(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の荷重は前記研磨テープが破断に至らないように予め設定された許容値よりも大きく、前記第2の荷重は前記許容値以下であることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
前記第2の時間間隔は、前記第1の荷重が付加されたことにより伸びた研磨テープが、巻き取りリールに回収される時間間隔に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の研磨方法。
前記第1の荷重は、前記研磨テープが最大の研磨能力で前記基板を研磨する押圧荷重に設定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の研磨方法。
前記第1の荷重は前記研磨テープが破断に至らないように予め設定された許容値よりも大きく、前記第2の荷重は前記許容値以下であることを特徴とする請求項7に記載の研磨装置。
前記第2の時間間隔は、前記第1の荷重が付加されたことにより伸びた研磨テープが前記巻き取りリールに回収される時間間隔に設定されていることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
前記第1の荷重は、前記研磨テープが最大の研磨能力で前記基板のエッジ部を研磨する押圧荷重に設定されていることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項に記載の研磨装置。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造における歩留まり向上の観点から、基板の表面状態の管理が近年注目されている。半導体デバイスの製造工程では、種々の材料がシリコンウェハ上に成膜される。このため、基板の周縁部には不要な膜や表面荒れが形成される。近年では、基板の周縁部のみをアームで保持して基板を搬送する方法が一般的になってきている。このような背景のもとでは、周縁部に残存した不要な膜が種々の工程を経ていく間に剥離して基板に形成されたデバイスに付着し、歩留まりを低下させてしまう。そこで、基板の周縁部に形成された不要な膜を除去するために、研磨装置を用いて基板の周縁部が研磨される。ここで、本明細書では、基板の周縁部を、基板の最外周に位置するベベル部と、このベベル部の径方向内側に位置するトップエッジ部およびボトムエッジ部とを含む領域として定義する。
【0003】
図8(a)および
図8(b)は、基板の一例としてのウェハの周縁部を示す拡大断面図である。より詳しくは、
図8(a)はいわゆるストレート型のウェハの断面図であり、
図8(b)はいわゆるラウンド型のウェハの断面図である。
図8(a)のウェハWにおいて、ベベル部は、上側傾斜部(上側ベベル部)P、下側傾斜部(下側ベベル部)Q、および側部(アペックス)Rから構成されるウェハWの最外周面(符号Bで示す)である。
図8(b)のウェハWにおいては、ベベル部は、ウェハWの最外周面を構成する、湾曲した断面を有する部分(符号Bで示す)である。トップエッジ部は、ベベル部Bよりも径方向内側に位置する平坦部E1である。ボトムエッジ部は、トップエッジ部とは反対側に位置し、ベベル部Bよりも径方向内側に位置する平坦部E2である。トップエッジ部は、デバイスが形成された領域を含むこともある。本明細書では、トップエッジ部を単にエッジ部という。
【0004】
特許文献1は、基板のエッジ部を研磨テープで研磨することが可能な研磨装置を記載している。特許文献1に記載の研磨装置は、基板を保持して回転させる基板保持機構と、研磨テープを支持する複数のガイドローラを有するテープ供給回収機構と、テープ供給回収機構から供給された研磨テープを基板のエッジ部に押し当てる押圧部材を有する研磨ヘッドと、を備えている。テープ供給回収機構は、さらに、巻き出しリールと巻き取りリールとを有しており、テープ供給回収機構の複数のガイドローラに支持された研磨テープは、テープ送り装置によって巻き出しリールから研磨ヘッドを経由して巻き取りリールに送られる。テープ送り装置は、研磨テープの送り方向において、研磨ヘッドの下流側に位置する。テープ送り装置によって巻き出しリールから巻き取りリールに所定の送り速度で送られる研磨テープを、研磨ヘッドの押圧部材で回転する基板のエッジ部に押し付けることにより、基板のエッジ部が研磨される。
【0005】
研磨テープは、一般に、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂からなる基材フィルムと、この基材フィルム上に塗布されたウレタン、ポリエチレン樹脂などからなるバインダによって保持された砥粒とを備えた構造を有している。したがって、研磨テープはある程度の弾性を有しており、研磨テープに張力を加えると、研磨テープに伸びが発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基板のエッジ部の研磨中、押圧部材は、所定の押圧荷重で研磨テープを基板のエッジ部に押し付ける。
図9は、研磨テープを基板のエッジ部に押し付ける研磨圧力と、研磨テープの研磨能力との関係の一例を示したグラフである。研磨圧力は、研磨テープを基板のエッジ部に押し付ける押圧荷重を、基板のエッジ部と研磨テープとの接触面積で除算して得られる値である。
図9では、基板のエッジ部と研磨テープとの接触面積が一定であるときの研磨圧力を記載しているので、研磨圧力の大きさは押圧荷重の大きさに相当する。本明細書において、研磨能力は、研磨テープが基板を研磨する能力を表し、研磨テープを基板のエッジ部に押し付ける押圧荷重に応じて変化する。例えば、
図9において、押圧荷重に対応する研磨圧力が1.36MPaの場合は、研磨テープは、該研磨テープが本来有する研磨能力を最大限に(すなわち、100%)発揮して基板のエッジ部を研磨している。押圧荷重に対応する研磨圧力が0.3MPaの場合は、研磨テープは、該研磨テープが本来有する研磨能力の半分(すなわち、50%)で基板のエッジ部を研磨している。研磨能力は、基板のエッジ部の研磨レートに比例する。
【0008】
図9に示されるように、研磨テープの研磨能力は、研磨圧力が増加するにつれて増加していき、研磨圧力が1.36MPaのときに研磨能力が最大値(すなわち、100%)に到達する。研磨圧力が1.36MPaを超えると、研磨テープと基板のエッジ部との間の摩擦によって、研磨テープの砥粒が基材フィルムから剥がれ落ちるため、研磨能力が低下する。研磨能力が最大となる研磨圧力(
図9では、1.36MPa)が最大研磨圧力である。このように、研磨圧力が最大研磨圧力に到達するまでは、研磨圧力を増加させることにより、研磨能力を増加させることができる。なお、
図9は、研磨圧力と研磨テープの研磨能力と関係の一例を示しているにすぎず、研磨テープの最大研磨圧力および研磨能力は、砥粒の大きさ、バインダとして用いられる材料の種類などの研磨テープの構成に応じて変化する。
【0009】
一方で、研磨圧力(すなわち、研磨テープを基板に押し付ける押圧荷重)を増加させると、テープ送り装置が研磨テープを研磨ヘッドから巻き取りリールに一定の送り速度で送ることができなくなる。その結果、研磨ヘッドとテープ送り装置との間で研磨テープの伸びが発生する。研磨テープの伸びが増加していくと、研磨テープは破断に至る。破断した研磨テープを交換している間は、基板のエッジ部を研磨することができないので、研磨装置の生産性が低下する。さらに、研磨テープが破断すると、破断した研磨テープが基板に接触したり、押圧部材が研磨テープを介さずに直接基板に接触したりすることがある。この場合、破断した研磨テープと基板との接触、または押圧部材と基板との接触により、基板が損傷されたり、割れたりすることがある。したがって、研磨テープの破断を防止するために、研磨テープを基板に押し付ける押圧荷重の許容値が予め設定されている。許容値以下の押圧荷重で研磨テープを基板のエッジ部に押し付けることにより、テープ送り装置は、所定の送り速度で研磨テープを研磨ヘッドから巻き取りリールに送ることができる。従来の研磨装置では、研磨テープを基板のエッジ部に押し付ける押圧荷重は許容値以下の一定値に維持されている。
【0010】
図10は、研磨テープの研磨幅と、押圧荷重に対応する研磨圧力の許容値との関係の一例を示したグラフである。研磨幅は、基板のエッジ部に押し付けられる研磨テープの幅である。押圧荷重の許容値に対応する研磨圧力の許容値は研磨幅によって変化する。さらに、押圧荷重の許容値は研磨テープの引張り強度に依存するので、押圧荷重の許容値は研磨テープの基材フィルムの厚さによって異なる。
図10では、異なる基材フィルムの厚さを有する複数の研磨テープの研磨圧力の許容値が示されている。例えば、基材フィルムの厚さが125μmであり、研磨幅が2.0mmに設定された研磨テープで基板のエッジ部を研磨する場合は、研磨圧力の許容値は、0.5MPaである。
【0011】
図11は、
図9に示されるグラフと
図10に示されるグラフとを重ね合わせたグラフである。
図11に示されるように、基板のエッジ部を研磨するときに研磨テープの最大研磨能力が発揮される最大研磨圧力は、1.36MPaである一方で、研磨テープの研磨圧力の許容値(押圧荷重の許容値に対応する)は、この最大研磨圧力よりも非常に小さい。したがって、従来の研磨装置では、研磨テープが本来有している研磨能力を十分に利用して、基板のエッジ部を研磨することができなかった。その結果、基板のエッジ部を研磨するための研磨時間が長くなるので、研磨テープが無駄に消費されていた。同様の問題は、研磨テープで基板を研磨する全ての研磨装置で発生する。例えば、この問題は、研磨テープでベベル部および/またはボトムエッジ部(
図8(a)および
図8(b)参照)を研磨する研磨装置でも発生する。
【0012】
そこで、本発明は、研磨テープの研磨能力を十分に利用しながら、該研磨テープで基板を研磨することができる研磨方法および研磨装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、研磨テープで基板を研磨するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、基板を回転させ、研磨テープを押圧部材で前記基板に押圧させながら、前記基板を研磨する研磨方法であって、研磨中は、前記押圧部材に第1の荷重を第1の時間間隔かけながら前記基板を研磨し、前記第1の時間間隔後に、前記第1の荷重よりも小さい第2の荷重を前記押圧部材に第2の時間間隔かけながら前記基板を研磨し、さらに、前記押圧部材に前記第1の荷重と前記第2の荷重を繰り返しかけて前記基板を研磨することを特徴とする研磨方法である。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記第1の荷重は前記研磨テープが破断に至らないように予め設定された許容値よりも大きく、前記第2の荷重は前記許容値以下であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1の時間間隔は、前記研磨テープの伸びにより該研磨テープが破断に至らない時間間隔に設定されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2の時間間隔は、前記第1の荷重が付加されたことにより伸びた研磨テープが前記巻き取りリールに回収される時間間隔に設定されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1の時間間隔は、前記第2の時間間隔よりも長いことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1の荷重は、前記研磨テープが最大の研磨能力で前記基板を研磨する押圧荷重に設定されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様は、基板を保持して回転させる基板保持部と、研磨テープを前記基板に対して押し付ける押圧部材を有する研磨ヘッドと、前記研磨テープを巻き出しリールから前記研磨ヘッドを経由して巻き取りリールに送るテープ送り装置と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記押圧部材に第1の荷重を第1の時間間隔かけながら前記基板を研磨し、前記第1の時間間隔後に、前記第1の荷重よりも小さい第2の荷重を前記押圧部材に第2の時間間隔かけながら前記基板を研磨し、さらに、前記押圧部材に前記第1の荷重と前記第2の荷重を繰り返しかけて前記基板を研磨するように、前記研磨ヘッドを制御することを特徴とする研磨装置である。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記第1の荷重は前記研磨テープが破断に至らないように予め設定された許容値よりも大きく、前記第2の荷重は前記許容値以下であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1の時間間隔は、前記研磨テープの伸びにより該研磨テープが破断に至らない時間間隔に設定されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2の時間間隔は、前記第1の荷重が付加されたことにより伸びた研磨テープが前記巻き取りリールに回収される時間間隔に設定されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1の時間間隔は、前記第2の時間間隔よりも長いことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1の荷重は、前記研磨テープが最大の研磨能力で前記基板のエッジ部を研磨する押圧荷重に設定されていることを特徴とする。
【0017】
本発明のさらに他の態様は、基板保持部に指令を与えて、基板を回転させる動作を前記基板保持部に実行させるステップと、研磨ヘッドに指令を与えて、研磨テープを前記基板に押し付ける押圧部材に第1の荷重を第1の時間間隔かけながら前記基板を研磨し、前記第1の時間間隔後に、前記第1の荷重よりも小さい第2の荷重を前記押圧部材に第2の時間間隔かけながら前記基板を研磨し、さらに、前記押圧部材に前記第1の荷重と前記第2の荷重を繰り返しかけて前記基板を研磨する動作を前記研磨ヘッドに実行させるステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、研磨テープを第1の荷重で第1の時間間隔だけ基板に押し付けて基板を研磨し、次いで、研磨テープを第1の荷重よりも小さい第2の荷重で第2の時間間隔だけ基板に押し付けて基板を研磨し、さらに、これらの研磨動作を繰り返しながら、基板が研磨される。したがって、基板の研磨開始から研磨終了までの間における研磨テープの平均押圧荷重を増加させることができる。その結果、基板の研磨開始から研磨終了までの間における研磨テープの平均研磨能力が増加するので、研磨テープの研磨能力を十分に利用しながら、該研磨テープで基板を研磨することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
以下に説明する実施形態に係る研磨装置および研磨方法は、研磨テープの研磨面を基板のエッジ部に摺接させることで基板のエッジ部を研磨する。
【0021】
図1は、研磨装置の一実施形態を模式的に示す平面図であり、
図2は、
図1に示す研磨装置の側面図である。
図3は、
図2に示す研磨装置の要部を拡大して示す模式図である。研磨装置は、基板の一例であるウェハWを保持し、回転させるウェハ保持部(基板保持部)1を備えている。このウェハ保持部1は、ウェハWを保持することができるウェハステージ(基板ステージ)2と、ウェハステージ2をその軸心を中心に回転させるステージモータ3とを有する。研磨されるウェハWは、ウェハステージ2の上面に真空吸引などにより保持され、ウェハステージ2とともにステージモータ3によって回転される。
【0022】
研磨装置は、研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付ける押圧部材11を備えた研磨ヘッド10を有している。押圧部材11は、ウェハステージ2の上方に配置される。研磨テープ7は、ウェハWを研磨するための研磨具である。研磨装置は、さらに、研磨テープ7を研磨ヘッド10に供給し、かつ研磨ヘッド10から回収するテープ供給回収機構9を有している。テープ供給回収機構9は、巻き出しリール14と、巻き取りリール15とを有しており、研磨テープ7の一端は巻き出しリール14に固定され、研磨テープ7の他端は巻き取りリール15に固定されている。研磨テープ7の大部分は巻き出しリール14と巻き取りリール15の両方に巻かれており、研磨テープ7の一部は巻き出しリール14と巻き取りリール15との間を延びている。巻き出しリール14および巻き取りリール15は、それぞれリールモータ17,18によって反対方向のトルクが加えられており、これにより研磨テープ7にはテンションが付与される。
【0023】
テープ供給回収機構9は、さらに、巻き出しリール14と巻き取りリール15との間に配置された第1のガイドローラ21と第2のガイドローラ22を備えている。巻き出しリール14と巻き取りリール15との間を延びる研磨テープ7は第1のガイドローラ21および第2のガイドローラ22によって支持されており、押圧部材11は、第1のガイドローラ21と第2のガイドローラ22との間に位置している。第1のガイドローラ21の軸方向は、第2のガイドローラ22の軸方向と平行である。第1のガイドローラ21および第2のガイドローラ22によって、研磨テープ7は、ウェハWの接線方向と平行に延びるように支持される。
【0024】
一実施形態では、テープ供給回収機構9は、3つ以上のガイドローラを有していてもよい。この場合、3つ以上のガイドローラによって研磨テープ7が支持され、3つ以上のガイドローラの内の隣接する2つのガイドローラが、上記した第1のガイドローラ21および第2のガイドローラ22として用いられる。
【0025】
研磨装置は、さらに、テープ送り装置20を備えており、このテープ送り装置20は、巻き出しリール14と巻き取りリール15との間に配置される。テープ送り装置20は、研磨テープ7を送るテープ送りローラ31と、研磨テープ7をニップ点P1(
図3参照)でテープ送りローラ31に対して押し付けるニップローラ32と、テープ送りローラ31を回転させるテープ送りモータ36とを備えている。研磨テープ7は、ニップ点P1でテープ送りローラ31とニップローラ32との間に挟まれている。テープ送りモータ36を駆動して、テープ送りローラ31を回転させると、研磨テープ7は巻き出しリール14から研磨ヘッド10を経由して巻き取りリール15に送られる。このテープ送り装置20は、研磨テープ7の送り方向において研磨ヘッド10の下流側に位置している。
【0026】
研磨テープ7は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂からなる基材フィルムと、この基材フィルム上に塗布されたウレタン、ポリエチレン樹脂などからなるバインダによって保持された砥粒(例えば、ダイヤモンド粒子など)とを備えた構造を有している。砥粒は、第1のガイドローラ21および第2のガイドローラ22の間を延びる研磨テープ7の下面に保持されており、研磨テープ7の下面がウェハWを研磨する研磨面を構成する。
【0027】
研磨ヘッド10は、研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付ける押圧部材11を備えている。この押圧部材11は第1のガイドローラ21および第2のガイドローラ22の間に位置している。ウェハWのエッジ部と研磨テープ7との接触点P2(
図3参照)において、ガイドローラ21,22間の研磨テープ7がウェハWの接線方向に延びるように第1のガイドローラ21および第2のガイドローラ22が配置されている。
【0028】
図4は、
図1に示される研磨ヘッド10を示す模式図である。
図4に示されるように、研磨ヘッド10は、研磨テープ7をウェハWに押し付ける上記押圧部材11と、押圧部材11の押圧力を制御するエアシリンダ25と、押圧部材11とエアシリンダ25とを連結する荷重伝達部材27とを備えている。エアシリンダ25は、ウェハ保持部1上のウェハWに向かう所定の方向に押圧部材11を付勢するアクチュエータである。本実施形態では、エアシリンダ25は、押圧部材11をウェハWのエッジ部に向かって下方に付勢するように構成されている。本実施形態では、エアシリンダ25によって付勢される押圧部材11の方向は、ウェハ保持部1の軸心と平行な方向、すなわち鉛直方向である。荷重伝達部材27の下部は、押圧部材11を着脱可能に保持する押圧部材ホルダ27aとして構成されている。エアシリンダ25によって発生した力は、荷重伝達部材27を介して押圧部材11に伝達される。
【0029】
押圧部材11はその内部に形成された貫通孔11aを有している。貫通孔11aの一端は押圧部材11の下面で開口しており、貫通孔11aの他端は真空ライン30に接続されている。真空ライン30には、図示しない弁が設けられており、弁を開くことにより押圧部材11の貫通孔11a内に真空が形成される。押圧部材11が研磨テープ7の上面に接触した状態で貫通孔11aに真空が形成されると、研磨テープ7の上面は押圧部材11の下面に保持される。
【0030】
押圧部材11は荷重伝達部材27に固定されている。押圧部材11および荷重伝達部材27は、一体的な構造体を構成し、エアシリンダ25によって一体に移動される。荷重伝達部材27は、ウェハ保持部1の軸心に沿って延びる直動ガイド33に移動自在に連結されている。エアシリンダ25および直動ガイド33は、フレーム39に固定されている。したがって、押圧部材11および荷重伝達部材27の全体の移動方向は、ウェハ保持部1の軸心と平行な方向(すなわち、鉛直方向)に制限される。
【0031】
図4に示されるように、研磨装置は、さらに、研磨ヘッド10の動作を制御する制御部6を備えている。本実施形態では、制御部6は、エアシリンダ25に接続されており、エアシリンダ25の動作を制御して、押圧部材11が研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付ける押圧荷重を制御する。より具体的には、制御部6は、エアシリンダ25に供給される気体(例えば、空気)の圧力を制御することにより、押圧部材11が研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付ける押圧荷重を調整する。
【0032】
本実施形態では、制御部6は、さらに、ウェハ保持部1の動作およびテープ送り装置20の動作を制御する。より具体的には、制御部6は、ウェハ保持部1のステージモータ3に接続されており(
図1および
図2参照)、ステージモータ3の回転速度を制御して、所定の回転速度でウェハWを回転させる。さらに、制御部6は、テープ送り装置20のテープ送りモータ36に接続されており(
図1および
図2参照)、研磨テープ7を巻き出しリール14から研磨ヘッド10を経由して巻き取りリール15に送るために、テープ送りモータ36の動作を制御する。
【0033】
このように、研磨ヘッド10のエアシリンダ25、ウェハ保持部1のステージモータ3、およびテープ送り装置20のテープ送りモータ36を含む研磨装置の動作は、制御部6によって制御される。本実施形態では、制御部6は、専用のコンピュータまたは汎用のコンピュータから構成される。
図5は、一実施形態に係る制御部6の構成を示す模式図である。制御部6は、プログラムやデータなどが格納される記憶装置50と、記憶装置50に格納されているプログラムに従って演算を行うCPU(中央処理装置)などの処理装置54と、データ、プログラム、および各種情報を記憶装置50に入力するための入力装置55と、処理結果や処理されたデータを出力するための出力装置58と、インターネットなどのネットワークに接続するための通信装置63を備えている。
【0034】
記憶装置50は、処理装置54がアクセス可能な主記憶装置51と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置52を備えている。主記憶装置51は、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)であり、補助記憶装置52は、ハードディスクドライブ(HDD)またはソリッドステートドライブ(SSD)などのストレージ装置である。
【0035】
入力装置55は、キーボード、マウスを備えており、さらに、記録媒体からデータを読み込むための記録媒体読み込み装置56と、記録媒体が接続される記録媒体ポート57を備えている。記録媒体は、非一時的な有形物であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、光ディスク(例えば、CD−ROM、DVD−ROM)や、半導体メモリー(例えば、USBフラッシュドライブ、メモリーカード)である。記録媒体読み込み装置56の例としては、CDドライブ、DVDドライブなどの光学ドライブや、カードリーダーが挙げられる。記録媒体ポート57の例としては、USB端子が挙げられる。記録媒体に記録されているプログラムおよび/またはデータは、入力装置55を介して制御部6に導入され、記憶装置50の補助記憶装置52に格納される。出力装置58は、ディスプレイ装置59、印刷装置60を備えている。
【0036】
従来の研磨装置では、研磨テープ7の破断を防止するために、研磨テープ7の押圧荷重に対する許容値が予め定められている。許容値は、テープ送り装置20が一定の送り速度で研磨テープ7を巻き出しリール14から研磨ヘッド10を経由して巻き取りリール15に送ることができる押圧荷重の臨界値である。すなわち、押圧部材11が許容値よりも大きな押圧荷重で研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付けた場合は、テープ送り装置20は、研磨テープ7を一定の送り速度で研磨ヘッド10から巻き取りリール15に送ることができない。この場合、ウェハWのエッジ部と研磨テープ7との接触点P2(
図3参照)を通過した研磨テープ7の送り速度が低下する。特に、押圧荷重が非常に大きい場合は、接触点P2における研磨テープ7の移動が完全に阻止される。すなわち、接触点P2における研磨テープ7の送り速度が0になる。一方で、テープ送り装置20のテープ送りモータ36は、制御部6によって一定の回転速度で回転させられるので、ニップ点P1と接触点P2との間で、研磨テープ7が伸び始める。研磨テープ7の伸びが増加すると、研磨テープ7が破断に至るので、従来の研磨装置では、研磨テープ7を許容値よりも大きな押圧荷重でウェハWのエッジ部に押し付けることができなかった。
【0037】
図11を参照して説明されたように、許容値以下の押圧荷重で研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付ける場合は、研磨テープ7の研磨能力を十分に利用することができない。したがって、従来の研磨装置では、研磨テープ7がウェハWのエッジ部を研磨する研磨時間が長くなり、研磨テープ7が無駄に消費されていた。
【0038】
以下に説明する研磨方法によれば、研磨テープ7がウェハWのエッジ部を研磨するときに、研磨テープ7の研磨能力を十分に利用することができる。したがって、研磨時間を短くすることができるとともに、研磨テープ7の消費量を低減することができる。
【0039】
図6は、一実施形態に係る研磨方法でウェハWのエッジ部を研磨するときの一連の処理を示したフローチャートである。
図6に示されるように、制御部6は、最初に、ウェハ保持部1に指令を与えて、ウェハステージ2上に載置されたウェハWを回転させる(ステップ1)。
図1および
図2に示されるように、ウェハWは、その表面に形成されている膜(例えば、デバイス層)が上を向くようにウェハステージ2に保持され、さらにウェハWはウェハステージ2とともにその軸心を中心に回転される。回転するウェハWの中心には、図示しない液体供給ノズルから研磨液(例えば、純水)が供給される。さらに、制御部6は、研磨テープ7を巻き出しリール14から巻き取りリール15に送るために、テープ送り装置20のテープ送りモータ36を駆動させる。
【0040】
次いで、制御部6は、エアシリンダ25の動作を制御して、研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付けて、該エッジ部を研磨する(ステップ2)。ウェハWのエッジ部の研磨中、制御部6は、エアシリンダ25の動作を制御して、押圧部材11が研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付ける押圧荷重を変化させる。
図7は、ウェハWのエッジ部の研磨中に変化する押圧荷重の一例を示したグラフである。
図7の縦軸は、押圧部材11が研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付ける押圧荷重を表し、
図7の横軸は、研磨テープ7によってウェハWのエッジ部が研磨される研磨時間を表す。
図7に示されるグラフでは、上記許容値Fkが太い一点鎖線で描かれている。この許容値Fk(
図7では、24N)は、研磨テープ7が破断に至らないように予め設定された値であり、制御部6に予め記憶されている。研磨テープ7を許容値Fk以下の押圧荷重でウェハWのエッジ部に押し付けた場合は、テープ送り装置20は、接触点P2を通過した研磨テープ7を所定の送り速度で巻き取りリール15に送ることができる。
【0041】
図7に示されるように、研磨装置は、研磨テープ7を第1の荷重F1でウェハWのエッジ部に押し付ける第1の押圧動作A1と、研磨テープ7を第2の荷重F2でウェハWのエッジ部に押し付ける第2の押圧動作A2とを含む押圧サイクルPCを繰り返して、ウェハWのエッジ部を研磨する。より具体的には、制御部6は、研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付ける押圧部材11の押圧荷重が押圧サイクルPCを繰り返すように、エアシリンダ25の動作を制御する。
【0042】
第1の荷重F1は、第2の荷重F2よりも大きい値に設定される。本実施形態では、第1の荷重F1(
図7では、84N)は、研磨テープ7が破断に至らないように予め設定された許容値Fk(
図7では、24N)よりも大きい値に設定されており、予め制御部6に記憶されている。第2の荷重F2(
図7では、18N)は、この許容値Fk以下である値に設定されており、予め制御部6に記憶されている。
【0043】
第1の荷重F1で研磨テープ7がウェハWのエッジ部に押し付けられる第1の時間間隔T1(すなわち、第1の押圧動作A1の時間間隔)は、研磨テープ7の伸びが発生しても破断に至らない時間間隔に設定される。研磨テープ7の破断は、該研磨テープ7がある程度伸びた後に発生する。研磨テープ7が伸び始めてから破断に至るまでの時間は、研磨テープ7の基材フィルムの材料および基材フィルムの厚さに依存する。さらに、研磨テープ7が伸び始めてから破断に至るまでの時間は、ニップ点P1と接触点P2との距離D(
図3参照)に依存する。より具体的には、ニップ点P1と接触点P2との距離Dを長くすると、伸びが発生する研磨テープ7の長さが増加するので、研磨テープ7の破断が発生しにくくなる。したがって、この第1の時間間隔T1は、研磨テープ7の基材フィルムの材料および厚さと、ニップ点P1と接触点P2との距離Dとに基づいた実験などによって予め決定され、制御部6に予め記憶されている。
【0044】
第2の荷重F2で研磨テープ7がウェハWのエッジ部に押しつけられる第2の時間間隔T2(すなわち、第2の押圧動作A2の時間間隔)は、第1の時間間隔T1の間に伸びた研磨テープ7がテープ送り装置20を介して巻き取りリール15に回収される時間間隔に設定される。この第2の時間間隔T2は、第1の時間間隔T1の間に伸びた研磨テープ7の長さと、テープ送り装置20による研磨テープ7の送り速度(すなわち、テープ送りモータ36の回転速度)と、ニップ点P1と接触点P2との距離Dとに基づいた実験などによって予め決定され、制御部6に予め記憶されている。
【0045】
本実施形態の第1の押圧動作A1では、制御部6は、押圧荷重が徐々に第1の荷重F1に到達するように、エアシリンダ25の動作を制御する。本実施形態の第2の押圧動作A2では、制御部6は、押圧荷重が徐々に第2の荷重F2に到達するように、エアシリンダ25の動作を制御する。本明細書では、第1の時間間隔T1は、エアシリンダ25に供給される気体の圧力の増加が開始される時点と、該気体の圧力の減少が開始される時点の間の時間間隔を表す。同様に、第2の時間間隔T2は、エアシリンダ25に供給される気体の圧力の減少が開始される時点と、該気体の圧力の増加が開始される時点との間の時間間隔を表す。
【0046】
図7に示されるグラフでは、押圧サイクルPCは、第1の押圧動作A1と、該第1の押圧動作A1に続く第2の押圧動作A2とで構成されている。一実施形態では、押圧サイクルPCを、第2の押圧動作A2と、該第2の押圧動作A2に続く第1の押圧動作A1によって構成してもよい。
【0047】
接触点P2を通過した研磨テープ7は、ウェハWのエッジ部を研磨した後の研磨テープである。したがって、ニップ点P1と接触点P2との間の研磨テープ7に伸びが発生しても、研磨テープ7がウェハWのエッジ部を研磨する研磨能力は低下しない。さらに、研磨テープ7が許容値Fk以下である第2の荷重F2でウェハWのエッジ部に押し付けられているときに、研磨テープ7はテープ送り装置20によって所定の送り速度で巻き取りリール15に送られる。したがって、第2の荷重F2でウェハWのエッジ部に研磨テープ7を押し付ける第2の時間間隔T2の間に、第1の荷重F1で押圧されることにより伸びた研磨テープ7を、巻き取りリール15に回収することができる。その結果、第1の荷重F1で研磨テープ7を再びウェハWのエッジ部に押し付けたときに、接触点P2とニップ点P1との間の研磨テープ7には伸びが発生していないので、研磨テープ7の破断を防止することができる。
【0048】
一実施形態では、制御部6は、押付荷重が第1の荷重F1である時間間隔T1の間(すなわち、第1の押圧動作A1の間)、テープ送りモータ36の駆動を停止させてもよい。この場合、研磨テープ7の伸びが発生しないので、研磨テープ7の破断を確実に防止することができる。
【0049】
図6に戻り、ウェハWの研磨中、制御部6は、ウェハWのエッジ部の研磨量を監視している(ステップ3)。ウェハWのエッジ部の研磨は、研磨量が目標研磨量に到達したときに終了される。研磨量が目標研磨量に到達した時点である研磨終点を検出するために、本実施形態の研磨ヘッド10は、押圧部材11の鉛直方向の位置を検出可能な距離センサ41を備えている(
図4参照)。この距離センサ41は、フレーム39に固定されており、押圧部材11を保持する押圧部材ホルダ27aの移動距離を測定することが可能に構成されている。このような距離センサ41は、例えば、光学式の距離センサである。距離センサ41は、制御部6に接続されており、制御部6は、押圧部材11を保持する押圧部材ホルダ27aの移動距離を測定する距離センサ41からの出力信号に基づいて、間接的に押圧部材11の鉛直方向の位置を検出することができる。
【0050】
研磨量は、ウェハWのエッジ部の研磨開始からの押圧部材11の鉛直方向の移動距離に相当する。したがって、制御部6は、距離センサ41の出力信号に基づいて、研磨量が目標研磨量に到達したか否かを検出することができる。例えば、押圧部材11の鉛直方向の位置が所定の目標位置に到達したときに、制御部6は、研磨量が目標研磨量に到達したと判断し、ウェハWのエッジ部の研磨を終了する。したがって、押圧サイクルPCの途中で、ウェハWのエッジ部の研磨が終了されてもよい(
図7参照)。ウェハWのエッジ部の研磨が終了すると、制御部6は、エアシリンダ25の動作を制御して、押圧部材11および研磨テープ7を上昇させる。
【0051】
ウェハWのエッジ部の研磨中、制御部6は、距離センサ41の出力信号に基づいて、研磨量が目標研磨量に到達したか否かを監視している。
図6のステップ3で、研磨量が目標研磨量に到達したことを制御部6が検出すると、制御部6は、ウェハWのエッジ部の研磨を終了する(ステップ4)。より具体的には、制御部6は、エアシリンダ25の動作を制御して、押圧部材11および研磨テープ7をウェハWのエッジ部から離間させる。次いで、制御部6は、ウェハWの回転を停止する(ステップ5)。制御部6は、ステップ4で研磨量が目標研磨量に到達したことを検出するまで、押圧サイクルPCを繰り返しながら研磨テープ7によるウェハWのエッジ部の研磨を継続する。
【0052】
研磨終点を検出するための方法は、押圧部材11の鉛直方向の位置を検出可能な距離センサ41を用いる方法に限定されず、様々な公知の方法で、研磨終点を検出してもよい。例えば、研磨終点は、制御部6に接続されたタイマーによって計測される研磨時間に基づいて決定されてもよいし、ステージモータ3に供給される電流値の変化に基づいて決定されてもよい。いずれの研磨終点検出方法を用いた場合でも、制御部6は、該制御部6が研磨終点を検出するまで、押圧サイクルPCを繰り返しながら研磨テープ7によるウェハWのエッジ部の研磨を継続する。
【0053】
本実施形態によれば、研磨テープ7を許容値Fkよりも大きな第1の荷重F1(すなわち、F1>Fk)でエッジ部に押し付ける第1の押圧動作A1と、研磨テープ7を許容値Fk以下である第2の荷重F2(すなわち、Fk≧F2)でエッジ部に押し付ける第2の押圧動作A2を含む押圧サイクルPCを繰り返しながら、ウェハWのエッジ部が研磨される。このような押圧荷重の制御を実行することにより、許容値Fkよりも高い平均押圧荷重で、ウェハWのエッジ部を研磨することができる。平均押圧荷重は、ウェハWのエッジ部の研磨開始から研磨終了までの間の押圧荷重の平均値である。
図7に示すグラフでは、この平均押圧荷重は、太い実線で描かれており、64.2Nである。
図7のグラフに示されるように、平均押圧荷重(=64.2N)は許容値Fk(=24N)よりも高い。
【0054】
このように、本実施形態の研磨方法では、押圧部材11に第1の荷重F1を第1の時間間隔T1だけかけることにより、研磨テープ7でウェハWを研磨し(第1の押圧動作A1)、第1の時間間隔後に、押圧部材11に第2の荷重F2を第2の時間間隔だけかけることにより、研磨テープ7でウェハWを研磨する(第2の押圧動作A2)。さらに、本実施形態の研磨方法では、押圧部材11に第1の荷重F1と第2の荷重F2とを繰り返しかけて、ウェハWを研磨する(すなわち、第1の押圧動作A1と第2の押圧動作A2とを含む押圧サイクルPCを繰り返しながら、ウェハWを研磨する)。第1の荷重F1は、第2の荷重F2よりも大きい値に設定されている。
【0055】
図11を参照して説明されたように、研磨圧力を増加させると(すなわち、押圧荷重を増加させると)、エッジ部の研磨に利用される研磨テープ7の研磨能力が増加する。したがって、平均押圧荷重を増加させることにより、研磨テープ7の研磨能力を十分に利用しながら、該研磨テープ7でウェハWのエッジ部を研磨することができる。その結果、研磨時間を低減することができるとともに、研磨テープ7の消費量を低減することができる。
【0056】
押圧荷重が許容値Fk以下である場合は、テープ送り装置20は、研磨テープ7を所定の送り速度で研磨ヘッド10から巻き取りリール15に送ることができる。したがって、平均押圧荷重(すなわち、平均研磨能力)を増加させるために、第2の荷重F2を許容値Fkと等しい値に設定するのが好ましい。さらに、従来の押圧荷重(すなわち、従来の研磨装置で設定されていた押圧荷重)が許容値Fkよりも小さい値に設定されていた場合は、第2の荷重F2を従来の押圧荷重よりも大きな値に設定するのが好ましい。より具体的には、従来の押圧荷重を「Fa」と表すと、第2の荷重F2は、許容値Fk以下であり、かつ従来の押圧荷重Faよりも大きい値に設定される(すなわち、Fk≧F2>Fa)。言及するまでもないが、第2の荷重F2を、従来の押圧荷重以下の値に設定してもよい(すなわち、Fk≧Fa≧F2)。
【0057】
本実施形態では、第1の荷重F1は、許容値Fkよりも大きい値に設定されているが、第1の荷重F1は、許容値Fk以下であってもよい。例えば、第1の押圧荷重F1が従来の押圧荷重Faよりも大きい場合は、第1の押圧荷重F1が許容値Fk以下であっても、平均押圧荷重を増加させることができる。この場合は、第1の押圧荷重F1は許容値Fk以下であり、かつ従来の押圧荷重Faよりも大きい(すなわち、Fk≧F1>Fa)。さらに、第2の押圧荷重F2は、好ましくは、従来の押圧荷重Faよりも大きい値に設定される(すなわち、Fk≧F1>F2>Fa)。言及するまでもないが、第2の荷重F2を、従来の押圧荷重Fa以下の値に設定してもよい(すなわち、Fk≧F1>Fa≧F2)。
【0058】
研磨テープ7の平均研磨能力を増加させるために、第1の時間間隔T1は、第2の時間間隔T2よりも長く設定されるのが好ましい。
図7のグラフに示される例では、第2の時間間隔T2に対する第1の時間間隔T1の比は、7/3に設定されている。すなわち、第1の時間間隔T1は、第2の時間間隔の2倍以上の時間間隔に設定されている。ニップ点P1と接触点P2との間の距離D(
図3参照)を調整することにより、第1の時間間隔T1を長く設定することができる。上述したように、伸びた研磨テープ7が破断に至るまでの時間は、ニップ点P1と接触点P2との間の距離Dに依存する。したがって、ニップ点P1と接触点P2との間の距離Dが長くなるように、テープ送り装置20を研磨ヘッド10からできる限り離して配置するのが好ましい。
【0059】
研磨テープ7の平均研磨能力を上げるために、第1の荷重F1は、最大の研磨能力でウェハWのエッジ部を研磨する押圧荷重に設定されるのが好ましい。以下の説明では、最大の研磨能力でウェハWのエッジ部を研磨する押圧荷重を最大押圧荷重という。最大押圧荷重は、
図9に示される最大研磨圧力に対応する押圧荷重である。最大押圧荷重で研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付ける場合は、接触点P2における研磨テープ7の送り速度が大きく低下する(例えば、研磨テープ7の送り速度が0になる)。この場合、研磨テープ7の単位時間あたりの伸び率が増加するので、第1の時間間隔T1が第2の時間間隔よりも短くなるおそれがある。したがって、第1の時間間隔T1を増加させるために、ニップ点P1と接触点P2との間の距離Dが長くなるように、テープ送り装置20を研磨ヘッド10からできる限り離して配置するのが好ましい。
【0060】
制御部6は、記憶装置50に電気的に格納されたプログラムに従って動作する。すなわち、制御部6は、最初に、ウェハ(基板)Wを回転させる動作をウェハ保持部1に実行させるステップ(
図7のステップ1参照)を実行する。次いで、制御部6は、研磨テープ7をウェハWに押し付ける押圧部材11に第1の荷重F1を第1の時間間隔T1かけながらウェハWを研磨し、第1の時間間隔T1後に、押圧部材11に第1の荷重F1よりも小さい第2の荷重F2を第2の時間間隔T2かけながらウェハWを研磨し、さらに、押圧部材11に第1の荷重F1と第2の荷重F2とを繰り返しかけて、ウェハWを研磨する動作を研磨ヘッド10に実行させるステップを実行する。すなわち、制御部6は、第1の荷重F1で研磨テープ7をウェハWのエッジ部に押し付ける第1の押圧動作A1と、第1の荷重F1よりも小さい第2の荷重F2で研磨テープ7をエッジ部に押し付ける第2の押圧動作A2を含む押圧サイクルPCを繰り返す動作を研磨ヘッド10に実行させるステップ(
図7のステップ2参照)を実行する。第1の荷重F1は、好ましくは、研磨テープ7が破断に至らないように予め設定された許容値Fkよりも大きく、第2の荷重F2は、好ましくは、許容値Fk以下である。次いで、制御部6は、ウェハWのエッジ部の研磨中に、研磨量が目標研磨量に到達したか否かを監視するステップ(
図7のステップ3参照)と、研磨量が目標研磨量に到達したときに、ウェハWのエッジ部の研磨を終了する動作を研磨ヘッド10に実行させるステップ(
図7のステップ4参照)と、ウェハWの回転を停止させる動作をウェハ保持部1に実行させるステップ(
図7のステップ5参照)と、を実行する。
【0061】
これらステップを制御部6に実行させるためのプログラムは、非一時的な有形物であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、記録媒体を介して制御部6に提供される。または、プログラムは、インターネットなどの通信ネットワークを介して制御部6に提供されてもよい。
【0062】
これまで、ウェハWのエッジ部を研磨する研磨方法の実施形態を説明してきたが、上述した実施形態に係る研磨方法を、研磨テープで基板を研磨する全ての研磨装置で用いることができる。例えば、これら実施形態に係る研磨方法で、ウェハWのベベル部および/またはボトムエッジ部(
図8(a)および
図8(b)参照)を研磨することができる。
【0063】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。