【実施例】
【0030】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、アクリル樹脂のエポキシ当量、ガラス転移温度、及び数平均分子量は、下記の方法で測定したものである。
[エポキシ当量の測定方法]
塩酸−ピリジン法により測定した。樹脂に、塩酸−ピリジン溶液25mlを加え、130℃で1時間、加熱溶解した後、フェノールフタレインを指示薬として0.1N−水酸化カリウムアルコール溶液で滴定した。消費した0.1N−水酸化カリウムアルコール溶液の量によってエポキシ当量を算出した。
【0031】
[ガラス転移温度の測定方法]
DSC法(示差走査熱量測定法)により求めた。
測定装置:示差走査熱量計(TA INSTRUMENTS株式会社製「DSC Q−100」)
雰囲気条件:窒素雰囲気下
温度範囲:−50〜150℃
昇温速度:5℃/分
【0032】
[重量平均分子量の測定方法]
GPCにより測定した。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0033】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0034】
(合成例1:アクリル樹脂(A−1)の合成)
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、キシレン76質量部を仕込み、窒素雰囲気下に135℃にまで昇温した。そこへ、スチレン(以下、「St」と略記する。)18質量部、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と略記する。)42質量部、n−ブチルメタクリレート(以下、「nBMA」と略記する。)4質量部、2−エチルヘキシルメタクリレート(以下、「2EHMA」と略記する。)2質量部、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」と略記する。)32質量部、n−ブチルアクリレート(以下、「BA」と略記する。)2質量部、および2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(以下、「P−TA」と略記する。)0.3質量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(以下、「P−O」と略記する。)5質量部とからなる混合物を6時間かけて滴下した。滴下終了後も同温度にて10時間保持し、重合反応を行った後、160℃で20mmHgの減圧下に溶剤をのぞき、分子形態パラメータ0.47、数平均分子量2,200、ガラス転移温度52℃、エポキシ当量460g/eqなる固形のアクリル樹脂(A−1)を得た。
【0035】
(合成例2:アクリル樹脂(A−2)の合成)
単量体及び重合開始剤の組成を、St 20質量部、MMA 44質量部、nBMA 6質量部、イソブチルメタクリレート(以下、「iBMA」と略記する。)3質量部、GMA 24質量部、エチルアクリレート(以下、「EA」と略記する。)3質量部、およびP−TA 5.3質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、分子形態パラメータ0.42、数平均分子量2,100、ガラス転移温度52℃、エポキシ当量600g/eqなる固形のアクリル樹脂(A−2)を得た。
【0036】
(合成例3:アクリル樹脂(A−3)の合成)
単量体及び重合開始剤の組成を、St 25質量部、MMA 38質量部、nBMA 4質量部、2EHMA 2質量部、GMA 26質量部、アクリル酸イソブチル(以下、「iBA」と略記する。)4質量部、エチレングリコールジメタクリレート(以下、「EDMA」と略記する。)1質量部およびP−O 8質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、分子形態パラメータ0.46、数平均分子量1,700、ガラス転移温度41℃、エポキシ当量570g/eqなる固形のアクリル樹脂(A−3)を得た。
【0037】
(合成例4:アクリル樹脂(A−4)の合成)
単量体及び重合開始剤の組成を、St 18質量部、MMA 38質量部、nBMA 8質量部、GMA 30質量部、 nBA 1質量部、EDMA 5質量部およびP−O 5.3質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、分子形態パラメータ0.40、数平均分子量2,600、ガラス転移温度60℃、エポキシ当量490g/eqなる固形のアクリル樹脂(A−4)を得た。
【0038】
(合成例5:アクリル樹脂(RA−1)の合成)
単量体及び重合開始剤の組成を、St 20質量部、MMA 30質量部、nBMA 9質量部、nBA 8質量部、GMA 28質量部、iBA 5質量部およびP−O 3.5質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、分子形態パラメータ0.57、数平均分子量3,300、ガラス転移温度50℃、エポキシ当量520g/eqなる固形のアクリル樹脂(RA−1)を得た。
【0039】
(合成例6:アクリル樹脂(RA−2)の合成)
単量体及び重合開始剤の組成を、St 18質量部、MMA 43質量部、nBMA 10質量部、2EHMA 2質量部、GMA 25質量部、iBA 2質量部およびP−O 5.3質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、分子形態パラメータ0.52、数平均分子量2,200、ガラス転移温度50℃、エポキシ当量580g/eqなる固形のアクリル樹脂(RA−2)を得た。
【0040】
(合成例7:アクリル樹脂(RA−3)の合成)
単量体及び重合開始剤の組成を、St 25質量部、MMA 36質量部、iBMA 7質量部、2EHMA 1質量部、GMA 30質量部、nBA 1質量部およびP−O 6質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、分子形態パラメータ0.53、数平均分子量2,200、ガラス転移温度56℃、エポキシ当量490g/eqなる固形のアクリル樹脂(RA−3)を得た。
【0041】
上記の合成例1〜7で合成したアクリル樹脂(A−1)〜(A−4)及び(RA−1)〜(RA−3)の単量体・重合開始剤組成及び性状値を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
(実施例1:粉体塗料(1)の調製)
合成例1で得られたアクリル樹脂(A−1)82質量部、ドデカンジカルボン酸(以下、「DDDA」と略記する。)18質量部、ベンゾイン0.5質量部及び表面調整剤(ESTRON製「レジフローLF」;以下、「表面調整剤(1)」と略記する。)1質量部を配合した配合物を、二軸混練機(ツバコー横浜販売株式会社製「APV・ニーダーMP−2015型」)を使用して溶融混練した後、微粉砕し、さらに、200メッシュの金網で分級し、粉体塗料(1)を得た。
【0044】
(実施例2:粉体塗料(2)の調製)
実施例1で配合したアクリル樹脂(A−1)82質量部及びDDDA 18質量部を、アクリル樹脂(A−2)86質量部及びDDDA 14質量部に変更した以外は、実施例1と同様に操作することにより、粉体塗料(2)を得た。
【0045】
(実施例3:粉体塗料(3)の調製)
実施例1で配合したアクリル樹脂(A−1)82質量部及びDDDA 18質量部を、アクリル樹脂(A−3)85質量部及びDDDA 15質量部に変更した以外は、実施例1と同様に操作することにより、粉体塗料(3)を得た。
【0046】
(実施例4:粉体塗料(4)の調製)
実施例1で配合したアクリル樹脂(A−1)82質量部及びDDDA 18質量部を、アクリル樹脂(A−4)83質量部及びDDDA 17質量部に変更した以外は、実施例1と同様に操作することにより、粉体塗料(4)を得た。
【0047】
(比較例1:粉体塗料(R1)の調製)
実施例1で配合したアクリル樹脂(A−1)82質量部及びDDDA 18質量部を、アクリル樹脂(RA−1)84質量部及びDDDA 16質量部に変更した以外は、実施例1と同様に操作することにより、粉体塗料(R1)を得た。
【0048】
(比較例2:粉体塗料(R2)の調製)
実施例1で配合したアクリル樹脂(A−1)82質量部及びDDDA 18質量部を、アクリル樹脂(RA−2)85質量部及びDDDA 15質量部に変更した以外は、実施例1と同様に操作することにより、粉体塗料(R2)を得た。
【0049】
(比較例3:粉体塗料(R3)の調製)
実施例1で配合したアクリル樹脂(A−1)82質量部及びDDDA 18質量部を、アクリル樹脂(RA−3)83質量部及びDDDA 17質量部に変更した以外は、実施例1と同様に操作することにより、粉体塗料(R3)を得た。
【0050】
[評価用硬化塗膜の作製]
上記で得られた粉体塗料を未処理アルミ板(A−1050P)(7cm×15cm)に、焼き付け後の膜厚が80〜120μmとなるように静電粉体塗装した後、160℃で20分間焼き付けを行い、評価用硬化塗膜を作製した。
【0051】
[耐糸錆性の評価]
上記で得られた評価用硬化塗膜にカッターナイフで基材の素地に達するように13cmの直線の傷を2本入れ、CASS試験機にて次の試験を行った。温度50℃、噴霧液量1.2〜1.8cc/h、噴霧圧力0.1MPaの条件下、塩水(塩化銅(II)水和物2.6g、氷酢酸10cc、並塩500gを10Lのイオン交換水に溶解し調製)を6時間噴霧する試験1と、温度60℃、湿度85%の条件下96時間放置する試験2とを1サイクルとして、合計5サイクル行った。CASS試験終了後、塗装板の傷から生じた糸錆を目視にて確認し、耐糸錆性を下記の基準に従い評価した。
◎:直線に入れた傷に対して、糸錆が垂直方向に1mm未満である。
○:直線に入れた傷に対して、糸錆が垂直方向に1mm以上、2mm未満である。
×:直線に入れた傷に対して、糸錆が垂直方向に2mm以上である。
【0052】
上記の実施例1〜4で調製した粉体塗料(1)〜(4)及び比較例1〜3で調製した粉体塗料(R1)〜(R3)の配合組成及び評価結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例1〜4の評価結果から、本発明の粉体塗料から得られる塗膜は耐糸錆性に優れることが確認された。
【0055】
一方、比較例1〜3は、本発明の粉体塗料の成分であるアクリル樹脂(A)の分子形態パラメータα値が0.5以上である例であるが、得られる塗膜の耐糸錆性が劣ることが確認された。