(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための生体情報測定装置100の外観の概略構成を示す模式図である。生体情報測定装置100は、ユーザの手首に装着されて使用される。
【0020】
生体情報測定装置100は、本体部1と、本体部1に固定されたベルト2と、を備える。生体情報測定装置100は、脈波の検出対象となる橈骨動脈TDが皮膚下に存在する手首に装着して用いられるものであり、本体部1がベルト2によって手首に装着されて使用される。
【0021】
生体情報測定装置100が測定対象とする生体情報は、収縮期血圧、拡張期血圧、又は、脈圧等の血圧情報、脈拍数等の脈拍情報、或いは、心拍数等の心拍情報、等である。脈拍数又は心拍数は、心臓の拍動回数又はこれに準じた回数のことを示し、本明細書においてはこれらのことを総称して生体拍数と言う。以下では、生体情報測定装置100が生体拍数としての脈拍数を測定するものとして説明する。
【0022】
なお、心拍数は心臓の拍動回数であり、脈拍数は心臓の拍動により心臓から押し出された血液により生じた圧力が末梢の血管に伝わり、動脈が拍動した回数のことを差す。通常、健常者においては脈拍数と心拍数は同じものとなる。このため、本明細書においては、脈拍数は心拍数と同義であるものとして扱う。
【0023】
生体情報測定装置100の本体部1は、橈骨動脈TDから圧脈波を検出するための圧力センサ10と、圧力センサ10を手首に対して押圧するための押圧機構20と、を備える。
【0024】
図2は、
図1に示す生体情報測定装置100の圧力センサ10を手首との接触面側から見た平面模式図である。
図2に示すように、圧力センサ10は、平板状の基体11上に形成された素子列120を有する。
【0025】
素子列120は、一方向である方向Aに並ぶ複数の圧力検出素子12により構成されている。圧力検出素子12としては圧力を検出して電気信号に変換するものであればよく、例えばピエゾ抵抗効果を利用したもの等が用いられる。
【0026】
複数の圧力検出素子12の配列方向の間隔は、橈骨動脈TD上に必要かつ充分な数が配置されるように充分小さくされている。複数の圧力検出素子12のうち両端部にある圧力検出素子同士の間の距離は、橈骨動脈TDの径寸法より必要かつ充分に大きくされている。
【0027】
圧力センサ10は、素子列120に含まれる複数の圧力検出素子12の配列方向である方向Aが、橈骨動脈TDの伸びる方向と交差する状態で押圧機構20によって手首に押圧される。なお、圧力センサ10は、基体11上に方向Aと直交する方向に素子列120が複数配列された構成であってもよい。
【0028】
図3は、
図1に示す生体情報測定装置100の本体部1の内部ハードウェア構成を示す図である。
【0029】
本体部1は、圧力センサ10と、押圧機構20と、全体を統括制御する制御部30と、記憶媒体40と、表示部50と、動き検出センサ60と、操作部70と、を備える。
【0030】
押圧機構20は、例えば、基体11の素子列120が形成された面の反対面に固定された空気袋と、この空気袋の内圧を調整するためのポンプとにより構成される。押圧機構20による手首への押圧力(上記のポンプの内圧)は、制御部30によって制御される。
【0031】
押圧機構20は、圧力センサ10を手首に対して押圧できる機構であれば何でもよく、空気袋を用いたものには限定されない。
【0032】
圧力センサ10は、素子列120を構成する各圧力検出素子12により検出された圧力信号を制御部30に入力する。
【0033】
制御部30は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、プロセッサを含み、ROMに記憶されているプログラムをプロセッサが実行することで、本体部1全体を統括制御する。このプログラムには疲労度判定プログラムが含まれる。RAMは、制御部30が各種処理を行う際のワークメモリとして機能する。
【0034】
表示部50は、各種情報を表示するものであり、例えば液晶表示素子によって構成される。
【0035】
動き検出センサ60は、ユーザの体動を検出するセンサであり、加速度センサ、角速度センサ、及び、気圧センサ等から選ばれる1つ又は複数のセンサによって構成される。
【0036】
操作部70は、生体情報測定装置100の操作を行うためのインタフェースであり、本体部1に設けられたボタン、ダイヤル、又は、表示部50と一体化されたタッチパネル等によって構成される。
【0037】
記憶媒体40は、データの記憶及び読み出しが可能な媒体であり、例えばフラッシュメモリ等が用いられる。記憶媒体40は、メモリカード等の可搬型のものであってもよいし、本体部1に固定されていて取り出し不可となっているものであってもよい。
【0038】
記憶媒体40には、疲労度を判定するために用いられる疲労度判定用情報が記憶されている。
【0039】
この疲労度判定用情報は、人の覚醒時かつ安静時における生体拍数及び人の睡眠時における生体拍数のうちの一方の生体拍数に対する他方の生体拍数の変化の度合いと、人の疲労度(酸化ストレス度)とが対応付けられた情報である。
【0040】
2つの生体拍数の変化の度合いとは、例えば、2つの生体拍数の差分値、又は、2つの生体拍数の一方に対する他方の変化の割合のことを言う。
【0041】
2つの生体拍数の差分値は、2つの生体拍数の一方の生体拍数から他方の生体拍数を減算して得られる値である。
【0042】
2つの生体拍数の変化の割合は、2つの生体拍数の一方の生体拍数から他方の生体拍数を減算して得られる差分値を、該他方の生体拍数で除算して得られる値、又は、該値に100を乗じて得られる値のことをいう。
【0043】
疲労度判定用情報は、生体拍数の変化の度合いと疲労度(酸化ストレス度)の組み合わせが多数登録されたテーブルデータ、又は、生体拍数の変化の度合いと疲労度(酸化ストレス度)との関係を関数として表した演算式等によって構成される。
【0044】
発明者らは、人の心拍数と酸化ストレス度(Oxidation Stress Index: OSI)との関係を検証した結果、人の覚醒時かつ安静時における心拍数及び人の睡眠時における心拍数のうちの一方の生体拍数に対する他方の生体拍数の変化の度合いと、疲労度の指標の1つである酸化ストレス度との間には相関関係があることを見出した。
【0045】
具体的には、発明者らは、30歳から60歳の日中勤務している健常男性52名を被験者とし、心電計を利用して各被験者の睡眠中の心拍数を7日間計測した。また、発明者らは、上記7日間のうちの計測開始日の前日と計測終了日の翌日の計2日、被験者が覚醒している午前9時〜午後1時の間に、各被験者に採血を実施して、酸化ストレス度を計測した。また、この採血と併せて、上腕式血圧計を利用して心拍数を計測した。
【0046】
これらの計測によって、発明者らは、52名の被験者の各々から、睡眠中の心拍数を7日分、覚醒時かつ安静時の心拍数を2日分、酸化ストレス度を2日分得た。
【0047】
発明者らは、被験者毎に、睡眠中の心拍数の平均値を算出して夜間心拍数とし、覚醒時かつ安静時の心拍数の平均値を算出して日中心拍数とし、2日分の酸化ストレス度の平均を算出して疲労度とした。
【0048】
図4は、心拍数と酸化ストレス度との関係を検証した結果を纏めたグラフを示す図である。
【0049】
図4に示すグラフの横軸は、夜間心拍数から日中心拍数を減算して得られる差分値を示す。
図4に示すグラフの縦軸は、疲労度を示す。また、グラフ中のプロットデータのうち、“〇”は40歳以下の被験者のデータを示し、“□”は41歳以上50歳未満の被験者のデータを示し、“△”は51歳以上の被験者のデータを示している。
【0050】
図5は、心拍数と酸化ストレス度との関係を検証した結果を纏めたグラフを示す図である。
【0051】
図5に示すグラフは、横軸の値を、夜間心拍数から日中心拍数を減算して得られる差分値を日中心拍数で除算し更に100を乗じた値(昼夜心拍数変化率[%])として全データを正規化したものであり、その他の点は
図4に示すグラフと同じである。
【0052】
図4及び
図5に示すグラフによれば、睡眠時の心拍数が、覚醒時かつ安静時の心拍数に対して高いほど疲労度は高くなり、睡眠時の心拍数が、覚醒時かつ安静時の心拍数に対して低いほど疲労度は低下することが分かる。
【0053】
健常者であれば、睡眠中の心拍数は、日中の活動時の心拍数よりも低下する傾向にある。しかし、長期間に渡って疲労が蓄積してくると、精神的な影響又は良質な睡眠をとれなくなる等によって心拍数が日中よりも下がりにくくなると考えられる。このような理論が、採血によって計測した酸化ストレス度と、実測した心拍数との関係を検証することで証明された。
【0054】
なお、上述したように、健常者であれば、心拍数は脈拍数と一致するため、脈拍数と酸化ストレス度との関係についても、心拍数と同様に、
図4,5に示すような相関関係がある。
【0055】
図4に示す全てのプロットデータから最小二乗法によって求められる直線40Aを示す関数は、縦軸をY、横軸をXとすると以下の式(1)のように表される。
【0056】
Y=0.016X+1.1462 ・・・(1)
【0057】
また、
図5に示す全てのプロットデータから最小二乗法によって求められる直線40Bを示す関数は、縦軸をY、横軸をXとすると以下の式(2)のように表される。
【0058】
Y=0.0095X+1.1359 ・・・(2)
【0059】
記憶媒体40には、一例として、式(1)又は式(2)の情報が疲労度判定用情報として記憶される。
【0060】
記憶媒体40に記憶される疲労度判定用情報は、生体情報測定装置100の製造段階でメーカーによって記憶されてもよいし、生体情報測定装置100がインターネット等のネットワークに接続可能な構成であれば、ネットワークを介したダウンロードによって記憶されてもよい。
【0061】
図6は、
図3に示す制御部30の機能ブロック図である。
【0062】
制御部30は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、押圧制御部31と、測定部32と、記憶制御部33と、第一の生体拍数取得部34と、第二の生体拍数取得部35と、疲労度判定部36と、出力部37として機能する。
【0063】
押圧制御部31は、押圧機構20を駆動して、押圧機構20による圧力センサ10の手首への押圧力を制御する。
【0064】
測定部32は、押圧機構20によって圧力センサ10が手首に最適押圧力で押圧されている押圧状態で、素子列120を構成する複数の圧力検出素子12のうちの最適圧力検出素子により検出された圧脈波の情報に基づいて、生体情報測定装置100を装着するユーザの生体拍数である脈拍数を1拍毎又は複数拍毎に算出することで、脈拍数の測定を行う。
【0065】
最適押圧力とは、この最適押圧力によって圧迫された橈骨動脈TDから血管の周方向の張力の影響を受けずに圧脈波を検出できる状態、すなわちトノメトリ状態を実現する押圧力である。最適圧力検出素子とは、最適押圧力によって圧力センサ10により圧迫されて平坦になっている橈骨動脈TDの部分の真上に位置する圧力検出素子12のことをいう。
【0066】
生体情報測定装置100では、ユーザの行動状態が睡眠か睡眠中以外の活動中かを判定するために、操作部70によって睡眠モードと活動モードとのいずれかを設定できるように構成されている。
【0067】
以下では、ユーザが、就寝する際に操作部70を操作して生体情報測定装置100を睡眠モードに設定し、起床すると、操作部70を操作して生体情報測定装置100を活動モードに設定するものとして説明する。
【0068】
記憶制御部33は、測定部32により測定された脈拍数、その脈拍数の算出に利用した圧脈波の検出日(脈拍数の測定日と同義)及び検出時刻、その圧脈波の検出時における動き検出センサ60の検出信号、及び、その圧脈波の検出時において設定されている動作モード(睡眠モード又は活動モード)を示すモード情報を含む測定データを記憶媒体40に記憶する。
【0069】
第一の生体拍数取得部34は、測定部32によってユーザから測定されて記憶媒体40に記憶された測定データに基づいて、ユーザの覚醒時かつ安静時の第一の生体拍数である第一の脈拍数を生成し、生成した第一の脈拍数をRAMに記憶することで、この第一の脈拍数を取得する。
【0070】
第二の生体拍数取得部35は、測定部32によってユーザから測定されて記憶媒体40に記憶された測定データに基づいて、ユーザの睡眠時の第二の生体拍数である第二の脈拍数を生成し、生成した第二の脈拍数をRAMに記憶することで、この第二の脈拍数を取得する。
【0071】
疲労度判定部36は、記憶媒体40に記憶されている疲労度判定用情報を読み出してRAMに記憶し、この疲労度判定用情報と、第一の生体拍数取得部34によって取得された第一の脈拍数と、第二の生体拍数取得部35によって取得された第二の脈拍数と、に基づいて、ユーザの疲労度を判定する。ここで判定される疲労度は、ユーザの酸化ストレス度の推定値となる。
【0072】
具体的には、疲労度判定部36は、記憶媒体40に記憶されている疲労度判定用情報が式(1)であれば、第二の脈拍数から第一の脈拍数を減算し、この演算によって得られた差分値を式(1)の“X”に代入することで疲労度を算出する。
【0073】
また、疲労度判定部36は、記憶媒体40に記憶されている疲労度判定用情報が式(2)であれば、第二の脈拍数から第一の脈拍数を減算し、この減算によって得られた差分値を第一の脈拍数で除算して100を乗じ、この乗算によって得られた値を式(2)の“X”に代入することで疲労度を算出する。
【0074】
出力部37は、疲労度判定部36によって判定された疲労度の情報を表示部50に出力して、この情報を表示部50に表示させる。
【0075】
なお、生体情報測定装置100が音を出力するスピーカを有する構成であれば、出力部37は、疲労度判定部36によって判定された疲労度の情報をこのスピーカに出力し、音声によって疲労度をユーザに通知してもよい。
【0076】
このように構成された生体情報測定装置100では、ユーザが睡眠モードと活動モードのいずれかを設定した状態で測定開始ボタンを押すと、ユーザから定期的に脈拍数が測定され、測定された脈拍数と、その脈拍数の算出に用いた圧脈波の検出日及び検出時刻と、その圧脈波の検出時の動き検出信号と、設定中の動作モードを示すモード情報とを含む測定データが記憶媒体40に順次記憶されていく。
【0077】
そして、任意のタイミングにおいて、ユーザが操作部70を操作して疲労度の判定指示を行うと、この判定指示が制御部30に入力され、制御部30が疲労度の判定を行い、判定した疲労度を表示部50に表示させる。
【0078】
判定指示が入力されると、第一の生体拍数取得部34は、判定指示が行われた日時を起点として、予め決められた時間前までの期間を判定期間として設定する。
【0079】
判定期間としては、睡眠モードのモード情報を含む測定データと、活動モードのモード情報を含む測定データとが必ず得られている程度の期間としておくことが好ましく、例えば24時間が設定されるが、これに限定されるものではない。
【0080】
次に、第一の生体拍数取得部34は、上記の判定期間中の検出日及び検出時刻を含む測定データを記憶媒体40から抽出し、抽出した測定データのうち、活動モードを示すモード情報を含む活動時測定データを更に抽出する。ここで抽出される活動時測定データは、ユーザの覚醒時における脈拍数の情報を含む。
【0081】
次に、第一の生体拍数取得部34は、活動時測定データに含まれる動き検出センサ60の検出信号を解析し、ユーザの動きが閾値以下となっている安静時測定データを特定する。ここで特定される安静時測定データは、ユーザの覚醒時かつ安静時における脈拍数の情報を含む。
【0082】
最後に、第一の生体拍数取得部34は、この安静時測定データに含まれる脈拍数の代表値を算出し、算出した代表値を第一の脈拍数としてRAMに記憶することで、第一の脈拍数を取得する。
【0083】
ここで、複数の脈拍数の代表値とは、この複数の脈拍数の平均値、この複数の脈拍数のうちの最大値及び最小値を除いた脈拍数の平均値、この複数の脈拍数のうちの最頻値、又は、この複数の脈拍数のうちの中央値等といった複数の脈拍数全体の傾向を示している値である。
【0084】
また、第二の生体拍数取得部35は、上記の判定期間中の検出日及び検出時刻を含む測定データを記憶媒体40から抽出し、抽出した測定データのうち、睡眠モードのモード情報を含む夜間測定データを抽出する。
【0085】
次に、第二の生体拍数取得部35は、抽出した各夜間測定データに含まれる動き検出センサ60の検出信号を解析し、ユーザが睡眠中と判定できる検出信号を含む睡眠時測定データを特定する。ここで特定される睡眠時測定データは、ユーザの睡眠時における脈拍数の情報を含む。
【0086】
最後に、第二の生体拍数取得部35は、特定した各睡眠時測定データに含まれる脈拍数の代表値を上述した方法等によって算出し、算出した代表値を第二の脈拍数としてRAMに記憶することで、第二の脈拍数を取得する。
【0087】
第一の脈拍数と第二の脈拍数がRAMに記憶されると、疲労度判定部36は、記憶媒体40から疲労度判定用情報を読み出してRAMに記憶し、第一の脈拍数と第二の脈拍数と疲労度判定用情報とに基づいて疲労度を判定し、判定した疲労度を表示部50に表示させる。
【0088】
例えば、7月14日の朝10時に疲労度の判定指示が行われると、7月13日の朝10時から7月14日の朝10時までの間のユーザの睡眠時の脈拍数の代表値が第二の脈拍数としてRAMに記憶され、7月13日の朝10時から7月14日の朝10時までの間のユーザの覚醒時かつ安静時の脈拍数の代表値が第一の脈拍数としてRAMに記憶される。そして、これら第一の脈拍数及び第二の脈拍数と疲労度判定用情報とに基づいて疲労度が判定されて表示部50に表示されることになる。
【0089】
このように、生体情報測定装置100によれば、ユーザの覚醒時かつ安静時の第一の脈拍数と、ユーザの睡眠時の第二の脈拍数と、実験的に求められて記憶媒体40に予め記憶された疲労度判定用情報と、に基づいてユーザの疲労度(酸化ストレス度の推定値)を判定するため、複雑な演算処理を行うことなく疲労度を判定することができる。したがって、制御部30の処理負荷を軽減することができる。
【0090】
また、疲労度の判定には、第一の脈拍数と第二の脈拍数が必要であるが、第一の脈拍数については、ユーザが日中に安静にした状態で脈拍数の測定を少なくとも1度行うことで容易に得ることができる。このため、ユーザは、日中に生体情報測定装置100を装着し続ける必要がなく、ユーザの負担を軽減することができる。
【0091】
生体情報測定装置100がバッテリ駆動型である場合は、ユーザが寝ているとき以外は頻繁に充電が行われることが考えられる。装置の充電中は脈拍数の測定は行うことができない。このため、日中における脈拍数の測定については1回でも測定がなされればよい構成としておくことで、疲労度を正確に判定しながら、装置の充電にも対応することが可能となる。
【0092】
以下、生体情報測定装置100の変形例について説明する。
【0093】
(第一の変形例)
第一の生体拍数取得部34、第二の生体拍数取得部35、及び、疲労度判定部36は、ユーザからの判定指示に応じて動作する以外に、予め決められたタイミングで動作して疲労度の判定を行ってもよい。
【0094】
上記のタイミングとしては、動作モードが睡眠モードから活動モードに切替えられたタイミング、動作モードが活動モードから睡眠モードに切替えられたタイミング、又は、生体情報測定装置100の電源が投入されたタイミング等がある。
【0095】
これらのタイミングは、ユーザが生体情報測定装置100を操作している状態である。このため、このタイミングで疲労度が表示部50に表示されたり、スピーカから出力されたりすることで、ユーザに対して自然な形で疲労度の通知を行うことができる。
【0096】
また、動作モードの切り替え操作は、ユーザが毎日行うことが想定される。このため、動作モードが切替えられたタイミングで疲労度が通知されることで、ユーザは疲労度の毎日の微妙な変化を知ることができ、自身の生活改善等に役立てることができる。
【0097】
(第二の変形例)
上記の実施形態では、第一の生体拍数取得部34が、上記の判定期間中の検出日及び検出時刻を含む測定データを記憶媒体40から抽出し、抽出した測定データの中から、モード情報に基づいて活動時測定データを抽出している。
【0098】
第二の変形例では、第一の生体拍数取得部34は、活動モードを示すモード情報を用いずに、記憶媒体40から抽出した測定データに含まれる検出信号を解析して、睡眠中に測定されたものと、睡眠中以外の活動中に測定されたものとを区別することで、活動時測定データを抽出する。
【0099】
また、第二の変形例では、第二の生体拍数取得部35は、睡眠モードを示すモード情報を用いずに、記憶媒体40から抽出した測定データに含まれる検出信号を解析して、睡眠中に測定されたものと、睡眠中以外の活動中に測定されたものとを区別することで、夜間測定データを抽出する。
【0100】
この第二の変形例によれば、第一の脈拍数と第二の脈拍数を取得するために動作モードの情報を使用しないため、動作モードの設定をユーザが行う必要がなくなる。したがって、動作モードの切替え忘れなどの心配が不要となり、生体情報測定装置100の使い勝手を向上させることができる。
【0101】
(第三の変形例)
第二の生体拍数取得部35は、上記で特定した各睡眠時測定データのうち、動き検出センサ60の検出信号からノンレム睡眠中に測定されたものと判断できる測定データを特定し、この測定データに含まれる脈拍数の代表値を第二の脈拍数としてもよい。脈拍数は、ノンレム睡眠中に低下すると考えられることから、ノンレム睡眠中の脈拍数を第二の脈拍数として取得し、疲労度の判定に用いることで、疲労度の判定精度を向上させることができる。
【0102】
(第四の変形例)
第二の生体拍数取得部35は、上記で特定した各睡眠時測定データに含まれる脈拍数のうちの最小となる脈拍数を第二の脈拍数として取得してもよい。睡眠時における最小の脈拍数は、ノンレム睡眠状態での脈拍数である可能性が高い。脈拍数は、ノンレム睡眠中に低下すると考えられることから、ノンレム睡眠中の脈拍数を第二の脈拍数として取得し、疲労度の判定に用いることで、疲労度の判定精度を向上させることができる。
【0104】
図7は、本発明の一実施形態に係る疲労度判定システムの概略構成を示す図である。
図7に示す疲労度判定システムは、生体情報測定装置100Aと、電子機器200と、を備える。
【0105】
生体情報測定装置100Aの内部ハードウェア構成は、電子機器200と通信するための通信インタフェースが追加された点を除いては、生体情報測定装置100と同じであるため説明を省略する。
【0106】
生体情報測定装置100Aの制御部30の機能ブロック図は、
図6において、第一の生体拍数取得部34、第二の生体拍数取得部35、疲労度判定部36、及び、出力部37を削除した構成である。
【0107】
電子機器200は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、又は、タブレット端末等の電子機器である。
【0108】
電子機器200は、生体情報測定装置100Aと有線又は無線等で接続可能であり、生体情報測定装置100Aの記憶媒体40のデータを読み込み可能である。
【0109】
なお、生体情報測定装置100Aの記憶媒体40が可搬型である場合には、電子機器200がこの記憶媒体からデータを読み取り可能な手段を有し、装着された記憶媒体からデータを読み取る構成としてもよい。
【0110】
図7に示す疲労度判定システムでは、生体情報測定装置100Aのユーザが、自身の所有する電子機器200に、疲労度の判定を行うためのアプリケーション(疲労度判定アプリ)をインストールしておくことを前提としている。この疲労度判定アプリには上記の疲労度判定プログラムが含まれる。
【0111】
図8は、
図7に示す疲労度判定システムの電子機器200の内部ハードウェア構成を示す図である。
【0112】
電子機器200は、全体を統括制御するシステム制御部201と、通信インタフェース(I/F)202と、記憶媒体203と、操作部204と、表示部205と、スピーカ206と、を備える。
【0113】
システム制御部201は、プロセッサと、このプロセッサの実行するプログラム等が記憶されるROMと、ワークメモリとしてのRAMと、を含む。このROMには、上記の疲労度判定アプリが記憶される。
【0114】
通信I/F202は、生体情報測定装置100Aを含む電子機器と有線又は無線で接続するためのインタフェースである。
【0115】
記憶媒体203は、生体情報測定装置100Aから読み出した測定データを記憶する。記憶媒体203は、例えばフラッシュメモリ等により構成される。記憶媒体203は電子機器200に対して着脱可能であってもよい。
【0116】
記憶媒体203には、上記の疲労度判定アプリのインストール時に、上述した疲労度判定用情報が記憶される。
【0117】
操作部204は、システム制御部201に対する指示信号を入力するためのインタフェースであり、キーボード、マウス、ボタン、又は、タッチパネル等により構成される。
【0118】
表示部205は、各種情報を表示するためのものであり、例えば液晶表示装置等により構成される。
【0119】
図9は、
図8に示す電子機器200のシステム制御部201の機能ブロック図である。
【0120】
システム制御部201は、プロセッサが疲労度判定プログラムを実行することにより、測定データ取得部201A、第一の生体拍数取得部201B、第二の生体拍数取得部201C、疲労度判定部201D、及び、出力部201Eとして機能する。システム制御部201は、疲労度判定装置として機能する。
【0121】
測定データ取得部201Aは、生体情報測定装置100Aの記憶媒体40から、この記憶媒体40に記憶された測定データを取得して、記憶媒体203に記憶する。
【0122】
第一の生体拍数取得部201Bは、測定データの読み込み先が記憶媒体203である点を除いては、第一の生体拍数取得部34と同じ機能を有する。
【0123】
第二の生体拍数取得部201Cは、測定データの読み込み先が記憶媒体203である点を除いては、第二の生体拍数取得部35と同じ機能を有する。
【0124】
疲労度判定部201Dは、疲労度判定用情報の読み込み先が記憶媒体203である点を除いては、疲労度判定部36と同じ機能を有する。
【0125】
出力部201Eは、疲労度の情報の出力先が表示部205又はスピーカ206である点を除いては、出力部37と同じ機能を有する。
【0126】
以上のように構成された疲労度判定システムでは、生体情報測定装置100Aのユーザが、自身の所持する電子機器200にインストールした疲労度アプリを起動させて、疲労度の判定指示をシステム制御部201に対して行う。この判定指示を受けて、システム制御部201は、判定指示が行われた日時を起点として上記の予め決められた時間(例えば24時間)前までの期間を判定期間として設定する。
【0127】
次に、第一の生体拍数取得部201Bは、上記の判定期間中の検出日及び検出時刻を含む測定データに基づいて、ユーザの覚醒時かつ安静時における第一の脈拍数を取得する。また、第二の生体拍数取得部201Cは、上記の判定期間中の検出日及び検出時刻を含む測定データに基づいて、ユーザの睡眠時における第二の脈拍数を取得する。
【0128】
次に、疲労度判定部201Dは、記憶媒体203から疲労度判定用情報を読み出してRAMに記憶し、第一の脈拍数と第二の脈拍数と疲労度判定用情報とに基づいて疲労度を判定し、判定した疲労度を表示部205に表示させる。
【0129】
以上のように、脈拍数を測定可能な生体情報測定装置100Aと通信できる電子機器200において疲労度の判定を行って、その疲労度をユーザに通知することもできる。
【0130】
この構成によれば、生体情報測定装置100Aでの処理量を削減して、装置の電池寿命を延ばすことができる。また、生体情報測定装置100Aに表示部又はスピーカ等が設けられない場合でも、疲労度をユーザに通知することができ、生体情報測定装置100Aの小型化及び低コスト化にも対応可能となる。
【0131】
以上の説明では、生体情報測定装置100及び生体情報測定装置100Aが、圧力センサ10により検出された圧脈波に基づいて脈拍数を測定するものとしたが、脈拍数の測定方式又は脈拍数の測定頻度はこれに限らない。例えば、生体情報測定装置100及び生体情報測定装置100Aは、光電脈波センサによって検出した脈波に基づいて脈拍数を測定してもよい。
【0132】
また、生体情報測定装置100,100Aは、30分毎又は1時間毎等の予め決められた時間間隔で脈拍数を測定し記憶するものであってもよい。
【0133】
第五の変形例では電子機器200が疲労度の判定を行う構成であるが、電子機器200と通信可能なサーバによって疲労度の判定を行い、判定した疲労度をサーバから電子機器200に返信することで、電子機器200にて疲労度を確認できるようにしてもよい。この場合は、サーバが疲労度判定装置として機能する。
【0134】
また、生体情報測定装置100,100Aは、心電センサ等を用いて、1拍毎、複数拍毎、或いは、30分毎又は1時間毎等の予め決められた時間間隔で生体拍数としての心拍数を測定し記憶するものであってもよい。
【0135】
また、生体情報測定装置100,100Aは、脈拍数又は心拍数等の生体拍数以外に、血圧情報を測定し記憶する機能を有していてもよい。
【0136】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0137】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0138】
(1) ユーザから測定された生体拍数に基づいて、前記ユーザの覚醒時かつ安静時の第一の生体拍数を取得する第一の生体拍数取得部と、前記ユーザから測定された生体拍数に基づいて、前記ユーザの睡眠時の第二の生体拍数を取得する第二の生体拍数取得部と、人の覚醒時かつ安静時における生体拍数及び人の睡眠時における生体拍数のうちの一方の生体拍数に対する他方の生体拍数の変化の度合いと疲労度とが対応付けられた情報を記憶する記憶媒体から読み出した前記情報と、前記第一の生体拍数及び前記第二の生体拍数とに基づいて、前記ユーザの疲労度を判定する疲労度判定部と、を備える疲労度判定装置。
【0139】
(2) (1)記載の疲労度判定装置であって、前記疲労度判定部は、前記第一の生体拍数と前記第二の生体拍数のうちの一方に対する他方の変化の度合いを算出し、前記情報において当該度合いに対応する疲労度を前記ユーザの疲労度として判定する疲労度判定装置。
【0140】
(3) (1)又は(2)記載の疲労度判定装置であって、前記情報に含まれる前記疲労度は、酸化ストレス度である疲労度判定装置。
【0141】
(4) (1)〜(3)のいずれか1つに記載の疲労度判定装置であって、前記第一の生体拍数取得部は、前記疲労度判定部が前記ユーザの疲労度を判定するタイミングを起点として予め決められた時間前までの判定期間において前記ユーザから測定された生体拍数に基づいて前記第一の生体拍数を取得し、前記第二の生体拍数取得部は、前記判定期間において前記ユーザから測定された生体拍数に基づいて前記第二の生体拍数を取得する疲労度判定装置。
【0142】
(5) (4)疲労度判定装置であって、前記予め決められた時間は24時間である疲労度判定装置。
【0143】
(6) (1)〜(5)のいずれか1つに記載の疲労度判定装置であって、前記疲労度判定部によって判定された前記ユーザの疲労度の情報を表示部又はスピーカに出力する出力部を更に備え、前記疲労度判定部は、予め決められたタイミングで前記ユーザの疲労度を判定する疲労度判定装置。
【0144】
(7) (1)〜(6)のいずれか1つに記載の疲労度判定装置であって、前記変化の度合いは、前記一方の生体拍数から前記他方の生体拍数を減算して得られる差分値であり、前記疲労度判定部は、前記第一の生体拍数と前記第二の生体拍数のうちの一方から他方を減算し、前記情報において前記減算で得た値に対応する疲労度を前記ユーザの疲労度として判定する疲労度判定装置。
【0145】
(8) (1)〜(6)のいずれか1つに記載の疲労度判定装置であって、前記変化の度合いは、前記一方の生体拍数から前記他方の生体拍数を減算して得られる差分値を前記他方の生体拍数で除算して得られる値、又は、該値に100を乗じた値であり、前記疲労度判定部は、前記第一の生体拍数と前記第二の生体拍数のうちの一方から他方を減算して得られる差分値を当該他方で除算して、又は、前記第一の生体拍数と前記第二の生体拍数のうちの一方から他方を減算して得られる差分値を前記他方で除算し更に100を乗じて、前記ユーザの生体拍数の変化の割合を算出し、前記情報において前記変化の割合に対応する疲労度を前記ユーザの疲労度として判定する疲労度判定装置。
【0146】
(9) (1)〜(8)のいずれか1つに記載の疲労度判定装置と、前記ユーザから生体拍数を測定する測定部と、を備え、前記第一の生体拍数取得部は、前記測定部によって測定された生体拍数から前記第一の生体拍数を生成することで前記第一の生体拍数を取得し、前記第二の生体拍数取得部は、前記測定部によって測定された生体拍数から前記第二の生体拍数を生成することで前記第二の生体拍数を取得する生体情報測定装置。
【0147】
(10) ユーザから測定された生体拍数に基づいて、前記ユーザの覚醒時かつ安静時の第一の生体拍数を取得する第一の生体拍数取得ステップと、前記ユーザから測定された生体拍数に基づいて、前記ユーザの睡眠時の第二の生体拍数を取得する第二の生体拍数取得ステップと、人の覚醒時かつ安静時における生体拍数及び人の睡眠時における生体拍数のうちの一方の生体拍数に対する他方の生体拍数の変化の度合いと疲労度とが対応付けられた情報を記憶する記憶媒体から読み出した前記情報と、前記第一の生体拍数及び前記第二の生体拍数とに基づいて、前記ユーザの疲労度を判定する疲労度判定ステップと、を備える疲労度判定方法。
【0148】
(11) ユーザから測定された生体拍数に基づいて、前記ユーザの覚醒時かつ安静時の第一の生体拍数を取得する第一の生体拍数取得ステップと、前記ユーザから測定された生体拍数に基づいて、前記ユーザの睡眠時の第二の生体拍数を取得する第二の生体拍数取得ステップと、人の覚醒時かつ安静時における生体拍数及び人の睡眠時における生体拍数のうちの一方の生体拍数に対する他方の生体拍数の変化の度合いと疲労度とが対応付けられた情報を記憶する記憶媒体から読み出した前記情報と、前記第一の生体拍数及び前記第二の生体拍数とに基づいて、前記ユーザの疲労度を判定する疲労度判定ステップと、をコンピュータに実行させるための疲労度判定プログラム。