特許第6673370号(P6673370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6673370-ポジ型感光性樹脂組成物 図000032
  • 特許6673370-ポジ型感光性樹脂組成物 図000033
  • 特許6673370-ポジ型感光性樹脂組成物 図000034
  • 特許6673370-ポジ型感光性樹脂組成物 図000035
  • 特許6673370-ポジ型感光性樹脂組成物 図000036
  • 特許6673370-ポジ型感光性樹脂組成物 図000037
  • 特許6673370-ポジ型感光性樹脂組成物 図000038
  • 特許6673370-ポジ型感光性樹脂組成物 図000039
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673370
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20200316BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   G03F7/023
   G03F7/20 521
   G03F7/20 501
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-564970(P2017-564970)
(86)(22)【出願日】2016年2月5日
(86)【国際出願番号】JP2016000618
(87)【国際公開番号】WO2017134701
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2018年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 大作
(72)【発明者】
【氏名】中村 惟允
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−096927(JP,A)
【文献】 特開2008−224984(JP,A)
【文献】 特開2013−205801(JP,A)
【文献】 特開2011−148971(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/111470(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/057638(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/081950(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/001780(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/135887(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/109099(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)架橋剤と、(c)感光剤と、(d)溶剤とを含有し、
前記(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体が下記式(1)で表される構造を含み、
前記(b)架橋剤が下記式(3)で表され、
前記(c)感光剤が下記式(2)で表される構造を含む化合物である
ポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Uは2価の有機基、単結合、−O−又は−SO−であり、Vは脂肪族直鎖構造を含む基であり、前記脂肪族直鎖構造の炭素数は5〜10である。)
【化2】
(式(3)中、Rは、各々独立に、水素原子又は−CH−O−Rであり、複数のRの少なくとも1つは−CH−O−Rである。Rは、各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基又はブチル基である。)
【化3】
【請求項2】
前記(b)架橋剤が下記式(4)で表される請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化4】
【請求項3】
前記(c)感光剤が下記式(5)で表される請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】
(式(5)中、Qは、各々独立に、水素原子又は下記式(6)で表される基である。少なくとも1つのQは下記式(6)で表される基である。)
【化6】
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
前記露光を行った感光性樹脂膜を、アルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項5】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が200℃以下である請求項に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項に記載の硬化物を用いた層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項8】
請求項に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、そのポジ型感光性樹脂組成物の硬化物、その硬化物を用いた層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜、それらを含む電子部品、及びパターン硬化膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜及び層間絶縁膜には、優れた耐熱性、電気特性及び機械特性等を併せ持つポリイミドやポリベンゾオキサゾールが用いられている。近年、これらの樹脂自身に感光特性を付与した感光性樹脂組成物が用いられており、これによってパターン硬化膜の製造工程が簡略化でき、煩雑な製造工程を短縮できる。
【0003】
パターン硬化膜の製造工程において、現像工程ではN−メチルピロリドン等の有機溶剤が用いられていたが、環境への配慮から、ポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体に感光剤としてナフトキノンジアジド化合物を混合する方法により、アルカリ水溶液で現像可能な樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
ところで、近年、コンピュータの高性能化を支えてきたトランジスタの微細化はスケーリング則の限界に直面しており、さらなる高性能化や高速化のために半導体素子を3次元的に積層する技術が必須と考えられている。このような背景のもと、TSV(Through Silicon Via)を用いた3次元パッケージ、インターポーザを用いた2.5次元パッケージ、又は2.1次元パッケージが提案されており、これらに代表される積層デバイス構造が注目を集めている(例えば、非特許文献1)。
【0005】
積層デバイス構造の中でも、マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ(Multi−die Fanout Wafer Level Packaging)は、1つのパッケージの中に複数のダイを一括封止して製造するパッケージであり、1つのパッケージの中に1つのダイを封止して製造する従来のファンアウトウエハレベルパッケージよりも低コスト化、高性能化が期待できるので、非常に注目を集めている。
【0006】
しかしながら、マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージの製造において、高性能なダイの保護や耐熱性の低い封止材を保護し歩留まりを向上させる観点から、200℃超の熱処理を行うことはできない。このため、銅の再配線を行うための再配線形成層として使用するポリベンゾオキサゾール前駆体にも、低温硬化性が強く求められている(特許文献3)。
【0007】
200℃以下の低温硬化の場合であっても、高温硬化時と同等以上の特性が再配線形成層には要求される。具体的に、微細なパターニングを行うために高い解像度を有することに加え、高い薬液耐性と高い接着性を有することが要求される。
薬液耐性は、マルチダイファンアウトパッケージ作製時における銅再配線のめっきプロセスへの対応に必要である。具体的に、めっきプロセスでは、めっき作製用のレジストを用いて銅めっきした後、レジストを除去するために強力な薬液であるレジスト剥離液を使用するが、この薬液に対する耐性が求められる。接着性(銅の再配線と再配線形成層の間の接着性)は、信頼性確保の観点から非常に重要である。
しかしながら、従来の再配線形成層用の樹脂組成物(ポリベンゾオキサゾール前駆体を用いたポジ型感光性樹脂組成物)にとって、低温硬化した場合に高い薬液耐性と接着性を有することは難しく、当該パッケージの作製に対応できなかった。
【0008】
特許文献4には、ポリベンゾオキサゾール前駆体に特定の架橋剤と感光剤を組み合わせることで高感度及び高解像度が達成されることが開示されているが、低温硬化時の硬化膜の特性は低かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−265520号公報
【特許文献2】国際公開2014/115233号パンフレット
【特許文献3】国際公開2008/111470号パンフレット
【特許文献4】特開2011−164289号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「半導体技術年鑑2013 パッケージング/実装編」、株式会社日経BP、2012年12月、p.41−50
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、200℃以下の低温で硬化させた場合であっても薬液耐性に優れるポジ型感光性樹脂組成物を提供することである。
【0012】
本発明者らは、上記問題に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、特定のポリベンゾオキサゾール前駆体と特定の感光剤を組み合わせることで、低温で硬化させた場合であっても薬液耐性に優れることを見出した。
本発明によれば、以下のポジ型感光性樹脂組成物等が提供される。
1.(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)架橋剤と、(c)感光剤と、(d)溶剤とを含有し、
前記(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体が下記式(1)で表される構造を含み、
前記(c)感光剤が下記式(2)で表される構造を含む化合物である
ポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Uは2価の有機基、単結合、−O−又は−SO−であり、Vは脂肪族構造を含む基であり、前記脂肪族構造の炭素数は1〜30である。)
【化2】
2.前記(b)架橋剤が下記式(3)で表される1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】
(式(3)中、Rは、各々独立に、水素原子又は−CH−O−Rであり、複数のRの少なくとも1つは−CH−O−Rである。Rは、各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基又はブチル基である。)
3.前記(b)架橋剤が下記式(4)で表される1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化4】
4.前記(c)感光剤が下記式(5)で表される1〜3のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】
(式(5)中、Qは、各々独立に、水素原子又は下記式(6)で表される基である。少なくとも1つのQは下記式(6)で表される基である。)
【化6】
5.前記式(1)のVの脂肪族構造が、炭素数5〜10の脂肪族直鎖構造である1〜4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
6.1〜5のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
前記露光を行った感光性樹脂膜を、アルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
7.前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が200℃以下である6に記載のパターン硬化膜の製造方法。
8.1〜5のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物。
9.8に記載の硬化物を用いた層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
10.9に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【0013】
本発明によれば、200℃以下の低温で硬化させた場合であっても薬液耐性に優れるポジ型感光性樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程の一部を説明する概略断面図である。
図2】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程の一部を説明する概略断面図である。
図3】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程の一部を説明する概略断面図である。
図4】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程の一部を説明する概略断面図である。
図5】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程の一部を説明する概略断面図である。
図6】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程の一部を説明する概略断面図である。
図7】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程の一部を説明する概略断面図である。
図8】UBM(アンダーバンプメタル)フリーの構造を有するファンアウトパッケージの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)架橋剤と、(c)感光剤と、(d)溶剤とを含有し、(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体が下記式(1)で表される構造を含み、(c)感光剤が下記式(2)で表される構造を含む化合物である。
【化7】
(式(1)中、Uは2価の有機基、単結合、−O−又は−SO−であり、Vは脂肪族構造を含む基であり、前記脂肪族構造の炭素数は1〜30である。)
【化8】
【0017】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、上記の成分を含むことによって200℃以下と低温で硬化を行った場合でも、高温硬化時に得られるパターン硬化膜と同等以上の高い薬液耐性を有するパターン硬化膜を形成できる。また、解像度の高いパターンを感度よく形成でき、銅等への接着性にも優れる。そのため、マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージに代表される積層デバイス構造の作製に好適に適用することが可能である。
【0018】
以下、各成分について説明する。以下、(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(b)架橋剤、(c)感光剤、(d)溶剤を、それぞれ(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分と記す場合がある。
【0019】
((a)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体)
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、パターニング時に使用する光源(i線)の透過率が高く、200℃以下の低温硬化時にも高い硬化膜特性を示すものが好ましい。そのため、ポリベンゾオキサゾール前駆体は、上記式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【0020】
式(1)中のVは、脂肪族構造(炭素数1〜30)を含む基である。本発明において「脂肪族構造」は脂環式構造を含む。当該脂肪族構造は脂肪族鎖状構造であると好ましく、脂肪族直鎖構造であるとより好ましい。また、当該脂肪族構造の炭素数は、好ましくは5〜20であり、より好ましくは5〜10である。
【0021】
Vはジカルボン酸に由来する構造であることが好ましく、Vを与える原料ジカルボン酸としては、ドデカン二酸、デカン二酸、ノナン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸等が挙げられる。特に、i線透過率の確保と硬化膜の破断伸び特性を両立する観点から、原料ジカルボン酸としてはドデカン二酸又はデカン二酸が好ましい。
【0022】
(a)成分のポリベンゾオキサゾール前駆体は、その一部に式(1)で示される構造単位以外の構造単位を有していてもよい。この場合、式(1)で示される構造単位の割合は全構造単位中50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。
式(1)で示される構造単位以外の構造単位としては、例えば、式(1)において、Vがジフェニルエーテル化合物由来の骨格であるもの等が挙げられる。
【0023】
Uは下記式(u−1)で表される構造を含む基であると好ましい。
【化9】
式(u−1)中、R及びRは各々独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のフッ素化アルキル基であり、aは1〜30の整数である。
及びRとしては、具体的に、メチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられ、ポリベンゾオキサゾール前駆体の透明性の観点から、トリフルオロメチル基が好ましい。aは1〜5の整数が好ましい。
【0024】
上記のポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環することによりポリベンゾオキサゾールが得られる。
上記のポリベンゾオキサゾール前駆体は、通常、アルカリ水溶液で現像する。そのため、アルカリ水溶液に可溶であることが好ましい。アルカリ水溶液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等の有機アンモニウム水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等が挙げられる。一般には、濃度が2.38質量%のTMAH水溶液を用いることが好ましい。即ち、(a)成分はTMAH水溶液に対して可溶であることが好ましい。
【0025】
尚、(a)成分がアルカリ水溶液に可溶であることの1つの基準を以下に説明する。(a)成分を任意の溶剤に溶かして溶液とした後、シリコンウエハ等の基板上にスピン塗布して膜厚5μm程度の樹脂膜を形成する。これをテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液のいずれか1つに20〜25℃において浸漬する。この結果、溶解して溶液となったとき、用いた(a)成分はアルカリ水溶液に可溶であると判断する。
【0026】
(a)成分の分子量は、ポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000〜100,000であることが好ましく、15,000〜100,000であることがより好ましく、20,000〜85,000であることがさらに好ましい。(a)成分の重量平均分子量が10,000以上の場合、アルカリ現像液への適度な溶解性が確保できる傾向にある。また、(a)成分の重量平均分子量が100,000以下の場合、溶剤への良好な溶解性が得られる傾向にあり、溶液の粘度が増大して取り扱い性が低下することを抑制できる傾向にある。
また、重量平均分子量を数平均分子量で除した分散度は1〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によって測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求めることができる。
【0027】
((b)成分:架橋剤)
(b)成分は、ポジ型感光性樹脂組成物を塗布、露光及び現像して得られたパターン樹脂膜を加熱処理する工程において、(a)成分のポリベンゾオキサゾール前駆体と反応(架橋反応)する。また、(b)成分の架橋剤自身が重合することもできる。これにより、ポジ型感光性樹脂組成物を比較的低い温度、例えば200℃以下で硬化した場合であっても、良好な機械特性、例えば薬液耐性及び接着性を付与させることができる。
【0028】
(b)成分は、加熱処理する工程において架橋又は重合する化合物であれば特に制限はないが、メチロール基等のヒドロキシアルキル基、アルコキシメチル基等のアルコキシアルキル基を有する化合物であると、低温硬化時の反応性の高さの観点から好ましい。
ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基に含まれるアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基等が挙げられる。
【0029】
中でも良好な感度及びワニスの安定性、パターン形成後の感光性樹脂膜の硬化時に感光性樹脂膜の溶融を防ぐことができるという観点から、2個以上のヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基を有する化合物がより好ましい。
【0030】
N位がヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基で置換されたメラミン樹脂、又は下記式(3)で示される化合物を用いることが、反応温度の低さの観点から特に好ましい。
【化10】
(式(3)中、Rは、各々独立に、水素原子又は−CH−O−Rであり、複数のRの少なくとも1つは−CH−O−Rである。Rは、各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基又はブチル基である。)
【0031】
複数のRのうち、2〜6つが−CH−O−Rであると好ましく、全てのRが−CH−O−Rであるとより好ましい。Rはメチル基が好ましい。
【0032】
また、下記式(4)で表される化合物が最も好ましい。この化合物であると、ポジ型感光性樹脂組成物を200℃以下の低温で硬化した場合に優れた薬液耐性と接着性を有する硬化膜が得られる。
【化11】
【0033】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物における(b)成分の含有量は、(a)成分100質量部に対して1〜50質量部が好ましく、良好な機械特性の確保のために5〜30質量部がより好ましく、機械特性と感光特性の両立の観点から、10〜30質量部がさらに好ましい。
【0034】
((c)成分:感光剤)
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(c)成分として下記式(2)で表される構造を含む化合物(ジアゾナフトキノン化合物)を含む。
【化12】
【0035】
(c)成分は、好ましくは下記式(2’)で表される。
【化13】
(式(2’)中、nは1〜4の整数である。Xは、ヒドロキシ基含有化合物の1価〜4価の残基、又はアミノ基含有化合物の1価〜4価の残基である。)
【0036】
ヒドロキシ基含有化合物の残基とは、当該化合物からヒドロキシ基の水素原子を除いて得られる基をいう。アミノ基含有化合物の残基とは、当該化合物からアミノ基の水素原子を除いて得られる基をいう。
【0037】
式(2’)のXは、好ましくは下記式(11)で表される。
【化14】
式(11)中、R11とR12は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフッ素化アルキル基、又は下記式(12)で表される基である。
【化15】
式(12)中、R13とR14は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のフッ素化アルキル基である。
式(11)、(12)中、*は式(2’)の括弧内の構造との結合位置である。少なくとも1つの*において当該構造と結合すればよく、全ての*において当該構造と結合してもよい。
【0038】
式(2)で表される化合物は、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリドと、ヒドロキシ基含有化合物又はアミノ基含有化合物等とを、脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
【0039】
ヒドロキシ基含有化合物としては特に制限はないが、未露光部の溶解阻害効果を高める観点から、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、又はトリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0040】
アミノ基含有化合物としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が使用できる。
【0041】
1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリドと、ヒドロキシ基含有化合物又はアミノ基含有化合物とは、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合されることが好ましい。
脱塩酸剤と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリドの好ましい割合(モル比)は、0.95/1〜1/0.95の範囲である。好ましい反応温度は0〜40℃、好ましい反応時間は1〜10時間である。
【0042】
上記反応の反応溶媒としては、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N−メチルピロリドン等を用いることができる。
脱塩酸剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等を用いることができる。
【0043】
(c)成分としては、高感度化と高解像度化の観点から下記式(5)で表される化合物を用いることが特に好ましい。
【化16】
(式(5)中、Qは、各々独立に水素原子又は下記式(6)で表される基である。少なくとも1つのQは下記式(6)で表される基である。)
【化17】
【0044】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物における(c)成分の含有量は、溶解コントラスト等を考慮して適宜調整すればよいが、特に厚膜の場合、ジアゾナフトキノン化合物自身がi線に吸収を有するために、多量に配合すると、膜の底部までi線が到達せず、ジアゾナフトキノン化合物への露光が不充分で光反応しにくくなり、開口パターンを形成できなくなる恐れがあることから、(a)成分100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。
また、(c)成分は、(a)成分と相溶性の高いものであることが、製膜性と高感度化の観点から好ましい。
【0045】
((d)成分:溶剤)
(d)成分としては、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン等が挙げられる。通常、感光性樹脂組成物中の他の成分を充分に溶解できるものであれば特に制限はない。
この中でも、各成分の溶解性と樹脂膜形成時の塗布性に優れる観点から、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドを用いることが好ましい。
【0046】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物における(d)成分の含有量は特に制限はないが、(a)成分100質量部に対して50〜300質量部が好ましく、100〜200質量部がより好ましい。
【0047】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、本質的に(a)、(b)、(c)及び(d)成分からなってもよい(consisting essentially of)。本発明のポジ型感光性樹脂組成物の、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上又は98質量%以上が(a)、(b)、(c)及び(d)成分であってもよい。また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)、(b)、(c)及び(d)成分のみからなってもよい(consisting of)。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、上記の(a)〜(d)成分に加えて、必要に応じて、(1)カップリング剤、(2)溶解促進剤、(3)溶解阻害剤、(4)界面活性剤又はレベリング剤等を含有してもよい。
【0049】
((1)カップリング剤)
カップリング剤(上記の(b)架橋剤とは異なる化合物)は、通常、感光性樹脂組成物を塗布、露光、現像後に加熱処理する工程において、(a)成分であるポリベンゾオキサゾール前駆体と反応して架橋する、又は加熱処理する工程においてカップリング剤自身が重合すると推定される。これにより、得られる硬化膜と基板との密着性をより向上させることができる。
本発明において、分子内にウレア結合(−NH−CO−NH−)を有するシランカップリング剤を本発明の組成物に加えて用いることにより、200℃以下の低温下で硬化を行った場合も基板との密着性をさらに高めることができる。
【0050】
好ましいシランカップリング剤としては、ウレア結合を有する化合物が挙げられ、低温での硬化を行った際の密着性の発現に優れる点で、下記式(7)で表される化合物がより好ましい。
【化18】
(式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜5のアルキル基である。aは、1〜10の整数であり、bは、1〜3の整数である。)
【0051】
式(7)で表される化合物の具体例としては、ウレイドメチルトリメトキシシラン、ウレイドメチルトリエトキシシラン、2−ウレイドエチルトリメトキシシラン、2−ウレイドエチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、4−ウレイドブチルトリメトキシシラン、4−ウレイドブチルトリエトキシシラン等が挙げられ、好ましくは3−ウレイドプロピルトリエトキシシランである。
【0052】
さらに上記の分子内にウレア結合を有するシランカップリング剤に加えて、分子内にヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤を併用すると、さらに低温硬化時の硬化膜の基板への密着性向上に効果がある。
【0053】
分子内にヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤としては、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等や、下記式(8)で表わされる化合物が挙げられる。
【化19】
(式中、Rはヒドロキシ基又はグリシジル基を有する1価の有機基、R及びRは各々独立に炭素数1〜5のアルキル基である。cは1〜10の整数、dは0〜2の整数である。)
【0054】
上記の化合物のうち、特に、式(8)で示される化合物が、基板との密着性をより向上させるため、好ましい。
このようなシランカップリング剤としては、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、4−ヒドロキシブチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0055】
分子内にヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤は、ヒドロキシ基又はグリシジル基と共に、さらに、窒素原子を含む基、具体的にはアミノ基やアミド結合を有するシランカップリング剤であることが好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2−グリシドキシメチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミド結合を有するシランカップリング剤としては、下記式で示される化合物等のアミド結合を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
X−(CH−CO−NH−(CH−Si(OR)
(式中、Xはヒドロキシ基又はグリシジル基であり、e及びfは各々独立に1〜3の整数であり、Rは各々独立に、メチル基、エチル基又はプロピル基である。)
【0056】
シランカップリング剤を用いる場合の含有量は、(a)成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.3〜10質量部であることがより好ましく、1〜10質量部であることがさらに好ましい。
【0057】
((2)溶解促進剤)
(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体のアルカリ水溶液に対する溶解性をより促進させるために、溶解促進剤を加えてもよい。溶解促進剤としては、例えばフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。フェノール性水酸基を有する化合物は、感光性樹脂組成物に加えることで、アルカリ水溶液を用いて現像する際に露光部の溶解速度が増加し感度が上がり、また、パターン形成後の感光性樹脂膜の硬化時に、感光性樹脂膜の溶融を防ぐことができる。
【0058】
フェノール性水酸基を有する化合物に特に制限はないが、比較的分子量の小さい化合物が好ましい。このような化合物としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、ビスフェノールA、B、C、E、F及びG、4,4’,4’’−メチリジントリスフェノール、2,6−[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’−[1−[4−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4’’−エチリジントリスフェノール、4−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−2−エトキシフェノール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、2,2’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4−[ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)メチル]−1,2−ベンゼンジオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3−メチルフェノール]、4,4’,4’’−(3−メチル−1−プロパニル−3−イリジン)トリスフェノール、4,4’,4’’,4’’’−(1,4−フェニレンジメチリジン)テトラキスフェノール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ビス[(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェニル]−フェニル]エチリデン]ビス[2,6−ビス(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェノール等が挙げられる。
【0059】
溶解促進剤を用いる場合の含有量は、現像時間及び感度の点から、(a)成分100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、3〜25質量部がより好ましい。
【0060】
((3)溶解阻害剤)
(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物である溶解阻害剤を含有させることができる。溶解阻害剤は(a)成分の溶解性を阻害することで、残膜厚や現像時間を調整する役割を果たす。一方、発生する酸が揮発し易いことから、ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応には関与しないと考えられる。
【0061】
溶解阻害剤として用いることのできる化合物としては、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨーダイト等のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。
【0062】
溶解阻害剤を用いる場合の配合量は、感度及び現像時間の観点から、(a)成分100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましく、0.01〜30質量部がより好ましく、0.1〜20質量部がさらに好ましい。
【0063】
((4)界面活性剤又はレベリング剤)
また、本発明の感光性樹脂組成物は、塗布性(例えばストリエーション(膜厚のムラ)の抑制)及び現像性の向上のために、界面活性剤又はレベリング剤を加えてもよい。
【0064】
界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられ、市販品としては、商品名「メガファックスF171」、「F173」、「R−08」(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、住友スリーエム株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM403」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0065】
界面活性剤又はレベリング剤を用いる場合の含有量は、(a)成分100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましく、0.05〜3質量部がさらに好ましい。
【0066】
[パターン硬化膜の製造方法]
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、上記のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程(樹脂膜形成工程)と、感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程(露光工程)と、露光を行った感光性樹脂膜を、アルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程(現像工程)と、パターン樹脂膜を加熱処理する工程(加熱処理工程)と、を含む。
以下、各工程について説明する。
【0067】
(樹脂膜形成工程)
基板としては、ガラス、半導体、TiO、SiO等の金属酸化物絶縁体、窒化ケイ素、銅、銅合金等が挙げられる。塗布方法に特に制限はないが、スピナー等を用いて行うことができる。
【0068】
乾燥は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。加熱温度は90〜150℃であることが好ましく、溶解コントラスト確保の観点から、(a)成分と(b)成分の反応を抑制するために90〜120℃であることがより好ましい。加熱時間は、30秒間〜5分間が好ましい。これにより、上述の樹脂組成物を膜状に形成した樹脂膜を得ることができる。
樹脂膜の膜厚は、5〜100μmが好ましく、8〜50μmがより好ましく、10〜30μmがさらに好ましい。
【0069】
(露光工程)
露光工程では、マスクを介して所定のパターンに露光することができる。照射する活性光線は、i線を含む紫外線、可視光線、放射線等が挙げられるが、i線であることが好ましい。露光装置としては、平行露光機、投影露光機、ステッパ、スキャナ露光機等を用いることができる。
【0070】
(現像工程)
現像処理することで、パターン形成された樹脂膜(パターン樹脂膜)を得ることができる。一般的に、ポジ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、露光部を現像液で除去する。
現像液として用いるアルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
アルカリ水溶液の濃度は、0.1〜10質量%が好ましい。
現像時間は、用いる(a)成分の種類によっても異なるが、10秒間〜15分間であることが好ましく、10秒間〜5分間であることがより好ましく、生産性の観点からは、30秒間〜4分間であることがさらに好ましい。
【0071】
上記現像液にアルコール類又は界面活性剤を添加してもよい。添加量としては、現像液100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0072】
(加熱処理工程)
パターン樹脂膜を加熱処理することにより、(a)成分の官能基同士、又は、(a)成分と(b)成分間等に架橋構造を形成し、パターン硬化膜を得ることができる。また、(a)成分はポリベンゾオキサゾール前駆体であるので、加熱処理工程によって脱水閉環反応を起こし、対応するポリベンゾオキサゾールとすることができる。
【0073】
加熱温度は、特に限定されるものではないが、250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱温度の下限値も特に限定されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができ、デバイスを歩留り良く生産することが可能となり、プロセスの省エネルギー化を実現することができる。
【0074】
加熱時間は、5時間以下が好ましく、30分間〜3時間がより好ましい。
上記範囲内であることにより、架橋反応又は脱水閉環反応を充分に進行することができる。また、加熱処理の雰囲気は大気中であっても、窒素等の不活性雰囲気中であってもよいが、パターン樹脂膜の酸化を防ぐことができる観点から、窒素雰囲気下が好ましい。
【0075】
加熱処理工程に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等が挙げられる。
【0076】
[硬化物]
本発明の硬化物は本発明のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物であり、本発明のポジ型感光性樹脂組成物について前述した加熱処理工程を適用することにより硬化物とすることができる。
本発明の硬化物は、前述したパターン硬化膜であってもよいし、パターンを有さない硬化膜であってもよい。
【0077】
[電子部品]
上記の方法により製造したパターン硬化膜及び硬化物は、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜として用いることができる。この層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜等を用いて、信頼性の高い半導体装置、多層配線板、各種電子デバイス等の電子部品を製造することができる。
【0078】
[半導体装置の製造工程]
本発明によるパターン硬化膜の製造方法の一例として、半導体装置の製造工程を図面に基づいて説明する。図1図7は、多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程を説明する概略断面図であり、第1の工程から第7の工程へと一連の工程を表している。図8はUBM(Under Bump Metal)フリーの構造を有するファンアウトパッケージの概略断面図である。
【0079】
これらの図において、回路素子(図示しない)を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。
前記半導体基板上にスピンコート法等で層間絶縁膜4としてのポリイミド樹脂等の膜が形成される(第1の工程、図1)。
【0080】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、前記層間絶縁膜4上にスピンコート法で形成され、これをマスクとして公知の方法によって所定部分の層間絶縁膜4が露出するように窓6Aが設けられる(第2の工程、図2)。この窓6A部分に露出している層間絶縁膜4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bが形成される。次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光性樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光性樹脂層5が完全に除去される(第3の工程、図3)。
【0081】
さらに、公知の方法を用いて、第2導体層7が形成され、第1導体層3との電気的接続が行われる(第4の工程、図4)。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、前記の工程を繰り返して行い各層が形成される。
【0082】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いて表面保護膜8を以下のようにして形成する。即ち、本発明の樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターン樹脂膜を形成する。その後、このパターン樹脂膜を加熱して表面保護膜8としてのポリベンゾオキサゾールのパターン硬化膜とする(第5の工程、図5)。この表面保護膜(ポリベンゾオキサゾールのパターン硬化膜)8は、導体層を外部からの応力、α線等から保護する機能を担う。
【0083】
さらに、通常、表面保護膜8の表面に、スパッタ処理によって金属薄膜を形成した後、めっきレジストを公知の方法を用いて窓6Cに合わせて形成し、露出している金属薄膜部にめっきによってUBM(Under Bump Metal)と呼ばれる金属層9を析出させる。そして、めっきレジストをはく離し、UBM9の形成領域以外の金属箔膜をエッチング除去してUBMを形成する(第6の工程、図6)。さらに、金属層9の表面にバンプと呼ばれる外部接続端子10が形成される(第7の工程、図7)。金属層9はバンプ10に作用する応力を緩和したり、電気的接続信頼性を向上させる目的で形成される。
【0084】
近年、製造コスト低減の観点から、このような金属層9(UBM)の形成工程を省略するために、表面保護膜8に窓6Cを形成した後、バンプ10を直接形成するUBMフリー構造が提案されている。UBMフリー構造では、金属間化合物の生成による電気抵抗上昇を抑制するために、バンプ10と接続される第2導体層7を通常よりも厚く形成する必要がある。さらに、バンプ10に作用する応力を表面保護膜8のみで緩和する必要がある。このため、厚く形成された第2導体層7を被覆し、応力緩和能を高めるために、表面保護膜8を厚く形成する必要がある(図8)。
【0085】
従って、UBMフリー構造では、先述した表面保護膜8に窓6Cを形成する際、樹脂膜をより厚く塗布し、露光、現像する必要がある。
【実施例】
【0086】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0087】
合成例1
[(a)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリマーI)の合成]
撹拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92g(38mmol)を添加し、撹拌溶解した。続いて、温度を0〜5℃に保ちながら、ドデカン二酸ジクロリド7.48g(28mmol)及び4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド3.56g(12mmol)を10分間で滴下した後、フラスコ中の溶液を60分間撹拌した。上記溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧して、式(1)で表される構造を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を得た(以下、ポリマーIとする)。ポリマーIの重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法にて標準ポリスチレン換算により求めたところ42,000であり、分散度は2.0であった。
【0088】
尚、GPC法による重量平均分子量は、0.5mgのポリマーIに対して溶剤[テトラヒドロフラン(THF)/ジメチルホルムアミド(DMF)=1/1(容積比)]1mlの溶液を用いて測定した。
測定装置及び測定条件は、以下の通りである。
<測定装置>
検出器:株式会社日立製作所製L4000
UVポンプ:株式会社日立製作所製L6000
株式会社島津製作所製C−R4A Chromatopacカラム:日立化成株式会社製Gelpack GL−S300MDT−5×2本
<測定条件>
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr(0.03mol/l)、HPO(0.06mol/l)
流速:1.0ml/min
検出器:UV270nm
【0089】
合成例2
[(a)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリマーII)の合成]
合成例1で使用したドデカン二酸ジクロリド7.48g(28mmol)及び4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド3.56g(12mmol)をデカン二酸クロリド(40mmol)に置き換えた以外は、合成例1と同様に合成を行い、式(1)で表される構造を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を得た(以下、ポリマーIIとする)。ポリマーIIの重量平均分子量は38,000であり、分散度は2.0であった。
【0090】
合成例3
[(a’)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリマーIII)の合成]
撹拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92g(38mmol)を添加し、撹拌溶解した。続いて、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド11.86g(40mmol)を10分間で滴下した後、室温に戻しフラスコ中の溶液を3時間撹拌した。上記溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧して、ポリベンゾオキサゾール前駆体を得た(以下、ポリマーIIIとする)。ポリマーIIIの重量平均分子量は22,400であり、分散度は3.2であった。
【0091】
実施例1〜9、比較例1〜5
[ポジ型感光性樹脂組成物の調製]
表1に示す成分及び配合量にて、実施例1〜9及び比較例1〜5のポジ型感光性樹脂組成物を調製した。表1の配合量は、(a)成分及び/又は(a’)成分である各ポリマー100質量部に対する(b)〜(d)、(c’)成分の質量部である。
用いた各成分は以下の通りである。
【0092】
〔(a)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体〕
・ポリマーI:合成例1で得られたポリマーI
・ポリマーII:合成例2で得られたポリマーII
〔(a’)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体〕
・ポリマーIII:合成例3で得られたポリマーIII
【0093】
〔(b)成分:架橋剤〕
・(b−1):下記構造式で表される化合物(株式会社三和ケミカル製、商品名:ニカラックMW−390)
【化20】
・(b−2):下記構造式で表される化合物(株式会社三和ケミカル製、商品名:ニカラックMX−270)
【化21】
【0094】
〔(c)成分:感光剤〕
・(c−1):下記構造式で表される化合物(ダイトーケミックス株式会社製、商品名:TPPA428)
【化22】
〔(c’)成分:感光剤〕
・(c−2):下記構造式で表される化合物(ダイトーケミックス株式会社製、商品名:TPPA528)
【化23】
【0095】
〔(d)成分:溶剤〕
・BLO:γ−ブチロラクトン
【0096】
[ポジ型感光性樹脂組成物の評価]
実施例1〜9及び比較例1〜5で得られたポジ型感光性樹脂組成物について、感度、解像度、接着性、薬液耐性を以下に示す方法でそれぞれ評価した。結果を表1に示す。
【0097】
<感度の評価>
塗布装置(東京エレクトロン株式会社製、商品名:CLEAN TRACK ACT8)を用いて、得られたポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウエハ上にスピンコートして、110℃で3分間乾燥して乾燥後膜厚が12μmの樹脂膜を形成した。得られた樹脂膜に、i線ステッパ(キヤノン株式会社製、商品名:FPA−3000iW)を用いて露光を行った。露光後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液にて、23℃で、未露光部の残膜率がおよそ75%となるまで現像した後、水でリンスして、パターン樹脂膜を得た。露光部が開口した際の露光量を感度とし、露光量によって以下のように評価した。
200mJ/cm未満:A
200mJ/cm以上230mJ/cm未満:B
230mJ/cm以上250mJ/cm未満:C
250mJ/cm以上:D
【0098】
<解像度の評価>
上記感度の評価と同様の方法によって、i線ステッパにて露光して得られたパターン樹脂膜について、ラインアンドスペース部のパターンが、はがれなく、かつ残渣もなくパターニングできている最小の線幅を解像度とした。
【0099】
<接着性の評価>
塗布装置(東京エレクトロン株式会社製、商品名「CLEAN TRACK ACT8」)を用いて、得られたポジ型感光性樹脂組成物を銅ウエハ上にスピンコートして、110℃で3分間乾燥して乾燥後膜厚が10μmの樹脂膜を形成した。得られた樹脂膜を縦型拡散炉μ−TF(光洋サーモシステム株式会社製)を用いて窒素雰囲気下、175℃で1時間加熱し、硬化膜(硬化後膜厚8μm)を得た。
得られた硬化膜をプレッシャークッカー(PCT)装置に入れ、121℃、2atm、100%RHの条件下で100時間処理した(PCT処理)。その後、硬化膜に対してクロスカット試験を行って、銅ウエハに対する接着性を評価した。クロスカット試験は以下のように行った。まず、銅ウエハ上の硬化膜表面の中央に、カッターガイドを用いて直交する縦横11本ずつの平行線を1mmの間隔で引き、1cmの中に100個の1mm角の正方形の硬化膜ができるように碁盤目状の切り傷をつけた。次に碁盤目に対してセロハンテープによるピーリングテストを行い、試験後銅ウエハ上に残った1mm角の正方形の硬化膜の数を数えた。硬化膜が100個残った場合をA、50〜99個残った場合をB、49個以下残った場合をCと評価した。
【0100】
<薬液耐性の評価>
塗布装置(東京エレクトロン株式会社製、商品名:CLEAN TRACK ACT8)を用いて、得られたポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウエハ上にスピンコートして、110℃で3分間乾燥して乾燥膜厚が12μmの樹脂膜を形成した。得られた樹脂膜に、i線ステッパ(キヤノン株式会社製、商品名:FPA−3000iW)を用いて上記感度の評価の1.2倍の露光を行い、未露光部の残膜率が75%となるように現像し、パターン樹脂膜を得た。
上記のようにして得られたパターン樹脂膜を縦型拡散炉μ−TF(光洋サーモシステム株式会社製)を用いて窒素雰囲気下、200℃で1時間加熱し、パターン硬化膜を得た。得られたパターン硬化膜をレジスト剥離液(Dynaloy社製、商品名:Dynastrip7700)中に70℃で120分間浸漬した後、パターン硬化膜表面を光学顕微鏡で観察した。薬液に浸漬する前後の膜厚の差から、浸漬による膜厚変化が5%未満のものをA、5%以上10%未満をB、10%以上のものをCと評価した。また、浸漬により、パターン部にレジスト剥離液がしみ込んだものやパターン部が剥離したものをD(実用レベルではない)と評価した。
【0101】
【表1】
【0102】
表1より、実施例1〜8のポジ型感光性樹脂組成物は、感度及び解像度に優れることが分かる。また、175℃と低温で硬化させた場合においても接着性に優れ、200℃と低温で硬化させた場合においても薬液耐性に優れることが分かる。また、実施例9は(b)成分として(b−2)のみを用いた系であるが、比較例と比べ、良好な感度及び薬液耐性を有することが分かる。一方、比較例1〜5は、薬液耐性に劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等の電子部品に使用できる。
【0104】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献の内容を全てここに援用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8