【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国土技術政策総合研究所「サンゴ礁海岸保全モデルの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サンゴ礁が卓越する離島付近では、死滅したサンゴが砂礫となり、気海象条件などにより、サンゴ礫が島を形成し、陸地化している箇所がある。また、海岸侵食が卓越している地点では海岸保全を目的に、石材やブロックなどで形成される離岸堤が建設されることがあるが、離岸堤背後の砂浜は回復することがあるものの、離岸堤周辺は洗掘されることが多い。また、離島の保全は現在の島の管理はもちろん、周辺のサンゴ礫が水面上まで堆積して陸地している箇所の保全に加え、新たにサンゴ礫を用いて陸地を形成することができれば、国土保全に資することができる。
【0005】
サンゴに関しては複数の技術が特許文献1〜7のように提案されているものの、サンゴ礫を用いて陸地化する技術に関してはいまだ提案はない。すなわち、特許文献1〜5は生存しているサンゴの移設、増殖、保護を目的としているが、サンゴは水面下のみで生息するため、これらの方法では陸地化することは難しい。また、特許文献6の方法は水底に堆積したサンゴ礫の飛散防止に過ぎず、これによる堆積効果は期待できない。また、特許文献7の構造体・方法は、網目状で全面が略閉塞される籠体の中にサンゴ石灰石を収納することでサンゴ育成体を提供するもので、堆積を促進するものではない。さらに、自然界ではサンゴ礫で陸地化することはあるが、意図した場所にサンゴ礫を用いて陸地を形成する技術は未だない。
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、サンゴ礫堆積による陸化方法、そのための透過構造物および構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためのサンゴ礫堆積による陸化方法は、サンゴ礫を堆積させ陸化する方法であって、サンゴ礫を捕捉可能な複数の開口を有する
面状の捕捉部を水底から立ち上がるように備える透過性構造物を
、水塊が
前記面状の捕捉部の複数の開口を通過可能な方向に設置し、
水塊が前記捕捉部の複数の開口を通過するとき前記捕捉部が前記水塊中のサンゴ礫を捕捉
し、前記捕捉されたサンゴ礫を
前記捕捉部の前面側に堆積させる。
【0008】
このサンゴ礫堆積による陸化方法によれば、透過性構造物は、波や潮流などにより移動する水塊を透過する一方、水塊の移動に伴い移動するサンゴ礫を捕捉することができる。この捕捉されたサンゴ礫は堆積し、ある程度の堆積厚になるまでサンゴ礫内の透過性により水塊は作用し続け、引き続きサンゴ礫は移動し堆積する。そして、サンゴ礫の堆積厚が増加して透過性が低下すると、堆積したサンゴ礫が新しい水底地盤となって、水塊はより高い位置まで移動し、その結果、サンゴ礫は順次、高い位置まで堆積する。このようにして、サンゴ礫の堆積が続くことで、堆積したサンゴ礫により陸化が実現する。
【0009】
上記サンゴ礫堆積による陸化方法において
、前記捕捉部が前記水塊の移動方向に対しほぼ直交するように設置されることが好ましい。これにより、サンゴ礫を効率的に捕捉し堆積させることができる。
【0010】
また、前記透過性構造物の設置予定位置周辺に存在するサンゴ礫を採取し、前記採取したサンゴ礫の長手方向の寸法および短手方向の寸法を計測し、前記計測結果から平均的な寸法を算出し、前記平均的な寸法に基づいて前記開口のサイズを設定することが好ましい。実際のサンゴ礫に近似した平均的な寸法を得ることができ、サンゴ礫のより効率的な捕捉が可能となる。
【0011】
なお、前記開口のサイズを前記平均的な寸法の長手寸法以下および短手寸法以上に設定することが好ましい。
【0012】
上記目的を達成するための透過性構造物は、サンゴ礫を堆積させ陸化するための透過性構造物であって、サンゴ礫を捕捉可能な複数の開口を有する面状の捕捉部を水底から立ち上がるように備え、
前記開口のサイズは、前記サンゴ礫の平均的な寸法の長手寸法以下および短手寸法以上であり、水塊が前記面状の捕捉部の複数の開口を通過可能な方向に設置され、水塊が前記捕捉部の複数の開口を通過するとき前記捕捉部が前記水塊中のサンゴ礫を捕捉し、前記捕捉されたサンゴ礫を前記捕捉部の前面側に堆積させるためのものである。
【0013】
この透過性構造物によれば、波や潮流などにより移動する水塊を透過する一方、水塊の移動に伴い移動するサンゴ礫を捕捉することができる。この捕捉されたサンゴ礫は堆積し、ある程度の堆積厚になるまでサンゴ礫内の透過性により水塊は作用し続け、引き続きサンゴ礫は移動し堆積する。そして、サンゴ礫の堆積厚が増加して透過性が低下すると、堆積したサンゴ礫が新しい水底地盤となって、水塊はより高い位置まで移動し、その結果、サンゴ礫は順次、高い位置まで堆積する。このようにして、サンゴ礫の堆積が続くことで、堆積したサンゴ礫により陸化が実現する。
【0014】
なお、天端高さを順に変えた複数の前記捕捉部を所定間隔で配置するようにしてもよい。
【0015】
また
、上記サンゴ礫の平均的な寸法とは、たとえば、上述の平均的な寸法や過去のデータ等から得られた寸法であってよい。
【0016】
上記目的を達成するための構造体は、サンゴ礫を堆積させ陸化するための構造体であって、上述の透過性構造物を複数備える。
【0017】
この構造体によれば、複数の透過性構造物を設置することで、より広い範囲でサンゴ礫の堆積による陸化が期待できる。
【0018】
上記構造体としての第1の構造体は、サンゴ礫を堆積させ陸化するための構造体であって、上述の透過性構造物を複数備え、前記複数の透過性構造物が横方向に一列に並べられて設置されたものである。この構造体によれば、より幅広い範囲でサンゴ礫の堆積による陸化が期待できる。
【0019】
同じく第2の構造体は、サンゴ礫を堆積させ陸化するための構造体であって、上述の透過性構造物を複数備え、前記複数の透過性構造物が前記水塊の移動方向に離れて設置されたものである。この構造体によれば、透過性構造物を単独または複数一列で設置した場合、水塊の移動方向が一様であれば堆積が促進されるが、期間により水塊の移動が逆方向となった場合、堆積したサンゴ礫が破壊されることが予想される。そこで、複数の透過性構造物を水塊の移動方向に離して設置することで、水塊の移動が逆方向となったとしても、各透過性構造物の間の空間でサンゴ礫の捕捉が可能となる。
【0020】
同じく第3の構造体は、サンゴ礫を堆積させ陸化するための構造体であって、上述の透過性構造物を複数備え、複数の前記透過性構造物が横方向に一列に並べて設置され、さらに複数の前記透過性構造物が前記水塊の移動方向に離れて横方向に一列に並べて設置されるようにして、複数列が前記移動方向に離れて設置されたものである。この構造体によれば、より幅広い範囲でサンゴ礫の堆積による陸化が期待できるとともに、水塊の移動が逆方向となったとしても、各列の間の空間でサンゴ礫の捕捉が可能となる。
【0021】
上記第2,第3の構造体において、前記移動方向に離れて設置された前記透過性構造物は、それらの天端高さが前記移動方向の上流側から下流側に向けて順次に高くなるように構成されることが好ましい。水塊の移動方向の上流側では天端高さを低くし、移動方向下流側になるにつれて天端高さを高くすることで、水塊の移動が逆方向となったとしても、各透過性構造物の間の空間におけるサンゴ礫の捕捉がいっそう効率的になる。
【0022】
同じく第4の構造体は、サンゴ礫を堆積させ陸化するための構造体であって、上述の透過性構造物を複数備え、複数の前記透過性構造物が一領域を包囲するように設置され、さらに複数の前記透過性構造物が、前記一領域を包囲する前記複数の透過性構造物を包囲するように設置されたものである。かかる構造体の平面的設置形状例として、たとえば、同心円状、正方形状、長方形状、多角形状、長円形状などがある。
【0023】
上記第4の構造体において、前記各透過性構造物は、それらの天端高さが前記一領域のある内側から外側に向けて順次に低くなるように構成されることが好ましい。
【0024】
上記各構造体において、前記透過性構造物が移動しないように水底に対し固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、サンゴ礫堆積による陸化方法、そのための透過構造物および構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0028】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態による透過性構造物の基本的構成を示す斜視図である。なお、
図1等では、開口やサンゴ礫は、説明の便宜上、誇張して示されている。
【0029】
図1に示すように、本実施形態による透過性構造物10は、底板部11と、底板部11にほぼ垂直に設けられた垂直部12と、を備える。垂直部12は、捕捉部として平面状乃至平板状に構成され、平面に多数の開口13が形成されている。
【0030】
開口13のサイズは、サンゴ礫の代表寸法の長手寸法以下、短手寸法以上とする。これにより、垂直部12に設けられた多数の開口13により、水塊を通過させながらサンゴ礫を効率的に捕捉することができる。ここで、代表寸法とは、透過性構造物10の設置予定位置周辺に存在するサンゴ礫を採取して長手方向および短手方向の寸法を計測し、統計的処理により算出した平均的な長手方向の長さ、短手方向の長さとする。なお、たとえば、サンゴ礫の寸法に関する過去のデータ等に基づいて開口のサイズを設定するようにしてもよい。
【0031】
垂直部12は、たとえば、平板状のメッシュ部材を設けて構成することができ、多数の開口13は、メッシュ部材のメッシュから構成され、開口13のサイズは、メッシュ部材のメッシュサイズに対応する。上記例では、メッシュサイズは、サンゴ礫の平均的寸法の長手寸法以下で短手寸法以上のものが選択される。
【0032】
図1の透過性構造物10は、底板部11が水平になるように水底Gに設置され、多数の開口13を有する垂直部12が鉛直方向に立つ。このとき、垂直部12は、その平面が波や潮流などの水塊の移動方向xに直交するように位置決められる。また、透過性構造物10は、移動しないように底板部11でアンカー等の固定手段(図示省略)により水底Gに固定される。
【0033】
次に、
図1の透過性構造物10の作用効果について
図2を参照して説明する。
図2は、水底に設置された
図1の透過性構造物10の側面図で、サンゴ礫が捕捉され堆積する過程(a)〜(d)を概略的に示す。
【0034】
図2(a)のように、波や潮流などにより移動する水塊が透過性構造物10の垂直部12にほぼ直交するように移動方向xに流れ、多数の開口13を透過する。かかる水塊の移動に伴い水中を移動したサンゴ礫1が多数の開口13で捕捉され、
図2(b)のように、捕捉されたサンゴ礫1が底板部11やその周囲に堆積をはじめ、ある程度の堆積厚になるまで、堆積したサンゴ礫の透過性により、水塊は多数の開口13に作用し続け、引き続きサンゴ礫1は、水塊とともに移動し、多数の開口13に捕捉され堆積し続ける。
【0035】
図2(c)のように、サンゴ礫1の堆積厚が増加し、堆積したサンゴ礫1がサンゴ礫堆積物2となって、その透過性が低下すると、サンゴ礫堆積物2が新しい水底地盤となって、水塊の流れる高さがサンゴ礫堆積物2の上面よりも高い位置になる。その結果、サンゴ礫1は順次、より高い位置へと堆積し、サンゴ礫堆積物2の上面が上昇することとなる。
【0036】
図2(d)のように、サンゴ礫1の堆積が進むと、サンゴ礫堆積物2の上面がしだいに高くなるとともに、サンゴ礫堆積物2の下部が幅広で上部が幅狭となる前浜勾配が形成され、このため、水塊の移動方向がしだいに斜め上方の方向x’に変化する一方、透過性構造物10の天端が水面上よりも高い位置にある場合には、サンゴ礫1は水面上にまで打ち上げられて堆積し、その結果、サンゴ礫堆積物2の上面が水面から露出するようになる。
【0037】
すなわち、サンゴ礫堆積物2は、波により発生する岸沖方向の堆積作用と浸食作用がつりあう前浜勾配を形成しながら、サンゴ礫1は水面上まで堆積することが可能となる。なお、前浜勾配は、通常の砂浜では、高波浪時に前浜勾配はゆるくなり、静穏になると前浜勾配は急になることが知られている。つまり、来襲波の特性に応じて、海岸地形がより安定した形状に移行する。このときの岸沖方向の海岸の勾配が前浜勾配と言われる。また、前浜勾配は底質の粒形によっても異なる。
【0038】
以上のようにして、本実施形態によれば、透過性構造物10を設置した領域において、水中を水塊とともに移動するサンゴ礫1を捕捉し堆積させることで陸地化を図ることができる。すなわち、透過性構造物10を設置するのみで、自然の外力を活用することによりサンゴ礫1による陸地化が促進され、離島の保全が図られる。
【0039】
また、
図2(a)〜(d)のように、透過性構造物10の天端高さH(
図1)が水面高よりも高い場合、透過構造物10の天端が水面上よりも高い位置にあることで、サンゴ礫が水面上まで打ち上げられ堆積するので、サンゴ礫の堆積による陸化がいっそう実現し易くなる。
【0040】
また、透過性構造物10の天端高さが水面高よりも低い場合の堆積について
図10を参照して説明する。
図10は、
図2と同様の側面図で、透過性構造物10の天端高さが水面高よりも低い場合にサンゴ礫が捕捉され堆積する過程(a)〜(e)を概略的に示す。
【0041】
図10(a)〜(d)に示すように、当初は
図2(a)〜(c)と同様にサンゴ礫1が透過性構造物10の前面に堆積し、
図2(d)と同様にサンゴ礫堆積物2の上面が透過性構造物10の天端まで達した後に、
図10(e)のようにサンゴ礫1が透過性構造物10の上部を越えて透過性構造物10の背面に堆積しサンゴ礫堆積物2’が形成され、その後、
図10(f)のように透過性構造物10の背面側においてサンゴ礫1の堆積が進行する。このように、サンゴ礫1の堆積による陸化がいっそう実現し易くなる。
【0042】
なお、
図2の場合も、
図2(d)のように、サンゴ礫堆積物2の上面が透過性構造物10の天端まで達した後にさらにサンゴ礫1が堆積を続ける一方、
図10(e)(f)と同様にして透過性構造物10の背面側においてもサンゴ礫1の堆積が進行する。
【0043】
本実施形態の作用効果をさらに説明する。仮に、
図1のような透過性構造物ではなく、不透過性構造物を設置した場合、不透過性構造物の周辺が洗掘されることとなり、堆積とはまったく逆効果で、逆の結果となる。
【0044】
また、砂を対象とした場合、粒径が小さいため、砂を捕捉する透過性構造物の開口が小さくなり、これにより水塊の移動が阻害されてしまう。その結果、不透過性構造物を設置したケースに似た現象が生じることとなり、砂を対象とする透過性構造物の前面に砂が堆積することは無く、本実施形態のような堆積効果が成立しない。
【0045】
次に、本実施形態による別の二例について
図11,
図12を参照して説明する。
図11は本実施形態の別の第1例による透過性構造物の基本的構成を示す斜視図である。
図12は本実施形態の別の第2例による透過性構造物の基本的構成を示す斜視図である。
【0046】
図11のように、透過性構造物16は、
図1の底板部11を省略し、垂直部12の両端の下端で垂直部12に対し直交して張り出すように支持部材14,14を設けたものである。垂直部12はその両端の下端において、垂直部12の前後に延びた支持部材14,14により支持される。なお、透過性構造物16は支持部材14,14でアンカー等の固定手段(図示省略)により水底に固定される。
【0047】
図12のように、透過性構造物17は、
図1の底板部11を省略し、鉛直杭15,15を設置位置の水底に打設し、垂直部12をその両端で鉛直杭15,15に固定し支持するようにしたものである。
図12の例では、アンカー等の固定手段は不要となる。
【0048】
[第2の実施形態]
図3は第2の実施形態による透過性構造物を概略的に示す側面図である。
図4は
図1の透過性構造物を単独で設置した場合の問題点を説明するための側面図(a)(b)である。
【0049】
図3(a)(b)の透過性構造物20は、
図1と同様の構成であるが、底板部25に所定間隔で複数の垂直部21,22,23,24を設けた点が相違する。各垂直部21,22,23,24は、この順で天端高さが低く構成され、それぞれ
図1と同様に多数の開口を有する。
【0050】
図3(a)のように、透過性構造物20は、水塊の通常の移動が移動方向xである場合、移動方向xの上流側に天端高さの低い垂直部24を配置し、移動方向xの下流側に向けて順に天端高さの高い垂直部23,22,21を配置している。
【0051】
ここで、
図1の透過性構造物10を単独で設置した場合の問題点について説明する。
図4(a)のように水塊の移動方向xが一様であれば、サンゴ礫1の堆積が促進される。しかし、
図4(b)のように、期間により水塊の移動方向が逆方向axとなった場合、その水塊の移動により、それまでの間に堆積したサンゴ礫が破壊されてしまうおそれがある。
【0052】
上記問題に対し、本実施形態によれば、複数の垂直部24,23,22,21を、水塊の移動方向xの上流側については天端高さを低くし、移動方向xの下流側につれて天端高さを高くするようにして配置することで、
図3(b)のように、水塊の移動が移動方向xに対し逆方向axになったとしても、複数の垂直部21〜24がそれぞれ隣り合う各空間でサンゴ礫の捕捉・堆積が可能となるとともに、水塊が移動方向xに移動して堆積したサンゴ礫が移動して破壊されてしまうことを防止できる。
【0053】
図5は、本実施形態の別の例による構造体を概略的に示す側面図である。
図5の構造体30は、複数の透過性構造物10A,10B,10C,10Dから構成され、複数の透過性構造物10A〜10Dを水底に水塊の移動方向xに並べたものである。各透過性構造物10A〜10Dは、
図1の透過性構造物10と基本的構成は同一であるが、それらの垂直部12a,12b,12c,12dはそれらの天端高さが順に低く構成され、それぞれ
図1と同様に多数の開口を有する。
【0054】
図5の構造体30によれば、各透過性構造物10A〜10Dを、水塊の移動方向xに対し下流側から垂直部12a,12b,12c,12dの天端高さが順に低くなるように設置することで、
図3(a)(b)の複数の垂直部を有する透過性構造物20と同様の作用効果を得ることができ、水塊の移動が移動方向xに対し逆方向になったとしても、複数の透過性構造物10A〜10Dの各垂直部12a〜12dがそれぞれ隣り合う各空間でサンゴ礫の捕捉・堆積が可能となるとともに、水塊が移動方向xに移動して堆積したサンゴ礫が移動して破壊されてしまうことを防止できる。
【0055】
なお、
図3,
図5において、透過性構造物の各垂直部間の間隔は、サンゴ礫の堆積と堆積したサンゴ礫の破壊防止とが効率的に実現できるように適宜設定されることが好ましい。
【0056】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態による構造体を概略的に示す斜視図である。
図6の構造体40は、複数の透過性構造物10から構成され、複数の透過性構造物10を水底Gに水塊の移動方向xに対し直交するように横方向に一列に並べて設置したものである。各透過性構造物10は、
図1と同様の構成を有し、各垂直部12はそれぞれ多数の開口13を有する。
図6の構造体40によれば、複数の透過性構造物10を横方向に一列に並べることで、幅広い範囲においてサンゴ礫の捕捉・堆積が期待できる。
【0057】
図7は、本実施形態の別の例による構造体を概略的に示す斜視図である。
図7の構造体50は、複数の透過性構造物10Aと複数の透過性構造物10Bと複数の透過性構造物10Cとから構成され、複数の透過性構造物10Aを水底Gに水塊の移動方向xに対し直交するように横方向に一列aに並べ、複数の透過性構造物10Bを同じく移動方向xに対し直交するように横方向に一列bに並べ、複数の透過性構造物10Cを同じく移動方向xに対し直交するように横方向に一列cに並べて設置したものである。各透過性構造物10A〜10Cは、
図1の透過性構造物10と基本的構成は同一であるが、それらの垂直部12a,12b,12cはそれらの天端高さが順に低くなっている。各垂直部12a〜12cはそれぞれ多数の開口13を有する。
【0058】
図7の構造体50は、複数の透過性構造物10A〜10Cの各列a〜cを水塊の移動方向xに並べたものである。各列a〜cの各透過性構造物10A〜10Cを、水塊の移動方向xに対し下流側から垂直部12a,12b,12cの天端高さが順に低くなるように設置している。
【0059】
図6の構造体40は、複数の透過性構造物10を横方向に一列に並べているだけであるので、水塊の移動方向が時期により逆方向に変化した場合、
図4(a)(b)で説明したのと同様の問題点を有しているが、
図7の構造体50によれば、
図3,
図5と同様の作用効果を得ることができ、水塊の移動が移動方向xに対し逆方向になったとしても、各列a〜cの各垂直部12a〜12cがそれぞれ隣り合う各空間でサンゴ礫の捕捉・堆積が可能となるとともに、水塊が移動方向xに移動して堆積したサンゴ礫が移動して破壊されてしまうことを防止できる。これにより、水塊の移動方向が時期により逆方向に変化する場合でも、幅広い範囲においてサンゴ礫の捕捉・堆積が期待できる。
【0060】
次に、本実施形態によるさらに別の例について
図13を参照して説明する。
図13は本実施形態のさらに別の例による構造体を概略的に示す斜視図である。
図13の構造体70は、
図12の鉛直杭15を用いた複数の透過性構造物17を、
図6と同様に、水底に水塊の移動方向xに対し直交するように横方向に一列に並べて設置したものである。構造体70では、隣り合う垂直部12は共通の鉛直杭15に固定され支持される。構造体70によれば、
図6と同様の効果を奏する。また、
図13の構造体70を、
図7と同様に配置し、垂直部の天端高さが順に低くなるように設置することで、
図7と同様の効果を奏する。
【0061】
なお、
図11の複数の透過性構造物16を、
図6と同様に設置してもよく、また、
図7と同様に設置してもよい。
【0062】
[第4の実施形態]
図8は、第4の実施形態による構造体を概略的に示す平面図(a)およびVIIIB-VIIIB線方向に切断して見た図(b)である。
図9は本実施形態による作用効果を説明するための概略的な平面図である。
【0063】
図8(a)(b)の構造体60は、複数の構造体61,62,63から構成され、構造体61は、多数の透過性構造物61Aを、水底の一平面領域Mを包囲するように平面的に正方形状に配置して構成され、構造体62は、多数の透過性構造物62Aを、構造体61を包囲するように平面的に正方形状に配置して構成され、構造体63は、多数の透過性構造物63Aを、構造体62を包囲するように平面的に正方形状に配置して構成されている。
【0064】
透過性構造物61A〜63Aは、
図1の透過性構造物10と基本的構成は同一であるが、
図8(b)のように、それらの垂直部61a,62a,63aはそれらの天端高さが内側から外側に向けて順に低くなっている。各垂直部61a〜63aはそれぞれ
図1と同様に多数の開口を有する。
【0065】
図8の構造体60によれば、サンゴ礫により堆積した周辺が局所的に水深が浅くなることで、
図9のように、移動方向xからの波が屈折しその背後に集中し(波の屈折作用)、その結果、構造体60の背面65においてサンゴ礫が左右から移動し、かかる波の集中により背面65側に形成された領域Nでサンゴ礫の堆積がいっそう促進される。これにより、サンゴ礫の捕捉・堆積による陸化が効率的に行われる。また、波や潮流などの水塊の移動方向が期間によって変化し複数方向から作用する地点に構造体60を設置することで、サンゴ礫の捕捉・堆積が効率的に行われる。
【0066】
なお、
図8においては、多数の透過性構造物を平面的に正方形状に配置したが、これに限定されず、同心円状、長方形状、多角形状、長円形状などに配置してもよい。
【0067】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態の
図1,
図3の透過性構造物10,20を複数連続して設置することができるが、かかる設置は1箇所だけではなく、互いに離れた複数個所であってもよい。同様に、
図5〜
図8の構造体30,40,50,60を設置するのは1箇所だけではなく、互いに離れた複数個所であってもよい。
【0068】
また、
図3における複数の垂直部の数や
図5における複数の透過性構造物の数や
図7における複数の列の数は、図示された数に限定されず、必要に応じて増減できることはもちろんである。また、
図6,
図7における横方向に一列に並べられる透過性構造物の数も同様に必要に応じて増減できる。
【0069】
また、
図1,
図11,
図12では、複数の開口13を有する捕捉部である垂直部12は平板状に構成されるが、本発明はこれに限定されず、面状であればよく、面状の捕捉部としては、平板状のものや全面が平面状のもののみならず、たとえば、予めV字状や波形状のように変形した形状に構成されたものも含む。
【0070】
また、捕捉部が、たとえば、鉄鋼材料からなる平板やエキスパンドメタル等から構成される場合は、ある程度の剛性があるため供用中も平面状をほぼ保つが、たとえば、樹脂材料や金網のような可撓性のある材料から平面状に構成される場合は、供用中は水塊の移動により湾曲状に変形する場合がある。
【0071】
図14に、複数の開口13を有する捕捉部12’が底板部11上に設けられた透過性構造物18を複数、
図6と同様に、横方向に一列に並べた構造体80を示す。また、
図15に、複数の鉛直杭15を水底に打設し、鉛直杭15に捕捉部12’が固定され支持された透過性構造物19を複数、
図6と同様に、横方向に一列に並べた構造体90を示す。
図14,
図15の各捕捉部12’は、樹脂材料や金網等のような可撓性のある材料から構成され、設置時には平面状であり鉛直方向に立設されるが、供用中に水塊の移動によりその移動方向xに変形し凹状に湾曲することがある。
【0072】
また、
図1,
図11,
図12の垂直部12、さらには、
図14,
図15の捕捉部12’は、鉛直方向に立設されるが、本発明はこれに限定されず、水塊の移動方向に対し前後に傾斜していてもよい。すなわち、本発明において、複数の開口を有する面状の捕捉部は、全体が鉛直方向に対し傾斜していてもよい。
【0073】
また、本明細書のサンゴ礫とは、サンゴ礁由来のもので、形状的には木の枝のような形状やテーブル状の形状のものが多い。