特許第6674146号(P6674146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産化学工業株式会社の特許一覧

特許6674146親油性高分岐ポリマー及びそれを含む重合性組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674146
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】親油性高分岐ポリマー及びそれを含む重合性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/06 20060101AFI20200323BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20200323BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20200323BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20200323BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20200323BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20200323BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20200323BHJP
   C09D 157/00 20060101ALI20200323BHJP
   C09D 133/08 20060101ALI20200323BHJP
   C09D 133/10 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   C08F299/06
   C08F2/44 C
   C08F2/46
   C08F220/18
   C08J7/04 KCFD
   C09D4/00
   C09D7/40
   C09D157/00
   C09D133/08
   C09D133/10
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-529574(P2016-529574)
(86)(22)【出願日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】JP2015067900
(87)【国際公開番号】WO2015199032
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2018年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-128505(P2014-128505)
(32)【優先日】2014年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 元信
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−024330(JP,A)
【文献】 特開2009−286924(JP,A)
【文献】 特開2008−163244(JP,A)
【文献】 特開2005−120288(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128214(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/004865(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 − 2/60
C08F 220/00 − 220/70
C08F 299/00 − 299/08
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)活性エネルギー線重合性多官能モノマー100質量部、
(b)親油性高分岐ポリマー0.001〜20質量部、及び
(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1〜20質量部
を含む重合性組成物であって、
前記(a)活性エネルギー線重合性多官能モノマーが、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
前記(b)親油性高分岐ポリマーが、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内に炭素原子数6乃至30の脂肪族炭化水素基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBとを少なくとも含み、前記モノマーBの量が前記モノマーAのモル数に対して400〜1500mol%量である重合性化合物、該モノマーAのモル数に対して5〜200mol%量の重合開始剤Cとを重合させてなる親油性高分岐ポリマーである、重合性組成物。
【請求項2】
前記モノマーAがジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であり、前記モノマーBが式[2]で表される化合物であり、かつ、前記重合開始剤Cがアゾ系重合開始剤である、請求項1に記載の重合性組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数6乃至30の脂肪族炭化水素基を表し、Lは炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、mは0乃至30の整数を表す。)
【請求項3】
前記重合性化合物が、式[3]で表されるモノマーDをさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の重合性組成物。
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、Lは炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、kは1乃至30の整数を表す。)
【請求項4】
前記(c)重合開始剤がアルキルフェノン化合物である、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の重合性組成物。
【請求項5】
さらに(d)溶媒を含む、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の重合性組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の重合性組成物より得られる硬化膜。
【請求項7】
基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備える積層体の製造方法であって、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の重合性組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、及び該塗膜に紫外線を照射し硬化することにより、該ハードコート層を形成する工程を含む、積層体の製造方法
【請求項8】
前記ハードコート層が1〜30μmの膜厚を有する、請求項7に記載の積層体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親油性高分岐ポリマー及びそれを含む重合性組成物、並びに該重合性組成物より得られる硬化膜及びそれをハードコート層として含む積層体に関する。詳細には、より高い滑り性を発現する親油性ハードコート層を形成できる重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー(高分子)材料は、近年、多分野でますます利用されている。それに伴い、それぞれの分野に応じて、マトリクスとして、ポリマー性状とともにその表面や界面の特性が重要となっている。例えば表面自由エネルギーの低いフッ素系化合物を表面改質剤として用いることにより、撥水撥油性、防汚性、非粘着性、剥離性、離型性、滑り性、耐磨耗性、反射防止特性、耐薬品性などの界面制御に関する特性の向上が期待され、種々提案されている。
【0003】
フッ素系ポリマー及びシリコーン系化合物による表面改質剤を用いた、撥水撥油性の活性エネルギー線硬化性コーティング組成物は、LCD(液晶表示装置)、PDP(プラズマディスプレイ)、タッチパネルなどの各種ディスプレイの、傷付き防止のためのコーティング層を具備する各種プラスチックフィルムとして多く検討されている。これらは、指紋に含まれる水分及び油脂成分を弾くため、指紋付着防止効果を発現し、指紋の拭き取りが容易になる利点が挙げられる。しかしその反面、付着した水分・油脂成分は、接触角の大きな細かい液滴を形成し、光を散乱することで白濁した外観を与え、むしろ指紋が目立ってしまうことが課題になっている。
【0004】
これに対し、指紋や皮脂成分の汚れをなじませることで汚れを目立たなくする、いわゆる親油性表面を与える活性エネルギー線硬化性コーティング組成物が開示されている(特許文献1、2)。
【0005】
ところで、多くのスマートフォンにおけるタッチパネルディスプレイではマルチタッチ機能が採用され、複数の指を用いて画面の拡大(ピンチアウト)・縮小(ピンチイン)を行うピンチ操作や、指を画面において一定方向にはらうフリック操作及びスワイプ操作等が可能となっている。このような指の動きに対して引っかかりが無く、滑らかな触感を得るために、ディスプレイ表面を指で触れた際の滑り性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2012/128214号パンフレット
【特許文献2】特開2011−42795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、親油性材料について種々研究がなされているが、これらの親油性表面は、フッ素系ポリマーやシリコーン系化合物を用いた撥水撥油性表面に比べて摩擦係数が高く、指で接触した際の触感が悪いことが課題であった。すなわち、より高い滑り性を発現する親油性ハードコート層が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、所謂開始剤断片組込み型高分岐ポリマーにおいて、分子内に炭素原子数6乃至30の脂肪族炭化水素基を有する親油性モノマー由来の構造をより多い割合で占める親油性高分岐ポリマーを、樹脂の表面改質剤として採用することにより、良好な表面滑り性を有する親油性硬化膜を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、第1観点として、(a)活性エネルギー線重合性多官能モノマー100質量部、(b)親油性高分岐ポリマー0.001〜20質量部、及び(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1〜20質量部を含む重合性組成物であって、前記(b)親油性高分岐ポリマーが、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内に炭素原子数6乃至30の脂肪族炭化水素基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBとを少なくとも含み、前記モノマーBの量が前記モノマーAのモル数に対して400〜1500mol%量である重合性化合物を、該モノマーAのモル数に対して5〜200mol%量の重合開始剤Cの存在下で重合させることにより得られる親油性高分岐ポリマーである、重合性組成物に関する。
第2観点として、前記モノマーAがジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であり、前記モノマーBが式[2]で表される化合物であり、かつ、前記重合開始剤Cがアゾ系重合開始剤である、第1観点に記載の重合性組成物に関する。
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数6乃至30の脂肪族炭化水素基を表し、Lは炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、mは0乃至30の整数を表す。)
第3観点として、前記重合性化合物が、式[3]で表されるモノマーDをさらに含む、第1観点又は第2観点に記載の重合性組成物に関する。
【化2】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、Lは炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、kは1乃至30の整数を表す。)
第4観点として、前記(a)多官能モノマーが、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、第1観点乃至第3観点のうち何れか一つに記載の重合性組成物に関する。
第5観点として、前記(c)重合開始剤がアルキルフェノン化合物である、第1観点乃至第4観点のうち何れか一つに記載の重合性組成物に関する。
第6観点として、さらに(d)溶媒を含む、第1観点乃至第5観点のうち何れか一つに記載の重合性組成物に関する。
第7観点として、第1観点乃至第6観点のうち何れか一つに記載の重合性組成物より得られる硬化膜に関する。
第8観点として、基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備える積層体であって、該ハードコート層が、第1観点乃至第6観点のうち何れか一つに記載の重合性組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、及び該塗膜に紫外線を照射し硬化する工程を含む方法により形成されている、積層体に関する。
第9観点として、前記ハードコート層が1〜30μmの膜厚を有する、第8観点に記載の積層体に関する。
第10観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内に炭素原子数6乃至30の脂肪族炭化水素基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBとを少なくとも含み、前記モノマーBの量が前記モノマーAのモル数に対して400〜1500mol%量である重合性化合物を、該モノマーAのモル数に対して5〜200mol%量の重合開始剤Cの存在下で重合させることにより得られる、親油性高分岐ポリマーに関する。
第11観点として、前記モノマーAが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有する化合物である、第10観点に記載の親油性高分岐ポリマーに関する。
第12観点として、前記モノマーAがジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物である、第11観点に記載の親油性高分岐ポリマーに関する。
第13観点として、前記モノマーAが式[1]で表される化合物である、第12観点に記載の親油性高分岐ポリマーに関する。
【化3】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Lはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数2乃至12のアルキレン基を表し、nは1乃至30の整数を表す。)
第14観点として、前記モノマーBが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有する化合物である、第10観点乃至第13観点のうち何れか一つに記載の親油性高分岐ポリマーに関する。
第15観点として、前記モノマーBが式[2]で表される化合物である、第14観点に記載の親油性高分岐ポリマーに関する。
【化4】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数6乃至30の脂肪族炭化水素基を表し、Lは炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、mは0乃至30の整数を表す。)
第16観点として、前記mが0である、第15観点に記載の親油性高分岐ポリマーに関する。
第17観点として、前記重合開始剤Cがアゾ系重合開始剤である、第10観点乃至第16観点のうち何れか一つに記載の親油性高分岐ポリマーに関する。
第18観点として、前記重合性化合物が、式[3]で表されるモノマーDをさらに含む、第10観点乃至第17観点のうち何れか一つに記載の親油性高分岐ポリマーに関する。
【化5】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、Lは炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、kは1乃至30の整数を表す。)
第19観点として、前記モノマーAのモル数に対して5乃至500モル%量の前記モノマーDを用いて得られる、第18観点に記載の親油性高分岐ポリマーに関する。
第20観点として、第10観点乃至第19観点のうち何れか一つに記載の親油性高分岐ポリマーを含むワニスに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の親油性高分岐ポリマーは、積極的に枝分かれ構造を導入しているため、線状高分子と比較して分子間の絡み合いが少なく微粒子的挙動を示し、有機溶媒に対する溶解性及び樹脂に対する分散性が高い。このため、マトリクスである樹脂中において、高分岐ポリマーの凝集を防ぎ、さらに、表面に移動しやすく、樹脂表面に活性(親油性など)を付与しやすい。従って、本発明の親油性高分岐ポリマーを重合性組成物に添加することで、該組成物から得られる硬化膜表面に、ハードコート本来の硬度、耐擦傷性を損なうことなく、優れた滑り性と親油性(耐指紋性)などの表面改質性を簡便に付与することができる。
要するに、本発明の重合性組成物は、優れた滑り性を有し、且つ、指紋や皮脂成分の汚れが目立たない親油性硬化膜(ハードコート層)を形成できるという効果を奏し、本発明の親油性高分岐ポリマーは、重合性組成物に添加することで、該組成物より形成される硬化膜表面に滑り性及び親油性を付与できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<重合性組成物>>
<(a)活性エネルギー線重合性多官能モノマー>
上記成分(a)活性エネルギー線重合性多官能モノマー(以下、単に成分(a)多官能モノマーとも称する)としては、後述する成分(c)重合開始剤の作用によって重合する重合性の部位を、分子内に2個以上有する化合物であれば特に制限はなく、例えばウレタンアクリル系、エポキシアクリル系、各種(メタ)アクリレート系等の(メタ)アクリル基を2個以上含有する多官能モノマー等が挙げられる。
好ましくは、成分(a)多官能モノマーは、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれるモノマーであることが望ましい。
【0012】
このような活性エネルギー線硬化性多官能モノマーのうち、多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、変性ε−カプロラクトントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリス(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
これら化合物は一種を単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
これらの例示の中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物が好ましく、さらにペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を4個以上含有する化合物がより好ましい。
【0013】
また、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、エチレン性不飽和結合の部位を有する(メタ)アクリル基を2個以上有するウレタン化合物が挙げられる。なお、本発明で好適に用いられる多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート或いは芳香族ウレタン(メタ)アクリレートの何れであってもよい。これら化合物は一種を単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
本発明で好適に用いられる多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物と活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーとの反応により得られる。
上記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロメタンジイソシアネート或いはこれらジイソシアネート化合物のうち芳香族のイソシアネート類を水添して得られるジイソシアネート化合物(例えば水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネートなどのような2価あるいは3価のジイソシアネート化合物あるいはポリイソシアネート化合物や、これらを多量化させて得られる多量化ポリイソシアネート化合物等のイソシアネート基含有化合物が挙げられる。
また活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらのラクトン付加物(例えば、(株)ダイセル製のプラクセル(登録商標)FAシリーズ、同FMシリーズ等)も使用することができる。また、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル・オルネクス(株)製「DPHA」等)も使用可能である。
【0015】
これら多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の市販品の具体例としては、共栄社化学(株)製:AH−600、AT−600、UA−306H、UA−306T、UA−306I、UA−510H、UF−8001G、DAUA−167等;ダイセル・オルネクス(株)製:EBECRYL(登録商標)204、同205、同210、同215、同220、同6202、同230、同244、同245、同264、同265、同270、同280/15IB、同1259、同5129、同8210、同8301、同8307、同8411、同8804、同8807、同9227EA、同9260、同284、同285、同294/25HD、同4820、同4858、同8402、同8405、同9270、同8311、同8701、KRM8200、KRM8200AE、KRM7735、KRM8296、KRM8452;日本合成化学工業(株)製:紫光(登録商標)UV−1700B、同UV−6300B、同UV−7550B、同UV7600B、同UV−7605B、同UV−7610B、同UV−7620E、同UV−7620EA、同UV−7630B、同UV−7640B、同UV−7650B等を挙げることができる。
【0016】
また成分(a)多官能モノマーは、上記多官能(メタ)アクリレート化合物と上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を混合して使用してもよい。
【0017】
<(b)親油性高分岐ポリマー>
成分(b)親油性高分岐ポリマーは、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内に炭素原子数6乃至30の脂肪族炭化水素基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBとを少なくとも含み、前記モノマーBの量が前記モノマーAのモル数に対して400〜1500mol%量である重合性化合物を、該モノマーAのモル数に対して5〜200mol%量の重合開始剤Cの存在下で重合させることにより得られる。
なお、前記親油性高分岐ポリマーは、いわゆる開始剤断片組込み(IFIRP)型高分岐ポリマーであり、その末端に重合に使用した重合開始剤Cの断片を有している。
【0018】
[重合性化合物]
[モノマーA]
本発明において、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAは、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有することが好ましく、特にジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
【0019】
上記モノマーAの中でも、特に下記式[1]で表される化合物が好ましい。
【0020】
【化6】
上記式[1]中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Lはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数2乃至12のアルキレン基を表し、nは1乃至30の整数を表す。
【0021】
が表すヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数2乃至12のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、2−ヒドロキシトリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、2−メチルオクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2,5−ジイル)ビスメチレン基等が挙げられる。
これらの中でも、表面改質効果の観点から、エチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0022】
また、表面改質効果の観点から、式[1]中のnは1乃至10の整数が好ましい。
【0023】
このようなモノマーAとしては、例えば、以下の(A1)乃至(A5)に示した化合物が挙げられる。
【0024】
(A1)ビニル系炭化水素類:
(A1−1)脂肪族ビニル系炭化水素類;イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等。
(A1−2)脂環式ビニル系炭化水素類;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等。
(A1−3)芳香族ビニル系炭化水素類;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフルオレン、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン等。
【0025】
(A2)ビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル及びビニルケトン:
(A2−1)ビニルエステル;アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、ビニル(メタ)アクリレート等。
(A2−2)アリルエステル;マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、アリル(メタ)アクリレート等。
(A2−3)ビニルエーテル;ジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等。
(A2−4)アリルエーテル;ジアリルエーテル、ジアリルオキシエタン、トリアリルオキシエタン、テトラアリルオキシエタン、テトラアリルオキシプロパン、テトラアリルオキシブタン、テトラメタリルオキシエタン等。
(A2−5)ビニルケトン;ジビニルケトン、ジアリルケトン等。
【0026】
(A3)(メタ)アクリル酸エステル:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、グリセリン=トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンウレタンジ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタンジ(メタ)アクリレート、芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレート等。
【0027】
(A4)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量:200,300,400,600,1000など)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量:400,500,700など)ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(分子量:650など)ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ポリプロピレングリコール(分子量:700など)ジ(メタ)アクリレート等。
【0028】
(A5)含窒素ビニル系化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスマレイミド等。
【0029】
これらモノマーAは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用しても構わない。
【0030】
これらのうち好ましいものは、上記(A1−3)群の芳香族ビニル系炭化水素類、(A2)群のビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル及びビニルケトン、(A3)群の(メタ)アクリル酸エステル、(A4)群のポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物、並びに(A5)群の含窒素ビニル系化合物であり、より好ましくは(A3)群の(メタ)アクリル酸エステルである。特に好ましいものとして、親油性及び樹脂分散性の観点から、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0031】
[モノマーB]
本発明において、分子内に炭素原子数6乃至30の脂肪族炭化水素基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBは、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有することが好ましく、特に下記式[2]で表される化合物が好ましい。
【0032】
【化7】
上記式[2]中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数6乃至30の脂肪族炭化水素基を表し、Lは炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、mは0乃至30の整数を表す。
【0033】
が表す炭素原子数6乃至30の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ヘキシル基、エチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ヘキサデシル基(パルミチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、イソステアリル基、アラキル基、ベヘニル基、リグノセリル基、セロトイル基、モンタニル基、メリッシル基等の直鎖状又は分枝状アルキル基;シクロへキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ノルボルネニル基、メンチル基、アダマンチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基等の脂環基などが挙げられる。
これらの中でも、親油性及び滑り性の観点から、炭素原子数8乃至20の脂肪族炭化水素基が好ましく、例えば、ラウリル基、イソステアリル基が好ましい。
【0034】
が表す炭素原子数2乃至6のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
これらの中でも、表面改質効果の観点から、エチレン基が好ましい。
【0035】
また、表面改質効果の観点から、式[2]中のmは0が好ましい。
【0036】
このようなモノマーBとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(メタ)アクリレート、2−(ヘキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ラウリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ステアリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(イソステアリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(シクロヘキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリメチレングリコール=モノラウリルエーテル=(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコール=モノラウリルエーテル=(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコール=モノラウリルエーテル=(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール=モノステアリルエーテル=(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール=モノステアリルエーテル=(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール=モノラウリルエーテル=(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール=モノステアリルエーテル=(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール=モノイソステアリルエーテル=(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール=モノステアリルエーテル=(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらモノマーBは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用しても構わない。
【0037】
重合性化合物の反応性(重合性)や重合して得られる高分岐ポリマーの表面改質効果の観点から、モノマーBは、モノマーAのモル数に対して400〜1500mol%量で使用され、好ましくは400〜1000mol%量、より好ましくは500〜700mol%量で使用される。
【0038】
[モノマーD]
本発明で用いる重合性化合物は、前記モノマーA及びモノマーBに加えて、モノマーDとして下記式[3]で表される化合物を含んでいてもよい。
【0039】
【化8】
上記式[3]中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、Lは炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、kは1乃至30の整数を表す。
【0040】
が表す炭素原子数1乃至5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、tert−アミル基、sec−イソアミル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0041】
が表す炭素原子数2乃至6のアルキレン基としては、上述の式[2]中のLとして例示したものと同様の基が挙げられる。
これらの中でも、表面改質効果の観点から、エチレン基、メチルエチレン基が好ましい。
【0042】
また、表面改質効果の観点から、式[3]中のkは1乃至10の整数が好ましい。
【0043】
このようなモノマーDとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(エチレングリコールユニット数:2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23など)、ポリエチレングリコール=モノメチルエーテル=(メタ)アクリレート(エチレングリコールユニット数:2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23など)、ポリエチレングリコール=モノエチルエーテル=(メタ)アクリレート(エチレングリコールユニット数:2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23など)、ポリエチレングリコール=モノブチルエーテル=(メタ)アクリレート(エチレングリコールユニット数:2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23など)、プロピレングリコール=モノメチルエーテル=(メタ)アクリレート、プロピレングリコール=モノエチルエーテル=(メタ)アクリレート、プロピレングリコール=モノブチルエーテル=(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール=モノメチルエーテル=(メタ)アクリレート(プロピレングリコールユニット数:2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23など)、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらモノマーDは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用しても構わない。
【0044】
これらのうち好ましいものとして、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(エチレングリコールユニット数:2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23など)、ポリエチレングリコール=モノメチルエーテル=(メタ)アクリレート(エチレングリコールユニット数:2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23など)が挙げられる。これらの中でも、テトラエチレングリコール=モノメチルエーテル=(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコール=モノメチルエーテル=(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0045】
[その他のモノマー]
本発明で用いる重合性化合物は、本発明の効果を損わない限り、前記モノマーA、モノマーB、モノマーDに属さない、その他のモノマーを含んでもいてもよい。
その他のモノマーとしては、分子内に1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーであれば特に制限はないが、ビニル化合物又は(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
このようなモノマーとしては、例えば、以下の(1)、(2)に示す化合物が挙げられる。
【0046】
(1)含フッ素モノマー:
2−(トリフルオロメチル)アクリル酸、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等。
【0047】
(2)含ケイ素モノマー:
3−(トリエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシ(ビニル)シラン、トリエトキシ(ビニル)シラン、トリス(2−メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、ジメトキシ(メチル)(ビニル)シラン、4−(トリメトキシシリル)スチレン等。
【0048】
[重合開始剤C]
本発明において、重合開始剤Cとしては、好ましくはアゾ系重合開始剤が用いられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、以下の(1)乃至(5)に示す化合物が挙げられる。
【0049】
(1)アゾニトリル化合物:
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等。
【0050】
(2)アゾアミド化合物:
2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−(1−ヒドロキシブチル))プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等。
【0051】
(3)環状アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)ジスルフェートジヒドレート、2,2’−アゾビス(2−(1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド等。
【0052】
(4)アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)テトラヒドレート等。
【0053】
(5)その他:
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボン酸メチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロメチル)エチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロブチル)エチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロヘキシル)エチル)等。
【0054】
これらの中でも、得られる親油性高分岐ポリマーの前記成分(a)多官能モノマーへの分散性の観点から、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好ましい。
【0055】
重合開始剤Cは、モノマーAのモル数に対して、5〜200mol%量で使用され、好ましくは20〜200モル%量、より好ましくは20〜100モル%量で使用される。
【0056】
[親油性高分岐ポリマーの製造方法]
本発明の親油性高分岐ポリマーは、前述のモノマーA及びモノマーBと、所望によりモノマーDとを、該モノマーAに対して所定量の重合開始剤Cの存在下で重合させることにより得られる。該重合方法としては公知の方法、例えば、溶液重合、分散重合、沈殿重合、及び塊状重合等が挙げられ、中でも溶液重合又は沈殿重合が好ましい。特に分子量制御の点から、有機溶媒中での溶液重合によって反応を実施することが好ましい。
【0057】
このとき用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化物類;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類又はエステルエーテル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0058】
これらのうち好ましいのは、芳香族炭化水素類、ハロゲン化物類、エステル類、エステルエーテル類、エーテル類、ケトン類、アルコール類、アミド類等であり、特に好ましいものはベンゼン、トルエン、キシレン、o−ジクロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等である。
【0059】
上記重合反応を有機溶媒の存在下で行う場合、前記モノマーA1質量部に対する前記有機溶媒の質量は、通常3〜100質量部であり、好ましくは5〜50質量部である。
【0060】
重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、N等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
重合温度は、反応混合物の沸点以下であれば任意であるが、重合効率と分子量調節の点から、好ましくは50〜200℃であり、さらに好ましくは80〜150℃であり、80〜130℃がより好ましい。
反応時間は、反応温度や、モノマーA、モノマーB、重合開始剤C並びに所望によりモノマーDの種類及び割合、重合溶媒種等によって変動するものであるため一概には規定できないが、好ましくは30〜720分、より好ましくは40〜540分である。
重合反応の終了後、得られた親油性高分岐ポリマーを任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行う。反応溶液から高分子を回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。
【0061】
上記親油性高分岐ポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,000〜400,000、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは1,000〜50,000である。
【0062】
本発明の重合性組成物において、成分(b)親油性高分岐ポリマーは、重合性組成物から得られる硬化膜又はハードコートの表面に親油性及び滑り性を付与する表面改質剤としての役割を備える。
成分(b)親油性高分岐ポリマーは、成分(a)活性エネルギー線重合性多官能モノマー100質量部に対し、0.001〜20質量部、例えば0.01〜10質量部の量で使用することが好ましい。
また、成分(b)親油性高分岐ポリマーは、下記に示す重合性組成物を溶解又は分散させることができる溶媒に溶解又は分散したワニス形態で、重合性組成物に配合することもできる。
【0063】
<(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤>
上記成分(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤(以下、単に成分(c)重合開始剤とも称する)は、例えば紫外線(光)等の活性エネルギー線照射時に活性ラジカルを生成する化合物(光ラジカル重合開始剤)であれば特に限定されることなく使用できる。
このような光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン系化合物、アルキルフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アジド系化合物、ジアゾ系化合物、o−キノンジアジド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾフェノン類、ビスクマリン、ビスイミダゾール化合物、有機過酸化物、チタノセン化合物、チオール化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、トリクロロメチルトリアジン化合物、あるいはヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物などのオニウム塩化合物等が用いられる。
これら重合開始剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
上記ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等を挙げることができる。
【0065】
上記アルキルフェノン系化合物としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)−2−メチルプロパン−1オン、フェニルグリオキシル酸メチル、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン等を挙げることができる。
【0066】
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、1−クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等を挙げることができる。
【0067】
上記アジド系化合物としては、例えば、p−アジドベンズアルデヒド、p−アジドアセトフェノン、p−アジド安息香酸、p−アジドベンザルアセトフェノン、4,4’−ジアジドカルコン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフィド、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドスチルベン等を挙げることができる。
【0068】
上記ジアゾ系化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、2,2’−アゾビス(N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−(1−ヒドロキシブチル))プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、1−ジアゾ−2,5−ジエトキシ−4−p−トリルメルカプトベンゼンボロフルオリド、1−ジアゾ−4−N,N−ジメチルアミノベンゼンクロリド、1−ジアゾ−4−N,N−ジエチルアミノベンゼンボロフルオリド等を挙げることができる。
【0069】
上記o−キノンジアジド系化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−(2)−4−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノンジアジド−(2)−5−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−(2)−4−スルホニルクロリド等を挙げることができる。
【0070】
上記アシルホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
【0071】
上記オキシムエステル系化合物としては、例えば、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等を挙げることが出来る。
【0072】
上記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、ベンジル等を挙げることができる。
【0073】
上記ビスクマリンとしては、例えば、3,3’−カルボニルビス(7−(ジエチルアミノ)−2H−クロメン−2−オン)(みどり化学(株)でBC(CAS[63226−13−1])として市販されている)等を挙げることができる。
【0074】
上記ビスイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0075】
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジ−tert−ブチル等を挙げることが出来る。
【0076】
上記チタノセン化合物としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(2,6−ジフルオロフェニル)ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等を挙げることができる。
【0077】
上記成分(c)重合開始剤の中でも、特にアルキルフェノン化合物が好ましい。アルキルフェノン系光重合開始剤として市販の光重合開始剤を使用することができ、例えば、BASFジャパン(株)製:IRGACURE(登録商標)651、同184、同959、同127、同907、同369、同379EG、DAROCUR(登録商標)1173、同MBF等を挙げることができる。
【0078】
成分(c)重合開始剤は、前記成分(a)多官能モノマー100質量部に対し、1〜20質量部の量にて、好ましくは1〜10質量部の量にて使用することが好ましい。
【0079】
本発明の重合性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合してよい。
【0080】
<(d)溶媒>
本発明の重合性組成物は、溶媒に溶解又は分散してワニスの形態(膜形成材料)とすることもできる。
上記ワニスの形態において使用する溶媒としては、前記(a)乃至(c)成分並びにその他成分を溶解又は分散するものであればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化物類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸3−メトキシブチル、γ−ブチロラクトン、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のエステル類又はエステルエーテル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジ−n−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類などの有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は一種を単独で使用してもよく、また二種以上の有機溶媒を混合して使用してもよい。
また上記(a)乃至(c)成分並びにその他成分を溶媒に溶解又は分散させる濃度は任意であるが、前記(a)乃至(c)成分及びその他成分(固形分)と溶媒の総質量(合計質量)に対して、固形分濃度が0.5〜80質量%であり、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは1〜60質量%とすることが好ましい。
こうして得られたワニスは、事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過したものでもよい。
【0081】
<硬化膜>
本発明の重合性組成物又は該組成物を溶媒に溶解又は分散させたワニスは、基材上にコーティングして光重合(硬化)させることにより、硬化膜や積層体などの成形品を成すことができる。こうして得られる硬化膜もまた本発明の対象である。
【0082】
前記基材としては、例えば、プラスチック材料[ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合物)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合物)樹脂、ノルボルネン系樹脂等]、FRP(繊維強化プラスチック)、金属、木材、紙、ガラス、二酸化ケイ素、スレート等を挙げることができ、中でも好ましくはプラスチック材料である。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体であってもよい。
【0083】
本発明の重合性組成物、好ましくはワニス形態の重合性組成物を、基材上にキャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等を適宜選択して塗布し、その後、ホットプレート又はオーブン等で乾燥して膜を形成することができる。
これらの塗布方法の中でも短時間で塗布できることから揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、容易に均一な塗布を行うことができるという利点より、スピンコート法を用いることが望ましい。また、簡単に塗布することができ、かつ、大面積に塗装ムラがなく平滑な塗膜を形成することができるという利点より、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法を用いることが望ましい。
【0084】
上記コーティング後、好ましくは続いてホットプレート又はオーブン等で予備乾燥(プリベーク)した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して光硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV−LED等が使用できる。
その後、ポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより、最終的に重合を完結させることができる。
なお、コーティングにより形成された膜の厚さは、乾燥、硬化後において、通常0.01〜50μm、好ましくは0.05〜50μmである。
【0085】
<ハードコート層を備える積層体>
また本発明は、上記重合性組成物、好ましくはワニスの形態の上記重合性組成物を、フィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜に紫外線を照射し硬化する工程により形成されている、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムも対象とする。
ここで使用する基材や塗布方法、紫外線等のエネルギー線照射については、前述の<硬化膜>における基材、コーティング方法、活性エネルギー線照射の通りである。
本発明のハードコートフィルムにおいては、前記ハードコート層の膜厚は1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、その表面に親油性及び滑り性を有する硬化膜を形成することができる重合性組成物を得ることができる。本発明の重合性組成物は、例えばLCD、PDP、タッチパネルなどの各種ディスプレイ表面の親油性ハードコート層の材料として好適に用いられる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0088】
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF−804L、GPC KF−805L
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(2)バーコート塗布
装置:(株)エスエムテー製 PM−9050MC
バー:オーエスジーシステムプロダクツ(株)製 A−Bar OSP−22、最大膜厚22μm(ワイヤーバー#9相当)
塗布速度:4.0m/分
(3)オーブン
装置:アドバンテック東洋(株)製 無塵乾燥器 DRC433FA
(4)UV照射装置
装置:アイグラフィックス(株)製 H02−L41
(5)接触角測定
装置:協和界面科学(株)製 DropMaster DM−501
測定温度:20℃
(6)動摩擦係数μ測定
装置:新東科学(株)製 荷重変動型摩擦磨耗試験システム TRIBOGEAR HHS2000
プローブ:0.6mmR サファイアピン
荷重:50g
測定速度:1mm/秒
走査距離:1cm
【0089】
また、略記号は以下の意味を表す。
HDDM:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート[新中村化学工業(株)製 NKエステルHD−N]
4EDM:テトラエチレングリコールジメタクリレート[日油(株)製 ブレンマー(登録商標)PDE−200]
9EDM:ノナエチレングリコールジメタクリレート[日油(株)製 ブレンマー(登録商標)PDE−400]
LA:ラウリルアクリレート[大阪有機化学工業(株)製 LA]
ISTA:イソステアリルアクリレート[大阪有機化学工業(株)製 ISTA]
4ELA:テトラエチレングリコール=モノラウリルエーテル=アクリレート[日油(株)製 ブレンマー(登録商標)ALE−200]
4EMM:テトラエチレングリコール=モノメチルエーテル=メタクリレート[日油(株)製 ブレンマー(登録商標)PME−200]
9EMM:ノナエチレングリコール=モノメチルエーテル=メタクリレート[日油(株)製 ブレンマー(登録商標)PME−400]
AMBN:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V−59]
UV7600:6官能ウレタンアクリレート[日本合成化学工業(株)製 紫光(登録商標)UV7600B]
I184:1−ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)184]
MIBK:メチルイソブチルケトン
【0090】
[実施例1]親油性高分岐ポリマーHBP1の製造
50mL反応フラスコに、MIBK13gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の30mL反応フラスコに、モノマーAとしてHDDM1.3g(5mmol)、モノマーBとしてLA6.0g(25mmol、モノマーAに対して500mol%)、開始剤CとしてAMBN0.5g(2.5mmol、モノマーAに対して50mol%)、及びMIBK13gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却した。
前述の50mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、HDDM、LA、AMBNが仕込まれた前述の30mL反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
この反応混合物を室温(およそ25℃)に冷却し、目的とする高分岐ポリマー(HBP1)を、ポリマー濃度23質量%のMIBK溶液として33.1g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6,900、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は3.2であった。
【0091】
[実施例2]親油性高分岐ポリマーHBP2の製造
LAの使用量を8.4g(35mmol、モノマーAに対して700mol%)に、MIBKの使用量を各19gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に操作し、目的とする高分岐ポリマー(HBP2)を、ポリマー濃度21質量%のMIBK溶液として48.3g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5,600、分散度:Mw/Mnは3.3であった。
【0092】
[実施例3]親油性高分岐ポリマーHBP3の製造
LAの使用量を12.0g(50mmol、モノマーAに対して1000mol%)に、MIBKの使用量を各19gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に操作し、目的とする高分岐ポリマー(HBP3)を、ポリマー濃度26質量%のMIBK溶液として51.9g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6,600、分散度:Mw/Mnは3.0であった。
【0093】
[実施例4]親油性高分岐ポリマーHBP4の製造
モノマーAを4EDM1.7g(5mmol)に、MIBKの使用量を各10gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に操作し、目的とする高分岐ポリマー(HBP4)を、ポリマー濃度29質量%のMIBK溶液として27.9g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6,300、分散度:Mw/Mnは2.8であった。
【0094】
[実施例5]親油性高分岐ポリマーHBP5の製造
モノマーAを9EDM2.8g(5mmol)に、MIBKの使用量を各17gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に操作し、目的とする高分岐ポリマー(HBP5)を、ポリマー濃度22質量%のMIBK溶液として42.2g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,800、分散度:Mw/Mnは4.2であった。
【0095】
[実施例6]親油性高分岐ポリマーHBP6の製造
モノマーBをISTA8.1g(25mmol、モノマーAに対して500mol%)に、AMBNの使用量を0.6g(3mmol、モノマーAに対して60mol%)に、MIBKの使用量を各8gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に操作し、目的とする高分岐ポリマー(HBP6)を、ポリマー濃度39質量%のMIBK溶液として25.1g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,500、分散度:Mw/Mnは2.5であった。
【0096】
[実施例7]親油性高分岐ポリマーHBP7の製造
モノマーBを4ELA10.4g(25mmol、モノマーAに対して500mol%)に、AMBNの使用量を0.6g(3mmol、モノマーAに対して60mol%)に、MIBKの使用量を各8gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に操作し、目的とする高分岐ポリマー(HBP7)を、ポリマー濃度45質量%のMIBK溶液として27.4g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは9,900、分散度:Mw/Mnは3.0であった。
【0097】
[実施例8]親油性高分岐ポリマーHBP8の製造
50mL反応フラスコに、MIBK13gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の30mL反応フラスコに、モノマーAとしてHDDM1.3g(5mmol)、モノマーBとしてLA6.0g(25mmol、モノマーAに対して500mol%)、モノマーDとして9EMM0.3g(0.5mmol、モノマーAに対して10mol%)、開始剤CとしてAMBN0.6g(3mmol、モノマーAに対して60mol%)、及びMIBK13gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却した。
前述の50mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、HDDM、LA、9EMM、AMBNが仕込まれた前述の30mL反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
この反応混合物を室温(およそ25℃)に冷却し、目的とする高分岐ポリマー(HBP8)を、ポリマー濃度24質量%のMIBK溶液として33.4g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6,400、分散度:Mw/Mnは3.0であった。
【0098】
[実施例9]親油性高分岐ポリマーHBP9の製造
LAの使用量を12.0g(50mmol、モノマーAに対して1000mol%)に、モノマーDを4EMM4.1g(15mmol、モノマーAに対して300mol%)に、それぞれ変更した以外は実施例8と同様に操作し、目的とする高分岐ポリマー(HBP9)を、ポリマー濃度41質量%のMIBK溶液として43.3g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは9,600、分散度:Mw/Mnは3.4であった。
【0099】
[製造例1]親油性高分岐ポリマーHBP10の製造
LAの使用量を1.2g(5mmol、モノマーAに対して100mol%)に、MIBKの使用量を各8gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に操作し、目的とする高分岐ポリマー(HBP10)を、ポリマー濃度16質量%のMIBK溶液として18.0g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,200、分散度:Mw/Mnは4.3であった。
【0100】
[製造例2]親油性高分岐ポリマーHBP11の製造
LAの使用量を3.6g(15mmol、モノマーAに対して300mol%)に、AMBNの使用量を0.6g(3mmol、モノマーAに対して60mol%)に、MIBKの使用量を各8gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に操作し、目的とする高分岐ポリマー(HBP11)を、ポリマー濃度26質量%のMIBK溶液として20.6g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは7,000、分散度:Mw/Mnは3.3であった。
【0101】
実施例1乃至9及び製造例1、2で得られた高分岐ポリマーHBP1乃至HBP11の、モノマー及び開始剤の構成と配合量、重量平均分子量Mw、分散度:Mw/Mn、ポリマー濃度[質量%]を表1に併せて示す。
【0102】
【表1】
【0103】
[実施例10乃至18及び比較例1乃至3]
以下の各成分を混合し、不揮発分濃度40質量%の重合性組成物を調製した。
(1)多官能モノマー:UV7600 100質量部
(2)表面改質剤:表2に記載の表面改質剤 1質量部(高分岐ポリマーとして)
(3)重合開始剤:I184 6質量部
(4)溶媒:MIBK 表2に記載の量
この重合性組成物を、A4サイズのPETフィルム[東洋紡(株)製 コスモシャイン(商標登録)A4100、厚み125μm]上(易接着処理面側)に、バーコート塗布し塗膜を得た。この塗膜を100℃のオーブンで3分間乾燥させ溶媒を除去した。得られた膜を、空気雰囲気下、露光量300mJ/cmのUV光を照射し露光することで、厚さおよそ5〜6μmのハードコート層を有するハードコートフィルムを作製した。
【0104】
得られたハードコート層の、水及びオレイン酸の接触角、動摩擦係数μを評価した。各評価の手順を以下に示す。また、結果を表2に併せて示す。
[接触角]
プローブ液体(水又はオレイン酸)1μLをハードコート層表面に付着させて10秒後(水)又は60秒後(オレイン酸)の接触角を5回測定し、その平均値を接触角とした。
[動摩擦係数]
ハードコート層表面の5箇所の動摩擦係数を測定し、その平均値を動摩擦係数とした。動摩擦係数は値が小さいほど使用プローブとの摩擦が小さいことを示し、滑り性の一目安となる。タッチパネル等の表示素子表面に適用されるハードコート層に求められる動摩擦係数としては、例えば0.1以下であることが望ましい。
【0105】
【表2】
【0106】
表2に示すように、表面改質剤を使用していないハードコート層(比較例1)と比べ、本発明の親油性高分岐ポリマー(HBP1乃至HBP9)を表面改質剤として添加したハードコート層(実施例10乃至18)では、オレイン酸の接触角が小さく、また動摩擦係数も0.1以下の小さい値という結果を得た。すなわち本発明の親油性高分岐ポリマーは、僅かな添加量でハードコート表面に親油性を付与でき、かつ優れた滑り性を有する表面を与えるという結果を得た。
一方、HBP10及びHBP11を添加したハードコート層(比較例2、3)では、前記実施例と比べて動摩擦係数が極めて大きい結果となり、該高分岐ポリマーではハードコート層表面に十分な滑り性を付与できないとする結果となった。