特許第6673300号(P6673300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673300
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/32 20160101AFI20200316BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   G09G3/32 A
   G09G3/20 612U
   G09G3/20 641E
   G09G3/20 611H
   G09G3/20 641P
   G09G3/20 641K
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-126797(P2017-126797)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-8260(P2019-8260A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】松本 誠
(72)【発明者】
【氏名】田口 晴久
【審査官】 橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−327508(JP,A)
【文献】 特開2003−308042(JP,A)
【文献】 特開2005−234037(JP,A)
【文献】 特開2009−229865(JP,A)
【文献】 特開2001−159879(JP,A)
【文献】 特開2006−195306(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0023653(KR,A)
【文献】 国際公開第2015/141164(WO,A1)
【文献】 特開2008−205066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/32
G09G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有し、前記複数の画素それぞれが、緑色に発光する第1LEDと、緑色とは異なる色に発光する第2LEDと、を含む表示部と、
複数のメインフレームそれぞれにおいて、外部から入力される階調データに応じて前記第1LED及び前記第2LEDをそれぞれパルス幅変調により点灯制御する制御部と、を備える表示装置であって、
前記制御部は、所定のメインフレームで、前記複数の画素のうち所定の画素に含まれる第1LEDを、前記階調データに応じた第1LED階調値よりも低い補正後第1LED階調値で点灯制御する一方、前記所定の画素に含まれる第2LEDを前記階調データに応じた第2LED階調値で点灯制御し、
前記複数のメインフレームそれぞれは複数のサブフレームを有し、
前記所定のメインフレームは、前記複数のメインフレームに含まれる少なくとも1つのメインフレームであって、前記第1LED階調値が第1基準値より低く、前記第2LED階調値が第2基準値より低く、且つ、前記第1LEDを点灯制御する少なくとも1つのサブフレームで、少なくとも1つの点灯期間における点灯期間全体に対する定常状態期間の割合が50%未満の所定値より小さいメインフレームであり、前記点灯期間は、LEDの出力が定格値の10%から90%になるまでの立ち上がり時間、LEDの出力が定格値の90%より大きい定常状態期間、及びLEDの出力が定格値の90%から10%になるまでの立ち下がり時間からなる期間である表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数のメインフレームのうち、前記第1LEDを点灯制御する少なくとも1つのサブフレームで、少なくとも1つの点灯期間における点灯期間全体に対する定常状態期間の割合が前記所定値以上となるメインフレームでは、前記所定の画素に含まれる第1LEDを前記第1LED階調値で点灯制御する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記複数の画素それぞれは、さらに、前記第1LED及び前記第2LEDとは異なる色に発光する第3LEDを含み、
前記制御部は、さらに、前記所定のメインフレームで、前記所定の画素に含まれる第3LEDを前記階調データに応じた第3LED階調値で点灯制御し、
前記所定のメインフレームは、さらに、前記第3LED階調値が第3基準値より低いメインフレームである請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
複数の画素を有し、前記複数の画素それぞれが、緑色に発光する第1LEDと、緑色とは異なる色に発光する第2LEDと、を含む表示部と、
複数のメインフレームそれぞれにおいて、外部から入力される階調データに応じて前記第1LED及び前記第2LEDをそれぞれパルス幅変調により点灯制御する制御部と、を備える表示装置であって、
前記制御部は、所定のメインフレームで、前記複数の画素のうち所定の画素に含まれる第1LEDを前記階調データに応じた第1LED階調値で点灯制御する一方、前記所定の画素に含まれる第2LEDを前記階調データに応じた第2LED階調値よりも高い補正後第2LED階調値で点灯制御し、
前記複数のメインフレームそれぞれは複数のサブフレームを有し、
前記所定のメインフレームは、前記複数のメインフレームに含まれる少なくとも1つのメインフレームであって、前記第1LED階調値が第1基準値より低く、前記第2LED階調値が第2基準値より低く、且つ、前記第1LEDを点灯制御する少なくとも1つのサブフレームで、少なくとも1つの点灯期間における点灯期間全体に対する定常状態期間の割合が50%未満の所定値より小さいメインフレームであり、前記点灯期間は、LEDの出力が定格値の10%から90%になるまでの立ち上がり時間、LEDの出力が定格値の90%より大きい定常状態期間、及びLEDの出力が定格値の90%から10%になるまでの立ち下がり時間からなる期間である表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数のメインフレームのうち、前記第1LEDを点灯制御する少なくとも1つのサブフレームで、少なくとも1つの点灯期間における点灯期間全体に対する定常状態期間の割合が前記所定値以上となるメインフレームでは、前記所定の画素に含まれる第2LEDを前記第2LED階調値で点灯制御する請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数の画素それぞれは、さらに、前記第1LED及び前記第2LEDとは異なる色に発光する第3LEDを含み、
前記制御部は、さらに、前記所定のメインフレームで、前記所定の画素に含まれる第3LEDを前記階調データに応じた第3LED階調値よりも高い補正後第3LED階調値で点灯制御し、
前記所定のメインフレームは、さらに、前記第3LED階調値が第3基準値より低いメインフレームである請求項4又は5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第2LEDは、赤色に発光するLEDであり、
前記第3LEDは、青色に発光するLEDである、
請求項3又は6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記補正後第3LED階調値で点灯制御される前記第3LEDの輝度の測定値は10cd/m以下である請求項6、または請求項6を引用する請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記補正後第1LED階調値で点灯制御する前記第1LEDの輝度の測定値は50cd/m以下である請求項1から請求項3のいずれか一項、または請求項3を引用する請求項7に記載の表示装置。
【請求項10】
前記補正後第2LED階調値で点灯制御する前記第2LEDの輝度の測定値は20cd/m以下である請求項4から6のいずれか一項、または請求項6を引用する請求項7に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のLEDを有する表示部と、複数のLEDを点灯制御する制御部と、を備えた表示装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−054989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の表示装置では、低階調値(低輝度)になると、所定のLEDの色度及び輝度が不安定になり、所定の画素の色度を所望の色度またはこれに近い色度に維持できない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、例えば、次の手段により解決することができる。
【0006】
複数の画素を有し、前記複数の画素それぞれが、緑色に発光する第1LEDと、緑色とは異なる色に発光する第2LEDと、を含む表示部と、複数のメインフレームそれぞれにおいて、外部から入力される階調データに応じて前記第1LED及び前記第2LEDをそれぞれ点灯制御する制御部と、を備える表示装置であって、前記制御部は、所定のメインフレームで、前記複数の画素のうち所定の画素に含まれる第1LEDを、前記階調データに応じた第1LED階調値よりも低い補正後第1LED階調値で点灯制御する一方、前記所定の画素に含まれる第2LEDを前記階調データに応じた第2LED階調値で点灯制御し、前記複数のメインフレームそれぞれは複数のサブフレームを有し、前記所定のメインフレームは、前記複数のメインフレームに含まれる少なくとも1つのメインフレームであって、前記第1LED階調値が第1基準値より低く、前記第2LED階調値が第2基準値より低く、且つ、前記第1LEDを点灯制御する少なくとも1つのサブフレームで、少なくとも1つの点灯期間における点灯期間全体に対する定常状態期間の割合が50%未満の所定値より小さいメインフレームである表示装置。
【発明の効果】
【0007】
階調データに応じた階調値(輝度)が非常に低い場合でも、所定の画素を実際に観測(測定)して得られる色度を所望の色度またはこれに近い色度に維持できる表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る表示装置1の回路図である。
図2】緑色に発光するLED、青色に発光するLED、及び赤色に発光するLEDに関して、順方向電流と輝度の関係を示す図である。
図3A】第1LEDの時間と出力との関係の一例を示す図である。
図3B】第2LEDの時間と出力との関係の一例を示す図である。
図3C】第3LEDの時間と出力との関係の一例を示す図である
図4】制御部20の動作例を説明するタイミングチャートである。
図5】第1LED11〜14に対する制御例をより詳細に説明する図である。
図6】第2LED21〜24に対する制御例をより詳細に説明する図である。
図7】制御部20の他の動作例を説明するタイミングチャートである。
図8】第1LED11〜14に対する他の制御例をより詳細に説明する図である。
図9】第2LED21〜24に対する他の制御例をより詳細に説明する図である。
図10】表1に基づく色度図である。
図11】表2に基づく色度図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は実施形態に係る表示装置1の回路図である。図1に示すように、表示装置1は表示部10と制御部20とを有する。表示部10は複数の画素を有し、各画素は、緑色に発光する第1LED11〜14、赤色に発光する第2LED21〜24、及び青色に発光する第3LED31〜34をそれぞれ1つ以上用いて構成される。各画素では、各画素を構成するLEDからの光の色が混色される。各画素の階調値(輝度)は各画素を構成するLEDの階調値(輝度)に基づいて定まり、各LEDの階調値(輝度)は各LEDの点灯期間に基づいて定まる。
【0010】
ところで、階調データに応じた階調値(輝度)が非常に低い場合は、LEDの点灯期間が非常に短くなり、LEDの色度及び輝度が不安定になる。このため、階調データに応じた階調値(輝度)でLEDが点灯するよう点灯制御を行っても、LEDを実際に観測(測定)して得られる階調値(輝度)が、階調データに応じた階調値(輝度)に等しくならない、あるいはこれに近い値にならない虞がある。
【0011】
そこで、表示装置1では、階調データに応じた階調値(輝度)が非常に低い場合には、階調データに応じた階調値(輝度)ではなく、これよりも低い階調値(輝度)で所定のLEDを点灯制御することにしている。具体的に説明すると、複数のLED11〜34のうち、緑色に発光する第1LED11〜14については、階調データに応じた階調値(輝度)が非常に低い場合、これに基づいて点灯制御を行っても、実際に観測(測定)して得られる階調値(輝度)が、階調データに応じた階調値(輝度)よりも高くなる虞がある。そこで、緑色に発光する第1LED11〜14については、階調データに応じた階調値(輝度)が非常に低い場合には、階調データに応じた階調値(輝度)ではなく、これよりも低い階調値(輝度)に基づいてこれを点灯制御するものとしている。このような点灯制御を行っても、緑色に発光する第1LED11〜14について、色度の不安定さは改善されない。しかし、実際に観測(測定)して得られる階調値(輝度)が、階調データに応じた階調値(輝度)から大きくずれることが抑制されるため、緑色に発光する第1LED11〜14の色度及び輝度の不安定さにより、1つの画素全体の色度及び輝度が不安定になることを抑制することができる。よって、所定の画素の色度を所望の色度あるいはこれに近い色度に維持することができる。
【0012】
(複数のLED11〜34)
表示部10は複数の画素を有している。各画素は、例えば、第1LED11〜14、第2LED21〜24、及び第3LED31〜34をそれぞれ1つ以上用いて構成される。各LEDは例えば窒化ガリウム系やヒ化ガリウム系の半導体を用いてなる。例えば、緑色に発光する第1LED11〜14及び青色に発光する第3LED31〜34には窒化ガリウム系の半導体、赤色に発光する第2LED21〜24にはヒ化ガリウム系又はリン化ガリウム系の半導体を用いることができる。第1LED11〜14は、典型的には、順方向電流20mAでの発光ピーク波長が500nm以上560nm以下の波長域にあるLEDである。第2LED21〜24は、典型的には、順方向電流20mAでの発光ピーク波長が615nm以上645nm以下の波長域にあるLEDである。第3LED31〜34は、典型的には、順方向電流20mAでの発光ピーク波長が450nm以上490nm以下の波長域にあるLEDである。
【0013】
図2は、緑色に発光するLED、青色に発光するLED、及び赤色に発光するLEDに関して、順方向電流と輝度の関係を示す図である。図2中の輝度は順方向電流が20mAのときの値を1とした相対値である。図2において、実線は緑色に発光するLEDにおける順方向電流と輝度の関係を示し、一点鎖線は赤色に発光するLEDにおける順方向電流と輝度の関係を示し、点線は青色に発光するLEDにおける順方向電流と輝度の関係を示す。非常に低い階調値(輝度)で点灯制御を行う場合は、LEDに流れる電流が非常に小さくなる。しかるところ、図2に示すように、順方向電流が20mA以下である場合、つまり、LEDに流れる電流が非常に小さくなる場合は、緑色に発光するLEDを実際に観測(測定)して得られる輝度が、想定している輝度(階調データに応じた輝度)よりも高くなる。この結果、同じ階調値(輝度)に基づいて点灯制御を行っても、緑色に発光するLEDを実際に観測(測定)して得られる輝度は、他の色に発光するLEDを実際に観測(測定)して得られる輝度よりも高くなる。以下、その理由について説明する。
【0014】
図3Aは第1LEDにおける時間と出力との関係の一例を示す図である。図3Bは第2LEDにおける時間と出力との関係の一例を示す図である。図3Cは第3LEDにおける時間と出力との関係の一例を示す図である。図3Aから図3Cにおいて、横軸は時間であり、縦軸は出力に相当する値である。また、図3Aから図3Cにおいて、横軸の1つの目盛りは200nsであり、横軸は10の目盛りで表している。図3Aから図3Cに示すように、LEDをパルス駆動させる場合、1つの点灯期間(LEDの出力の立ち上がりから立ち下がりまでの期間)は定常状態期間と過渡状態期間を有する。定常状態期間とはLEDの出力が安定している期間をいい、過渡状態期間とはLEDの出力が不安定にある期間をいう。過渡状態期間は特にLEDの出力の立ち上がり時と立ち下がり時とに見られる。過渡状態期間では、LEDの出力が安定しないため、LEDの色度及び輝度が不安定になる。
【0015】
図3Aに示すように、緑色に発光する第1LED11〜14は、出力の立ち上がり時間や立ち下がり時間が長く、1つの点灯期間のうちより多くの区間が過渡状態期間で占められる。立ち上がり時間とは出力が定格値の10%から90%になるまでに要する時間であり、立ち下がり時間とは出力が定格値の90%から10%になるまでに要する時間である。
(1)第1LED11〜14
出力の立ち上がり時間=約130〜150ns
出力の立ち下がり時間=約220〜240ns
(2)第2LED21〜24
出力の立ち上がり時間=約40〜45ns
出力の立ち下がり時間=約50〜55ns
(3)第3LED31〜34
出力の立ち上がり時間=約60〜70ns
出力の立ち下がり時間=約80〜100ns
したがって、1つの点灯期間が非常に短くなり、1つの点灯期間のうちより多くの区間が過渡状態期間で占められるようになると、緑色に発光する第1LED11〜14は、他の色に発光するLEDよりも、その色度及び輝度が不安定になりやすい。
【0016】
また、緑色に発光する第1LED11〜14は、他の色に発光するLEDよりも、流れる電流値がばらつくことによる色度及び輝度のばらつきが大きく、過渡状態期間における色度及び輝度が、定常状態期間における色度及び輝度から大きくずれやすい。しかるところ、1つの点灯期間が非常に短くなると、流れる電流値がばらつきやすい。したがって、この点でも、緑色に発光する第1LED11〜14は、他の色に発光するLEDよりも、その色度及び輝度が不安定になりやすい。なお、流れる電流値のばらつきに起因して色度及び輝度がばらつく理由の詳細は必ずしも明らかではないが、LEDの材料の違いが原因の少なくとも一つではないかと考えられる。つまり、活性層に含まれるInが多いLEDは、少ないLEDよりも、電流値が異なることによる色度及び輝度の変化が大きいものと考えられる。このため、例えば、第1LED11〜14の活性層に、第2LED21〜24の活性層よりも多くのInが含まれる場合は、第1LED11〜14の方が、第2LED21〜24よりも、流れる電流値のばらつきに起因した色度及び輝度のばらつきが大きくなる傾向にあると考えられる。
【0017】
図3B図3Cに示すように、赤色に発光する第2LED21〜24や青色に発光する第3LED31〜34は、緑色に発光する第1LED11〜14と比べて、出力の立ち上がり時間と立下り時間が比較的短い。このため、点灯期間が非常に短くなっても、過渡状態期間は比較的短く、定常状態期間は比較的長めに確保される。また、第2LED21〜24や第3LED31〜34は、流れる電流値がばらつくことによる色度及び輝度のばらつきが比較的小さく、過渡状態期間における色度及び輝度が、定常状態期間における色度及び輝度から大きくは異ならない。したがって、赤色に発光する第2LED21〜24や青色に発光する第3LED31〜34は、1つの点灯期間が非常に短くなっても、その色度及び輝度は比較的安定している。
【0018】
(共通ラインCOM1、COM2)
共通ラインCOM1、COM2は、複数のLED11〜34の一端に接続される。複数のLED11〜34は、アノードコモンで共通ラインCOM1、COM2に接続されてもよいし、カソードコモンで共通ラインCOM1、COM2に接続されてもよい。共通ラインCOM1、COM2の各々は、途中で枝分かれ、すなわち分岐していてもよい。本実施形態では共通ラインの数を2本としているが、共通ラインの数は1本以上であればよい。
【0019】
(複数の駆動ラインSEG11〜SEG32)
複数の駆動ラインSEG11〜SEG32は、複数のLED11〜34の他端に接続される。
【0020】
共通ラインCOM1、COM2や駆動ラインSEG11〜SEG32には、銅箔などを用いることができる。銅箔とは例えばプリント配線基板の配線の一部のことである。共通ラインCOM1、COM2や駆動ラインSEG11〜SEG32は、プリント配線基板などにおいて、線状、面状(例:四角状、円状)などの様々な形状に形成することができる。「ライン」としたのは、プリント配線基板などに形成される共通ラインCOM1、COM2や駆動ラインSEG11〜SEG32の実際の形状を線状に限定する趣旨ではなく、単に回路図において共通ラインCOM1、COM2や駆動ラインSEG11〜SEG32を模式化した場合にこれを線で表示可能であるからに過ぎない。
【0021】
(電源V)
電源Vは、複数のLED11〜34に電圧を供給する。電源Vは、共通ラインの数が2本以上である場合、共通ラインごとに設けられてもよい。ただし、2本以上の共通ラインで電源Vを共有することもできる。電源Vが2本以上の共通ラインで共有される場合、電源Vの電圧は、スタティック制御方式により各共通ラインに常時印加されてもよいし、ダイナミック制御方式により時分割で印加されてもよい。電源Vには、例えばシリーズ方式やスイッチング方式などの直流の定電圧源を用いることができる。
【0022】
(ソースドライバSW11、SW12)
ソースドライバSW11、SW12は、共通ラインCOM1、COM2と電源Vを接続するためのスイッチであり、制御部20により時分割でON、OFFされる。ソースドライバSW11、SW12としては、Pチャネル型FETやPNPトランジスタを用いることができる。FETは、Field Effect Transistorの略である。
【0023】
(シンクドライバSW21〜SW26)
シンクドライバSW21〜SW26は、複数の駆動ラインSEG11〜SEG32の各々に接続される。シンクドライバSW21〜SW26は、複数の駆動ラインSEG11〜SEG32をGNDに接続するためのスイッチであり、制御部20によりON、OFFされる。シンクドライバSW21〜SW26としてはNPNトランジスタやNチャネル型FETなどを用いることができる。駆動ラインSEG11〜SEG32に流れる電流は抵抗や定電流源などの素子や装置によって制御することができる。これらの素子や装置は、各シンクドライバSW21〜SW26とGNDの間、もしくは、各シンクドライバSW21〜SW26と複数のLED11〜34の間に配置することができる。
【0024】
(制御部20)
制御部20には、FPGA、マイコン、あるいはこれらを組み合わせたものを用いることができる。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略である。
【0025】
制御部20は、第1LED11〜14、第2LED21〜24、及び第3LED31〜34をそれぞれ点灯制御する。この点灯制御は、例えばパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)により行なわれる。すなわち、制御部20は、シンクドライバSW21〜SW26をON、OFFして、所定のパルス幅を有する電圧を複数のLED11〜34に印加することにより、複数のLED11〜34を制御する。一例を挙げると、制御部20は、例えばシンクドライバSW12とシンクドライバSW25をON、OFFすることにより、電源V→共通ラインCOM2→第2LED24→駆動ラインSEG22→GNDの経路に所定のパルス幅の電圧を印加し電流を流す。これにより第2LED24が所定の時間点灯する。この点灯が継続する時間を本明細書では点灯期間という。
【0026】
図4は制御部20の動作例を説明するタイミングチャートである。図4に示すように、制御部20は、複数のメインフレームそれぞれにおいて、第1LED11〜14、第2LED21〜24、及び第3LED31〜34をそれぞれ点灯制御する。複数のメインフレームそれぞれは複数のサブフレームを有し、制御部20は、個々のサブフレームそれぞれにおいて、所定のパルス幅を有する電圧を点灯対象となるLEDに印加する。1つのメインフレームの長さは、複数のメインフレームで映像などを表示する場合は16.7ms(60Hz)や20ms(50Hz)であるのが好ましく、テロップを表示する場合は8ms〜15msであるのが好ましい。
【0027】
個々のサブフレームの階調値(輝度)は、個々のサブフレームにおける電圧のパルス幅(点灯期間)に対応する。階調値(輝度)が高くなるほどパルス幅(点灯期間)は長くなり、階調値(輝度)が低くなるほどパルス幅(点灯期間)は短くなる。階調値(輝度)とパルス幅(点灯期間)の定量的な関係は様々に定義することができる。本実施形態では、階調値「零」はパルス幅「零」に対応するものとし、階調値が零である場合はパルス幅が零になるものとする。なお、本明細書では、LEDを点灯させない場合でも、「階調値0でLEDを点灯制御する」、あるいは「パルス幅0の電圧を印加しLEDに電流を流す」と表現することがある。
【0028】
図5は第1LED11〜14に対する制御例をより詳細に説明する図である。図5中、最も左側に位置する列は、外部から入力される階調データに応じた、1つのメインフレームにおける第1LED11〜14の階調値を示し、その右に続く4つの列はそのメインフレームを構成する各サブフレームでの第1LED11〜14の階調値を示す。
【0029】
図6は第2LED21〜24に対する制御例をより詳細に説明する図である。図5の場合と同様に、図6中、最も左側に位置する列は、外部から入力される階調データに応じた、1つのメインフレームにおける第2LED21〜24の階調値を示し、その右に続く4つの列はそのメインフレームを構成する複数のサブフレームでの第2LED21〜24の階調値を示す。
【0030】
1つのメインフレームにおける第1LED11〜14の点灯制御は、複数のサブフレームそれぞれにおいて、図5の右4列に示した各階調値に対応する点灯期間(パルス幅)で第1LED11〜14が点灯するよう点灯制御することにより行なわれる。同様に、1つのメインフレームにおける第2LED21〜24の点灯制御は、複数のサブフレームそれぞれにおいて、図6の右4列に示した各階調値に対応する点灯期間(パルス幅)で第2LED21〜24が点灯するよう点灯制御することにより行なわれる。
【0031】
個々のサブフレームでの階調値を合計した値が1つのメインフレームでの階調値となる。この点、本実施形態では、図5に示すとおり、第1LED11〜14については、階調データに応じた階調値が非常に低くなる場合には、個々のサブフレームでの階調値を合計した値(つまり右4列に記載された階調値を合計した値)が、階調データに応じた階調値(つまり最も左側の列に記載された階調値)よりも低くなるものとし、そうでない場合は、階調データに応じた階調値(つまり最も左側の列に記載された階調値)に等しくなるものとしている。これに対し、第2LED21〜24については、図6に示すとおり、個々のサブフレームでの階調値を合計した値(つまり右4列に記載された階調値を合計した値)が、常に、階調データに応じた階調値(つまり最も左側の列に記載された階調値)に等しくなるものとしている。本明細書では、第nLEDの「階調データに応じた階調値」を第n階調値といい、第nLEDの「階調データに応じた階調値より低い階調値」を補正後第n階調値という。ここで、nは1≦n≦3の条件を満たす整数である。
【0032】
図5図6に示すように、制御部20は、所定のメインフレームにおいて、第1LED階調値を補正し、第1LED階調値よりも低い補正後第1LED階調値で第1LED11〜14を点灯制御する。すなわち、所定のメインフレームにおける第1LED11〜14の補正後の階調値(個々のサブフレームでの階調値を合計した値)は、階調データに応じた第1LED階調値よりも低い。他方、制御部20は、第2LED階調値でそのまま第2LED21〜24を点灯制御する。
【0033】
所定のメインフレームとは、階調データに応じた階調値が低く、これに対応する点灯期間が短くなるため、第1LED11〜14について実際に観測(測定)される色度及び輝度が、所望の色度及び輝度(階調データに応じた色度及び輝度)とはなり難いメインフレームである。具体的には、複数のメインフレームに含まれる少なくとも1つのメインフレームであって、第1LED階調値が第1基準値より低く、第2LED階調値が第2基準値より低く、且つ、第1LEDを点灯制御する少なくとも1つのサブフレームで、少なくとも1つの点灯期間における点灯期間全体に対する定常状態期間の割合が0%以上50%未満の所定値より小さいメインフレームである。ここで、第1基準値と第2基準値は同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。本実施形態では第1基準値と第2基準値は同じで値であり、ともに階調値8である。
【0034】
補正後第1LED階調値は第1LED階調値よりも小さく、好ましくは第1LED階調値より2以上36未満小さく、より好ましくは10以上20未満小さい。本実施形態では、第1階調値が2以上である場合には、補正後第1LED階調値+1=第1LED階調値の関係が成立するものとする。ただし、第1LED階調値が0又は1の場合には、階調値をこれ以上低くすることができないため(負の階調値は存在せず、また、階調値1を階調値0にするとまったく点灯しないことになるため。)、第1LED階調値を補正せず、第1LED階調値でそのまま第1LEDを点灯制御する。なお、本実施形態では、補正後第1LED階調値で点灯する第1LEDの輝度の測定値(実際に観測や測定して得られる輝度)は50cd/m以下であるものとする
【0035】
制御部20は、所定のメインフレーム以外のメインフレームでは、第1LEDを第1LED階調値でそのまま点灯制御し、第2LEDを第2LED階調値でそのまま点灯制御してもよい。所定のメインフレーム以外のメインフレームでは、階調データに応じた階調値も比較的高く、第1LED11〜14の色度及び輝度は比較的安定しているため、第1LED階調値を補正する必要はなく、第1LEDを補正後第1LED階調値で動作させる必要はない。具体的には、例えば、次の(1)から(3)の少なくともいずれか1つの条件が満たされるメインフレームが所定のメインフレーム以外のメインフレームに該当する。
(1)第1LED階調値が第1基準値に等しく若しくは第1基準値より大きい。
(2)第2LED階調値が第2基準値に等しく若しくは第2基準値より大きい。
(3)第1LEDを点灯制御する少なくとも1つのサブフレームで、少なくとも1つの点灯期間における点灯期間全体に対する定常状態期間の割合が0%以上50%未満の所定値以上である。
例えば、輝度:5000cd/m、色度:X値=0.290、Y値=0.300にて各LEDを点灯させるメインフレームなどは、これら(1)から(3)の少なくともいずれか1つの条件が満たされるメインフレームの一例である。
【0036】
第3LED31〜34に対する制御は、第2LED21〜24に対する制御と同じであるため図示及び詳細な説明を省略する。簡単に説明すると、制御部20は、所定のメインフレームで、第3LEDを階調データに応じた第3LED階調値でそのまま点灯制御することができる。また、制御部20は、所定のメインフレーム以外のメインフレームでも、第3LEDを、階調データに応じた第3LED階調値でそのまま点灯制御することができる。ただし、この場合における所定のメインフレームは、上述した条件に加えて、第3LED階調値が第3基準値より低いとの条件を満たすメインフレームとする。第3基準値は第1基準値や第2基準値と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0037】
以上説明したように、表示装置1によれば、階調データに応じた階調値(輝度)が非常に低い場合には、低階調値での点灯制御において出力が不安定になりがちな緑色に発光する第1LED11〜14を、階調データに応じた階調値(輝度)よりも低い階調値(輝度)で点灯制御する。すなわち、緑色に発光する第1LED11〜14を、階調データに応じた階調値(輝度)に対応する点灯期間よりも短い点灯期間で点灯制御する。このような点灯制御を行っても、緑色に発光する第1LED11〜14について、色度の不安定さは改善されない。しかし、実際に観測(測定)して得られる階調値(輝度)が、階調データに応じた階調値(輝度)から大きくずれることが抑制されるため、緑色に発光する第1LED11〜14の色度及び輝度の不安定さにより、1つの画素全体の色度及び輝度が不安定になることを抑制することができる。よって、所定の画素を実際に観測(測定)して得られる色度を所望の色度あるいはこれに近い色度に維持することができる。
【0038】
階調データに応じた第1LED階調値には、階調データで指定された第1LED階調値そのもののほか、階調データで指定された第1LED階調値を、電流値や点灯期間の最適化などの観点からあらかじめ補正した階調値が含まれる。後者の場合は階調データで指定された第1LED階調値があらかじめ1回以上補正され、その後、本実施形態に従いさらに補正されて、補正後第1LED階調値が得られることになる。第2LED階調値や第3LED階調値を補正する後述の場合も同様である。
【0039】
制御部20は、所定の画素に対して本実施形態に従う点灯制御を実行する。すなわち、すべての画素に含まれる第1LED11〜14、第2LED21〜24、及び第3LED31〜34に対して本実施形態に従う点灯制御を実行してもよいし、複数の画素のうち一部の画素に含まれる第1LED11〜14、第2LED21〜24、及び第3LED31〜34に対してのみ、本実施形態に従う点灯制御を実行してもよい。画素における色度ずれを低減させる観点からは、すべての画素に含まれる第1LED11〜14、第2LED21〜24、及び第3LED31〜34に対して、本実施形態に従う点灯制御を実行することが好ましい。
【0040】
[制御部20の他の動作例]
図7は制御部20の他の動作例を説明するタイミングチャートである。図8は第1LED11〜14に対する他の制御例をより詳細に説明する図である。図9は第2LED21〜24に対する他の制御例をより詳細に説明する図である。図7図9に示すように、制御部20は、所定のメインフレームで、第1LEDを、階調データに応じた第1LED階調値でそのまま点灯制御する一方、第2LEDを、階調データに応じた第2LED階調値よりも高い補正後第2LED階調値で点灯制御してもよい。すなわち、第1LEDを、階調データに応じた第1LED階調値に対応する点灯期間でそのまま点灯制御する一方、第2LEDを、階調データに応じた第2LED階調値に対応する点灯期間よりも長い点灯期間で点灯制御してもよい。また、制御部20は、所定のメインフレームで、第3LEDを、階調データに応じた第3LED階調値よりも高い補正後第3LED階調値で点灯制御してもよい。すなわち、第3LEDを、階調データに応じた第3LED階調値に対応する点灯期間よりも長い点灯期間で点灯制御してもよい。このように、第1LED階調値は補正せずにそのままにして、第2LED階調値や第3LED階調値を補正することによっても、上記した動作例と同様の効果を得ることができる。
【0041】
補正後第2LED階調値は第2LED階調値よりも大きく、好ましくは第2LED階調値より2以上18未満大きく、より好ましくは5以上10未満大きい。本実施形態では、補正後第2LED階調値−1=第2LED階調値の関係が成立するものとする。同様に、補正後第3LED階調値は第3LED階調値よりも大きく、好ましくは第3LED階調値より2以上18未満大きく、より好ましくは5以上10未満大きい。本実施形態では、補正後第3LED階調値−1=第3LED階調値の関係が成立するものとする。なお、本実施形態では、補正後第2LED階調値で点灯する第2LEDの輝度の測定値(実際に観測や測定して得られる輝度)は20cd/m以下であるものとし、補正後第3LED階調値で点灯する第3LEDの輝度の測定値(実際に観測や測定して得られる輝度)は10cd/m以下であるものとする。
【0042】
以上、制御部20の他の動作例について説明したが、その他の点については、先に説明した動作例と同じであるので、説明を省略する。
【0043】
[実施例に係る表示装置]
次に、実施例に係る表示装置について説明する。
【0044】
実施例に係る表示装置は、縦横4mmの間隔で配置される1728個のLEDと、横方向に配置される24本の共通ラインと、縦方向に配置される216本(72本×3色)の駆動ラインと、電源としての直流5Vの定電圧源と、制御部としてのFPGAと、ソースドライバとしてのPチャネル型FETと、シンクドライバとしての定電流駆動のNPNトランジスタと、を有する。
【0045】
表示装置は576個の画素を有し、それぞれの画素が1個の緑色に発光する第1LED、1個の赤色に発光する第2LED、及び1個の青色に発光する第3LEDからなる。換言すると、1728個のLEDは、576個の緑色に発光する第1LED、576個の赤色に発光する第2LED、及び576個の青色に発光する第3LEDからなる。シンクドライバは、第1LEDには18.7mAの電流を流し、第2LEDには16.8mAの電流を流し、第3LEDには16.8mAの電流を流すように設定されている。共通ラインはLEDのアノード側に接続され、駆動ラインはLEDのカソード側に接続される。
【0046】
各共通ラインには、ダイナミック点灯方式により、時分割で電圧が印加される。Duty比は1/24であり、1つの共通ラインに電圧が印加されている時間は47.9usであり、どの共通ラインにも電圧が印加されていない時間は10usである。ここで、(47.9μs+10μs)×24Duty=1.389msであるため、1つのサブフレームの長さは1.389msである。
【0047】
1つのメインフレームは32個のサブフレームで構成される。1.389ms×32=44.4msであるため、1つのメインフレームの長さは44.4msである。
【0048】
各サブフレームの階調値はパルス幅変調により64段階(0〜63)に制御できる。メインフレーム全体の階調値(第1LED階調値)は、サブフレーム数32×64段階=2048段階(0〜2047)に制御することができる。パルス幅と階調値とは、パルス幅=階調値×72.9nsの関係にある。
【0049】
第1LEDについては、パルス幅が1166.7ns以上の電圧、すなわち、階調値16以上の電圧(1166.7ns/72.9ns≒16)を印加することで、観測(測定)において、所望の色度及び輝度(パルス幅が十分に大きい時の色度及び輝度。以下、本実施例において同じ。)に近い色度及び輝度を得ることができる。他方、第2LED及び第3LEDについては、パルス幅が72.9ns以上の電圧、すなわち、階調値1以上の電圧(72.9ns/72.9ns=1)を印加することにより、観測(測定)において、所望の色度及び輝度に近い色度及び輝度を得ることができる。
【0050】
以上の表示装置において、階調データに応じた第1LED階調値(メインフレーム全体の階調値)が32である場合と1024である場合とについて検討する。
【0051】
階調データに応じた第1LED階調値(メインフレーム全体の階調値)が32である場合において、メインフレーム全体の階調値を各サブフレームに均等配分すると、各サブフレームにおける階調値が1(メインフレーム全体の階調値32/サブフレーム数32=1)となり、各サブフレームにおけるパルス幅が72.9ns(72.9ns×階調値1=72.9ns)となる。このため、すべてのサブフレームにおいて、緑色に発光する第1LEDの色度及び輝度は不安定になり、実際に観測(測定)した場合における色度及び輝度が、所望の色度及び輝度からずれる。そこで、制御部は、階調データに応じた第1LED階調値(メインフレーム全体の階調値)が32である場合には、第1LED階調値を32から20に下げ、補正後第1LED階調値20で第1LEDを点灯制御する。具体的には、所定のサブフレームにおける階調値を1→0に変更してメインフレーム全体の階調値を20にする。
【0052】
他方、階調データに応じた第1LED階調値(メインフレーム全体の階調値)が1024である場合においては、メインフレーム全体の階調値を各サブフレームに均等配分しても、各サブフレームにおける階調値は32(メインフレーム全体の階調値1024/サブフレーム数32=32)となる。このため、各サブフレームにおけるパルス幅は2333.3ns(72.9ns×階調値32=2333.3ns)であり、緑色の第1LEDは所望の色度及び輝度で点灯することが観測(測定)される。
【0053】
なお、制御部は、階調データに応じた第1LED階調値(メインフレーム全体の階調値)が32である場合と1024である場合のいずれの場合においても、第2LED及び第3LEDについては、すべてのサブフレームにおいて階調値1にて点灯制御を行う。
【0054】
以上の点灯制御により、実際の観測(測定)で得られる色度及び輝度を以下の表1に示し、表1に基づく色度図を図8に示す。
【表1】
ここで、表1中、「Red」は第2LEDを実際に観測(測定)して得られる色度及び輝度を示し、「Green」は第1LEDを実際に観測(測定)して得られる色度及び輝度を示し、「Blue」は第3LEDを実際に観測(測定)して得られる色度及び輝度を示す。また、「White」はすべてのLEDを全体的に実際に観測(測定)して得られる色度及び輝度を示す。すなわち、「White」は、第1LEDを実際に観測(測定)して得られる色度及び輝度と、第2LEDを実際に観測(測定)して得られる色度及び輝度と、「Blue」は第3LEDを実際に観測(測定)して得られる色度及び輝度と、を合成した色度及び輝度を示す。
【0055】
表1に示されるとおり、実施例に係る表示装置では、「White」の色度が、第1LED階調値が32である場合(つまり、補正後第1LED階調値20で点灯制御する場合)にはx値=0.298、y値=0.300となり、第1LED階調値が1024である場合(つまり、第1LED階調値1024でそのまま点灯制御する場合)にはx値=0.289、y値=0.300となる。したがって、第1LED階調値が32である場合と1024である場合とにおいて、x値については0.009(0.032=0.298−0.289)のずれが生じ、y値についてはずれが生じない(0.012=0.300−0.300)。なお、それぞれのLEDの輝度は、第1LED階調値が32である場合、「White」が5.8cd/m、「Red」が1.3cd/m、「Green」が3.7cd/m、「Blue」が0.5cd/mである。また第1LED階調値が1024である場合、「White」が204.8cd/m、「Red」が48.6cd/m、「Green」が141.7cd/m、「Blue」が16.4cd/mである。
【0056】
次に、比較例に係る表示装置について説明する。
【0057】
比較例に係る表示装置は、第1LEDの点灯制御の点で、実施例に係る表示装置と相違する。その他の構成は実施例に係る表示装置と同様である。具体的に説明すると、比較例では、階調データに応じた第1LED階調値(メインフレーム全体の階調値)が32である場合においても、メインフレーム全体の階調値を各サブフレームに均等配分し、すべてのサブフレームにおいて第1LEDを階調値1(色度及び輝度が安定しない階調値)で点灯させる。このような点灯制御により、実際の観測(測定)で得られる色度及び輝度を以下の表2に示し、表2に基づく色度図を図9に示す。
【表2】
【0058】
表2に示されるとおり、比較例に係る表示装置では、「White」の色度が、第1LED階調値が32である場合(つまり、第1LED階調値32でそのまま点灯制御する場合)にはx値=0.294、y値=0.357となり、第1LED階調値が1024である場合(つまり、第1LED階調値1024でそのまま点灯制御する場合)にはx値=0.289、y値=0.300となる。したがって、第1LED階調値が32である場合と1024である場合とにおいて、x値については0.005(0.055=0.294−0.289)のずれが生じ、y値については0.057(0.022=0.357−0.300)のずれが生じる。なお、それぞれのLEDの輝度は、第1LED階調値が32である場合、「White」が8.0cd/m、「Red」が1.3cd/m、「Green」が5.9cd/m、「Blue」が0.5cd/mである。また第1LED階調値が1024である場合、「White」が204.9cd/m、「Red」が48.5cd/m、「Green」が140.9cd/m、「Blue」が16.4cd/mである。
【0059】
以上のとおり、比較例に係る表示装置では、第1LED階調値が32である場合と1024である場合とにおいて、「White」における色度のx値については0.005のずれが生じ、y値については0.057のずれが生じる。しかしながら、実施例に係る表示装置によれば、当該ずれを、x値については0.009になるものの、y値についてはこれを零にすることができる。つまり、実施例及び比較例のいずれにおいても、第1LEDの色度にはずれが生じており、且つ、ずれの程度はほぼ同じである。しかしながら、実施例に係る表示装置では、実際に観測(測定)して得られる第1LEDの輝度が階調データに応じた値よりも低くなるため、第1LEDの輝度のずれに起因する影響が小さくなり、第1LED、第2LED、及び第3LEDが混色してなる「White」の色度のずれは低減される。その一方、比較例に係る表示装置では、実際に観測(測定)して得られる第1LEDの輝度が階調データに応じた輝度よりも大きくなるため、第1LEDの輝度のずれが影響し、「White」の色度が大きくずれる。
【0060】
以上、実施形態及び実施例について説明したが、これらの説明は、一例に関するものであり、特許請求の範囲に記載した構成を何ら限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る表示装置は、例えば大型テレビや交通情報を表示する掲示板などに利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 表示装置
10 表示部
20 制御部
30 記憶部
LED11〜34 LED
COM1〜2 共通ライン
SEG11〜SEG32 駆動ライン
V 電源
SW11〜12 ソースドライバ
SW21〜SW26 シンクドライバ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11