【文献】
BERGE,S. M., et al.,JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES,米国,AMERICAN PHARMACEUTICAL ASSOCIATION,1977年,Vol. 66,No. 1,pp. 1-19
【文献】
大島寛,結晶多形・擬多形の析出挙動と制御,PHARM STAGE,2007年 1月15日,Vol.6, No.10,p.48-53
【文献】
高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,2007年 1月15日,Vol.6, No.10,p.20-25
【文献】
山野光久,医薬品のプロセス研究における結晶多形現象への取り組み,有機合成化学協会誌,2007年 9月 1日,Vol.65, No.9,p.907(69)-913(75)
【文献】
BYRN S,PHARMACEUTICAL SOLIDS: A STRATEGIC APPROACH TO REGULATORY CONSIDERATIONS,PHARMACEUTICAL RESEARCH,米国,KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS,1995年 7月 1日,V12 N7,P945-954
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塩基の使用量が、前記式(1)で示されるアルキル 2−エトキシ−1−[[2’−(アルキロキシ−カルボニルオキシカルバムイミドイル)ビフェニル−4−イル]メチル]−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボキシラート1モルに対して、0.01〜5モルであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
前記反応溶媒中で、前記式(2)で示されるアルキル 2−エトキシ−1−[[2’−(2,5−ジヒドロ−5−オキソ−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]ベンズイミダゾール−7−カルボキシラートの結晶を析出させることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そして、本発明者等の検討によれば、従来技術において、アジルサルタンアルキルエステルを製造する際に、以下の点で改善の余地があることが分かった。
【0013】
例えば、非特許文献1では、R
2が2−エチルヘキシル基であるエステル保護基含有化合物を、反応溶媒としてキシレンを用い、該キシレン中、還流温度(反応溶液の還流温度;約130℃)で環化反応を行い、アジルサルタンメチルエステルを製造している。この方法によれば、比較的短い反応時間でアジルサルタンメチルエステルを得ることができる(収率:52%)。しかしながら、本発明者等の検討によれば、非特許文献1に記載の方法においては、構造は明らかではないが、液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MASS)の分析結果において、アジルサルタンメチルエステルの分子量に10を加えた分子量の不純物が増加することが分かった。
【0014】
一方、特許文献1では、R
2がエチル基であるエステル保護基含有化合物を、反応溶媒としてキシレンを用い、該キシレン中、還流温度(反応溶液の還流温度;約130℃)で環化反応を行い、アジルサルタンメチルエステルを製造している。しかしながら、この方法においても、前記不純物が増加してしまうことが分かった。さらに、前記特許文献1に記載の方法では、収率が23%程度と低く、改善の余地があった。
【0015】
また、特許文献1には、酢酸エチル中、塩基(炭酸カリウム、ジアザビシクロウンデセン)の存在下で環化反応を行う方法についても示されている。しかしながら、この反応では、アジルサルタンメチルエステルが反応途中で析出する。そのため、該塩基を含んだ状態の固体でアジルサルタンメチルエステルが得られる。その結果、精製工程が煩雑になるという点で改善の余地があった。
【0016】
したがって、本発明の目的は、高収率で高純度のアジルサルタンアルキルエステルを製造する方法を提供することにある。加えて、後工程である、精製工程を容易にできるアジルサルタンアルキルエステルの製造方法を提供することにある。そして、最終的には、該方法で製造したアジルサルタンアルキルエステルを使用して、高純度のアジルサルタンを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。そして、環化反応を行うに際して、エステル保護基含有化合物、およびアジルサルタンアルキルエステルに対する溶解性が高く、環化反応においてエステル保護基含有化合物、およびアジルサルタンアルキルエステルを分解させることなく、反応を促進できる条件について検討した。その結果、特定の反応溶媒、すなわち、炭素数1〜8のアルコールを含む反応溶媒中で環化反応を行うことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、第一の本発明は、
下記式(1)
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、R
1はアルキル基、R
2はヒドロキシル基を保護する保護基である)
で示されるアルキル 2−エトキシ−1−[[2’−(アルキロキシ−カルボニルオキシカルバムイミドイル)ビフェニル−4−イル]メチル]−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボキシラート(エステル保護基含有化合物)を炭素数1〜8のアルコールを含む反応溶媒中、
有機塩基存在下で環化反応を行うことにより、
下記式(2)
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、R
1は前記式(1)におけるものと同義である)
で示されるアルキル 2−エトキシ−1−[[2’−(2,5−ジヒドロ−5−オキソ−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]ベンズイミダゾール−7−カルボキシラート(アジルサルタンアルキルエステル)を製造する方法である。
【0023】
本発明においては、より収率を高くするためには、前記環化反応を50℃以上、反応溶液の還流温度以下で行うことが好ましい。なお、前記還流温度は反応溶媒が還流する温度とほぼ同じである。ただし、「反応溶液の還流温度」としたのは、副生するR
2−OH(R
2基を有するアルコール)、溶解しているアジルサルタンアルキルエステル濃度等の違いによって、若干、反応溶媒の還流温度と差が生じるからである。本発明において、反応溶液とは、反応溶媒中にエステル基含有化合物、および/又はアジルサルタンアルキルエステルが溶解し、副生するR
2−OHを含むものを指す。なお、必要に応じて塩基を使用する場合には、当然のことながら反応溶液には塩基が含まれる。
【0024】
本発明においては、前記アルコールが炭素数3〜8の直鎖状又は分岐状アルコールであることが好ましい。このアルコールを使用することにより、高収率で高純度のアジルサルタンアルキルエステルが得られるだけでなく、反応終了後に、該アジルサルタンアルキルエステルを反応溶媒中で結晶化させ易くなる。その結果、後処理工程を容易にすることができる。
【0025】
さらに、本発明においては
、前記塩基の使用量が、前記式(1)で示されるエステル保護基含有化合物1モルに対して、0.01〜5モルであることが好ましい。さらには、前記塩基が、有機塩基であることが好ましい。
【0026】
第二の本発明は、前記第一の本発明によりアジルサルタンアルキルエステルを製造した後、得られたアジルサルタンアルキルエステルを加水分解することにより、
下記式(3)
【0027】
【化5】
【0028】
で示されるアジルサルタンを製造する方法である。本発明によれば、高純度のよりアジルサルタンアルキルエステルを製造することができるため、高純度のアジルサルタンとすることができる。
【0029】
第一の本発明により得られるアジルサルタンアルキルエステルは、新規な結晶構造のものとなる。具体的には、第一の本発明によれば、Cu−Kα線を用いるX線回折において、2θ=9.9±0.2°、10.9±0.2°に特徴的なピークを少なくとも有するアジルサルタンメチルエステルを得ることができる。
【0030】
なお、本発明において、純度、不純物の含有量は、下記の実施例でその条件を示した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した面積ピークの値である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の方法によれば、より簡便な操作により、高収率で高純度のよりアジルサルタンアルキルエステルを得ることができる。その結果、本発明で得られたよりアジルサルタンアルキルエステルを加水分解してアジルサルタンを製造することにより、高純度のアジルサルタンを得ることができる。加えて、よりアジルサルタンアルキルエステルを結晶として取り出し易くなるため、操作性も向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(式中、R
1はアルキル基、R
2はヒドロキシル基を保護する保護基である)
で示されるエステル保護基含有化合物の環化反応を行い、
下記式(2)
【0037】
(式中、R
1は前記式(1)におけるものと同義である)
で示されるアジルサルタンアルキルエステルを製造するに際し、炭素数1〜8のアルコールを含む反応溶媒中で該環化反応を行うことを特徴とするものである。
【0038】
なお、前記式中、R
1はアルキル基である。原料となるエステル保護基含有化合物、アジルサルタンアルキルエステルの安定性、及びアジルサルタンの製造のし易さを考慮すると、R
1は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、1−プロピル基、イソプロピル基、1−ブチル基、イソブチル基等が挙げられ、特に、メチル基であることが好ましい。
以下、順を追って説明する。
【0039】
(原料化合物;エステル保護基含有化合物)
前記式(1)で示されるエステル保護基含有化合物は、特に制限されるものではなく、公知の方法で製造することができる。具体的には、非特許文献1、特許文献1に記載の方法で製造することができる。具体的には、以下の反応式に従い製造することができる。
【0041】
前記式(4)で示されるアルキル 2−エトキシ−1−[[2’−(ヒドロキシイミノカルボキサミド)ビフェニル−4−イル]メチル]−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボキシラート(以下、単に、「アミドキシム化合物」とする場合もある)は、公知の化合物であり、その製造方法は、非特許文献1、特許文献1に記載されている。つまり、塩基の存在下、前記式(4)で示されるアミドキシム化合物と、XCOOR
2で示される化合物とを反応させて、前記式(1)で示されるエステル保護基含有化合物を製造できる。
【0042】
前記反応式において、前記式(4)で示される化合物と反応させるXCOOR
2は、Xがハロゲン原子であり、R
2が前記式(1)で示されるエステル保護基含有化合物におけるR
2と同じであり、ヒドロキシル基を保護する保護基である。
【0043】
XCOOR
2において、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。中でも、工業的な入手の容易さ、反応性等を考慮すると、塩素原子であることが好ましい。
【0044】
R
2は、ヒドロキシル基を保護する、一般的な保護基が挙げられる。具体的には、置換基を有していてもよいアルキル基、ベンジル基、置換基を有していてもよいフェニル基等が挙げられる。中でも、工業的入手のし易さ、エステル保護基含有化合物における役割、最終的に除去すること等を考慮すると、炭素数1〜8の非置換アルキル基であることが好ましい。この非置換アルキル基は、直鎖状のアルキル基であっても、分岐状のアルキル基であってもよい。
【0045】
XCOOR
2を具体的に例示すれば、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸プロピル、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸ブチル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸アミル、クロロギ酸−2−エチルヘキシル、クロロギ酸ヘキシル、クロロギ酸ヘプチル、クロロギ酸クロロメチル、クロロギ酸−2−クロロエチル、クロロギ酸ベンジル、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸−4−クロロフェニル等が挙げられる。この中でも、工業的入手のし易さ、反応性、およびエステル保護基含有化合物における役割等を考慮すると、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸プロピル等を用いることが好ましい。
【0046】
XCOOR
2の使用量は、特に制限されるものではない。具体的には、前記式(4)で示される化合物1モルに対して、XCOOR
2の使用量は1〜5モルとすればよい。
【0047】
前記反応は、塩基の存在下で行う。使用する塩基を例示すれば、
炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム等の無機塩基;
メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピペラジン、ピロリジン、アニリン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、N−メチルモルホリン等の有機塩基を挙げることができる。
【0048】
この中でも、反応の進行性、除去し易さ、後工程における処理等を考慮すると、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミンの有機塩基であることが好ましい。
【0049】
前記の塩基は、1種類を使用することもできるし、複数種類の塩基を使用することもできる。複数種類の塩基を使用する場合には、基準となる塩基の量は、複数種類の塩基の合計量である。
【0050】
前記塩基の使用量は、特に制限されるものではない。具体的には、前記式(4)で示される化合物1モルに対して、前記塩基の使用量は1〜5モルとすればよい。なお、後述するが、エステル基含有化合物を環化する際には、塩基の存在下で実施することが好ましい。そのため、この反応で得られるエステル基含有化合物を環化する場合には、前記塩基が残存している状態で環化反応を実施することもできる。
【0051】
また、使用する溶媒は、XCOOR
2と反応しない非プロトン性溶媒の中から選択すればよい。具体的には、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、1,4−ジオキサン等を挙げることができる。これら反応溶媒は、1種類を使用してもよいし、2種類以上の混合溶媒を使用してもよい。
【0052】
反応は、塩基の存在下、溶媒中、前記式(4)で示されるアミドキシム化合物、およびXCOOR
2が十分に接するように、撹拌混合することが好ましい。これら成分を反応容器に導入する手順は、特に制限されるものではない。好ましい方法としては、予め溶媒中に前記式(4)で示されるアミドキシム化合物と前記塩基とを加え、次いで必要に応じて溶媒で希釈したXCOOR
2を加えていくことが好ましい。この際、急激な発熱を防ぐため、XCOOR
2を滴下することが好ましい。
【0053】
その他、前記反応を行う際の条件は、特に制限されるものではない。反応温度は、−10〜10℃であることが好ましい。また、反応時間は、0.5〜15時間であれば十分である。
【0054】
以上のような条件で反応させることにより、前記エステル保護基含有化合物を製造することができる。前記エステル保護基含有化合物を反応系から取り出す方法は、特に制限されるものではない。具体的には、前記エステル保護基含有化合物を酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、塩化メチレンのような水に難溶な溶媒に溶解させ、水洗、濃縮、乾燥等を行うことにより、前記エステル保護基含有化合物を取り出すことができる。なお、溶媒に前記水に難溶な溶媒を使用した場合には、そのまま、溶液を水洗することもできる。
【0055】
以上のような条件で得られるエステル基含有化合物は、特に制限されるものではないが、純度が90.0〜99.5%のものとすることができる。また、水洗を調整することにより、取り出した該エステル基含有化合物が塩基を含んだ状態で、次の環化反応を実施することもできる。
【0056】
(環化反応)
本発明の特徴は、前記エステル保護基含有化合物の環化反応を行い、下記式(2)
【0058】
(式中、R
1は前記式(1)におけるものと同義である)
で示されるアジルサルタンアルキルエステルを製造するに際し、炭素数1〜8のアルコールを含む反応溶媒中で実施することにある。この環化反応の際、R
2−OHが副生することとなる。
【0059】
この環化反応は、加熱することにより、その反応を進行することができる。具体的には、前記エステル保護基含有化合物が炭素数1〜8のアルコールに溶解した反応溶液を加熱することにより、環化反応が促進され、前記エステル保護基含有化合物をアジルサルタンアルキルエステルとすることができる。この環化反応の際には、前記エステル保護基含有化合物を反応溶媒に溶解し、撹拌混合しながら加熱することが好ましい。なお、当然のことながら、前記エステル保護基含有化合物と反応溶媒とを攪拌させながら加熱して反応溶液とし、その反応溶液をそのまま加熱してもよい。
【0060】
(反応溶媒)
この環化反応において使用する反応溶媒は、炭素数1〜8のアルコールを含む溶媒である。炭素数1〜8のアルコールを具体的に例示すれば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、オクタノール等が挙げられる。
【0061】
この中でも、環化反応の際の温度を高くし、反応速度を高めることができ、かつ不純物を低減できる溶媒としては、炭素数3〜8の直鎖状、又は分岐状のアルコールを使用することが好ましい。具体的には、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールを使用することが好ましく、1−プロパノール、1−ブタノールが特に好ましい。
【0062】
これら炭素数1〜8のアルコールは、1種類を使用することもできるし、複数種類の混合溶媒を使用することもできる。混合溶媒を使用する場合には、基準となる該アルコールの量は、混合溶媒の合計量である。
【0063】
なお、反応溶媒は、炭素数1〜8のアルコール以外のその他の溶媒を50質量%未満の割合で含むこともできるが、精製のし易さ等を考慮すると、その他の溶媒は、10質量%以下であることが好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。
【0064】
本発明において、反応溶媒における炭素数1〜8のアルコールの使用量は、特に制限されるものではない。反応の効率化、不純物の低減、および後工程の操作性を考慮すると、前記エステル保護基含有化合物1gに対して、反応溶媒における炭素数1〜8のアルコールの量が3〜30mlであることが好ましい。この範囲を満足することにより、環化反応終了後、冷却してアジルサルタンメチルエステルを結晶として取り出し易くなる。前記効果をより発揮するためには、前記エステル保護基含有化合物1gに対して、反応溶媒における炭素数1〜8のアルコールの量が5〜20mlであることがさらに好ましい。なお、反応溶媒の前記体積は、23℃における体積である。
【0065】
環化反応の反応温度は、反応速度を高め、かつ不純物を低減するためには、50℃以上、反応溶液の還流温度以下とすることが好ましく、60℃以上、反応溶液の還流温度以下とすることがより好ましく、70℃以上、反応溶液の還流温度以下とすることがさらに好ましい。反応溶液の還流温度は、使用する反応溶媒、前記エステル保護基含有化合物の濃度、副生するR
2−OHの種類によって異なるため、一概に限定できない。ただし、より不純物の生成を抑制するためには、反応温度は、100℃以下とすることが好ましい。
【0066】
(塩基)
本発明においては、前記条件に従って環化反応を促進できる。中でも、反応時間をより短くするためには、塩基の存在下で実施する好ましい。具体的には、前記反応溶液中に塩基が含まれる状態であればよい。
【0067】
環化反応において使用できる塩基は、特に制限されるものではないが、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム等の無機塩基が挙げられる。また、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピペラジン、ピロリジン、アニリン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、N−メチルモルホリン等の有機塩基を使用することができる。中でも、得られるアジルサルタンアルキルエステルの精製のし易さ、操作性を向上するためには、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基を使用することが好ましい。
【0068】
これら塩基は、1種類を使用することもできるし、複数種類の塩基を使用することもできる。複数種類の塩基を使用する場合には、基準となる塩基の量は、複数種類の塩基の合計量である。
【0069】
なお、この塩基は、前記の通り、前記エステル保護基含有化合物を製造する際に塩基を使用した場合には、該エステル保護基含有化合物を取り出す際に残存している塩基を使用することもできる。
【0070】
本発明においては、塩基を使用なくとも、環化反応を進行させることができる。ただし、塩基を使用する場合には、前記エステル保護基含有化合物1モルに対して、使用する塩基の量は0.01〜5モルとすることが好ましい。塩基をこの範囲で使用することにより、反応速度を高めることができ、かつアジルサルタンアルキルエステルの収率、および純度を高くすることができる。この効果をより高めるためには、前記エステル保護基含有化合物1モルに対して、使用する塩基の量は0.1〜1モルとすることがより好ましい。
【0071】
本発明において、塩基を使用する場合には、反応溶媒に、予め塩基、および前記エステル保護基含有化合物を加えて、加熱しながら撹拌混合することもできる。また、撹拌混合しながら加熱している反応溶液に、途中から反応を促進させるために該塩基を追加することもできる。途中から塩基を追加した場合には、使用した塩基の全量が基準の量となる。
【0072】
(アジルサルタンアルキルエステルの取り出し方法)
以上のような条件で環化反応を行うことにより、アジルサルタンアルキルエステルを製造することができる。得られたアジルサルタンアルキルエステルを反応系から取り出す方法は、特に制限されるものではなく、非特許文献1、特許文献1に記載の方法を採用することができる。
【0073】
中でも、本発明においては、反応溶媒に1〜8のアルコールを含む溶媒を使用しているため、以下の方法を採用することが好ましい。具体的には、反応溶液を冷却するか、反応溶液から反応溶媒を一部留去して、炭素数1〜8のアルコールを含む反応溶媒中でアジルサルタンアルキルエステルの結晶を析出させて、該結晶を取り出すことが好ましい。特に、反応溶液を冷却して、結晶を析出させることが好ましい。
【0074】
反応溶媒中でアジルサルタンアルキルエステルの結晶を析出させる場合には、特に制限されるものではない。具体的には、アジルサルタンアルキルエステル1gに対して、炭素数1〜8のアルコールの量を3〜30mlとすることが好ましい。炭素数1〜8のアルコールが前記範囲を満足することにより、操作性が向上し、かつ純度を高くすることができる。よりこの効果を高めるためには、アジルサルタンアルキルエステル1gに対して、炭素数1〜8のアルコールの量を5〜20mlとすることが好ましい。なお、炭素数1〜8のアルコールの前記量は、23℃における体積である。
【0075】
環化反応は、好ましくは加熱して行う。そして、より好ましい態様では、反応溶液の温度(反応温度)を50℃以上とする。そのため、反応終了後の反応溶液を、30℃以下の範囲に冷却することが好ましく、さらに−10〜30℃の範囲に冷却することが好ましく、特に−10〜10℃の範囲に冷却することが好ましい。本発明においては、炭素数1〜8のアルコールを使用しているため、前記冷却温度の範囲において、アジルサルタンアルキルエステルの結晶が容易に析出する。また、結晶を析出させる際に種結晶を用いることもできる。そして、本発明においては、冷却してアジルサルタンアルキルエステルの結晶が析出するように調整すれば、該結晶が、副生物、および必要に応じて配合される塩基を取り込み難くなる。
【0076】
得られるアジルサルタンアルキルエステルの純度をより高くするためには、反応終了後の反応溶液を10〜30℃/時間の冷却速度で冷却して、30℃以下、好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは−10〜30℃、特に好ましくは−10〜20℃の温度とすることが好ましい。さらに、得られたアジルサルタンアルキルエステルの収率を高めるためには、30℃以下、好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは−10〜30℃、特に好ましくは−10〜20℃の温度として1時間以上、好ましくは2時間以上20時間以下放置することが好ましい。
【0077】
析出したアジルサルタンアルキルエステルの結晶は、公知の方法で処理することができる。通常であれば、濾過により結晶を取り出し、洗浄・乾燥を行うことが好ましい。また、より純度の高いアジルサルタンアルキルエステルを得ようとする場合には、炭素数1〜8のアルコールで再結晶してもよい。
【0078】
新規なアジルサルタンアルキルエステルの結晶;新規な結晶の製造方法
以上のようにして得られるアジルサルタンアルキルエステルは、再度、炭素数1〜8のアルコールで再結晶したとしても、炭素数1〜8のアルコールを含む溶媒和物の結晶となる。すなわち、炭素数1〜8のアルコールの一部を結晶内部に取り込んでいるものと考えられる。
【0079】
炭素数1〜8のアルコールの中でも、1−プロパノールを使用した場合であって、R
1がメチル基のアジルサルタンメチルエステルは、Cu−Kα線を用いるX線回折において、2θ=9.9±0.2°、10.9±0.2°に特徴的なピークを少なくとも有する結晶とすることができる。また、該アジルサルタンメチルエステルは、その他、2θ=13.6±0.2°、17.2±0.2°、23.2±0.2°等にピークを有する結晶である。以上のようなピークを有する結晶は、従来技術にはなく、新規な結晶形である。この結晶は、1−プロパノールを0.5〜5質量%含むこともできる(以下、この結晶を単に「新規な結晶」とする場合もある。)。
【0080】
アジルサルタンアルキルエステルの再結晶
本発明においては、前記アジルサルタンアルキルエステルをそのまま加水分解して、アジルサルタンを合成することもできる。ただし、より純度の高いアジルサルタンアルキルエステルとするためには、前記方法で得られた新規な結晶形のアジルサルタンアルキルエステルを、ケトン溶媒を含む溶媒で再結晶することが好ましい。当然のことながら、新規な結晶形の該アジルサルタンアルキルエステルは、0.5〜5質量%の1−プロパノールを含む溶媒和物であってもよい。
【0081】
使用するケトン溶媒を例示すれば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができる。中でも、純度を高め、操作性を改善するためには、アセトンを使用することが好ましい。これらケトン溶媒は1種類で使用することもできるし、複数種類の混合溶媒を使用することもできる。混合溶媒を使用する場合には、基準となるケトン溶媒の量は、混合溶媒の合計量である。
【0082】
なお、ケトン溶媒を含む溶媒は、ケトン溶媒以外のその他の溶媒を50質量%未満の割合で含むこともできるが、精製のし易さ等を考慮すると、その他の溶媒は、10質量%以下であることが好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。
【0083】
使用するケトン溶媒の量は、特に制限されるものではない。具体的には、前記アジルサルタンアルキルエステルの結晶1gに対して、ケトン溶媒の量は3〜30mlとすることが好ましく、さらに5〜20mlとすることが好ましい。
【0084】
再結晶の方法としては、ケトン溶媒を含む溶媒中に前記アジルサルタンアルキルエステルの結晶を溶解させる。好ましくは、溶液の還流温度(約60℃)に加熱して前記アジルサルタンアルキルエステルの結晶を溶解させる。次いで、10〜30℃/時間の冷却速度で冷却し、0〜30℃、さらに好ましくは−10〜30℃、特に好ましくは−10〜20℃の温度範囲で一定時間放置することが好ましい。
【0085】
(アジルサルタン製造方法)
本発明においては、前記方法で得られたアジルサルタンアルキルエステルを加水分解することにより、
下記式(3)
【0087】
で示されるアジルサルタンを製造することができる。使用するアジルサルタンアルキルエステルは、新規な結晶であってもよいし、ケトン溶媒を含む溶媒で再結晶したものであってもよい。
【0088】
加水分解する条件は、特に制限されるものではなく、公知の方法、例えば、特許文献1に記載の方法を採用することができる。具体的には、塩基、又は酸の存在下で加水分解を行うことにより、−COOR
1(アルキルエステル基)を−COOH(カルボン酸)へとすればよい。
【0089】
得られたアジルサルタンは、特に制限されるものではなく、公知の方法で精製して原薬とすればよい。例えば、再結晶やリスラリー、カラムクロマトグラフィーなどの方法を用いる方法が挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、具体例であって、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0091】
なお、実施例および比較例における純度評価は、以下の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法で行い、結晶形の測定は以下の粉末X線回折(XRD)を用いた方法で行った。
【0092】
<HPLCの測定条件>
装置:高速液体クロマトグラフィー(HPLC)。
機種:2695−2489−2998(Waters社製)。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:210nm)。
カラム:Kromasil C18、内径4.6mm、長さ15cm(粒子径5μm)(AkzoNobel社製)。
カラム温度:30℃一定。
サンプル温度:25℃一定。
移動相A:アセトニトリル。
移動相B:15mMリン酸二水素カリウム水溶液(pH=2.5 リン酸にて調整)。
移動相の送液:移動相A,Bの混合比を表1のように変えて濃度勾配制御する。
【0093】
【表1】
【0094】
流速:1.0mL/min。
測定時間:90分。
【0095】
上記条件において、前記アミドキシム化合物は約2.8分、前記アジルサルタンメチルエステルは約14.5分、前記エステル保護基含有化合物A(R
1:メチル基、R
2:エチル基)は約16.2分、前記アジルサルタンは約7.3分、前記エステル保護基含有化合物B(R
1:メチル基、R
2:2−エチルヘキシル基)は約52.3分にピークが確認される。アジルサルタンメチルエステルよりも分子量が10大きい不純物は、約5.5分に観察される。
【0096】
以下の実施例、比較例において、前記アミドキシム化合物、前記エステル保護基含有化合物、前記アジルサルタンメチルエステル、前記アジルサルタンの各純度は、すべて、上記条件で測定される全ピークの面積値(溶媒由来のピークを除く)の合計に対する各化合物のピーク面積値の割合である。
【0097】
<アジルサルタンアルキルエステルの結晶形の測定>
装置:X線回折装置(XRD)。
機種:SmartLab(株式会社リガク製)。
測定方法:ASC6 BB Dtex。
X 線出力:40kV−30mA。
波長:CuKa/1.541882Å。
【0098】
製造例1(エステル保護基含有化合物A;R
1:メチル基、R
2:エチル基の合成)
直径15cmの2枚撹拌翼を備えた2L四つ口フラスコに前記アミドキシム化合物120g(270.0mmol)を量りとり、塩化メチレン840mL、トリエチルアミン33.0g(324.0mmol)を加え、撹拌しながら0℃まで冷却した。得られた溶液にクロロギ酸エチル35.4g(324.0mmol)を塩化メチレン360mLで希釈した溶液をゆっくりと滴下しながら加えた。全量滴下後、0℃で2時間撹拌しながら反応した。反応後の溶液を20℃まで昇温し、水480mLを加えて有機層を抽出した。得られた有機層を減圧濃縮した後、残渣に1−プロパノール600mLを加えて20℃で3時間撹拌した。得られたスラリー溶液を減圧濾過により固液分離した後、40℃で減圧乾燥してエステル保護基含有化合物A 122.86g(エステル保護基含有化合物A純度:96.1%)を得た(収率88.1%)。
【0099】
製造例2(エステル保護基含有化合物B;R
1:メチル基、R
2:2−エチルヘキシル基の合成)
直径7.5cmの2枚撹拌翼を備えた500mL四つ口フラスコに前記アミドキシム化合物30g(67.5mmol)を量りとり、塩化メチレン210mL、トリエチルアミン8.2g(81.0mmol)を加え、撹拌しながら0℃まで冷却した。得られた溶液にクロロギ酸−2−エチルヘキシル15.6g(81.0mmol)を塩化メチレン90mLで希釈した溶液をゆっくりと滴下しながら加えた。全量滴下後、0℃で2時間撹拌しながら反応した。反応後の溶液を20℃まで昇温し、水120mLを加えて有機層を抽出した。得られた有機層を減圧濃縮した後、残渣に1−プロパノール150mLを加えて20℃で3時間撹拌した。得られたスラリー溶液を減圧濾過により固液分離した後、40℃で減圧乾燥してエステル保護基含有化合物B 31.9g(エステル保護基含有化合物B純度:94.5%)を得た(収率78.7%)。
【0100】
参考例1
直径3.5cmの2枚撹拌翼を備えた100mL三つ口フラスコに製造例1で得られたエステル保護基含有化合物A 5g(9.7mmol)を量りとり、1−プロパノール45mLを加え、還流温度(約95℃)まで加熱した後、同温度にて16時間反応を行った。前記アジルサルタンメチルエステルの純度:91.5%、前記エステル保護基含有化合物A:1.8%であった。反応後の反応溶液を20℃/時間の速度で0℃まで冷却し、0℃で14時間撹拌した。次いで、得られたスラリー液を減圧濾過して析出した結晶を分取し、40℃で減圧乾燥して、3.7gの前記アジルサルタンメチルエステルの結晶(前記アジルサルタンアルキルエステルの純度:97.3%)を得た(収率:81.1%)。結果を表2にまとめた。アジルサルタンメチルエステルよりも分子量が10大きい不純物は確認できなかった。また、このアジルサルタンメチルエステルを試料として、XRDを測定すると、
図1に示すX線回折チャートが得られた。この結晶は2θ=9.9°、10.9°、13.6°、17.2°、23.2°に特徴的なピークを与える新規結晶構造を有する化合物であることが分かった。
【0101】
実施例2
直径5cmの2枚撹拌翼を備えた200mL三つ口フラスコに製造例1で得られたエステル保護基含有化合物A 10g(19.4mmol)を量りとり、1−プロパノール90mL、トリエチルアミン0.4g(3.9mmol)を加え、還流温度(約94℃)まで加熱した後、同温度にて9時間反応を行った。前記アジルサルタンメチルエステルの純度:93.0%、前記エステル保護基含有化合物A:0.7%であった。反応後の反応溶液を20℃/時間の速度で0℃まで冷却し、0℃で12時間撹拌した。次いで、得られたスラリー液を減圧濾過して析出した結晶を分取し、40℃で減圧乾燥して、7.6gの前記アジルサルタンメチルエステルの結晶(前記アジルサルタンメチルエステルの純度:97.8%)を得た(収率:83.4%)。結果を表2にまとめた。アジルサルタンメチルエステルよりも分子量が10大きい不純物は確認できなかった。また、このアジルサルタンメチルエステルを試料として、XRDを測定すると、2θ=9.8°、10.9°、13.6°、17.2°、23.2°に特徴的なピークを与える新規結晶構造を有する化合物であることが分かった。
【0102】
実施例3
直径3.5cmの2枚撹拌翼を備えた100mL三つ口フラスコに製造例2で得られたエステル保護基含有化合物B 5g(8.3mmol)を量りとり、1−プロパノール45mL、トリエチルアミン0.2g(1.7mmol)を加え、還流温度(約94℃)まで加熱した後、同温度にて10時間反応を行った。前記アジルサルタンメチルエステルの純度:91.7%、前記エステル保護基含有化合物B:0.6%であった。反応後の反応溶液を20℃/時間の速度で0℃まで冷却し、0℃で12時間撹拌した。次いで、得られたスラリー液を減圧濾過して析出した結晶を分取し、40℃で減圧乾燥して、3.2gの前記アジルサルタンメチルエステルの結晶(前記アジルサルタンメチルエステルの純度:97.5%)を得た(収率:81.8%)。結果を表2にまとめた。アジルサルタンメチルエステルよりも分子量が10大きい不純物は確認できなかった。また、XRDの結果も実施例1、2のアジルサルタンメチルエステルと変わらなかった。
【0103】
実施例4
実施例2において、トリエチルアミンの使用量を0.4g(3.9mmol)から1.96g(19.4mmol)に変更した以外は同様の操作を行った。反応は6時間で完結した。
【0104】
5.9gの前記アジルサルタンメチルエステルの結晶(前記アジルサルタンメチルエステルの純度:98.6%)を得た(収率:64.4%)。結果を表2にまとめた。アジルサルタンメチルエステルよりも分子量が10大きい不純物は確認できなかった。また、XRDの結果も実施例1、2のアジルサルタンメチルエステルと変わらなかった。
【0105】
参考例5
実施例1において、反応溶媒を1−プロパノールから1−ブタノールに変更した以外は同様の操作を行った。
【0106】
3.7gの前記アジルサルタンメチルエステルの結晶(前記アジルサルタンメチルエステルの純度:97.1%)を得た(収率:80.9%)。結果を表2にまとめた。アジルサルタンメチルエステルよりも分子量が10大きい不純物は確認できなかった。また、XRDの結果も実施例1、2のアジルサルタンメチルエステルと変わらなかった。
【0107】
参考例6
実施例1において、1−プロパノールの使用量を45mLから125mLに変更した以外は同様の操作を行った。
【0108】
2.3gの前記アジルサルタンメチルエステルの結晶(前記アジルサルタンメチルエステルの純度:98.2%)を得た(収率:50.9%)。結果を表2にまとめた。アジルサルタンメチルエステルよりも分子量が10大きい不純物は確認できなかった。また、XRDの結果も実施例1、2のアジルサルタンメチルエステルと変わらなかった。
【0109】
実施例7
実施例2において、使用した塩基をトリエチルアミンからピリジンに変更した以外は同様の操作を行った。
【0110】
7.6gの前記アジルサルタンメチルエステルの結晶(前記アジルサルタンメチルエステルの純度:97.7%)を得た(収率:83.8%)。結果を表2にまとめた。アジルサルタンメチルエステルよりも分子量が10大きい不純物は確認できなかった。また、XRDの結果も実施例1、2のアジルサルタンメチルエステルと変わらなかった。
【0111】
実施例8(アジルサルタンの合成)
直径10cmの2枚撹拌翼を備えた1L三つ口フラスコに実施例2で得られたアジルサルタンメチルエステル5gを量りとり、1.25M水酸化ナトリウム水溶液50mLを加え、50℃まで加熱した後、同温度にて3時間反応を行った。反応液を45℃まで冷却した後、同温度でアセトン25mL、酢酸17mL、水17mLを加えて、アジルサルタンの結晶を析出させた。反応液を20℃/時間の速度で20℃まで冷却した後、同温度にて6時間撹拌した。次いで、得られたスラリー液を減圧濾過して析出した結晶を分取し、40℃で乾燥して、4.2gのアジルサルタンの結晶を得た(アジルサルタンの純度:99.0%)。
【0112】
比較例1(特許文献1記載の方法による前記アジルサルタンメチルエステルの製造)
直径5cmの2枚撹拌翼を備えた200mL三つ口フラスコに製造例1で得られたエステル保護基含有化合物A 5gを量りとり、キシレン50mLを加え、還流温度(約130℃)まで加熱した後、同温度にて1.5時間反応を行った。前記アジルサルタンメチルエステルの純度:70.1%、前記エステル保護基含有化合物A:未検出であった。反応後の溶液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチル100mLを加えたが残渣中の結晶は溶解しなかった。そのため、イソプロピルエーテル50mLを加え、20℃で12時間撹拌した。得られたスラリー液を減圧濾過して析出した結晶を分取し、40℃で減圧乾燥して、1.4gの前記アジルサルタンメチルエステルの結晶(前記アジルサルタンアルキルエステルの純度:79.8%)を得た(収率:30.4%)。アジルサルタンメチルエステルよりも分子量が10大きい不純物は12.1%であった。結果を表2にまとめた。
【0113】
比較例2(非特許文献1記載の方法による前記アジルサルタンメチルエステルの製造)
直径5cmの2枚撹拌翼を備えた200mL三つ口フラスコに製造例2で得られたエステル保護基含有化合物B 5gを量りとり、キシレン50mLを加え、還流温度(約130℃)まで加熱した後、同温度にて2時間反応を行った。前記アジルサルタンメチルエステルの純度:72.8%、前記エステル保護基含有化合物B:未検出であった。反応後の溶液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチル50mLを加え、還流温度(約80℃)まで昇温し、濃縮残渣の結晶を完全に溶解した。得られた溶液を20℃まで冷却し、20℃で12時間撹拌した。次いで、得られたスラリー液を減圧濾過して析出した結晶を分取し、40℃で減圧乾燥して、2.0gの前記アジルサルタンメチルエステルの結晶(前記アジルサルタンメチルエステルの純度:88.4%)を得た(収率:50.2%)。アジルサルタンメチルエステルよりも分子量が10大きい不純物は10.8%であった。結果を表2にまとめた。また、このアジルサルタンメチルエステルを試料として、XRDを測定すると、
図2に示すX線回折チャートが得られ、この結晶は2θ=8.0°、10.4°、12.0°、15.9°、21.4°に特徴的なピークを与える化合物であることが分かった。
【0114】
【表2】