(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記有機溶剤が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル及び酢酸2−フェニルエチルから選ばれる少なくとも1種である請求項16記載のパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[スルホニウム化合物]
  本発明のスルホニウム化合物は、下記式(1A)、(1B)又は(1C)で表されるものである。
【化9】
 
【0017】
  式中、L
1は、ヘテロ原子含有基を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20の2価炭化水素基である。Xは、2価の連結基である。Aは、単結合、メチレン基、カルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、アミノ基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合又はスルホン酸エステル結合である。R
1a〜R
1cは、それぞれ独立に、ヘテロ原子含有基を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20の1価炭化水素基である。R
1aが2以上ある場合、それらのうちの2つは互いに結合して、それらが結合するベンゼン環上の炭素原子とともに環を形成してもよい。R
1bが2以上ある場合、それらのうちの2つは互いに結合して、それらが結合するベンゼン環上の炭素原子とともに環を形成してもよい。R
1cが2以上ある場合、それらのうちの2つは互いに結合して、それらが結合するベンゼン環上の炭素原子とともに環を形成してもよい。m1、m2及びm3は、それぞれ0≦m1≦5、0≦m2≦5及び0≦m3≦4を満たす整数であるが、m1+m2+m3≧1である。n1、n2及びn3は、それぞれ0≦n1≦4、0≦n2≦4及び0≦n3≦4を満たす整数であるが、n1+n2+n3≧1である。k1、k2及びk3は、それぞれ0≦k1≦5、0≦k2≦4及び0≦k3≦3を満たす整数であるが、k1+k2+k3≧1である。
 
【0018】
  R
1a〜R
1cのうち、少なくとも1つは、下記式(2)で表される基である。
【化10】
 
【0019】
  式(2)中、L
2は、ヘテロ原子含有基を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20の2価炭化水素基である。R
2は、酸脱離性基である。R
f1及びR
f2は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜20のアルキル基、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換された直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜20のフルオロアルキル基であるが、R
f1及びR
f2のうち少なくとも1つは、フッ素原子又はフルオロアルキル基である。破線は、結合手である。
 
【0020】
  L
1及びL
2で表される2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の飽和環状炭化水素基、フェニレン基、ナフチレン基等の不飽和環状炭化水素基が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、又は酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
 
【0021】
  Xで表される2価の連結基としては、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、カーバメート結合等が挙げられる。これらのうち、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合が好ましい。
 
【0022】
  式(2)中、R
2で表される酸脱離性基は、酸の作用により脱離して式(2)においてヒドロキシ基を生じうる置換基であり、−OR
2が、例えばアセタール構造や3級エーテル構造となる基が挙げられる。
を示す。
 
【0023】
  式(2)中、R
f1及びR
f2で表される炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。また、炭素数1〜20のフルオロアルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
 
【0024】
  式(1A)〜(1C)中、R
1a〜R
1cで表される1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
 
【0025】
  式(1A)〜(1C)で表されるスルホニウム化合物としては、それぞれ下記式(3A)〜(3C)で表されるものが好ましい。
【化11】
 
【0026】
  式中、R
1a、R
1b、R
1c、X、A、m1、m2、m3、n1、n2、n3、k1、k2及びk3は、前記と同じ。R
f3、R
f4、R
f5及びR
f6は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
 
【0027】
  R
f3、R
f4、R
f5及びR
f6のうち少なくとも1つは、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であることが好ましい。このとき、発生する酸の酸性度が増し、ベース樹脂の酸不安定基を効率よく切断することが可能となる。このうち、R
f5及びR
f6が、ともにフッ素原子であることがより好ましい。すなわち、下記式(4A)〜(4C)で表される、スルホ基のα位にフッ素原子を有する構造が、発生酸の酸性度が大きくなるため好ましい。
【化12】
(式中、R
1a、R
1b、R
1c、A、X、R
f3、R
f4、m1、m2、m3、n1、n2、n3、k1、k2及びk3は、前記と同じ。)
 
【0028】
  式(1A)で表されるスルホニウム化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化13】
 
【0032】
  式(1B)で表されるスルホニウム化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化17】
 
【0033】
  式(1C)で表されるスルホニウム化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化18】
 
【0034】
  本発明のスルホニウム化合物は、ベタイン構造を有していることが特徴である。ベタイン構造を有していることで酸発生後もバルキーな構造となり、酸拡散を高度に制御できる。一般的に、発生酸がバルキーな構造の場合、酸拡散が小さくなる。
 
【0035】
  これに対し、例えば特許文献5にもベタイン構造を有する酸発生剤を含むレジスト組成物について記載されているが、本発明のベタイン型スルホニウム化合物を有するレジスト組成物のほうが、解像性、LWRが優れている。これについて理由は定かではないが、2つの理由が考えられる。
 
【0036】
  1つの理由としては、本発明のスルホニウム化合物が有する含フッ素置換基(式(2)で表される部分構造)による溶剤溶解性向上効果が挙げられる。通常、ベタイン化合物は高極性のため溶剤溶解性に乏しいが、本発明のスルホニウム化合物は前記含フッ素置換基が溶剤溶解性の向上に寄与していると考えられる。この結果、レジスト組成物中、本発明のスルホニウム化合物が均一に分散し、それ故にLWRが改善されるものと推測される。
 
【0037】
  もう1つの理由としては、式(2)で表される部分構造が酸脱離性基を有していることである。本発明のスルホニウム化合物は、露光部では前記部分構造から酸脱離性基が脱離してフルオロアルコール部位が生成する。その結果、アルカリ水溶液現像によるポジティブトーンプロセスにおいては露光部がより溶けやすくなり、有機溶剤現像によるネガティブトーンプロセスでは反対に露光部がより溶けにくくなる。結果として、露光部と未露光部のコントラストが大きくなり、解像性が優れることとなる。
 
【0038】
  これらのことは、特許文献5からは一切想起できない特性であり、本発明のスルホニウム化合物は、新規かつ非常に価値のあるものであるといえる。
 
【0039】
  本発明のスルホニウム化合物の合成方法について、式(1A)で表されるスルホニウム化合物であってXがエーテル結合であるものを例として説明する。合成方法の一例としては、スルホアルキルオキシベンゼン又はスルホアリールオキシベンゼンとジアリールスルホキシドとを酸触媒存在下で反応させる方法が挙げられる。なお、この反応においては、例えばメタンスルホン酸等の酸触媒が用いられる。この反応の概略を下記スキームAに示す。
【化19】
(式中、R
1a、R
1b、R
1c、m1、m2、m3及びL
1は、前記と同じ。Q
+はナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン又は水素イオンである。)
 
【0040】
  他の合成方法として、4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム類とスルホアルコールとの求核置換反応が挙げられる。この反応の概略を下記スキームBに示す。
【化20】
(式中、R
1a、R
1b、R
1c、m1、m2、m3及びL
1は、前記と同じ。Z
-は、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、メチル硫酸イオン又はp−トルエンスルホン酸イオンである。)
 
【0041】
  なお、スキームBにおいては、4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム類を用いた反応を示したが、4−ハロフェニルジフェニルスルホニウム類であれば類似の反応が可能である。
 
【0042】
  また、本発明のスルホニウム化合物は、下記スキームCに示すような分子内反応によって合成することもできる。
【化21】
(式中、R
1a、R
1b、R
1c、m1、m2、m3及びL
1は、前記と同じ。)
 
【0043】
  更に、本発明のスルホニウム化合物は、末端オレフィンを有するスルホニウム塩に対する亜硫酸水素イオンの付加反応や対応するハライドと硫黄化合物との反応によって合成することもできる。例として、前記付加反応の概略を下記スキームDに示す。
【化22】
(式中、R
1a、R
1b、R
1c、m1、m2及びm3は、前記と同じ。)
 
【0044】
  なお、これらの合成方法は、あくまでも例示であり、本発明のスルホニウム化合物の合成方法はこれらに限定されない。
 
【0045】
[レジスト組成物]
  本発明のレジスト組成物は、(A)式(1A)、(1B)又は(1C)で表されるスルホニウム化合物からなる光酸発生剤を必須成分とし、その他の材料として
(B)ベース樹脂、及び
(C)有機溶剤
を含み、更に必要に応じて
(D)式(1A)、(1B)又は(1C)で表されるスルホニウム化合物以外の光酸発生剤、
(E)クエンチャー、及び
(F)水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤(疎水性樹脂)を含むことができる。
 
【0046】
  (A)成分の光酸発生剤の配合量は、後述する(B)ベース樹脂100質量部に対し、0.1〜40質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。(A)成分の配合量が前記範囲であれば、光酸発生剤として十分に機能し、感度低下や溶解性不足で異物が発生したりする等の性能劣化を起こすおそれがない。(A)光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
 
【0047】
[(B)ベース樹脂]
  (B)成分のベース樹脂は、下記式(a)で表される繰り返し単位及び下記式(b)で表される繰り返し単位を含むポリマーを含むものである。
【化23】
 
【0048】
  式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Z
Aは、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は(主鎖)−C(=O)−O−Z'−であり、Z'は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合若しくはラクトン環を含んでいてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜10のアルキレン基、又はフェニレン基若しくはナフチレン基である。X
Aは、酸不安定基である。Y
Aは、水素原子、又はヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環及びカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1つ以上の構造を含む極性基である。
 
【0049】
  式(a)中のZ
Aを変えた構造としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
A及びX
Aは、前記と同じである。
【化24】
 
【0050】
  式(a)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる。
 
【0051】
  酸不安定基X
Aとしては特に限定されないが、例えば、下記式(L1)〜(L4)から選ばれる基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の3級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基であるトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等が好ましい。
 
【0052】
【化25】
(式中、破線は、結合手である(以下同じ)。)
 
【0053】
  式(L1)中、R
L01及びR
L02は、水素原子、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜18、好ましくは1〜10のアルキル基である。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
 
【0054】
  R
L03は、酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜18、好ましくは1〜10の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの基の水素原子の一部がヒドロキシ基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等で置換されたもの、これらの基の炭素原子間に酸素原子等のヘテロ原子が介在したもの等が挙げられる。前記アルキル基としては、R
L01及びR
L02で表されるアルキル基として前述したものと同様のものが挙げられる。また、置換アルキル基としては、以下に示す基等が挙げられる。
 
【0056】
  R
L01とR
L02と、R
L01とR
L03と、又はR
L02とR
L03とは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するR
L01、R
L02及びR
L03は、それぞれ直鎖状又は分岐状の炭素数1〜18、好ましくは1〜10のアルキレン基である。
 
【0057】
  式(L2)中、R
L04は、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の3級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基であるトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基、又は式(L1)で表される基である。前記3級アルキル基としては、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が挙げられる。前記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が挙げられる。前記オキソアルキル基としては、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が挙げられる。xは、0〜6の整数である。
 
【0058】
  式(L3)中、R
L05は、置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜8のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基である。前記置換されていてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの基の水素原子の一部がヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等で置換されたもの等が挙げられる。前記置換されていてもよいアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、これらの基の水素原子の一部がヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等で置換されたもの等が挙げられる。yは0又は1、zは0〜3の整数であり、2y+z=2又は3である。
 
【0059】
  式(L4)において、R
L06は、置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜8のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基である。前記アルキル基及びアリール基の具体例としては、それぞれR
L05で表されるものとして説明したものと同様のものが挙げられる。
 
【0060】
  R
L07〜R
L16は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜15の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部がヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等で置換されたもの等が挙げられる。R
L07〜R
L16は、これらから選ばれる2個が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、R
L07とR
L08、R
L07とR
L09、R
L07とR
L10、R
L08とR
L10、R
L09とR
L10、R
L11とR
L12、R
L13とR
L14等)、その場合には、環の形成に関与する基は炭素数1〜15の2価炭化水素基である。前記2価炭化水素基としては、前記1価炭化水素基として挙げたものから水素原子を1個除いたもの等が挙げられる。また、R
L07〜R
L16は、隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、R
L07とR
L09、R
L09とR
L15、R
L13とR
L15、R
L14とR
L15等)。
 
【0061】
  式(L1)で表される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、以下に示す基が挙げられるが、これらに限定されない。
【化27】
 
【0062】
  式(L1)で表される酸不安定基のうち環状のものとしては、テトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が挙げられる。
 
【0063】
  式(L2)で表される酸不安定基としては、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
 
【0064】
  式(L3)で表される酸不安定基としては、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−n−プロピルシクロペンチル基、1−イソプロピルシクロペンチル基、1−n−ブチルシクロペンチル基、1−sec−ブチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル基、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル基等が挙げられる。
 
【0065】
  式(L4)で表される酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で表される基が特に好ましい。
【化28】
 
【0066】
  式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は、結合位置及び結合方向である。R
L41は、それぞれ独立に、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキル基等の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
 
【0067】
  式(L4−1)〜(L4−4)で表される基には、立体異性体(エナンチオマー又はジアステレオマー)が存在し得るが、式(L4−1)〜(L4−4)をもってこれらの立体異性体の全てを代表して表す。酸不安定基X
Aが式(L4)で表される基である場合は、複数の立体異性体が含まれていてもよい。
 
【0068】
  例えば、式(L4−3)は、下記式(L4−3−1)及び(L4−3−2)で表される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化29】
(式中、R
L41は、前記と同じ。)
 
【0069】
  また、式(L4−4)は、下記式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で表される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化30】
(式中、R
L41は、前記と同じ。)
 
【0070】
  式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオマー及びエナンチオマーの混合物をも代表して表すものとする。
 
【0071】
  なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向が、それぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。ビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する3級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で表されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50モル%以上であることが好ましく、exo比率が80モル%以上であることが更に好ましい。
 
【0072】
【化31】
(式中、R
L41は、前記と同じ。)
 
【0073】
  式(L4)で表される酸不安定基としては、以下に示す基が挙げられるが、これらに限定されない。
【化32】
 
【0074】
  また、X
Aで表される炭素数4〜20の3級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基であるトリアルキルシリル基、及び炭素数4〜20のオキソアルキル基としては、それぞれR
L04の説明において挙げたものと同様のものが挙げられる。
 
【0075】
  式(a)で表される繰り返し単位としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは、前記と同じである。
【化33】
 
【0080】
  なお、前記具体例はZ
Aが単結合の場合であるが、Z
Aが単結合以外の場合においても同様の酸不安定基と組み合わせることができる。Z
Aが単結合以外のものである場合の具体例は、前述したとおりである。
 
【0081】
  式(b)で表される繰り返し単位としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは、前記と同じである。
【化38】
 
【0090】
  式(b)で表される繰り返し単位としては、ラクトン環を極性基として有するものが最も好ましい。
 
【0091】
  前記ポリマーは、更に、下記式(c1)又は(c2)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【化47】
 
【0092】
  式(c1)及び(c2)中、R
Aは、前記と同じ。R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20の1価炭化水素基である。L'は、炭素数2〜5のアルキレン基である。R
Yは、ヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20の1価炭化水素基である。Eは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。L''は、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。aは、0又は1である。bは、0又は1であるが、L''が単結合のときは、bは0である。
 
【0093】
  L'として具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。Eとして、好ましくはトリフルオロメチル基である。R
Y、R
11、R
12及びR
13で表される1価炭化水素基としては、後述する式(5)中のR
101、R
102及びR
103として例示するものと同様のものが挙げられる。L''で表される2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の飽和環状炭化水素基、フェニレン基、ナフチレン基等の不飽和環状炭化水素基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、又は酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
 
【0094】
  式(c1)中、アニオン部の具体的な構造としては、特開2010−113209号公報や、特開2007−145797号公報に記載のものが挙げられる。また、式(c2)中、Eが水素原子の場合の具体的構造としては、特開2010−116550号公報に記載のものが挙げられ、Eがトリフルオロメチル基の場合の具体的構造としては、特開2010−77404号公報に記載のものが挙げられる。
 
【0095】
  前記ポリマーは、更に、酸不安定基によりヒドロキシ基が保護された構造を有する繰り返し単位を含んでもよい。このような繰り返し単位としては、ヒドロキシ基が保護された構造を1つ又は2つ以上有し、酸の作用により保護基が分解してヒドロキシ基が生成するものであれば特に限定されないが、下記式(d1)で表されるものが好ましい。
【化48】
 
【0096】
  式(d1)中、R
Aは、前記と同じ。R
aは、ヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜30の(j+1)価の炭化水素基である。R
bは、酸不安定基である。jは、1〜4の整数である。
 
【0097】
  式(d1)で表される繰り返し単位としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
A及びR
bは、前記と同じである。
【化49】
 
【0101】
  式(d1)中、酸不安定基R
bは、酸の作用により脱保護し、ヒドロキシ基を発生させるものであればよい。R
bの構造は特に限定されないが、アセタール構造、ケタール構造、又はアルコキシカルボニル基等が好ましく、具体的には以下に示すもの等が挙げられる。
【化53】
 
【0102】
  R
bとして特に好ましい酸不安定基は、下記式(d2)で表されるアルコキシメチル基である。
【化54】
(式中、R
cは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜15の1価炭化水素基である。)
 
【0103】
  式(d2)で表される酸不安定基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化55】
 
【0106】
  前記ポリマーは、更に、前述したもの以外の他の繰り返し単位を含んでもよい。例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデセン誘導体等の環状オレフィン類;無水イタコン酸等の不飽和酸無水物;その他の単量体に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
 
【0107】
  前記ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000〜500,000が好ましく、3,000〜100,000がより好ましい。Mwがこの範囲であれば、十分なエッチング耐性が得られ、露光前後の溶解速度差が確保できなくなることによる解像性の低下のおそれがない。なお、本発明においてMwは、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
 
【0108】
  更に、前記ポリマーにおいては、分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。それゆえ、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなりやすいことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト組成物を得るには、前記ポリマーの分子量分布は、1.0〜2.0と狭分散であることが好ましい。
 
【0109】
  前記ポリマーの合成方法の一例としては、不飽和結合を有するモノマーを1種又は数種を、有機溶剤中、ラジカル開始剤を加えて加熱して重合を行う方法が挙げられる。重合反応に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。重合開始剤としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が挙げられる。反応温度は、好ましくは50〜80℃である。反応時間は、好ましくは2〜100時間、より好ましくは5〜20時間である。酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、重合後に保護化あるいは部分保護化してもよい。
 
【0110】
  前記ポリマー中の各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲とすることができるが、これに限定されない。
(I)式(a)で表される繰り返し単位の1種又は2種以上を、好ましくは1〜60モル%、より好ましくは5〜50モル%、更に好ましくは10〜50モル%、
(II)式(b)で表される繰り返し単位の1種又は2種以上を、好ましくは40〜99モル%、より好ましくは50〜95モル%、更に好ましくは50〜90モル%、
(III)式(c1)〜(c3)から選ばれる繰り返し単位の1種又は2種以上を、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜20モル%、更に好ましくは0〜10モル%、及び
(IV)その他の単量体に由来する繰り返し単位の1種又は2種以上を、好ましくは0〜80モル%、より好ましくは0〜70モル%、更に好ましくは0〜50モル%。
 
【0111】
  (B)ベース樹脂としては、前記ポリマーを1種単独で、又は組成比率、Mw及び/又は分子量分布が異なる2種以上を組み合わせて用いることができる。
 
【0112】
[(C)有機溶剤]
  本発明で使用される(C)成分の有機溶剤としては、前述した各成分及び後述する各成分が溶解可能な有機溶剤であれば、特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載の、シクロヘキサノン、メチル−2−n−ペンチルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等を加えることもできる。
 
【0113】
  これらの有機溶剤の中でも、レジスト成分中の酸発生剤の溶解性が特に優れている1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、及びこれらの混合溶剤が特に好ましい。有機溶剤の使用量は、(B)ベース樹脂100質量部に対し、200〜5,000質量部が好ましく、特に400〜3,000質量部がより好ましい。
 
【0114】
[(D)その他の光酸発生剤]
  本発明のレジスト組成物は、更に、前述したスルホニウム化合物以外のその他の光酸発生剤を含んでいてもよい。前記その他の光酸発生剤としては、紫外線、遠紫外線、EB、EUV、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線等の高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であれば、特に限定されない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシジカルボキシイミド、O−アリールスルホニルオキシム、O−アルキルスルホニルオキシム等の光酸発生剤等が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。これらの光酸発生剤としては、例えば、特開2007−145797号公報の段落[0102]〜[0113]に記載のものが挙げられる。
 
【0115】
  好ましい光酸発生剤としては、下記式(5)で表されるものが挙げられる。
【化58】
 
【0116】
  式(5)中、R
101、R
102及びR
103は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。これらのうち、R
101、R
102及びR
103として好ましくは、水素原子が置換されていてもよいアリール基である。
 
【0117】
  また、R
101、R
102及びR
103のうちのいずれか2つが互いに結合して、これらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。この場合のカチオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化59】
 
【0118】
  式中、R
107は、ヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、R
101〜R
103の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。
 
【0119】
  式(5)中、スルホニウムカチオンの具体的な構造としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化60】
 
【0120】
  式(5)中、X
-は、下記式(5A)〜(5D)から選ばれるアニオンである。
【化61】
 
【0121】
  式(5A)中、R
faは、フッ素原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜40の1価炭化水素基を示す。好ましい構造としては、ノナフルオロブタンスルホネート、特開2012−189977号公報の段落[0247]〜[0251]に記載の部分フッ素化スルホネート、特開2013−101271号公報の段落[0261]〜[0265]に記載の部分フッ素化スルホネート、特開2013−101271号公報の段落[0261]〜[0265]に記載の部分フッ素化スルホネート等が挙げられる。
 
【0122】
  式(5A)で表されるアニオンとしては、下記式(5A')で表されるものが特に好ましい。
【化62】
 
【0123】
  式(5A')中、R
111は、水素原子又はトリフルオロメチル基である。R
112は、ヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜30の1価炭化水素基である。R
111に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。前記1価炭化水素基としては、微細パターン形成において高解像性を得る点から、特に炭素数6〜30であるものが好ましい。前記1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、3−シクロヘキセニル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、ノルボルニル基、ノルボルニルメチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、テトラシクロドデカニルメチル基、ジシクロヘキシルメチル基、イコサニル基、アリル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メチルチオメチル基、アセトアミドメチル基、トリフルオロエチル基、(2−メトキシエトキシ)メチル基、アセトキシメチル基、2−カルボキシ−1−シクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、4−オキソ−1−アダマンチル基、3−オキソシクロヘキシル基が挙げられるが、これらに限定されない。
 
【0124】
  式(5A')で表されるアニオンを有するスルホニウム塩の合成に関しては、特開2007−145797号公報、特開2008−106045号公報、特開2009−7327号公報、特開2009−258695号公報等に詳しい。
 
【0125】
  式(5A)で表されるアニオンを有するスルホニウム塩としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Acはアセチル基、Phはフェニル基である。
【化63】
 
【0127】
  式(5B)中、R
fb1及びR
fb2は、それぞれ独立に、フッ素原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜40の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、前記R
112の説明において挙げたものと同様のものが挙げられる。R
fb1及びR
fb2として好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4の直鎖状フッ素化アルキル基である。また、R
fb1及びR
fb2は、互いに結合してこれらが結合する基(−CF
2−SO
2−N
-−SO
2−CF
2−)と共に環を形成してもよく、特にフッ素化エチレン基やフッ素化プロピレン基で環構造を形成するものが好ましい。
 
【0128】
  式(5C)中、R
fc1、R
fc2及びR
fc3は、それぞれ独立に、フッ素原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜40の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、前記R
112の説明において挙げたものと同様のものが挙げられる。R
fc1、R
fc2及びR
fc3として好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4の直鎖状フッ素化アルキル基である。また、R
fc1及びR
fc2は、互いに結合してこれらが結合する基(−CF
2−SO
2−C
-−SO
2−CF
2−)と共に環を形成してもよく、特にフッ素化エチレン基やフッ素化プロピレン基で環構造を形成するものが好ましい。
 
【0129】
  式(5D)中、R
fdは、ヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜40の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、前記R
112の説明において挙げたものと同様のものが挙げられる。
 
【0130】
  式(5D)で表されるアニオンを有するスルホニウム塩の合成に関しては、特開2010−215608号公報に詳しい。
 
【0131】
  式(5D)で表されるアニオンを有するスルホニウム塩としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Phはフェニル基である。
【化65】
 
【0133】
  なお、式(5D)で表されるアニオンを有する光酸発生剤は、スルホ基のα位にフッ素は有していないが、β位に2つのトリフルオロメチル基を有していることに起因して、レジストポリマー中の酸不安定基を切断するには十分な酸性度を有している。そのため、光酸発生剤として使用することができる。
 
【0134】
  また、(D)成分の光酸発生剤として、下記式(6)で表されるものも好ましい。
【化67】
 
【0135】
  式(6)中、R
111及びR
112は、それぞれ独立に、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20のアルキル基である。p1及びp2は、それぞれ独立に、0〜5の整数である。Lは、単結合、エーテル結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜20の2価炭化水素基である。X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、X
1、X
2、X
3及びX
4のうち少なくとも1つは、水素原子以外の置換基である。
 
【0136】
  前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
 
【0137】
  前記2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の飽和環状2価炭化水素基;フェニレン基、ナフチレン基等の不飽和環状2価炭化水素基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基で置換されていてもよい。また、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子間に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。前記ヘテロ原子としては、酸素原子が好ましい。
 
【0138】
  式(6)で表される光酸発生剤としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Gは、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
【化68】
 
【0140】
  (D)光酸発生剤の添加量は、(B)ベース樹脂100質量部に対し、0〜40質量部であるが、配合する場合は、0.1〜40質量部が好ましく、0.1〜20質量部がより好ましい。この範囲であれば、解像性が良好であり、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じるおそれもないため好ましい。(D)光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
 
【0141】
[(E)クエンチャー]
  本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、更に、クエンチャーを含んでもよい。
なお、本発明においてクエンチャーとは、光酸発生剤から発生した酸をトラップする化合物を示す。
 
【0142】
  前記クエンチャーとしては、下記式(7)又は(8)で表されるオニウム塩を含むものが好ましい。
【化70】
 
【0143】
  式中、R
151及びR
152は、それぞれ独立に、水素原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜40の1価炭化水素基であるが、スルホ基のα位の炭素原子に結合する水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたものを除く。又はヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜40の1価炭化水素基である。M
+は、オニウムカチオンである。
 
【0144】
  式(7)中、R
151として具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、又はこれらの基の炭素原子間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原含有基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
 
【0145】
  式(8)中、R
152として具体的には、R
151の具体例として例示した前述の置換基のほか、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基等の含フッ素アルキル基、ペンタフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基等の含フッ素アリール基等も挙げられる。
 
【0146】
  式(7)中、アニオン部分の具体的な構造としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化71】
 
【0148】
  式(8)中、アニオン部分の具体的な構造としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化73】
 
【0149】
  式(7)及び(8)中、前記オニウムカチオンとしては、下記式(9)、(10)又は(11)で表されるものが好ましい。
【化74】
 
【0150】
  式中、R
201〜R
209は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20の1価炭化水素基である。R
201〜R
203のうちいずれか2つは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。R
204及びR
205は、互いに結合してこれらが結合するヨウ素原子と共に環を形成してもよい。また、R
206〜R
209のうちいずれか2つは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。前記1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
 
【0151】
  前記オニウムカチオンとして具体的には、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基である。
【化75】
 
【0153】
  式(7)又は(8)で表されるオニウム塩としては、前述したアニオン及びオニウムカチオンの任意の組み合わせが挙げられる。なお、このようなオニウム塩は、既知の有機化学的手法を用いたイオン交換反応によって容易に調製できる。イオン交換は公知の方法で容易に行うことができ、例えば特開2007−145797号公報を参考にすることができる。
 
【0154】
  式(7)又は(8)で表されるオニウム塩は、これに含まれるアニオンが、弱酸の共役塩基であるため、クエンチャーとして機能する。ここで弱酸とは、ベース樹脂に使用する酸不安定基含有単位の酸不安定基を脱保護させることのできない酸性度を意味する。式(7)又は(8)で表されるオニウム塩は、α位がフッ素化されたスルホン酸のような強酸の共役塩基をカウンターアニオンとして有するオニウム塩型光酸発生剤と併用したときにクエンチャーとして機能する。すなわち、α位がフッ素化されたスルホン酸のような強酸を発生するオニウム塩と、フッ素置換されていないスルホン酸やカルボン酸のような弱酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると塩交換により弱酸を放出し、強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができ、すなわちクエンチャーとして機能することとなる。
 
【0155】
  ここで強酸を発生する光酸発生剤がオニウム塩である場合は、前述したように高エネルギー線照射により生じた強酸が弱酸に交換することはできるが、一方で高エネルギー線照射により生じた弱酸は未反応の強酸を発生するオニウム塩と衝突して塩交換を行うことはしづらいと考えられる。これは、オニウムカチオンがより強酸のアニオンとイオン対を形成しやすいという現象に起因する。
 
【0156】
  式(7)又は(8)で表されるオニウム塩の配合量は、(B)ベース樹脂100質量部に対し、0〜40質量部であるが、配合する場合は0.1〜40質量部が好ましく、更には0.1〜20質量部が好ましい。多すぎると解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じるおそれがある。式(7)又は(8)で表されるオニウム塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
 
【0157】
  (E)クエンチャーは、式(7)又は(8)で表されるオニウム塩化合物のほかに、必要に応じて含窒素置換基を有する光分解性オニウム塩を併用してもよい。このような化合物は、未露光部ではクエンチャーとして機能し、露光部は自身からの発生酸との中和によってクエンチャー能を失う、いわゆる光崩壊性塩基として機能する。光崩壊性塩基を用いることによって、露光部と未露光部のコントラストをより強めることができる。光崩壊性塩基としては、例えば。特開2009−109595号公報、特開2012−46501号公報、特開2013−209360号公報等に記載のものが挙げられる。
 
【0158】
  なお、前記光崩壊性塩基の配合量は、(B)ベース樹脂100質量部に対し、0〜40質量部であるが、配合する場合は0.1〜40質量部が好ましく、更には0.1〜20質量部が好ましい。多すぎると解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じるおそれがある。光崩壊性塩基は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
 
【0159】
  本発明のレジスト組成物には、クエンチャーとして更にアミン化合物を添加してもよい。これを添加することにより、光酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる。このようなアミン化合物としては、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載の1級、2級又は3級のアミン化合物、特に、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル結合を有するアミン化合物が挙げられる。また、特許第3790649号公報に記載の化合物のように、1級又は2級アミンをカーバメート基で保護した化合物も挙げることができる。
 
【0160】
  なお、アミン化合物の配合量は、(B)ベース樹脂100質量部に対し、0〜12質量部であるが、配合する場合は0.001〜12質量部が好ましく、0.01〜8質量部がより好ましい。アミン化合物を配合することで、感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させることができる。また、基板密着性を向上させることもできる。アミン化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
 
【0161】
[(F)水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤]
  本発明のレジスト組成物は、(F)水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤(疎水性樹脂)を含んでもよい。このような界面活性剤としては、特開2010−215608号公報や特開2011−16746号公報に記載のものを参照することができる。
 
【0162】
  水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤としては、前記公報に記載の界面活性剤の中でも、FC−4430、サーフロン(登録商標)S−381、サーフィノール(登録商標)E1004、KH−20、KH−30、下記式(surf−1)で表されるオキセタン開環重合物等が好ましい。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化77】
 
【0163】
  ここで、R、Rf、A、B、C、m、nは、前述の記載にかかわらず、式(surf−1)のみに適用される。Rは、2〜4価の炭素数2〜5の脂肪族基である。前記脂肪族基としては、2価のものとしてはエチレン基、1,4−ブチレン基、1,2−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,5−ペンチレン基等が挙げられ、3価又は4価のものとしては下記のものが挙げられる。
【化78】
(式中、破線は結合手であり、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
 
【0164】
  これらの中でも、1,4−ブチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が好ましい。
 
【0165】
  Rfは、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基であり、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは、0〜3の整数であり、nは、1〜4の整数であり、nとmの和はRの価数であり、2〜4の整数である。Aは、1である。Bは、2〜25の整数であり、好ましくは4〜20の整数である。Cは、0〜10の整数であり、好ましくは0又は1である。また、式(surf−1)中の各構成単位は、その並びを規定したものではなく、ブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては、米国特許第5650483号明細書等に詳しい。
 
【0166】
  水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、ArF液浸露光においてレジスト保護膜を用いない場合、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有する。そのため、レジスト膜からの水溶性成分の溶出を抑えて露光装置へのダメージを下げるために有用であり、また、露光後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)後のアルカリ現像時には可溶化し、欠陥の原因となる異物にもなり難いため有用である。このような界面活性剤は、水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な性質であり、高分子型の界面活性剤であって、疎水性であり、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。
 
【0167】
  このような高分子型界面活性剤としては、以下に示すもの等が挙げられる。
【化79】
 
【0168】
  式中、R
e1は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
e2は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜20の、アルキル基若しくはフッ素化アルキル基であり、同一繰り返し単位内のR
e2は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、この場合、合計して直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2〜20の、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。
 
【0169】
  R
e3は、フッ素原子、水素原子、又はR
e4と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜10の非芳香環を形成してもよい。R
e4は、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜6のアルキレン基であり、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。R
e5は、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状の炭素数1〜10のアルキル基であり、R
e4とR
e5とが結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環を形成していてもよく、この場合、R
e4、R
e5及びこれらが結合する炭素原子で炭素数3〜12の3価の有機基を形成する。R
e6は、単結合、又は炭素数1〜4のアルキレン基である。
 
【0170】
  R
e7は、それぞれ独立に、単結合、−O−又は−CR
e1R
e1−である。R
e8は、直鎖状の炭素数1〜4又は分岐状の炭素数3〜4のアルキレン基であり、同一繰り返し単位内のR
e2と結合して、これらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜6の非芳香環を形成してもよい。R
e9は、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基又は1,4−ブチレン基である。
 
【0171】
  R
e10は、直鎖状の炭素数3〜6のパーフルオロアルキル基、3H−パーフルオロプロピル基、4H−パーフルオロブチル基、5H−パーフルオロペンチル基又は6H−パーフルオロヘキシル基である。L
eは、それぞれ独立に、−C(=O)−O−、−O−又は−C(=O)−R
e11−C(=O)−O−であり、R
e11は、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキレン基である。
 
【0172】
  また、0≦(a'−1)≦1、0≦(a'−2)≦1、0≦(a'−3)≦1、0≦b'≦1、及び0≦c'≦1であり、0<(a'−1)+(a'−2)+(a'−3)+b'+c'≦1である。
 
【0173】
  前記繰り返し単位の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
e1は、前記と同じである。
 
【0175】
  前記水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、特開2008−122932号公報、特開2010−134012号公報、特開2010−107695号公報、特開2009−276363号公報、特開2009−192784号公報、特開2009−191151号公報、特開2009−98638号公報、特開2010−250105号公報、特開2011−42789号公報等も参照できる。
 
【0176】
  前記高分子型界面活性剤のMwは、1,000〜50,000が好ましく、2,000〜20,000がより好ましい。この範囲内であれば、表面改質効果が十分であり、現像欠陥を生じたりすることが少ない。
 
【0177】
  (F)成分の配合量は、(B)ベース樹脂100質量部に対し、0〜20質量部であるが、配合量する場合、その下限は、0.001質量部が好ましく、0.01質量部がより好ましい。一方、その上限は、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましい。
 
【0178】
[パターン形成方法]
  本発明は、更に、前述したレジスト組成物を用いたパターン形成方法を提供する。本発明のレジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。具体的には、例えば、集積回路製造用の基板(Si、SiO
2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi
2、SiO
2等)に、スピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2μmとなるように本発明のレジスト組成物を塗布し、これをホットプレート上で好ましくは60〜150℃、1〜10分間、より好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
 
【0179】
  次いで、目的のパターンを形成するためのマスクを前記のレジスト膜上にかざし、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV等の高エネルギー線を、露光量が好ましくは1〜200mJ/cm
2、より好ましくは10〜100mJ/cm
2となるように照射する。または、EBを、露光量が好ましくは1〜300μC/cm
2、より好ましくは10〜200μC/cm
2となるように照射する。露光は、通常の露光法のほか、屈折率1.0以上の液体をレジスト膜と投影レンズとの間に介在させて行う液浸法を用いることも可能である。この場合、前記液体としては、水が好ましい。水を用いる場合には、水に不溶な保護膜をレジスト膜の上に形成してもよい。
 
【0180】
  次いで、ホットプレート上で、好ましくは60〜150℃、1〜5分間、より好ましくは80〜140℃、1〜3分間PEBする。更に、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、好ましくは0.1〜3分間、より好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することで、基板上に目的のパターンが形成される。
 
【0181】
  前述した水に不溶な保護膜は、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1つはレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型と、もう1つはアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有するポリマーをベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。前述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料とすることもできる。
 
【0182】
  また、パターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
 
【0183】
  更に、ダブルパターニング法によってパターン形成をしてもよい。ダブルパターニング法としては、1回目の露光とエッチングで1:3トレンチパターンの下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3トレンチパターンを形成して1:1のパターンを形成するトレンチ法、1回目の露光とエッチングで1:3孤立残しパターンの第1の下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3孤立残しパターンを第1の下地の下に形成した第2の下地を加工してピッチが半分の1:1のパターンを形成するライン法が挙げられる。
 
【0184】
  本発明のパターン形成方法において、現像液として前記アルカリ水溶液の現像液のかわりに、有機溶剤を用いて未露光部を現像/溶解させるネガティブトーン現像の手法を用いてもよい。
 
【0185】
  この有機溶剤現像には、現像液として、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチル等を用いることができる。これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
 
【実施例】
【0186】
  以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、Mwは、溶剤としてTHFを用いたGPCによるポリスチレン換算測定値である。また、使用した装置は、以下のとおりである。
・IR:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、NICOLET 6700
・
1H-NMR:日本電子(株)製ECA-500
・
19F-NMR:日本電子(株)製ECA-500
・MALDI-TOF-MS:日本電子(株)製S3000
・GC-MS:アジレント・テクノロジー社製GC.6890N MS.5973
【0187】
[1]スルホニウム化合物の合成
[実施例1−1]中間体Aの合成
【化81】
【0188】
  4−フェニルチオフェノール220gを、テトラヒドロフラン550g及び水133gの混合溶剤に溶解した。この溶液に、25質量%苛性ソーダを室温で滴下し、15分間熟成後、化合物A352gをテトラヒドロフラン250gに溶解し、室温にて滴下した。一晩熟成後、5質量%塩酸を加えてクエンチし、得られた反応液をヘキサン620g及びトルエン620gを加えて薄め、水洗した後、有機層に1質量%苛性ソーダを加えて分液を行った。分液後、有機層に2.5質量%塩酸を加え、再び水洗し、分液した後、有機層を濃縮し、目的物である中間体A208gを無色油状物として得た(収率65%)。
【0189】
  中間体AのIRスペクトル及びGC−MSデータを以下に示す。また、核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR、
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図1及び
図2に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測された。
IR(D-ATR): 3527, 3072, 1594, 1583, 1494, 1478, 1440, 1408, 1373, 1320, 1222, 1171, 1084, 1062, 1025, 1011, 983, 918, 828, 741, 729, 690 cm
-1.
GC-MS: [M] 382
【0190】
[実施例1−2]中間体Bの合成
【化82】
【0191】
  中間体A183gを酢酸1,300gに溶解させ、35質量%過酸化水素水51gを氷冷下で加えた。室温で一晩熟成させた後、チオ硫酸ナトリウム25gを水120gに溶解し、室温で反応液に滴下した。1時間攪拌後、反応液を酢酸エチル2,000g及びトルエン1,000gを加えて薄め、そこへ水を1,000g加えて水洗した後、有機層に1質量%苛性ソーダを加えて分液を行った。得られた有機層を一度水洗し、2.5質量%塩酸を加えて分液した。得られた有機層を水洗し、濃縮した後、酢酸エチルを加えて50質量%酢酸エチル溶液を調製した。得られた溶液をノルマルヘキサン及びトルエンの混合溶剤(質量比=2:1)の中に滴下して晶出を行い、得られた白色粉末を減圧乾燥することで、目的物である中間体B118gを得た。
【0192】
  中間体BのIRスペクトル及びTOF−MSデータを以下に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR、
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図3及び
図4に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測された。
IR(D-ATR): 3091, 3062, 1595, 1579, 1500, 1464, 1445, 1417, 1387, 1316, 1249, 1217, 1185, 1165, 1090, 1068, 1057, 1016, 997, 970, 947, 936, 838, 829, 757, 729, 690, 636, 629, 582, 569, 559 cm
-1.
TOF-MS(MALDI): POSITIVE [M+H]
+399
【0193】
[実施例1−3]中間体Cの合成
【化83】
【0194】
  中間体B117gを、ジイソプロピルエチルアミン69g及びアセトニトリル590gの混合溶剤に溶解し、そこへクロロメチルメチルエーテル36gを氷冷下で滴下した。室温で一晩熟成後、水800g及びトルエン800gを加えて分液を行った。有機層を一度水洗し、1質量%アンモニア水で洗った後、再び水洗した。続いて、1質量%塩酸で洗った後水洗を行い、有機層を分取した。得られた有機層を減圧濃縮し、得られた固体を減圧乾燥することで、目的物である中間体C127gを白色結晶として得た(収率82%)。
【0195】
  中間体CのIRスペクトル及びTOF−MSデータを以下に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR、
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図5及び
図6に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測された。
IR(D-ATR): 3467, 3065, 2911, 2832, 1593, 1496, 1476, 1444, 1408, 1334, 1284, 1245, 1216, 1152, 1107, 1091, 1079, 1046, 1022, 999, 966, 924, 876, 830, 750, 731, 709, 689, 640, 614, 562 cm
-1.
TOF-MS(MALDI): POSITIVE [M+H]
+443
【0196】
[実施例1−4]中間体Dの合成
【化84】
【0197】
  中間体C127gをテトラヒドロフラン506gに溶解させ、そこへ別途調製したグリニャール試薬を氷冷下で滴下した。続いて、クロロトリメチルシラン93gを氷冷下で滴下した。室温で一晩熟成後、10質量%塩化アンモニウム水溶液496gを氷冷下で加えた後、メチルイソブチルケトン800gと水200gを加え、中間体Dを含む有機層を分取し、次の反応に移った。
【0198】
[実施例1−5]中間体Eの合成
【化85】
【0199】
  実施例1−4で得られた有機層に、化合物B130gと水200gを加え、分液を行い、有機層を分取した。分取した有機層を、2.5質量%の化合物Bの水溶液で3回、次いで純水で5回洗浄を行った。得られた有機層を減圧濃縮し、油状物を得た。ジイソプロピルエーテルを用いてデカンテーションを行い、再度減圧濃縮することで、目的物である中間体E204gを得た(収率68%)。
【0200】
  中間体EのIRスペクトル及びTOF−MSデータを以下に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR、
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図7及び
図8に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測された。
IR(D-ATR): 3280, 3103, 2979, 1589, 1494, 1478, 1448, 1407, 1260, 1228, 1156, 1106, 1072, 989, 966, 924, 836, 750, 732, 685, 644, 560 cm
-1.
TOF-MS(MALDI): POSITIVE M
+521((C
6H
5)(C
6H
4F)(C
6H
4OCH
2CH(CF
3)
2OCH
2OCH
3)S
+相当)
               NEGATIVE M
-229(CCF
3(OH)CF
2SO
3-相当)
【0201】
[実施例1−6]スルホニウム化合物Aの合成
【化86】
【0202】
  水素化ナトリウム2.5gをテトラヒドロフラン125gに溶解させ、中間体E45gをテトラヒドロフラン121gに溶解させた溶液中に、5℃以下で滴下した。室温で一晩熟成させた後、5℃以下で水を加えた。メチルイソブチルケトン300gを加えて分液後、有機層を分取し、水洗を行った。続いて1質量%塩酸で洗った後、水洗を行い、有機層を分取した。得られた有機層を減圧濃縮し、油状物を得た。得られた油状物をジイソプロピルエーテルを用いてデカンテーションを行い、濾過した後に得られた固体を減圧乾燥することで、スルホニウム化合物A39gを白色結晶として得た(収率58%)。
【0203】
  スルホニウム化合物AのIRスペクトル及びTOF−MSデータを以下に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR、
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図9及び
図10に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、水)が観測された。
IR(D-ATR): 3511, 3100, 2981, 1588, 1494, 1448, 1417, 1248, 1183, 1154, 1106, 1073, 996, 966, 924, 884, 834, 750, 732, 685, 642, 584 cm
-1.
TOF-MS(MALDI): [M] 731
【0204】
[2]ポリマーの合成
  本発明のレジスト組成物に用いるポリマーを以下に示す処方で合成した。なお、下記例中における“GPC”はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーのことであり、得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は、溶剤としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算値として測定した。
【0205】
[合成例1]ポリマーP1の合成
  窒素雰囲気下、メタクリル酸1−tert−ブチルシクロペンチル22g、メタクリル酸=2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル17g、V−601(和光純薬工業(株)製)0.48g、2−メルカプトエタノール0.41g、及びメチルエチルケトン50gをフラスコに入れ、単量体−重合開始剤溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコにメチルエチルケトン23gを入れ、攪拌しながら80℃まで加熱した後、そこへ前記単量体−重合開始剤溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間攪拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた反応液を、激しく攪拌したメタノール640g中に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をメタノール240gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して36gの白色粉末状のポリマーP1を得た(収率90%)。ポリマーP1をGPCにて分析したところ、Mwは8,755、分散度(Mw/Mn)は1.94であった。
【化87】
【0206】
[合成例2〜10]ポリマーP2〜P10の合成
  各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例1と同様の手順により、ポリマーP2〜P10を合成した。得られたポリマーP1〜P10の組成を下記表1に示す。なお、表1において、導入比はモル比を示す。また表1中、各単位の構造を下記表2及び表3に示す。
【0207】
【表1】
【0208】
【表2】
【0209】
【表3】
【0210】
[3]レジスト組成物の調製
[実施例2−1〜2−12、比較例1−1〜1−4]
  スルホニウム化合物A、ポリマー、クエンチャー、アルカリ可溶型界面活性剤(SF−1)、溶剤、及び必要に応じてスルホニウム化合物A以外の光酸発生剤を、下記表4に示す組成にて界面活性剤A(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶剤中に溶解し、得られた溶液を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することで、レジスト組成物を調製した。また、比較例用としてスルホニウム化合物Aを含まないレジスト組成物を下記表4に示す組成にて調製した。
【0211】
  なお、表4において、溶剤、光酸発生剤、及びアルカリ可溶型界面活性剤(SF−1)は、以下のとおりである。
・PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・GBL:γ−ブチロラクトン
【0212】
・PAG−X:トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート
・PAG−Y:下記式で表される化合物(特許文献5を参考に調製)
【化88】
【0213】
・Q−A:ラウリン酸2−(4−モルホリニル)エチルエステル
・Q−B:トリフェニルスルホニウム=サリチレート
【0214】
・アルカリ可溶型界面活性剤(SF−1): 特開2008−122932号公報に記載の化合物
ポリ(メタクリル酸3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−2−トリフルオロメチルプロピル・メタクリル酸1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−トリフルオロメチルヘプタ−4−イル)
    Mw=7,300
    Mw/Mn=1.86
【化89】
【0215】
・界面活性剤A:3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(下記式)
【化90】
    a:(b+b'):(c+c')=1:4〜7:0.01〜1(モル比)
    Mw=1,500
【0216】
【表4】
【0217】
[4]ArF露光評価(1)
[実施例3−1〜3−12、比較例2−1〜2−4]
  シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(100nm膜厚)基板上に、各レジスト組成物(R1〜R16)をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、膜厚90nmのレジスト膜を作製した。これをArF液浸エキシマレーザースキャナー((株)ニコン製NSR-S610C、NA1.30、二重極、Crマスク)を用いて液浸露光し、表5に示す温度で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%TMAH水溶液で60秒間現像を行った。なお、液浸液としては、水を用いた。
【0218】
[感度評価]
  40nmの1:1ラインアンドスペースパターンを対象とし、電子顕微鏡にて観察、ライン寸法幅が40nmとなる露光量を最適露光量(Eop)とした。最適露光量におけるパターン形状を比較し、良否を判別した。
【0219】
[ライン幅ラフネス(LWR)評価]
  40nmの1:1ラインアンドスペースのライン部の線幅変動をSEMにより測定し、LWRとした(30点測定、3σ値を算出)。LWR値が小さいほど、ラインパターンの揺らぎがなく、良好である。
【0220】
[倒れ限界評価]
  露光量を大きくすることでライン寸法を細らせた場合に、ラインが倒れずに解像する最小寸法を求め、倒れ限界とした。数値が小さいほど倒れ耐性が高く好ましい。
【0221】
[焦点深度(DOF)評価]
  最適露光量においてラインアンドスペースパターンが解像しているフォーカス範囲を求め、DOFとした。DOFの値が大きいほど、フォーカス変動に対する許容マージンが広く好ましい。
【0222】
  各評価結果を表5に示す。
【0223】
【表5】
【0224】
  表5に示した結果より、本発明のレジスト組成物は高解像性かつLWRにも優れ、ArF液浸リソグラフィーの材料として好適であることが示された。
【0225】
[5]ArF露光評価(2)
[実施例4−1〜4−12、比較例3−1〜3−4]
  各レジスト組成物(R1〜R16)を、信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL-50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上にケイ素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(ケイ素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上へスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、膜厚100nmのレジスト膜を得た。これをArF液浸エキシマレーザースキャナー((株)ニコン製NSR-S610C、NA1.30、σ0.98/0.78、4/5輪帯照明)を用いて、以下に説明するマスクA又はBを介してパターン露光を行った。なお、液浸液としては、水を用いた。
【0226】
  ウエハー上寸法がピッチ100nm、ライン幅50nmのラインが配列された6%ハーフトーン位相シフトマスクAを用いて照射を行った。露光後任意の温度にて60秒間の熱処理(PEB)を施した後、現像ノズルから酢酸ブチルを3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後静止パドル現像を27秒間行った。その結果、マスクで遮光された未露光部分が現像液に溶解してイメージ反転されたスペース幅50nm、ピッチ100nmのラインアンドスペースパターン(以下、LSパターン)が得られた。
【0227】
  ウエハー上寸法がピッチ200nm、ライン幅45nmのラインが配列された6%ハーフトーン位相シフトマスクBを用いて照射を行った。露光後任意の温度にて60秒間の熱処理(PEB)を施した後、現像ノズルから酢酸ブチルを3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後静止パドル現像を27秒間行った。その結果、マスクで遮光された未露光部分が現像液に溶解してイメージ反転されたスペース幅45nm、ピッチ200nmの孤立スペースパターン(以下、トレンチパターン)が得られた。
【0228】
[感度評価]
  感度として、前記マスクAを用いた評価において、スペース幅50nm、ピッチ100nmのLSパターンが得られる最適露光量(Eop)を求めた。
【0229】
[LWR評価]
  前記マスクAを用いた評価において、前記感度評価における最適露光量で照射してLSパターンを得る。(株)日立ハイテクノロジーズ製TDSEM(S−9380)でスペース幅の長手方向に10箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をLWRとして求めた。この値が小さいほど、ラフネスが小さく均一なスペース幅のパターンが得られる。
【0230】
[DOFマージン評価]
  焦点マージン評価として、前記マスクBを用いたトレンチパターンにおける35nmのスペース幅を形成する露光量及び焦点深度をそれぞれ最適露光量及び最適焦点深度としたまま、焦点深度を変化させたときに、35nmスペース幅の±10%(31.5〜38.5nm)の範囲内で形成されるDOFマージンを求めた。この値が大きいほど焦点深度の変化に対するパターン寸法変化が小さく、焦点深度マージン(DOF)が良好である。
【0231】
[倒れ限界評価]
  前記マスクBを用いたトレンチパターンにおいて、露光量を小さくすることでトレンチ寸法は拡大し、ライン寸法は縮小するが、ラインが倒れずに解像するトレンチ幅の最大寸法を求め、とした。数値が大きいほど倒れ耐性が高く好ましい。
【0232】
  各評価結果を表6に示す。
【0233】
【表6】
【0234】
  表6に示した結果より、本発明のレジスト組成物が、有機溶剤現像によるネガティブパターン形成においてLWRに優れることがわかった。また、トレンチパターンのDOFマージンに優れるとともに、倒れ限界も大きく、すなわち解像性能に優れることも確認された。以上のことから、本発明のレジスト組成物は、有機溶剤現像プロセスにおいても有用であることが示された。
【0235】
  なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。前記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。