(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674465
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】極紫外波長範囲のためのマスクを生成する方法、マスク、及びデバイス
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20200323BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20200323BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/84
【請求項の数】20
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-531963(P2017-531963)
(86)(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公表番号】特表2017-526987(P2017-526987A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】EP2015069503
(87)【国際公開番号】WO2016037851
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年8月24日
(31)【優先権主張番号】102014217907.6
(32)【優先日】2014年9月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ペーテルス ヤン−ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】ブルームリヒ ヨルク フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ガレット アントニー
(72)【発明者】
【氏名】カペッリ レンツォ
【審査官】
山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−026253(JP,A)
【文献】
特開2014−090163(JP,A)
【文献】
特開2013−149875(JP,A)
【文献】
米国特許第08592102(US,B2)
【文献】
特表2014−514735(JP,A)
【文献】
特開2014−150124(JP,A)
【文献】
特開2015−135874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/24
G03F 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥(220,320,520,620,920)を有するマスクブランク(250,350,550,950)から進んで極紫外波長範囲のためのマスクを生成する方法であって、
a.前記欠陥(220,320,520,620,920)を第1の群と1つの第2の群とに分類する段階であって、前記第1の群は修復不能な欠陥を含み、前記第2の群は修復可能な欠陥を含む、段階、
b.前記第2の群の前記欠陥に優先順位を割り振る段階であって、前記優先順位は、前記第2の群の欠陥を修復するための費用又は有効欠陥サイズ(370,740)を含み、前記有効欠陥サイズ(370,740)は、欠陥(220,320,520,620,920)のうちで、これらの欠陥の修復又は補償後に露光されるウェーハ上で該欠陥の残っている部分(380)がもはや可視ではない部分を含む、段階、
c.前記マスクブランク(250,350,550,950)上の吸収体パターン(170)の配置を該配置された吸収体パターン(170)を用いて前記第1の群の最大個数の前記欠陥を補償するために最適化する段階、及び
d.前記最適化された吸収体パターン(170)を前記マスクブランク(250,350,550,950)に適用する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
修復方法を用いて前記第2の群の前記欠陥を少なくとも部分的に修復する段階、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記欠陥(220,320,520,620,920)を修復する段階は、前記適用された吸収体パターン(170)の少なくとも1つの要素を修正する段階、及び/又は前記マスクブランク(250,350,550,950)の面(260,360,560)の少なくとも一部を修正する段階を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の群の1又は複数の欠陥の効果を少なくとも部分的に補償するために前記吸収体パターンの1又は複数の要素を前記マスクブランクに適用する前に更に最適化する段階、
を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階b.は、集積回路を生成する方法を用いてマスクスタック(940)の吸収体パターンから吸収体パターン(170)を選択する段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階b.は、前記マスクブランク(250,350,550)の向きを選択する段階、該マスクブランク(250,350,550,950)を変位させる段階、及び/又は該マスクブランク(250,350,550,950)を回転させる段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
吸収体パターン(170)を修正することによって欠陥(220,320,520,620,920)を修復することができるか否か、又は該吸収体パターン(170)の前記配置を最適化することによって欠陥(220,320,520,620,920)を補償すべきであるか否かを決定する目的のために、前記マスクブランク(250,350,550,950)の該欠陥(220,320,520,620,920)を特徴付ける段階を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記欠陥(220,320,520,620,920)を特徴付ける段階は、前記有効欠陥サイズ(370,740)を決定する段階を更に含み、及び/又は
前記有効欠陥サイズは、欠陥(220,320,520,620,920)の前記特徴付けにおける誤差により、及び/又は前記露光に使用される光源の非テレセントリック性に基づいて決定される、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記欠陥(220,320,520,620,920)を特徴付ける段階は、前記マスクブランク(250,350,550,950)の多層構造(240,340,540)内の該欠陥(220,320,520,620,920)の伝播(660)を決定する段階を更に含むことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
段階a.は、欠陥(220,320,520,620,920)を該欠陥(220,320,520,620,920)が面感知測定によって検出することができない場合、該欠陥(220,320,520,620,920)が予め定められたサイズを超える場合、及び/又は該欠陥(220,320,520,620,920)の位置(430)を決定するときに異なる測定方法が異なる結果を生成する場合に、前記第1の群に分類する段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
段階a.は、請求項10に言及しなかった前記マスクブランク(250,350,550,950)の前記欠陥(220,320,520,620,920)を前記第2の群に分類する段階を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
段階c.を実施する前に前記第2の群の高い優先順位を有する少なくとも1つの欠陥(220,320,520,620,920)を前記第1の群に割り振る段階を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の群の高い優先順位を有する少なくとも1つの欠陥(220,320,520,620,920)を前記第1の群に該第1の群の欠陥(220,320,520,620,920)の全ての欠陥を前記吸収体パターン(170)の前記配置を最適化することによって補償することができる限り割り振る工程を繰り返す段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の群を少なくとも部分的に修復する工程を2つの部分段階に分割する段階を更に含み、
第1の部分段階が、前記第1の群の前記欠陥を補償する工程の前に実施される、
ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
極紫外波長範囲のためのマスクブランク(250,350,550,950)の欠陥(220,320,520,620,920)を処理するためのデバイスであって、
a.前記欠陥(220,320,520,620,920)を第1の群と1つの第2の群とに分類するための手段であって、前記第1の群は修復不能な欠陥を含み、前記第2の群は修復可能な欠陥を含む、手段、
b.前記第2の群の前記欠陥に優先順位を割り振るための手段であって、前記優先順位は、前記第2の群の欠陥を修復するための費用又は有効欠陥サイズ(370,740)を含み、前記有効欠陥サイズ(370,740)は、欠陥(220,320,520,620,920)のうちで、これらの欠陥の修復又は補償後に露光されるウェーハ上で該欠陥の残っている部分(380)がもはや可視ではない部分を含む、手段、
c.前記マスクブランク(250,350,550,950)上の吸収体パターン(170)の配置を該配置された吸収体パターン(170)を用いて前記第1の群の最大個数の前記欠陥を補償するために最適化するための手段、及び
d.前記最適化された吸収体パターン(170)を前記マスクブランク(250,350,550,950)に適用するための手段、
を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項16】
前記欠陥(220,320,520,620,920)を分類するための前記手段及び前記吸収体パターン(170)の配置を最適化するための前記手段は、少なくとも1つのコンピュータユニットを含むことを特徴とする請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第2の群の前記欠陥を少なくとも部分的に修復するための手段を更に含むことを特徴とする請求項15又は請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第2の群の前記欠陥を少なくとも部分的に修復するための前記手段は、少なくとも1つの走査粒子顕微鏡と、真空チャンバに前駆体ガスを局所的に提供するための少なくとも1つのガス給送器とを含むことを特徴とする請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
マスクブランク(250,350,550,950)の前記欠陥(220,320,520,620,920)を特徴付けるための手段を更に含み、
前記特徴付けるための手段は、走査粒子顕微鏡、X線ビーム装置、及び/又は走査プローブ顕微鏡を含む、
ことを特徴とする請求項15から請求項18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の方法の全ての段階を実施するための命令、
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUVマスクブランクの欠陥を処理することに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業において高まる集積密度の結果として、フォトリソグラフィマスクは、益々小さい構造をウェーハ上に結像しなければならない。この傾向に対処するために、リソグラフィ装置の露光波長は、より短い波長にシフトし続けている。今後のリソグラフィシステムは、極紫外(EUV)範囲の波長(好ましくは、10nmから15nmの範囲にあるが、これに限定されない)で作動することになる。EUV波長範囲は、今後のリソグラフィシステムのビーム経路にある光学要素の精度に対して莫大な要求を課する。EUV範囲で現在公知の材料の屈折率は実質的に1に等しいので、これらの光学要素は反射光学要素であることが予想される。
【0003】
EUVマスクブランクは、例えば、石英のような熱膨張を殆ど示さない基板を含む。シリコン(Si)とモリブデン(Mo)とを含む二重層を約40個から60個含む多層構造が基板に適用され、これらの層は誘電体ミラーとしての機能をもたらす。EUVフォトリソグラフィマスク又は簡潔にEUVマスクは、入射するEUV光子を吸収する吸収体構造を多層構造に加えることによってマスクブランクから生成される。
【0004】
極めて短い波長に起因して、EUVマスクを用いて露光されたウェーハの結像収差内で多層構造の僅かな凹凸でさえも顕在化される。基板面の僅かな凹凸は、一般的に基板上への多層構造の堆積中に多層構造内に伝播する。従って、EUVマスクを生成するためには2nmよりも小さい(λ
EUV/4≦4nm)面粗度のみを有する基板を使用することが必要である。現時点では、面の平坦度に関するこれらの要件を満たす基板を生成することは不可能である。現在、小さい基板欠陥(≦20nm)は、化学機械研磨(CMP)に固有のものであると考えられている。
【0005】
上述のように、基板面の凹凸は、多層構造の堆積中にその中に伝播する。この場合に、基板の欠陥は、変化を受けることなく基板を通って伝播する可能性がある。更に、基板欠陥が多層構造内にサイズが縮小する方式、又は他にサイズが拡大する方式で伝播する可能性がある。多層構造の堆積中に、基板によって引き起こされる欠陥と共に、この構造自体の中に付加的な欠陥がもたらされる可能性もある。これらの欠陥は、例えば、基板面上、又は個々の層の間、及び/又は多層構造面上に堆積する粒子の結果として発生する可能性がある。更に、欠陥は、不完全な層順序の結果として多層構造内にもたらされる可能性がある。全体的に、従って、多層構造に存在する欠陥の個数は、典型的には、基板面上に存在する個数よりも多い。
【0006】
以下では、加えられた多層構造と、その上に堆積したカバー層とを有する基板をマスクブランクと呼ぶ。しかし、原理的には、本発明と関連して他のマスクブランクを考えることができる。
【0007】
通常、マスクブランクの欠陥は、多層構造の堆積後に測定される。通常の場合に、マスクブランクから生成されたEUVマスクの露光時に、ウェーハ上で視認可能な欠陥(プリント可能欠陥)は補償又は修復される。この場合に、欠陥を補償するということは、EUVマスクを用いたウェーハの露光時にこの欠陥が事実上もはや視認不能であるように、この欠陥が吸収体パターン要素によって実質的に覆われることを意味する。
【0008】
J.Burns及びM.Abbasによる文献「パターン配置によるEUVマスク欠陥の軽減(EUV mask defect mitigation through pattern placement)」、Photomask Technology 2010、M.W.Montgomery、W.Maurer編集、SPIE会報第7823号、782340−1、782340−5は、予め定められたマスクレイアウトに適合するマスクブランクの探索、及びこの予め定められたマスクレイアウトに対する選択マスクブランクの位置合わせを記載している。
【0009】
Y.Negishi、Y.Fujita、K.Seki、T.Konishi、J.Rankin、S.Nash、E.Gallagher、A.Wagner、P.Thwaite、及びA.Elyatによる論文「EUVLマスク製作中にブランク欠陥を回避するためのパターンシフトの使用(Using pattern shift to avoid blank defects during EUVL mask fabrication)」、SPIE会報第8701号、Photomask and Next−Generation Lithography Mask Technology XX、870112(2013年6月28日)は、どのサイズの欠陥をどれ程多く補償することができるかという疑問に関するものである。
【0010】
P.Yanによる学会論文「ML欠陥軽減のためのEUVL MLマスクブランク基準マークの印加(EUVL ML Mask Blank Fiducial Mark Application for ML Defect Mitigation)」、L.S.Zurbrick、M.Warren Montgomery編集、SPIE会報第7488号、748819−1〜7e8819−8は、吸収体層の基準マークに対してマスクブランクの基準マークに対する欠陥の座標の変換を記載している。
【0011】
P.Yan、Y.Liu、M.Kamna、G.Zhang、R.Chem、及びF.Martinezによる文献「欠陥不在のEUVLマスク製作のためのEUVL多層マスクブランク欠陥の軽減(EUVL Multilayer Mask Blank Defect Mitigation for Defect−free EUVL Mask Fabrication)」、Extreme Ultraviolet(EUV)Lithography III、P.P.Naulleau.O.R.Wood II編集、SPIE会報、第8322号、83220Z−1〜83220Z−10は、吸収体パターンによって覆うことができる欠陥の最大個数と、これらの欠陥サイズと、欠陥の位置を決定することができる多様性と、吸収体構造の位置決めにおける多様性間の妥協を記載している。
【0012】
特許明細書US 8 592 102 B1は、マスクブランクの欠陥の補償を記載している。この目的に対して、吸収体パターンに最適に適合するマスクブランクの欠陥パターンが、マスクブランクセットから選択される。吸収体パターンは、可能な限り多くの欠陥が吸収体パターンによって補償されるように欠陥パターンに位置合わせされる。残存欠陥は修復される。
【0013】
引用した文献の全ては、同じ重量を有する全ての欠陥を補償工程において考慮するか又はそのサイズに従って欠陥を順序付けする。その結果、第1に、補償されなかった欠陥を修復するのに使用される下流の修復工程が非常に複雑になり、それによって時間を消費することになる可能性がある。第2に、補償工程及びその後の修復工程は、可能な最適の故障処理結果に至らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】US 8 592 102 B1
【特許文献2】DE 10 2011 079 382.8
【特許文献3】DE 2014 211 362.8
【特許文献4】WO 2011/161 243
【特許文献5】US 61/324 467
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】J.Burns及びM.Abbas、文献「パターン配置によるEUVマスク欠陥の軽減(EUV mask defect mitigation through pattern placement)」、Photomask Technology 2010、M.W.Montgomery、W.Maurer編集、SPIE会報第7823号、782340−1、782340−5
【非特許文献2】Y.Negishi、Y.Fujita、K.Seki、T.Konishi、J.Rankin、S.Nash、E.Gallagher、A.Wagner、P.Thwaite、及びA.Elyat、論文「EUVLマスク製作中にブランク欠陥を回避するためのパターンシフトの使用(Using pattern shift to avoid blank defects during EUVL mask fabrication)」、SPIE会報第8701号、Photomask and Next−Generation Lithography Mask Technology XX、870112(2013年6月28日)
【非特許文献3】P.Yan、学会論文「ML欠陥軽減のためのEUVL MLマスクブランク基準マークの印加(EUVL ML Mask Blank Fiducial Mark Application for ML Defect Mitigation)」、L.S.Zurbrick、M.Warren Montgomery編集、SPIE会報第7488号、748819−1〜7e8819−8
【非特許文献4】P.Yan、Y.Liu、M.Kamna、G.Zhang、R.Chem、及びF.Martinez、文献「欠陥不在のEUVLマスク製作のためのEUVL多層マスクブランク欠陥の軽減(EUVL Multilayer Mask Blank Defect Mitigation for Defect−free EUVL Mask Fabrication)」、Extreme Ultraviolet(EUV)Lithography III、P.P.Naulleau.O.R.Wood II編集、SPIE会報、第8322号、83220Z−1〜83220Z−10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明は、上述の従来技術の欠点を少なくとも部分的に回避する極紫外波長範囲のためのマスクを生成する方法、マスク、及びマスクブランクの欠陥を処理するためのデバイスを指定するという問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様により、この問題は、請求項1に記載の方法によって解決される。一実施形態において、欠陥を有するマスクブランクから極紫外波長範囲のためのマスクを生成する方法は、(a)欠陥を少なくとも1つの第1の群と1つの第2の群とに分類する段階と、(b)配置された吸収体パターンを用いて第1の群の最大個数の欠陥を補償するためにマスクブランク上の吸収体パターンの配置を最適化する段階と、(c)最適化された吸収体パターンをマスクブランクに適用する段階とを含む。
【0018】
本発明による方法は、単純に最大個数の欠陥を補償するわけではない。そうする代わりに本方法は、最初にマスクブランク上に存在する欠陥を分類する。好ましくは、修復することができないマスクブランクの欠陥は、補償される欠陥の群、すなわち、第1の群に割り当てられる。それによって後の露光工程において視認可能(すなわち、プリント可能)な全ての欠陥を実際に処理することができること、又は補償することができない残存欠陥の個数が許容値を下回って留まることを確実にする。こうして本発明による方法は、マスクの生成中に可能な最良の欠陥処理結果を達成する。
【0019】
本方法は、修復方法を用いて第2の群の欠陥を少なくとも部分的に修復する段階を更に含むことができ、欠陥を修復する段階は、適用された吸収体パターンの少なくとも1つの要素を修正する段階、及び/又はマスクブランクの面の少なくとも一部を修正する段階を含む。
【0020】
マスクブランクの多層構造の欠陥を処理するために吸収体パターンの要素を修正することを以下では「補償的修復」とも呼ぶ。
【0021】
更に、一例示的実施形態において、本方法は、第2の群の1又は複数の欠陥の効果を少なくとも部分的に補償するために、吸収体パターンの1又は複数の要素をマスクブランクに適用する前に更に最適化する段階を更に含む。この更に別の最適化は、第2の群の欠陥を修復するための残りのコストを更に低減することを可能にする。
【0022】
一例示的実施形態において、第2の欠陥群からの各欠陥又は各修復可能な欠陥に優先順位が割り当てられる。更に、吸収体パターン配置の最適化を可能な最良の方法で利用するために、第1の群、すなわち、好ましくは、修復不能な欠陥の群には、第2の群の高い優先順位を有する欠陥が可能な限り多く追加的に割り当てられる。2つの群への欠陥の再割り当ては、欠陥処理工程全体を時間の使用及びリソースの使用に関して最適化することを可能にする。
【0023】
更に別の態様により、段階b.は、集積回路を製作するためのマスクスタックの吸収体パターンから吸収体パターンを選択する段階を含む。
【0024】
この定めた方法は、単純にランダムな吸収体パターンをマスクブランクの欠陥パターンに適応させるわけではない。そうする代わりに本方法は、マスクスタックの吸収体パターンからマスクブランクの欠陥パターンに最適に適合する吸収体パターンを選択する。
【0025】
段階b.の別の態様は、マスクブランクの向きを選択する段階、マスクブランクを変位させる段階、及び/又はマスクブランクを回転させる段階を含む。
【0026】
別の態様は、吸収体パターンを修正することによって欠陥を修復することができるか否か、又は吸収体パターンの配置を最適化することによって欠陥を補償する必要があるか否かを決定する目的のために、マスクブランクの欠陥を特徴付ける段階を更に含む。
【0027】
欠陥処理工程を実施する前に識別された欠陥を2つの群に分割することにより、吸収体パターン配置を最適化するための工程の柔軟性が高められる。最適化工程は、より少ない欠陥、従って、より少ない境界条件しか考慮しなくてもよい。
【0028】
別の態様において、欠陥を特徴付ける段階は、有効欠陥サイズを決定する段階を更に含み、有効欠陥サイズは、これらの欠陥の修復又は補償後に露光されるウェーハ上で欠陥の残存部分がもはや可視ではない欠陥の部分を含み、及び/又は有効欠陥サイズは、欠陥の特徴付けにおける誤差により、及び/又は露光に使用される光源の非テレセントリック性に基づいて決定される。
【0029】
言い換えれば、有効欠陥サイズを決定するときに、一方で露光中に欠陥の小さい「残余」がもはや有意な効果を持たず、従って、有効欠陥サイズを全体の欠陥よりも小さい可能性があること、他方で測定精度の限界及び/又は非テレセントリック露光が、実質的に決定された欠陥サイズが実際の欠陥よりも大きい可能性があるという効果を有することという複数の時に相反する観点を考慮することができる。
【0030】
有効欠陥サイズの概念によって既存マスクブランクの利用を最大にすることができる。更に、この概念は、安全マージンの柔軟な導入を可能にし、一例として、欠陥位置を決定する際の不確実性は、このサイズに考慮することができる。
【0031】
更に別の態様において、欠陥を特徴付ける段階は、マスクブランクの多層構造における欠陥の伝播を決定する段階を更に含む。
【0032】
多層構造における欠陥の伝播は、欠陥の分類に対して重要であり、従って、欠陥処理のタイプに対しても重要である。
【0033】
更に別の態様において、段階a.は、欠陥を面感知測定によって検出することができない場合、欠陥が予め定められたサイズを超える場合、及び/又は欠陥の位置を決定するときに様々な測定方法が異なる結果を生成する場合に、欠陥を少なくとも1つの第1の群に分類する段階を含む。
【0034】
面感知測定によって検出することができない欠陥は、行うとしても極めて高いコストによってのみ修復に向けてその位置を決定することができる。特定のサイズよりも大きい有効欠陥面積を有する欠陥は、非常に高い欠陥処理コストを必要とする。更に、非常に大きい欠陥の場合に、これらの欠陥を単一段工程で修復することができないという危険性が存在する。更に、例えば、多層構造内の欠陥が多層構造の層シーケンスと垂直に成長しない場合に、異なる測定方法は、これらの欠陥の位置及び広がりに対して異なるデータをもたらす。そのような欠陥の修復は、行うとしても非常に大きい安全マージンを用いてのみ可能である。
【0035】
更に別の態様により、段階a.は、上述の態様において言及しなかったマスクブランクの欠陥を少なくとも1つの第2の群に分類する段階を含む。
【0036】
マスクブランクの全ての欠陥は、すなわち、荒く分類される。
【0037】
有利な態様は、少なくとも1つの第2の群の欠陥に優先順位を割り振る段階を更に含む。更に別の好ましい態様において、優先順位は、第2の群の欠陥を修復するための費用、第2の群の欠陥を修復するときの危険性、第2の群の欠陥を修復するときの複雑さ、及び/又は第2の群の欠陥の有効欠陥サイズを含む。
【0038】
更に別の態様により、時間を消費する修復、吸収体パターン要素の少なくとも1つの部分の堆積の必要性、マスクブランクの多層構造の修正の必要性、及び欠陥の大きい有効欠陥サイズという条件のうちの1又は2以上が存在する場合に、第2の群の欠陥に高い優先順位が割り振られる。更に別の態様により、修復が時間を要さないこと、吸収体パターン要素の少なくとも1つの部分の除去が必要であること、長手方向が吸収体パターンのストリップ形状要素に対して実質的に平行に延びる欠陥の非対称広がり、及び欠陥の小さい有効欠陥サイズという条件が存在する場合に、第2の群の欠陥に低い優先順位が割り振られる。
【0039】
「大きい有効欠陥サイズ」及び「小さい有効欠陥サイズ」という表現は、マスクブランクのプリント可能又は視認可能な欠陥の平均有効欠陥サイズに関連する。有効欠陥サイズは、例えば、そのサイズが平均有効欠陥サイズの2倍(半分)である場合に大きい(小さい)。
【0040】
優先順位が修復可能な欠陥に割り振られることにより、マスクブランクの欠陥の分類が精緻化される。それによって上記で定めた欠陥処理方法の段階b.及び段階c.を最適化することができる。
【0041】
別の態様は、高い優先順位を有する少なくとも1つの欠陥を段階b.を実施する前に少なくとも1つの第1の群に割り振る段階を更に含む。更に別の有利な態様は、吸収体パターンを最適化することによって欠陥の第1の群の全ての欠陥を補償できる限り、高い優先順位を有する少なくとも1つの欠陥を少なくとも1つの第1の群に割り振る工程を繰り返す段階を更に含む。
【0042】
欠陥の第1の群は、最適化された吸収体パターン配置が第1の群の全ての欠陥を補償するまで第2の群の高優先順位欠陥で満たされる。この手順は、吸収体パターン配置の最適化によって補償される欠陥の個数を最大にする。従って、第2の群内の修復可能な欠陥の分類は、その後の欠陥処理工程を修復可能な欠陥の優先順位に基づいて最適化することができるという利点を有する。
【0043】
更に別の有利な態様は、ウェーハ上で視認可能なマスクブランクの全ての欠陥を吸収体パターンの最適化によって補償することができるか否かを決定する段階を更に含む。
【0044】
マスクブランクが少数の欠陥のみを有する場合に、最適化された吸収体パターン配置によって全ての欠陥を補償することができる可能性がある。この場合に、上記で定めた方法の段階c.を実施する段階を省略することができる。
【0045】
更に別の態様により、上記で定めた方法は、第2の群を少なくとも部分的に修復する工程を2つの部分段階に分割する段階を更に含み、第1の部分段階は、第1の群の欠陥を補償する工程の前に実施される。
【0046】
マスクブランクの欠陥をその処理の前に分類することにより、欠陥の修復においてより高い柔軟性が更に得られる。この点に関して、一例として、多層構造の面の修正は、EUVマスク上で行うまで実施しない代わりにマスクブランク上で事前に実施することができる。第2の群の欠陥を修復するための補償的修復において、適用された吸収体パターンの1又は複数の要素は変更される。
【0047】
しかし、直前に生成された吸収体パターンを高いコストを必要とする第2の修復段階で修正するのではなく、吸収体パターンを生成するときに第2の群の欠陥を事前に考慮することも可能である。このようにして更に最適化された吸収体パターンは、第1の群の欠陥を補償し、更に第2の群の欠陥のうちの少なくとも1つの効果を少なくとも部分的に補償する。この実施形態において、吸収体パターンを最適化する段階は、マスクブランク上のパターン配置を最適化する段階のみならず、吸収体パターンの要素を第2の群の欠陥に関して最適化する段階も含む。
【0048】
更に別の態様により、本発明は、上記で記述した方法のうちの1つによって生成可能なマスクに関する。
【0049】
更に別の態様により、極紫外波長範囲のためのマスクブランクの欠陥を処理するためのデバイスは、(a)欠陥を少なくとも1つの第1の群と1つの第2の群とに分類するための手段と、(b)配置された吸収体パターンを用いてマスクブランク上の吸収体パターンの配置を第1の群の最大個数の欠陥を補償するために最適化するための手段と、(c)最適化された吸収体パターンをマスクブランクに適用するための手段とを含む。
【0050】
更に別の好ましい態様において、欠陥を分類するための手段及び吸収体パターン配置を最適化するための手段は、少なくとも1つのコンピュータユニットを含む。
【0051】
デバイスは、第2の群の欠陥を少なくとも部分的に修復するための手段を更に含むことができる。
【0052】
更に別の有利な態様により、第2の群の欠陥を少なくとも部分的に修復するための手段は、少なくとも1つの走査粒子顕微鏡と、真空チャンバ内に前駆体ガスを局所的に供給するための少なくとも1つのガス給送器とを含む。
【0053】
更に別の態様により、デバイスは、マスクブランクの欠陥を特徴付けるための手段を更に含み、特徴付けるための手段は、走査粒子顕微鏡、X線ビーム装置、及び/又は走査プローブ顕微鏡を含む。
【0054】
最後に、1つの有利な態様において、コンピュータプログラムは、上記に指定した態様のうちのいずれかによる方法の全ての段階を実施するための命令を含む。特に、コンピュータプログラムは、上記で定めたデバイス内で実行することができる。
【0055】
以下の詳細説明は、図面を参照して本発明の現時点で好ましい例示的実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトマスクからの抜粋の概略断面図である。
【
図2】基板が局所凹部を有するマスクブランクからの抜粋を通る概略断面図である。
【
図3】マスクブランクの局所膨張部での有効欠陥サイズの一般概念を図解する概略図である。
【
図4】欠陥の重心位置を決定するための基準マークを有する
図2を示す図である。
【
図5】多層構造内で伝播中にその形状を変える埋め込み欠陥の再現図である。
【
図6】多層構造の層シーケンスと垂直に伝播しない埋め込み欠陥の測定データの概略図である。
【
図7】実際に補償又は補正されるものであり、かつ入射EUV放射線の非テレセントリック性を考慮した時にもたらされる
図6に記載の欠陥の有効欠陥サイズと位置及び有効欠陥サイズを決定する時の統計誤差とを示す概略図である。
【
図8】入射EUV放射線のテレセントリック性不在の効果を部分
図8aに略示し、かつ吸収体パターンの要素に対する効果を部分
図8に例示する図である。
【
図9】マスクブランクの欠陥の補償の一般概念を部分図(a)から(c)に例示する概略図である。
【
図10】従来技術に従ってマスクブランクの欠陥を補償するための
図9に例示する一般概念の実施を示す図である。
【
図11-1】前節で定めた方法の一実施形態を提示する図である。
【
図11-2】前節で定めた方法の一実施形態を提示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
下記では本発明による方法の現時点で好ましい実施形態を極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクを生成するためのマスクブランクへの適用に基づいてより詳細に説明する。しかし、マスクブランクの欠陥を処理するための本発明による方法は、下記で解説する例に限定されない。限定されるのではなく、本方法は、様々な修復方法を用いて処理される様々な欠陥分類に分類することができる欠陥を処理するのに一般的に使用することができる。
【0058】
図1は、13.5nmの領域内の露光波長のためのEUVマスク100からの抜粋を通る略断面を示している。EUVマスク100は、例えば、石英のような低い熱膨張率を有する材料からなる基板110を含む。EUVマスクのための基板としては、例えば、ZERODUR(登録商標)、ULE(登録商標)、又はCLEARCERAM(登録商標)のような他の誘電体、ガラス材料、又は半導体材料を同じく使用することができる。EUVマスク100の基板110の後部側面117は、EUVマスク100の生成中及びその作動中に基板110を保持するためなどに機能する。
【0059】
基板110の前部側面115上には、本明細書においてMoSi層とも表す交替するモリブデン層(Mo)120とシリコン(Si)層125との対を20個から80個含む多層構造140が堆積される。Mo層120の厚みは、4.15nmであり、Si層125は、2.80nmの厚みを有する。多層構造140を保護するために、例えば、二酸化珪素からなり、好ましくは7nmの厚みを一般的に有するキャッピング層130が最上部シリコン層125上に加えられる。キャッピング層130を形成するために、例えば、ルテニウム(Ru)のような他の材料を同じく使用することができる。MoSi層において、モリブデンの代わりに、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、レニウム(Re)、及びイリジウム(Ir)のような高質量数を有する他の元素からなる層を使用することができる。多層構造240の堆積は、例えば、イオンビーム蒸着(IBD)によって行うことができる。
【0060】
以下では、基板110、多層構造140、及びキャッピング層130をマスクブランク150と記す。しかし、EUVマスクの全ての層を含むが、吸収体層全域の構造化のない構造をマスクブランクと記すことができる。
【0061】
マスクブランク150からEUVマスク100を生成するために、キャッピング層130上にバッファ層35が堆積される。可能なバッファ層材料は、石英(SiO
2)、シリコン酸素窒化物(SiON)、Ru、クロム(Cr)、及び/又は窒化クロム(CrN)である。バッファ層135上には吸収層160が堆積される。吸収層160に適する材料は、取りわけ、Cr、窒化チタン(TiN)、及び/又は窒化タンタル(TaN)である。吸収層160上には、例えば、酸窒化タンタル(TaON)からなる反射防止層165を加えることができる。
【0062】
吸収層160は、例えば、電子ビーム又はレーザビームを用いて吸収層160の全域から吸収体パターン170が生成されるように構造化される。バッファ層135は、吸収層160の構造化中に多層構造140を保護するように機能する。
【0063】
EUV光子180は、EUVマスク100上に入射する。吸収体パターン170の領域内でこれらの光子は吸収され、吸収体パターン170の要素が不在の領域内では、EUV光子180は多層構造140から反射される。
【0064】
図1は、理想的なEUVマスク100を示している。
図2の模式
図200は、局所凹部(孔食と呼ぶ)の形態にある局所欠陥220を有する構造210を有するマスクブランク250を図解している。局所凹部は、例えば、基板210の前部側面115の研磨中に生じたものとすることができる。
図2に図解している例では、欠陥220は、多層構造240を通して実質的に変化しない形態で伝播する。
【0065】
ここで、並びに本説明の他の箇所においても、「実質的に」という表現は、従来技術で通例の測定誤差範囲の変動の指示又は数値指示を意味する。
【0066】
図2は、マスクブランク250の欠陥220の一例を示している。既に冒頭部分に示したように、マスクブランク250内には様々な更に別のタイプの欠陥が存在する可能性がある。基板210の凹部220と共に、基板210の面115上には局所膨張部210(隆起と呼ぶ)が発生する可能性がある(次の
図3を参照されたい)。更に、基板210の面115の研磨中に引っ掻きが生じる可能性がある(
図2には例示していない)。既に冒頭部分で解説したように、多層構造240の堆積中に基板210の面115上の粒子が過成長する場合があり、又は粒子が多層構造240内に組み込まれる場合がある(同じく
図2には示していない)。
【0067】
マスクブランク250の欠陥は、基板210内のこれらの欠陥の開始点を基板210の前部側面又は面115上、多層構造240内、及び/又はマスクブランク250の面260上に有する可能性がある(
図2には示していない)。基板210の前部側面115上に存在する欠陥220は、
図2に示す実施形態とは対照的に、多層構造240における伝播中に横寸法と高さの両方を変える。この変化は両方の方向に発生する場合があり、すなわち、欠陥は、多層構造240内で成長又は収縮することができ、及び/又はその形状を変える場合がある。キャッピング層130の面260上から専ら発するわけではないマスクブランク250の欠陥を以下では埋め込み欠陥とも呼ぶ。
【0068】
理想的には、欠陥220の横寸法及び高さは、1nmよりも細かい分解能で決定しなければならない。更に、欠陥220のトポグラフィは、様々な測定方法によって互いに独立して決定しなければならない。欠陥220の輪郭、面260上におけるその位置、及び特に多層構造240におけるその伝播を測定するために、例えば、X線を使用することができる。
【0069】
面感知方法の検出限界は、これらの方法を用いた欠陥位置(すなわち、その重心)の検出機能又は検出率に関連する。走査プローブ顕微鏡、走査粒子顕微鏡、及び光学撮像は、面感知方法の例である。そのような技術によって検出することが意図される欠陥220は、特定の面トポグラフィ又は材料コントラストを有するべきである。分解可能な面トポグラフィ又は必要とされる材料コントラストは、例えば、高さ分解能、感度、及び/又はSN比のようなそれぞれの測定機器の性能に依存する。
図5の例に基づいて下記で説明するように、マスクブランクの面上で平面である埋め込まれた位相欠陥が存在し、従って、これらの欠陥は面感知方法によって検出することができない。
【0070】
図3の模式
図300は、欠陥の有効欠陥サイズの概念を図解している。
図3の例は、基板230の前部側面115の膨張部の形態を有する局所欠陥320を通る断面を表している。
図2におけるものと類似の方式で、局所欠陥320は、多層構造340を通して実質的に変化することなく伝播する。面360の領域370は、欠陥320の有効欠陥サイズを表している。このサイズは、欠陥320の補償と修復の両方に使用される欠陥320の横寸法に関連する。
図3に象徴しているように、一般的に、有効欠陥サイズ370は、欠陥320の実横寸法よりも小さい。ガウス分布を有する欠陥320では、有効欠陥サイズは、欠陥320の半値全幅(FWHM)の1倍又は2倍に対応することができる。
【0071】
有効欠陥サイズの領域370が修復される場合に、欠陥320の残っている残余380は、マスクブランク350から生成されたEUVマスクの露光中にウェーハ上で視認可能な故障にもはや至らない。有効欠陥サイズの概念は、個々の欠陥220、320のサイズを最小にすることによってEUVマスクの生成中のマスクブランク250、350の効率的な利用を可能にする。更に、この概念は、欠陥220、320のリソース効率的修復を可能にする。
【0072】
領域390は、欠陥320の位置及びその輪郭を決定するときに考慮することができる安全マージンを示している。この追加の安全マージンを使用する場合に、欠陥320の有効欠陥サイズ370は、実際の欠陥320の横寸法よりも小さく、それに等しく、又はそれより大きいとすることができる。更に、有効欠陥サイズを決定するために、好ましくは、取りわけ、実際の欠陥の位置を決定するときに不可避な誤差、更にマスクの露光に使用される光源の非テレセントリック性に関する後に下記で説明する観点が考慮される。
【0073】
図4の模式
図400は、マスクブランク250の座標系に対する
図2の欠陥220の重心410の位置特定を図解している。例えば、基準マーク420の規則的配置をこのマスクブランクの多層構造240内にエッチングすることによってマスクブランク250上に座標系を提供する。
図4の模式
図400は、1つの基準マーク420を表している。吸収体パターン170の配置を最適化することによる欠陥の補償を可能にするためには、欠陥220の重心410と基準マーク420の間の距離430の位置精度は、30nm(3σの偏差を有する)よりも高く、好ましくは、5nm(3σの偏差を有する)よりも高くなければならない。現時点で利用可能な測定機器は、100nm(3σの偏差を有する)の領域に位置精度を有する。
【0074】
欠陥220、320のトポグラフィの決定と類似の方式で、1又は2以上の基準マーク420に対する重心410の距離430を複数の測定方法を用いて独立して決定しなければならない。一例として、例えば、EUV波長範囲に対するAIMSTM(空間像メッセージ送信システム)及び/又はABI(化学線ブランク検査)のための装置、すなわち、埋め込みEUVブランク欠陥を検出し、その位置を決定するための走査暗視野EUV顕微鏡のような化学線撮像法がこの目的に適している。更に、この目的に対して、面感知方法、例えば、走査プローブ顕微鏡、走査粒子顕微鏡、及び/又は化学線波長外の光学撮像を使用することができる。更に、欠陥220、320をマスクブランク250、350の範囲でのこの欠陥の物理的位置で測定する例えばX線のような方法をこの目的に使用することができる。
【0075】
面260上では目立たないが、それにも関わらずEUVマスクの露光中に視認可能な故障をもたらす多層構造240の欠陥を検出するのは複雑である。特に、そのような欠陥の正確な位置を定めるのは困難である。
図5の模式
図500は、基板510の面115が局所膨張部520を有するマスクブランク550からの抜粋を通る断面を示している。局所欠陥520は、多層構造540内を伝播する。伝播570は、欠陥520の横寸法の増加と共にその高さの緩やかな減衰をもたらす。多層構造540の最終層120、125は、実質的に平面である。キャッピング層130上では、欠陥520の領域内では高度を決定することができない。
【0076】
しかし、現在の修復方法、特に補償的修復では、修復を実施する位置を見つけ出す必要がある。以上により、欠陥520は修復には不適切であり、従って、吸収体パターン170の要素で覆うことによって補償しなければならない。
【0077】
更に、多層構造240の層120、125と垂直に伝播せず、90°とは異なる角度で伝播する欠陥が存在する。これらの欠陥に関しては、その位置及びトポグラフィを決定すること、従って、ウェーハの露光中のこれらの欠陥の効果を示すことは同じく困難である。異なる方法を用いて得られた個々の欠陥220、320の欠陥位置が互いから明確に偏位する場合に、埋め込み欠陥が多層構造240、440内で垂直から離れる方向に向く成長を有することの兆候である。
図6の模式
図600は、欠陥620に基づいてこの関係を図解している。輪郭610は、例えば、X線放射線を用いて決定されたもののような欠陥を再現している。点630は、基板210、410の面115の近くにおける欠陥の重心を示している。X線放射線の代わりに、例えば、面115において基板210、410を通る光学的放射を用いて欠陥620を検査することができる。
【0078】
輪郭640は、多層構造240、440上のキャッピング層130の面260、460において、走査プローブ顕微鏡、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定されたもののような欠陥620のトポロジーを表している。欠陥620のサイズは、多層構造240、440における欠陥620の伝播の結果として実質的に変化しない。点650は、次に、キャッピング層130の面260、460上の欠陥620の重心を示している。しかし、欠陥620の重心は、多層構造240、440における成長中に矢印660に沿ってシフトし、これは、欠陥620が多層構造240、440内で垂直に成長しないことを示している。
【0079】
基準マーク420に対する欠陥620の欠陥位置の測定精度を
図7に例示している。到達可能な精度は複数の寄与から構成され、第1に、欠陥位置特定の精度は、入射EUV光子180の非テレセントリック性に起因して多層構造240、440の反射率に依存する。
図8aは、この関係を図解している。多層構造840の個々のMoSi層の限られた反射率に起因して、個々のEUV光子180は、基板810の面115に至るまで侵入することができ、かつこの面から反射される。
図8bは、この効果の結果として、欠陥820の横寸法よりも有意に大きい区域850を吸収体パターン170の要素によって覆わなければならないことを示している。
【0080】
図7では、矢印710が、結果として引き起こされる欠陥サイズ620の見かけ上の拡大720を象徴している。
【0081】
第2に、到達可能な精度は、面260、460上の欠陥サイズ640及び欠陥620の重心650を決定し、同じく多層構造240、440におけるその伝播660を決定することを可能にする精度による影響を受ける。更に、この精度は、欠陥を修復するためのツール、例えば、走査粒子顕微鏡又は走査電子顕微鏡を配置することができる精度による影響を受ける。最後に言及したファクタは、1又は2以上の基準マーク420に対する距離430を決定する精度に更に依存する。これらの誤差は統計的性質のものである。これらの誤差は、補償又は修復される欠陥サイズを決定するときに考慮しなければならない。
図7では、これらの統計的な不確実性に起因して引き起こされる欠陥620の修復される区域の拡大を矢印730及び輪郭740で象徴している。
【0082】
上記で記述した露光中の欠陥の可視性の観点と共に全体的に、説明する方法において好ましく使用される有効欠陥サイズ740がこうして生じる。
【0083】
マスクブランク250、350、550の欠陥220、320、520、620を検査するために、上述したものに加えて更に強力なツールが利用可能である。この点に関して、本出願人名義の特許出願DE 10 2011 079 382.8は、EUVマスクの欠陥を検査するために使用することができる方法を記載している。欠陥を解析するために、走査プローブ顕微鏡、走査粒子顕微鏡、及び紫外放射線源が使用される。これらの面感知方法を用いて、欠陥220の輪郭及びその位置を決定することができる。
【0084】
更に、出願DE 2014 211 362.8は、マスクブランク250の基板210の前部側面115を詳細に解析し、それによってマスクブランク250の基板210の前部側面115上の欠陥位置を決定することを可能にするデバイスを開示している。
【0085】
更に、本出願人名義のPCT出願WO 2011/161 243は、フォーカススタックを生成することに基づいて多層構造240、340、540の欠陥220、320、520、620のモデルを決定し、多層構造240、340、540の面260、360、560及び様々な欠陥モデルを検査することを開示している。
【0086】
欠陥220、320、520、620の検査後に、欠陥位置、すなわち、欠陥の重心、及び欠陥トポロジーは、解析ツールの測定データから計算される。欠陥トポロジー又は欠陥輪郭から有効欠陥サイズが決定される。全体的に、マスクブランク250、350、550から個々のプリント可能欠陥220、320、520、620の位置及び有効欠陥サイズ370、740を列挙する欠陥マップがこうして決定される。
【0087】
図9aは、各場合に1又は複数の欠陥920を有するいくつかの又はスタック910のマスクブランク950を示している。
図9aでは、欠陥920を黒点で象徴している。マスクブランク950が複数タイプの欠陥920を有する状況には頻繁に遭遇する。重大な、すなわち、視認可能又はプリント可能なマスクブランク950の欠陥920の個数は、現在一般的に20から数百の範囲にある。限界欠陥サイズは、考察中の技術ノードに依存する。一例として、16nm技術ノードでは、約12nmの球体−体積−同等直径で既に限界である。
【0088】
一般的に、マスクブランク950の基板210の局所凹部220(
図2を参照されたい)から複数の欠陥920が発する。上述したように、マスクブランク950の欠陥920は、例えば、化学線波長の範囲にある放射線を使用する検査によって検査することができる。
【0089】
図9bは、マスクレイアウト930のライブラリ940を再現している。ライブラリ940は、単一集積回路(IC)又は単一構成要素のマスクレイアウト930を有するマスクスタックを1つしか含むことができない。しかし、ライブラリ940が様々なIC又は構成要素のレイアウト930のマスクスタックを含むことが好ましい。更に、ライブラリ940が様々な技術ノードのマスクレイアウト930を含む場合であれば有利である。この場合に、スタック910のマスクブランク950に対して、その欠陥920に最適に適合するマスクレイアウト930がライブラリ940から選択される。ライブラリ940からのマスクレイアウト930の選択に対して課せられる境界条件の個数が少ない程、対応性をより良くすることができる。
【0090】
次いで、選択されるマスクレイアウト960に対して、その吸収体パターン170が、最適化工程においてマスクブランク950に適合される。この工程を
図9cに略示している。以下のものが現時点で最適化パラメータとして利用可能なものである。最初に、マスクブランク950に対するマスクレイアウト960の向き、すなわち、4つの向き0°、90°、180°、及び270°がある。
【0091】
更に、マスクレイアウト960のシフト、従って、マスクフレームに対する吸収体パターン170のx方向及びy方向のシフトがある。レイアウト960又は吸収体パターン170のシフトは、ウェーハステッパによってマスクフレームの反対方向のシフトを用いて補償することができる。吸収体パターン170のシフトは、現時点では≦±200μmに限定されている。現在のウェーハステッパは、この大きさまでのマスクオフセットを補償することができる。
【0092】
最後に、向けられたマスクパターン960は、±1°までの角度だけ回転させることができる。この角度範囲でのフォトマスクの回転も、最新のウェーハステッパによって同じく補償することができる。
【0093】
図10は、
図9で記述した最適化工程が従来技術においてどのように実施されるかを図解している。
図9の解説中に上述したように、マスクブランク950の欠陥920の補償の一般概念は、マスクブランク950の可能な限り多くの欠陥920を吸収体パターン170の要素によって覆うために、欠陥920をマスクレイアウト960に適応させるというものである。同じく上述のように、向き、すなわち、x方向及びy方向のシフトは、欠陥920を覆う確率を改善するために補助的に使用することができる。
図10に示すように、現在の欠陥補償工程は、マスクブランク950の補償される欠陥920の個数を最大にする。最適化工程の終了時には、欠陥920の全てを補償することができるか否かが確認される。補償することができる場合に、マスクブランク950からEUVマスクを生成するために最適化されたマスクレイアウト960が使用される。補償することができない場合であっても、EUVマスクを生成するために最適化されたマスクレイアウトが使用され、残存するか又は補償されなかった欠陥は修復しなければならない。
【0094】
最後に、
図11は、本出願において定めた本方法の一例示的実施形態の流れ
図1100を示している。本方法は、段階1102で始まる。判断ブロック1104は、マスクレイアウト960の吸収体パターン170の最適化によってマスクブランク950の欠陥920の全てを補償することができるか否かを確認する段階を含む。本出願における補償段階は、マスクブランク950から生成されたEUVマスクの露光中に欠陥920がウェーハ上にプリント可能又は視認可能な欠陥を持たないように吸収体パターン170の要素によって欠陥を覆う段階を意味する。
【0095】
段階1104において、最適化された方式で配置された吸収体パターン170を用いて欠陥920の全てを補償することができる場合に、マスクブランク950からEUVマスクが生成され、本方法は段階1106において終了する。
【0096】
マスクブランク950の欠陥920の全てを補償することができるわけではない場合に、段階1108においてカウンタが初期値に設定される。次いで、判断ブロック1110は、目下着目中の欠陥920を修復することができるか否か、又はそれを補償しなければならないか否かを判断する段階を伴う。マスクブランク950の目下着目中の欠陥を補償しなければならない場合に、段階1112においてこの欠陥は第1の群に分類される。第1の群に割り当てるべき欠陥520、620は、
図5及び
図6で記述したものである。更に、マスクブランク950の平均有効欠陥サイズと比較して非常に大きい有効欠陥サイズを有する欠陥も、同じく第1の群に分類しなければならない。非常に大きい欠陥の修復は非常に複雑である。特に、修復を複数の段階に実施することが必要な可能性がある。従って、非常に大きい欠陥920の修復中にEUVマスクの面の他の領域を損ねる可能性があるという危険性が存在する。
【0097】
次いで、判断段階1116は、目下着目中の欠陥920がマスクブランク950の最後の欠陥920であるか否かを決定する段階を含む。この質問が否定的に回答された場合に、本方法は、段階1120に進行し、欠陥に対するカウンタ指標を1単位だけ増加させる。次いで、本方法は、判断ブロック1110で(i+1)を用いて続行する。欠陥920が解析される。着目中の欠陥920がマスクブランク950の最後の欠陥920であった場合は(i=N)、本方法は段階1124において続行する。
【0098】
上記とは対照的に、欠陥920を修復することができる場合に、段階1114においてこの欠陥920は第2の群に分類される。判断ブロック1118も、i番目の欠陥がマスクブランク950の最後の欠陥920であるか否かを決定する段階を含む。この質問が否定的に回答された場合に、段階1122において欠陥920のカウンタ指標が1単位だけ増加される。その後に、本方法は、判断ブロック1110において続行する。それとは対照的に、着目中のi番目の欠陥920がマスクブランク950の最後の欠陥であった場合に、段階1124が次に実施される。
【0099】
段階1124において、第2の群の欠陥が優先順位付けされる。第2の群の欠陥に割り振られた優先順位は、欠陥920自体の複数の特徴及び/又はその修復における態様を組み合わせる。優先順位は、2つの値、例えば、高い優先順位及び低い優先順位を取ることができる。しかし、優先順位レベルは、より細かい細分性を有するように選択することができ、例えば、1から10までの数値のような任意スケールを有することができる。
【0100】
欠陥内部特徴の一例は、有効欠陥サイズ370、740である。有効欠陥サイズ370、740が大きい程、優先順位は高い。欠陥の優先順位の定義に影響を及ぼす欠陥修復の態様は、例えば、欠陥920を修復するのに必要とされるコストである。欠陥920の優先順位の評価の役割を演じる更に別の態様の例は、欠陥修復の複雑さ及び危険性である。
【0101】
マスクブランク950の欠陥920を2つの群に分類し、第2の群内の欠陥を優先順位付けする代わりに、欠陥を2よりも多い群に分割することができる。この場合に、修復不能欠陥は、依然として第1の群に分類される。修復可能欠陥は、その優先順位に従って更に別の群に割り振られる。
【0102】
更に、欠陥を第2の群に割り振る工程を第1の群に割り振る段階に逆転させることも可能である。これは、例えば、高い優先順位を有する全ての欠陥が第2の群から第1の群に再分配されることを意味する。有意に拡大された第1の群の欠陥の全てを補償することができない場合に、第1の群に新しく追加された欠陥は、第2の群に徐々に再割り当てされる。
【0103】
第2の群の欠陥を優先順位付けした後に、本方法は、段階1126において続行する。この段階では、第2の群の高い優先順位又は最高優先順位を有する少なくとも1つの欠陥が第1の群に割り当てられる。ここで説明する方法は、段階1126において第1の群に追加される欠陥の個数に関して柔軟である。この点に関して、1個、2個、5個、又は10個の高優先順位欠陥を第1の群に例えば1段階で割り振ることができる。第2の群から第1の群に移される欠陥の個数をマスクブランク950の欠陥パターンに依存するようにすることも考えられる。
【0104】
次の段階1128は、
図9の解説で上述したように、マスクブランク950の欠陥920の第1の群に可能な限り最良の方法で適合するマスクレイアウト960を選択する段階を含む。更に、同じく
図9で上述したように、選択される吸収体パターン170のマスクブランク950上での配置が最適化される。
【0105】
判断ブロック1130は、この配置に対して最適化された吸収体パターン170が、第1の群の欠陥、及び第2の群から追加された欠陥920の全てを補償することができるか否かを判断する段階を含む。補償することができない場合に、第2の群から追加された欠陥が第2の群に差し戻され、段階1132において、本方法は、第1の欠陥群を用いて
図9に従って最適化工程を実施する。次いで、段階1134において、最適化された方式で配置された吸収体パターン170を用いて、EUVマスクがマスクブランク950から生成される。
【0106】
段階1136において、第2の群の欠陥920が修復される。第2の群の欠陥920を修復するために、上述のように、最初に補償的修復方法を採用することができる。更に、特許出願US 61/324 467において、本出願人は、基板210、310、510の面115を目標を定めた方式で変更し、それによって第2の群の欠陥920を修復することを可能にする方法を開示している。既に上述のように、本出願人名義の出願WO 2011/161 243は、マスク構造210、310、510の面115上の欠陥920のイオンビームを用いた修復を記載している。
【0107】
次いで、判断ブロック1130において、段階1128における最適化工程が、その直前の段階1142で新しく追加された欠陥を含む更新された第1の群の全ての欠陥を補償することができることが確認された場合に、段階1140において更新された第1の群が生成される。更新された第1の群は、第1の群に段階1126において第1の群に追加された欠陥を加えたものを含む。段階1144において、第2の群の高い優先順位を有する1又は複数の欠陥が、更新された第1の群に割り振られる。この新しい欠陥群に対して、
図9を参照して記述した最適化工程が段階1144において実施される。
【0108】
判断ブロック1146において、欠陥920の全てを依然として補償することができるか否かが確認される。補償することができる場合に、本方法は、ブロック1140まで継続され、オリジナルに生成された更新された第1の群よりも多い欠陥920を含む新しく更新された第1の群を生成する。本方法は、段階1144における最適化工程が欠陥の全てをもはや補償することができなくなるまで段階1140、1142、1144、及び判断ブロック1146のループを繰り返す。段階1148において、更新された第1の群、すなわち、第2の群から直前の段階1142において追加された欠陥を持たない更新された第1の群を決定する。こうして決定された更新された第1の群の欠陥は、最適化工程144によって補償することができる。
【0109】
次いで、本方法は、段階1134に進行し、最適化された方式で配置された吸収体パターン170を用いてマスクブランク950からEUVマスクを生成する。上述のように、第2の群の残存欠陥は、ブロック1136において修復される。最後に、本方法は、段階1138において終了する。
【0110】
図11の流れ図には例示していないが、段階1134において最適化された吸収体パターンを採用する前に、第1の群の欠陥補償を維持しながら、少なくとも部分的に第2の群の1又は複数の欠陥の効果を補償するために吸収体パターンの個々の要素を修正する更に別の最適化を補助的に実施することができる。この更に別の最適化は、例えば、吸収体パターンの個々の要素の形状及びサイズを変更することによって達成することができる。それによって段階1136において第2の群の残存欠陥を修復するときのコストが更に低減される。
【0111】
マスクブランクの欠陥を少なくとも2つの群に分類することにより、提示した本方法は、マスクブランクの全ての関連のプリント可能欠陥を排除することができることを確実にする。更に、2又は3以上の群への欠陥の分類は、リソース効率的な欠陥処理工程を可能にする。
【符号の説明】
【0112】
1100 本方法の一例示的実施形態の流れ図
1124 第2の群の欠陥を優先順位付けする段階
1126 少なくとも1つの高優先順位欠陥を第1の群に追加する段階
1132 第1の群に対して吸収体パターンを最適化する段階
1136 第2の群の欠陥を修復する段階