(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、出発化合物から所望の温度で前駆体化合物を製造する工程を含み、前記出発化合物は、単官能性イソシアナート、単官能性アルコール、単官能性チオール、又は単官能性アミンを含む、請求項1に記載の方法。
前記反応混合物を形成するための、前記前駆体化合物、前記ジイソシアナート化合物、及び前記カルボジイミド化触媒の組み合わせを、所望の温度で実施する、請求項1に記載の方法。
更に、安定剤を、少なくとも前記ジイソシアナート化合物及び前記カルボジイミド化触媒と組み合わせる工程を含み、ここで、前記安定剤は、任意に、トリフェニルホスフィット又は2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ポリカルボジイミドポリマーの製造方法及び、より具体的には、分子量分布の変動が小さくかつ少ない副生成物を生じるポリカルボジイミドポリマーの製造方法に関する。
関連技術の記述
【0002】
ポリカルボジイミド及びポリカルボジイミドを含む組成物は、一般にこの分野で公知である。ポリカルボジイミドは、−(N=C=N)
n−により表される繰返構造単位を含み、ここで、下付のnは、この構造単位がポリカルボジイミド内で繰り返される数を表す。
【0003】
ポリカルボジイミドを製造する方法も、この分野で公知である。ポリカルボジイミドを製造する通常の方法では、有機ジイソシアナート、例えば芳香族ジイソシアナートを、カルボジイミド化触媒の存在で重合する。一般に、この有機ジイソシアナートは、ポリカルボジイミドが溶液の形で製造されるような溶媒中に分散させながら、カルボジイミド化触媒の存在で重合される。
【0004】
しかしながら、溶液の形でのポリカルボジイミドの従来の製造方法の場合に、ポリカルボジイミドは、このポリカルボジイミドが一般に1000〜3000の特定の分子量に達するとこの溶媒中で沈殿及び/又はゲル化する。このポリカルボジイミドが溶媒中で沈殿及び/又はゲル化すると、この重合は一般に終了し、その結果、このポリカルボジイミドの分子量はもはや増大しない。このように、従来の方法により製造されたポリカルボジイミドは、比較的低い分子量を示し、これは、このようなポリカルボジイミドから得られる物理特性を考慮して、このポリカルボジイミドを利用することができる潜在的用途を明らかに狭める。
【0005】
別のもう一つの従来の方法は、ポリカルボジイミドの分子量を増加させるために使用される。しかしながら、このもう一つの従来の方法は、一般に、分子量分布の変動が著しいポリカルボジイミドを生じる。この方法によって製造されたポリカルボジイミドのこの広い分散度は、被覆及びインキのような多くの適用のために望ましくないポリカルボジイミドにしてしまう。更に、従来の方法により製造されたこのようなポリカルボジイミドは、一般に、望ましくない安定性を示す。
発明の概要と利点
【0006】
本発明は、ポリカルボジイミドポリマーの製造方法を提供する。この方法は、所望の温度で前駆体化合物を加熱することを含む。この方法は、更に、反応混合物を形成させるために、この前駆体化合物と、ジイソシアナート化合物と、カルボジイミド化触媒とを組み合わせることを含む。最後に、この方法は、この反応混合物を、第1の温度で第1の期間加熱し、それにより前駆体化合物とジイソシアナート化合物とをカルボジイミド化触媒の存在で反応させてポリカルボジイミドポリマーを製造することを含む。
【0007】
本発明の方法は、優れた物理特性を示しかつ多様な用途に適しているポリカルボジイミドポリマーを製造する。更に、この方法により製造されたポリカルボジイミドポリマーは、ポリカルボジイミドポリマーの反復可能でかつ再現可能な品質及び特性を提供する、分子量分布における望ましい狭い変動、及び優れた安定性を示す。
発明の詳細な記述
【0008】
本発明は、ポリカルボジイミドポリマーを製造する方法及びこの方法により製造されたポリカルボジイミドポリマーを提供する。本発明のポリカルボジイミドポリマーは、以下に極めて詳細に記載されているように、優れた物理特性を示しかつ多様な用途での使用に適している。例えば、ポリカルボジイミドポリマーは、合成繊維用途、自動車用途、航空宇宙用途、被覆組成物、インク、及び/又は電子用途で使用することができる。しかしながら、ポリカルボジイミドポリマーは、このような用途に制限されるものではないことが認識され;例えば、本発明のポリカルボジイミドポリマーは、高性能ポリマーが一般に利用される他の用途で使用することができる。
【0009】
この方法は、所望の温度で前駆体化合物を加熱することを含む。多様な実施態様の場合に、前駆体化合物は、カルボジイミド化合物、ウレタン化合物、チオウレタン化合物、又は尿素化合物を含む。前駆体化合物は、これとは別に、これらの化合物の2つ以上の組み合わせを含むことができ、これにより異なる置換基又は官能基を有するポリカルボジイミドポリマーを生じることができる。前駆体化合物は、この方法で合成することができるか又は他の方法で得るか又は供給することができ、例えば前駆体化合物は既製のものであってもよい。前駆体化合物がこの方法で合成される場合には、この前駆体化合物は、一般に、出発化合物から形成され、かつこの方法は、更に、前駆体化合物を出発化合物から所望の温度で製造する工程を含む。この実施態様の場合に、前駆体化合物は、一般に、従来の方法と比較して、ポリカルボジイミドポリマーを製造するために全ての成分を同時に組み合わせる前に、出発化合物から形成される。例えば、従来の方法では、前駆体化合物は出発化合物から別々に形成されるよりはむしろ、これらの成分の全てを同時に組み合わせている。これにより、多くの望ましくない副生成物の製造も行われ、従来のポリカルボジイミドポリマーの分子量分布を制御することを困難にしている。しかしながら、本方法では、前駆体化合物がまず出発化合物から形成される場合に、望ましくない副生成物の製造は最小化され、ポリカルボジイミドポリマーの分子量分布に関する制御を拡大することが実現される。
【0010】
例えば、前駆体化合物は、一般に、少なくとも出発化合物のダイマーを含む。前駆体化合物がダイマーである場合に、このダイマーのサブユニットは、一般にカルボジイミド結合を介して連結されている。特に、各前駆体化合物は、一般に、ダイマーのサブユニットを有する単一のカルボジイミド結合を含み、このダイマーは出発化合物を含むか又は出発化合物から形成され、単一のカルボジイミド結合を介して連結されている。前駆体化合物の形成は、赤外線法又は他の分光法によってリアルタイムで監視されていてよい。適切な前駆体化合物の具体例、並びに前駆体化合物を形成するために適した出発化合物の具体例を、以下に順番に記載する。
【0011】
例えば、特定の実施態様の場合に、前駆体化合物は、カルボジイミド化合物を含む。この実施態様の場合に、前駆体化合物は一般式R−N=C=N−Rを示すことができ、式中、各Rは、独立して選択される有機基である。例えば、Rは、芳香族、脂肪族、環式、非環式などであってもよい。前駆体化合物がカルボジイミド化合物を含む場合に、一般的に、前駆体化合物中に1つのカルボジイミド結合である。付加的に、この実施態様の場合に、前駆体化合物は、オリゴマー又はポリマーのカルボジイミド化合物であることとは対照的に、本質的にモノマーである。
【0012】
典型的には、Rは、芳香族基であるので、カルボジイミド化合物は2つの芳香族官能基を有する。このようなカルボジイミド化合物の具体的な実施態様を、例示だけを目的として、次に示す:
【化1】
【0013】
上述のように、前駆体化合物は、出発化合物から形成されていてよい。前駆体化合物がカルボジイミド化合物を含む実施態様では、カルボジイミド化合物が出発化合物から形成されている場合、出発化合物は、一般的に、単官能性イソシアナートを含む。単官能性イソシアナートは、芳香族又は脂肪族であってよく、単一のイソシアナート官能基を含む。出発化合物の目的に適した、つまり前駆体化合物を形成するために適した単官能性イソシアナートの具体例は、例示だけを目的として、すぐ次に示すフェニルイソシアナートである:
【化2】
異なるタイプの単官能性イソシアナートの組み合わせを、出発化合物として使用してもよい。
【0014】
この実施態様の場合に、出発化合物は、カルボジイミド化反応を介して前駆体化合物を形成するために使用することができる。特に、出発化合物は、カルボジイミド化触媒の存在で反応させてもよい。適切なカルボジイミド化触媒の具体例は、方法を参照して次に極めて詳細に記載されている。所望の場合に、出発化合物は、安定剤の存在で反応させてもよい。例えば、多様な実施態様の場合に、安定剤は、トリフェニルホスフィット、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、これらのバリエーション、又はこれらの組み合わせを含む。前駆体化合物は、一般に、所望の温度で形成される。このように、前駆体化合物がこの方法で出発化合物から製造される場合に、前駆体化合物は、一般に、その形成の際に所望の温度で加熱される。
【0015】
例えば、出発化合物が単官能性イソシアナートを含む場合、この出発化合物から形成された前駆体化合物は、この単官能性イソシアナートの効果的な二量化により形成される。言い換えれば、2つの単官能性イソシアナートは反応して、2つの単官能性イソシアナートのイソシアナート基がカルボジイミド化合物内にカルボジイミド結合を形成させて、カルボジイミド化合物を形成する。出発化合物がフェニルイソシアナートである場合に、出発化合物から前駆体化合物を形成する反応を示す反応式を、次に表す:
【化3】
【0016】
別の実施態様の場合に、前駆体化合物は、ウレタン化合物を含む。この実施態様の場合に、前駆体化合物は、一般式RNHCO
2Rを示す、少なくとも1つの、一般に2つのウレタン結合(又はカルバマートエステル基)を含み、ここで、各Rは、独立して選択される有機基である。例えば、Rは、芳香族、脂肪族、環式、非環式などであってもよい。前駆体化合物がウレタン化合物を含む場合に、一般的に、前駆体化合物中に1つのカルボジイミド結合である。前駆体化合物がウレタン化合物を有する場合、ウレタン化合物は、一般に、オリゴマー又はポリマーのウレタン化合物であることと対照的に、本質的にモノマーである。
【0017】
このようなウレタン化合物の具体的な実施態様を、例示だけを目的として、次に示す:
【化4】
この技術分野で理解しやすいように、上記のウレタン化合物は、1つの例示した例に過ぎず、使用されたウレタン化合物の構造は、この製造方法を含む多くの要因に基づいて変化してよい。上記の構造中で、各Rは、独立して選択される有機基である。特定の実施態様の場合に、Rは、1〜20個の、又は1〜15個の、又は1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。Rは、一般的に、アルキル基である。
【0018】
上述のように、前駆体化合物は、出発化合物から形成されていてよい。前駆体化合物がウレタン化合物を含む実施態様では、ウレタン化合物が出発化合物から形成されている場合、出発化合物は、一般的に、単官能性アルコールを含む。単官能性アルコールは、芳香族又は脂肪族であってよく、単一のヒドロキシル官能基を含む。一般的に、単官能性アルコールは、脂肪族でありかつ線状又は分枝状である。更に、単官能性アルコールは、一般的に、第1級アルコールである。この実施態様の場合に、適した単官能性アルコールの具体例は、C
1〜C
20−アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、2−エチルヘキサノールなどを含む。異なるタイプの単官能性アルコールの組み合わせを、出発化合物として使用してよい。異なるタイプの単官能性アルコールを出発化合物として使用する場合、前駆体化合物は、異なるタイプの単官能性アルコールと関連する異なるR基を考慮して、ダイマーの形ではなくてもよい。
【0019】
この実施態様の場合に、出発化合物は、段階的な反応を介して前駆体化合物を形成するために使用することができる。特に、出発化合物は、ジイソシアナート化合物と反応させて、中間体化合物を形成してもよい。中間体化合物は、一般に、1つのイソシアナート基を含む。次いで、この中間体化合物を、効果的に二量化して、前駆体化合物を形成してよい。適切なジイソシアナート化合物の具体例は、方法を参照して次に極めて詳細に記載されている。
【0020】
この方法のために適したジイソシアナート化合物の具体例は、トルエンジイソシアナート(TDI)である。出発化合物が単官能性アルコールを含みかつ中間体化合物が出発化合物及びTDIから形成される場合に、例示的な反応式を次に示す:
【化5】
【0021】
この実施態様の場合に、出発化合物から形成される中間体化合物は、カルボジイミド化反応を介して前駆体化合物を形成するために使用してよい。特に、中間体化合物は、カルボジイミド化触媒の存在で反応させてもよい。適切なカルボジイミド化触媒の具体例は、方法を参照して次に極めて詳細に記載されている。所望の場合に、中間体化合物は、安定剤の存在で反応させてもよい。多様な実施態様の場合に、安定剤は、トリフェニルホスフィット、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、これらのバリエーション、又はこれらの組み合わせを含む。前駆体化合物は、一般に、所望の温度で形成される。このように、前駆体化合物がこの方法で中間体化合物から製造される場合に、前駆体化合物は、一般に、その形成の際に所望の温度で加熱される。
【0022】
例えば、出発化合物が単官能性アルコールを含む場合、最終的にこの出発化合物から形成された前駆体化合物は、単官能性アルコールから形成された中間体化合物の効果的な二量化により形成される。言い換えれば、2つの中間体化合物は反応して、2つの中間体化合物のイソシアナート基からウレタン化合物内にカルボジイミド結合を形成して、ウレタン化合物を形成する。中間体化合物が、単官能性アルコール及びTDIから形成される場合に、中間体化合物から前駆体化合物を形成する反応を示す例示的な反応式を、次に表す:
【化6】
【0023】
別の実施態様の場合に、前駆体化合物は、チオウレタン化合物を含む。この実施態様の場合に、前駆体化合物は、一般式RNHCOSRを示す、少なくとも1つの、一般に2つのチオウレタン結合を含み、ここで、各Rは、独立して選択される有機基である。例えば、Rは、芳香族、脂肪族、環式、非環式などであってもよい。前駆体化合物がチオウレタン化合物を含む場合に、一般的に、前駆体化合物中に1つのカルボジイミド結合である。前駆体化合物がチオウレタン化合物を有する場合、チオウレタン化合物は、一般に、オリゴマー又はポリマーのチオウレタン化合物であることと対照的に、本質的にモノマーである。
【0024】
このようなチオウレタン化合物の特別な実施態様を、例示だけを目的として、次に示す:
【化7】
この技術分野で理解しやすいように、上記のチオウレタン化合物は、1つの例示した例に過ぎず、使用されたチオウレタン化合物の構造は、この製造方法を含む多くの要因に基づいて変化してよい。上記の構造中で、各Rは、独立して選択される有機基である。特定の実施態様の場合に、Rは、1〜20個の、又は1〜15個の、又は1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。Rは、一般的に、アルキル基である。
【0025】
上述のように、前駆体化合物は、出発化合物から形成されていてよい。前駆体化合物がチオウレタン化合物を含む実施態様では、チオウレタン化合物が出発化合物から形成されている場合、出発化合物は、一般的に、単官能性チオールを含む。単官能性アルコールは、芳香族又は脂肪族であってよく、単一のスルフヒドリル官能基を含む。一般的に、単官能性チオールは、脂肪族でありかつ線状又は分枝状である。更に、単官能性チオールは、一般的に、第1級チオールである。この実施態様の場合に、適した単官能性チオールの具体例は、C
1〜C
20−チオール、例えばメタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオールなどを含む。異なるタイプの単官能性チオールの組み合わせを、出発化合物として使用してよい。異なるタイプの単官能性チオールを出発化合物として使用する場合、前駆体化合物は、異なるタイプの単官能性チオールと関連する異なるR基を考慮して、ダイマーの形ではなくてもよい。
【0026】
この実施態様の場合に、出発化合物は、段階的な反応を介して前駆体化合物を形成するために使用してよい。特に、出発化合物は、ジイソシアナート化合物と反応させて、中間体化合物を形成してもよい。中間体化合物は、一般に、1つのイソシアナート基を含む。次いで、この中間体化合物を、効果的に二量化して、前駆体化合物を形成してよい。適切なジイソシアナート化合物の具体例は、方法を参照して次に極めて詳細に記載されている。
【0027】
この方法のために適したジイソシアナート化合物の具体例は、トルエンジイソシアナート(TDI)である。出発化合物が単官能性アルコールを含みかつ中間体化合物が出発化合物及びTDIから形成される場合に、例示的な反応式を次に示す:
【化8】
【0028】
この実施態様の場合に、出発化合物から形成される中間体化合物は、カルボジイミド化反応を介して前駆体化合物を形成するために使用してよい。特に、中間体化合物は、カルボジイミド化触媒の存在で反応させてもよい。適切なカルボジイミド化触媒の具体例は、方法を参照して次に極めて詳細に記載されている。所望の場合に、中間体化合物は、安定剤の存在で反応させてもよい。多様な実施態様の場合に、安定剤は、トリフェニルホスフィット、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、これらのバリエーション、又はこれらの組み合わせを含む。前駆体化合物は、一般に、所望の温度で形成される。このように、前駆体化合物がこの方法で中間体化合物から製造される場合に、前駆体化合物は、一般に、その形成の際に所望の温度で加熱される。
【0029】
例えば、出発化合物が単官能性チオールを含む場合、最終的にこの出発化合物から形成された前駆体化合物は、単官能性チオールから形成された中間体化合物の効果的な二量化により形成される。言い換えれば、2つの中間体化合物は反応して、2つの中間体化合物のイソシアナート基からチオウレタン化合物内にカルボジイミド結合を形成させて、チオウレタン化合物を形成する。中間体化合物が、単官能性チオール及びTDIから形成される場合に、中間体化合物から前駆体化合物を形成する反応を示す例示的な反応式を、次に表す:
【化9】
【0030】
別の実施態様の場合に、前駆体化合物は、尿素化合物を含む。この実施態様の場合に、前駆体化合物は、一般式CO(NR
1H)
2を示す、少なくとも1つの、一般に2つのカルバミド結合を含み、ここで、各R
1は、独立してH又は独立して選択される有機基である。例えば、Rは、芳香族、脂肪族、環式、非環式などであってもよい。前駆体化合物が尿素化合物を含む場合に、一般的に前駆体化合物中に1つのカルボジイミド結合がある。前駆体化合物が尿素化合物を有する場合、尿素化合物は、一般に、オリゴマー又はポリマーの尿素化合物であることと対照的に、本質的にモノマーである。
【0031】
このような尿素化合物の具体的な実施態様を、例示だけを目的として、次に示す:
【化10】
この技術分野で理解しやすいように、上記の尿素化合物は、1つの例示した例に過ぎず、使用された尿素化合物の構造は、この製造方法を含む多くの要因に基づいて変化してよい。上記の構造中で、各R
1は、独立してH又は独立して選択される有機基である。特定の実施態様で、R
1が有機基である場合に、R
1は、1〜20個の、又は1〜15個の、又は1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0032】
上述のように、前駆体化合物は、出発化合物から形成されていてよい。前駆体化合物が尿素化合物を含む実施態様では、尿素化合物が出発材料から形成されている場合、出発化合物は、一般的に、アミン化合物を含む。アミン化合物は、第1級又は第2級であってよく、つまり、アミン化合物は1つのNH結合又は2つのNH結合を含んでいてよい。アミン化合物は、脂肪族、芳香族であってよく又は、独立して脂肪族及び/又は芳香族である異なるタイプのアミン化合物を含んでいてもよい。アミン化合物は、嵩張るか又は立体障害であってよく、つまりアミン化合物は、立体障害の第1級アミンを含んでいてよい。この実施態様の場合に、アミン化合物は、一般に、少なくとも1つの分枝状置換基又は芳香族置換基を含む。
【0033】
適したアミン化合物の具体例は、第三級ブチルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミンなどを含む。異なるタイプのアミン化合物の組み合わせを、出発化合物として使用してもよい。異なるタイプのアミン化合物を出発化合物として使用する場合、前駆体化合物は、異なるタイプのアミン化合物と関連する異なる置換基を考慮して、ダイマーの形ではなくてもよい。
【0034】
この実施態様の場合に、つまり、前駆体化合物がアミン化合物から形成される場合に、出発化合物は、段階的な反応を介して前駆体化合物の形成のために使用してよい。特に、出発化合物は、ジイソシアナート化合物と反応させて、中間体化合物を形成してもよい。中間体化合物は、一般に、1つのイソシアナート基を含む。次いで、この中間体化合物を、効果的に二量化して、前駆体化合物を形成することができる。適切なジイソシアナート化合物の具体例は、方法を参照して次に極めて詳細に記載されている。
【0035】
この方法のために適したジイソシアナート化合物の具体例は、トルエンジイソシアナート(TDI)である。出発化合物が単官能性アルコールを含みかつ中間体化合物が出発化合物及びTDIから形成される場合に、例示的な反応式を次に示す:
【化11】
【0036】
この実施態様の場合に、出発化合物から形成される中間体化合物は、カルボジイミド化反応を介して前駆体化合物を形成するために使用してよい。特に、中間体化合物は、カルボジイミド化触媒の存在で反応させてもよい。適切なカルボジイミド化触媒の具体例は、方法を参照して次に極めて詳細に記載されている。所望の場合に、中間体化合物は、安定剤の存在で反応させてもよい。多様な実施態様の場合に、安定剤は、トリフェニルホスフィット、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、これらのバリエーション、又はこれらの組み合わせを含む。前駆体化合物は、一般に、所望の温度で形成される。このように、前駆体化合物がこの方法で中間体化合物から製造される場合に、前駆体化合物は、一般に、その形成の際に所望の温度で加熱される。
【0037】
例えば、出発化合物がアミン化合物を含む場合、最終的にこの出発化合物から形成された前駆体化合物は、アミン化合物から形成された中間体化合物の効果的な二量化により形成される。言い換えれば、2つの中間体化合物は反応して、2つの中間体化合物のイソシアナート基から尿素化合物内にカルボジイミド結合を形成して、尿素化合物を形成する。中間体化合物が、アミン化合物及びTDIから形成される場合に、中間体化合物から前駆体化合物を形成する反応を示す例示的な反応式を、次に表す:
【化12】
【0038】
前駆体化合物が出発化合物から形成される上記の実施態様の場合に、前駆体化合物を形成するために使用される化合物は、多様な順序で又は同時に組み合わせてもよい。一般に、出発化合物をジイソシアナート化合物と反応させる場合に、ジイソシアナート化合物は、前駆体化合物を形成するための出発化合物を添加する前に、所望の温度に加熱される。
【0039】
使用された特別な前駆体化合物に係わらず、かつ前駆体化合物が出発化合物から形成されるかどうかに係わらず、この方法は、前駆体化合物を所望の温度で加熱することを含む。この所望の温度は、一般に、70〜150℃である。所望の温度での前駆体化合物の加熱は、溶媒の存在で又は溶媒の不存在で実施してよい。望ましい場合に、適切な溶媒は、有機溶媒、例えばトルエン、キシレン、テトラヒドロフランなどを含む。しかしながら、特定の実施態様の場合に、前駆体化合物の加熱は、前駆体化合物、カルボジイミド化触媒及び残りの全ての量の出発化合物及び/又は中間体化合物以外の全ての溶媒の不存在下で実施する。一般に、この方法は、所望の温度で、その場(in situ)で、出発化合物から前駆体化合物を形成することを含む。
【0040】
この方法が、出発化合物から前駆体化合物を形成することを含む場合、前駆体化合物は、一般に、不活性雰囲気中で、つまり実質的に酸素不含の雰囲気中で形成される。この技術分野で公知の全ての不活性雰囲気を、反応混合物を加熱する工程の間に使用してよい。一般に、不活性雰囲気は、不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、及び二酸化炭素などを含む。
【0041】
この方法は、更に、反応混合物を形成させるために、この前駆体化合物と、ジイソシアナート化合物と、カルボジイミド化触媒とを組み合わせることを含む。
【0042】
上述のように、ジイソシアナート化合物は、前駆体化合物の形成のために利用することができるのだが、多様な実施態様の場合に、所望の温度で前駆体化合物を加熱する工程は、ジイソシアナート化合物の不存在で実施される。言い換えれば、この方法が前駆体化合物を出発化合物から製造することを含む場合には、前駆体化合物は、一般に、ポリカルボジイミドポリマーを形成するためにジイソシアナート化合物と組み合わせる前に形成される。より具体的に、特定の実施態様の場合に、前駆体化合物の形成のために使用されるジイソシアナート化合物は、たとえあったとしても、完全に消費されていて、前駆体化合物と一緒に存在したジイソシアナート化合物の残留量は、この形成の時点でもはや存在しない。この実施態様で、ジイソシアナート化合物が前駆体化合物の形成のためにも使用される場合、付加的な量のジイソシアナート化合物がこの方法で使用され、かつポリカルボジイミドポリマーを形成するための前駆体化合物と組み合わせられる。
【0043】
本方法の場合に、前駆体化合物は、ポリカルボジイミドポリマーを形成する前に、その場で得られかつ使用されるか又は形成される。これは、多様な反応体が単一の工程で一緒に組み合わせて従来のポリカルボジイミドを形成するような従来の方法とは区別される。例えば、この方法は、場合によりキャッピング剤、例えばフェニルイソシアナートと組み合わせて、ジイソシアナート化合物とカルボジイミド化触媒とを単に組み合わせてよい従来の方法とは区別される。より具体的には、このような従来の方法の場合、従来のポリカルボジイミドが形成される場合に、従来のポリカルボジイミドのキャッピングを制御することは困難であるか又は不可能であり、これが、今度は、従来の方法を介して形成された従来のポリカルボジイミドの分子量分布の制御を困難にするか又は不可能にする。反対に、本方法の場合には、前駆体化合物は、一般に、既にカルボジイミド結合を含み、かつポリカルボジイミドポリマーは、このカルボジイミド結合で成長される。このように、前駆体化合物は、以下に極めて詳細に説明するように、最終的に、ポリカルボジイミドポリマーの各末端をキャップするために使用される。前駆体化合物を用いたキャッピングは、分子量分布の変動を低減する、ポリカルボジイミドポリマーの分子量を制御する能力に関する所定の利点を提供する。本方法は、従来の方法と関連する望ましくない副生成物、例えば尿素結合、グアニジン分枝構造及び/又はウレトンイミンも著しく低減する。これは、ゲル浸透クロマトグラフィー又は他の分光法により容易に確認することができる。
【0044】
ジイソシアナート化合物は2つのイソシアナート官能基を含み、かつ脂肪族、芳香族又はこれらの組み合わせであってよい。脂肪族ジイソシアナート化合物の具体例は、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(HMDI)、シクロヘキシルジイソシアナート(CHDI)、テトラメチルキシレンジイソシアナート(TMXDI)、及びこれらの組み合わせ、並びにこれらの脂肪族ジイソシアナート化合物の全ての異性体を含む。しかしながら、一般に、ジイソシアナート化合物は、芳香族ジイソシアナートを含む。
【0045】
芳香族ジイソシアナート化合物の具体例は、ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、ポリマーのジフェニルメタンジイソシアナート(pMDI)、トルエンジイソシアナート(TDI)、ナフタレンジイソシアナート(NDI)、トリジンジイソシアナート(TODI)、及びこれらの組み合わせ、並びにこれらの芳香族ジイソシアナート化合物の全ての異性体を含む。特定の実施態様において、ジイソシアナート化合物が芳香族ジイソシアナートを含む場合、ジイソシアナート化合物は、オルト置換されたイソシアナート基を有する。ジイソシアナート化合物中のオルト置換は、一般に、この方法により形成されたポリカルボジイミドの安定性を改善させる。
【0046】
特定の実施態様の場合に、ジイソシアナート化合物は、トルエンジイソシアナート(TDI)を含む。この実施態様の場合、ジイソシアナート化合物は、トルエンジイソシアナート(TDI)の異性体のどちらかを含んでいてよく、つまりジイソシアナート化合物は、2,4−トルエンジイソシアナート(2,4−TDI)又は2,6−トルエンジイソシアナート(2,6−TDI)を含んでいてよい。これとは別に、ジイソシアナート化合物は、これらの異性体のブレンドを含んでいてよく、つまりジイソシアナート化合物は、2,4−トルエンジイソシアナート(2,4−TDI)及び2,6−トルエンジイソシアナート(2,6−TDI)の両方を含んでいてよい。本発明の目的のために適した市場で入手可能なジイソシアナート化合物の具体例は、Lupranate(登録商標)T-80であり、これはニュージャージー州、Florham ParkのBASF Corporationから市販されている。特に、Lupranate(登録商標)T-80は、2,4−トルエンジイソシアナート(2,4−TDI)及び2,6−トルエンジイソシアナート(2,6−TDI)のブレンドを含む。特定の実施態様の場合に、ジイソシアナート化合物は、主にTDIからなるか又はTDIからなる。一般に、ジイソシアナート化合物は、ジイソシアナート化合物中に存在するイソシアナートの全質量を基準として、TDIを95質量%より多く、又は96質量%より多く、又は97質量%より多く、又は98質量%より多く、又は99質量%より多くの量で含む。これとは別に、ジイソシアナート化合物は、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)を含んでいてよい。この適した異性体は、2,2′−MDI、2,4′−MDI、4,4′−MDI、及びこれらの組み合わせを含む。異なるタイプのジイソシアナート化合物の組み合わせ、例えばTDIと組み合わせたMDIを使用してよい。
【0047】
カルボジイミド化触媒は、ポリカルボジイミドを製造するための、当業者に公知の全ての種類のカルボジイミド化触媒であってよい。一般に、カルボジイミド化触媒は、第3級アミド、塩基性金属化合物、カルボン酸の金属塩及び/又は非塩基性の有機金属化合物の群から選択される。特定の実施態様の場合、カルボジイミド化触媒はリン化合物を含む。
【0048】
カルボジイミド化触媒の目的のために適したリン化合物の具体例は、酸化ホスホレン、例えば3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレンオキシド、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、及びこれらの3−ホスホレン異性体を含むが、これらに限定されない。特に適した酸化ホスホレンは、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレンオキシドである。例示するだけの目的のために、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレンオキシドは、次の構造により表される:
【化13】
【0049】
カルボジイミド化触媒の目的のために適したリン化合物の付加的な例は、ホスファート、ジアザ−及びオキサアザ−ホスホレン及びホスホリナンを含むが、これらに限定されない。このようなリン化合物の具体例は、リン酸エステル及び他のホスファート、例えば、トリメチルホスファート、トリエチルホスファート、トリブチルホスファート、トリ−2−エチルヘキシルホスファート、トリブトキシエチルホスファート、トリオレイルホスファート、トリフェニルホスファート、トリクレシルホスファート、トリキシレニルホスファート、クレシルジフェニルホスファート、キシレニルジフェニルホスファート、2−エチルヘキシルジフェニルホスファートなど;酸性ホスファート、メチルアッシドホスファート、エチルアッシドホスファート、イソプロピルアッシドホスファート、ブチルアッシドホスファート、2−エチルヘキシルアッシドホスファート、イソデシルアッシドホスファート、ラウリルアッシドホスファート、イソトリデシルアッシドホスファート、ミリスチルアッシドホスファート、イソステアリルアッシドホスファート、オレイルアッシドホスファートなど;第3級ホスフィット、例えばトリフェニルホスフィット、トリ(p−クレシル)ホスフィット、トリス(ノニルフェニル)ホスフィット、トリスイソオクチルホスフィット、ジフェニルイソデシルホスフィット、フェニルジイソデシルホスフィット、トリイソデシルホスフィット、トリステアリルホスフィット、トリオレイルホスフィットなど;第2級ホスフィット、例えばジ−2−エチルヘキシルヒドロゲンホスフィット、ジラウリルヒドロゲンホスフィット、ジオレイルヒドロゲンホスフィットなど;及びホスフィンオキシド、例えばトリエチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、トリス(クロロメチル)ホスフィンオキシド、トリス(クロロメチル)ホスフィンオキシドなどを含むが、これらに限定されない。リン酸エステルを含むカルボジイミド化触媒及びこれらの製造方法は、U.S. Pat. No. 3,056,835に記載されていて、これはここにその全体が参照により援用される。
【0050】
更に別の例のカルボジイミド化触媒は、1−フェニル−3−メチルホスホレンオキシド、1−ベンジル−3−メチルホスホレンオキシド、1−エチル−3−メチルホスホレンオキシド、1−フェニル−3−メチルホスホレンジクロリド、1−ベンジル−3−メチルホスホレンジクロリド、1−エチル−3−メチルホスホレンジクロリド、1−フェニル−3−メチルホスホレンスルフィド、1−フェニル−3−メチルホスホレンスルフィド、1−ベンジル−3−メチルホスホレンスルフィド、1−エチル−3−メチルホスホレンスルフィド、1−フェニル−1−フェニルイミノ−3−メチルホスホレンオキシド、1−ベンジル−1−フェニルイミノ−3−メチルホスホレンオキシド、1−エチル−1−フェニルイミノ−3−メチルホスホレンオキシド、1−フェニルホスホリジン、1−ベンジルホスホリジン、1−エチルホスホリジン及び1−フェニル−3−メチルホスホレンオキシドを含むが、これらに限定されない。
【0051】
これとは別に、カルボジイミド化触媒は、ジアザ−及びオキサアザ−ホスホレン及びホスホリナンを含んでいてよい。ジアザ−及びオキサアザ−ホスホレン及びホスホリナン及びこれらの製造方法は、U.S. Pat. No. 3,522,303に記載されていて、これらはここにその全体が参照により援用される。具体的なジアザ−及びオキサアザ−ホスホレン及びホスホリナンは、2−エチル−1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホラン−2−オキシド;2−クロロメチル−1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホラン−2−オキシド;2−トリクロロメチル−1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホラン−2−オキシド;2−フェニル−1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホラン−2−オキシド;2−フェニル−1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザ−ホスホリナン−2−オキシド;2−ベンジル−1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホラン−2−オキシド;2−アリル−1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホラン−2−オキシド;2−ブロモメチル−1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホラン−2−オキシド;2−シクロヘキシル−1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホラン−2−オキシ
ド;2−(2−エトキシエチル1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホラン−2−オキシド;及び2−ナフチル−1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホラン−2−オキシド、トリエチルホスファート、ヘキサメチルホスホラミドなど含むが、これらに限定されない。
【0052】
カルボジイミド化触媒は、トリアリールアルシンを含んでいてよい。トリアリールアルシン及びこれらの製造方法は、U.S. Pat. No. 3,406,198に記載されていて、これらはここにその全体が参照により援用される。トリアリールアルシンの具体的な例は、トリフェニルアルシン、トリス(p−トリル)アルシン、トリス(p−メトキシフェニル)アルシン、トリス(p−エトキシフェニル)アルシン、トリス−(p−クロロフェニル)アルシン、トリス(p−フルオロフェニル)アルシン、トリス(2,5−キシリル)アルシン、トリス(p−シアノフェニル)アルシン、トリス(1−ナフチル)アルシン、トリス(p−メチルメルカプトフェニル)アルシン、トリス(p−ビフェニリル)アルシン、p−クロロフェニルビス(p−トリル)アルシン、フェニル(p−クロロフェニル)(p−ブロモフェニル)アルシンなど含むが、これらに限定されない。付加的なアルシン化合物は、U.S. Patent No. 4,143,063に記載されていて、これらはここにその全体が参照により援用される。このようなアルシン化合物の具体的な例は、トリフェニルアルシンオキシド、トリエチルアルシンオキシド、ポリマー結合アルシンオキシドなど含むが、これらに限定されない。
【0053】
更に、カルボジイミド化触媒は、アセチルアセトンの金属誘導体を含んでいてよい。アセチルアセトンの金属誘導体及び製造方法は、U.S. Pat. No. 3,152,131に記載されていて、これらはここにその全体が参照により援用される。アセチルアセトンの金属誘導体の具体的な例は、ベリリウム、アルミニウム、ジルコニウム、クロム及び鉄の誘導体のようなアセチルアセトン金属誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0054】
カルボジイミド化触媒の付加的な例は、d族遷元素及び一酸化炭素、酸化窒素、ヒドロカルビルイソシアニド、トリヒドロカルビルホスフィン、トリヒドロカルビルアルシン、トリヒドロカルビルスチルビン及びジヒドロカルビルスルフィドからなる群から選択されるπ結合配位子から誘導された金属錯体を含み、ここで、ヒドロカルビルは、それぞれの場合に、1〜12個の炭素原子を含むが、この錯体中のπ結合配位子の少なくとも1つは、一酸化炭素又はヒドロカルビルイソシアニドであることを条件に含める。このような金属錯体及び製造方法は、U.S. Pat. No. 3,406,197に記載されていて、これらはここにその全体が参照により援用される。金属錯体の具体例は、ペンタカルボニル鉄、ペンタカルボニル二鉄、ヘキサカルボニルタングステン、ヘキサカルボニルモリブデン、ヘキサカルボニルクロム、デカカルボニル二マンガン、テトラカルボニルニッケル、ペンタカルボニルルテニウム、テトラカルボニル:メチルイソシアニド鉄の錯体などを含むが、これらに限定されない。
【0055】
カルボジイミド化触媒は、有機スズ化合物を含んでいてよい。有機スズ化合物の具体例は、ジブチルスズジラウラート、ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジ(2−エチルヘキサノアート)、ジオクチルスズジラウラート、ジブチルスズマレアート、ジ(n−オクチル)スズマレアート、ビス(ジブチルアセトキシスズ)オキシド、ビス(ジブチルラウロイルオキシスズ)オキシド、ジブチルスズジブトキシド、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジサリチラート、ジブチルスズビス(イソオクチルマレアート)、ジブチルスズビス(イソプロピルマレアート)、ジブチルスズオキシド、トリブチルスズアセタート、トリブチルスズイソプロピルスクシナート、トリブチルスズリノレアート、トリブチルスズニコチナート、ジメチルスズジラウラート、ジメチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ビス(トリブチルスズ)オキシド、ジフェニルスズオキシド、トリフェニルスズアセタート、トリ−n−プロピルスズアセタート、トリ−n−プロピルスズラウラート及びビス(トリ−n−プロピルスズ)オキシド、ジブチルスズジラウリルメルカプチド、ジブチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセタート)、ビス(トリフェニルスズ)オキシド、シュウ酸第一スズ、オレイン酸第一スズ、ナフテン酸第一スズ、酢酸第一スズ、酪酸第一スズ、2−エチルヘキサン酸第一スズ、ラウリン酸第一スズ、パルミチン酸第一スズ、ステアリン酸第一スズなどを含むが、これらに限定されない。典型的な有機スズ化合物は、シュウ酸第一スズ、オレイン酸第一スズ及び2−エチルヘキサン酸第一スズ、ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジラウラート、ジブチルスズジラウリルメルカプチド、ジブチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセタート)、ジブチルスズオキシド、ビス(トリフェニルスズ)オキシド、及びビス(トリ−n−ブチルスズ)オキシドを含むが、これらに限定されない。
【0056】
更に、カルボジイミド化触媒は、多様な有機及び金属カルベン錯体、チタン(IV)錯体、銅(I)錯体及び/又は銅(II)錯体を含んでいてよい。
【0057】
前駆体化合物、ジイソシアナート化合物、及びカルボジイミド化触媒は、任意の順序で及び多様な方法によって組み合わせることができる。例えば、特定の実施態様の場合に、カルボジイミド化触媒及びジイソシアナート化合物を、単に、前駆体化合物を所望の温度に加熱される容器中に添加する。カルボジイミド化触媒とジイソシアナート化合物とを、別々に添加するか又は混合物として一緒に添加してよい。少なくともいくつかのカルボジイミド化触媒は、前駆体化合物と一緒に存在してよいため、特に前駆体化合物が、この方法内でその場で形成される場合には、ジイソシアナート化合物の添加が、反応混合物の形成のために必要とされるだけでよい。しかしながら、少なくともいくつかのカルボジイミド化触媒が前駆体触媒と一緒に存在している場合であっても、付加的な量のカルボジイミド化触媒を使用してよい。
【0058】
反応混合物の成分の相対量は変化することができる。特定の実施態様の場合に、反応混合物中に使用されるカルボジイミド化触媒の全体量は、反応混合物の全質量を基準として、0より大〜2質量%、又は0.0001〜1.5質量%、又は0.001〜1.0質量%、又は0.01〜0.5質量%、又は0.05〜0.25質量%である。カルボジイミド化触媒の量は、多様な任意成分の存在又は不存在に基づいて変化してよい。このため上述の値は、溶媒を含まない反応混合物に関する。前駆体化合物とジイソシアナート化合物とは、一般に同じ量で使用され、かつ(この反応からの全ての反応生成物又は部分的な反応生成物と共に)反応混合物の平衡を作り出してよい。安定剤は、前駆体化合物と一緒に存在してよいか、又は付加的な量の安定剤をジイソシアナート化合物と一緒に添加して反応混合物を形成してよい。一般に、使用する場合には、安定剤は、カルボジイミド化触媒と同じ量で存在する。
【0059】
この方法は、更に、この反応混合物を、第1の温度で第1の期間加熱し、それにより前駆体化合物とジイソシアナート化合物とをカルボジイミド化触媒の存在で反応させてポリカルボジイミドポリマーを製造することを含む。
【0060】
第1の温度は、所望の温度と同じでも又は異なってもよい。特定の実施態様の場合に、所望の温度と第1の温度はそれぞれ独立して70〜150℃である。所望の温度と第1の温度とは、この範囲から独立して選択される場合、所望の温度と第1の温度とは、同じ値である必要はなく、例えば所望の温度が75℃であり、第1の温度は140℃であってもよい。
【0061】
一般に、この方法は、同じ容器中で実施される。例えば、この方法が、前駆体化合物の形成を含む場合、この前駆体化合物をこの容器中で所望の温度で形成してもよい。前駆体化合物の形成の際に、この形成を分光法、例えばIR分光法により監視してもよく、ジイソシアナート化合物をこの容器内に配分してもよい。これとは別に、前駆体化合物が出発化合物から形成されるような特定の実施態様では、この出発化合物が単官能性アルコールを含む場合に、ジイソシアナート化合物は既に前駆体化合物と一緒に存在してよい。この実施態様の場合に、ジイソシアナート化合物の付加的な量は、前駆体化合物の形成後に使用してよい。同様に、カルボジイミド化触媒は、前駆体化合物の形成のために使用してよく、かつかつカルボジイミド化触媒の残りの量は、ポリカルボジイミドポリマーの製造のために十分であってよく、又はカルボジイミド化触媒の付加的な量を使用してよい。もちろん、前駆体化合物を製造しかつ除去し、精製し、単離するか、又は、所望の場合に、ポリカルボジイミド化合物の形成の前に容器により貯蔵してよい。
【0062】
効率のために、特定の実施態様の場合に、反応混合物を形成するための、前駆体化合物、ジイソシアナート化合物、及びカルボジイミド化触媒の組み合わせは、所望の温度で実施される。これは、一定の設定温度で実施する方法を可能にする。これとは別に、反応混合物を室温で形成させ、引き続き第1の温度に加熱してよい。
【0063】
第1の温度での反応混合物の加熱は、溶媒の存在で又は溶媒の不存在で実施してよい。望ましい場合に、適切な溶媒は、有機溶媒、例えばトルエン、キシレン、テトラヒドロフランなどを含む。しかしながら、特定の実施態様の場合に、反応混合物の加熱は、前駆体化合物、カルボジイミド化触媒、ジイソシアナート化合物及び任意の安定剤以外の全ての溶媒の不存在下で実施する。
【0064】
上述のように、反応混合物は、第1の温度で第1の期間加熱される。反応混合物を第1の温度で加熱する第1の期間は、一般に、反応混合物を沈殿、ゲル化、及び/又は混濁させるために十分である。例えば、反応混合物は、一般に、黄色の色相を示す透明(例えば光学的に澄明)な液体である。しかしながら、第1の期間は、反応混合物を沈殿、ゲル化、及び/又は混濁させるために十分である。一般に、反応混合物の混濁は、時間と共に増大する、つまり混濁と時間とは正比例している。言い換えれば、この反応混合物は、典型的には、時間が進むにつれてより混濁する。この反応混合物は、本発明の範囲から逸脱することなく、多様な混濁の度合いを示してよい。同時に、第1の期間は、反応混合物をわずかに混濁させるために必要な期間に制限されない。むしろ、第1の期間は、反応混合物をわずかに混濁させるために必要な期間を越えて延ばしてもよい。言い換えれば、第1の期間は、本発明の範囲を逸脱することなく、反応混合物が第1の温度で加熱され、なおかつ反応混合物が沈殿、ゲル化、及び/又は混濁するように選択してよい。
【0065】
反応混合物を加熱する工程は、一般に、不活性雰囲気中で、つまり実質的に酸素を含まない雰囲気中で実施される。この技術分野で公知の全ての不活性雰囲気を、反応混合物を加熱する工程の間に使用してよい。一般に、不活性雰囲気は、不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、及び二酸化炭素などを含む。
【0066】
この分野で容易に理解されるように、二酸化炭素ガスは、一般にポリカルボジイミドポリマーの形成と関連する反応混合物の加熱工程の間に放出される。特に、二酸化炭素は、イソシアナート成分中に存在する−N=C=O基が互いに反応して−N=C=N−結合を形成する場合に形成される副生成物である。
【0067】
ジイソシアナート化合物の重合を示す反応式を、以下に記載する。下記の反応式中で、ジイソシアナート化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下で反応して多様なポリカルボジイミド主鎖を製造する2,4−トルエンジイソシアナート(2,4−TDI)を含む。下記の反応式のポリカルボジイミド主鎖中で、nは、特定のポリカルボジイミドの分子量に依存する整数である。この前駆体化合物は、一般に、末端イソシアナート基をキャップし、ポリカルボジイミドポリマーを形成する。
【化14】
上述の反応式は、単にジイソシアナート化合物の重合に関しているが、本方法では、ジイソシアナート化合物は、前駆体化合物の存在でかつこれと反応することを理解すべきである。
【0068】
多様な実施態様の場合に、第1の期間は、0より大〜18時間、又は0より大〜12時間、又は1〜10時間、又は2〜8時間である。第1の期間は、使用した特別な前駆体化合物、反応混合物を加熱する第1の温度などの多様な要因次第でこの範囲から変化してもよい。
【0069】
ポリカルボジイミドポリマーの構造は、使用した前駆体化合物次第である。特に、上述のように、前駆体化合物は、一般にポリカルボジイミドポリマーをキャップする。このように、ポリカルボジイミドポリマーの末端キャップは、特に、前駆体化合物がダイマーである場合に、一般に、前駆体化合物のサブユニットである。
【0070】
例えば、前駆体化合物がカルボジイミド化合物(及び、この場合、ジフェニルカルボジイミド化合物)を含み及びジイソシアナート化合物がTDI(及び、この場合、2,4−TDI)を含む特定の実施態様の場合に、ポリカルボジイミドは、次の構造を、例示だけを目的として示してよい:
【化15】
ここで、下付のnは、ポリカルボジイミドポリマー中の繰返単位の数を表す。これとは別に、前駆体化合物がウレタン化合物を含み、及びジイソシアナート化合物が2,4−TDIを含む特別な実施態様の場合に、ポリカルボジイミドは、次の構造を、例示だけを目的として示すことができる:
【化16】
ここで、各Rは、前駆体化合物を形成するために使用された特別なアルコールに基づき独立して選択された有機基であり、かつ下付のnは、ポリカルボジイミドポリマー中の繰返単位の数を表す。
【0071】
所望の場合に、生じたポリカルボジイミドポリマーは、単離し、溶媒中に溶解し、組成物中に組み込むなどしてもよい。
【0072】
組成物の形でポリカルボジイミドと一緒に存在してよい別の成分の付加的な例は、定着剤、UV安定剤、着色剤、難燃剤、充填剤、チキソトロープ剤、希釈剤などを含む。
【0073】
この方法により形成されたポリカルボジイミドポリマーは、多種多様な産業で使用してよい。例えば、ポリカルボジイミドポリマーは、電気的及び電子的なパッケージング用途で使用してよい。ポリカルボジイミドポリマーを使用してよい電気的及び電子的パッケージング用途の例は、ワイヤ及びケーブルテープ;コイル用の絶縁、マグネットワイヤ、変圧器、及びコンデンサ;フレキシブルプリント回路用の支持体;光起電力セル用のフィルム;磁気テープ及び感圧テープを含む。ポリカルボジイミドポリマーは、合成繊維用途に使用してもよい。付加的に、ポリカルボジイミドポリマーは、自動車産業及び航空宇宙産業において使用してよい。例えば、ポリカルボジイミドポリマーは、優れた耐熱性の観点で、ボンネット内(under-the-hood)の用途に使用してよい。同様に、ポリカルボジイミドポリマーは、Oリングシーラント及びガスケットにおいて使用してよいか、又は燃料ラインにおいて使用してよい。更に、ポリカルボジイミドポリマーは、被覆組成物及び/又はインクにおいて使用してよい。
【0074】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明内に記載された表現及び記載された特別な化合物、組成物又は方法に限定されるものではなく、これは、添付の特許請求の範囲の範囲内に該当する特別な実施態様の間で変化してよいと解釈される。ここで多様な実施形態の特別な特徴又は観点を記載するために用いられたマーカッシュ群に関して、全ての別のマーカッシュメンバーから無関係に、それぞれのマーカッシュ群の各メンバーから、異なる、特別な、及び/又は意外な結果を得ることができることが認識される。マーカッシュ群の各メンバーは、独立で及び/又は組み合わせて用いてよく、かつ添付の特許請求の範囲の範囲内の特別な実施態様のために適切な支持を提供する。
【0075】
本発明の多様な実施態様を独立して又は集合的に記載する際に用いられる全ての範囲及び部分範囲は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると解釈され、かつ、たとえここにこのような値が記載されていなくても、その中の全ての値及び/又は少数値を含めた全ての範囲が記載されかつ考慮されると解釈される。当業者は、列挙された範囲及び部分範囲が、発明の多様な実施態様を十分に記載しかつ可能にし、かつこのような範囲及び部分範囲は、更に、適切な半分、3分の1、4分の1、5分の1などに線引きされてもよいことを容易に認識する。一つの例として、「0.1〜0.9」の範囲は、更に、下側の3分の1、つまり0.1〜0.3、中程の3分の1、つまり0.4〜0.6、及び上側の3分の1,つまり0.7〜0.9に線引きされてもよく、これは個別にかつ集合的に、添付の特許請求の範囲の範囲内にあり、かつ個別に及び/又は集合的に用いられてよく、かつ添付の特許請求の範囲の範囲内の特別な実施態様のための適切な支持を提供する。更に、「少なくとも」、「より大」、「より小」、「以下」などのような範囲を定義又は変更する用語に関して、このような用語は、部分範囲及び/又は上限又は下限を含むと解釈される。もう一つの例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10〜35の部分範囲、少なくとも10〜25の部分範囲、25〜35の部分範囲などを固有に含み、かつ各部分範囲は、個別に及び/又は集合的に用いられてもよくかつ添付の特許請求の範囲の範囲内の特別な実施態様のための適切な支持を提供する。最後に、明らかにされた範囲内の個別の数を用いてもよくかつ添付の特許請求の範囲の範囲内の特別な実施態様のための適切な支持を提供する。例えば、「1〜9」の範囲は、例えば3のような多様な個別の整数、並びに、例えば4.1のような小数点(又は分数)を含む個別の数を含み、これを用いてもよくかつ添付の特許請求の範囲の範囲内の特別な実施態様のために適切な支持を提供する。
【0076】
次の実施例は、本発明を例示することを意図していて、本発明の範囲を制限するものとは決してみなすべきでない。
実施例
【0077】
次の成分は、実施例内を通して参照される:
【0078】
ジイソシアナート化合物は、トルエンジイソシアナート(TDI)である。
【0079】
出発化合物1は、フェニルイソシアナートである;及び
【0080】
出発化合物2は、n−ヘキサノールである;
【0081】
出発化合物3は、n−デカノールである;
【0082】
前駆体化合物1は、一般式:
【化17】
である
【0083】
前駆体化合物2は、一般式:
【化18】
である
【0084】
前駆体化合物3は、一般式:
【化19】
である
【0085】
溶媒は、キシレンである;
【0086】
安定剤は、トリフェニルホスフィットである。
【0087】
カルボジイミド化触媒は、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドである。
【0088】
実施例1
【0089】
出発化合物1 25.13グラムを、窒素の定常流の下で、乾燥した3口の100mLの丸底フラスコ中に配分する。このフラスコに、凝縮器及び攪拌子を備え付け、このフラスコの温度を周囲温度から約106℃に上昇させる。窒素を液体中に吹き込み、かつカルボジイミド化触媒0.05グラム及び安定剤0.05グラムを、このフラスコ内に配分する。このフラスコの内容物を、106℃で90分間攪拌し、前駆体化合物1を形成させる。ジイソシアナート化合物24.87グラムを、このフラスコ内に配分し、一方でこのフラスコの内容物、つまり前駆体化合物は、106℃に加熱される。ジイソシアナート化合物の添加により、フラスコ内に反応混合物の形成が行われる。この反応混合物内に、二酸化炭素の形成に起因する急速な発泡が観察される。このフラスコの内容物は、周囲温度で使用されるジイソシアナート化合物の添加によって、100℃未満の温度を示す。このフラスコを、連続的に106℃に加熱する。この反応混合物のGPC及びIR分析を1時間ごとに6時間記録する。4時間後には、IRスペクトル中に変化がなく、これは反応が既に完全に実施されたことを示す。ポリカルボジイミドポリマーが、粘性の金色の液体である反応生成物中に生じる。
【0090】
実施例2
【0091】
出発化合物1 369.0グラムを、窒素の定常流の下で、乾燥した4口の1Lの丸底フラスコ中に配分する。このフラスコに、凝縮器、機械式攪拌機、及び熱電対を備え付ける。このフラスコの内容物の温度を、周囲温度から約106℃に上昇させる。窒素を液体中に吹き込み、かつカルボジイミド化触媒1.5グラム及び安定剤1.5グラムを、このフラスコ内に配分する。出発化合物1からの前駆体化合物1の形成と関連する発熱反応のために、フラスコの温度は約112℃に上昇する。このフラスコの内容物を、106℃で60分間攪拌し、前駆体化合物1を形成させる。60分後のIR測定は、出発化合物1のNCO基が消費されたことを確認する。ジイソシアナート化合物628.0グラムを、このフラスコ内に配分し、一方でこのフラスコの内容物、つまり前駆体化合物は、106℃に加熱される。ジイソシアナート化合物の添加により、フラスコ内に反応混合物の形成が行われる。この反応混合物内に、二酸化炭素の形成に起因する急速な発泡が観察される。このフラスコの内容物は、周囲温度で使用されるジイソシアナート化合物の添加によって、100℃未満の温度を示す。このフラスコを、連続的に106℃に加熱する。この反応混合物のGPC及びIR分析を1時間ごとに記録する。3時間後には、IRスペクトル中で変化がなく、これは反応が完全に完了したことを示す。ポリカルボジイミドポリマーが、粘性の、透明な金色の液体である反応生成物中に生じる。
【0092】
実施例3
【0093】
出発化合物2 9.87グラム及びジイソシアナート化合物35.0グラムを、攪拌子、熱電対、凝縮器、及び窒素スパージャを装備した、火炎乾燥した丸底フラスコ(250mL)に配分する。出発化合物2を、ジイソシアナート化合物の前にフラスコ内に配分する。ジイソシアナート化合物の添加の際に、フラスコの温度は、(発熱によって)室温から約92℃に上昇し、1時間後に再び室温に戻る。このフラスコの内容物を、40分後及び3.5時間後にIRによって分析し、IRスペクトル中で変化がなかった。このように、前駆体化合物2が、フラスコ内で、出発化合物2及びジイソシアナート化合物から形成される。溶媒37.49gをこのフラスコ内に配分し、この温度を約90℃に上昇させる。カルボジイミド化触媒0.19グラム及び安定剤0.20グラムをこのフラスコ内に分配し、反応混合物を形成させる。反応混合物の温度を、1時間で約106℃に上昇させ、更に3時間加熱を続ける。ポリカルボジイミドポリマーが反応生成物中に生じる。
【0094】
実施例4
【0095】
ジイソシアナート化合物30.56グラムを、溶媒(これはMgSO
4で乾燥した)31.15グラム中に溶かし、攪拌子、熱電対、凝縮器、及び窒素スパージャを装備した、火炎乾燥した丸底フラスコ(250mL)内に配分する。出発化合物2 32.38グラムを、室温でこのフラスコ内に配分し、外部熱源なしで攪拌する。フラスコの温度は、(発熱によって)室温から約74℃に上昇し、かつ1時間後に再び室温に戻る。このフラスコの内容物は、フラスコ内で前駆体化合物2の形成に起因する粘性で不透明な白色の溶液を形成する。カルボジイミド化触媒0.19グラム及び安定剤0.20グラムを、フラスコ内に配分して、反応混合物を形成させる。反応混合物の温度は、室温に冷却する前に一晩中攪拌しながら約120℃に上昇させる。低粘性液体の形のポリカルボジイミドポリマーが反応生成物中に生じる。
【0096】
実施例5
【0097】
ジイソシアナート化合物55.25グラムを、溶媒(これはMgSO
4で乾燥した)31.30グラム中に溶かし、攪拌子、熱電対、凝縮器、及び窒素スパージャを装備した、火炎乾燥した丸底フラスコ(250mL)内に配分する。出発化合物2 32.35グラムを、室温でこのフラスコ内に配分し、外部熱源なしで攪拌する。フラスコの温度は、(発熱によって)室温から約96℃に上昇し、かつ1時間後に再び室温に戻る。フラスコの内容物を室温で一晩中攪拌し、フラスコ内での出発化合物2からの前駆体化合物2の形成をIRにより確認する。このフラスコを120℃に加熱し、フラスコの内容物の温度はゆっくりと上昇する。フラスコ内容物が105℃に達する際に、カルボジイミド化触媒0.20グラム及び安定剤0.19グラムを、フラスコ内に配分して、反応混合物を形成させる。この反応混合物を、1時間攪拌しながら120℃に加熱し、その後、この反応生成物はわずかに黄色の色調を示す。この反応混合物を、更に7時間攪拌しながら120℃に加熱し、ここで確認したIRは、反応混合物中にわずかな量のNCOの存在を確認する。更に1時間の加熱の後に、IRスペクトル中でわずかな変化がある。ジイソシアナート化合物の付加的な5.77グラムを、120℃で反応混合物に添加する。1時間後に、NCO範囲は、IRによりほとんど検出されなかった。この反応混合物を、付加的に4時間120℃で加熱する。わずかに黄色の粘性の固体の形でポリカルボジイミドポリマーが生じる。
【0098】
実施例6
【0099】
ジイソシアナート化合物25.55グラムを、攪拌子、熱電対、凝縮器、及び窒素スパージャを装備した、火炎乾燥した丸底フラスコ(250mL)中に配分する。出発化合物3 23.34グラムを、室温でこのフラスコ内にゆっくりと配分し、かつ外部熱源なしで攪拌する。溶媒62.50グラムを、出発化合物3の直後に、フラスコ内の発熱温度を制御するようにフラスコ内に配分する。この温度は約60℃に上昇し、室温に戻る。2時間後に、前駆体化合物3が、フラスコ内で出発化合物3から形成される。フラスコの温度を120℃に上昇させる。カルボジイミド化触媒0.21グラム及び安定剤0.18グラムを、フラスコ内に配分して、反応混合物を形成させる。反応混合物の温度を攪拌しながら4時間で約140℃に上昇させる。ジイソシアナート化合物の別の44.49gを、反応混合物に配分し、この反応混合物を、更に3時間で140℃に加熱する。残留するNCO基は、IRによって反応混合物中に検出されない。ポリカルボジイミドポリマーが反応生成物中に生じる。
【0100】
実施例7
【0101】
出発化合物1 31.23グラム、カルボジイミド化触媒0.46グラム及び安定剤0.46グラムを、室温で、攪拌子、熱電対、凝縮器及び窒素スパージャを装備した100mLの4口丸底フラスコ内に配分する。このフラスコの内容物を、徐々に約140℃に加熱し、この温度は、30分後に140℃に戻る前に、約148℃に達する。IRスペクトルは、30分後に出発混合物1中のNCO基のほぼ完全な消費を示す。ジイソシアナート化合物14.25グラムをこのフラスコ内に配分し、このフラスコの内容物を、更に30分間140℃に加熱する。IRスペクトルは、ポリカルボジイミドポリマーの形成の際に、NCO基のほぼ完全な消費を示す。
【0102】
比較例1
【0103】
ジイソシアナート化合物492グラム及び安定剤1.00グラムを、室温で、2Lの3口丸底フラスコ中に配分する。このフラスコの内容物を、約74℃に加熱し、この時点でカルボジイミド化触媒1.00及び出発化合物を攪拌しながらこのフラスコ内に配分する。このフラスコの内容物を、(最初の加熱から約30分間の)時間にわたり106℃に加熱する。IRスペクトルは、カルボジイミド化触媒の添加の1時間後及びその後1時間ごとに測定する。反応混合物は、106℃での加熱の1時間後に灰色になる。このフラスコの内容物を、106℃で6.5時間加熱し、その後で、この反応混合物を一晩中冷却する。この反応混合物は琥珀色を示す。生じるポリカルボジイミドは、かなりの分子量分布及び不所望な副生成物を有する。
【0104】
比較例2
【0105】
比較例2は、U.S. Pat. No. 5,572,083の実施例Aに対応する。特に、ジイソシアナート化合物9.43グラム、出発化合物1 9.43グラム、カルボジイミド化触媒3.11グラム(溶媒中10%)及び酢酸アミル27.0グラムを、室温で、100mLの4口丸底フラスコ中に配分する。フラスコの内容物を33分間にわたり約140℃に加熱し、この時点でこの反応は更に30分間進行させることができる。IRスペクトルは、かなりの分子量分布を示すポリカルボジイミドポリマーの形成の際にNCO基のほぼ完全な消費を示す。
【0106】
下記の表1は、上記実施例のポリカルボジイミドポリマーのそれぞれについてのMn、Mw及び多分散度(PD)を示す。Mn及びMwは、一般に、ポリスチレン標準により校正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)カラムにより測定する。下記のMn及びMw値は、ダルトンで示す。
【0107】
【表1】
【0108】
本発明は、例示の手法で記載され、かつ使用された専門用語は、限定の語句というよりはむしろ記述の語句の性質で意図されると解釈される。明らかに、上述の教示を考慮して、本発明の多くの改良及び変更が可能である。本発明は、具体的に記載されたものとは別の方法で実施してよい。