特許第6674142号(P6674142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6674142-銅スラグ含有細骨材の検査方法 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674142
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】銅スラグ含有細骨材の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20200323BHJP
   G01N 23/2202 20180101ALI20200323BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20200323BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20200323BHJP
   C04B 14/06 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   G01N23/223
   G01N23/2202
   C04B18/14 F
   C04B14/28
   C04B14/06 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-205090(P2016-205090)
(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公開番号】特開2017-15737(P2017-15737A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2019年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高津 明郎
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−94860(JP,A)
【文献】 特開2010−78502(JP,A)
【文献】 特開2011−163810(JP,A)
【文献】 特開2013−33007(JP,A)
【文献】 特開2014−6183(JP,A)
【文献】 特開2005−281075(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0067601(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103592325(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
C04B 2/00−32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅スラグ含有細骨材の検査方法であって、
検査対象の銅スラグ含有細骨材からサンプリングした後、前記サンプリングした銅スラグ含有細骨材を粉砕して、粒径0.150mm未満の粉状細骨材を得て、
前記粉状細骨材を蛍光X線分析法によって測定し、細骨材中に銅スラグが占める割合を算出することを特徴とする銅スラグ含有細骨材の検査方法。
【請求項2】
前記測定は、前記粉状細骨材中の、銅スラグに固有の元素の発する蛍光X線の強度を測定することであり、前記算出は、前記粉状細骨材からの前記蛍光X線の強度を、銅スラグが占める割合が既知の粉状細骨材標準試料からの強度と比較することにより、当該粉状細骨材中に銅スラグが占める割合を算出すること、を特徴とする請求項1に記載の銅スラグ含有細骨材の検査方法。
【請求項3】
前記銅スラグに固有の元素が鉄であり、前記比較は、銅スラグが占める割合に対する鉄の蛍光X線の強度の関係を、複数の前記標準試料から求めたうえで、前記関係に前記粉状細骨材からの強度を当てはめることで行う
ことを特徴とする、請求項2に記載の銅スラグ含有細骨材の検査方法。
【請求項4】
前記銅スラグ含有細骨材を粉砕するのに先立って、前記銅スラグ含有細骨材を乾燥することにより水分を取り除く
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の銅スラグ含有細骨材の検査方法。
【請求項5】
前記サンプリングした銅スラグ含有細骨材の粉砕を、乳鉢および乳棒を用いて行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の銅スラグ含有細骨材の検査方法。
【請求項6】
前記銅スラグ含有細骨材が、石灰石、砕砂、海砂から選ばれる1種類以上の天然砂と銅スラグとを含有していることを特徴とする請求項1〜5にいずれかに記載の銅スラグ含有細骨材の検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅スラグ含有細骨材の検査方法に関する。より詳しくは、コンクリート用細骨材として用いられる銅スラグ含有細骨材中の銅スラグが占める割合を測定する検査方法である。
【背景技術】
【0002】
コンクリートはその経済性や施工性、強度、耐久性などから土木建築物の主要材料として広く用いられている。コンクリートは、粗骨材、細骨材、セメント、水を主原料とし、これをよく混合して泥しょう状態とした生コンクリートを型枠の中に流し込み(通常、打ち込みという)、硬化させたものである。粗骨材としては粒径が約50mm以下の砂利が、細骨材は粒径が約5mm以下の砂が用いられてきた。
【0003】
近年、環境保護を目的とした規制により海や川からの砂利や砂の入手が難しくなり、代替材が求められるようになった。代替材としては、例えば、銅スラグ、高炉スラグ、フライアッシュ焼成物などが挙げられる。その中でも、銅スラグは、アルカリ骨材反応が起きない点、塩分を含有しない点など、天然砂より優れた特性を有しており、広く使用されている。銅スラグとは、銅製錬業で産出される製品であり、鉄、珪素、カルシウム、酸素を主成分とする非晶質無機化合物である。
【0004】
コンクリート製造工場では、セメント、水、粗骨材、細骨材、混和剤等を調合してコンクリートを製造している。細骨材は種類毎に特性が異なるので、良質のコンクリートを作るには複数種類の細骨材を混合するのが一般的である。このため、細骨材の種類毎に貯蔵設備や切り出し設備を用意して、複数種類の細骨材を混合したり、複数種類の細骨材が混合された混合済細骨材が流通しており、該混合済細骨材を用いたりしている。
【0005】
ところで、細骨材として、天然砂だけで構成されている細骨材をコンクリートに用いると、得られるコンクリートでは乾燥収縮が大きくなりひび割れる恐れがあることが知られている。そこで、特許文献1には、天然砂と銅スラグとからなる細骨材を用いて乾燥収縮率を調製する方法が開示されている。
【0006】
一方、細骨材として、銅スラグだけで構成されている細骨材をコンクリートに用いると、もし不純物(鉛、砒素、カドミウム)の含有量が多く不純物が適切に固定された組成物となっていない場合などは、得られるコンクリートの環境負荷が天然石や土壌の環境負荷を超える恐れがある。そこで、非特許文献1には、コンクリート用細骨材に占める銅スラグの割合に上限が示されている。
【0007】
このように、良質のコンクリートを得るには、細骨材の構成比率を調節する必要が生じる。ところが、細骨材は種類毎に密度も粒径も異なるので、目標通りの構成比率に調節するのが難しい。そこで、細骨材の構成比率を簡便に分析する方法が、コンクリート製造者からも、混合済細骨材製造者からも求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−094860号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】JIS A5011−3:2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、銅スラグ含有細骨材中の銅スラグが占める割合を、簡便かつ高い精度で求める検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、銅スラグ含有細骨材中の銅スラグが占める割合を測定するにあたり、携帯型の蛍光X線分析装置が安価に入手可能となってきたことに着目した。また、銅スラグは多量の鉄分を含有しており、その含有率は、36〜42質量%程度であり、一方、他の細骨材構成材料である石灰石、砕砂、海砂は鉄分をほとんど含有していないことから、対象細骨材に用いられている銅スラグの鉄分含有率と、銅スラグ含有細骨材の鉄分の測定値を用いれば、当該銅スラグ含有細骨材中の銅スラグ量に換算できることに想到し、さらに、試料調整を高速化し、細骨材の粒径を揃えれば、加圧成形をせずとも精度よく蛍光X線分析法により測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1によれば、銅スラグ含有細骨材の検査方法であって、検査対象の銅スラグ含有細骨材からサンプリングした後、サンプリングした銅スラグ含有細骨材を粉砕して、粒径0.150mm未満の粉状細骨材を得て、粉状細骨材を蛍光X線分析法によって細骨材中に銅スラグが占める割合を測定することを特徴とする銅スラグ含有細骨材の検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の銅スラグ含有細骨材の検査方法によれば、コンクリート用細骨材として用いられる銅スラグ含有細骨材中の銅スラグが占める割合を、簡便に試料調整して、携帯型蛍光X線装置を用いて、簡便かつ高い精度で分析結果が得られる。よって、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の検査方法とその準備作業の順番を示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の銅スラグ含有細骨材の検査方法について詳しく説明する。
【0016】
本発明の銅スラグ含有細骨材の検査方法は、
検査対象の銅スラグ含有細骨材からサンプリングした後、前記サンプリングした銅スラグ含有細骨材を粉砕して、粒径0.150mm未満の粉状細骨材を得て、
前記粉状細骨材を蛍光X線分析法によって細骨材中に銅スラグが占める割合を測定することを特徴としている。
【0017】
銅スラグを含有している銅スラグ含有細骨材は、銅スラグ、石灰石、砕砂、海砂など多くの種類の細骨材で構成されており、通常は鉄分のほとんどが銅スラグの部分にある。個別の細骨材は粒径が揃っていることが多いが、各種細骨材で構成調整された混合済細骨材の場合は、その粒度はミクロンオーダーからミリメートルオーダーと大きな幅を持っている。このような粒度分布の大きな粉体試料をそのままの状態で、蛍光X線分析装置で直接細骨材中に銅スラグが占める割合を測定すると、X線の照射範囲(いわゆるコリメータ径)内における銅スラグの偏在が顕著に現れ、正確な含有率を求めることは極めて困難であった。
【0018】
本発明の銅スラグ含有細骨材の検査方法においては、検査対象の銅スラグ含有細骨材からサンプリングした後、前記サンプリングした銅スラグ含有細骨材を粉砕して、粒径を0.150mm未満に揃えることにより、X線の照射範囲内には、銅スラグ含有細骨材を構成する各種細骨材が露出しており、統計的には全体の各種細骨材の構成比率を代表する粒子群といえる。また、粒径を0.150mm未満に揃えることにより、X線の照射範囲内の粒子群の起伏も小さくすることができ、得られる蛍光X線は、全体の組成を代表した値となる。
【0019】
以下、本発明の銅スラグ含有細骨材の検査方法の一実施形態を、図1を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
1)銅スラグ含有細骨材
まず、銅スラグを含有している銅スラグ含有細骨材(混合済細骨材と呼ぶことがある)を用意する。銅スラグ含有細骨材は、石灰石、砕砂、海砂から選ばれる1種類以上の天然砂と銅スラグとを含有していることを特徴としている。上記銅スラグとともに、各種細骨材(石灰石、砕砂、海砂など)を、それぞれ比率(体積比または重量比)を定めて混合したものである。銅スラグ含有細骨材を作製するにあたっては、全体が均一になるように、混合機で連続的に混合したり、一旦、各細骨材を平地に集めて重機で混合したりすることが望ましい。
【0021】
2)銅スラグ、天然砂
銅スラグは、上記したように、銅製錬業で産出される製品であり、鉄、珪素、カルシウム、酸素を主成分とする非晶質無機化合物である。銅スラグは、多量の鉄分を含有しており、その含有率は、36〜42質量%程度である。なお、同一の銅製錬所の銅スラグであれば鉄含有率のばらつきは±2%程度に調整されているのが一般的である。
【0022】
一方、石灰石、砕砂、海砂などの天然砂は、鉄分をほとんど含有していない。このことから、本発明の銅スラグ含有細骨材の検査方法の、粉状銅スラグ含有細骨材の鉄分について蛍光X線分析法によって測定することにより、銅スラグ含有細骨材中の銅スラグ量に換算できる。
【0023】
3)サンプリング
上記銅スラグ含有細骨材の分析を行うためには、石灰石、砕砂、海砂から選ばれる1種類以上の天然砂と銅スラグを含有している銅スラグ含有細骨材(混合済細骨材)からサンプリングを行う。サンプリングは、全体の各種細骨材の構成比率を代表する集合となるように行われる方法であればよく、公知の方法として、例えば、検査対象の銅スラグ含有細骨材を板状に広げて対角線上に等間隔に採取していく方法や、該銅スラグ含有細骨材の全量をコンベアに切り出しながら一定時間毎に採取していく方法などがある。
【0024】
4)縮分
次に、サンプリングした銅スラグ含有細骨材を縮分する。縮分は公知の方法を用いればよく、例えば、よくかき混ぜた後にサンプリングと同様にして行えばよい。
【0025】
もともと銅スラグ含有細骨材が少量しかない場合や、一部の細骨材が全体の各種細骨材の構成比率を代表する組成と考えられる場合は、サンプリングで少量のみ分取して縮分を省略することができる。
【0026】
5)乾燥
銅スラグ含有細骨材は、サンプリングした時点では水分を含有していることが多いため、粉砕作業前に乾燥させることが好ましい。乾燥には、乾燥器等の大がかりな設備は必要とせず、電子レンジによる加熱乾燥等で構わない。銅スラグ含有細骨材の乾燥時間は、サンプリングした細骨材の量と湿潤の度合いによって適宜調整すればよい。
【0027】
6)粉砕
乾燥した銅スラグ含有細骨材は、粉砕により、粒径0.150mm未満の粉体(以下、粉状細骨材と呼ぶことがある)とする必要がある。粉砕には粉砕機を用いてもよいが、SUS製などの硬質の乳鉢と乳棒を用いれば、人力に頼っても、粒径0.150mm未満とすることが可能である。但し、瑪瑙製乳鉢、乳棒の場合は難しい。
【0028】
粉砕した銅スラグ含有細骨材の粒径が0.150mm未満となったかどうか確認するには、篩を用いてもよく、篩以外にサイクロンなどを用いてもよく、また、予め粉砕試験を行って経験的に粒径が0.150mm未満となるに十分な時間をかけて粉砕するのでもよい。目開き0.150mmの篩を通過しない銅スラグ含有細骨材がある場合は、通過する大きさとなるまで粉砕を繰り返せばよい。この際、篩を通過する粉状細骨材については再度の粉砕を避けるために取り分けておいてもよい。
【0029】
銅スラグ含有細骨材の中で、銅スラグは最も硬度が高いので、他の細骨材に比較して、上記篩を通過する大きさまで到達するのに時間を要する。粒径0.150mm未満に至っていない粒子の粉砕を省略したり、測定から除外したりすると、銅スラグ量が少ない状態で測定することとなるため注意を要する。
【0030】
7)蛍光X線分析法による測定
上記粉砕工程を経て得られた粉状細骨材は、蛍光X線分析法によって測定する。
【0031】
蛍光X線分析法には、迅速性、容易性、非破壊という利点がある。蛍光X線分析法は、試料面(固体または液体)にX線を照射することによって蛍光X線を発生させ、蛍光X線の強度が試料中の目的元素の濃度に比例していることに基づき、目的元素の定量を行う。ただし、X線が照射された領域がその物質を代表する組成になっていることが必要である。目的元素が当該領域に偏在すると、定量性に大きな誤差が生じるからである。
【0032】
目的元素の偏在を解消するために、従来、固体試料では試料調整を行っている。試料調整の具体的方法としては、試料を粉砕して均一にした後に加圧成形したり、融解剤で溶かしてからガラスビードに固めたりする方法が挙げられる。つまり、蛍光X線分析法を用いて目的元素の濃度を測定するためには、蛍光X線分析装置のほかに、粉砕機、加圧成形機、ガラスビード作製機などの高価で大きな設備を必要とし、測定時間も長くなる。
【0033】
本発明は、上記したように、極めて安価な粉砕器具(乳鉢と乳棒)のみで粉砕を行うことで、得られた粉状細骨材を用い、蛍光X線分析法によって細骨材中に銅スラグが占める割合を測定することができ、上記した、混合済細骨材の成形またはガラスビード化等は不要となるので設備費用が節約できる。
【0034】
粉砕機や成形機といった設備に費用をかけることなく、一般的で安価な粉砕手段(たとえば、乳鉢と乳棒)を用いるだけで検査方法を用いることができるので、現場での測定作業を迅速かつ確実に行うことができる。
【0035】
蛍光X線分析法による測定に先立って、分析試料である粉状細骨材の、X線の照射範囲は、刷毛や摺り切りなどで平らにならしておくことが望ましい。
【0036】
上記粉状細骨材を蛍光X線分析法によって、細骨材中の鉄の発する蛍光X線の強度を分析する。銅スラグ含有率が既知の標準試料についても、鉄の発する蛍光X線の強度を分析しておく。強度が一致すれば、標準試料と同じ銅スラグ含有率と判断できる。あるいは、数点の銅スラグが占める割合が既知の粉状細骨材標準試料から、銅スラグが占める割合に対する鉄の蛍光X線強度の関係(検量線)を求めておき、対象の粉状細骨材から得た強度をこの関係に当てはめて銅スラグ含有率を求めることができる。
【0037】
上記のようにして得られた検量線を演算機能を有する装置に保存し、対象となる粉状細骨材試料について鉄の蛍光X線強度を測定することで、上記装置の演算機能を用いて、当該試料中の銅スラグ含有率を直接表示させることも可能である。
【0038】
なお、銅スラグに固有の元素として鉄を例示したが、天然砂の成分によっては、鉄以外の元素について分析して銅スラグ含有率を求めることも可能である。
【0039】
本発明の銅スラグ含有細骨材の検査方法を用いることにより、極めて安価な粉砕器具(乳鉢と乳棒)のみで銅スラグ含有細骨材の粉砕を行うことでよく、得られた粉状細骨材を用い、成形機といった設備を用いることもなく、携帯型の蛍光X線装置を用いて、細骨材中に銅スラグが占める割合を測定することができ、現場での測定作業を迅速かつ確実に行うことができる。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
(検量線の作成)
銅スラグ含有細骨材(混合細骨材)の構成材料である、銅スラグ、石灰石、砕砂、海砂を用意した。これら構成材料をそれぞれ、SUS製の乳鉢とSUS製の乳棒を用いて粉砕し、粉状銅スラグ、粉状石灰石、粉状砕砂、粉状海砂を作製した。粉砕で作製した上記粉状材料は、SUS製の篩(目開き0.150mm)を全量が通り抜けることを確認した。
【0041】
上記粉状材料を調合して、重量比が石灰石:砕砂:海砂=1:1:2である3種混合粉を作製した。続いて、重量比が粉状銅スラグ:3種混合粉=1:9、2:8、3:7である標準試料(混合砂)を作製した。
【0042】
それぞれの標準試料をプラスチックフィルム(6μm厚)と円筒型プラスチック治具からなるホルダー内へ約10g入れた。ホルダー内の標準試料の高さを平らにならした後、携帯型蛍光X線装置(Skyray社製Genius XRF。以下、装置と呼ぶことがある。)を用いて、コリメータ径4mm、測定時間120秒で測定した。各標準試料につき5回の測定を行い、その結果を反映させた検量線(横軸:蛍光X線強度、縦軸:銅スラグ含有率)を装置の演算機能を用いて算出した。装置に検量線を保存し、以降は、試料を測定することで、当該試料中の銅スラグ含有率を装置に直接表示させることとした。
【0043】
(試料の測定)
次に、市販の混合細骨材(含有比率;銅スラグ:石灰石:砕砂:海砂=1:1:1:2の混合比とされているもの。)を用意し、図1に示す手順で混合細骨材中の銅スラグ含有率を検証することにした。
【0044】
床面に合成樹脂(ブルーシート)を敷き、その上に上記混合細骨材を乗せ、平らにならした。ならした混合細骨材の上面から、無作為に10地点を選んで印をつけた。印の10地点を円筒管で上から下まで貫いて、円筒内に入った混合細骨材を採取(サンプリング)した。
【0045】
採取した混合細骨材をよくかき混ぜたうえで、適切な縮分により約50gを試料として取り出した。
【0046】
取り出した試料を、電子レンジで600Wを3分かけて乾燥した。
【0047】
乾燥した試料を、室温まで冷えるのを待ってから、SUS製の乳鉢とSUS製の乳棒を用いて粉砕した。粉砕した試料は、目開き0.15mmのSUS製篩にかけ、篩上に残った試料は篩を通り抜けるまで粉砕をやり直し、乾燥した試料の全量が粒子径0.15mm未満の粉体試料となった。
【0048】
得られた粉体試料をプラスチックフィルム(6μm厚)と円筒型プラスチック治具からなるホルダー内へ約10g入れた。ホルダー内の粉体試料の高さを平らにならした後、装置を用いてコリメータ径4mm、測定時間120秒で測定した。ホルダーは動かさずにさらに2回測定し、3回の平均値として銅スラグ含有率20.8%を得た。
【0049】
(測定値の検証)
次にホルダー内の粉体試料を、ホルダーを揺動させることで撹拌し、ホルダー内の粉体試料の高さを平らにならした後、装置を用いてコリメータ径4mm、測定時間120秒で測定した。ホルダーは動かさずにさらに2回測定し、3回の平均値として銅スラグ含有率20.6%を得た。
【0050】
測定結果は撹拌前が20.8%で撹拌後が20.6%であり、差が0.2ポイント(測定結果の1/100)と小さかった。試料が0.15mm未満に微粉化されていることで、試料内の各材料の分布が光学的に均一に近くなり、測定結果の差が小さくなったと考えられる。
【0051】
[参考例1]
(検量線の作成)
実施例1と同様にして作製した標準試料(粉状銅スラグ:3種混合粉=1:9、2:8、3:7である)を、適量のバインダで混練し加圧成形してペレット状の標準試料を得た。ペレット状の標準試料は、リガク社製サイマルティックス12(据置型蛍光X線装置。以下、据置機と呼ぶことがある。)を用いて、コリメータ径30mm、測定時間40秒で測定した。各標準試料の測定結果を反映させた検量線を据置機の演算機能を用いて算出した。据置機に検量線を保存し、以降は、試料を測定することで、当該試料中の銅スラグ含有率を据置機に直接表示させることとした。
【0052】
(試料の測定)
実施例1と同様にして採取した混合細骨材をよくかき混ぜたうえで、適切な縮分により約500gを試料として取り出した。
【0053】
取り出した試料を、乾燥器に入れて105℃で2時間かけて乾燥した。
【0054】
乾燥した試料を、粉砕機で粉砕し、粉体試料を得た。この粉体試料を、目開き0.15mmの篩にかけたところ、篩上には何も残らなかった。
【0055】
粉体試料を、標準試料の場合と同様に、適量のバインダで混練し加圧成形してペレット状の試料を得た。
【0056】
ペレット状の試料を、据置機を用いてコリメータ径30mm、測定時間40秒で測定した。ペレット状の試料を動かさずにさらに2回測定し、3回の平均値として銅スラグ含有率20.9%を得た。
【0057】
(実施例1と参考例1の比較)
参考例1の測定結果の20.9%からすると、実施例1の測定結果の20.6%や20.8%は妥当な結果であったといえる。実施例1のようにコリメータ径が小さな装置を用いて、粉体のまま測定した場合でも、試料の粒子径を0.15mm未満に揃えることによって、そして高さを平らにならすことによって、測定結果の精度が向上した。その結果、コリメータ径が十分に大きい据置機を用いて、加圧成形した場合とほぼ同等な測定結果が得られることが判明した。
【0058】
[比較例1]
(試料の測定)
乾燥した試料を粉砕するために用いた乳鉢と乳棒に代えて、それぞれ瑪瑙製とした点以外は実施例1と同様にしたところ、粉砕に1日かけても篩(目開き0.15mm)を通らない粒子が残った。なお、この粒子を目視で確認したところ、銅スラグ(混合細骨材の構成材料の中で最も硬度が大きい)と同じ黒色をしているもののみであった。
【0059】
これ以上の粉砕をすることなく、0.15mmより大きな粒子も含めて実施例1の粉体試料の代わりとして処理を進めた。
【0060】
(測定値の検証)
測定結果は撹拌前が18.9%で撹拌後が21.9%であり、差が3.0ポイント(測定結果の1/10超え)と大きかった。この結果は、銅スラグの比較的大きな粒がコリメータの照射範囲に偏在した結果であると推定される。
【0061】
(実施例1と比較例1の比較)
比較例1は撹拌により測定結果の1/10超えの誤差を示したのに対し、実施例1は撹拌しても測定結果の1/100程度の誤差に収まり、試料の微粉化により、銅スラグ粒の偏在化による測定データの変動を抑制できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
コンクリート向け細骨材の製造、販売、購入、使用に際して、構成材料の含有割合をその場で簡単に分析することができる。分析結果は、製造工程の調合比率を変更したり、販売価格を計算したり、購入の可否を判断したり、使用量を計算して高品質なコンクリートを製造したりするのに用いることができる。


図1