(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の材料前駆体と前記第2の材料前駆体の配置された前記液滴を部分的に硬化することがさらに、その下に配置された前記先に形成されたアクリレートポリマー層を硬化する、請求項5に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
理解を容易にするため、可能な場合には、図に共通する同一の要素を示すのに共通の用語を使用した。1つの実施形態で開示される要素は、特定の記述がなくても他の実施形態で有益に利用できることが企図されている。
【0020】
本開示は、調整可能な化学的、材料的及び構造的な特性を有する高度な研磨パッド、及びその研磨パッドを製造する新たな方法に関する。本開示の一又は複数の実施形態によれば、改良された特性を有する研磨パッドが、3次元(3D)印刷プロセスなどの付加製造プロセスにより製作され得ることが分かった。本開示の実施形態は、官能性ポリマー、官能性オリゴマー、モノマー、反応性希釈剤、流動添加物、硬化剤、光開始剤、及び硬化共力剤を含むがこれらに限定されない前駆体(例えば、「樹脂前駆体組成物」)から形成される少なくとも2つの異なる材料から形成された個別の特徴及び形状寸法を有している高度な研磨パッドを提供する。樹脂前駆体組成物材料は、少なくとも単官能基であり得、フリーラジカル、ルイス酸、及び/又は電磁放射に曝されるとポリメリゼーションを受けることがある、官能性ポリマー、官能性オリゴマー、モノマー、及び反応性希釈材を含み得る。1つの例として、高度な研磨パッドは、少なくとも1つの樹脂前駆体組成物の自動連続堆積により、更にはその後に続く少なくとも1つの硬化ステップにより、複数のポリマー層から形成され得、各層は、少なくとも1つのポリマー組成物、及び/又は異なる組成物の領域を表し得る。幾つかの実施形態では、高度な研磨パッドの層及び/又は領域は、金属、半金属酸化物、炭化物、窒化物及び/又はポリマー粒子などの少なくとも1つの充填剤を含む放射硬化ポリマーなどの複合材料構造を含み得る。幾つかの実施形態では、摩耗抵抗を増大させ、摩擦を低減し、摩耗に耐え、パッド全体若しくはパッドのある領域の架橋結合及び/又は熱伝導率を高めるために、充填剤が使用され得る。したがって、パッド本体を含み、そのパッド本体の上方、上部及び内部に生成される個別の特徴を含む高度な研磨パッドが、複数の異なる材料及び/又は材料組成から同時に形成され得、よってパッド構造及び特性のミクロンスケール制御が可能になる。
【0021】
更に、完全な研磨プロセス範囲にわたり所望のパッド研磨特性を含む研磨パッドが提供される。典型的な研磨パッド特性は、研磨パッド及び完全な研磨パッド構造の組成物特性内で個々の材料によって影響される、研磨パッドの静的特性及び動的特性の両方を含む。高度な研磨パッドは、形成された研磨パッド内部の一又は複数の方向に材料組成の勾配を含む複数の個別の材料及び/又は領域を含む領域を含み得る。研磨プロセスの範囲にわたって所望の研磨性能を有する高度な研磨パッドを形成するために調整できる機械特性の幾つかの例には、貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’、硬度、耐力強度、最終引張強度、伸び、熱伝導率、ゼータ電位、質量密度、表面張力、ポアソン比(Poison’s ratio)、破壊靱性、表面粗さ(R
a)及び他の関連特性が含まれるが、これらに限定されない。高度な研磨パッド内で調整することができる動的特性の幾つかの例には、損失係数(tanδ)、貯蔵弾性率比(又はE’30/E’90比)及びエネルギー損失係数(KEL)などの他の関連パラメータが含まれ得るが、これらに限定されない。エネルギー損失係数(KEL)は、パッド材料の弾性反発及び減衰効果に関連する。KELは、以下の方程式によって定義され得る:KEL=tanδ
*10
12/[E’
*(1+(tanδ)
2)]、ここでE’はパスカルである。KELは、典型的には、40℃の温度及び1又は1.6ヘルツ(Hz)の周波数での動的機械分析(DMA)の方法を用いて測定される。別段の指定がない限り、本書で提供された貯蔵弾性率E’、E’30/E’90比及び回復率の測定は、約1ヘルツ(Hz)の周波数及び約5℃/分の温度傾斜率で実行されたDMA試験プロセスを使用して行われた。パッド特性のうちの一又は複数を制御することにより、改善された研磨プロセス性能、改善された研磨パッド寿命、及び改善された研磨プロセス再現性を実現することができる。一又は複数のこれらの特性を示すパッド構成の例が、本明細書で検討される一又は複数の実施形態と併せて、以下で更に検討される。
【0022】
以下でより詳しく検討されるように、貯蔵弾性率E’は、基板全域で研磨結果が均一であり、よって研磨パッド性能に対して役立つ測定基準であることを保証するために重要な因子である。貯蔵弾性率E’は、典型的には、印加された引張応力を、応力−ひずみ曲線の弾性線形部分(例えば、傾斜、又はΔy/Δx)の延在歪みで除算することによって計算される。同様に、粘性応力の粘性歪みに対する割合は、損失弾性率E’’を定義するために使用される。貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E’’の両方が、材料内部、両分子間における化学結合から生じた本質的な材料特性であることに留意されたい。貯蔵弾性率は、動的機械分析(DMA)(例えば、ASTM D4065,D4440,及びD5279)などの材料検査技術を使用して所望の温度で測定され得る。異なる材料の特性を比較するとき、25℃から40℃の範囲、例えば、40℃などの単一な温度で材料の貯蔵弾性率E’を測定することが典型的である。
【0023】
研磨パッドの性能及び均一性における別の関連する測定基準は、研磨パッドの圧縮及び反発減衰特性など、材料の減衰能力の尺度である。減衰を測定する一般的な方法は、所望の温度での材料の損失係数(tanδ)を計算することであり、tanδ=損失弾性率/貯蔵弾性率=E’’/E’である。異なる材料の特性を比較する場合、40℃などの単一温度で材料のtanδ測定値を比較するのが一般的である。別段の指定がない限り、本書で提供されるtanδ測定は、1ヘルツ(Hz)の周波数及び約5℃/分の温度傾斜率で実行されたDMA試験プロセスを用いて行われた。Tanδは、一般的に、力が解放されたときに好ましい低いエネルギー配座及び構造に戻るフレキシブルでコイル状の脂肪族ポリマー鎖などの、材料内のバネのような弾性化学構造に比べて、適用される繰返し歪に対して、材料内の「粘性の」化学構造がどのように反応するか(例えば、結合回転、ポリマー鎖の滑り及び移動)の尺度である。例えば、材料の弾力性が低いほど、周期的荷重が加えられると、材料の粘性分子セグメントの応答が材料の弾性分子セグメントより遅れ(位相シフト)、熱が発生する。基板の処理中に研磨パッドで発生する熱は、研磨プロセスの結果(例えば、研磨の均一性)に影響を及ぼすことがあり、したがって、パッド材料の賢明な選択によって制御され及び/又は補償されるべきである。
【0024】
研磨パッドの材料の硬度は、研磨後の基板及び材料除去の速度に見られる研磨均一性の結果に役割を果たす。またロックウェル、ボール又はショア硬度スケールを使用してしばしば測定される材料の硬度は、押込に対する材料抵抗を測定し、経験的硬度値を提供し、貯蔵弾性率E’の増加を追う又は貯蔵弾性率E’の増加に伴って増加することがある。パッド材料は、典型的には、ASTM D2240技術を使用して典型的には測定されるショア硬度スケールを使用して測定される。典型的には、パッド材料硬度特性は、ポリオレフィンなどのより軟質の又は低い貯蔵弾性率E’のポリマー材料に通常使用される、ショアA又はショアDスケールのどちらかで測定される。ロックウェル硬度(例えば、ASTM D785)検査はまた、熱可塑性材料及び熱硬化性材料などの「硬質の」剛性工学ポリマー材料の硬度を試験するために使用されることもある。
【0025】
研磨パッド装置及び研磨方法
図1Aは、多数の研磨ステーション100を含むより大きな化学機械研磨(CMP)システム内部に位置付けられ得る研磨ステーション100の概略断面図である。研磨ステーション100は、プラテン102を含む。プラテン102は、中心軸104周囲を回転し得る。研磨パッド106は、プラテン102に載置され得る。典型的には、研磨パッド106は、研磨ステーション100で処理されるべき基板110のサイズ(例えば、基板直径)より少なくとも1〜2倍大きいプラテン102の上面を覆っている。1つの例では、研磨パッド106及びプラテン102は、直径約6インチ(150mm)から約40インチ(1016mm)までである。研磨パッド106は、一又は複数の基板110と接触し基板110を処理するように構成された研磨面112と、プラテン102の表面上に位置付けられる支持表面103を含む。プラテン102は、研磨パッド106を支持し、研磨中に研磨パッド106を回転させる。キャリアヘッド108は、研磨パッド106の研磨面112に対して基板110を保持する。キャリアヘッド108は、典型的には、研磨パッド106に対して基板110を付勢するために使用されるフレキシブルダイアフラム111と、研磨プロセス中に基板の表面全域に見られる本質的に不均一な圧力分布を補正するために使用されるキャリアリング109を含む。キャリアヘッド108は、中心軸114周囲を回転し及び/又は弧を描く動きで移動し得、基板110と研磨パッド106との間に相対運動を生成する。
【0026】
供給アーム118は、研磨スラリなどの研磨流体116を研磨中に研磨面112に供給する。研磨液体116は、基板の化学機械研磨を可能にするために、研磨粒子、pH調整剤及び/又は化学的活性構成要素を含有し得る。116のスラリの化学的特性は、金属、金属酸化物、及び半金属酸化物を含み得るウエハ表面及び/又は特徴を研磨するように設計される。研磨ステーション100はまた、典型的には、パッド調整ディスク128(例えば、ダイヤモンド含浸ディスク)が研磨プロセスサイクル中の様々な時間に研磨面112に付勢され研磨面112全域を一掃し、研磨パッド106の表面112を研磨及び活性化するように構成されている調整アーム122並びにアクチュエータ124及び126を含むパッド調整アセンブリ120を含む。
【0027】
図1B及び
図1Cは、研磨ステーション100に位置付けられている研磨ヘッド108の一部と従来の「硬質の」若しくは高い貯蔵弾性率E’の研磨パッド106Aとの概略断面図である。
図1D及び
図1Eは、研磨ステーション100に位置付けられている研磨ヘッド108の一部と従来の軟質の若しくは低い貯蔵弾性率E’の研磨パッド106Bとの概略断面図である。
図1F及び
図1Gは、研磨ステーション100に位置付けられている研磨ヘッド108の一部と、以下で更に説明される高度な研磨パッド200の1つの実施形態との概略断面図である。明確にするために、フレキシブルダイアフラム111及びキャリアヘッド108の上部分は、
図1Bから
図1Gでは省略されている。動作中に、フレキシブルダイアフラム111(
図1A)は、基板110を研磨パッド106A、106B又は高度な研磨パッド200に付勢するように位置付けられ、キャリアヘッド108の装着部分(図示されず)に連結されるキャリアヘッドアクチュエータ(図示されず)は、キャリアヘッド108及び保持リング109を研磨パッド106A、106B、又は高度な研磨パッド200の表面に別々に付勢するように構成される。
図1C、
図1E及び
図1Fに示されるように、フレキシブルダイアフラム111は、基板110の裏側に圧力を印加するように構成され、これは印加力F
2により図示されており、キャリアヘッドアクチュエータは、力F
1を保持リング109に印加するように構成される。
【0028】
図1Bは、研磨プロセスが基板110で実行される前に、キャリアヘッド108内にかつ従来の「硬質の」又は高い貯蔵弾性率E’の研磨パッド106Aの一部の上に位置付けられている基板110のエッジの一部を示す。基板110は、続くCMPプロセス中に除去及び/又は平坦化されるだろう一又は複数のデバイス特徴110B(
図1H)を有する層110Aを含む。
図1Cは、
図1Bに示される従来の「硬質の」研磨パッド106Aを使用する研磨プロセス中の基板110を示している。「硬質の」研磨パッドを使用するCMPプロセスは、保持リング109に力F
1を適用する必要性に特に関連する基板110のエッジに見られるエッジ効果のために、不均一な平坦化結果を有する傾向があり、CMPプロセス中に基板110のエッジに見られるより大きな固有の研磨の不均一性を補償することが分かった。換言すれば、高い貯蔵弾性率E’、「硬質な」研磨パッドを形成するために使用される材料の剛性又は硬質な特性は、力F
1が保持リング109によって「硬質」研磨パッド106Aに加えられるときにパッドリバウンド又はリッジ107Aを形成させる。リッジ107Aの形成は、一般に、加えられた力F
1に起因する「硬質な」研磨パッド106Aの変形107Bに関連し、基板110のエッジを基板110の中心よりも速く研磨する。基板110のエッジにおけるより高い研磨速度は、(例えば、基板の不均一性にわたる)「グローバルな」CMP平坦化の不均一性につながる。
【0029】
図1Hは、従来の「硬質の」研磨パッド106Aを使用して研磨されている基板110の一部の概略断面図である。図示されるように、基板110は、層110A内に形成され、CMPプロセス中に除去及び/又は平坦化される複数の特徴110Bを含む。この例では、「硬質の」研磨パッド106Aを形成するために使用される材料の高い貯蔵弾性率E’、剛性及び/又は硬質の性質は、力F
2がフレキシブルダイアフラム111により基板110に印加されるとき、それを顕微鏡スケール(例えば、10nm−1000nm特徴ピッチ)で著しく変形させることはないだろう。この場合、「硬質の」研磨パッド106Aは、概して、許容量の平坦化及び平坦化効率を顕微鏡スケールで供給するだろうが、前述の理由のため、到達するグローバルな平坦化は乏しい結果となるだろう。
【0030】
図1Dは、研磨プロセスが基板110で実行される前に、キャリアヘッド108内にかつ従来の「軟質の」又は低い貯蔵弾性率E’の研磨パッド106Bの一部の上に位置付けられている基板110のエッジの一部を示す。基板110は、続くCMPプロセス中に除去及び平坦化されるだろう一又は複数のデバイス特徴110B(
図1I)を有する層110Aを含む。
図1Eは、
図1Dに示される従来の軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の研磨パッド106Bを使用する研磨プロセス中の基板110を示している。軟質の又は低い貯蔵弾性率のE’の研磨パッドを使用するCMPプロセスは、軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の研磨パッドが、CMPプロセス中に保持リング109によって生成される加力F
1と、フレキシブルなダイアフラム111によって生成される加力F
2下で変形するのが比較的容易なため、結果的に不均一な平坦化を有する傾向にあることが分かった。言い換えれば、軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の研磨パッド106Bを形成するために使用される材料の軟質でフレキシブルかつ低い貯蔵弾性率E’の性質により、保持リング109により供給される力F
1が最小化でき、保持リング109のダウンフォースを相殺するパッドの能力が向上する効果がある。この低弾性率の材料の圧縮応答は、保持リング圧縮の迅速な回復及び研磨プロセス中の基板の中心とエッジとの間に見られるより一貫した研磨速度を可能にする。したがって、軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の研磨パッドの使用は、よりグローバルなCMP平坦化均一性につながるだろう。
【0031】
図1Iは、従来の軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の研磨パッド106Bを使用して研磨されている基板の一部の概略断面図である。この例では、軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の研磨パッド106Bを形成するために使用される材料のフレキシブル又は軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の性質により、力F
2がフレキシブルダイアフラム111によって基板110に加えられるとき、材料が顕微鏡スケール(例えば、10nm−1000nmの特徴ピッチ)で変形可能である。
図1Iに示されるように、軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の研磨パッド106Bの材料は、変形することができ、デバイス特徴110Bの間の層110Aの領域と実質的に接触し研磨することができる。特徴110Bの上部と特徴110Bの間の領域の部分とを同時に研磨する行為が、平坦化の不均一性、更には他の平坦化問題を引き起こすことになるだろう。この場合、軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の研磨パッド106Bは、概して、許容量のグローバルな平坦化を供給することになるが、到達する平坦化効率及び提供されるディッシング結果は乏しい。低貯蔵弾性率を有する研磨パッドは、パッド表面と基板の表面との間に配置される可能性のある硬質な欠陥を、高い貯蔵弾性率の材料により基板表面に押し付けるのではなく、むしろパッドマトリックス内で圧縮及び/又は受容できるので、顕微鏡スケールで改善されたスクラッチ性能の利点を提供する。
【0032】
高度な研磨パッド
本開示の実施形態は、概して、付加製造プロセスの使用により形成することができる高度な研磨パッド200を提供する。高度な研磨パッドは、少なくとも2つの異なる材料組成から形成される別個の特徴又は領域を典型的には含むパッド本体を有している。
図1F及び
図1Gは、研磨ステーション100に位置付けられている研磨ヘッド108の一部と高度な研磨パッド200のパッド本体202との概略断面図である。概して、研磨プロセス中に加えられる荷重が、2以上の材料組成を含む研磨本体202の領域を通って分散されるように構成される高度な研磨パッド200を形成し、高度なパッドの機械的、構造的、及び/又は動的特性を改善することが望ましい。1つの実施形態では、パッド本体202は、第1の貯蔵弾性率E’の材料(例えば、高い貯蔵弾性率E’の材料)から形成される少なくとも第1の研磨要素204、及び第2の貯蔵弾性率E’の材料(例えば、中間の又は低い貯蔵弾性率E’の材料)から形成され得る第2の研磨要素206を含み得る。1つの構成では、支持面203からの第1の研磨要素204の高さ150は、第1の研磨要素204の上面208が第2の研磨要素206の上に突出するように、第2の研磨要素206の高さ151より高い。1つの例では、
図1Gに示されるように、研磨要素の各々の材料の組み合わせである所望の機械的特性及び動的特性を有する高度な研磨パッドを形成するために、力F
2は、フレキシブルダイアフラム111により、第1の研磨要素204を通って、
図1Aに示されるプラテン102などの支持部材によって支持される第2の研磨要素206に供給される。より高い貯蔵弾性率型の研磨特徴を低い貯蔵弾性率型の支持特徴から分離することによって、高度な研磨パッドが改善されたグローバルな平坦性の利点を供給する一方で、より高い貯蔵弾性率の上部パッドによって提供される改善されたダイ及びアレイレベルの平坦性の利点が維持される。
【0033】
図1Jは、本開示の実施形態による、高度な研磨パッド200を使用して研磨されている基板110の一部の概略断面図である。
図1Jに示されるように、幾つかの実施形態では、研磨本体202内の第1の研磨要素204は、基板110の表面に形成される少なくとも2以上のデバイス特徴110B(例えば、集積回路デバイス)の距離に渡るのに十分大きくなるように形成されている。幾つかの実施形態では、第1の研磨要素204のうちの一又は複数は、基板の主要寸法より小さい(例えば、円形基板の半径)が、基板110に見られる最も小さなデバイス特徴よりは大きくなるようにサイズ決定される。幾つかの実施形態では、複数の第1の研磨要素204の各々が、約250マイクロメータから約3mmまでのサイズの、研磨面に平行である横寸法を有している。1つの例では、第1の研磨要素204が研磨面208において円形の断面を有している場合、横寸法は、第1の研磨要素204の直径とすることができる。別の例では、第1の研磨要素204が研磨面208においてトロイド形状である場合、横寸法は、その半径に沿って測定すると、トロイドの厚さとすることができ、又は場合によってはトロイドの外径にさえなることがある。したがって、第1の研磨要素204と一又は複数の第2の研磨要素206との組み合わせは、以下で更に検討されるように、高度な研磨パッドの特性及び性能を調節して、高度な研磨パッドを使用して基板上で実行される研磨プロセスの結果を改善するために使用することができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、高度な研磨パッド200は、少なくとも1つの高い貯蔵弾性率E’、中間の貯蔵弾性率E’、及び/若しくは低い貯蔵弾性率E’の研磨要素、並びに/又は化学構造的特徴を含み得る。例えば、高い貯蔵弾性率E’の材料組成は、芳香族環及び幾つかの脂肪族鎖を含む化学基及び/又は構造的特徴の少なくとも1つ、又はそれらの混合物であり得る。場合によっては、高い貯蔵弾性率E’の材料は、2%を上回る架橋密度を有している。高い貯蔵弾性率E’組成物は、高度な研磨パッドにおいて最も剛性の高い要素であり、高い硬度値を有し、最小の伸びを示し得る。中間の貯蔵弾性率E’組成物は、芳香族環、架橋結合の混合物を含み、高い貯蔵弾性率E’の組成物よりも大きな含量の脂肪族鎖、エーテルセグメント及び/又はポリウレタンセグメントを含み得る。中間の貯蔵弾性率E’の組成物は、中間の剛性、硬度を有し、高い貯蔵弾性率E’の材料よりも大きな伸び量を示し得る。低い貯蔵弾性率E’組成物は、芳香族環又は架橋結合からの寄与が最小限であるか全く含まない、脂肪族鎖、エーテルセグメント、及び/又はポリウレタンセグメントを含み得る。低い貯蔵弾性率E’の組成物は、フレキシブルであっても、軟質であっても、及び/又はゴムの様であってもよい。
【0035】
30℃(E’30)の温度で所望の低、中及び/又は高貯蔵弾性率E’特性を有する材料が表1に要約される:
表1
【0036】
1つの実施形態では、表1を参照すると、研磨パッド本体202は、異なる貯蔵弾性率E’及び/又は損失弾性率E’’を有する少なくとも1つの粘弾性材料から形成され得る。結果として、パッド本体は、第1の貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E’’を有する第1の材料又は第1の材料組成と、第1の貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E’’と異なる第2の貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E’’を有する第2の材料又は第2の材料組成とを含み得る。幾つかの実施形態では、研磨パッド表面特徴は、一又は複数のフォームファクタ又は寸法を有する複数の特徴を含み、異なる機械的、熱的、界面的及び化学的特性を有する特徴の混合物であり得る。例えば、パッド本体の上方、パッド本体の上及びパッド本体内に配置されるチャネル、溝及び/又は突起などのパッド表面の特徴は、第1の材料又は第1の材料組成に由来するより高い貯蔵弾性率E’と、第1の材料又は第1の材料の組成よりも弾性のある第2の材料又は第2の材料組成に由来する幾つかのより低い貯蔵弾性率E’の特性との両方を含み得る。
【0037】
本明細書で使用される高度な研磨パッド200という用語は、先ほど検討され更に以下でも検討される、一又は複数の属性、材料、特徴及び/又は特性を含む高度な研磨パッドを広く説明することを意図している。高度な研磨パッドの特定の構成は、
図2Aから
図2Kに例示された例と併せて検討されている。別段の指定がない限り、第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206という用語は、高度な研磨パッド200の研磨本体内の部分、領域及び/又は特徴を広く説明することを意図している。
図2Aから
図2Kに示される様々な高度な研磨パッド構成の特定の例は、他の類似の構成が、本書に記載の付加製造プロセスの一又は複数を使用することにより形成され得るので、本書で提供される開示の範囲に関して限定することを意図していない。
【0038】
高度な研磨パッドは、少なくとも1つの樹脂前駆体組成物の層自動連続堆積による、更にはその後の少なくとも1つの硬化ステップによる層によって形成され得、各層は、少なくとも1つのポリマー組成物、及び/又は異なる組成物の領域を表し得る。組成物は、官能性ポリマー、官能性オリゴマー、反応性希釈剤、及び硬化剤を含み得る。官能性ポリマーは、多官能アクリレート前駆体組成物を含み得る。複数の固体ポリマー層を形成するために、一又は複数の組成物のUV放射及び/又は熱エネルギーへの露出などの一又は複数の硬化ステップが使用され得る。この態様では、研磨パッド全体が、3D印刷によって複数のポリマー層から形成され得る。硬化した層の厚さは、例えば、5ミクロンから約100ミクロン、25ミクロンから約30ミクロンなど、約0.1ミクロンから約1mmであり得る。
【0039】
本開示による研磨パッドは、研磨要素から研磨要素までの少なくとも1つの組成勾配によって反映されるような、パッド本体202にわたる、貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E’’のような異なる機械的特性を有し得る。研磨パッド200にわたる機械的特性は、静的機械的特性、動的機械的特性及び摩耗特性を含み得る、ターゲット研磨パッド特性を実現するために、対称又は非対称、均一又は不均一であり得る。パッド本体202にわたる研磨要素204、206のいずれかのパターンは、研磨パッドにわたる貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E’’を含むターゲット特性を達成することにより、放射状、同心円状、矩形状、螺旋状、フラクタル状又はランダムであり得る。有利には、3D印刷プロセスは、特性を組み合わせ、特性のより高い平均又は特性の「複合体」を表すために、パッドの特定のパッドエリア又はパッドのより大きなエリアにわたって所望の特性を有する材料組成の特定の配置を可能にする。
【0040】
高度な研磨パッド構成例
図2Aは、本開示の1つの実施形態による高度な研磨パッド200aの概略斜視側面図である。一又は複数の第1の研磨要素204aは、円形のパッド本体202を形成するために、一又は複数の第2の研磨要素206aに連結される交互の同心リングで形成されてもよい。1つの実施形態では、支持面203からの第1の研磨要素204aの高さ210は、第1の研磨要素204aの上面208が第2の研磨要素206aの上に突出するように、第2の研磨要素206aの高さ212より高い。1つの実施形態では、第1の研磨要素204は、第2研磨要素206aの一部分212Aの上に配置される。溝218又はチャネルは、第1の研磨要素204aの間に形成され、少なくとも第2の研磨要素206aの一部を含む。研磨中に、第1の研磨要素204aの上面208が基板に接触する研磨面を形成する一方で、溝218は、研磨流体を保持し流れを方向付ける。1つの実施形態では、第1の研磨要素204aは、チャネル又は溝218がパッド本体202の上面に形成されるように、パッド本体202の研磨面又は上面208に平行な平面に垂直な方向に(即ち、
図2AのZ方向に)第2の研磨要素206aよりも厚くなる。
【0041】
1つの実施形態では、第1の研磨要素204aの幅214は、約250ミクロンから約5ミリメータまでであり得る。硬質の第1の研磨要素204aの間のピッチ216は、約0.5ミリメータから約5ミリメータまでであり得る。各第1の研磨要素204aは、約250ミクロンから約2ミリメータまでの範囲の幅を有し得る。幅214及び/又はピッチ216は、高度な研磨パッド200の半径全域で変化し得、多様な硬度のゾーンを定義する。
【0042】
図2Bは、本開示の実施形態による高度な研磨パッド200bの概略部分上面図である。高度な研磨パッド200bは、第1の研磨要素204bと第2の研磨要素206bを連結することを含むことを除き、
図2Aの高度な研磨パッド200に類似する。第1の研磨要素204bと第2の研磨要素206bは、複数の同心リングを形成する。第1の研磨要素204bは、突出する垂直なリッジ220を含み得、第2の研磨要素206bは、垂直なリッジ220を受容するための垂直な凹部222を含み得る。代替的には、第2の研磨要素206bが突出するリッジを含み得るのに対して、第1の研磨要素204bは凹部を含む。第2の研磨要素206bを第1の研磨要素204bと連結することにより、高度な研磨パッド200bは、CMPプロセス及び/又は材料処理中に発生し得る、印加された剪断力に対して機械的に強力になるだろう。1つの実施形態では、第1の研磨要素及び第2の研磨要素は、研磨パッドの強度を改善し、研磨パッドの物理的統合性を改善するために、連結され得る。特徴を連結することは、物理的力及び/又は化学的力に起因し得る。
【0043】
図2Cは、本開示の実施形態による高度な研磨パッド200cの概略斜視断面図である。研磨パッド200cは、第2の研磨要素206cなどの基材層から延びる複数の第1の研磨要素204cを含む。第1の研磨要素204cの上面208は、研磨中に基板と接触するための研磨面を形成する。第1の研磨要素204cと第2の研磨要素206cは、異なる材料特性及び構造特性を有している。例えば、第1の研磨要素204cが、硬質の材料から形成され得るのに対して、第2の研磨要素206cは、軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の材料から形成され得る。研磨パッド200cは、高度な研磨パッド200同様に、3D印刷により形成され得る。
【0044】
第1の研磨要素204cは、実質的に同じサイズであってもよく、又は研磨パッド200c全域で、様々な貯蔵弾性率E’及び/又は様々な損失弾性率E’’などの様々な機械的特性を形成するようにサイズが変化してもよい。第1の研磨要素204cは、高度な研磨パッド200cのターゲット特性を実現するために、研磨パッド200cにわたり均一に分布されても、不均一なパターンで配置されてもよい。
【0045】
図2Cにおいて、第1の研磨要素204cは、第2の研磨要素206cから延びる円柱として示されている。代替的には、第1の研磨要素204cは、任意の適切な形状、例えば楕円形、正方形、長方形、三角形、多角形、又は不規則な断面を有する柱状のものであってもよい。1つの実施形態では、第1の研磨要素204cは、高度な研磨パッド200cの硬度、機械的強度又は他の望ましい特性を調整するために異なる断面形状であってもよい。
【0046】
図2Dは、本開示の実施形態による高度な研磨パッド200cの研磨本体202の概略部分側断面図である。高度な研磨パッド200dは、第1の研磨要素204dと第2の研磨要素206dを連結することを含むことを除き、
図2Aから
図2Cの高度な研磨パッド200a、200b、又は200cに類似する。第1の研磨要素204d及び第1の研磨要素206dは、例えば、
図2A、
図2B又は
図2Cに示されるパッド本体202の一部を形成する複数の同心リング及び/又は別個の要素を含み得る。1つの実施形態では、第1の研磨要素204dが突出した側壁224を含み得るのに対して、第2の研磨要素206dは、第1の研磨要素204dの突出した側壁224を受容するための領域255を含み得る。代替的には、第2の研磨要素206dが突出した側壁を含み得るのに対して、第1の研磨要素204dは、突出した側壁を受容するように構成されている領域を含む。第2の研磨要素206cを第1の研磨要素204dと連結することによって、高度な研磨パッド200dは、増大した引張強度、圧縮強度及び/又は剪断強度を示し得る。加えて、側壁を連結することにより、高度な研磨パッド200dが引き離されることが防止される。
【0047】
1つの実施形態では、第1の研磨要素204dと第2の研磨要素206dとの間の境界は、第1の研磨要素204dを形成するために使用される第1の組成物及び第2の研磨要素206dを形成するために使用される第2の組成物からの遷移又は組成勾配などの、材料の少なくとも1つの組成物から別の組成物への粘性遷移を含む。材料の粘着性は、本明細書に記載された付加製造プロセスの直接的な結果であり、ミクロンスケールの制御及び層の付加形成構造による層内での2以上の化学組成物の混和が可能になる。
【0048】
図2Eは、本開示の実施形態による研磨パッドの概略部分断面図である。高度な研磨パッド200eは、高度な研磨パッド200eが異なるように構成された連結特徴を含むことを除き、
図2Dの高度な研磨パッド200dに類似する。高度な研磨パッド200eは、複数の同心リング及び/又は別個の要素を有する第1の研磨要素204e並びに第2の研磨要素206eを含み得る。1つの実施形態では、第1の研磨要素204eが水平なリッジ226を含み得るのに対して、第2の研磨要素206eは、第1の研磨要素204eの水平なリッジ226を受容するための水平な凹部227を含み得る。代替的には、第2の研磨要素206eが水平なリッジを含み得るのに対して、第1の研磨要素204eは、水平な凹部を含む。1つの実施形態では、
図2Bの連結特徴のような垂直な連結特徴と、
図2D及び
図2Eの連結特徴のような水平な連結特徴とが、高度な研磨パッドを形成するために組み合わせられてもよい。
【0049】
図2Fから
図2Kは、本開示の実施形態による様々な研磨パッド設計の概略平面図である。
図2Fから
図2Kの各々は、基板を接触させて研磨するための第1の研磨要素204f−204kをそれぞれ表す白色領域(白ピクセルの領域)、及び第2の研磨要素206f−206kを表す黒色領域(黒ピクセルの領域)を有するピクセルチャートを含む。同様に本明細書で考察されるように、白色領域間の黒色領域にチャネルが形成されるように、白色領域は、一般に黒色領域上に突出する。1つの例では、ピクセルチャート内のピクセルは、高度な研磨パッドの、層、又は層の一部内に様々な材料の位置を画定するために使用される長方形のアレイ形式のパターン(例えば、X方向及びY方向に方向付けられたアレイ)に配置される。別の例では、ピクセルチャート内のピクセルは、研磨パッドの層又は研磨パッドの層の一部内の様々な材料の位置を画定するために使用される六方最密アレイ形式のパターン(例えば、6つの最近傍によって囲まれた1つのピクセル)に配置される。研磨スラリは、研磨中にチャネルを介して流れ、チャネル内に保持され得る。
図2Fから
図2Kに示す研磨パッドは、付加製造プロセスを用いて複数の材料層を堆積させることによって形成され得る。複数の層の各々は、第1の研磨要素204fから204k及び第2の研磨要素206fから206kを形成するための2以上の材料を含み得る。1つの実施形態では、第1の研磨要素204fから204kは、溝及び/又はチャネルが研磨パッドの上面に形成されるように、材料の複数の層と平行な平面に垂直な方向に第2の研磨要素206fから206kより厚くなり得る。
【0050】
図2Fは、複数の同心研磨特徴204fを有する高度な研磨パッド設計200fの概略ピクセルチャートである。研磨特徴204fは、等しい幅の同心円であり得る。1つの実施形態では、第2の研磨要素206fはまた、第1の研磨要素204fのピッチが半径方向に沿って一定であるように、等しい幅を有し得る。研磨中に、第1の研磨要素204f間のチャネルは、研磨スラリを保持し、その中心軸(即ち、同心円の中心)周囲の研磨パッドの回転によって生成された遠心力のため、研磨スラリの急速な損失を防止する。
【0051】
図2Gは、同心円に配置された複数のセグメント化された複数の第1の研磨要素204gを有する研磨パッド設計200gの概略ピクセルチャートである。1つの実施形態では、セグメント化された第1の研磨要素204gは、実質的に等しい長さを有し得る。セグメント化された第1の研磨要素204gは、複数の同心円を形成し得る。各円において、セグメント化された第1の研磨要素204gは、各同心円内に等しく分散され得る。1つの実施形態では、セグメント化された第1の研磨要素204gは、半径方向に等しい幅を有し得る。幾つかの実施形態では、セグメント化された第1の研磨要素204gは、同心円の半径とは無関係に実質的に等しい長さ(例えば、研磨パッドの中心領域を除き、等しいアーク長)を有している。1つの実施形態では、第2の研磨要素206gは、複数の同心円の間に配置され、同心円のピッチが一定であるように等しい幅を有している。1つの実施形態では、セグメント化された第1の研磨要素204g間の間隙は、研磨スラリが、研磨パッドのその中心軸周囲での回転により生成される遠心力下で、研磨パッドから直接流出するのを防止するために、円と円が互い違いになっていてもよい。
【0052】
図2Hは、螺旋の第1の研磨要素204hが第2の研磨要素206hの上に配置されている研磨パッド設計200hの概略ピクセルチャートである。
図2Hでは、研磨パッド200hは、研磨パッドの中心から研磨パッドのエッジまで延びる4つの螺旋の第1の研磨要素204hを有している。4つの螺旋の研磨特徴が示されているが、もっと少数又はもっと多数の螺旋の第1の研磨要素204hが同様に配置されていてもよい。螺旋の第1の研磨要素204hは、螺旋チャネル218hを画定する。1つの実施形態では、螺旋の第1の研磨要素204hの各々は、一定の幅を有している。1つの実施形態では、螺旋チャネル218hもまた、一定の幅を有している。研磨中に、研磨パッドは、研磨スラリを螺旋チャネルに保持するために、螺旋の第1の研磨要素204hの方向と反対方向に中心軸周囲を回転し得る。例えば、
図2Hでは、螺旋の第1の研磨要素204h及び螺旋チャネルが、反時計方向に形成され、よって研磨中に、研磨パッドは、研磨スラリを螺旋チャネル内かつ研磨パッド上に保持するために時計回りに回転され得る。幾つかの構成では、螺旋チャネルの各々は、研磨パッドの中心から研磨パッドのエッジまで連続している。この連続的螺旋チャネルにより、研磨スラリを任意の研磨屑と共に、研磨パッドの中心から研磨パッドのエッジまで流すことが可能になる。1つの実施形態では、研磨パッドは、螺旋の第1の研磨要素204hと同じ方向に(例えば、
図2Hの反時計回りに)研磨パッドを回転させることによって、洗浄され得る。
【0053】
図2Iは、セグメント化された第1の研磨要素204iが第2の研磨要素206iの上に螺旋パターンで配置されている研磨パッド設計200iの概略ピクセルチャートである。
図2Iに示された高度な研磨パッドは、第1の研磨要素204iがセグメント化され、第1の研磨要素204iの半径ピッチが変化することを除き、
図2Hの研磨パッドと類似している。1つの実施形態では、セグメント化された第1の研磨要素204iの半径ピッチは、処理中に研磨パッドの表面の異なる領域でスラリの保持を調節及び/又は制御するために、研磨パッドの中心から研磨パッドのエッジ領域まで低下する。
【0054】
図2Jは、複数の別個の第1の研磨要素204jが第2の研磨要素206jに形成されている研磨パッド設計200jの概略ピクセルチャートである。1つの実施形態では、複数の第1の研磨要素204jの各々は、
図2Cに示された構成と同様に、円柱型構造であり得る。1つの実施形態では、複数の第1の研磨要素204jは、研磨面の平面に同一の寸法を有し得る。1つの実施形態では、複数の円筒状の第1の研磨要素204jは、同心円内に配置され得る。1つの実施形態では、複数の円筒状の第1の研磨要素204jは、研磨面の平面に対して通常の2Dパターンで配置され得る。
【0055】
図2Kは、複数の別個の第1の研磨要素204kが第2の研磨要素206kに形成されている研磨パッド設計200kの概略ピクセルチャートである。
図2Kの研磨パッドは、
図2Kの幾つかの第1の研磨要素204kが一又は複数の閉鎖された円を形成するために結合され得ることを除き、
図2Jの研磨パッドに類似する。一又は複数の閉鎖された円は、研磨中に研磨スラリを保持するために一又は複数のダム(damn)を形成し得る。
【0056】
図2Aから
図2Kの設計における第1の研磨要素204a−204kは、材料のうちの一致する材料又は一致する組成物から形成され得る。代替的には、
図2Aから
図2Kの設計における第1の研磨要素204a−204kの材料組成及び/又は材料特性は、研磨特徴によって様々であり得る。個別化した材料組成及び/又は材料特性により、研磨パッドは、特定のニーズに応じて調整され得る。
【0057】
付加製造装置及びプロセスの例
図3Aは、本開示の一又は複数の実施形態による付加製造プロセスを使用した高度な研磨パッドを形成するために使用することができる付加製造システム350の概略断面図である。付加製造プロセスは、ポリジェット堆積プロセス、インクジェット印刷プロセス、熱溶解積層法プロセス、結合剤噴射プロセス、粉末床溶融結合プロセス、選択的レーザ焼結プロセス、ステレオリソグラフィプロセス、液槽光重合デジタル光処理、シート積層プロセス、指向性エネルギー堆積プロセス、又は他の類似の3D堆積プロセスを含み得るが、これらに限定されない。
【0058】
付加製造システム350は、概して、前駆体供給セクション353、前駆体形成セクション354、及び堆積セクション355を含む。堆積セクション355は、概して、付加製造デバイス、又はこれ以降印刷ステーション300を含むことになるだろう。高度な研磨パッド200は、印刷ステーション300内で支持体302の上に印刷され得る。典型的には、高度な研磨パッド200は、CAD(コンピュータ支援設計)プログラムから、
図3Aに示されたプリンタ306A及びプリンタ306Bなどの一又は複数の液滴吐出プリンタ306を使用して層ごとに形成される。プリンタ306A、306B及び支持体302は、印刷プロセス中に互いに対して移動してもよい。
【0059】
液滴吐出プリンタ306は、液体前駆体を分配するための一又は複数のノズル(例えば、ノズル309−312)を有する一又は複数の印刷ヘッド308を含み得る。
図3Aの実施形態では、液滴吐出プリンタ306Aは、ノズル309を有する印刷ヘッド308Aと、ノズル310を有する印刷ヘッド308Bとを含む。ノズル309が、軟質の又は低い貯蔵弾性率E’のポリマーなど、第1のポリマー材料を形成するための第1の液体前駆体組成物を分配するように構成され得るのに対して、ノズル310は、硬質のポリマー、又は高い貯蔵弾性率E’を示すポリマーなどの第2のポリマー材料を形成するために、第2の液体前駆体を分配するために使用され得る。液体前駆体組成物は、所望の特性を有する高度な研磨パッドを形成するために選択された場所又は領域に分配され得る。これらの選択された場所は、CAD互換ファイルとして記憶することができ、次いで電子コントローラ305によって読み取られるターゲット印刷パターンを集合的に形成することができ、液滴吐出プリンタ306のノズルからの液滴の供給を制御する。
【0060】
コントローラ305は、一般的に、印刷ステーション300を含む付加製造システム350内の構成要素の制御及び自動化を促進にするために使用される。コントローラ305は、例えば、コンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ、又は埋め込み式コントローラとすることができる。コントローラ305は通常、中央処理装置(CPU)(図示せず)、メモリ(図示せず)、及び入出力(I/O)用支持回路(図示せず)を含む。CPUは、様々なシステム機能、基板移動、チャンバ処理を制御するための産業設定で使用され、支持ハードウェア(例えば、センサ、モータ、ヒータなど)を制御し、システムで実行される処理を監視するコンピュータプロセッサの任意の形態の1つであり得る。メモリは、CPUに接続されており、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読取り専用メモリ(ROM)、フロッピーディスク、ハードディスク、又は任意の他の形態のローカルもしくは遠隔のデジタルストレージなど、容易に利用可能な不揮発性メモリの一又は複数であり得る。メモリ内には、CPUに命令するためのソフトウェア命令及びデータをコード化して記憶させることができる。支持回路もまた、従来の方法でプロセッサを支持するようにCPUに接続される。支持回路は、キャッシュ、電源、クロック回路、入出力回路サブシステムなどを含み得る。コントローラ305による可読プログラム(又はコンピュータ命令)は、付加製造システム350における構成要素によりどのタスクが実行可能であるかを決定する。好ましくは、プログラムは、プリンタ306から供給される液滴の供給及び位置決めの監視、実行及び制御、並びに構成要素の移動、支持及び/又は位置決めに関するタスクを、コントローラ305で実行されている様々な処理タスク及び様々なシーケンスと共に印刷ステーション300内部で実行するためのコードを含むコントローラ305によって読み取り可能なソフトウェアである。
【0061】
3D印刷後に、高度な研磨パッド200は、付加製造システム350の堆積セクション355内に配置された硬化デバイス320の使用によって固化され得る。硬化デバイス320によって実行される硬化プロセスは、印刷された研磨パッドを硬化温度に加熱ことにより、又はパッドを電磁放射又は電子ビーム硬化の一又は複数の形態に曝すことによって実行され得る。1つの例では、硬化プロセスは、印刷された研磨パッドを、可視光源、紫外光源、及びX線源などの電磁放射線源、又は硬化デバイス320内に配置されている他の種類の電磁波源によって生成された放射321に曝すことによって実行され得る。
【0062】
付加製造プロセスは、異なる材料及び/又は異なる材料組成から形成された別個の特徴を備えた高度な研磨パッドを製造するための便利で高度に制御可能なプロセスを提供する。1つの実施形態では、軟質の若しくは低い貯蔵弾性率E’の特徴及び/又は硬質の若しくは高い貯蔵弾性率E’の特徴は、付加製造プロセスを使用して形成され得る。例えば、研磨パッドの軟質の若しくは低い貯蔵弾性率E’の特徴は、プリンタ306Bのノズル312から分配されたポリウレタンセグメントを含む第1の組成物から形成され得、研磨パッドの硬質の又は高い貯蔵弾性率E’の特徴は、プリンタ306Aのノズル310から分配された第2の組成物の液滴から形成され得る。
【0063】
別の実施形態では、第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206は各々、2以上の組成物の混合物から形成され得る。1つの例では、第1の組成物は、印刷ヘッド308Aのような第1の印刷ヘッドによって液滴の形態で分配され、第2の組成物は、プリンタ306Aの印刷ヘッド308Bのような第2の印刷ヘッドによって液滴の形態で分配され得る。複数の印刷ヘッドから供給された液滴の混合物を有する第1の研磨要素204を形成するためには、コントローラ305に見られる堆積マップ内の所定のピクセル上の第1の研磨要素204に対応するピクセルの位置合わせを要する/含む。次に、印刷ヘッド308Aは、第1の研磨要素204が形成される場所に対応するピクセルと位置合わせされ、次いで、所定のピクセル上に液滴を分配し得る。したがって、高度な研磨パッドは、第1の液滴組成物の液滴を堆積させることによって形成される第1の材料組成と、第2の液滴組成物の液滴を堆積させることによって形成される第2の材料組成を含む第2の材料から形成され得る。
【0064】
図3Bは、パッド製造プロセス中の印刷ステーション300及び高度な研磨パッド200の一部の概略断面図である。
図3Bに示すように、印刷ステーション300は、高度な研磨パッド200の一部を順次形成するために使用される2つのプリンタ306A及び306Bを含む。
図3Bに示す高度な研磨パッド200の部分は、例えば、最終的に形成された高度な研磨パッド200内の第1の研磨要素204又は第2の研磨要素206のどちらかの一部を含み得る。処理中、プリンタ306A及び306Bは、液滴「A」又は「B」をそれぞれ支持体302の第1の表面に、続いて支持体302上に配置されている成長する研磨パッドの表面に層ごとのプロセスで供給するように構成される。
図3Bに示すように、第2の層348は、支持体302上に形成された第1の層346の上に堆積される。1つの実施形態では、第2の層348は、パッド製造プロセスにおいてプリンタ306A及び306Bの下流に配置される硬化デバイス320によって処理された第1の層346上に形成される。幾つかの実施形態では、プリンタ306A及び306Bのうちの一又は複数が、前に形成された層346の表面346A上に液滴「A」及び/又は「B」を堆積させている間に、第2の層348の部分が、硬化デバイス320によって同時に処理され得る。この場合、現在形成されている層は、硬化ゾーン349Aの一方に配置された処理部分348A及び未処理部分348Bを含み得る。未処理部分348Bは、一般的に、プリンタ306B及び306Aそれぞれの使用によって前に形成された層346の表面346A上に堆積される、分配された液滴343及び347のような、分配された液滴のアレイを含む。
【0065】
図3Cは、前に形成された層346の表面346Aに配置されている分配された液滴343のクローズアップ断面図である。分配される液滴内の材料の特性に基づき、かつ表面346Aの表面エネルギーのため、分配される液滴は、表面張力に起因して、もともと分配される液滴(例えば、液滴「A」又は「B」)のサイズより大きい量を表面全域に分散させる。分配される液滴の広がる量は、それが表面346Aに堆積される瞬間からの時間の関数として変化することになろう。しかしながら、非常に短い期間(例えば、1秒未満)後に、液滴の広がりは、平衡粒度に達し、平衡接触角αを有することになるだろう。表面全域に分配される液滴の分散は、成長する研磨パッドの表面上の液滴配置の解像度、ひいては最終研磨パッドの様々な領域内に見られる特徴及び材料組成の解像度に影響を及ぼす。
【0066】
幾つかの実施形態では、液滴が基板の表面上でその未硬化の平衡粒度に広がる機会を有する前に、各液滴を所望のサイズに硬化する又は「固定する」ためにある期間、液滴「A」及び「B」を基板の表面と接触させた後に、液滴「A」及び「B」の一方又は両方を露出することが望ましい。この場合、分配された液滴に供給されるエネルギー、並びに硬化デバイス320によって液滴が載置される表面及び液滴の材料組成は、分配された液滴のそれぞれの解像度を制御するように調節される。したがって、3D印刷プロセス中に制御又は調整する1つの重要なパラメータは、分配される液滴の表面張力のそれが配置される表面に対する制御である。幾つかの実施形態では、一又は複数の硬化促進成分(例えば、光開始剤)を液滴の配合物に加え、硬化プロセスの動態を制御し、酸素阻害を防止し、及び/又は液滴が堆積される表面上の液滴の接触角を制御することが望ましい。硬化促進成分は、一般に、調整可能である材料を含むであろうことに留意されたい:1)所望量の電磁放射への最初の露出の間に、分配された液滴の材料中に生じるバルク硬化の量、2)所望量の電磁放射への最初の露出中に分配された液滴の材料中に生じる表面硬化の量、3)分配された液滴の表面硬化領域に対する表面特性改質(例えば、添加物)の量。分配された液滴の表面硬化領域に対する表面特性改質量は、一般に、分配された液滴及び少なくとも部分的に硬化された液滴の表面に見られる硬化した又は部分的に硬化したポリマーの表面エネルギーの調節を含む。
【0067】
印刷プロセス中に、各分配された液滴を部分的に硬化させて、その表面特性及び寸法サイズを「固定」することが望ましいことが分かった。液滴を所望のサイズに「固定」する能力は、液滴の材料組成に少なくとも1つの硬化促進成分を所望量付加し、付加製造プロセス中に硬化デバイス320から十分な量の電磁エネルギーを送達することによって達成することができる。幾つかの実施形態では、付加層形成プロセス中に、例えば、約10−20mJ/cm
2など、約1ミリジュール/平方センチメータ(mJ/cm
2)から100mJ/cm
2の紫外線(UV)光を液滴に供給することができる硬化デバイス320を使用することが望ましい。UV放射は、水銀マイクロ波アークランプ(例えば、Hバルブ型ランプ、H+バルブ型ランプ、Dバルブ型ランプ、Qバルブ型ランプ、及びVバルブ型ランプ)、パルスキセノンフラッシュランプ、高効率UV発光ダイオードアレイ、及びUVレーザなどの任意のUV源によって提供され得る。UV放射は、約170nmから約500nmまでの波長を有し得る。
【0068】
幾つか実施形態において、分配された液滴「A」、「B」のサイズは、例えば、約50ミクロンから約70ミクロンなど、約10ミクロンから約200ミクロンまでであり得る。液滴が上方及び上に分配される基板又はポリマー層の表面エネルギー(ダイン)次第で、未硬化の液滴は、例えば、約50ミクロンから約200ミクロンまでなど、約10ミクロンから約500ミクロンまでのサイズ343Aまで、表面にかつ表面全域に広がり得る。1つの例では、このような液滴の高さは、表面エネルギー、湿潤、及び/又はフロー剤、増粘剤、界面活性剤などの他の添加物を含み得る樹脂前駆体組成物などの要因次第で、約5ミクロンから約100ミクロンまでであり得る。添加物の1つの源は、ドイツGeretsriedのBYK−Gardner GmbHである。
【0069】
幾つかの実施形態では、光開始剤、液滴組成物中の光開始剤の量、及び硬化デバイス320によって供給されるエネルギーの量を選択して、分配された液滴を約1秒未満、例えば、分配された液滴が固定されるべき表面と接触した後の約0.5秒未満などで、「固定」させることができることが一般に望ましい。分配された液滴の硬化時間は、硬化源320から供給されるエネルギーの放射エネルギー及び波長の量に依存するだろうから、分配された液滴を部分的に硬化させるのに要する実際の時間は、供給される硬化エネルギーへの露出に起因し、液滴が供給された放射に曝される前に表面上に存在する時間よりも長くても短くてもよい。1つの例では、120マイクロメータ(μm)の分配された液滴を部分的に硬化させるために使用される露光時間は、約10−15mJ/cm
2のUV放射の放射露光レベルに対して約0.4マイクロ秒(μs)である。この短い時間枠内で液滴を「固定」するために、高度な研磨パッドの表面346Aが硬化デバイス320から供給された放射321に露出される間、液滴吐出プリンタ306の分配ノズルを研磨パッドの表面から、0.1ミリメータ(mm)から10mmまで、又は0.5mmから1mmまでなど、短距離に位置付ける必要がある。また、液滴組成物、前に形成された層の硬化量(例えば、前に形成された層の表面エネルギー)、硬化デバイス320からのエネルギー量、及び液滴組成物の光開始剤の量を制御することによって、液滴の接触角αは、固定された液滴のサイズ、ひいては印刷プロセスの解像度を制御するために制御することができることも分かった。1つの例では、下層の硬化は、約70%のアクリレート転化率の硬化であり得る。固定された、又は少なくとも部分的に硬化された液滴は、本明細書では硬化した液滴とも呼ばれる。幾つかの実施形態では、固定液滴サイズ343Aは、約10ミクロンから約200ミクロンまでの間である。幾つかの実施形態では、接触角は、本書では、「固定された」液滴に対する、動的接触角(例えば、非平衡接触角)とも呼ばれるのであるが、望ましくは、55度よりも大きい、又は60度よりも更に大きい、少なくとも50度の値まで制御することができる。
【0070】
付加製造プロセスによって層又は層の一部を形成するために使用されるピクセルチャート内のピクセルの解像度は、分配される液滴の平均「固定」サイズによって定義することができる。したがって、層又は層の部分の材料組成は、「分配された液滴組成物」によって定義することができ、これは、ある液滴組成物の液滴を含む層又は層の部分内のピクセルの総数の百分率である。1つの例では、形成された高度な研磨パッドの層の領域が、60%の第1の分配された液滴組成物の分配された液滴組成物を有すると定義される場合、次に領域内のピクセルの60%は、第1の材料組成を含む固定された液滴を含むことになるだろう。層の一部が複数の材料組成を含む場合には、「研磨組成比」を有するものとして高度な研磨パッド内の領域の材料組成を定義することもまた望ましい場合もある。材料組成比は、その上に配置された第1の材料組成を有するピクセルの数の、その上に配置された第2の材料組成を有するピクセルの数に対する比である。1つの例では、ある領域が表面のエリアにわたり配置されている1000ピクセルを含むと定義され、ピクセルのうちの600が第1の液滴組成物の固定された液滴を含み、ピクセルのうちの400が第2の液滴組成物の固定された液滴を含む場合、次に材料組成比は、第1の液滴組成物対第2の液滴組成物が3:2の比率で含まれることになるだろう。各ピクセルが2以上の固定された液滴(例えば、1つのピクセルにつき1.2の液滴)を含み得る構成では、材料組成比は、定義された領域内に見られる第1の材料の固定液滴の数の第2の材料の固定液滴の数に対する比によって定義されるだろう。1つの例では、領域が1000ピクセルを含むと定義され、領域内に第1の液滴組成物の800の固定液滴と第2の液滴組成物の400の固定液滴が存在する場合、材料組成比は、高度な研磨パッドのこの領域については2:1となるだろう。
【0071】
次の下層を形成する分配された液滴表面の硬化量は、この「最初の量」における硬化量が、分配される液滴の次の層が付加製造プロセス中に曝されることになる表面エネルギーに影響を与えるため、重要な研磨パッド形成プロセスパラメータである。各堆積層がその上で成長する後の堆積層を通して供給される追加的に伝達される硬化放射に繰り返し曝されるため、各堆積層が最終的に形成される研磨パッドにおいて到達することになる硬化量にも影響を及ぼすので、最初の硬化用量の量もまた重要である。過度に硬化した材料の材料特性及び/又はその後のステップで引き続き堆積される分配液滴に対する硬化層の表面の湿潤性に影響を及ぼすことになるので、形成された層の過度の硬化を防止することが一般に望ましい。1つの例では、10−30ミクロン厚の分配された液滴の層を重合させることは、各液滴を表面上に分配し、その後、約0.1秒から約1秒の時間経過後に、分配された液滴を約10mJ/cm
2−約15mJ/cm
2の放射露光レベルでUV放射に露光することによって実行され得る。しかし、幾つかの実施形態では、最初の硬化用量の間に供給される放射線レベルは、層ごとに変化させてもよい。例えば、異なる層における異なる分配液滴組成物に起因して、各最初の量のUV放射線露出の量は、所望レベルの硬化を現在露出されている層の中に、又は下層のうちの一又は複数にも提供するために調節され得る。
【0072】
幾つかの実施形態では、液滴組成物及び最初の硬化ステップ中に硬化デバイス320から供給されるエネルギー量を制御することが望ましく、これは、分配される液滴の堆積層が、硬化デバイス320によって提供されるエネルギーに直接露出され、層を所望の量を部分的にのみ硬化させるステップである。一般的に、形成された層の表面エネルギーを制御することが、分配された液滴サイズを制御するために重要であるため、最初の硬化プロセスは、分配された液滴をバルク硬化させることに対して、主に分配された液滴を表面硬化させることが望ましい。1つの例では、分配された液滴が部分的に硬化される量は、分配された液滴中の材料の化学的変換の量によって定義することができる。1つの例では、ウレタンポリアクリレート含有層を形成するために使用される分配された液滴中に見られるアクリレートの転化率は、パーセンテージxによって定義され、以下の方程式により算出される。
ここで、A
C=C及びA
C=oは、FT−IR分光法を用いて見いだされた910cm
−1でのC=Cピーク及び1700cm
−1でのC=Oピークの値である。重合中、アクリレート中のC=C結合はC−C結合に変換されるが、アクリレート中のC=Oは変換されない。よって、C=CからC=Oの強度は、アクリレート転化率を示す。A
C=C/A
C=O比は、硬化した液滴内のC=C対C=O結合の相対比を指し、従って(A
C=C/A
C=O)
0は、液滴中のA
C=C対A
C=Oの初期比を示し、(A
C=C/A
C=O)
xは、液滴が硬化した後の基板の表面上のA
C=C対A
C=Oの比を示す。幾つかの実施形態では、層が最初に硬化される量は、分配された液滴の約70%以上であり得る。幾つかの構成では、分配された液滴の硬化エネルギーへの約70%から約80%のレベルまでの最初の露出中に分配された液滴の材料を部分的に硬化させることが所望であり得、よって分配された液滴のターゲット接触角が実現され得る。上面の未硬化又は部分的アクリレート材料は、その後の液滴と共重合し、したがって層間に凝集が生じると考えられる。
【0073】
最初の層形成ステップ中に分配された液滴を部分的に硬化させるプロセスはまた、残留アクリル基などの残留未結合基の存在に起因して、後に堆積する層の間に何らかの化学的結合/接着が確実に存在することになるためには重要であり得る。残留未結合基は、重合されていないので、後に堆積した層との化学結合を形成することに関与する可能性がある。したがって、層間の化学結合の形成は、パッド形成プロセス中の層成長による層の方向(例えば、
図3BではZ方向)に、形成された高度な研磨パッドの機械的強度を増加させることができる。ゆえに、上記のように、層間の結合は、物理的力及び/又は化学的力によって形成され得る。
【0074】
分配された液滴の混合、又は分配された液滴の配置は、個々に調整可能な特性を有する層を形成し、形成された層の複合体である望ましいパッド特性を有する研磨パッドを形成するために、層ごとに調整することができる。1つの例では、
図3Bに示すように、分配された液滴の混合物は、分配された液滴343と347の50:50の比(又は1:1の材料組成比)を含み、分配された液滴343は、分配された液滴347に見られる材料から少なくとも1つの異なる材料を含む。第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206などの研磨本体202の部分の特性は、堆積プロセス中に分配された液滴の位置決めから形成される第1の組成物及び第2の組成物の比率及び/又は分配に従って調節又は調整されてもよい。例えば、第1の組成物の重量%は、組成物の総重量に基づき約1重量%から組成物の総重量に基づき約100重量%までであり得る。同様に、第2の組成物は、組成物の総重量に基づき約1重量%から組成物の総重量に基づき約100重量%までであり得る。硬度及び/又は貯蔵弾性率などの必要とされる材料特性に応じて、2以上の材料の組成物を異なる比率で混合して、所望の効果を実現することができる。1つの実施形態では、第1研磨要素204及び/又は第2研磨要素206の組成物は、少なくとも1つの組成物若しくは組成物の混合、並びに一又は複数のプリンタによって分配される液滴のサイズ、位置及び/又は密度を選択することによって制御される。したがって、コントローラ305は、一般的に、ノズル309−310、311−312を位置決めして、形成されている研磨パッドの表面に所望の密度及びパターンで位置決めされた互いにかみ合った液滴を有する層を形成するように適合される。幾つかの構成では、分配された液滴は、各液滴が他の液滴と混ざらない場所に配置され、よって各々が硬化前に個別の材料「島状構造」を保つことを確実にするように堆積させることができる。幾つかの構成では、分配された液滴はまた、同じ層内の事前に分配された液滴の上に置かれて、構築速度を増加させる又は材料特性を混合することもできよう。表面での互いに対する液滴の配置は、層内の分配された液滴の各々の部分的な混合挙動を可能にするように調整されてもよい。場合によっては、それぞれ、隣接する液滴中の成分の混合を多かれ少なかれ提供するために、液滴を互いにより近づけて又はより離して配置することが望ましいこともあろう。他の分配された液滴及び各液滴の組成物に対する液滴配置の制御は、形成された高度な研磨パッドの機械的特性及び研磨特性に影響を及ぼす可能性があることが分かった。
【0075】
第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206を形成するために2つの組成物だけが本明細書で一般的に考察されているが、本開示の実施形態は、組成勾配を介して相互結合される複数の材料を有する研磨パッド上に特徴を形成することを包含する。幾つかの構成では、研磨パッド内の第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206の組成物は、以下で更に説明するように、研磨面に平行な面内及び/又は研磨パッドの厚さを介して調節される。
【0076】
組成勾配を形成する能力、及び高度な研磨パッド内及び全域で化学的内容物を局部的に調整する能力は、「インク噴射可能な」低粘度組成物、又は
図3Bに示す液滴「A」及び/又は「B」を形成するために使用される、3D印刷技術における低粘度の「インク」によって可能になる。低粘度インクは、「プレポリマー」組成物であり、パッド本体202に見られる形成された第1の研磨要素204及び第2研磨要素206に対する「前駆体」である。低粘度のインクは、従来の技術(例えば、成形及びキャスティング)によっては利用できない広範囲の化学物質及び個別の組成物の供給を可能にし、したがって、制御された組成遷移又は勾配をパッド本体202の異なる領域内に形成することが可能になる。これは、粘度を下げる反応性希釈剤を高粘度官能性オリゴマーに付加して混合し、適切な粘度配合物を実現し、その後、硬化デバイス320によって供給される硬化エネルギーに曝されたときに、希釈剤が高粘度官能性オリゴマーと共重合される。反応性希釈剤はまた、溶媒として作用し得るため、各ステップで除去されなければならない不活性非反応性溶媒又はシンナーの使用が排除される。
【0077】
1つの実施形態では、
図3Aの前駆体供給セクション353及び前駆体配合物セクション354を参照すると、第1の前駆体356は、第2の前駆体357及び希釈剤358と混合され、第1の印刷可能なインク組成物359が形成され、これは、プリンタ306Bのリザーバ304Bに供給され、研磨本体202の一部を形成するために使用される。同様に、第3の前駆体366が第4の前駆体367及び希釈剤368と混合され、第2の新しい印刷可能なインク組成物369を形成することができ、これは、プリンタ306Aのリザーバ304Aに供給され、研磨本体202の別の部分を形成するために使用される。いくつかの実施形態では、第1の前駆体356及び第3の前駆体366は各々、多官能性オリゴマーなどのオリゴマーを含み、第2の前駆体357及び第4の前駆体367は各々、多官能性モノマーを含み、希釈剤358及び希釈剤368は各々、反応性希釈剤(例えば、モノマー)及び/又は開始剤(例えば、光開始剤)を含む。第1の印刷可能な組成物359の1つの例は、25℃で約1000センチポアズ(cP)から、25℃で約12,000cPまでの粘度を有し得る脂肪族鎖セグメントを含む反応性二官能性オリゴマーを含む第1の前駆体356を含み得、次いで、モノアクリレートなどの、10cP、25℃の反応性希釈剤(例えば、希釈剤358)と混合し希釈して、新しい粘度を有する新しい組成物が生成される。このようにして得られた印刷可能な組成物は、25℃で約80cPから約110cPの粘度、及び70℃で約15cPから約30cPの粘度を示し、3Dプリンタインクジェットノズルから効果的に分配され得る。
【0078】
図4Aから
図4Fは、研磨本体の一又は複数の領域にわたる組成勾配を含む高度な研磨パッドの例を提供する。
図4Aから
図4Dにおいて、白いピクセルマークは、第1の材料の分配される液滴が分配される場所を概略的に示すことを意図しているのに対し、黒いピクセルマークは、研磨パッドを形成するために使用される一又は複数の層内に材料が分配されない場合を示している。これらの技術を使用することにより、完全な研磨パッドの少なくとも一部を形成するために使用される印刷された層に、硬化した材料の組成勾配、又は複数の硬化した液滴によって形成された材料を形成することができる。研磨パッド内の印刷された層の調整された組成物は、研磨パッドの全体的な機械的特性を調節し調整するために使用することができる。研磨特徴の組成物は、任意の適切なパターンで変化し得る。本明細書に記載された研磨パッドは、2種類の材料から形成されるように示されているが、3種類以上の材料を含む研磨パッドが本発明の範囲内にあるので、この構成は、本明細書で提供される本開示の範囲を限定することを意図していない。
図2Aから
図2Kの研磨パッドのような研磨パッドの任意の設計における研磨特徴の組成物は、
図4Aから
図4Fの研磨パッドと同様の方法で変更され得ることに留意されたい。
【0079】
図4A及び
図4Bは、第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206の部分を含む高度な研磨パッド内の印刷層のピクセルチャートを反映する白黒ビットマップ画像である。
図4A及び
図4Bにおいて、白色のピクセルマークが、第1の材料の液滴が分配される場所であるのに対して、黒色のピクセルのマークは、材料が分配及び硬化されない場所である。
図4Aは、高度な研磨パッド200内の層の第1の部分のピクセルチャート400aであり、
図4Bは、同じ高度な研磨パッドの第2の部分のピクセルチャート400bである。第1の部分は、ピクセルチャート400aに従って第1の印刷ヘッドによって分配され、第2の部分は、ピクセルチャート400bに従って第2の印刷ヘッドによって分配され得る。2つの印刷ヘッドは、ピクセルチャート400a、400bを一緒に重ね合わせて、別個の研磨特徴を含む一又は複数の層を形成する。研磨パッドのエッジ領域付近の研磨特徴は、第2の材料より多くの第1の材料を含む。研磨パッドの中央領域付近の研磨特徴は、第1の材料より多くの第2の材料を含む。この例では、各研磨特徴は、第1の材料と第2の材料との固有の組み合わせを有する。1つの例では、第1の研磨要素204は、第1の材料と第2の材料との第1の組み合わせを含み、第2の研磨要素206は、第1の材料と第2の材料との異なる第2の組み合わせを含む。従って、ピクセルチャートを用いることにより、材料組成の所望の勾配が研磨本体の異なる部分において実現され、高度な研磨パッドの所望の研磨性能を実現するように、研磨本体を順次形成することができる。
【0080】
図4C及び
図4Dは、特徴を有する研磨パッドの概略的なピクセルチャート400c、400dである。幾つかの実施形態では、
図4Cは、研磨パッドの第1の部分のピクセルチャート400cであり、
図4Dは、同じ研磨パッドの第2の部分のピクセルチャート400dである。
図4C及び
図4Dによる研磨パッドは、研磨本体の材料組成の勾配が研磨パッドを横切って左から右に変化することを除き、
図4A及び
図4Bの研磨パッドと類似である。
【0081】
図4Eは、研磨面208(例えば、Y方向)にわたって材料組成の勾配を有する研磨面208を形成するための付加製造プロセスを用いて形成されるウェブベースの研磨パッド400eの概略図である。
図4Eに示すように、研磨材料は、第1のロール481と第2のロール482との間のプラテン102上に配置され得る。高い貯蔵弾性率及び低い貯蔵弾性率の異なる領域を有するウェブ或いは標準的な研磨パッドを構築することによって、基板は、研磨プロセスの各段階中に所望の機械的特性を提供するために、研磨プロセスの異なる部分の間に研磨パッド400e上の異なる場所上方に移動させることができる。1つの例は、高い弾性率を有する研磨パッド400eの平坦化部分を使用して急速に除去された最初の表面テクスチャを有する基板を含み、次いで基板が研磨パッド400eの第2の部分に移動され、基板表面が研磨され、スクラッチ欠陥が低減され得る。
【0082】
図4Fは、Z方向の材料組成に勾配を有する研磨ベース層491を形成するために付加製造プロセスを用いて形成される高度な研磨パッド400fの概略側断面図である。研磨ベース層491の積層印刷層の材料組成及び/又は材料特性における勾配は、第1の材料から第2の材料の高濃度から低濃度に一方向に又はその逆に変化し得る。場合によっては、研磨パッド内の一又は複数の領域は、異なる材料特性を有する少なくとも2つの材料の高/低/高又は低/高/低濃度勾配のような、より複雑な濃度勾配を含み得る。1つの例では、濃度勾配を形成する少なくとも2つの材料は、異なる貯蔵弾性率E’、E’30/E’90比、損失係数又は他の類似のパラメータを有する。幾つかの構成では、高度な研磨パッド400fは、少なくとも第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206を含む別個の領域を含み得る研磨要素領域494を含み得る。1つの例では、研磨要素領域494は、
図2Aから
図2Kに示す構造のうちの一又は複数を含む研磨本体202の一部を含み得る。
【0083】
1つの実施形態では、ベース層491は、ベース層491内に形成された各層に2以上の異なる材料の均質な混合物を含む。1つの例では、均質な混合物は、ベース層491内に形成された各層に第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206を形成するために使用される材料の混合物を含み得る。幾つかの構成では、材料の均質な混合物の組成物を層ごとに変化させて、層成長方向(例えば、
図3BのZ方向)における材料組成の勾配を形成することが望ましい。用語「均質な混合物」は、各層内に少なくとも2つの異なる組成物を有する印刷された液滴を分配して硬化させることによって形成された材料を一般的に指すことを意図しており、したがって、各々が所望の解像度でサイズ決定される少なくとも2つの異なる組成物の小さな領域の混合物が含まれ得る。研磨ベース層491と研磨要素領域494との間の界面は、研磨ベース層491の上面及び研磨要素領域494の下面に見られる材料の均質なブレンドを含み、又は研磨要素領域494の第1の堆積層における異なる材料組成が、研磨ベース層491の表面上に直接堆積される場合、個別の移送を含み得る。
【0084】
研磨要素領域494、又はより一般的には上述の研磨本体202の何れかの実施形態では、第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206の材料組成に、研磨パッドの研磨面に垂直な方向に、勾配を形成することが望ましい。1つの例では、研磨パッドの底部近くの印刷層(例えば、研磨面とは反対側)に軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の特徴を形成するために使用される材料組成の濃度を高くすること、及び研磨パッドの研磨面近くの印刷層に硬質の又は高い貯蔵弾性率E’特徴を形成するために使用される材料組成の濃度を高くすることが望ましい。別の例では、研磨パッドの底部近くの印刷層に硬質の又は高い貯蔵弾性率E’の特徴を形成するために使用される材料組成の濃度を高くすること、及び研磨パッドの研磨面近くの印刷層に軟質の又は低い貯蔵弾性率E’特徴を形成するために使用される材料組成の濃度を高くすることが望ましい。低い貯蔵弾性率E’を使用する表面特徴は、欠陥除去及びスクラッチ低減に使用することができ、高い貯蔵弾性率E’の特徴は、ダイ及びアレイスケール平坦化を強化するために使用することができる。
【0085】
1つの実施形態では、研磨パッドの研磨面に垂直な方向に第1及び/又は第2研磨要素を形成するために使用される材料内の材料組成に勾配を形成することが望ましい。1つの例では、研磨パッドの底部近くの印刷層(例えば、研磨面とは反対側)に第2の研磨要素206を形成するために使用される材料組成の濃度を高くすること、及び研磨パッドの研磨面近くの印刷層に第1の研磨要素204を形成するために使用される材料組成の濃度を高くすることが望ましい。別の例では、研磨パッドの底部近くの印刷層に第1の研磨要素204を形成するために使用される材料組成の濃度を高くすること、及び研磨パッドの研磨面近くの印刷層に第2の研磨要素206を形成するために使用される材料組成の濃度を高くすることが望ましい。例えば、第1の層では、第1の印刷組成物の第2の印刷組成物に対する材料組成比が1:1であり、第2の層では、第1の印刷組成物の第2の印刷組成物に対する材料組成比が2:1であり、第3の層では、第1の印刷組成物の第2の印刷組成物に対する材料組成比が3:1である。1つの例では、第1の印刷組成物は、第2の印刷組成物よりも高い貯蔵弾性率E’を含む材料を有しており、第1、第2及び第3の層の連続的成長の方向は、高度な研磨パッドの支持面から離れている。勾配は、堆積された層の平面内に印刷された液滴の配置を調節することによって、単一層の様々な部分内に形成することもできる。
【0086】
高度な研磨パッド形成プロセスレイ
いくつかの実施形態では、高度な研磨パッド200の構築は、研磨パッド設計のCADモデルを作成することにより開始する。これは、Unigraphicsや他の類似のソフトウェアなど、既存のCAD設計ソフトウェアを使用して行うことができる。モデリングソフトウェアによって生成される出力ファイルは、高度な研磨パッド設計が設計要件(例えば、水密、質量密度)を確実に満たすように分析プログラムに読み込まれる。次に出力ファイルがレンダリングされ、3Dモデルは、一連の2Dデータビットマップ又はピクセルチャートに「スライス」される。上述のように、2Dビットマップ又はピクセルチャートは、高度な研磨パッド内の層が構築されることになるX−Y平面にわたる位置を定義するために使用される。幾つかの付加製造プロセス用途では、これらの位置は、レーザがパルスする場所を定義し、他の用途ではノズルが材料の液滴を吐出する場所を定義することになろう。
【0087】
ピクセルチャートに見られる座標は、例えばポリジェット印刷ヘッドを使用して未硬化ポリマーの特定の液滴が配置されることになる場所を定義するために使用される。X−Y位置に対するすべての座標と、Zステージ位置を支持する所定のパッドは、ピクセルチャートに基づき定義されることになるだろう。各X、Y及びZ位置は、液滴分配か液滴非分配の状態のいずれかを含むことになるだろう。印刷ヘッドは、構築速度を増加させるために、又は追加種類の材料を堆積させるために、X方向及び/又はY方向のアレイで組み立てられてもよい。
図4Aから
図4Dに示す例では、黒いピクセルは、ノズルが材料を堆積させない位置を示し、白いピクセルは、ノズルが材料を堆積させる場所を示す。形成された各層において、材料マップ又はピクセルチャートを組み合わせることにより、所望の形状又は構造の構成の研磨パッドを、互いに近接した別個の液滴の位置決めによって印刷することができる。
【0088】
3Dプリンタのような付加製造デバイスは、熱可塑性ポリマーの堆積、感光性樹脂前駆体組成物の堆積及び硬化、及び/又は分配された粉末層のレーザーパルス型焼結及び溶融によって高度な研磨パッドを形成するために使用することができる。幾つかの実施形態では、高度な研磨パッド形成プロセスは、UVに敏感な材料のポリジェット印刷の方法を含み得る。この構成では、前駆体配合物の液滴(例えば、第1の印刷可能なインク組成物359)が、液滴吐出プリンタ306内のノズルから吐出され、樹脂前駆体組成物が、構築ステージ上に堆積される。材料がノズルのアレイから堆積されると、ローラ又は他の手段を用いて材料が平らにされ、滴を平坦なフィルム層へスムーズに移行する、又は余分な材料を移動させて取り除くことができる。液滴が分配されている間、及び/又はその直後に、UVランプ又はLED放射源が堆積層の上を通過して、分配された液滴を固体ポリマーネットワークに硬化させ又は部分的に硬化させる。このプロセスは、パッドモデルの最終的な実施形態が機械的に正常であることを確実にするために、層内及び層間の適切な凝集力を有する層の最上部に構築された層である。
【0089】
構築プロセスを通してポリマー応力をより良好に制御するために、一又は複数の層の形成中に熱が加えられてもよい。熱の供給により、各硬化層又は部分的硬化層に形成されたポリマーネットワークが弛緩し、それによって応力を低減し、フィルムの応力履歴を除去可能にする。フィルム中の応力は、研磨パッド形成プロセスの間又は後に、研磨パッドの望ましくない変形をもたらす可能性がある。部分的に形成された研磨パッドをプリンタの構築トレイ上にある間に加熱することにより、最終的なパッド特性が層ごとのプロセスを介して設定され、予測可能なパッド組成物及び研磨結果を実現できることが保証される。研磨パッド形成プロセスに熱を誘導することに加えて、成長中の研磨パッドを取り囲むエリアが、未硬化樹脂への酸素露出を減少させるように修正されてもよい。これは、真空を使用することによって、又は窒素(N
2)又は他の不活性ガスで構築チャンバをフラッディングすることによって行うことができる。成長パッド上の酸素の減少は、フリーラジカル重合反応の阻害を低減し、分配された液滴のより完全な表面硬化を保証する。
【0090】
配合物及び材料の例
上述のように、パッド本体202の部分を形成するために使用される材料、例えば、第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206などは、それぞれ、官能性ポリマー、官能性オリゴマー、反応性希釈剤、及び硬化剤の混合物であり得る少なくとも1つのインクジェット可能なプレポリマー組成物から形成され得、高度な研磨パッドの所望の特性が実現される。一般に、プレポリマーインク又は組成物は、硬化剤又は化学開始剤の有無に関わらず、放射エネルギー又は熱エネルギーによる露光又は接触を含む任意の数の手段の使用によって堆積された後に処理されてもよい。一般に、堆積された材料は、紫外線放射(UV)、ガンマ線放射、X線放射、可視放射、IR線、及びマイクロ波放射を含み得る電磁放射に曝すことができ、また加速した電子ビーム及びイオンビームは、重合反応を開始するために使用されてもよい。この開示の目的のために、硬化方法、又は硬化剤若しくは酸素阻害剤を介するなどした、増感剤、開始剤、及び/又は硬化剤のなど、重合を支援するための添加物の使用は、制限されない。
【0091】
1つの実施形態では、一体パッド本体202内の第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206などの2以上の研磨要素は、少なくとも1つの放射硬化性樹脂前駆体組成物の連続的堆積及び堆積後処理から形成されてもよく、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基及びアセチレン基を含むがこれらに限定されない不飽和の化学的部分又は基を有する官能性ポリマー、官能性オリゴマー、モノマー及び/又は反応性希釈剤を含む。研磨パッド形成プロセス中に、不飽和基は、ドイツLudwigshafenのBASFによって製造されたIrgacure(登録商標)製品などのフリーラジカル発生光開始剤のような硬化剤の存在下で、UV照射などの放射線に露出されたときにフリーラジカル重合を受けることがある。
【0092】
2種類のフリーラジカル光開始剤が、本明細書で提供される開示の実施形態のうちの一又は複数で使用され得る。本明細書でバルク硬化光開始剤とも呼ばれる第1の種類の光開始剤は、紫外線を照射すると開裂し、フリーラジカルを直ちに生成し、重合を開始させる開始剤である。第1の種類の光開始剤は、分配された液滴の表面及び貫通又はバルク硬化の両方に有用であり得る。第1の種類の光開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、アセチルフェノン、アルキルフェノン及びホスフィンオキシドを含むが、これらに限定されない群から選択され得る。本明細書で表面硬化光開始剤とも呼ばれる第2の種類の光開始剤は、UV照射によって活性化され、実際の開始フリーラジカルとなる第2の化合物からの水素抽出によってフリーラジカルを形成する光開始剤である。この第2の化合物は、しばしば共開始剤又は重合共力剤と呼ばれ、アミン共力剤であり得る。アミン共力剤は、酸素阻害を減少させるために使用され、したがって、第2の種類の光開始剤は、高速表面硬化に有用であり得る。第2の種類の光開始剤は、ベンゾフェノン化合物及びチオキサントン化合物を含むがこれらに限定されない群から選択され得る。アミン共力剤は、活性水素を有するアミンであってもよく、1つの実施形態では、アミン含有アクリレートなどのアミン共力剤は、樹脂前駆体組成物配合物中のベンゾフェノン光開始剤と組み合わせて、a)酸素阻害を制限し、b)液滴又は層表面の寸法を固定するように液滴又は層表面を高速で硬化させ、c)硬化プロセスを通して層の安定性を高める。場合によっては、フリーラジカル硬化機構を遅延させる又は阻害する、二原子酸素によるフリーラジカルクエンチングを妨害又は回避するために、不活性ガス雰囲気などの酸素が制限された又は無酸素の硬化雰囲気又は環境、及び乾燥し、脱気され、ほとんど酸素を含まない化学試薬が選択され得る。
【0093】
高度な研磨パッドが形成されるときに下層の硬化エネルギーに対する繰り返しの露出がこれらの下層の特性に影響を与えることになるので、印刷された配合物中の化学開始剤の量を制御することは、形成された高度な研磨パッドの特性を制御する際に重要な要素であることが分かった。言い換えれば、堆積層のある量の硬化エネルギー(例えば、UV光、熱など)への繰り返しの露出は、形成された各層内で、硬化の程度、又はその層の表面の過度の硬化に影響を及ぼすことになるだろう。したがって、幾つかの実施形態では、表面が最初に硬化し、付加的なUV光が表面硬化領域下の材料に到達するのを阻止するだろうから、表面硬化動態が貫通硬化(バルク硬化)よりも速くならないよう保証することが望ましく、よって、概して部分的に硬化した構造体を「硬化しすぎない(under−cured)」ようにする。いくつかの実施形態では、適切な鎖延長及び架橋を確実にするために、光開始剤の量を減らすことが望ましい。一般に、より高い分子量のポリマーは、より遅い制御された重合で形成されることになるだろう。反応生成物が含有するラジカルが多すぎる場合、反応動態が速く進みすぎて、分子量が低下し、次に硬化材料の機械的特性が減少するだろうと考えられる。
【0094】
幾つかの実施形態では、第1の研磨要素204及び第2研磨要素206は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリエーテル、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、メラミン、ポリスルホン、ポリビニル材料、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ハロゲン化ポリマー、ブロックコポリマー及びそれらのコポリマーから選択された少なくとも1つのオリゴマー及び/又はポリマーセグメント、化合物、又は材料を含み得る。第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206を形成するために使用される組成物の製造及び合成は、化学構造Aに示されるような、前述のポリマー及び/又は分子セグメントの少なくとも1つを有する、少なくとも1つのUV放射硬化性官能性及び反応性オリゴマーを使用して実現され得る:
【0095】
化学構造Aで表される二官能性オリゴマー、ビスフェノール−Aエトキシレートジアクリレートは、パッド本体202の中の第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206に見られる材料の低い、中間の及び高い貯蔵弾性率E’特性に寄与し得るセグメントを含む。例えば、芳香族基は、フェニル環によって与えられる幾つかの局部的剛性のために、パッド本体202に付加的な剛性を与え得る。しかしながら、当業者は、エーテル鎖セグメント「n」を増加させることにより、貯蔵弾性率E’が低下し、したがって、柔軟質が増したより軟質の材料が生成されることを認識するだろう。1つの実施形態では、ゴムのような反応性オリゴマー、ポリブタジエンジアクリレートは、化学構造Bに示すような幾つかのゴムのような弾性伸びを有するより軟質でより弾性のある組成物を形成するために使用され得る。
【0096】
ポリブタジエンジアクリレートは、ペンダントアリル官能基(図示されている)を含み、これは他の未反応の不飽和部位との架橋結合反応を受けることがある。いくつかの実施形態では、ポリブタジエンセグメント「m」中の残留二重結合が反応して、可逆的エラストマー特性をもたらす架橋結合を生成する。1つの実施形態では、組成物架橋結合を含む高度な研磨パッドは、約5%から約40%の伸び率、及び約6対約15のE’30:E’90比を有し得る。幾つかの架橋化学物質の例は、tert−ブチルペルベンゾエート、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシドなどの硫黄加硫及びペルオキシドを含む。1つの実施形態では、総配合重量で3%の過酸化ベンゾイルをポリブタジエンジアクリレートと反応させて、架橋密度が少なくとも約2%となるように架橋を形成する。
【0097】
化学構造Cは、別の種類の反応性オリゴマー、ポリウレタンアクリレート、高度な研磨パッドに可撓性及び伸びを与え得る材料を表す。ウレタン基を含むアクリレートは、脂肪族又は芳香族ポリウレタンアクリレートであり、構造中に示されるR基又はR’基は、脂肪族、芳香族、オリゴマーであり、酸素などのヘテロ原子を含み得る。
【0098】
反応性オリゴマーは、アクリル部位などの少なくとも1つの反応部位を含み得、一官能性、二官能性、三官能性、四官能性、五官能性及び/又は六官能性であり、したがって架橋結合の焦点として作用し得る。
図5Bは、3D印刷可能なインク組成物を形成するために有用であり得る幾つかの硬化反応性オリゴマーの応力対歪みのグラフである。オリゴマーは、「軟質の」又は低い貯蔵弾性率E’の材料、「中間の軟質の」又は中間の貯蔵弾性率E’の材料、又は「硬質の」又は高い貯蔵弾性率E’の材料(例えば、表1)を表し得る。図示されているように、貯蔵弾性率E’(例えば、勾配、又はΔy/Δx)は、軟質かつフレキシブルで伸縮性のあるポリウレタンアクリレートからアクリルアクリレートに、次いでポリエステルアクリレートに、次いで一連の中で最も硬質である、硬質で高い貯蔵弾性率E’’エポキシアクリレートに増大する。
図5Bは、高度な研磨パッドの製造に有用であり得る貯蔵弾性率E’の材料、又は貯蔵弾性率E’の材料の範囲又は混合物をどのように選択し得るかを示している。官能性オリゴマーは、米国ペンシルベニア州エクストンのSartomer USA、米国コネティカット州トーリントンのDymax Corporation、及び米国ジョージア州アルファレッタのAllnex Corporationを含む様々な供給源から得ることができよう。
【0099】
本開示の実施形態では、ジ、トリ、テトラ及び高官能性アクリレートを含む多官能性アクリレートが、第1の研磨要素204及び第2の研磨要素204に見られる材料を形成するために使用される材料内に、及び/又は第1の研磨要素204及び第2の研磨要素204に見られる材料の間に架橋結合を生成し、よって貯蔵弾性率E’、粘性ダンピング、反発、圧縮、弾性、伸び及びガラス転移温度を含む研磨パッド特性を調節するために使用され得る。第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206を形成するために使用される様々な材料内の架橋結合の程度を制御することによって、望ましいパッド特性を形成できることが分かった。幾つかの構成において、低粘性族の材料は、順次配合物及び処理窓を拡大する広範な分子量のみならず、線形、分岐状、及び/又は環状などのより多様な分子構造も提供するので、多官能性アクリレートは、有利には、研磨剤配合物中の硬質な芳香族の代わりに使用され得る。多官能性アクリレートの幾つかの例は、化学構造D(1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン)及びE(トリメチロールプロパントリアクリレート)に示されている。
【0100】
架橋結合が形成される種類若しくは架橋剤、化学構造、又は機構は、本開示の実施形態において限定されない。例えば、アミン含有オリゴマーは、アクリル部分とマイケル付加型反応して共有結合架橋を形成してもよく、又はアミン基がエポキシド基と反応して共有結合架橋を形成してもよい。他の実施形態では、架橋結合は、イオン結合又は水素結合によって形成されてもよい。架橋剤は、直鎖状、分枝状又は環状分子セグメントを含み、更にオリゴマー及び/又はポリマーセグメントを含み、窒素及び酸素のようなヘテロ原子を含み得る。パッド組成物を研磨するために有用であり得る架橋性化学化合物は、米国ミズーリ州セントルイスのSigma−Aldrich、米国ペンシルベニア州エクストンのSartomer USA、米国コネティカット州トーリントンのDymax Corporation、及び米国ジョージア州アルファレッタのAllnex Corporationを含む様々な供給源から入手可能である。
【0101】
本明細書に記載されるように、反応性希釈剤は、高粘度官能性オリゴマーと混合される粘度薄め溶剤として使用することができ、適切な粘度配合物が実現され、その後、硬化エネルギーに曝されるときに高粘度の官能性オリゴマーと希釈剤との共重合が行われる。1つの実施形態では、n〜4の場合、ビスフェノール−Aエトキシレートジアクリレートの粘度は、25℃で約1350センチポアズ(cP)であり得、この粘度は高すぎて、3D印刷プロセスでこのような材料の分配を実現することができない。したがって、ビスフェノール−Aエトキシレートジアクリレートを低粘度の反応性希釈剤、例えば、低分子量アクリレートと混合して、粘度を25℃で約1cPから約100cP、例えば、25℃で約1cPから約20cPに低下させることが望ましいことがあろう。使用される反応性希釈剤の量は、配合物成分の粘度及び希釈剤それ自体に依存する。例えば、1000cPの反応性オリゴマーは、ターゲット粘度を達成するために、配合物の少なくとも40重量%の希釈を必要とすることがある。反応性希釈剤の例は、化学構造F(イソボルニルアクリレート)、G(デシルアクリレート)及びH(グリシジルメタクリレート)で示される。



25℃でのF−Gのそれぞれの粘度は、それぞれ9.5cP、2.5cP及び2.7cPである。反応性希釈剤はまた、多官能性であってもよく、したがって架橋反応又はポリマーネットワークを生成する他の化学反応を受けることがある。1つの実施形態では、グリシジルメタクリレート(H)は、反応性希釈剤として作用し、混合物の粘度が約15cPになるように二官能性脂肪族ウレタンアクリレートと混合される。近似希釈係数は、約2:1から約10:1、例えば約5:1であり得る。この混合物に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのようなアミンアクリレートが、配合物の約10重量%となるように加えられ得る。混合物を約25℃から約75℃に加熱すると、アミンとエポキシドとの反応、及びアクリル化アミンとアクリル化エポキシドの付加物の形成が起こる。その後、Irgacure(登録商標)651などの適切なフリーラジカル光開始剤が2重量%の配合物で加えられ、20ミクロンの厚さの層が基材上に形成されるように、混合物が適切な3Dプリンタにより分配される。次に、層は、薄いポリマーフィルムを生成するために、約10mJ/cm
2から約50mJ/cm
2の強度で走査UVダイオードレーザを用いて、約0.1μsから約10秒(ms)、例えば、約15秒などの間、液滴又は層を約200nmから約400nmのUV光に曝すことによって、硬化され得る。3D印刷された研磨パッド組成物に有用であり得る反応性希釈剤化合物は、米国ミズーリ州セントルイスのSigma−Aldrich、米国ペンシルベニア州エクストンのSartomer USA、米国コネティカット州トーリントンのDymax Corporation、及び米国ジョージア州アルファレッタのAllnex Corporationを含む様々な供給源から入手可能である。
【0102】
研磨パッドの製造に有用であり得る放射硬化の別の方法は、UV又は低エネルギー電子ビームによって開始されるカチオン硬化である。エポキシ基含有材料は、カチオン硬化性であってもよく、エポキシ基の開環重合は、プロトン及びルイス酸などのカチオンによって開始されてもよい。エポキシ材料は、モノマー、オリゴマー又はポリマーであってもよく、脂肪族、芳香族、脂環式、アリール脂肪族又は複素環式の構造を有していてもよく、脂環式又は複素環式の環系の一部を形成する側基又は基としてエポキシド基を含むこともできる。
【0103】
UV開始カチオン光重合は、より低い収縮、より良好な透明性、リビング重合を介したより良好な貫通硬化、及び酸素阻害の欠如を含むフリーラジカル光重合と比較して、幾つかの利点を示す。UVカチオン重合は、エポキシド、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、シロキサン、オキセタン、環状アセタール及びホルマール、環状スルフィド、ラクトン及びラクタムなどのフリーラジカル手段によって重合することができない重要な分類のモノマーを重合し得る。これらのカチオン重合性モノマーは、本明細書に記載の炭素−炭素二重結合を介してフリーラジカル重合を受けることもあるグリシジルメタクリレート(化学構造H)などの両不飽和モノマーを含む。UV光(225nmから300nm)又は電子ビームと照射されるときに光酸を発生する光開始剤には、アリールオニウム塩、例えばヨードニウム及びスルホニウム塩などであって、ドイツLudwigshafenのBASFから得られるトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェイト塩(Irgacure(登録商標)製品)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
1つの実施形態では、第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206、よって一体パッド本体202を形成するために使用される材料は、少なくとも1つの放射硬化性樹脂前駆体組成物の連続的堆積及びカチオン硬化から形成され得、その組成物は、エポキシ基を有する官能性ポリマー、官能性オリゴマー、モノマー、及び/又は反応性希釈剤を含有する。混合されたフリーラジカル及びカチオン硬化システムは、コストを節減し、物理的特性の平衡を保つために使用され得る。1つの実施形態では、第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206は、少なくとも1つの放射硬化性樹脂前駆体組成物の連続的堆積及びカチオン及びフリーラジカル硬化から形成され得、組成物は、官能性ポリマー、官能性オリゴマー、モノマー、並びにアクリル基及びエポキシ基を有する反応性希釈剤を含有する。別の実施形態では、幾つかのカチオン硬化システムに固有の透明性及び光吸収の不足を利用するために、以下で更に考察される観察窓又はCMP終点検出窓が、カチオン法によって硬化された組成物から形成され得る。幾つかの実施形態では、形成された高度な研磨パッドの層の幾つかは、カチオン硬化法の使用によって形成されてもよく、層の幾つかは、フリーラジカル硬化法から形成されてもよい。
【0105】
1つの実施形態では、3D印刷されたポリマー層は、形成された高度な研磨パッド200に見られる選択された材料層の一又は複数のパッド特性を高めるために使用される無機及び/又は有機粒子を含み得る。3D印刷プロセスは、層毎に少なくとも1つの組成物の層毎の連続的堆積を含むので、パッド層の上又は内部に配置された無機粒子又は有機粒子を追加的に堆積させて、特定のパッド特性を得る及び/又は特定の機能を実行することもまた望ましいだろう。無機粒子又は有機粒子は、サイズが25ナノメータ(nm)から100マイクロメータ(μm)の範囲であり、液滴吐出プリンタ306によって分配される前に前駆体物質に追加されても、又は1重量パーセント(wt%)から約50wt%の割合で未硬化印刷層に追加されてもよい。最大引張強度、耐力強度、温度範囲にわたる貯蔵弾性率の安定性、及び熱伝達を改善し、表面ゼータ電位を調節し、及び/又は表面の表面エネルギーを調節するために、無機粒子又は有機粒子が、高度な研磨パッド形成プロセス中に追加されてもよい。粒子の種類、化学組成物又はサイズ、及び追加される粒子は、達成されるべき用途又は所望の効果によって変化し得る。幾つかの実施形態では、粒子は、セリア、アルミナ、シリカ、ジルコニア、窒化物、炭化物、又はそれらの組み合わせなど、金属間化合物、セラミック、金属、ポリマー及び/又は金属酸化物を含み得る。1つの例では、パッドの上、パッド上方又は内部に配置される無機粒子又は有機粒子は、高度な研磨パッドの機械的特性及び/又は熱伝導率を改善するためにPEEK、PEK、PPSなどの高性能ポリマーの粒子並びに他の類似の材料を含み得る。3D印刷された研磨パッドで一体化される粒子はまた、架橋結合の焦点として作用し、重量パーセントの荷重に応じてより高い貯蔵弾性率E’がもたらされることがある。別の例では、セリアのような極性粒子を含むポリマー組成物は、CMPスラリのようなパッド表面で極性物質及び液体に対して更なる親和性を有することがある。
【0106】
高度な研磨パッド特性
少なくとも第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206を含むパッド本体202を有する高度な研磨パッド200を形成することの利点は、単一の材料組成から形成されるパッド本体には見られない、機械的、構造的及び動的特性を有する構造を形成する能力である。幾つかの実施形態では、第1の研磨要素204が第2の研磨要素206の一部分(例えば、
図2Aの部分212A)上に配置され、その一部分によって支持されている少なくとも1つの領域を含む研磨体202を形成することが望ましい。この構成では、2つの材料の特性と構造的構成の組み合わせが、従来の研磨パッド設計よりも望ましい機械的、構造的及び動的特性、並びに改善された研磨性能を有する高度な研磨パッドを形成するために使用できる。
【0107】
第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206中の材料並びに材料の化学構造は、前述の化学的性質を使用することにより「調整された」バルク材料を実現するために選択され得る。この「調整された」バルク材料で形成された高度な研磨パッド200は、改良された研磨結果、製造コストの低減、及びパッド寿命の延長などの様々な利点を有する。1つの実施形態では、高度な研磨パッド200は、全体として測定される際に、約25ショアAから約75ショアDの硬度、5MPaから約75MPaの引張強度、約5%から約350%の破損における伸び、約10MPaを超える剪断強度、及び約5MPaから約3000MPaの貯蔵弾性率E’係数を有し得る。
【0108】
上述のように、研磨された基板上の改善された研磨結果を実現するために、異なる機械的特性を有する材料が、第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206での使用のために選択され得る。形成された第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206に見られる材料の貯蔵弾性率E’などの機械的特性は、異なる材料、材料組成を選択することによって、及び/又は研磨要素形成プロセス中に使用される異なる堆積後処理ステップ(例えば、硬化プロセス)を選ぶことによって形成され得る。1つの実施形態では、第2の研磨要素206が、より低い硬度値及びより低い貯蔵弾性率E’を有し得るのに対して、第1の研磨要素204は、より高い硬度値及びより高い貯蔵弾性率E’を有し得る。別の実施形態では、貯蔵弾性率E’は、各研磨要素204、206内で、及び/又は研磨パッドの研磨面にわたる様々な異なる位置で調節され得る。1つの実施形態では、第1の研磨要素204は、約40ショアDスケールから約90ショアDスケールの硬度を有し得る。第2の研磨要素206は、約26ショアAスケールから約95ショアAスケールの硬度値を有し得る。第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206は各々、一体のパッド本体202内の複数の境界で一緒に混ぜ合わされ、化学的に結合される異なる化学組成物を含み得る。
【0109】
この開示の目的のために、本明細書で提供される開示の範囲の限定を意図するものではないが、高度な研磨パッド200中の第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206についての30℃(E’30)及び90℃(E’90)の温度での所望の低、中及び/又は高貯蔵弾性率E’の特性を有する材料が、表2に要約されている:
表2
【0110】
高度な研磨パッド200の1つの実施形態では、複数の第1の研磨要素204は、一又は複数の第2の研磨要素206の上方に突出するように構成されているので、研磨プロセスの間、基板110の表面は、第1の研磨要素204の研磨面208を使用して研磨される。1つの実施形態では、バルク材料研磨ステップの間に望ましい平坦性、研磨効率、及び低減されたディッシングを確実にするために、研磨プロセス中に基板の表面に接触する第1の研磨要素204を、表2に定義されるような高い貯蔵弾性率E’を有する材料で形成することが望ましい。しかしながら、1つの実施形態では、バフ研磨又は残留物の材料洗浄ステップの間に望ましい平坦性、研磨効率、及び低減されたディッシングを確実にするために、研磨プロセスの間に基板の表面に接触する第1の研磨要素204を、低い又は中間の貯蔵弾性率E’を有する材料で形成することが望ましいこともあろう。
【0111】
幾つかの実施形態では、第1の研磨要素204の貯蔵弾性率は、使用された研磨パッドの施釉表面を研磨する(即ち、パッドコンディショニング)プロセスがない場合に、研磨プロセスの除去速度を経時的に低下させるパッド施釉の影響を最小にするように調節される。パッド施釉は、パッド表面の剪断力が接触材料の「コールドフロー」又は塑性変形を引き起こすので、剪断弾性率(G’)に反比例する、基材の表面に接触する材料の塑性変形によって引き起こされると考えられる。等方性固体の場合、剪断弾性率は、一般に、以下の方程式による貯蔵弾性率に関係する:G’=E’/2(1+ν)、ここで、νはポイズン比である。したがって、低い剪断弾性率、ゆえに貯蔵弾性率を有する第1の研磨要素204を形成するために使用される材料は、より高速な塑性変形を有し、よって施釉エリアが形成されるだろう。ゆえに、第1の研磨要素204を、上記のような高い貯蔵弾性率E’及び/又は硬度を有する材料で形成することも望ましい。
【0112】
パッドコンディショニングプロセスを使用することによって研磨パッドの施釉表面を確実に再活性化できるように、第1の研磨要素204を形成するために使用される材料は、破損時に望ましい引張強度及び伸び率を有することが望ましい。幾つかの実施形態では、第1の研磨要素204を形成するために使用される材料の最大引張強度(UTS)は、約250psiから9000psiである。第1の研磨要素204を形成するために使用される材料のUTSが高いほど、パッドコンディショニングプロセスを行う前、最中又は後に、研磨パッド材料は、より耐久性があり、より微粒子形成が少ない傾向にあると考えられる。1つの例では、第1の研磨要素204を形成するために使用される材料のUTSは、約5000psiから約9000psiの間である。いくつかの実施形態では、第1の研磨要素204を形成するために使用される材料の破損時の伸びは、約5%から200%である。第1の研磨要素204を形成するために使用される材料の破損時の伸びが低くなればなるほど、材料は変形しにくくなり、したがって研磨捕捉及びスラリ移送を可能にする表面の微細なテクスチャ又は粗さを維持しやすくなると考えられる。1つの実施形態では、基板の研磨面に接触するように構成されている第1の研磨要素204を形成するために使用される材料の破損時の伸びは、約5%から約40%に調節される。
【0113】
処理中パッドの周期的変形に関連するディッシング及び他の負の属性をもたらす可能性のある、研磨中のパッドの弾性反発を減少させる望ましい減衰特性を有する研磨パッドを提供する必要もある。したがって、研磨中に基板の表面に接触する高い貯蔵弾性率E’の材料の必要性を補償するために、第1の研磨要素204を支持するように位置付けられている第2の研磨要素206は、低い貯蔵弾性率E’を有する材料から形成される。
【0114】
1つの例では、高度な研磨パッド200は、
図5Aに示されたtanδ特性を含み得る。
図5Aは、第1の研磨パッド材料(例えば、曲線591)、第2の研磨パッド材料(例えば、曲線592)、及び第1の研磨パッド材料(例えば、軟質材料)か第2の研磨パッド材料(例えば、硬質材料)かのいずれかを含む領域を含む高度な研磨パッド構造(例えば、曲線593)に関するtanδデータ(1Hz、傾斜率5°C/分)を含む。図示されるように、tanδデータは、曲線591及び592によって示されるように、第1及び第2の材料について分離した離散的なtanδピークを含む。これとは対照的に、高度な研磨パッド材料のtanδピーク、曲線593は、広がり合体し、第2の研磨要素206に見られるような第1の研磨パッド材料と、第1の研磨要素204に見られるような第2の研磨パッド材料との間に、分子スケール混合、鎖の絡み合い、化学結合及び/又は組成勾配を示している。30℃から90℃まで温度で約0.1から約3までのtanδ最大値が、ディッシング、平坦化効率及び他の関連する研磨不均一性の量を最小化するために有用であることが分かった。
【0115】
プロセスの再現性を更に制御するために、高度な研磨パッドにおいて制御できる別のパラメータが、パッド材料の「回復」である。
図5Cは、第1の研磨要素204又は第2の研磨要素206の一部を形成し得る材料についての、多数のシミュレートされた研磨サイクルにわたって取られた温度の関数としての貯蔵弾性率E’のグラフを示す。グラフ580は、研磨パッドが約30℃の開始温度から約90℃の最終定常状態研磨温度まで加熱され、パッドが各研磨サイクルの間に約90℃から最終温度約30℃まで冷却される際に、初期開始貯蔵弾性率値576からの貯蔵弾性率E’の低下を測定する複数の曲線を含む。説明の目的及び説明の明瞭化のために、
図5Cのグラフは、曲線582及び583を含む第1の研磨サイクル、曲線584及び585を含む第2の研磨サイクル、及び曲線586及び587を含む第3の研磨サイクルを含む、3つの研磨サイクルのデータを示している。
図5Cに示すように、各サイクル577−579の終了時に、研磨プロセス中に高い荷重が加えられた場合に、より高い研磨温度で起こる可能性がある、研磨パッド材料に見られる応力の緩和、及び/又はポリマー材料の接合構造の少なくとも部分的な再構成による測定された貯蔵弾性率の低下がある。多くの連続的サイクル後に材料がどれだけ十分に回復するかは、材料の「回復」能力として知られている。回復は、典型的には、開始点576から研磨サイクルの同一点で測定される安定平衡点579までの材料の特性の大きさ(例えば、貯蔵弾性率)の低下の百分率として測定される。回復は、終了値589の開始値590に対する比率×100を測定することによって計算することができる。研磨プロセスの安定性を保証するために、研磨パッド中の材料の回復率は、できるだけ大きいことが一般に望ましく、したがって、回復率は、少なくとも50%を超えるか、又はCMPプロセスをシミュレートするように構成されている動的機械分析(DMA)試験を用いて約70%以上である必要があると考えられている。1つの例では、DMA試験は、約5−10分の長さ、例えば約8分の長さであり、最大温度傾斜率は、約5℃/分であり、これは標準CMPプロセスをシミュレートするためのものである。DMA試験は、基板、スラリ、保持リング、及び研磨パッドの間の摩擦により研磨器上で行われるパッド加熱をエミュレートするために使用される。熱は、研磨を経て蓄積する傾向があり、次に、パッドから離れて熱の通常の流体対流又は伝導のために基板処理ステップ間で急速にクエンチされる。いくつかの実施形態では、研磨パッドが望ましい回復を有し、よって研磨プロセスが安定していることを保証するために、形成された層の応力及び/又は架橋結合の程度を制御するために、前駆体配合物の組成物及び/又は硬化プロセスパラメータを調節することが望ましい。幾つかの実施形態では、研磨プロセスで使用する前に、高度な研磨パッドをアニールすることも望ましい場合がある。
【0116】
また、基板上で最適な研磨均一性及び研磨性能を維持するためには、パッド材料のE’30:E’90の比が必要に応じて制御及び調節されるべきであると考えられている。そのために、1つの実施形態では、形成されたパッド材料(例えば、第1の研磨要素204を形成するために使用される材料)及び/又は全体的な高度な研磨パッド200のうちの一又は複数のE’30:E’90の比が、例えば約6から約15など、約6以上であり得る。研磨パッドは、E’30/E’90における貯蔵弾性率E’の比が約6から約30の範囲におさまるように、約25℃から約90℃の温度範囲にわたって安定した貯蔵弾性率E’を有し得、ここでE’30は、30℃での貯蔵弾性率E’であり、E’90は、90℃での貯蔵弾性率E’である。6以上のE’30:E’90比を有する研磨パッドは、通常の処理中に見られる定常状態処理温度未満である温度で高貯蔵弾性率E’材料を使用するときにしばしば生じるスクラッチ型欠陥を減少させるのに有用である。換言すれば、処理中に基板と接触する材料の温度が上昇するにつれて、材料は、より低いE’30:E’90の比を有する材料よりも大きく軟化する傾向があり、したがって、基板の表面を傷つける可能性が低減される傾向にある。研磨プロセスを通じて軟化する材料は、好ましくない方法でプロセスの基板間の安定性に影響を及ぼす可能性がある。しかし、高いE’30:E’90比の材料は、研磨プロセスの最初の部分(例えば10−40秒)が研磨面材料で高い貯蔵弾性率を必要とし、次いで研磨面材料が適合するレベルまで温度が上昇し続けると、研磨面材料は、バフ又はスクラッチ減少モードで研磨プロセスを終了する。
【0117】
幾つかの実施形態では、高度な研磨パッドの様々な部分の熱伝導率を制御して、研磨プロセスの一又は複数の態様を制御可能にすることが望ましい。1つの実施形態では、
図1A−
図2KのZ方向のように、研磨面に垂直な方向に、高度な研磨パッド全体の熱伝導率を高めることが望ましい。この例では、従来の研磨パッド配合物に比べて、Z方向の熱伝導率が増加するため、大きな熱質量及び/又は高度な研磨パッドが位置付けられるしばしば冷却される研磨プラテンへの処理中に、研磨パッド表面で発生する熱をより容易に伝導する能力により、研磨パッド表面温度をより低い温度に維持することが可能になる。低下した研磨プロセス温度は、基板のバッチ内の第1の基板のバッチ内の最後の基板(例えば、25番目の基板)に対する研磨時によく見られる研磨プロセスのばらつきを低減し、基板のバッチ上のポリマー材料によく見られる材料特性(例えば、貯蔵弾性率E’、E’比、など)の劣化を低減するだろう。代替的には、幾つかの実施形態では、
図1AのZ方向のような、研磨面に垂直な方向に、高度な研磨パッド全体の熱伝導率を低下させることが望ましい。この場合、従来の研磨パッド配合物に比べて、Z方向の熱伝導率が低下することにより、研磨パッドが発生した熱を伝導する能力が低下するため、研磨パッドが処理中に研磨パッド表面で発生した熱を高度な研磨パッドが配置された研磨プラテンに伝導する能力が低下することに起因し、研磨パッド表面温度が研磨中に急速に平衡処理温度まで上昇可能になる。しばしばより高いがより安定した研磨プロセス温度はまた、基板のバッチ内の第1の基板のバッチ内の最後の基板(例えば、25番目の基板)に対する研磨の際によく見られる研磨プロセスのばらつきを低減するために使用することもできる。
【0118】
したがって、幾つか実施形態では、形成プロセス中に、一又は複数の複数の充填剤、粒子又は他の材料を第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206に加え、本明細書に記載の付加製造プロセスの一又は複数を使用することによって、研磨パッド内の任意の方向(例えば、X、Y又はZ方向)に高度な研磨パッド200の熱伝導率を調節することが望ましい。ポリマーの熱伝導率は、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、及び窒化物を含む熱伝導性充填剤の付加によって従来高められてきたので、研磨パッド配合物及び組成物は、熱伝導性粒子及び窒化ホウ素のような化合物を含み得、研磨パッドの熱伝導率を高める。例えば、熱伝導性充填剤を含まない従来の研磨パッドは、25℃で約0.1W/m・Kから約0.5W/m・Kの熱伝導率を有し得る。1つの実施形態では、約250W/m・Kの熱伝導率を有する窒化ホウ素が、研磨パッドに配合物に基づき約10wt%で付加される。窒化ホウ素を含む層は、研磨されている基板と接触し、研磨中に生じる摩擦研磨力のために最も加熱を受けやすいパッド表面及び/又はパッド表面付近に堆積され得る。1つの実施形態では、付加的な窒化ホウ素粒子は、研磨パッドの熱伝導率を約10%から約25%まで増加させ、したがって研磨パッドの寿命を約2倍に増加させた。別の実施形態では、第1の研磨要素204などの研磨面又はその付近のポリマー層は、基板金属及び/又は金属酸化物の除去を助ける粒子を含み得る。
【0119】
1つの実施形態では、表面層中のシリカ粒子の重量%は、配合物の約0.1重量%から約30重量%、例えば10重量%であり得、これによりそのようなコーティングのショア硬度及び弾性率は、約10%から約50%に増加し得る。1つの実施形態では、粒子を3D研磨パッドインク中でよく混合及び/又は懸濁させ、よって相分離なく容易に分配できるように、粒子表面は化学的に修飾され得る。化学的修飾には、シランカップリング剤などの「カップリング剤」によって粒子の極性表面への界面活性剤のような分子の化学的結合が含まれる。有用であり得る他のカップリング剤には、チタン酸塩及びジルコン酸塩が含まれる。カップリング剤の粒子への化学的結合、カップリング又は付着は、加水分解及び凝縮などの化学反応によって起こり得る。本明細書に記載のカップリング剤及び関連する化合物は、米国ペンシルバニア州モリスビルのGelest Incorporated、米国ミズーリ州セントルイスのSigma−Aldrich Chemical Companyを含む多くの供給元から入手可能である。
【0120】
1つの実施形態では、一体パッド本体202は、空気又は別のガスを含むポアを有し得る。ポアは、放射線又は熱によって誘発された気体材料の生成によって生成され得る。1つの実施形態では、高度な研磨パッドのプレポリマー組成物は、熱に不安定であり、熱に不安定な基を含み得る化合物、ポリマー、又はオリゴマーを含み得る。ポロゲン及び熱に不安定な基は、不飽和な環状有機基などの環状基であってもよい。ポロゲンは、環状炭化水素化合物を含んでもよい。幾つかの例示的なポロゲンは、ノルボルナジエン(BCHD、ビシクロ(2.2.1)ヘプタ−2,5−ジエン)、α−テルピネン(ATP)、ビニルシクロヘキサン(VCH)、フェニルアセテート、ブタジエン、イソプレン及びシクロヘキサジエンを含むがこれらに限定されない。1つの実施形態では、共有結合したポロゲン基を有する放射硬化性オリゴマーを含有するプレポリマー層が堆積される。UV照射及び熱に曝された後、多孔性ポリマー層は、ポロゲン基の浸出によって形成され得る。別の実施形態では、複数の多孔性層は、一連の層堆積及びポア形成によって形成され得る。他の実施形態では、分解して窒素ガスを形成する、アゾ化合物などの、ガス副生成物を形成する化合物の熱誘導分解によって、ポアが生成され得る。
【0121】
高度な研磨パッド配合物例
上述のように、幾つかの実施形態では、第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206のような2以上の研磨要素のうちの少なくとも1つを形成するために使用される材料の一又は複数は、少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体組成物の連続的堆積及び堆積後処理によって形成される。一般に、付加製造システム350の前駆体供給セクション353で行われる前駆体配合プロセス中に混合される硬化性樹脂前駆体組成物は、開始剤などの、官能性オリゴマー、反応性希釈剤及び硬化成分を含む樹脂前駆体組成物の配合物を含むだろう。これらの成分の幾つかの例が表3に列挙される。
表3
官能性オリゴマーの例は、表3の項目O1−O5に見ることができる。官能性反応性希釈剤及び他の添加物の例は、表3の項目M1−M6に見ることができる。硬化成分の例は、表3の項目P1−P2及びA1に見られる。表3に見られる項目O1−O3、M1−M3及びM5−M6は、Sartomer USAから入手可能であり、項目O4は、韓国のMiwon Specialty Chemicals Corporationから入手可能であり、項目O5は、米国ジョージア州アルファレッタのAllenex Corporationから入手可能であり、項目M4は、ドイツのBYK−Gardner GmbHから入手可能であり、項目P1−P2及びA1は、Chiba Specialty Chemicals Inc.及びRAHN USA Corporationから入手可能である。
【0122】
本明細書に記載の付加製造プロセスの1つの利点は、材料の組成及びパッド本体構造内で使用される様々な材料の構造的構成に基づいて調節することができる特性を有する高度な研磨パッドを形成する能力を含む。以下の情報は、幾つかの材料配合物の幾つかの例、及びこれらの配合物及び/又は処理技術における様々な成分の変化が、従来の研磨パッド設計よりも改善された研磨結果を実現することになる高度な研磨パッドを形成するのに必要な特性のうちの幾つかを有する影響を提供する。これらの例で提供される情報は、第1の研磨要素204、第2研磨要素206、又は第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206の両方の一部など、高度な研磨パッド200の少なくとも一部を形成するために使用することができる。本明細書中に提供される例は、他の類似の化学的配合物及び処理技術が本明細書に記載の特性の幾つかを調節するために使用できるので、本明細書に提供される本発明の範囲として限定することを意図するものではない。
【0123】
上記及び下記の硬化性樹脂前駆体組成物成分の例は、比較例を意図しており、当業者は、所望の特性を達成するために種々の供給源からの他の適切なモノマー/オリゴマーを見つけることができる。反応性希釈剤の幾つかの例は、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、カプロラクトンアクリレート及びアルコキシル化ラウリルメタクリレートである。第1の材料は、Sigma−Aldrichから入手可能であり、残りは、Sartomer USA及び/又はRahn AG USAから取得可能であろう(SRシリーズ203,217,238,242,306,339,355,368,420,484,502、506A、508、SR531,550,585,495B、256,257,285,611,506,833S及び9003B、CDシリーズ421A、535、545、553,590,730及び9075、Genomerシリーズ1116,1117 PBX、PMP、DETX、ITX、LBC、LBP、TPO、及びTPO−L、並びにMiramerシリーズ、M120、M130、M140、M164、M166、及びM170)。二官能性架橋剤の幾つかの例は、ビスフェノールAグリセロールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート及び1,4−ブタンジオールジアクリレートであり、これらはSigma−Aldrichから得ることができよう。オリゴマーの幾つかの例は、脂肪族オリゴマー(Sartomer USAのCNシリーズ131,131B、132,152,508,549,2910,3100,3105)、ポリエステルアクリレートオリゴマー(Sartomer USAのCNシリーズ292,293,294E,299,704,2200,2203,2207,2261,2261LV,2262,2264,2267,2270,2271E,2273,2279,2282,2283,2285,2303)、及び脂肪族ウレタンオリゴマー(Sartomer USAのCNシリーズの929,959,961H81,962,969,964A85,965,968,980,986,989,991,992,996,2921,9001,9007,9013,9178,9783)を含むことができよう。薬剤又は添加物は、3550,3560,307,378,1791,1794,9077、A515、A535、JET9510、JET9511、P9908、UV3500、UV3535、DISPERBYK168及びDISPERBYK2008など、BYKから供給できるだろう。第1のタイプの光開始剤は、Irgacureシリーズの184,2022,2100,250,270,295,369,379,500,651,TPO,TPO−L,754,784,819,907,1173,又は4265など、BASFから供給できるだろう。加えて、他の官能性オリゴマー及び樹脂前駆体組成物成分は、Ebecrylシリーズ(EB):40,53,80,81,83,110,114,130,140,150,152,154,168,170,180,220,230,242,246,264,265,270,271,284,303,350,411,436,438,450,452,524,571,600,605,608,657,745,809,810,811,812,830,860,870,871,885,888,889,893,1258,1290,1291,1300,1360,1710,3200,3201,3411,3415,3418,3500,3600,3700,3701,3720,4265,4827,4833,4849,4858,4883,5129,7100,8100,8296,8301,8311,8402,8405,8411,8412,8413,8414,8465,8501,8602,8701,8702,8804,8807,8808,及び8810など、Allnex Corp.から購入することができる。
【実施例1】
【0124】
貯蔵弾性率E’及びE’30:E’90の比制御の例
付加製造プロセスの使用による高度な研磨パッドの望ましい領域における望ましい貯蔵弾性率E’及びE’30:E’90の比を有する材料の選択、配合及び/又は形成は、高度な研磨パッドによって実現される研磨結果が基板全域で均一であることを保証する際に重要な要因である。貯蔵弾性率E’は、形成された材料の固有の材料特性であり、硬化したポリマー材料内での化学結合により生じることに留意されたい。貯蔵弾性率は、動的機械分析(DMA)技術を用いて30℃及び90℃などの所望の温度で測定され得る。異なる貯蔵弾性率を含む配合物の例が以下の表4に示される。
表4
【0125】
表3及び表4の項目1及び2を参照すると、他の官能性ポリマーよりも高い官能性を有する官能性ポリマーを含む配合物を形成すると、結果として、異なる温度で貯蔵弾性率E’が増加する一方で、形成された材料のE’30:E90の比を低減させることができる。官能性ポリマーを官能性1を有する種類M3から、官能性2を有する種類M1の官能性ポリマーに変化させると、配合物中で、30℃での貯蔵弾性率E’が400%近く増加する一方で、E’30:E’90の比は元の値の約8%まで低下した。同様に、表4の項目3及び4を比較すると、多官能性オリゴマーを配合物に付加することによって、異なる温度での貯蔵弾性率E’を適度に増加させることができる一方で、形成された材料のE’30:E90比を大幅に低下させることができることに留意されたい。したがって、官能性6を有する多官能性オリゴマーO4を配合物に付加することにより、30℃での貯蔵弾性率E’は、136%だけ増加したが、E’30:E90比は、その元の値の約4%まで低下した。理論に縛られるつもりはないが、形成されたポリマー材料内の架橋度を増加させることにより、官能性が増加した液滴配合物に成分を付加するため、高温(例えば、90℃)で貯蔵弾性率E’に重要な影響を及ぼし、よってE’30:E’90比にも重要な影響を及ぼすと考えられる。したがって、本開示の幾つかの実施形態では、2以上の官能基数を有する前駆体組成物は、高度な研磨パッド200中のより硬い材料領域(例えば、第1の研磨要素204)を形成するために使用される配合物において使用される。同様に、高度な研磨パッド200のより柔らかい領域は、研磨パッドのより硬い領域よりも低い官能性を有する配合物の使用によって形成され得る。したがって、本開示の幾つかの実施形態では、2以下の官能基数を有する前駆体組成物が、高度な研磨パッド200中のより軟質の材料領域(例えば、第2の研磨要素206)を形成するために使用される配合物において使用される。
【実施例2】
【0126】
貯蔵弾性率E’及び回復率制御の例
高度な研磨パッドに使用される材料の貯蔵弾性率E’及び回復率(%)を調節するために使用できる異なる配合物の例を以下の表5に示す。
表5
【0127】
表5の項目1及び2を参照すると、配合物中の種々の成分の量を調節することによって、より低い温度(例えば、30℃)での貯蔵弾性率E’の増加、回復率(%)の増加及び破損時の伸び率の低下を実現することができることに留意されたい。30℃での貯蔵弾性率E’、回復率(%)及び破損時の伸び率の特性の著しい変化は、高いガラス転移温度(Tg)を有する化学成分の百分率の増加によるところが大きいと考えられる。官能性ポリマーM2(例えば、Tg=5℃)などの低いガラス転移温度を有する材料は、室温でより柔らかくなる傾向があり、その一方で官能性ポリマーM1(例えば、Tg=104℃)などの高いガラス転移温度を有する材料は、室温に近い温度でより硬くより脆くなる傾向があることに留意されたい。この実施例で、2の官能性を有する多官能性オリゴマーO1の百分率は僅かに減少し、また2の官能性を有する官能性ポリマーM1の百分率は著しく増加し、E’30:E’90の比は適度に変化するだけであることに留意されたい。したがって、架橋密度は、2つの材料のE’30:E’90の比のむしろ適度な変化によって支持される、表5の項目1及び2の組成物によって形成されたポリマー材料について類似するようであると考えられる。したがって、幾つかの実施形態では、より高い貯蔵弾性率E’、より大きな硬度、処理中のより大きな回復率、及び破損時のより小さな伸びを有する材料を形成するために、高いガラス転移温度を有する前駆体組成物を配合物中で増加させることができる。同様に、幾つかの実施形態では、より低い貯蔵弾性率E’、より低い硬度及び破損時のより大きな伸びを有する材料を形成するために、低いガラス転移温度を有する前駆体組成物を配合物中で増加させることができる。
【0128】
幾つかの実施形態では、40℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する成分の量が、40℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有する成分の量よりも多くなるように、低貯蔵弾性率E’の材料を形成するために使用される液滴配合物中の様々な成分を調節することが望ましい。同様に、幾つかの実施形態では、40℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有する成分の量が、約40℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する成分の量よりも大きくなるように、高貯蔵弾性率E’の材料を形成するために使用される液滴配合物中の様々な成分を調節することが望ましい。
【実施例3】
【0129】
接触角制御の例
表面に堆積される、
図3Cに関連した上述の液滴の接触角を調節するために使用できる異なる配合物の例が、以下の表6に示される。上記のように、少なくとも:1)付加製造プロセス中に分配された液滴中の成分の組成、2)前に形成された層の硬化量、3)硬化デバイスからのエネルギー量、4)分配される液滴が配置される表面の組成物、及び5)液滴組成物の硬化剤(例えば、光開始剤)の量を制御することによって、分配される液滴の接触角αは、本明細書に記載の付加製造プロセスによって形成される特徴の解像度制御を改善するために制御することができる。
表6
【0130】
表6の項目1、2及び3を参照すると、配合物中の種々の成分の量を調節することによって、同一又は類似の液滴配合物で形成された表面の硬化した液滴又は「固定された」液滴の接触角を調節することに留意されたい。接触角の著しい変化は、分配された液滴の配合物中の官能性モノマー(例えば、項目M1−M2及びM4)及び光開始剤成分(例えば、項目P1、P2及びA1)の種類及び量を調節することによって実現することができる。
【0131】
液滴配合物の接触角は:1)少なくとも部分的に硬化した液滴の機械的特性を確実に実現することができる貫通又はバルク硬化光開始剤(例えば、第1の種類の光開始剤)を使用することにより、2)UV露出(例えば、第2の種類の光開始剤)を通して生成されるフリーラジカルをクエンチするための環境でO
2の能力を低下させることにより迅速な表面硬化を可能にする、ベンゾフェノンのような第2の種類の光開始剤及びアミン共力剤を使用することにより、並びに3)分配された液滴の表面を多かれ少なかれ極性にする傾向がある表面改質剤を使用することにより改善させることができる。例えば、表面改質剤は、親水性未硬化樹脂の液滴が疎水性表面上に堆積されるときに、分配された液滴の表面エネルギーが変更できるように使用され得る。このことで、大きな接触角が生じることになり、それにより液滴が確実に表面を「湿った」状態にすることはない。表面の湿りを防止することにより、続いて堆積される液滴を垂直方向(例えば、Z方向)に構築できるようになるだろう。液滴の後の液滴が互いに隣り合うよう水平に位置付けられるとき、表面の水平湿りを防止し、垂直に形成された特徴の側壁がスロッピング形状とは対照的に垂直に形成されることが望ましい。この接触角の改善は、印刷された特徴の側壁が、垂直であるか、又は互いに重ね合わせて堆積される際に段階的傾斜を有することを確実にする。研磨特徴の基板接触エリアは、各研磨プロセス中に一貫した接触エリアに維持される必要があり、及び/又はパッド研磨材料は、パッドの寿命を通して摩耗若しくはパッドコンディショニングによって除去されるため、この解像度は、高度な研磨パッドにおいて重要である。
【実施例4】
【0132】
低い貯蔵弾性率E’チューニングの例
高度な研磨パッドの様々な領域における所望の低貯蔵弾性率E’及び所望のE’30:E’90比を有する材料の選択、配合及び/又は形成は、高度な研磨パッドの静的及び動的関連機械的特性が、より高い貯蔵弾性率E’の材料と組み合わせる場合に、所望の研磨結果を実現するために確実に調節できるようにする際に重要な要因であり得る。異なる貯蔵弾性率E’を含む配合物の例が以下の表7に示される。
表7
【0133】
上記実施例1に同様に記載したように、表7の項目1及び2を参照すると、2以上の官能基数を有する多官能性オリゴマー及び異なるガラス転移温度(Tg)を有する官能性ポリマーを含む配合物を形成することにより、異なる温度での貯蔵弾性率E’を調節することができ、その一方で、形成された材料のE’30:E’90比を一定に保つことができることに留意されたい。例えば、3.4の官能性を有する多官能性オリゴマーO5を配合物に付加することにより、30℃での貯蔵弾性率E’を500%近く増加させることができるのに対し、E’30:E’90の比はその元の値の約75%に低下するだけである。理論に縛られるつもりはないが、形成されたポリマー材料内の架橋度を増加させると、多官能性オリゴマーO5成分を液滴配合物に付加するため、比較的低いガラス転移温度Tgを有する官能性ポリマーと組み合わせて使用されるとき、より低い温度(例えば、30℃)で貯蔵弾性率E’に重大な影響を及ぼすと考えられる。したがって、本開示の幾つかの実施形態では、2以上の官能基数を有する前駆体組成物は、比較的低いガラス転移温度Tgを有する官能性ポリマーと組み合わせて使用され、より軟質の材料領域(例えば、第2の研磨要素206)を高度な研磨パッド200中に形成する。また、本開示の幾つかの実施形態では、2つ以下の官能基数を有する前駆体組成物及び官能性オリゴマーが、より軟質の材料領域(例えば、第2の研磨要素206)を高度な研磨パッド200中に形成するために使用される配合物において使用される。
【実施例5】
【0134】
高度な研磨パッド特性の例
上述のように、本明細書に記載の付加製造プロセスは、高度な研磨パッドの特定のパッド領域に所望の特性を有する材料組成の特定配置を可能にし、堆積組成物の特性を組み合わせて、個々の材料の特性の平均、又は特性の「複合物」である特性を有する研磨パッドを形成することができる。1つの例では、高度な研磨パッドは、所望の温度範囲にわたって望ましい平均損失係数(tanδ)特性を有するように形成され得る。
図9Aの曲線921−923、曲線931−933及び曲線941は、異なるように構成された及び/又は積載された高度な研磨パッドの温度の関数として平均tanδ特性を示す。
【0135】
図9B及び
図9Cは、
図9Aに示す損失係数対温度データを生成するために使用された高度な研磨パッドの2つの基本構成の側断面図である。
図9Aの曲線921−923に見られる損失係数対温度データは、
図9Bに示された種類の高度な研磨パッドサンプルをZ方向に片持ちサンプルを積載する試験フィクスチャ内で循環させるDMA技術を用いて収集された。
図9Aの曲線931−933に見られる損失係数対温度データは、
図9Bに示された種類の高度な研磨パッドサンプルをX方向に(例えば、形成された層と平行に)片持ちサンプルを積載する試験フィクスチャ内で循環させるDMA技術を用いて収集された。
図9Aの曲線941に見られる損失係数対温度データは、
図9Cに示された種類の高度な研磨パッドサンプルをZ方向に片持ち試験サンプルを積載する試験フィクスチャ内で循環させるDMA技術を用いて収集された。全ての試験の間、高度な研磨パッドサンプルは、5℃/分の傾斜率で−81℃の温度から95℃の温度まで加熱された。
【0136】
図9Bは、形成された層がX−Y平面に平行に位置合わせされ、Z方向に積層されるように、本明細書に記載された付加製造プロセスを使用して形成される第1の研磨パッド材料901及び第2の研磨パッド材料902の個別の層を含む高度な研磨パッド200の一部を示す。第1の研磨パッド材料901は、低いガラス転移温度(Tg)を有する低い貯蔵弾性率のウレタンアクリレート材を含み、第2の研磨パッド材料902は、高いガラス転移温度(Tg)を有する高い貯蔵弾性率のウレタンアクリレート材を含む。第1の研磨パッド材料901及び第2の研磨パッド材料902の層の各々は、Z方向にそれぞれ厚さ910及び911を有する。
【0137】
図9Aを再び参照すると、グラフ化されたデータは、曲線901C及び902Cによって示されるように、第1の研磨パッド材料901及び第2の研磨パッド材料902の分離した別個の損失係数ピークを含む。
図9Bに示されている高度な研磨パッド構成に対して行われたDMA試験に対する損失係数データは、曲線921−923及び曲線931−933によって示されており、
図9Cに示されている高度な研磨パッド構成に対して行われたDMA試験に対する損失係数データは、曲線941によって示されている。
【0138】
曲線921、922及び923は、試験中にZ方向に荷重が与えられるときに、
図9Bに示される各層の厚さ及び相対間隔を変更する効果を示す。曲線921は、第1の研磨パッド材料901から第2の研磨パッド材料902まで50:50の組成物を有し、よって層毎にZ方向に同等の厚さ910及び911を有している、
図9Bに示す高度な研磨パッド構造についての温度の関数としての損失係数のグラフを示す。第1のサンプルの厚さ910及び911は、両方とも約0.16mm(0.006インチ)であった。曲線922は、第1の材料901及び第2の材料902の層の厚さ910及び911が両方とも2倍の大きさであったことを除き、曲線921を生成するために使用されたのと同じ一般的な高度な研磨パッド構造についての温度の関数としての損失係数のグラフを示す。同様に、曲線923は、第1の材料901及び第2の材料902の層の厚さ910及び911が両方とも3倍の大きさであったことを除き、曲線921を生成するために使用されたのと同じ高度な研磨パッド構造についての温度の関数としての損失係数のグラフを示す。曲線921、922及び923はすべて、損失係数データにおける2つのはっきりしたピーク(例えば、ピーク925及び926)並びにピーク各々の規模の低下により見られるように、個々の材料901及び902に見られる特性の混合又は平均を示すことに留意されたい。曲線921,922及び923に見られる2つのピークは、第1の研磨パッド材料と第2の研磨パッド材料との間に形成された分子スケールの混合、鎖の絡み合い、及び/又は化学結合を示し得る。
【0139】
曲線931、932及び933は、試験中にX方向に荷重が与えられるときに、
図9Bに示される各層の厚さ及び相対間隔を変更する効果を示す。曲線931は、第1の研磨パッド材料901から第2の研磨パッド材料902まで50:50の組成物を有し、よって層毎にZ方向に同等の幅910及び911を有している、
図9Bに示す高度な研磨パッド構造についての温度の関数としての損失係数のグラフを示す。第1のサンプルの幅910及び911は、両方とも約0.16mm(0.006インチ)であった。曲線932は、第1の材料901及び第2の材料902の層の幅910及び911が両方とも2倍の大きさであったことを除き、曲線931を生成するために使用されたのと同じ一般的な高度な研磨パッド構造についての温度の関数としての損失係数のグラフを示す。同様に、曲線933は、第1の材料901及び第2の材料902の層の幅910及び911が両方とも3倍の大きさであったことを除き、曲線931を生成するために使用されたのと同じ高度な研磨パッド構造についての温度の関数としての損失係数のグラフを示す。曲線931は、2つのはっきりしたピーク(例えば、ピーク935及び936)及び損失係数データの各ピークの大きさの低下により見られるように、個々の材料901及び902に見られる特性の混合又は平均化を示していることに留意されたい。他方で、曲線932及び933は、2つのはっきりしたピーク不足により見られるように、個々の材料901及び902に見られる特性においてわずかな混合又は平均化を示すだけである。
【0140】
図9Cは、第1の研磨パッド特徴915がベース層916によって支持され、Z方向(例えば、
図2Aの項目204a)に位置合わせされるように、付加製造プロセスを使用してまた形成された第1の研磨パッド特徴915及びベース層916を含む高度な研磨パッド200の一部を示す。この構成では、ベース層916は、第1の研磨パッド材料901の固定された液滴と第2の研磨パッド材料902の固定された液滴の50:50の「混合」(即ち、1:1材料組成比)を含む。第1の研磨パッド特徴915及びベース層916の厚さ各々は、それぞれ、X方向に位置合わせされた幅918及び919を有する。曲線941は、高度な研磨パッド200の平均又は「複合」特性に組成物的に「混合」された研磨パッド要素を形成する効果を示す。曲線941は、2つのはっきりしたピーク(例えば、ピーク945及び946)及び損失係数データの各ピークの大きさの低下により見られるように、ベース層916に見られる個々の材料901及び902に見られる特性の混合又は平均化を示していることに留意されたい。曲線941に見られる2つのピークは、ベース層916内で第1の研磨パッド材料と第2の研磨パッド材料との間に形成された分子スケールの混合、鎖の絡み合い、及び/又は化学結合を示すことがある。
【0141】
図9Aに見られる損失係数対温度データは、荷重方向(例えば、曲線921及び941)に対する層の構造的な間隔又は厚さが、高度な研磨パッド内での損失係数特性の平均化に劇的な効果を有する可能性があることを示している。曲線931、932及び933を参照すると、より硬質な材料の層とより軟質な材料の層との間の間隔が増加するにつれて、より硬質な材料の特性は、形成された層の配向(例えば、X方向)に平行である方向に荷重が加えられるとき、形成された研磨パッドの特性を支配する傾向が増すことに留意されたい。しかしながら、曲線921、922及び923を参照すると、より硬質な材料の層とより軟質の材料の層の間の間隔は、特徴の厚さが増加する際に測定された損失係数対温度はあまり変化しないので、荷重方向に垂直である配向に位置合わせされた研磨特徴で構成されている形成された高度な研磨パッドの特性にほとんど影響しないことに留意されたい。したがって、高度な研磨パッド内の「硬質な」層及び「軟質な」層の荷重方向及び相対的な間隔に対する構造的配向を制御することにより、パッド特性(例えば、損失係数)の一又は複数は、高度な研磨パッドの研磨処理性能をより良好に制御するために調節することができる。
【0142】
代替的パッド構造の設計
図6は、本発明の1つの実施形態による研磨パッド600の概略斜視断面図である。研磨パッド600は、3D印刷された研磨パッドの第2の研磨要素206と類似する軟質の又は低貯蔵弾性率E’の材料である第2の研磨要素602を含む。第2の研磨要素206と類似して、第2の研磨要素602は、ポリウレタンセグメント及び脂肪族セグメントを含み得る一又は複数のエラストマポリマー組成物から形成され得る。研磨パッド600は、第2の研磨要素602から延びる複数の表面特徴606を含む。表面特徴606の外面608は、軟質の若しくは低いE’材料又は軟質の若しくは低い貯蔵弾性率E’の材料組成から形成され得る。1つの実施形態では、表面特徴606の外面608は、第2の研磨要素602と同一の材料又は同一の材料組成から形成され得る。表面特徴606はまた、内部に埋め込まれた硬質の特徴604を含み得る。硬質の又は高い貯蔵弾性率E’の特徴604は、表面特徴606より硬い材料又は材料組成から形成され得る。硬質の又は高い貯蔵弾性率E’の特徴604は、架橋結合されたポリマー組成物及び芳香族基を含む組成物を含む、高度な研磨パッドの硬質の又は高い貯蔵弾性率E’の特徴204の一又は複数の材料に類似した材料から形成され得る。埋め込まれた硬質の特徴604は、表面特徴606の有効な硬度を変更し、したがって、研磨について所望のターゲットパッド硬度を提供する。外面608の軟質の又は低い貯蔵弾性率E’のポリマー層は、欠陥を低減し、研磨されている基板上の平坦化を改善するために使用することができる。代替的には、軟質の又は低い貯蔵弾性率E’のポリマー材料が本開示の他の研磨パッドの表面に印刷され得、同一の利益が提供される。
【0143】
図7は、一又は複数の観察窓710を有する研磨パッド700の概略斜視断面図である。研磨パッド700は、パッド本体702を有し得る。パッド本体702は、一又は複数の軟質の又は低い貯蔵弾性率E’の特徴706と、研磨用に第2の研磨要素706から延びる複数の第1の研磨要素704を含み得る。第2の研磨要素706及び第1の研磨要素704は、高度な研磨パッド200の第2の研磨要素206及び第1の研磨要素204の材料と類似の材料から形成され得る。第1の研磨要素704は、本開示による任意の適したパターンで配置されてもよい。
【0144】
一又は複数の観察窓710は、研磨されている基板を観察できるような透明な材料又は組成物から形成され得る。観察窓710は、第2の研磨要素706又は第1の研磨要素704を介して、及び/又はその一部の周囲に形成され得る。幾つかの実施形態では、観察窓710は、実質的に透明であり、したがってCMP光終点検出システムで使用するためのレーザ光源及び/又は白色光源から放射される光を伝送することができる材料から形成され得る。光学的透明度は、終点検出システムの光学検出器によって使用される光線の波長範囲全域で、少なくとも約25%(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の光透過率を提供するのに十分高いはずである。典型的な光終点検出波長範囲は、可視スペクトル(例えば、約400nmから約800nm)、紫外線(UV)スペクトル(例えば、約300nmから約400nm)、及び/又は赤外線スペクトル(例えば、約800nmから約1550nm)を含む。1つの実施形態では、観察窓710は、280nmから399nmの間の波長で35%超の透過率を、及び400nmから800nmの間の波長で70%超の透過率を有する材料から形成される。幾つかの実施形態では、観察窓710は、研磨スラリの屈折率とほぼ同じ低屈折率を有し、空気/窓/水界面からの反射を低減し、観察窓710を通って基板へのかつ基板からの光の透過率を改善するために高い光学的透明性を有する材料から形成される。
【0145】
1つの実施形態では、観察窓710は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む、透明な印刷された材料から形成され得る。別の実施形態では、窓は、エポキシ基を含む透明なポリマー組成物を使用して形成され、組成物は、陽イオン性の硬化を使用して硬化され、更なる透明性とわずかな収縮性を提供し得る。類似の実施形態では、窓は、陽イオン性の硬化とフリーラジカル硬化の両方を受ける組成物の混合物から形成され得る。別の実施形態では、窓は、別のプロセスによって製作され得、3Dプロセスによって形成される研磨パッドのあらかじめ形成された開口に機械的に挿入され得る。
【0146】
図8は、バッキング層806を含む研磨パッド800の概略斜視断面図である。研磨パッド600は、第2の研磨要素804と、第2の研磨要素804から突出する複数の第1の研磨要素802とを含む。研磨パッド800は、第2の研磨要素804に取り付けられたバッキング層806を除き、前述の研磨パッド200、600、700の何れかと類似し得る。バッキング層806は、研磨パッド800に所望の圧縮性を提供し得る。バッキング層806はまた、研磨パッド800の全体的な機械特性を変え、所望の硬質を実現し、及び/又は所望の貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E’’を有するために使用されてもよい。バッキング層806は、80ショアAスケール未満の硬度値を有し得る。1つの実施形態では、バッキング層806は、圧力下でセルが崩壊し、バッキング層806が圧縮するように、ポリウレタン又はポリシロキサン(シリコーン)のような連続気泡又は独立気泡フォームから形成され得る。別の実施形態では、バッキング層806は、天然ゴム、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンモノマ)、ニトリル又はネオプレン(ポリクロロプレン)から形成され得る。
【0147】
1つの実施形態では、第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206の材料は、研磨スラリからの攻撃に対して化学的に耐性がある。別の実施形態では、第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206の材料は、親水性がある。研磨パッドの親水性及び疎水性は、当業者による製剤化学の賢明な選択によって調節され得る。
【0148】
本明細書に記載された研磨パッドは円形であるが、本開示による研磨粒子は、研磨中に直線的に移動するように構成された研磨ウェブのような任意の適切な形状を含み得る。
【0149】
従来の研磨パッドと比較して、本明細書に開示された高度な研磨パッドは、いくつかの製造及びコストに関連する利点を有している。例えば、伝統的な研磨パッドは、一般的に、基板を研磨するためのターゲット硬度及び/又は貯蔵弾性率E’を得るために、発泡体のような軟質又は低い貯蔵弾性率E’の材料から形成されたサブパッドによって支持される機械加工及びテクスチャ加工された研磨面を含む。しかし、様々な機械的特性を有する材料を選択し、高度な研磨パッド上に形成された異なる特徴の寸法及び配置を調整することによって、サブパッドを必要とせずに、高度な研磨パッドのパッド本体で、同じ特性を実現することができる。したがって、高度な研磨パッドは、サブパッドの必要性を排除することにより、ユーザーの所有コストを削減する。
【0150】
次世代のICデバイスを研磨するために必要となるだろう研磨パッド設計の複雑さが増大することにより、これらの研磨パッドの製造も大幅に複雑になる。これらの複雑なパッド設計の幾つかの態様を製造するために用いられ得る、非付加製造型プロセス及び/又は減法的プロセスがある。これらのプロセスは、単一の個別材料から材料層を形成するためのマルチ材料射出成形及び/又は続くステップUV鋳造を含み得る。次いで、典型的には、これらの形成ステップの後に、ミリング、研削又はレーザーアブレーション工程又は他の減法的技術を用いた機械加工及び後処理が続く。
【0151】
以上の説明は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱することなく、本開示の他の及び更なる実施形態を考案することができ、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められる。