(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
理解を容易にするため、可能な場合には、上記の図に共通する同一の要素を示すのに同一の参照番号を使用した。1つの実施形態で開示する要素は、具体的な記述がなくとも、他の実施形態で有益に利用できることが企図されている。
【0013】
本明細書に開示された実施形態は、概して、基板の上に形成されたナノ結晶ダイヤモンド層に関する。本明細書に記載される処理によって形成されるナノ結晶ダイヤモンド層は、概して、小さな特徴サイズを有している集積回路(IC)装置を形成するために必要とされる、より高い質量密度、より高いエッチング選択性、低い応力及び優れた熱伝導率を有している。実施形態は、以下の図を参照してより明確に説明される。
【0014】
図1は、高電力インパルスマグネトロンスパッタリング(HIPIMS)処理を使用して材料をスパッタ堆積するのに適した、例示的な物理的気相堆積(PVD)処理チャンバ100(例えば、スパッタ処理チャンバ)を示している。ナノ結晶ダイヤモンド層を形成するために適合され得る処理チャンバの1つの例は、カリフォルニア州サンタクララのApplied Materials,Inc.から入手可能なPVD処理チャンバである。他の製造業者から入手可能なものを含む他のスパッタ処理チャンバが、本発明を実施するために適合され得ることに留意されたい。
【0015】
処理チャンバ100は、内部に画定される処理空間118を有するチャンバ本体108を含む。チャンバ本端108は、側壁110及び底部146を有している。チャンバ本体108及び処理チャンバ100の関連部品の寸法は限定的なものではなく、一般的に、処理される基板190のサイズに比例して大きくなる。任意の適した基板サイズが処理され得る。適した基板サイズの例は、200mmの直径、300mmの直径、450mmの直径又はそれより大きな直径を有する基板を含む。
【0016】
チャンバリッドアセンブリ104は、チャンバ本体108の最上部に装着される。チャンバ本体108は、アルミニウム又は他の適した材料から製造され得る。基板アクセスポート130は、チャンバ本体108の側壁110を通って形成され、基板190の処理チャンバ100内外への移送を促進する。アクセスポート130は、移送チャンバ及び/又は基板処理システムの他のチャンバに連結され得る。
【0017】
ガス源128は、処理ガスを処理空間118内に供給するためにチャンバ本体108に連結される。1つの実施形態では、処理ガスは、不活性ガス、非反応性ガス、及び必要であれば反応性ガスを含み得る。ガス源128によって提供され得る処理ガスの例は、数ある中でも、アルゴンガス(Ar)、ヘリウム(He)、ネオンガス(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、窒素ガス(N
2)、酸素ガス(O
2)、水素ガス(H
2)、フォーミングガス(N
2+H
2)、アンモニア(NH
3)、メタン(CH
4)、一酸化炭素(CO)及び/又は二酸化炭素(CO
2)を含むがこれらに限定されない。
【0018】
ポンピングポート150は、チャンバ本体108の底部146を通って形成される。ポンピング装置152は、内部を排気し圧力制御するために処理空間118に連結される。ポンピングシステム及びチャンバ冷却設計により、例えば、摂氏−25度から摂氏+650度などの熱収支ニーズに適した温度で、高いベース真空(1E−8(即ち、1x10
−8)Torr以下)及び低い立ち上がり速度(1000mTorr/分)が可能になる。ポンピングシステムは、結晶構造(例えば、Sp3含有量)、応力制御及び調整についての重要なパラメータである処理圧力の正確な制御を提供するように設計される。処理圧力は、約1mTorrから約500mTorrの間、例えば、約2mTorrから約20mTorrの間などの範囲で維持され得る。
【0019】
リッドアセンブリ104は、概して、ターゲット120と、ターゲット120に連結された接地シールドアセンブリ126とを含む。ターゲット120は、PVD処理中に基板190の表面にスパッタ及び堆積させることができる材料源を提供する。ターゲット120は、DCスパッタリング中にプラズマ回路のカソードとして機能する。
【0020】
ターゲット120又はターゲットプレートは、堆積層に用いられる材料、又はチャンバの中で形成される堆積層の要素から製造され得る。電力源132などの高電圧電源は、ターゲット120からの材料のスパッタリングを促進するためにターゲット120に結合される。1つの実施形態では、ターゲット120は、グラファイト、アモルファスカーボン、それらの組み合わせなどを含む材料など、炭素含有材料から製造され得る。ターゲットはまた、グラファイト状とすることもできるだろうし、及び/又はSp2タイプの炭素材料構造を含有することもできるだろう。堆積処理は、Sp2炭素材料が他の構造化されていない炭素ターゲットよりも構造的にSp3に近いので、Sp3層の堆積のための堆積ターゲットを含むSp2材料の使用から利益を得ることがあろう。1つの実施形態では、ターゲットは、グラファイト状ターゲットである。電源132、つまり電源は、パルス状に(一定の場合とは反対に)ターゲットに電力を供給することができる。要するに、電源は、幾つかのパルスをターゲットに供給することによって、電力をターゲットに供給することができる。
【0021】
ターゲット120は、概して、周辺部分124及び中央部分116を含む。周辺部分124は、チャンバの側壁110上に配置される。ターゲット120の中央部分116は、基板支持体138の上に配置された基板190の表面に向かってわずかに延びる湾曲面を有し得る。幾つかの実施形態では、ターゲット120と基板支持体138との間の間隔は、約50mmから約250mmの間で維持される。ターゲット120の寸法、形状、材料、構成及び直径は、特定の処理条件又は基板条件で変化し得ることに留意されたい。1つの実施形態では、ターゲット120は、基板表面にスパッタされることが望ましい材料によって接着及び/又は製造される中央部分を有するバッキング板を更に含み得る。
【0022】
リッドアセンブリ104は、処理中にターゲット120からの有効なスパッタリング材料を強化する、ターゲット120の上に装着されたフルフェースエロ―ジョンマグネトロンカソード(full face erosion magnetron cathode)102を更に備え得る。フルフェースエロ―ジョンマグネトロンカソード121は、ウエハ全域にわたり一貫したターゲットエロージョン及び均一な堆積を保証しつつ、容易かつ迅速な処理制御及び調整された膜特性を可能にする。マグネトロンアセンブリの例には、処理のパルス又はDCプラズマ段階中に、ターゲット面に所望のエロ―ジョンパターンを形成し、望ましいシース形成を可能にするために、数ある形状の中で、直線的マグネトロン、蛇行マグネトロン、螺旋マグネトロン、ダブルディジテート(double−digitated)マグネトロン、矩形化螺旋マグネトロンが含まれる。幾つかの構成では、マグネトロンは、上述したパターン(例えば、直線、蛇行、螺旋、ダブルディジテートなど)の1つなど、ターゲットの表面上に所望のパターンで位置付けられている永久磁石を含み得る。他の構成では、所望のパターンを有する可変磁場型マグネトロンは、交互に、又は更に永久磁石に加えて、HIPMS処理の一又は複数の部分全体にわたりプラズマの形状及び/又は密度を調整するために使用され得る。
【0023】
リッドアセンブリ104の接地シールドアセンブリ126は、接地フレーム106及び接地シールド112を含む。接地シールドアセンブリ126はまた、他のチャンバシールド部材、ターゲットシールド部材、暗部シールド及び暗部シールドフレームを含み得る。接地シールド112は、接地フレーム106によって周辺部分124に連結され、処理空間118のターゲット120の中央部分の下に上部処理領域154を画定する。接地フレーム106は、接地シールド112をターゲット120から電気的に絶縁し、その一方で側壁110を通して処理チャンバ100のチャンバ本体108への接地経路を提供する。接地シールド112は、上部処理領域154内部での処理中に生成されるプラズマを抑制し、ターゲット源材料をターゲット120の制限された中央部分116から除去し、これにより、除去されたターゲット源材料が、主にチャンバ側壁110ではなく基板表面に堆積可能となる。
【0024】
チャンバ本体108の底部146を通って延びるシャフト140は、リフト機構144に連結する。リフト機構144は、下部移送位置と上部処理位置との間で基板支持体138を移動させるように構成される。ベローズ142は、シャフト140に外接し、基板支持体138に連結され、その間にフレキシブルシールを提供し、これによりチャンバ処理空間118の真空統合性が維持される。
【0025】
基板支持体138は、静電チャックであり、電極180を有し得る。基板支持体138は、静電チャック(ESC)の実施形態を用いる際に、絶縁導電両型基板190を保持するために、反対電荷の引力を使用し、DC電源181により電力供給される。基板支持体138は、誘電体本体内部に埋設された電極を含むことができる。DC電源181は、約200ボルトから約2000ボルトのDCチャッキング電圧を電極に供給し得る。DC電源181はまた、基板190をチャック及びデチャックするためのDC電流を電極へ案内することによって電極180の動作を制御するためのシステムコントローラを含み得る。
【0026】
PVD処理の温度は、堆積した膜特性が望ましくなくなる温度未満で維持され得る。例えば、温度は、摂氏約250度未満であり、ナノ結晶ダイヤモンド層又は中間炭化物層の堆積を補助するために摂氏約50度のマージンを有し得る。基板支持体138は、装置集積化要求の熱収支により必要とされる温度範囲で作動する。例えば、基板支持体138は、摂氏25度から摂氏100度の温度範囲用の取り外し可能なESC(DTESC)、摂氏100度から摂氏200度の温度範囲用のMid−Temp ESC(MTESC)、ウエハの迅速かつ均一な加熱を保証する、摂氏200度から摂氏500度の温度範囲用のHigh Temperature又はHigh Temperature Biasable又はHigh Temperature High Uniformity ESC(HTESC又はHTBESC又はHTHUESC)であり得る。
【0027】
処理ガスが処理チャンバ100に導入された後に、ガスにエネルギーが供給され、HIPIMS型PVD処理が実行できるようにプラズマが形成される。HIPIMS型PVD処理の例が、更に以下に記載される。
【0028】
シャドウフレーム122は、基板支持体138の外周領域に配置され、ターゲット120から基板表面の所望の位置までスパッタされる源材料の堆積を制限するように構成される。チャンバシールド136は、チャンバ本体108の内壁に配置され、基板支持体138周囲に配置されたシャドウフレーム122を支持するように構成された、処理空間118に対して内側に延びるリップ156を有し得る。基板支持体138が処理のために上部位置まで上昇すると、基板支持体138に配置された基板190の外側エッジがシャドウフレーム122によって係合され、シャドウフレーム122は持ち上げられ、チャンバシールド136から間隔を空ける。基板支持体138が基板移送アクセスポート130に隣接した移送位置まで下げられると、シャドウフレーム122は、チャンバシールド136に後退する。基板190を基板支持体138の上方に持ち上げて、移送ロボット又はその他の適切な移送機構による基板190へのアクセスを容易にするために、リフトピン(図示せず)が、基板支持体138を通って選択的に移動する。
【0029】
コントローラ148が、処理チャンバ100に連結される。コントローラ148は、中央処理装置(CPU)160、メモリ158、及び支持回路162を含む。コントローラ148は、処理シーケンスを制御するために用いられ、ガス源128から処理チャンバ100内へのガス流の規制、及びターゲット120のイオン衝撃の制御が行われる。CPU160は、工業環境で使用することができる汎用コンピュータプロセッサの任意の形態であり得る。ソフトウェアルーチンは、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フロッピー若しくはハードディスクドライブ、又は他の形式のデジタルストレージなどのメモリ158に格納することができる。支持回路162は、従来、CPU160に接続されており、キャッシュ、クロック回路、入出力サブシステム、電源などを備え得る。ソフトウェアルーチンは、CPU160によって実行されると、プロセスチャンバ100を制御する特定目的のコンピュータ(コントローラ)148にCPUを変換し、本発明に従って処理が実行される。ソフトウェアルーチンはまた、処理チャンバ100から離れて配置された第2のコントローラ(図示されず)によって格納及び/又は実行されてもよい。
【0030】
処理中に、材料がターゲット120からスパッタされ、基板190の表面に堆積される。幾つかの構成では、ターゲット120は、ガス源128により供給される処理ガスから形成されるプラズマを生成及び維持するために電源132によって、接地又は基板支持体に対してバイアスされる。プラズマで発生したイオンは、ターゲット120に向かって加速され、ターゲット120に衝突し、ターゲット材料がターゲット120から除去されるようにする。除去されたターゲット材料は、基板190に所望の結晶構造及び/又は組成物を有する層を形成する。RF、DC又は高速スイッチングパルスDC電源又はそれらの組み合わせは、ナノ結晶ダイヤモンド材料にスパッタリング組成及び堆積速度の正確な制御のための調整可能なターゲットバイアスを提供する。
【0031】
電源132は、HIPIMS電源である。本明細書で使用される典型的なHIPIMS電源132は、約10μsから約200μsまでの短い持続時間にわたって約1メガボルト(MV)から約8MVまでなどの高電圧で電力インパルスを供給するように構成される。HIPIMS処理の考察が、
図4A及び
図4B並びに
図7A及び
図7Bと併せて以下で更に説明される。
【0032】
幾つかの実施形態では、ナノ結晶ダイヤモンド層堆積処理の様々な段階において、バイアスを基板に別々に適用することがまた望ましい。したがって、バイアスは、源185(例えば、DC及び/又はRF源)から基板支持体138のバイアス電極186(又はチャック電極180)に提供され得、よって、基板190は、堆積処理の一又は複数の段階において、プラズマに形成されたイオンと衝突することになる。幾つかの処理例では、バイアスは、ナノ結晶ダイヤモンド膜堆積処理が実行された後に、基板に適用される。幾つかの処理例において、バイアスは、ナノ結晶ダイヤモンド膜堆積処理中に、交互に適用される。より大きな負の基板バイアスは、プラズマ内で発生した正のイオンを基板に向かって又はその逆に駆動する傾向があり、その結果、イオンは、基板表面に衝突するときに、より大量のエネルギーを有している。
【0033】
図2は、本明細書に記載の実施形態による炭素系の層を堆積させるために使用され得る処理チャンバ200の概略断面図である。本明細書に記載される炭素層堆積方法を実施するために適合され得る処理チャンバは、カリフォルニア州サンタクララに位置するApplied Materials,Inc.から入手可能なPRODUCER(登録商標)化学気相堆積チャンバである。以下に記載されるチャンバは例示的な実施形態であり、他の製造業者からのチャンバを含む他のチャンバは、本明細書に記載される本発明の特徴から逸脱することなく、本発明の実施形態と共に使用され又はそれらの実施形態に適合するように修正され得る。
【0034】
処理チャンバ200は、中央移送チャンバに結合されロボットにより保守点検される複数の処理チャンバを含む処理システムの一部であり得る。1つの実施形態では、処理システムは、
図3に記載されるクラスタツール300である。処理チャンバ200は、処理量212を画定する、壁206、底部208、及びリッド210を含む。壁206及び底部208は、アルミニウムの単一ブロックから製造することができる。処理チャンバ200はまた、他のポンピング部品(図示されず)だけではなく、処理量212を排気口216に流体連結するポンピングリング214も含み得る。
【0035】
加熱されることがある基板支持アセンブリ238は、処理チャンバ200内部の中央に配置され得る。基板支持アセンブリ238は、堆積処理中に基板203を支持する。基板支持アセンブリ238は、概して、アルミニウム、セラミック又はアルミニウムとセラミックの組み合わせから製造され、少なくとも1つのバイアス電極232を含む。バイアス電極232は、eチャック電極、RF基板バイアス電極又はそれらの組み合わせであり得る。
【0036】
真空ポートは、基板203と基板支持アセンブリ238との間に真空を適用し、堆積処理中に基板203を基板支持アセンブリ238に固定するために使用され得る。バイアス電極232は、例えば、基板支持アセンブリ238に配置される電極232であり、バイアス電源230A及び230Bに連結され得、基板支持アセンブリ238及びその上に位置付けられた基板203を処理中に所定のバイアス電力レベルまでバイアスする。
【0037】
バイアス電源230A及び230Bは、約2MHzから約60MHzまでの周波数など、様々な周波数で、基板203及び基板支持アセンブリ238に電力を供給するように独立して構成することができる。本明細書に記載される周波数の様々な置換は、本明細書に記載の発明から逸脱せずに用いることができる。
【0038】
一般的に、基板支持アセンブリ238は、ステム242に連結される。ステム242は、基板支持アセンブリ238と処理チャンバ200の他の構成要素との間に導線、真空及びガス供給ライン用の導管を提供する。加えて、ステム242は、ロボットの移送を促進するために、上昇位置(
図2に示される)と下降位置(図示されず)との間で基板支持アセンブリ238を移動させるリフトシステム244に基板支持アセンブリ238を連結する。ベローズ246は、プロセス空間212とチャンバ200外部の大気との間に真空シールを提供する一方で、基板支持アセンブリ238の移動を促進する。
【0039】
シャワーヘッド218は、一般的に、リッド210の内部側面220に連結され得る。処理チャンバ200に侵入するガス(即ち、処理ガス及び/又はその他のガス)は、シャワーヘッド218を通過して、処理チャンバ200内に進む。シャワーヘッド218は、処理チャンバ200へのガスの均一な流れを提供するように構成され得る。基板203上での均一な層形成を促進するためには、均一なガス流は望ましい。遠隔プラズマ源205は、処理空間212及びガス源204と連結することができる。本明細書で示されるように、遠隔プラズマ発生器などの遠隔活性化源が、処理空間212内に続いて供給される反応性種のプラズマを発生させるために使用される。例示的な遠隔プラズマ発生器は、MKS Instruments,Inc.及びAdvanced Energy Industries,Inc.といったベンダーから入手可能である。
【0040】
加えて、プラズマ出力源262は、シャワーヘッド218を通って、基板支持アセンブリ238上に配置された基板203に向かってガスにエネルギーを与えるために、シャワーヘッド218に連結され得る。プラズマ出力源262は、プラズマ形成のために、RF電力又はマイクロ波電力などの電力を供給し得る。
【0041】
処理チャンバ200の機能は、計算装置254によって制御することができる。計算装置254は、様々なチャンバ及びサブプロセッサを制御するための工業的設定で使用することができる汎用コンピュータの任意の形態の1つであり得る。計算装置254は、コンピュータプロセッサ256を含む。計算装置254は、メモリ258を含む。メモリ258は、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ、ハードディスク、又はローカル又はリモートの任意の他の形態のデジタルストレージなどの任意の適したメモリを含み得る。計算装置254は、従来の方法でコンピュータプロセッサ256を支持するためにコンピュータプロセッサ256に結合することができる様々な支持回路260を含み得る。ソフトウェアルーチンは、必要に応じて、メモリ258に格納されてもよく、遠隔に配置された第2の計算装置(図示されず)によって実行されてもよい。
【0042】
計算装置254は、一又は複数のコンピュータ可読媒体(図示されず)を更に含み得る。コンピュータ可読媒体は、一般に、計算装置によって検索可能な情報を格納することができる、ローカル又はリモートのいずれかに位置する任意の装置を含む。本発明の実施形態で使用可能なコンピュータ可読媒体の例には、ソリッドステートメモリ、フロッピーディスク、内部又は外部ハードドライブ、及び光学メモリ(CD、DVD、BR−Dなど)が含まれる。1つの実施形態では、メモリ258は、コンピュータ可読媒体であってもよい。ソフトウェアルーチンは、計算装置によって実行されるコンピュータ可読媒体に格納されてもよい。
【0043】
ソフトウェアルーチンは、実行されると、チャンバ処理が実行されるように、汎用コンピュータをチャンバ動作を制御する特定の処理コンピュータに変換する。代替的には、ソフトウェアルーチンは、特定用途向け集積化回路又は他の種類のハードウェア実装、又はソフトウェアとハードウェアとの組み合わせとしてハードウェアで実行されてもよい。
【0044】
例示的処理チャンバ100又は例示的処理チャンバ200は、クラスタツールの一部であってもよい。
図3は、基板の上にナノ結晶ダイヤモンド層を作り出すのに適した例示的クラスタツールを示す。クラスタツール300は、上述の少なくとも1つの処理チャンバ100を特徴付ける。クラスタツール300の例は、カリフォルニア州サンタクララのApplied Materials,Inc.から入手可能なEndura(登録商標)システムである。他で製造されたクラスタツールが、同様に使用されてもよい。
【0045】
クラスタツール300は、クラスタツール300への及びクラスタツール300からの基板移送のための一又は複数のロードロックチャンバ306A、306Bを含むことができる。典型的には、クラスタツール300が真空下にあるので、ロードロックチャンバ306A、306Bは、クラスタツール300内に導入される基板を「ポンプダウン(pump down)」し得る。第1のロボット310は、ロードロックチャンバ306A、306Bと第1の組の一又は複数の基板処理チャンバ312、314、316、318(4つが図示される)との間で基板を移送し得る。各処理チャンバ312、314、316、318は、周期的層堆積(CLD)、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、物理気相堆積(PVD)、前洗浄、ガス抜き、配向、及び他の基板処理に加えて、本明細書に記載されるエッチング処理を含む幾つかの基板処理工程を実施するように装備することができる。
【0046】
第1のロボット310はまた、基板を一又は複数の中間移送チャンバ322、324に/から移送することができる。中間移送チャンバ322、324は、クラスタツール300内部で基板を移送可能にしながら超高真空条件を維持するために使用することができる。第2のロボット330は、中間移送チャンバ322、324と第2の組の一又は複数の処理チャンバ332、334、336、338との間で基板を移送することができる。処理チャンバ312、314、316、318と同様に、処理チャンバ332、334、336、338は、例えば、周期的層堆積(CLD)、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、物理的気相堆積(PVD)、前洗浄、熱処理/ガス抜き、及び配向に加えて、本明細書に記載のエッチング処理を含む様々な基板処理動作を実行するように装備することができる。特定の処理がクラスタツール300によって実行される必要がない場合、基板処理チャンバ312、314、316、318、332、334、336、338のいずれかがクラスタツール300から除去されてもよい。
【0047】
例示的なマルチ処理クラスタツール300は、上述の処理チャンバ200と同様に構成された4つまでの処理チャンバ332、334、336、338(334と336との間の第5のチャンバのオプションを含む)を含むことができる。PVDチャンバ又はALDチャンバ312若しくは314は、薄いARC/アッシング層(例えば、AlN又はSiN若しくはTiN)を堆積させるように構成されてもよい。
【0048】
クラスタツール300は、以下の
図4及び
図5に記載される方法を実行するために使用されてもよい。幾つかの処理フローでは、基板がクラスタツール300で更に処理される、又は更に典型的には、
図3に示されるクラスタツールと同様に構成された別個のクラスタツールで処理されることが望ましいだろう。
【0049】
図4Aは、高電力インパルススマグネトロンスパッタリング(HIPIMS)処理の少なくとも一部を完了するために使用される電力供給処理シーケンスのグラフ450を示す。グラフ450は、一種のHIPIMS処理を説明するものであり、例示的であるため、一般に縮尺通りに描かれていない。上述のように、典型的なHIPIMS電源は、HIPIMS処理中に高密度及びエネルギーのプラズマを生成するために、短い時間にわたって高電圧で電力インパルスを供給することができる。高電圧は、約1,000,000Vから約8,000,000Vまでなどの範囲内とすることができる。電力インパルス452(又はエネルギーパルス)は、持続時間454(又はパルス幅)及びパルスサイクル時間456で電源132によって生成することができる。1つの例では、各電力インパルス452の持続時間454は、約10μsから約40μsの間であり、パルスサイクル時間456は200μsであり、これは、5000Hzのパルス繰り返し周波数、即ち、160μs−190μsの連続するパルス間のインターバルに対応する。パルスサイクル時間456にわたって供給される電力又はエネルギーは、持続時間454の間に非正方形の波形(図示されず)を有してもよく、したがって、持続時間454にわたる平均電力は、約10キロワット(kW)から100kWまで、例えば、10kWから40kWまでの値にあり得る。幾つかの実施形態では、ターゲットに供給される各電力インパルスは、等しい電力量及び/又は等しい持続時間を有することができる。しかし、本開示の実施形態は、それに限定されない。例えば、ターゲットに供給される各パルスは、異なる電力量及び/又は異なる持続時間を有することができる。引用された値は、単に例として理解されるべきであり、広い範囲で変化させることができる。例えば、10μsから100μsまでの範囲内のインパルス持続時間と、200μsから1ミリ秒(ms)までのパルス繰り返し時間で、直接動作することができる。高電力がターゲット(カソード)に印加される時間は、しばしば、電源の定格及び介在期間458中に電源を再充電するのにかかる時間によって制限される。一又は複数のカソードに高電力インパルスを印加することにより、スパッタされた材料は、高い量の反応性エネルギー(即ち、化学ポテンシャル)及び高度のイオン化を有するだろうことが分かった。幾つかの例では、一又は複数のカソードから出てくるスパッタされた材料のイオン化の程度は、40%から100%までの範囲内であり得る。幾つかの実施形態では、この高度のイオン化を使用して、より多くのスパッタリングされたイオンを浮遊する又はバイアスされた基板に引き付け、そこに高運動エネルギーで到達させることが望ましく、これにより、より高密度のコーティング、及びより迅速なコーティング処理につながる。
【0050】
HIPIMS処理の間にスパッタされた材料の大量の反応性エネルギー及び高度のイオン化を実現するために、生成されたスパッタ材料が確実にこれらの望ましい特性を有するように、様々な処理パラメータを制御する必要がある。いくつかの実施形態では、処理パラメータは、ターゲット面に隣接して位置付けられたマグネトロンの磁場強度と、持続時間454にわたって電力インパルス452内に供給される電力量との制御を含み、所望のエネルギー(例えば、電子温度T
e)及びプラズマ密度(N
e)を有するプラズマを生成する。パルス幅を制御することによって、Sp3含有のスパッタされた炭素材料の供給されたパルスのうちの各パルス及びディーティサイクルに供給されるエネルギーは、基板表面の層の中に形成することができることが分かった(It has been found that by controlling the pulse width, energy delivered in each pulse and duty cycle of the delivered pulses that a Sp3 containing sputtered carbon material can be formed in a layer on a surface of the substrate)。
【0051】
図7A及び
図7Bは、プラズマエネルギー(例えば、電子温度T
e)及びプラズマ密度に対するターゲットバイアス(パルス電圧)の影響の例を示すグラフである。
図7Aは、プラズマエネルギー(例えば、電子温度T
e)におけるパルス幅の関数として、ターゲットバイアス電圧(例えば、電力インパルス452)の影響を示す。
図7Aに示すように、電源の固定電力設定点において、プラズマエネルギーは、パルス幅が増加するにつれて、初期ピーク値からより小さい値に減少することになる。ピークプラズマエネルギーは、この例では約6.5ボルト(eV)から7eVである、処理チャンバの処理空間内でプラズマを生成し維持することができる最小のパルス幅と一致する。パルス幅が増加するにつれて、固定電力供給設定点(例えば、20kWs)を維持しながら、電子温度又はプラズマエネルギーは、ピーク値からいくらか低い値まで低下する。ターゲットバイアスが増加するにつれて生成されるプラズマ密度の増加のために、より大きなターゲットバイアス電圧に対してプラズマエネルギーがより急速に低下することが分かるだろう。異なるターゲットバイアス電圧におけるプラズマエネルギーの低下は、プラズマ中のイオンと電子との間の衝突回数の増加に関連し、したがって、平均プラズマエネルギー(例えば、電子温度T
e)を低下させると考えられる。更に、プラズマエネルギーは、スパッタされた原子が基板の表面上に着く際に含むエネルギーにも関係し、従って、ターゲットバイアスを増加させることは、プラズマの中の及び基板の表面に着くスパッタされた原子のエネルギーを低下させる傾向があることが分かるだろう。
【0052】
図7Bでは、プラズマ密度が、パルス幅及びターゲットバイアス電圧の関数として示されている。一般に、各ターゲットバイアス電圧でのある下限値よりも小さいパルス幅は、高密度プラズマを形成する際に効果的でなく、上限値よりも大きいパルス幅は、同一のターゲットバイアス電圧での高密度プラズマを形成する際に同様に効果的でないことが
図7Bから分かるだろう。したがって、
図7Bに示すように、一定のターゲットバイアスで下限値よりも大きく上限値よりも小さいパルス幅を有する電力インパルス452を供給することにより、プラズマ密度(N
e)は、ピーク値に又はピーク値付近に維持することができる。より高いプラズマ密度は、プラズマを通過するスパッタされた原子のHIPIMS堆積速度及びイオン化速度を増加させることが分かるだろう。また、プラズマ密度のピークは、バイアス電圧が増加するにつれてより短いパルス幅にシフトし、したがって、ピークプラズマ密度が、ターゲットバイアス電圧及びパルス幅の関数であることも分かるだろう。1つの例では、電力インパルス452の間に印加される1000Vのターゲットバイアスは、約175μsから約350μsの間にある、600Vのターゲットバイアスにおけるピークプラズマ密度(N
e)とは異なる、約125μsから約225μsまでのパルス幅でピークプラズマ密度(N
e)を有している。
【0053】
したがって、成長するスパッタ堆積膜が望ましい物理的、化学的及び構造的特性、例えば、Sp3ダイヤモンド構造などを確実に有するためには、プラズマエネルギー(
図7A)及びプラズマ密度(
図7B)のような競合する処理状態の平衡を保ち調節することが必要である。よって、望ましいHIPIMSスパッタ堆積速度、膜結晶構造及び膜応力を実現するために、所望量のエネルギー、高いイオン化速度及びスパッタされた原子へのイオン化度を与えることになるプラズマを形成するターゲットバイアス電圧及びパルス幅の選択を含むHIPIMS処理が必要である。
【0054】
更に、HIPIMS処理で使用される短いパルス幅又は持続時間454のために、スパッタリングプラズマ形成の初期段階での「プレシース(pre−sheath)」の生成は、高エネルギーかつ高度にイオン化されたスパッタリング材料を形成する処理に著しい影響を及ぼすことが分かった。一般に、「プレシース」は、平衡プラズマシース領域が形成されている際に、ターゲットと基板との間の処理領域(例えば、
図1の処理空間118)内部で、時間とともに変化する様々なサイズを有するプラズマの非平衡領域である。したがって、プラズマを形成する処理の初期段階において、処理チャンバの処理領域に配置されたスパッタリングガス(例えば、アルゴン(Ar))に結合されるターゲットに供給される電力の能力は、ターゲットの表面から材料をスパッタするために使用されるイオンエネルギーに大きな影響を与える。プレシース形成処理は、電力インパルス452がターゲットに適用されたとき、最初の約10μsから40μsの間続くと考えられる。
【0055】
図6は、各々が異なる磁場強度を有する異なるマグネトロンのターゲットからの距離の関数として、プラズマ中に形成された浮遊電位のプロットを示す。
図6に示すように、200ガウスのマグネトロンは、ダイヤモンドで表され、第1の対応する曲線を有しており;500ガウスのマグネトロンは、正方形で表され、第2の対応する曲線を有しており;800ガウスのマグネトロンは、三角で表され、第3の対応する曲線を有している。これらの例は、マグネトロン構成毎に同一のターゲットバイアス電圧及び電力を用いる、50μsのパルス幅のHIPIMS処理の使用を含む。注目すべきは、浮遊電位が、200ガウスのマグネトロンアセンブリのターゲットと基板との間で大きく変化しないことである。500ガウスの例では、ターゲットと基板との間の浮遊電位は、チャンバの基板端部近くでも実質的に一定であるが、ターゲットの表面付近を移動するにつれ、次第に低下する傾向にある(例えば、プラズマは、増加する負の浮遊電位を有する)。800ガウスの例では、浮遊電位は、基板の表面からターゲットの表面に向かって移動するにつれて劇的に低下するため、ターゲットと基板との間の電位は大きく異なる。より高いマグネトロン磁場強度が、増加した磁場強度(例えば、ターゲットの表面を通過する磁力線の数)のために、バイアスされたターゲットの表面から放出された電子を捕捉するマグネトロンの能力を増大させることを当業者は理解するだろう。また、低磁場は、典型的には、スパッタリング処理中にターゲットから放出された電子を効果的に捕捉しないので、低磁場強度(例えば、<<200ガウス)のマグネトロンもまた望ましくないことを当業者は理解するだろう。磁場によって捕捉捕獲された電子は、一般に、スパッタリングガス及びスパッタされた材料のイオン化を改善するために使用され、したがって、低磁場強度マグネトロンの使用は、均一で信頼できるプラズマが形成されるのを妨げる。
【0056】
200ガウスのマグネトロンによって生成されるプロファイルなどの実質的に平坦な浮遊電位(V
f)プロファイルを提供しないマグネトロンアセンブリを使用すると、
図6に示す第1の対応する曲線は、プラズマからイオンを抽出する能力が低下することになると考えられる。換言すれば、マグネトロンによって生成された磁場が増大すると、ターゲット面近くのプラズマ中にイオンをトラップするマグネトロンの能力が増大し、これにより、ガスイオン及びイオン化したスパッタされた材料が、処理中に浮遊基板、接地基板又はバイアスされた基板に引きつけられるのを防止する。プラズマからイオンを抽出することができないと、基板表面に堆積層を形成するために使用されるスパッタされた材料の堆積速度及びエネルギーに影響を与える。したがって、幾つかの実施形態では、実質的に平坦な浮遊電位プロファイルを有するマグネトロンを選択することが望ましい。
【0057】
幾つかの実施形態では、成長するスパッタ堆積膜が確実に望ましい物理的、化学的及び構造的特性、例えばSp3ダイヤモンド構造を有するように、プラズマエネルギー、プラズマ密度の平衡を保ち、調節し及び/又は制御すること、またマグネトロンアセンブリによって供給される望ましい磁場強度を選択することが必要である。したがって、所望のHIPIMSスパッタ堆積速度、膜結晶構造及び膜応力を実現するために、所望の浮遊電位プロファイル(例えば、実質的に平坦なプロファイル)、及び望ましい量のエネルギー、高いイオン化速度及びスパッタされる原子へのイオン化の程度を与えることになるプラズマを形成するターゲットバイアス電圧及びパルス幅を提供するために望ましい磁場強度を有するマグネトロンアセンブリの選択を含むHIPIMS処理が必要とされている。
【0058】
図4Bは、処理チャンバ200などのPVD処理チャンバ内にナノ結晶ダイヤモンド層を堆積させる方法のフロー図である。上述のように、磁場強度が増大するにつれて、プラズマ形成処理のプレシース生成段階の間にプラズマからイオンを抽出する能力はより困難になる。より低いガウスレベルにより、プラズマは、プレシース形成に影響を与えないように、ターゲットに接近して生成可能となる。したがって、磁場強度を300ガウス未満まで、例えば約200ガウスまで、低減することにより、所望のプレシースを作り出すために、より短いパルス時間が使用され得る。それゆえ、磁場とパルス時間との間の相互作用は、堆積の質を維持しつつ室温などの低温で、ナノ結晶ダイヤモンド堆積の高い堆積速度を可能にする。
【0059】
方法400は、一般に、実質的に炭素含有スパッタターゲットを有する処理チャンバの処理領域にスパッタガスを供給することを含む。次いで、スパッタリングプラズマを作り出すために、エネルギーパルスをスパッタガスに供給する。1つの例では、スパッタリングプラズマは、スパッタリング持続時間を有し、エネルギーパルスは1W/cm
2から10W/cm
2の平均電力を有し、パルス幅は100μs未満かつ30μs超であり、スパッタリングプラズマは磁場によって制御されており、磁場は300ガウス未満である。これにより、スパッタリングプラズマを実質的に炭素含有スパッタターゲットに隣接する処理空間に形成して、スパッタされたイオン化炭素含有種を形成し、スパッタされたイオン化炭素含有種が基板上に結晶性の炭素含有層を形成する。
【0060】
方法400は、402において、炭素含有スパッタターゲットを有する処理チャンバの処理空間にスパッタガスを供給することによって開始する。1つの例では、処理チャンバは、
図2を参照して上述した処理チャンバ200である。別の例では、処理チャンバは、本明細書に記載の動作を実行するように変更された処理チャンバである。処理チャンバは、グラファイト状ターゲットのような炭素含有ターゲットを有する。スパッタガスは、一般に、基板又はスパッタターゲットに対して不活性なガスである。1つの例では、スパッタリングガスはアルゴンである。
【0061】
404では、基板が処理空間内に位置付けられた状態で、一連のエネルギーパルスがスパッタガスに供給され、スパッタリングプラズマが生成される。スパッタリングプラズマは、
図4Aに関連して説明したエネルギー供給処理を用いて形成することができる。一般に、この処理の段階中に提供されるエネルギーパルスは、望ましいエネルギー量を与えることになるプラズマを形成するターゲットバイアス電圧及びパルス幅の選択を含み、所望のプラズマエネルギー(例えば、電子温度T
e)及びプラズマ密度(N
e)を実現し、スパッタされた原子に対して高いイオン化速度及びイオン化の程度を実現し、望ましいHIPIMSスパッタ堆積速度、膜結晶構造及び膜応力を実現する。1つの例では、スパッタリングプラズマを形成するために使用されるエネルギーパルスは各々、1W/cm
2から10W/cm
2までの平均電力を有することができる。このプロセスステップ中のマグネトロンの磁場強度はまた、このHIPIMS PVD処理で利用される短いパルス幅のために望ましいプレシースが形成され、プラズマからの望ましいイオン抽出量が基板表面に生成されることを確実にするために選択されたことに留意すべきである。マグネトロンの磁場は、300ガウス未満、例えば、約200ガウスであり得る。
【0062】
理論に拘束されるつもりはないが、安定したプレシースの生成は、ナノ結晶ダイヤモンドの低温堆積に有益であると考えられている。プラズマ形成処理の間、最初は電場がかなり高い。プラズマ形成の開始時には、プラズマ自体が比較的大きな空間を占めてしまう。そしてシースは、処理チャンバの処理空間に流入する電流すべてを収容するに至るまで、収縮し高密度化される。プレシースは、ターゲットの周りの正に帯電した粒子の収縮及び高密度化の直前に形成される。プレシースは、スパッタされたターゲットのエネルギー、イオン化率、及びスパッタ率の動力学に影響を及ぼす。従来のHIPIMS技術は、標準PVD堆積よりも多少低い堆積速度を提供する。処理空間へのエネルギー供給処理(
図4A)を制御することによって、初期段階で形成され、本明細書に記載のHIPIMS PVDプロセスの電力供給部分の大部分の間に維持される、形成されたプリシースが、HIPIMS PVD処理が高い堆積速度を有し、スパッタされた原子に十分なエネルギーを供給してSp3炭素層を基板上に形成可能にする所望の特性を包含するように、所望のプラズマエネルギー(T
e)及びプラズマ密度(N
e)がプラズマに与えられることが分かった。
【0063】
いったんプラズマが形成されると、406で、スパッタリングプラズマは、スパッタターゲットに供給されて、イオン化種が形成され、このイオン化種は、基板上に結晶性の炭素含有層を形成する。スパッタリング電力、デューティサイクル及び磁場は、上述のように、基板上のSp2堆積の上に増加した割合のSp3を実現する。
【0064】
図5は、本明細書に記載の実施形態による、中間炭化物層を形成するための方法のフロー図である。炭化物層は、ダイヤモンドのような炭素層とは異なるナノ結晶ダイヤモンド層の成長に有益であると考えられる。別の実施形態では、上記のHIPIMS PVD方法は、一又は複数の中間層を形成するために使用されてもよい。いったん中間層が形成されると、ナノ結晶ダイヤモンド層は、CVD方法などの二次成長方法を使用して成長し得る。方法500は、502において、炭素含有スパッタターゲット及びスパッタガスを有する第1のHIPIMS PVD処理チャンバ(例えば、処理チャンバ100)内に基板を配置することと;エネルギー供給処理(例えば、
図4Aに示される)を用いて第1のプラズマを形成するために、一連のエネルギーパルスをスパッタガスに供給することとを含む。504では、第1のプラズマが磁場によって制御される。これにより、506で、第1のプラズマがスパッタターゲットに供給され、イオン化種が形成され、この結果、イオン化種は、基板上で中間炭化物層を形成する。次いで、508で、基板が第2の処理チャンバに移送される。第2の処理チャンバでは、核形成ガスの存在下でプラズマが形成され、活性化核形成ガスが形成され、核形成ガスは、炭素含有源を含んでいる。次いで、510では、核形成ガスが活性化され、基板上に核形成層が形成される。次いで、512では、堆積ガスが活性化され、活性化堆積ガスが形成される。次いで、514では、活性化堆積ガスが基板に供給され、活性化堆積ガスが、基板上にナノ結晶ダイヤモンド層を形成する。
【0065】
方法500は、502において、炭素含有スパッタターゲット及びスパッタガスを有する第1の処理チャンバに基板を位置付けることによって開始する。基板は、結晶シリコン基板などの任意の組成物とすることができる。基板はまた、基板の表面に形成されるビア又は相互結合などの一又は複数の特徴を含むことができる。基板は、基板支持体上で支持することができる。1つの実施形態では、本実施形態で使用されるスパッタターゲット及びスパッタガスは、
図4A及び
図4Bと関連して先ほど記載されたものと同一である。
【0066】
本明細書で使用される「基板表面」は、膜処理が実行されると基板上に形成される任意の基板又は材料の表面を指す。例えば、処理が実行できる基板表面は、用途次第で、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープされたケイ素、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、ガラス、サファイア、並びに金属、窒化金属、金属合金及び他の導電性材料などの他の任意の材料などの材料を含む。基板表面はまた、二酸化ケイ素及び炭素がドープされた酸化ケイ素などの誘電体材料を含み得る。基板は、長方形又は正方形のペインだけではなく、200mm、300mm、450mm又は他の直径のウエハなど、様々な直径を有し得る。
【0067】
次いで、要素504で、第1のプラズマを形成するために、エネルギーパルスをスパッタガスに供給することができる。1つの実施形態では、エネルギーパルスは、上記のような高電力インパルスマグネトロンスパッタリング(HIPIMS)インパルスである。HIPIMS処理のパルス電力、パルス時間、平均電力、磁場強度及び他のパラメータは、
図4及び
図4Bに関連して記載されたものと同一であり得る。
【0068】
上述のように、HIPIMS PVD処理は、10%未満の低デューティサイクル(オン/オフ時間比)で数十マイクロ秒の短いパルス(インパルス)でほぼkW・cm
−2程度の高電力密度を利用する。HIPIMSの際立つ特徴は、スパッタされた材料の高度なイオン化及び高速の分子ガス解離であり、それらは、高密度の堆積膜を生じさせる。イオン化および解離度は、ピークカソード電力に応じて増加する。磁場強度は、ターゲットと基板との間の低い電位差、例えば、300ガウス未満(例えば約200ガウス)などを維持しながら短いパルスが使用され得るように選択される。
【0069】
一又は複数の実施形態では、ターゲットに提供される各パルスは、少なくとも1キロワットの平均電力を有することができる。幾つかの実施形態では、ターゲットに提供される各パルスは、少なくとも1メガワットの電力を有することができる。例えば、各パルスは、およそ1−3メガワットの電力を有することができる。加えて、一又は複数の実施形態では、ターゲットに提供された各パルスは、およそ1マイクロ秒から300マイクロ秒、例えば10マイクロ秒から100マイクロ秒までなどの持続時間を有することができる。幾つかの実施形態では、ターゲットに提供された各パルスは、およそ1マイクロ秒から200マイクロ秒の持続時間、又はおよそ100マイクロ秒から200マイクロ秒の持続時間を有することができる。例えば、各パルスは、およそ50マイクロ秒の持続時間を有することができる。更に、一又は複数の実施形態では、ターゲットに提供された各パルスは、およそ100ミリ秒の持続時間によって分離することができる。即ち、ターゲットに提供された各パルスの間は100ミリ秒とすることができる。しかしながら、本開示の実施形態は、特定の持続時間に限定されない。
【0070】
スパッタプラズマは、次に、要素506において、イオン化種を形成するためにスパッタターゲットに供給することができ、そのイオン化種は、基板上に中間炭化物層を形成する。スパッタターゲットは、グラファイトターゲットなどの炭素含有ターゲットとすることができる。ターゲット蒸気の電離度は、パルス幅及び磁場強度だけではなく、放電のピーク電流密度の関数である。1つの実施形態では、エネルギーパルスは、1W/cm
2から10W/cm
2までの電力、10%未満のデューティサイクル、及び約10マイクロ秒から100マイクロ秒までのパルス長を有することができる。
【0071】
イオン化種は、基板に達し、基板の上に中間炭化物層を形成する。中間炭化物層は、更なる堆積のためのシード層として作用する。
【0072】
基板は、508において、第2の処理チャンバに移送することができる。一又は複数の実施形態で使用される処理チャンバは、前述の処理チャンバ100又は他の製造業者からのチャンバなどの遠隔プラズマ源を有する任意のCVD処理チャンバとすることができる。以下に記載される流量及び他の処理パラメータは、300mmの基板に対するものである。これらのパラメータは、本明細書で開示される発明から逸脱せずに処理される基板のサイズ及び使用されるチャンバの種類に基づき調節することができると理解すべきである。
【0073】
オプションで、基板は、次にバイアスすることができる。バイアスは、バイアス強化された核形成処理の一部であり得る。バイアス強化された核形成の場合、基板は、負のバイアスとすることができる。1つの例では、基板は、バイアス事前処理でバイアスされる。バイアスは、約100ミリアンペアから約200ミリアンペアまでの電流を有することができる。バイアスは、約150ボルトから約250ボルトまでの電圧を有することができる。
【0074】
次いで、プラズマは、要素510において、活性化堆積ガスを形成するために堆積ガスの存在下で形成することができる。プラズマは、堆積ガス又は二次ガス、例えば不活性ガスなど、から形成することができる。プラズマは、局部的に又は遠隔でのどちらかで形成することができる。堆積ガスは、電源を使用してプラズマを形成することによって活性化することができる。ガスを反応性核種に活性化させ、反応性核種のプラズマを維持することができる任意の電源が使用されてもよい。例えば、高周波(RF)、直流(DC)、又はマイクロ波(MW)ベースの電力放電技法が使用されてもよい。堆積ガスは、炭素含有源、水素含有源、不活性ガス又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0075】
炭素含有前駆体は、アルカン前駆体、アルケン前駆体、又はアルキン前駆体とすることができる。アルカン前駆体は、飽和非分枝炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、及びそれらの組み合わせなど、とすることができる。他のアルカン前駆体は、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、及びそれらの組み合わせを含む。水素含有ガスは、H
2、H
2O、NH
3又は他の水素含有分子を含むことができる。堆積ガスは、不活性ガスを更に含むことができる。不活性ガスは、アルゴンなどの希ガスとすることができる。
【0076】
活性化堆積ガスは、次いで、要素512において、基板に供給することができ、活性化堆積ガスは、核形成層の上にナノ結晶ダイヤモンド層を成長させる。先に形成された活性化された堆積ガスからのラジカルは、基板表面に衝突してナノ結晶ダイヤモンド層を形成する。本明細書で使用する基板表面は、中間炭化物層などの基板表面上に形成された任意の層を含み得る。
【0077】
上記方法は、ナノ結晶ダイヤモンド層の成長のための少なくとも中間炭化物層の形成を教示する。均一な中間炭化物層を堆積させることによって、ナノ結晶ダイヤモンドは、共形的にかつ粗さが低減された状態で堆積させることができる。
【0078】
上記は本発明の実施形態を対象とするが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく、本発明の他の更なる実施形態を考案することもでき、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。