1/4波長板として設計することが好ましい。
【0121】
光学補償フィルムは、二色性色素等の添加物を含有してもよい。二色性色素としてはアントラキノン、ナフトキノンまたはアゾベンゼンからなる色素が好ましい。二色性色素と複合化したホモジニアス配向の液晶フィルムは、吸収型偏光板としても使用することができる。また、蛍光色素と複合化したホモジニアス配向の液晶フィルムは、偏光発光型フィルムとしても使用することができる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0123】
<相転移温度>
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、3℃/分の速度で昇温し、ネマティック相から等方性液体に転移する温度を測定した。T
NI=50℃は、50℃でネマティック相から等方性液体へ転移したことを示す。
試料は、重合性液晶組成物を支持基材上に塗布し、加熱処理または熱風乾燥などにより溶媒をほぼ除去させることで得ることが出来る。
【0124】
<基板表面温度の確認>
基板の表面温度は、携帯型デジタル温湿度指示計DFT−700−M(神港テクノス社
製)を用い、センサーとしてPCE−707Lを用いて測定した。
【0125】
<冷却速度の確認>
本発明の光学補償フィルムの製造方法は冷却工程が重要であり、下記(i)および(ii)の少なくとも1つの条件を満たすことを特徴とする。
(i)温度T
Hでの加熱工程を経た塗膜が、室温T
Rに冷却される前に、温度T
iで保持する期間を1回以上含み、かつ温度T
iで保持する期間がそれぞれ30秒以上である。ここで、温度T
iはT
H>T
i≧T
R+20℃を満たす。
(ii)温度T
Hでの溶剤を蒸発させるための加熱工程を経た塗膜が、温度T
Hから室温T
Rに冷却されるまでの平均冷却速度が20℃/分以下である。
ここで、本発明において、冷却工程が(ii)前記塗膜が、温度T
Hから室温T
Rに冷却されるまでの平均冷却速度が20℃/分以下である場合において、冷却速度の確認が必要である。支持基材を温度T
Hに設定されたホットプレート上に置いて加熱し、その表面温度T
S1を接触式の温度センサーを用いて測定し、T
HとT
S1がほぼ等しいことを確認した。その後、支持基材をホットプレートから外し、冷却用の金属板上に置いて、その表面温度T
S2を同様に測定し、あらかじめ測定しておいた室温T
Rとほぼ等しくなるまでの期間t
cを計測し、(T
S1−T
S2)/t
cにより、平均冷却速度を計算した。また、金属板の代わりにゴム板上に置いた場合の支持基材の表面温度の変化も同様に測定し、冷却速度を計算した。
なお、温度T
Aと温度T
Bが「ほぼ等しくなる」とは|T
A−T
B|≦2℃とした。本発明では冷却速度が20℃/分を超えるとき、「急冷」、20℃/分以下を「徐冷」とした。
また、冷却工程が(i)前記塗膜が室温TRに冷却される前に、温度T
i(T
H>T
1,T
2,T
3,…,T
i≧室温T
R+20℃)で保持する期間を1回以上含み、かつ温度T
iで保持する期間がそれぞれ30秒以上である場合には、(ii)の条件は満たさなくてもよい。
【0126】
<室温の確認>
室温T
Rは、シグマミニα温湿度記録計(佐藤計量器製作所製)を用いて測定した。実施例記載の作業は温湿度管理された環境下で行っており、常時25℃であった。
【0127】
<重合条件>
窒素雰囲気下において、室温で250Wの超高圧水銀灯(ウシオ電機社製、マルチライト−250)を用いて19mW/cm
2(365nm)の強度の光を26秒間照射した。
【0128】
<配向の評価>
(1)ラビング処理済み配向膜付きガラス基板の作製
厚さ1.1mmのガラス基板に、低プレチルト角(水平配向モード)用ポリアミック酸(リクソンアライナー:PIA−5370 JNC(株)製)をスピンコートし、スピンコートした塗膜から溶剤を80℃のホットプレート上で除去後、該塗膜を230℃で30分間、オーブンで焼成したものを、レーヨン布を利用してラビング処理した。
【0129】
(2)目視による観察方法
クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に位相差フィルムを形成した基板を挟持して観察し、基板を水平面内で回転させ、明暗の状態を確認した。位相差フィルムを形成した基板を偏光顕微鏡観察し、配向欠陥の有無を確認した。暗状態にて光が抜けて見える箇所がある場合、または、明状態および暗状態を共に確認できない場合は、配向欠陥と判断した。
【0130】
(3)偏光解析装置による測定
シンテック(株)製の偏光解析装置OPTIPROを用い、位相差フィルムを形成した基板に波長が550nmおよび450nmの光を照射した。これらの光の入射角度をフィルム面に対して90°から減少させながらレタデーションを測定した。レタデーション(retardation;位相遅れ、リタデーションとも呼ばれる)はΔn×dで表される。記号Δnは光学異方性値であり、記号dは光学補償フィルムの厚さである。
【0131】
<膜厚測定>
光学補償フィルム付きガラス基板の光学補償フィルムの層を削りだして、その段差を微細形状測定装置(KLA TENCOR(株)製 アルファステップIQ)を用いて測定した。
【0132】
<光学異方性(Δn)の評価>
ホモジニアス配向を有する液晶フィルムについて求めた光の入射角度がフィルム面に対して90°の時のレタデーションと膜厚値から、光学異方性(Δn)=レタデーション(Re)/膜厚(d)として算出した。
【0133】
<波長分散特性の評価>
波長分散の特性として、以下の式から求められる値を指標とした。
波長分散の特性=450nmの光で測定したリタデーション(Re450nm)/550nmの光で測定したリタデーション(Re550nm)。
すなわち、上記波長分散の特性値が小さい方が、低波長分散性が高く、1以下の値の場合に逆波長分散特性を有することを示す。
【0134】
<重合性液晶化合物>
実施例及び比較例における重合性液晶化合物として、以下の化合物を使用した。なお、以下の化合物の分子構造のアスペクト比は、B3LYP/6−31G(d)を用いた分子計算の手法により最適化された分子モデルから算出した。
・化合物(1−1−2a)
化合物(1−1−2a)は、化合物(1−1−2)において、R
5が水素であり、Y
1がそれぞれ−O−であり、Q
1がそれぞれ炭素数6のアルキレンであり、PGがそれぞれPG−1であり、PG−1中のR
3がそれぞれ水素である。
なお、化合物(1−1−2a)は、分子計算により求めたアスペクト比が1.98であった。
【化36】
【0135】
・化合物(1−1−2b)
化合物(1−1−2b)は、化合物(1−1−2)において、R
5がp−位に結合した塩素であり、Y
1がそれぞれ−O−であり、Q
1がそれぞれ炭素数6のアルキレンであり、PGがそれぞれPG−1であり、PG−1中のR
3がそれぞれ水素である。
なお、化合物(1−1−2b)は、分子計算により求めたアスペクト比が、1.97であった。
【化37】
【0136】
・化合物(1−1−6a)
化合物(1−1−6a)は、化合物(1−1−6)において、R
5が水素であり、Y
1がそれぞれ−O−であり、Q
1がそれぞれ炭素数6のアルキレンであり、PGがそれぞれPG−1であり、PG−1中のR
3がそれぞれ水素である。
なお、化合物(1−1−6a)は、分子計算により求めたアスペクト比が、L/Dが、1.96であった。
【化38】
【0137】
・化合物(1−1−14a)
化合物(1−1−14a)は、化合物(1−1−14)において、R
5が水素であり、Y
1がそれぞれ−O−であり、Q
1がそれぞれ炭素数6のアルキレンであり、PGがそれぞれPG−1であり、PG−1中のR
3がそれぞれ水素である。
なお、化合物(1−1−14a)は、分子計算により求めたアスペクト比が、1.98であった。
【化39】
【0138】
・化合物(1−4−1a)
化合物(1−4−1a)は、化合物(1−4−1)において、R
4がそれぞれ炭素数3のアルキルであり、Y
1がそれぞれ−O−であり、Q
1がそれぞれ炭素数6のアルキレンであり、PGがそれぞれPG−1であり、PG−1中のR
3がそれぞれ水素である。
なお、化合物(1−4−1a)は、分子計算により求められた最適な分子構造が2種類
得られた。これらは立体配座の違いによるものであり、それぞれ下記に示すように構造1、および構造2とする。構造1の、アスペクト比が、2.09であり、構造2のアスペクト比が、1.36であった。
【化40】
【0139】
・化合物(1−2−3a)
化合物(1−2−3a)は、化合物(1−2−3)において、Y
1がそれぞれ−O−であり、Q
1がそれぞれ炭素数6のアルキレンであり、PGがそれぞれPG−1であり、PG−1中のR
3がそれぞれ水素である。
なお、化合物(1−2−3a)は、分子計算により求めたアスペクト比が、1.98であった。
【化41】
【0140】
・化合物(1−3−3a)
化合物(1−3−3a)は、化合物(1−2−3)において、Y
1がそれぞれ−O−であり、Q
1がそれぞれ炭素数6のアルキレンであり、PGがそれぞれPG−1であり、PG−1中のR
3がそれぞれ水素である。
なお、化合物(1−3−3a)は、分子計算により求めたアスペクト比が、2.00であった。
【化42】
【0141】
<重合性液晶組成物(PLC−1)の調製>
化合物(1−1−2a)90重量%、化合物(M2−7)においてa=4、R
Mが水素
である、化合物(M2−7a)10重量%からなる重合性液晶化合物の混合物(MIX−1)を調製した。
【化43】
次にこの重合性液晶化合物の混合物(MIX−1)100重量部に対して、重合開始剤としてIrgacure184(商品名、BASFジャパン株式会社製)を3重量部、界面活性剤としてTEGOFLOW370(商品名、エボニック社製)を1.5重量部添加して、これを室温(25℃)で撹拌し、シクロヘキサノンに溶解し(MIX−1)の濃度が25重量%の溶液を調製した。この溶液を(PLC−1)とする。
【0142】
<重合性液晶組成物(PLC−2〜PLC−10)の調製>
PLC−1と同様にしてPLC−2〜PLC−10を調製した。使用した化合物と組成を表1にまとめる。なお、表中の化合物(M2−1a)は化合物(M2−1)においてa=4、R
Mが水素である化合物であり、化合物(M1−24a)は化合物(M1−24)においてa=6、R
Mが水素である化合物である。
【化44】
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
[実施例1]
<冷却工程が前記(i)を満たす場合>
この実施例では、表3に示すように、重合性液晶組成物(PLC−1)を用いて、以下の順序で、光学補償フィルムを製造した。
(1)ラビング処理済みの配向膜付きガラス基板上にスピンコートにより塗布する。
(2)このガラス基板を90℃で1分間加熱する。(90℃/1分)
(3)その後、60℃(≧T
R+20℃)で1分間保持する。(60℃/1分)
(4)室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に30秒間静置する。
(5)その後、溶剤が除去された塗膜を紫外線により空気中で重合する。
(6)光学補償フィルムを偏光顕微鏡(クロスニコル)に配置された2枚の偏光板の間に挿着する。
(7)基板を暗視野の状態にしたところ光抜けがないことを確認し、明暗の状態を確認する。
その結果、配向が均一であると判断した。
光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、
図1に示すように、垂直方向からのレタデーションが最大であったので、水平配向であると判断した。
また、膜厚は1.9μmであった。偏光顕微鏡で、溶剤除去処理後の重合性液晶組成物(PLC−1)の相転移温度を確認したところ、T
NIは、62℃であった。
【0146】
[比較例1]
<冷却工程が前記(i)および(ii)を満たさない場合>
表4に示すように、比較例1では、重合性液晶組成物(PLC−1)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板の加熱後に40℃(<T
R+20℃)の温度で1分間保持するように変更して実施した。
この場合、配向が不均一であると判断した。その際、膜厚は1.9μmであった。
【0147】
[実施例2]
<冷却工程が前記(ii)を満たす場合>
表3に示すように、実施例2では、重合性液晶組成物(PLC−2)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、冷却工程において、加熱後、室温(25℃)に置かれた厚さ約0.6cmのゴム板上に4分間静置し、基板をT
Hから室温T
Rになるまで徐冷(基板の温度が室温になるまでの期間が4分であり、基板の平均冷却速度は16.3℃
/分で20℃/分以下である。)するように変更して実施した。
その結果、配向が均一であると判断した。
光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、実施例1と同じグラフが得られたので、水平配向であると判断した。
また、膜厚は1.3μmであった。実施例1と同様に、相転移温度を確認したところ、T
NIは、75℃であった。
【0148】
[比較例2]
<冷却工程が前記(i)および(ii)を満たさない場合>
表4に示すように、比較例2では、重合性液晶組成物(PLC−2)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、冷却工程において、加熱後に、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に2.5分間静置し、その後、基板をT
Hから室温T
Rになるまで急冷(基板の温度が室温になるまでの期間が2.5分であり、基板の平均冷却速度は26℃/分で20℃/分を超える。)するように変更して実施した。
その結果、配向が不均一であると判断した。その際、膜厚は1.3μmであった。
【0149】
[実施例3]
<冷却工程が前記(i)を満たす場合>
表3に示すように、実施例3では、重合性液晶組成物(PLC−3)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、加熱を100℃の温度で1分間保持するように変更して実施した。
その結果、配向が均一であると判断した。光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、実施例1と同じグラフが得られたので、水平配向であると判断した。
また、膜厚は1.3μmであった。実施例1と同様にして相転移温度を確認したところ、T
NIは、85℃であった。
【0150】
[比較例3]
<冷却工程が前記(i)および(ii)を満たさない場合>
表4に示すように、比較例3では、重合性液晶組成物(PLC−3)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板を100℃の温度で1分間加熱した後、冷却工程において、温度60℃(≧T
R+20℃)で20秒間保持するように変更して実施した。
その結果、基板を暗視野の状態にしたところ光抜けがある領域を確認し、配向が不均一であると判断した。その際、膜厚は1.3μmであった。
【0151】
[実施例4]
<冷却工程が前記(i)を満たす場合>
表3に示すように、実施例4では、重合性液晶組成物(PLC−4)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板の加熱を80℃の温度で1分間加熱した後に、冷却工程において、60℃(≧T
R+20℃)で1分間保持する操作を変えて実施した。
その結果、配向が均一であると判断した。
光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、実施例1と同じグラフが得られたので、垂直方向からのレタデーションが最大であったので、水平配向であると判断した。
また、膜厚は1.7μmであった。実施例1と同様に、相転移温度を確認したところ、T
NIは、65℃であった。
【0152】
[比較例4]
<冷却工程が前記(i)および(ii)を満たさない場合>
表4に示すように、比較例4では、重合性液晶組成物(PLC−4)を用いて光学補償
フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板を80℃の温度で1分間加熱した後に、冷却工程において、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に1分間静置し、基板の温度がT
Hから室温T
Rになるまで急冷(基板の温度が室温になるまでの期間が1分であり、基板の平均冷却速度は55℃/分で20℃/分を超える)する操作を変えて実施した。
その結果、基板を暗視野の状態にしたところ光抜けがある領域を確認し、配向が不均一であると判断した。その際、膜厚は1.7μmであった。
【0153】
[実施例5]
<冷却工程が前記(ii)を満たす場合>
表3に示すように、実施例5では、重合性液晶組成物(PLC−5)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板を100℃の温度で1分間加熱した後に、冷却工程において、室温(25℃)に置かれた厚さ約0.6cmのゴム板上に4分間静置し、基板の温度がT
Hから室温T
Rになるまで徐冷(基板の温度が室温になるまでの期間が4分であり、基板の平均冷却速度は18.8℃/分で20℃/分以下である。)するように変更して実施した。
その結果、配向が均一であると判断した。光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、実施例1と同じグラフが得られたので、水平方向であると判断した。
また、膜厚は1.2μmであった。実施例1と同様にして相転移温度を観察したところ、T
NIは、59℃であった。
【0154】
[比較例5]
<冷却工程が前記(i)および(ii)を満たさない場合>
表4に示すように、比較例5では、重合性液晶組成物(PLC−5)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板を100℃の温度で1分間加熱した後、冷却工程において、温度40℃(≧室温T
R+20℃)で1分間保持する操作を変えて実施した。
その結果、基板を暗視野の状態にしたところ光抜けがある領域を確認し、配向が不均一であると判断した。その際、膜厚は1.2μmであった。
【0155】
[実施例6]
<冷却工程が前記(ii)を満たす場合>
表3に示すように、実施例6では、重合性液晶組成物(PLC−6)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、冷却工程において、加熱後、室温(25℃)中に置かれた厚さ約0.6cmのゴム板上に4分間静置し、基板の温度がT
Hから室温T
Rになるまで徐冷(基板の温度が室温になるまでの期間が4分であり、基板の平均冷却速度は16.3℃/分で20℃/分以下である。)するように変更して実施した。
その結果、配向が均一であると判断した。光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、実施例1と同じグラフが得られたので、水平方向であると判断した。
また、膜厚は1.2μmであった。実施例1と同様にして相転移温度を確認したところ、T
NIは71℃であった。
【0156】
[比較例6]
<冷却工程が前記(i)および(ii)を満たさない場合>
表4に示すように、比較例6では、重合性液晶組成物(PLC−6)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、冷却工程において、温度40℃(<T
R+20℃)で1分間保持し、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に1分間静置するように変更して実施した。
その結果、配向が不均一であると判断した。その際、膜厚は1.2μmであった。
【0157】
[実施例7]
<冷却工程が前記(i)を満たす場合>
表3に示すように、実施例7は、重合性液晶組成物(PLC−7)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板の加熱を80℃の温度で1分間加熱するように変更して実施した。
その結果、配向が均一であると判断した。光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、実施例1と同じグラフが得られたので、水平配向であると判断した。
また、膜厚は2.0μmであった。実施例1と同様にして相転移温度を観察したところ、T
NIは57℃であった。
【0158】
[比較例7]
<冷却工程が前記(i)および(ii)を満たさない場合>
表4に示すように、比較例7では、重合性液晶組成物(PLC−7)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程および冷却工程において、基板を80℃の温度で1分間加熱した後、温度40℃(<T
R+20℃)で1分間保持し、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に1分間静置するように変更して実施した。
その結果、基板を暗視野の状態にしたところ光抜けがある領域を確認し、配向が不均一であると判断した。その際、膜厚は2.0μmであった。
【0159】
[実施例8]
<冷却工程が前記(i)を満たす場合>
表3に示すように、実施例8は、重合性液晶組成物(PLC−8)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板の加熱を100℃の温度で1分間加熱した後に、冷却工程において、60℃(>T
R+20℃)で1分間保持し、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に1分間静置するように変更して実施した。
その結果、配向が均一であると判断した。光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、実施例1と同じグラフが得られたので、水平配向であると判断した。
また、膜厚は2.0μmであった。実施例1と同様にして相転移温度を観察したところ、T
NIは65℃であった。
【0160】
[比較例8]
<冷却工程が前記(i)および(ii)を満たさない場合>
表4に示すように、比較例8では、重合性液晶組成物(PLC−8)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板を100℃の温度で1分間加熱した後、冷却工程において、温度60℃(>T
R+20℃)で20秒間保持し、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に1分間静置するように変更して実施した。
その結果、基板を暗視野の状態にしたところ光抜けがある領域を確認し、配向が不均一であると判断した。その際、膜厚は2.0μmであった。
【0161】
[実施例9]
<冷却工程が前記(i)を満たす場合>
表3に示すように、実施例9では、重合性液晶組成物(PLC−9)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板を100℃の温度で1分間加熱した後、冷却工程において、温度60℃(>T
R+20℃)で1分間保持し、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に1分間静置するように変更して実施した。
その結果、配向が均一であると判断した。光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、実施例1と同じグラフが得られたので、水平配向であると判断した。
また、膜厚は1.7μmであった。実施例1と同様にして相転移温度を観察したところ、T
NIは77℃であった。
【0162】
[実施例10]
<冷却工程が前記(i)を満たす場合>
表3に示すように、実施例10は、重合性液晶組成物(PLC−10)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板の加熱を100℃の温度で1分間加熱した後に、冷却工程において、60℃(>T
R+20℃)で1分間保持し、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に1分間静置するように変更して実施した。
その結果、配向が均一であると判断した。光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、実施例1と同じグラフが得られたので、水平配向であると判断した。
膜厚は1.7μmであった。実施例1と同様にして相転移温度を観察したところ、T
NIは82℃であった。
【0163】
[実施例11]
<冷却工程が前記(i)を満たす場合>
表3に示すように、実施例11は、重合性液晶組成物(PLC−11)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板の加熱を100℃の温度で1分間加熱した後に、冷却工程において、50℃(>T
R+20℃)で3分間保持し、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に1分間静置するように変更して実施した。
その結果、配向が均一であると判断した。光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、実施例1と同じグラフが得られたので、水平配向であると判断した。
また、膜厚は、2.0μmであった。実施例1と同様にして相転移点を観察したところ、T
NIは、58℃であった。
【0164】
[比較例9]
<冷却工程が前記(i)および(ii)を満たさない場合>
表4に示すように、比較例9では、重合性液晶組成物(PLC−9)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板を100℃の温度で1分間加熱した後、冷却工程において、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に1分間静置し、基板の温度がT
Hから室温T
Rになるまで急冷(基板の温度が室温になるまでの期間が1分であり、基板の平均冷却速度は60℃/分で20℃/分を超える。)するように変更して実施した。
その結果、基板の光学異方性を確認したところ、基板をどの角度から見ても暗視野の状態になることは無く、配向が不均一であるため光学異方性を有するフィルムが得られなかった。また、膜厚は2.0μmであった。
【0165】
[実施例12]
<冷却工程が前記(i)を満たす場合>
表3に示すように、実施例12は、重合性液晶組成物(PLC−12)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板を100℃の温度で1分間加熱した後に、冷却工程において、50℃(>T
R+20℃)で3分間保持し、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に1分間静置するように変更して実施した。
その結果、配向が均一であると判断した。
光学補償フィルムのレタデーションの測定結果は、実施例1と同じグラフが得られたので、水平配向であると判断した。
また、膜厚は、2.0μmであった。実施例1と同様にして相転移温度を観察したとこ
ろ、T
NIは58℃であった。
【0166】
[比較例10]
<冷却工程が前記(i)および(ii)を満たさない場合>
表4に示すように、比較例10では、重合性液晶組成物(PLC−10)を用いて光学補償フィルムを製造したが、実施例1とは、加熱工程において、基板を100℃の温度で1分間加熱した後、冷却工程において、温度40℃(<T
R+20℃)で3分間保持し、室温(25℃)中に置かれた厚さ約1.6cmの金属板上に1分間静置するように変更して実施した。
その結果、光学補償フィルムを確認したところ、暗視野の状態になることは無く、配向が不均一であるため光学異方性を有するフィルムが得られなかった。また、膜厚は2.0μmであった。
【0167】
実施例1〜12および比較例1〜10において製造された光学補償フィルムの製造条件を表3および表4に示す。
【表3】
【0168】
【表4】
【0169】
<光学補償フィルムの光学特性>
実施例1において製造された光学補償フィルムのフィルム面に対して90°のレタデーションの波長分散特性(波長λnmの測定値(Re
λ)/波長550nmの測定値(Re
550))を
図2に示す。
さらに実施例1〜12において製造した光学補償フィルムのフィルム面に対して90°のレタデーションの波長分散特性(波長450nmの測定値(Re
450)/波長550nmの測定値(Re
550))、膜厚および波長550nmでのΔnを表5に示す。
【0170】
【表5】