特許第6674619号(P6674619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674619
(24)【登録日】2020年3月11日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】画像生成方法及び画像生成装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20200323BHJP
   G01B 9/02 20060101ALI20200323BHJP
   G01J 3/45 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   G01B11/02 G
   G01B9/02
   G01J3/45
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-242192(P2015-242192)
(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公開番号】特開2017-106860(P2017-106860A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】林 恭平
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−033216(JP,A)
【文献】 特開2008−002909(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/126778(WO,A1)
【文献】 特表2013−518256(JP,A)
【文献】 大西 晃宏,解説「分析・物性評価」シリーズ フーリエ変換赤外分光分析法,ネットワークポリマー,2011年,Vol.32, No.1,p.50-57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/00 − G01B 9/10
G01B 11/00 − G01B 11/30
G01J 3/00 − G01J 3/52
G01N 21/00 − G01N 21/01
G01N 21/17 − G01N 21/61
A61B 1/00 − A61B 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光源から出射された白色光を測定対象物に向かう測定光と反射体とに向かう参照光とに分割して、前記測定対象物で反射した前記測定光と前記反射体で反射した前記参照光との干渉光をモノクロの撮像素子で撮像する白色干渉計の前記測定対象物のカラー全焦点画像を生成する画像生成方法において、
前記撮像素子による前記干渉光の撮像により生成された干渉信号であって且つ前記干渉光の波長毎の干渉信号成分の総和である干渉信号を、前記カラー全焦点画像の画素毎に取得する干渉信号取得ステップと、
前記干渉信号取得ステップで取得した前記画素毎の前記干渉信号から、前記測定対象物で反射した前記測定光の波長毎の信号強度を、前記画素毎に検出する信号強度検出ステップと、
前記信号強度検出ステップで前記画素毎に検出した前記波長毎の信号強度に基づき、前記画素毎の色を決定する色決定ステップと、
を有し、
前記参照光の波長毎の信号強度を示す参照光スペクトル情報を取得する参照光スペクトル情報取得ステップを有し、
前記信号強度検出ステップは、前記干渉信号を、前記波長毎の信号強度を示すスペクトル情報に変換する変換処理と、前記変換処理された前記スペクトル情報を、前記参照光スペクトル情報取得ステップで取得した前記参照光スペクトル情報で正規化して、前記測定光の波長毎の信号強度を示す測定光スペクトル情報を生成する正規化処理とを行うことにより、前記波長毎の信号強度を検出する画像生成方法。
【請求項2】
白色光源から出射された白色光を測定対象物に向かう測定光と反射体とに向かう参照光とに分割して、前記測定対象物で反射した前記測定光と前記反射体で反射した前記参照光との干渉光をモノクロの撮像素子で撮像する白色干渉計の前記測定対象物のカラー全焦点画像を生成する画像生成方法において、
前記撮像素子による前記干渉光の撮像により生成された干渉信号であって且つ前記干渉光の波長毎の干渉信号成分の総和である干渉信号を、前記カラー全焦点画像の画素毎に取得する干渉信号取得ステップと、
前記干渉信号取得ステップで取得した前記画素毎の前記干渉信号から、前記測定対象物で反射した前記測定光の波長毎の信号強度を、前記画素毎に検出する信号強度検出ステップと、
前記信号強度検出ステップで前記画素毎に検出した前記波長毎の信号強度に基づき、前記画素毎の色を決定する色決定ステップと、
を有し、
カラー撮像素子の分光感度特性を取得する分光感度特性取得ステップを有し、
前記色決定ステップは、前記信号強度検出ステップで前記画素毎に検出した前記波長毎の信号強度と、前記分光感度特性取得ステップで取得した前記分光感度特性とに基づき、前記画素毎の色を決定する画像生成方法。
【請求項3】
前記信号強度検出ステップは、前記干渉信号に対して前記波長毎の信号強度を示すスペクトル情報に変換する変換処理を行うことにより、前記波長毎の信号強度を検出する、請求項に記載の画像生成方法。
【請求項4】
前記参照光の波長毎の信号強度を示す参照光スペクトル情報を取得する参照光スペクトル情報取得ステップを有し、
前記信号強度検出ステップは、前記干渉信号を、前記波長毎の信号強度を示すスペクトル情報に変換する変換処理と、前記変換処理された前記スペクトル情報を、前記参照光スペクトル情報取得ステップで取得した前記参照光スペクトル情報で正規化して、前記測定光の波長毎の信号強度を示す測定光スペクトル情報を生成する正規化処理とを行うことにより、前記波長毎の信号強度を検出する、請求項に記載の画像生成方法。
【請求項5】
前記変換処理には、フーリエ変換処理、コサイン変換処理、及びウェーブレット変換処理の少なくともいずれかが含まれる、請求項1、3、又は4に記載の画像生成方法。
【請求項6】
前記画素毎の前記測定対象物の高さ情報を取得する高さ情報取得ステップと、
前記色決定ステップで決定した前記画素毎の色と、前記高さ情報取得ステップで取得した前記高さ情報とに基づき、前記カラー全焦点画像を生成する画像生成ステップと、
を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の画像生成方法。
【請求項7】
白色光源から出射された白色光を測定対象物に向かう測定光と反射体とに向かう参照光とに分割して、前記測定対象物で反射した前記測定光と前記反射体で反射した前記参照光との干渉光をモノクロの撮像素子で撮像する白色干渉計の前記測定対象物のカラー全焦点画像を生成する画像生成装置において、
前記撮像素子による前記干渉光の撮像により生成された干渉信号であって且つ前記干渉光の波長毎の干渉信号成分の総和である干渉信号を、前記カラー全焦点画像の画素毎に取得する干渉信号取得部と、
前記干渉信号取得部が取得した前記画素毎の前記干渉信号から、前記測定対象物で反射した前記測定光の波長毎の信号強度を、前記画素毎に検出する信号強度検出部と、
前記信号強度検出部が前記画素毎に検出した前記波長毎の信号強度に基づき、前記画素毎の色を決定する色決定部と、
を備え
前記参照光の波長毎の信号強度を示す参照光スペクトル情報を取得する参照光スペクトル情報取得部を備え、
前記信号強度検出部は、前記干渉信号を、前記波長毎の信号強度を示すスペクトル情報に変換する変換処理と、前記変換処理された前記スペクトル情報を、前記参照光スペクトル情報取得部が取得した前記参照光スペクトル情報で正規化して、前記測定光の波長毎の信号強度を示す測定光スペクトル情報を生成する正規化処理とを行うことにより、前記波長毎の信号強度を検出する画像生成装置。
【請求項8】
白色光源から出射された白色光を測定対象物に向かう測定光と反射体とに向かう参照光とに分割して、前記測定対象物で反射した前記測定光と前記反射体で反射した前記参照光との干渉光をモノクロの撮像素子で撮像する白色干渉計の前記測定対象物のカラー全焦点画像を生成する画像生成装置において、
前記撮像素子による前記干渉光の撮像により生成された干渉信号であって且つ前記干渉光の波長毎の干渉信号成分の総和である干渉信号を、前記カラー全焦点画像の画素毎に取得する干渉信号取得部と、
前記干渉信号取得部が取得した前記画素毎の前記干渉信号から、前記測定対象物で反射した前記測定光の波長毎の信号強度を、前記画素毎に検出する信号強度検出部と、
前記信号強度検出部が前記画素毎に検出した前記波長毎の信号強度に基づき、前記画素毎の色を決定する色決定部と、
を備え、
カラー撮像素子の分光感度特性を取得する分光感度特性取得部を備え、
前記色決定部は、前記信号強度検出部が前記画素毎に検出した前記波長毎の信号強度と、前記分光感度特性取得部が取得した前記分光感度特性とに基づき、前記画素毎の色を決定する画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色干渉計で測定対象となった測定対象物のカラー全焦点画像を生成する画像生成方法及び画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
白色干渉法を用いて測定対象物の表面の各位置の高さ情報を取得する白色干渉計(白色干渉高さ測定器ともいう)が知られている。白色干渉計は、白色光源から出射した白色光を測定対象物に向かう測定光と参照ミラー等の反射体に向かう参照光とに分割し、測定光又は参照光の光路長を変えながら、測定対象物で反射した測定光と反射体で反射した参照光との干渉光を撮像素子で撮像する。この干渉光を撮像素子で撮像して得られた干渉信号には、測定光及び参照光の各々の光路長が等しくなる位置にピークが検出されるため、干渉信号を解析してそのピーク位置を検出することで測定対象物の表面の各位置の高さ情報を取得することができる。これにより、測定対象物の表面の全焦点画像が得られる。ここで、全焦点画像とは測定対象物の表面の各位置の全てに焦点の合った画像である。
【0003】
近年、測定対象物の表面のより詳細な様相を把握できるように、全焦点画像として、カラー画像の全焦点画像、すなわち、カラー全焦点画像の取得が行われている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、白色干渉計の撮像素子として単板式のカラー撮像素子を用いて前述の干渉光を撮像することにより、測定対象物の表面の各位置の高さ情報と共に各位置の色情報を取得して、カラー全焦点画像を生成する方法が記載されている。また、非特許文献1には、三板式のカラー撮像素子[赤(R)、緑(G)、青(B)の色情報をそれぞれ得る3つの撮像素子]を用いて、3色(RGB)の光源によるR光、G光、B光の出射を切り替えながら、三板式の撮像素子の各々で干渉光を撮像することで、カラー全焦点画像を生成する方法も記載されている。
【0005】
特許文献1には、測定対象物からの透過光又は反射光を、カラー画像を得るためのカラー情報取得系と、測定対象物の表面の各位置の高さ情報を取得するための高さ情報取得系とに分割して、カラー情報取得系で取得したカラー画像と高さ情報取得系で取得した高さ情報とに基づき、カラー全焦点画像を生成する共焦点顕微鏡が記載されている。
【0006】
特許文献2には、測定対象物に対するフォーカス位置を走査しながらこの測定対象物を単板式のカラー撮像素子で撮像してフォーカス位置毎の合焦評価値を求め、最も合焦評価値が高くなる位置を合焦位置として決定し、この合焦位置で測定対象物を撮像してカラー全焦点画像を生成するコントラスト検出方式の高さ情報取得装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4473987号公報
【特許文献2】特許第5259348号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Interferometric microscope with true color imaging”、[online]、[平成27年11月4日検索]、インターネット〈http://www.zygo.com/library/papers/proc_9203_1.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記非特許文献1に記載の白色干渉計では、単板式のカラー撮像素子を用いて干渉光を撮像するが、この単板式のカラー撮像素子は複数色(例えばRGB)のカラーフィルタがモザイク状に配置された構造を有している。このため、単板式のカラー撮像素子では、カラーフィルタを有さないモノクロの撮像素子と比較して水平方向の解像度が低下するため、測定対象物の表面の各位置の高さ情報の取得を高精度に行うことができない。
【0010】
また、上記非特許文献1に記載のように、単板式のカラー撮像素子の代わりに三板式のカラー撮像素子を用いた場合、白色干渉計の大型化及び製造コストの増加という問題が発生する。さらに、3色の光源によるR光、G光、B光の出射を切り替えながら三板式のカラー撮像素子で撮像を行う場合、単板式のカラー撮像素子やモノクロの撮像素子で撮像を行うよりも画像の取得に3倍の時間が掛かる、或いは時間短縮のために高速撮像が可能な高価な撮像素子を用いる必要がある。
【0011】
また、白色干渉計において、上記特許文献1に記載のように干渉光をカラー情報取得系と高さ情報取得系とに分割した場合、この分割により干渉光の光量が低下するため、カラー情報取得系及び高さ情報取得系の各々における干渉光の検出感度が低下してしまう。
【0012】
さらに、白色干渉計において、上記特許文献2に記載のコントラスト検出方式を採用した場合、測定対象物の表面の各位置の全ての高さ情報の取得を行わないため、精度の高い高さ情報が得られない。また、単板式のカラー撮像素子を用いて撮像を行うため、上記の通り撮像素子の水平方向の解像度が低下するという問題が発生する。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、撮像素子の水平方向の解像度低下防止と、高精度の高さ情報の取得と、短時間且つ低コストのカラー全焦点画像の生成とを実現可能な画像生成方法及び画像生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的を達成するための画像生成方法は、白色光源から出射された白色光を測定対象物に向かう測定光と反射体とに向かう参照光とに分割して、測定対象物で反射した測定光と反射体で反射した参照光との干渉光をモノクロの撮像素子で撮像する白色干渉計の測定対象物のカラー全焦点画像を生成する画像生成方法において、撮像素子による干渉光の撮像により生成された干渉信号であって且つ干渉光の波長毎の干渉信号成分の総和である干渉信号を、カラー全焦点画像の画素毎に取得する干渉信号取得ステップと、干渉信号取得ステップで取得した画素毎の干渉信号から、測定対象物で反射した測定光の波長毎の信号強度を、画素毎に検出する信号強度検出ステップと、信号強度検出ステップで画素毎に検出した波長毎の信号強度に基づき、画素毎の色を決定する色決定ステップと、を有する。
【0015】
この画像生成方法によれば、水平方向の解像度が低い単板式のカラー撮像素子や時間短縮のために高速撮像が可能な高価な三板式のカラー撮像素子を用いることなく、モノクロの撮像素子により取得された干渉信号に基づき、カラー全焦点画像を生成することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る画像生成方法において、信号強度検出ステップは、干渉信号に対して波長毎の信号強度を示すスペクトル情報に変換する変換処理を行うことにより、波長毎の信号強度を検出する。これにより、測定光の波長毎の信号強度を検出することができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る画像生成方法において、参照光の波長毎の信号強度を示す参照光スペクトル情報を取得する参照光スペクトル情報取得ステップを有し、信号強度検出ステップは、干渉信号を、波長毎の信号強度を示すスペクトル情報に変換する変換処理と、変換処理されたスペクトル情報を、参照光スペクトル情報取得ステップで取得した参照光スペクトル情報で正規化して、測定光の波長毎の信号強度を示す測定光スペクトル情報を生成する正規化処理とを行うことにより、波長毎の信号強度を検出する。これにより、白色干渉計の各部の特性の影響を除いた測定光スペクトル情報のみに基づいてカラー全焦点画像の画素の色を決定することができるので、より正確に画素の色を決定することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る画像生成方法において、変換処理には、フーリエ変換処理、コサイン変換処理、及びウェーブレット変換処理の少なくともいずれかが含まれる。これにより、干渉信号から測定光の波長毎の信号強度を検出することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る画像生成方法において、カラー撮像素子の分光感度特性を取得する分光感度特性取得ステップを有し、色決定ステップは、信号強度検出ステップで画素毎に検出した波長毎の信号強度と、分光感度特性取得ステップで取得した分光感度特性とに基づき、画素毎の色を決定する。これにより、カラー全焦点画像の各画素の色を、カラー撮像素子で撮像を行った場合と同様の色に決定することができる。
【0020】
本発明の他の態様に係る画像生成方法において、画素毎の測定対象物の高さ情報を取得する高さ情報取得ステップと、色決定ステップで決定した画素毎の色と、高さ情報取得ステップで取得した高さ情報とに基づき、カラー全焦点画像を生成する画像生成ステップと、を有する。これにより、モノクロの撮像素子により取得された干渉信号に基づき、カラー全焦点画像を生成することができる。
【0021】
また本発明の目的を達成するための画像生成装置は、白色光源から出射された白色光を測定対象物に向かう測定光と反射体とに向かう参照光とに分割して、測定対象物で反射した測定光と反射体で反射した参照光との干渉光をモノクロの撮像素子で撮像する白色干渉計の測定対象物のカラー全焦点画像を生成する画像生成装置において、撮像素子による干渉光の撮像により生成された干渉信号であって且つ干渉光の波長毎の干渉信号成分の総和である干渉信号を、カラー全焦点画像の画素毎に取得する干渉信号取得部と、干渉信号取得部が取得した画素毎の干渉信号から、測定対象物で反射した測定光の波長毎の信号強度を、画素毎に検出する信号強度検出部と、信号強度検出部が画素毎に検出した波長毎の信号強度に基づき、画素毎の色を決定する色決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明の画像生成方法及び画像生成装置は、撮像素子の水平方向の解像度低下防止と、高精度の高さ情報の取得と、短時間且つ低コストのカラー全焦点画像の生成とを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】測定対象物の表面形状を測定する測定装置の構成を示すブロック図である。
図2】(A),(B)は、撮像素子から測定装置本体に入力される1垂直走査分の干渉信号を説明するための説明図である。
図3】測定装置本体の制御部の機能ブロック図である。
図4】(A),(B)は、信号強度検出部による干渉信号に対するフーリエ変換処理を説明するための説明図である。
図5】(A),(B),(C)は、信号強度検出部によるスペクトル情報に対する正規化処理を説明するための説明図である。
図6】色決定部によるカラー全焦点画像の各画素の色決定を説明するための説明図である。
図7】画像生成部によるカラー全焦点画像の生成を説明するための説明図である。
図8】測定装置によるカラー全焦点画像の生成の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、測定対象物9の表面形状を測定する測定装置10の構成を示すブロック図である。図1に示すように、測定装置10は、白色干渉計11と、本発明の画像生成装置として機能する測定装置本体12と、を含んで構成されている。測定装置10は、白色干渉計11により測定対象物9の表面の各位置の高さを測定して測定対象物9の表面形状を測定すると共に、測定装置本体12において測定対象物9の表面の各位置の全てに焦点の合ったカラー画像であるカラー全焦点画像13を生成する。
【0025】
<白色干渉計の構成>
白色干渉計11は、所謂マイケルソン型の干渉計であり、同軸照明系15と、垂直走査系16と、ステージ17と、結像レンズ18と、撮像素子19と、を含んで構成されている。
【0026】
同軸照明系15は、白色光源21と、第1ビームスプリッタ22とを有している。白色光源21は、図中側方にある第1ビームスプリッタ22に向けて白色光L0を出射する。第1ビームスプリッタ22は、白色光源21から入射した白色光L0を図中下方の垂直走査系16及び測定対象物9に向けて反射する。また、第1ビームスプリッタ22は、垂直走査系16から入射した後述の干渉光L3を図中上方の結像レンズ18に向けてそのまま透過させる。
【0027】
垂直走査系16は、干渉用対物レンズ24と、第2ビームスプリッタ25と、本発明の反射体に相当する参照ミラー26と、を有している。
【0028】
干渉用対物レンズ24は、第1ビームスプリッタ22の図中下方に配置されており、この第1ビームスプリッタ22から入射した白色光L0を図中下方の第2ビームスプリッタ25に向けて出射する。また、干渉用対物レンズ24は、第2ビームスプリッタ25から入射した後述の干渉光L3を第1ビームスプリッタ22に向けて出射する。
【0029】
第2ビームスプリッタ25は、干渉用対物レンズ24から入射した白色光L0を測定光L1と参照光L2とに分割して、測定光L1を図中下方の測定対象物9に向けてそのまま透過させると共に、参照光L2を図中側方の参照ミラー26に向けて反射する。
【0030】
参照ミラー26は、第2ビームスプリッタ25から入射した参照光L2を、第2ビームスプリッタ25に向けて反射する。なお、本実施形態では、干渉用対物レンズ24による参照光L2の結像位置に参照ミラー26が位置するように、参照ミラー26の位置調整を行っている。
【0031】
第2ビームスプリッタ25から測定対象物9の表面に入射した測定光L1は、測定対象物9の表面で反射された後、第2ビームスプリッタ25に入射する。このため、第2ビームスプリッタ25は、測定対象物9にて反射された測定光L1と、参照ミラー26にて反射された参照光L2とをそれぞれ干渉用対物レンズ24に向けて反射する。これにより、第2ビームスプリッタ25から干渉用対物レンズ24に向けて測定光L1と参照光L2との干渉光L3が出射される。この干渉光L3は、干渉用対物レンズ24及び第1ビームスプリッタ22を透過して結像レンズ18に入射する。
【0032】
また、垂直走査系16は、図示しない垂直走査機構により測定光L1の光路に沿って垂直走査される。これにより、測定光L1の光路長を変えることができる。なお、既述の通り、干渉用対物レンズ24による参照光L2の結像位置に参照ミラー26が位置するため、測定光L1の光路長が参照光L2の光路長と一致(ほぼ一致を含む)した場合には、干渉用対物レンズ24による測定光L1の結像位置に測定対象物9が位置する。その結果、測定光L1の光路長と参照光L2の光路長とが一致したときの干渉光L3のコントラストの低下が抑えられる。
【0033】
ステージ17には、白色干渉計11で測定対象となる測定対象物9がセットされる。
【0034】
結像レンズ18は、第1ビームスプリッタ22から入射した干渉光L3を図中上方の撮像素子19の撮像面に結像させる。
【0035】
撮像素子19は、結像レンズ18の図中上方に配置されたCCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の撮像素子であり、且つカラーフィルタを有さないモノクロの撮像素子である。この撮像素子19は、結像レンズ18により撮像面に結像された干渉光L3を撮像して干渉信号Iを取得する。
【0036】
具体的に撮像素子19は、光電変換素子を含む画素が2次元アレイ状に配置された2次元撮像素子であり、測定対象物9の表面の各位置における1垂直走査分の干渉光L3を同時に撮像して干渉信号Iを取得する。これにより、測定対象物9の表面の各位置にそれぞれ対応するカラー全焦点画像13の画素毎(以下、単に「画素毎」と略す)の1垂直走査分の干渉信号Iが撮像素子19により取得される。そして、撮像素子19から測定装置本体12に対して画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iが出力される。
【0037】
測定装置本体12は、パーソナルコンピュータ等の各種の演算処理装置が用いられる。この測定装置本体12は、白色干渉計11の制御及びカラー全焦点画像13の生成を行う制御部28と、制御部28が生成したカラー全焦点画像13を表示する表示部29と、を含んで構成されている。
【0038】
図2(A),(B)は、撮像素子19から測定装置本体12に入力される画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iを説明するための説明図である。なお、図2(A),(B)の横軸は、垂直走査系16の垂直走査により変化する測定光L1及び参照光L2の光路長差であり、縦軸は干渉信号Iの強度である干渉信号強度である。
【0039】
白色干渉計11では複数波長の光を含む白色光L0を用いて測定を行うため、図2(A)に示した干渉信号Iは、図2(B)に示すような干渉光L3の波長毎の干渉信号成分Iaの総和(合成波)である。なお、干渉信号Iの干渉信号強度は、下記の[数1]式のようなI(ω),I(ω)を係数としたフーリエ級数で表される。
【0040】
【数1】
【0041】
図2(A)及び上記[数1]式に示すように、干渉信号Iの干渉信号強度は、測定光L1及び参照光L2の光路長差がゼロ(ほぼゼロを含む)となる場合に最大強度となる。従って、干渉信号強度が最大となる垂直走査系16の垂直走査位置から、測定対象物9の表面の高さを取得することができる。
【0042】
<測定装置本体の制御部の構成>
図3は、本発明の画像生成装置に相当する測定装置本体12の制御部28の機能ブロック図である。図3に示すように、制御部28は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む各種の演算部や処理部やメモリ等により構成されたものであり、白色干渉計11の動作を制御すると共に、白色干渉計11から入力された干渉信号Iに基づきカラー全焦点画像13を生成する。この制御部28は、干渉計制御部31と、干渉信号取得部32と、高さ情報取得部33と、信号強度検出部34と、スペクトル情報取得部35と、色決定部36と、分光感度特性取得部37と、画像生成部38と、記憶部39として機能する。
【0043】
干渉計制御部31は、白色干渉計11の各部の動作、すなわち白色光源21からの白色光L0の出射、垂直走査系16の垂直走査、及び撮像素子19による干渉光L3の撮像を制御して、測定対象物9の表面の各位置における1垂直走査分の干渉信号Iの取得を実行させる。これにより、白色干渉計11から測定装置本体12に前述の画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iが順次入力される。
【0044】
干渉信号取得部32は、白色干渉計11に有線接続又は無線接続(インターネットを介した接続を含む)する通信インタフェースであり、白色干渉計11から前述の画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iを取得する。そして、干渉信号取得部32は、取得した画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iを、高さ情報取得部33と信号強度検出部34とにそれぞれ出力する。
【0045】
高さ情報取得部33は、干渉信号取得部32から入力された画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iをそれぞれ解析して、画素毎の高さを取得する。なお、マイケルソン型の白色干渉計11で得られた干渉信号Iから高さを取得する方法は公知であるので、具体的な説明は省略する。これにより、カラー全焦点画像13の各画素の高さを示す高さ情報41(図7参照)を取得することができる。そして、高さ情報取得部33は、高さ情報41を後述の画像生成部38へ出力する。
【0046】
信号強度検出部34は、干渉信号取得部32から入力された画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iから、測定対象物9で反射した測定光L1の波長毎の信号強度を、画素毎に検出する。具体的に信号強度検出部34は、画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iに対して後述のフーリエ変換処理と正規化処理とを施すことにより、測定光L1の波長毎の信号強度を、画素毎に検出する。
【0047】
図4(A),(B)は、信号強度検出部34による干渉信号Iに対するフーリエ変換処理を説明するための説明図である。既述の図2(B)及び[数1]式に示したように、干渉信号Iは、波長毎の干渉信号成分Iaの総和、すなわち、I(ω),I(ω)を係数としたフーリエ級数で表される。このため、図4(A)に示す干渉信号Iをフーリエ変換することにより各干渉信号成分Iaの振幅、すなわち、角周波数ω毎の干渉信号成分Iaの信号強度が得られる。なお、角周波数ω毎の干渉信号成分Iaの信号強度は、角周波数ω毎の測定光L1と参照光L2の信号強度の積[I(ω)×I(ω)]で表される。
【0048】
ここで、角周波数ωと波長λとの間にはλ=2πc/ωの関係が成り立つので、角周波数ω毎の干渉信号成分Iaの信号強度から、波長λ毎の干渉信号成分Iaの信号強度が得られる。その結果、前述の画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iをそれぞれフーリエ変換処理することにより、図4(B)に示すように、波長λ毎の干渉信号成分Iaの信号強度を示すスペクトル情報S(λ)が画素毎に得られる。次いで、信号強度検出部34は、画素毎のスペクトル情報S(λ)に対してそれぞれ正規化処理を施す。
【0049】
図5(A),(B),(C)は、信号強度検出部34によるスペクトル情報S(λ)に対する正規化処理を説明するための説明図である。上記の通り、スペクトル情報S(λ)で示される波長λ毎の干渉信号成分Iaの信号強度は、測定光L1と参照光L2の信号強度の積[I(ω)×I(ω)]である。このため、スペクトル情報S(λ)には、測定対象物9で反射した測定光L1の波長λ毎の信号強度を示す測定光スペクトル情報Sn(λ)の他に、白色干渉計11の各部(光源、ビームスプリッタ、レンズ等)の特性の影響を受ける参照光L2の波長λ毎の信号強度を示す参照光スペクトル情報Sr(λ)が含まれている。従って、スペクトル情報S(λ)を参照光スペクトル情報Sr(λ)で正規化することにより、測定光スペクトル情報Sn(λ)が得られる。
【0050】
参照光スペクトル情報Sr(λ)は、事前に測定することができる。このため、既述の図3に示したスペクトル情報取得部35は、事前に測定された参照光スペクトル情報Sr(λ)を取得して信号強度検出部34へ出力する。これにより、信号強度検出部34は、図5(A)に示す画素毎のスペクトル情報S(λ)を、図5(B)に示すスペクトル情報取得部35から取得した参照光スペクトル情報Sr(λ)で下記[数2]式に示すように正規化することで、図5(C)に示す画素毎の測定光スペクトル情報Sn(λ)が得られる。そして、信号強度検出部34は、画素毎の測定光スペクトル情報Sn(λ)を色決定部36(図3参照)に順次出力する。
【0051】
【数2】
【0052】
図3に戻って、色決定部36は、信号強度検出部34から取得した画素毎の測定光スペクトル情報Sn(λ)と、分光感度特性取得部37から取得した標準的な(任意の)単板式のカラー撮像素子の分光感度特性42(図6参照)とに基づき、カラー全焦点画像13の各画素の色(RGB値)をそれぞれ決定する。なお、標準的なカラー撮像素子とは、例えばRGBの各色のカラーフィルタがモザイク状に配置されているものが例として挙げられるが、カラーフィルタの色や配列は特に限定されるものではない。
【0053】
図6は、色決定部36によるカラー全焦点画像13の各画素の色決定を説明するための説明図である。図6に示すように、分光感度特性42は、RGBの各色のカラーフィルタにそれぞれ対応するカラー撮像素子のRGB画素の各々の波長λ毎の感度(分光感度)を示すものである。分光感度特性取得部37は、事前に測定された分光感度特性42を取得して色決定部36へ出力する。これにより、色決定部36は、分光感度特性42と、既述の図5(C)に示した画素毎の測定光スペクトル情報Sn(λ)とから、前述のカラー撮像素子で撮像を行った場合に得られるカラー全焦点画像13の各画素の色(RGB値)を求められる。
【0054】
具体的に色決定部36は、分光感度特性42におけるR画素の分光感度をQr(λ)とし、G画素の分光感度をQg(λ)とし、B画素の分光感度をQb(λ)とした場合、各分光感度Qr(λ),Qg(λ),Qb(λ)と、画素毎の測定光スペクトル情報Sn(λ)とから、下記[数3]式により画素毎のRGB値をそれぞれ算出する。これにより、色決定部36は、カラー全焦点画像13の各画素の色を決定することができる。そして、色決定部36は、画素毎の色の決定結果である色決定情報43(図7参照)を、画像生成部38(図3参照)へ出力する。
【0055】
【数3】
【0056】
図7は、図3に示した画像生成部38によるカラー全焦点画像13の生成を説明するための説明図である。図7に示すように、画像生成部38は、前述の高さ情報取得部33から取得したカラー全焦点画像13の各画素の高さ情報41と、前述の色決定部36から取得したカラー全焦点画像13の各画素の色決定情報43とに基づき、カラー全焦点画像13を生成する。
【0057】
具体的に画像生成部38は、高さ情報41から測定対象物9の表面形状(特に表面の凹凸)を取得することができるため、取得した測定対象物9の表面形状からモノクロの全焦点画像(図示は省略)を生成する。そして、画像生成部38は、色決定情報43からモノクロの全焦点画像の各画素の色を決定する。これにより、画像生成部38は、カラー全焦点画像13を生成することができる。
【0058】
図3に戻って、画像生成部38は、生成したカラー全焦点画像13を記憶部39と表示部29とにそれぞれ出力する。記憶部39は、画像生成部38から入力された画像生成部38を記憶する。また、表示部29は、画像生成部38から入力された画像生成部38を表示する。
【0059】
<測定装置の作用>
次に、図8を用いて上記構成の測定装置10の作用について説明を行う。図8は、測定装置10によるカラー全焦点画像13の生成(本発明の画像生成方法)の流れを示すフローチャートである。なお、スペクトル情報取得部35は、事前に測定された参照光スペクトル情報Sr(λ)を予め取得している(ステップS1、本発明の参照光スペクトル情報取得ステップに相当)。
【0060】
ステージ17上の所定位置に測定対象物9をセットした後、測定装置本体12の図示しない操作部にて測定開始操作を行うと、制御部28の干渉計制御部31は、白色干渉計11の白色光源21から白色光L0を出射させる(ステップS2)。
【0061】
白色光源21から出射された白色光L0は、第1ビームスプリッタ22及び干渉用対物レンズ24を経て第2ビームスプリッタ25に入射して、この第2ビームスプリッタ25により測定光L1と参照光L2とに分割される。測定光L1は、第2ビームスプリッタ25を透過して測定対象物9に入射し、測定対象物9の表面で反射された後に再び第2ビームスプリッタ25に入射する。一方、参照光L2は、第2ビームスプリッタ25により参照ミラー26に向けて反射された後、この参照ミラー26により再度反射されて第2ビームスプリッタ25に入射する。これにより、第2ビームスプリッタ25から測定光L1と参照光L2との干渉光L3が撮像素子19に向けて出射される。
【0062】
干渉光L3は、干渉用対物レンズ24、第1ビームスプリッタ22、及び結像レンズ18を経て撮像素子19の撮像面に入射し、撮像素子19により撮像される(ステップS3)。ここではモノクロの撮像素子19により撮像を行うことにより、単板式のカラー撮像素子を用いた場合とは異なり水平方向の解像度の低下が抑えられる。
【0063】
前述の干渉計制御部31は、白色光源21から白色光L0を出射させた後、図示しない垂直走査機構により垂直走査系16を垂直走査させる(ステップS4)。これにより、測定光L1が入射した測定対象物9の表面の各位置における1垂直走査分の干渉光L3を撮像素子19が撮像して、画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iを生成する。そして、撮像素子19は、画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iを測定装置本体12の制御部28へ出力する。
【0064】
制御部28の干渉信号取得部32は、白色干渉計11の撮像素子19から画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iを取得し、これら画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iを高さ情報取得部33と信号強度検出部34とにそれぞれ出力する(ステップS5、本発明の干渉信号取得ステップに相当)。
【0065】
高さ情報取得部33は、干渉信号取得部32から入力された画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iを公知の手法により解析して、画素毎の高さ情報41を取得する(ステップS6、本発明の高さ情報取得ステップに相当)。水平方向の解像度の低下が抑えられるモノクロの撮像素子19で撮像された干渉信号Iに基づき高さ情報41を取得するので、上記特許文献2に記載されているようなコントラスト検出方式と比較して高精度な高さ測定を行うことができる。そして、高さ情報取得部33は、高さ情報41を画像生成部38へ出力する。
【0066】
一方、信号強度検出部34は、干渉信号取得部32から入力された画素毎の干渉信号Iに対して、既述の図4に示したようにフーリエ変換処理を行い、波長λ毎の干渉信号成分Iaの信号強度を示すスペクトル情報S(λ)を、画素毎に得る(ステップS7)。
【0067】
次いで、信号強度検出部34は、スペクトル情報取得部35から前述のステップS1で説明した参照光スペクトル情報Sr(λ)を取得し、既述の図5及び[数2]式に示したように、画素毎のスペクトル情報S(λ)を参照光スペクトル情報Sr(λ)で正規化する正規化処理を行う(ステップS8)。これにより、測定対象物9で反射した測定光L1の波長λ毎の信号強度を示す測定光スペクトル情報Sn(λ)が画素毎に得られる(ステップS9、本発明の信号強度検出ステップに相当)。
【0068】
このように正規化処理を行うことで、白色干渉計11の各部の特性の影響を除いた測定光スペクトル情報Sn(λ)のみに基づいてカラー全焦点画像13の画素の色を決定することができるので、より正確に色を決定することができる。そして、信号強度検出部34は、画素毎の測定光スペクトル情報Sn(λ)を色決定部36へ出力する。
【0069】
色決定部36は、信号強度検出部34から画素毎の測定光スペクトル情報Sn(λ)の入力を受けた場合、分光感度特性取得部37から標準的なカラー撮像素子の分光感度特性42を取得する(ステップS10、本発明の分光感度特性取得ステップに相当)。次いで、色決定部36は、既述の図6及び[数3]式に示したように、画素毎の測定光スペクトル情報Sn(λ)と分光感度特性42とから、画素毎のRGB値を算出する。これにより、カラー全焦点画像13の画素毎の色決定情報43が決定される(ステップS11、本発明の色決定ステップに相当)。そして、色決定部36は、色決定情報43を画像生成部38へ出力する。
【0070】
画像生成部38は、既述の図7に示したように、高さ情報41及び色決定情報43からカラー全焦点画像13を生成する(ステップS12、本発明の画像生成ステップに相当)。そして、画像生成部38は、生成したカラー全焦点画像13を記憶部39と表示部29とに出力する。これにより、測定対象物9のカラー全焦点画像13が記憶部39に記憶されると共に表示部29に表示される。
【0071】
<本実施形態の効果>
以上のように本実施形態の測定装置10では、白色干渉計11のモノクロの撮像素子19により取得された干渉信号Iからカラー全焦点画像13を生成するので、単板式のカラー撮像素子を用いた場合とは異なり水平方向の解像度の低下が抑えられ、測定対象物9の表面の高さ情報41の取得を高精度に行うことができる。また、三板式のカラー撮像素子を用いた場合と比較して、時間短縮のために高速撮像が可能な高価な撮像素子を用いる必要がなく、通常の白色干渉計11の構成をそのまま利用できるため、短時間且つ低コストにカラー全焦点画像13を生成することができる。これにより、撮像素子19の水平方向の解像度低下防止と、高精度の高さ情報41の取得と、短時間且つ低コストのカラー全焦点画像13の生成とを実現できる。
【0072】
また、上記測定装置10は、モノクロの撮像素子19を用いることにより、カラー撮像素子を用いた場合とは異なり精度の高い分光情報(スペクトル情報S(λ))が得られるので、例えば有機化合物等の各種物質の定性分析及び定量分析にも用いることができる。
【0073】
<本実施形態の変形例>
上記実施形態では、既述の図5及び図8のステップS8で説明したように、フーリエ変換処理により得られたスペクトル情報S(λ)に対して正規化処理を行っているが、白色干渉計11の各部(光源、ビームスプリッタ、レンズ等)の特性の影響を考慮しなくともよい場合、例えば各部の透明度が高い場合には、正規化処理を省略してもよい。この場合、色決定部36は、図8のステップS11において、スペクトル情報S(λ)を測定光スペクトル情報Sn(λ)とみなして、このスペクトル情報S(λ)と分光感度特性42とに基づき、カラー全焦点画像13の画素の色を決定する。
【0074】
<その他>
上記実施形態の信号強度検出部34は、干渉信号Iに対してフーリエ変換処理を行うことでスペクトル情報S(λ)を検出しているが、フーリエ変換処理の代わりに、コサイン変換処理、ウェーブレット変換処理、内積を用いる方法などの波長毎の信号強度を検出可能な各種方法を用いてスペクトル情報S(λ)を検出してもよい。
【0075】
上記実施形態では、垂直走査系16により測定光L1の光路長を変えながら測定を行うマイケルソン型の白色干渉計11を例に挙げて説明したが、参照光L2の光路長を変えながら測定を行ってもよい。また、上記実施形態では、2次元撮像素子である撮像素子19により画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iを同時に取得しているが、ステージ17を水平方向に移動させながら画素毎の1垂直走査分の干渉信号Iを順次に取得してもよい。さらに、マイケルソン型の白色干渉計11の他に、ミラウ型やフィゾー型等の各種方式の白色干渉計を用いた場合にも本発明を適用することができる。
【0076】
上記実施形態では、色決定部36が、RGBのカラーフィルタを有する標準的なカラー撮像素子の分光感度特性42と、測定光スペクトル情報Sn(λ)とに基づいてカラー全焦点画像13の画素の色(RGB値)を決定しているが、この場合のカラー撮像素子はRGBのカラーフィルタを有するものに特に限定されない。例えば、原色RGBの補色であるC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)などRGB以外の色のカラーフィルタを有するカラー撮像素子の分光感度特性に基づき、カラー全焦点画像13の画素の色を決定してもよい。
【0077】
上記実施形態では、白色干渉計11及び測定装置本体12を備える測定装置10を例に挙げて説明を行ったが、本発明の測定装置は測定装置本体12の制御部28のみにより構成されていてもよい。すなわち、白色干渉計11により別途に得られた干渉信号Iをメモリカード或いは通信ネットワークなどを介して取得し、取得した干渉信号Iに基づきカラー全焦点画像13を生成する測定装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
9…測定対象物,10…測定装置,11…白色干渉計,12…測定装置本体,13…カラー全焦点画像,19…撮像素子,21…白色光源,26…参照ミラー,28…制御部,32…干渉信号取得部,33…高さ情報取得部,34…信号強度検出部,35…スペクトル情報取得部,36…色決定部,37…分光感度特性取得部,38…画像生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8