特許第6676534号(P6676534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676534
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】巻成品のコーティング方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20200330BHJP
   B32B 39/00 20060101ALI20200330BHJP
   B32B 37/00 20060101ALI20200330BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20200330BHJP
   B29C 63/48 20060101ALI20200330BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20200330BHJP
   B29C 65/40 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   B32B27/40
   B32B39/00
   B32B37/00
   B32B37/14 A
   B29C63/48
   B29C65/02
   B29C65/40
【請求項の数】24
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-553331(P2016-553331)
(86)(22)【出願日】2015年2月18日
(65)【公表番号】特表2017-506175(P2017-506175A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2015053353
(87)【国際公開番号】WO2015124587
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2018年2月15日
(31)【優先権主張番号】14155671.2
(32)【優先日】2014年2月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ヘルマン
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−527955(JP,A)
【文献】 特開平02−310239(JP,A)
【文献】 特表2011−513089(JP,A)
【文献】 特表2009−508724(JP,A)
【文献】 特開平09−327644(JP,A)
【文献】 特表2007−511633(JP,A)
【文献】 特開昭54−148877(JP,A)
【文献】 特開昭48−068680(JP,A)
【文献】 特表2010−530908(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0251853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 63/00−63/48,65/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐少なくとも1つの担体材料(64,66)と、
‐少なくとも1つの結合層と、
‐ポリウレタン層の厚さ全体を貫通して延びる毛細管を有する少なくとも1つのポリウレタン層と、
を有する多層複合体の連続製造方法であって、
a)処理区間(12)において、少なくとも1つのコーティングステーション(26,30)及び複数の加熱ステーション(24,28,32)を通走させることにより、マトリックス(15)の構造化側(78)に少なくとも1つのポリウレタン層を形成するステップと、
b)前記方法ステップa)に記載のマトリックス(15)を、前記処理区間(12)とは独立に構成された、ウェブ状の担体材料(64,66)用の転移セクション(60)における供給位置(74)に自動的に供給するステップ(76)と、
c)前記転移セクション(60)を連続的に通走している前記ウェブ状の担体材料(64,66)に、前記マトリックス(15)の前記構造化側(78)を被着するステップと、
d)前記マトリックス(15)と前記ウェブ状の担体材料(64,66)とから成る複合体を、加熱可能なプレス装置(82)で処理して、前記少なくとも1つのポリウレタン層を、前記ウェブ状の担体材料(64,66)に転移させるステップと、
e)前記ウェブ状の担体材料(64,66)から前記マトリックス(15)を取り外すステップと、
f)前記マトリックス(15)を再処理のために前記処理区間(12)に自動的に移すステップと、
g)前記ウェブ状の担体材料(64,66)を巻取りステーション(100)において連続的に巻き取るステップと、
を有することを特徴とする、多層複合体の連続製造方法。
【請求項2】
前記方法ステップa)の実施は、前記処理区間(12)内で、前記転移セクション(60)における前記担体材料(64,66)の搬送方向(84)とは反対方向に行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法ステップa)の実施中に、少なくとも1つのポリウレタン層を加工成形する前記マトリックス(15)は、取出し位置(96)からその供給位置(74)へ送り戻される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記転移セクション(60)と、前記マトリックス(15)用の処理区間(12)との間で、自動化されたハンドリング装置により、前記マトリックス(15)の自動化された供給(76)及び自動化された搬出(98)が行われる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記マトリックス(15)は、前記転移セクション(60)から前記処理区間(12)への搬出(98)中に裏返されて、上方からアプローチ可能な構造化側(78)で以て前記処理区間(12)に到達する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記転移セクション(60)内で、前記ウェブ状の担体材料(64,66)は巻成品として、巻取りステーション(100)に向かう搬送方向(84)に運ばれる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ウェブ状の担体材料(64,66)としては、
‐スプレー接着剤を付与されるウェブ状の担体材料(64)、又は
‐網状接着剤(68)を付与されるウェブ状の担体材料(64)、又は
‐既に熱活性化可能な接着剤でコーティングされたウェブ状の担体材料(68)
が使用される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記処理区間(12)内で処理された前記マトリックス(15)は、動化されたハンドリング装置により、当該マトリックスの構造化側(78)で以て、搬送方向(84)に運ばれる前記ウェブ状の担体材料(64,66)に載せられる、請求項1から7までのいずれか1項載の方法。
【請求項9】
加熱可能なプレス装置(82)を通過する際に、前記マトリックス(15)と前記ウェブ状の担体材料(64,66)とから成る複合体内で、前記マトリックス(15)に含まれる少なくとも1つのポリウレタン層が、前記ウェブ状の担体材料(64,66)に転移させられる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記転移セクション(60)の冷却装置(90)を通過した後、処理の完了した前記ウェブ状の担体材料(64,66)は、巻取りステーション(100)に巻き取られる、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記転移セクション(60)の冷却装置(90)の下流側で前記マトリックス(15)を取り出した後、該マトリックス(15)は改めて、再処理用の前記処理区間(12)に供給されると共に、その搬出(98)中に裏返される、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記方法ステップg)に基づき、前記ウェブ状の担体材料(64,66)を前記巻取りステーション(100)において連続的に巻き取る間に、敏感な構造体を防護するための中間層の巻込みが行われる、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
‐少なくとも1つの担体材料(64,66)と、
‐少なくとも1つの結合層と、
‐ポリウレタン層の厚さ全体を貫通して延びる毛細管を有する少なくとも1つのポリウレタン層と、
を有する多層複合体の生産装置であって、
前記生産装置は、
マトリックス(15)に、少なくとも1つのコーティングステーション(26,30)及び複数の加熱ステーション(24,28,32)を通走させることにより、当該マトリックス(15)の構造化側(78)に少なくとも1つのポリウレタン層を形成するように構成された処理区間(12)と、
前記処理区間(12)とは独立に構成された、ウェブ状の担体材料(64,66)用の転移セクション(60)と
を備えており、
前記転移セクション(60)は、
前記転移セクション(60)を搬送方向(84)に連続的に通走している前記ウェブ状の担体材料(64,66)に、前記マトリックス(15)の構造化側(78)を被着し、
加熱可能なプレス装置(82)により、前記マトリックス(15)と前記ウェブ状の担体材料(64,66)とから成る複合体を、前記少なくとも1つのポリウレタン層を、前記ウェブ状の担体材料(64,66)に転移させ、
前記ウェブ状の担体材料(64,66)から前記マトリックス(15)を取出し位置(96)において取り外す、
ように構成されており、
前記生産装置は、さらに、
前記取出し位置(96)にある前記マトリックス(15)を前記処理区間(12)から取り出し、再処理のために、前記処理区間(12)に供給する自動化された供給手段と、
前記処理区間(12)から前記転移セクション(60)における供給位置(74)へ前記マトリックス(15)を供給する自動化された供給手段と、
を備えていることを特徴とする、生産装置。
【請求項14】
前記加熱可能なプレス装置(82)は、ローラプレス又はフラットベッドラミネート機であり、温度調整可能なローラユニット(86,88)及び/又は赤外線ヒータ及び/又は高温空気ファンを有している、請求項13記載の生産装置。
【請求項15】
前記加熱可能なプレス装置(82)は、温度調整可能なローラ(86,88)を有しており、これらのローラ(86,88)間を、前記ウェブ状の担体材料(64,66)と前記マトリックス(15)とから成る複合体が、搬送方向(84)に搬送される、請求項13記載の生産装置。
【請求項16】
処理された前記マトリックス(15)の、前記転移セクション(60)への供給は、自動化されたハンドリング装置により行われる、請求項13記載の生産装置。
【請求項17】
前記マトリックス(15)の搬出(98)は、自動化されたハンドリング装置により行われ、該ハンドリング装置が前記マトリックス(15)を裏返すことにより、前記処理区間(12)の到達時には前記マトリックス(15)の構造化側(78)がアプローチ可能になっている、請求項13記載の生産装置。
【請求項18】
前記転移セクション(60)を通る前記ウェブ状の担体材料(64,66)の搬送方向(84)は、前記処理区間(12)を通る前記マトリックス(15)の搬送方向(104)とは逆の方向に向けられている、請求項13記載の生産装置。
【請求項19】
前記転移セクション(60)は、前記ウェブ状の担体材料(64,66)用の繰出しステーション(62)を有している、請求項13記載の生産装置。
【請求項20】
前記ウェブ状の担体材料(64,66)用の前記繰出しステーション(62)に、接着材料、スプレー接着剤、又は網状接着剤用の供給ステーション(68)が対応配置されている、請求項19記載の生産装置。
【請求項21】
前記転移セクション(60)は、前記ウェブ状の担体材料(64,66)用の巻取りステーション(100)を有している、請求項13記載の生産装置。
【請求項22】
前記巻取りステーション(100)は、前記ウェブ状の担体材料(64,66)の目視側の敏感な構造体を、巻き取られた状態で互いに隔てる中間層(97)用の供給手段(95)を有している、請求項21載の生産装置。
【請求項23】
前記ウェブ状の担体材料(64,66)から前記マトリックス(15)を取り出すための前記取出し位置(96)が、冷却装置(90)の下流側に配置されている、請求項13記載の生産装置。
【請求項24】
前記ウェブ状の担体材料(64,66)に前記マトリックス(15)を供給するための供給位置(74)が、前記搬送方向(84)に見て、前記加熱可能なプレス装置(82)の上流側に位置している、請求項13記載の生産装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別の意匠との組合せにおいてベルベット表面若しくはベルベット状の表面を製造するための、例えば担体材料、繊維ウェブ等の巻成品のコーティング方法並びに該方法に適した生産装置に関する。
【0002】
国際公開第2005/047549号は、仕上材が設けられた担体に関する。この担体は、スエード状の微細立毛上面を有している。仕上材は、その目視側に銀面構造を備えている。担体は、特に上面を形成する研磨された銀面側を有する銀面皮革、研磨された上面を有する床革、又はマイクロファイバから成る上面を有する合成スエード材料であり、この場合、仕上材は、硬化されたプラスチック分散物から成り、銀面構造に相応する構造化表面を備えた支持体上で個別に製造され、ポリウレタンを含有する硬化されたプラスチック分散物から形成されて担体の上面に被着される結合層を介して、担体の上面に結合される。仕上材は、その厚さ全体にわたり一貫して延びる毛細管を有していると共に、銀面凸領域においても、銀面凹領域においても、ほぼ同じ厚さを有している。仕上材は、単一の薄い結合層を介して、担体と結合されている。
【0003】
欧州特許第1859066号明細書は、小さな井戸状くぼみを有するマトリックスに関する。このマトリックスは、面状の担体に結合可能なコーティングの製造に使用され、コーティングは、液状のプラスチック分散物を、疎水性のフレキシブルなプラスチックから成るマトリックス表面に被着し、次いでプラスチック分散物を硬化させることにより形成される。前記表面は、入射角60°で2.2未満の、DIN67530に基づく光沢度を有していて、微視的に小さな井戸状くぼみを備えている。これらの井戸状くぼみは、表面のレーザ処理によって形成されている。隣接する井戸状くぼみの中心間距離は50μm〜150μmであり、井戸状くぼみの深さは50μm〜150μmである。
【0004】
国際公開第2007/033968号サーチレポートは、装飾仕上材を製造するためのマトリックス製造方法が対象である。このマトリックスは特に、面状の担体、特に革又は繊維材料に結合可能な、表面構造化されたコーティングを形成するために用いられる。コーティングは、液状のプラスチック材料をマトリックス表面に被着してから、プラスチック材料を硬化させることにより形成されている。マトリックスは、コーティングの表面構造に相応する表面構造を有しており、この場合、マトリックスの表面構造は、レーザ彫刻により形成される。
【0005】
国際公開第2009/106503号は、織物シート材料を含む多層複合材料、その製造及び利用方法が対象である。開示された多層複合材料は、構成要素として、繊維シート材料、場合により少なくとも1つの結合層、及びその厚さ全体にわたって延びる毛細管を備えたポリウレタン層を有しており、この場合、織物シート材料とポリウレタン層とは、互いに直接に結合されているか、又は結合層を介して結合されている。
【0006】
国際公開第2010/007042号は、多層複合体を連続的に製造する方法が対象である。多層複合体は、少なくとも1つの担体材料と、少なくとも1つの結合層と、その厚さ全体にわたって延びる毛細管を備えた少なくとも1つのポリウレタン層とを有している。マトリックスを用いてポリウレタン層が製造され、このポリウレタン層は、結合層に変わる材料によって担体材料に固定される。マトリックスは、80℃〜170℃の温度を有すると共に、100〜20000J/K・mの範囲の熱容量を有している。
【0007】
担体材料のコーティング方法、例えば通気性の革仕上材の製造は、多くの手作業を投入して進行する。担体材料の目視側の個別の意匠と組み合わされた、ベルベット表面若しくはベルベット状の表面(ソフトタッチ)の製造は、上述した多くの手作業を要する製造方法に基づき行われてきた。これにより、例えば繊維工業等の複数の応用分野を開発することができていない。繊維工業では、例えば織物、不織布ペーパー等の巻成品を、これらの巻成品を切断又は予め製造することなしにコーティングするプロセスが所望されている。多くの手作業により支援される従来のプロセス進行の欠点は、ロールに供給される担体材料を、用途特有のものとして予め製造せねばならない点にある。今日のコーティング法では、コーティングされるべき個々の品が、前処理されたマトリックスに手で載せられる。加工は、160cm×160cmの大きさの面積に制限されている。従来の方法の別の制約は、処理されるべきマトリックス若しくは担体材料とマトリックスとから成る、処理されるべき複合体の、1分当たりのサイクル時間が、プレスにおける所要滞在時間に基づき制限されている、という点にある。更に、サイクル時間に関してとりわけ不都合なのは、得られた完成品が生産装置から手で取り出される点、及び個々の品がそれぞれ、手間のかかる搬送並びに手間のかかる保管を要する点である。
【0008】
多層複合体、例えばコーティングされた革、コーティングされた繊維、又はコーティングされたセルロース繊維含有製品は、人気が高まってきている。特に、例えば国際公開第2005/047549号に記載されたような、ポリウレタンでコーティングされた複合体は、多数の全く異なる特性の組合せに基づき、幅広い応用分野を有している。この複合体は、通気性を有する革の機械的な特性を、好ましい外観と快適な触覚とに調和させるものである。
【0009】
しかしながら今まで、このような、特に多層に形成された複合体を廉価に大量生産することを可能にする方法は存在しなかった。従来使用された方法は、1つずつばらで生産するものであり、大きな手作業手間を要する。
【0010】
上述した従来技術の欠点は、本発明による多層複合体の連続製造方法並びに該方法を実施可能な生産装置により取り除かれる。
【0011】
本発明による多層複合体の連続製造方法では、多層複合体は、少なくとも1つの担体材料と、少なくとも1つの結合層と、ポリウレタン層の厚さ全体を貫通して延びる毛細管を備えた少なくとも1つのポリウレタン層とを有しており、以下の方法ステップ、即ち:
a)少なくとも1つのコーティングステーション及び複数の加熱ステーションを通走させることにより、マトリックスに少なくとも1つのポリウレタン層を形成するステップと、
b)前記方法ステップa)に記載のマトリックスを、ウェブ状の担体材料用の転移セクションにおいて供給位置に供給するステップと、
c)前記転移セクションを連続的に通走している前記ウェブ状の担体材料に、前記マトリックスの構造化側を被着するステップと、
d)前記マトリックスと前記ウェブ状の担体材料とから成る複合体を、プレス装置で処理して、前記少なくとも1つのポリウレタン層を、前記ウェブ状の担体材料に転移させるステップと、
e)前記ウェブ状の担体材料から前記マトリックスを取り出すステップと、
f)前記マトリックスを処理区間に移すステップと、
g)前記ウェブ状の担体材料を巻取りステーションにおいて連続的に巻き取るステップと、が進行する。
【0012】
本発明に基づき提案された方法により、例えば1分当たり少なくとも5.12mのウェブ状の担体材料の処理を可能にする、より効率的で迅速なプロセスが提供される。本発明により提案された方法のサイクル時間と、本発明により提案された生産装置とに影響を及ぼす重要な役割を果たすのは、ウェブ状の担体材料に対する少なくとも1つのポリウレタン層の転移が行われるプレス装置内でマトリックスとウェブ状の担体材料とから成る複合体を処理することに起因する、待ち時間である。
【0013】
本発明により提案された方法によって、大幅なコスト節約が達成され得る。それというのも、担体材料を予め製造することが省かれてよいからである。担体材料は、生産装置の転移セクションを通って連続的に搬送され、特に繰出しステーションにおいて繰り出され、仕上げ処理後は巻取りステーションにおいて製造の完了した巻成品として再び巻き取られる。ウェブ状の担体材料は巻成品として存在しているので、大幅に簡単になった取扱いが実現され得る。更に、特に従来公知の「ピーストゥピース」プロセスとは異なり、担体材料を載せるための人員は最早必要とされず、更に、従来は予め製造されていた担体材料ピースからマトリックスを取り外すために今まで投入されていた人員を節約することができる。今や、少なくとも1つのポリウレタン層が形成されるマトリックスだけを、自動化されたハンドリング装置により供給及び搬出可能なので、予め製造された1.6m×1.6mの大きさの担体材料ピースを従来は概ね手で取り扱っていたのとは異なり、大幅に簡単になった取扱いが達成され得る上に、特に、転移セクションの終端部の巻取りステーションからの、処理が完了した巻成品の搬出が、大幅に簡単且つ廉価に実現され得る。
【0014】
本発明に基づき提案された方法により工業的な基準で生産可能な多層複合体は、通気性の複合体である。但し、例えば少なくとも1つのポリウレタン層を通っている毛細管が連続しては形成されないことにより、本発明に基づき提案された方法により製造される複合体を非通気性に形成する可能性もある。
【0015】
本発明により提案された複合体は、少なくとも1つの担体材料を含んでいる。
【0016】
担体材料としては、種々様々な材料、例えば繊維、紙及びボール紙及び好適には革等のセルロース含有材料(この場合も以下は既に繊維、セルロース含有材料若しくは革と云う)が考慮される。しかしまた、人造皮革、ホイル、特に金属ホイル又はポリマーホイル及びポリウレタンが適しており、特に例えば発泡体としては熱可塑性のポリウレタンが適している。1つの可能な構成変化態様において、担体材料は通気性でなくてよく、1つの好適な構成変化態様では、通気性材料から成る担体材料が選択されている。1つ又は複数の繊維は、種々様々な外見形状を有していてよい。適しているのは、例えば織布、フェルト、ニット(編成品)、メリヤス、綿、スクリム及びマイクロファイバ織布、更にフリース(不織布)である。
【0017】
繊維は、特にフリース、織布、メリヤス又はニットである。繊維はロープ、ひも、縄、糸又は撚糸から選択され得る。繊維は、例えば木綿、ウール又は亜麻等の天然原料であるか、或いは例えばポリアミド、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステル混合織布、ポリアミド混合織布、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、更にポリエステルマイクロファイバ及びガラス繊維織布等の合成原料であってもよい。極めて特に好適なのは、ポリエステル、木綿、及び例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに木綿‐ポリエステル混合織布、ポリオレフィン‐ポリエステル混合織布及びポリオレフィン‐木綿混合織布から選択された混合織布である。
【0018】
繊維は、未処理であってよいか、或いは漂白又は染色処理されていてよい。好適には、繊維は片面だけがコーティングされている、又はコーティングされていない。繊維は仕上げ加工されていてよく、特に繊維は手入れが容易であり且つ/又は耐炎性に仕上げ加工されていてよい。更に繊維は、10g/m〜500g/mの範囲、好適には50g/m〜300g/mの範囲の、単位面積当たりの重量を有していてよい。
【0019】
セルロース含有材料は、様々な種類のセルロース含有材料であってよく、ヘミセルロース及びリグノセルロースの概念に含まれている。セルロース含有材料は、木材、又はパーティクルボードであってよい。この場合、木材には例えばラッカコーティングされた木材と、ラッカコーティングされていない木材とが含まれており、本発明の意味での木材は、殺虫剤で仕上げ加工されていてよく、木材には、化粧張りも含まれる。
【0020】
セルロース含有材料は、英語でWood Plastic Composite又は一般に略してWPCと呼ばれる、天然繊維とプラスチックとから成る合成材料(複合材料)であってもよい。セルロース含有材料は、厚紙、ボール紙、又は紙であってよい。紙は、コーティングされていなくてよいか、又は好適にはコーティングされていてよい、又は公知の方法で仕上げ加工されていてよい。特に、紙は漂白された紙であってよい。紙は、1つ又は複数の顔料、例えばチョーク、カオリン又はTiOを含んでいてよく、紙、厚紙及びボール紙は、未着色(天然色)であるか、又は有色であってよい。本発明に関連する紙、厚紙及びボール紙は、印刷されていないか、又は印刷されていてよい。
【0021】
紙は、クラフト紙であってよいか、又はポリアクリレート分散剤で仕上げ加工された紙であってよい。
【0022】
担体材料として、プラスチックホイル又は金属ホイル(略してホイルと呼ぶ)を使用する可能性もある。
【0023】
ホイルとは、本発明との関連では、0.5mm〜1mm、好適には0.1mm〜0.5m、特に好適には0.15mmまでの厚さを有する、金属又は天然ポリマー又は好適には合成ポリマーから成るシートを意味する。プラスチック‐金属ホイルは、本発明との関連ではホイルという概念に包含される。
【0024】
好適には、シートは手で、即ち工具を利用せずに曲げることができる。金属の中では、銀、金、鉄、銅、錫、及び特にアルミニウムが、好適に選択された材料である。ポリマーの中では、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、更にポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート及びポリスチロールが好適であり、この場合、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンは、該当するエチレンホモポリマー及びプロピレンホモポリマーだけでなく、例えばアクリル酸又は1‐オレフィン等の別のオレフィンを有するコポリマーをも意味する。つまり、ポリエチレンは特に、プロピレン、1‐ブタン、1‐ペンタン、1‐ヘキサン、1‐オクタン、1‐デセン又は1‐ドデセンと同様、1つ又は複数の1‐オレフィンの0.1重量%〜50重量%未満のエチレンコポリマーであると解され、この場合、プロピレン、1‐ブタン及び1‐ヘキサンが好適である。ポリプロピレンは特に、1‐ブタン、1‐ペンタン、1‐ヘキサン、1‐オクタン、1‐デセン又は1‐ドデセンと同様、エチレン及び/又は1つ又は複数の1‐オレフィンの0.1重量%〜50重量%未満のプロピレンコポリマーとも解され、この場合、エチレン、1‐ブタン及び1‐ヘキサンが好適である。この場合、ポリプロピレンは、好適には実質的にアイソタクチックポリプロピレンを意味する。
【0025】
ポリエチレンから成るホイルは、HDPE又はLDPE又はLLDPEから製造され得る。ポリアミドから成るホイルの中では、ナイロン6から導出されるようなホイルが好適である。ポリエステルから成るホイルの中では、ポリブチレンテレフタレートから成るようなホイル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)から成るようなホイルが好適である。ポリカーボネートから成るホイルの中では、ビスフェノールAを使用して製造されたポリカーボネートから導出されるようなホイルが好適である。ポリ塩化ビニルから成るホイルは、硬質ポリ塩化ビニル又は軟質ポリ塩化ビニルから成るホイルを意味し、この場合、軟質ポリ塩化ビニルには、ビニルアセタート及び/又はアクリレートを有する塩化ビニルのコポリマーも含まれている。ポリウレタンから成るホイルの中では、熱可塑性ポリウレタンから成るようなホイル、つまりいわゆるTPUホイルが好適である。ホイルには、例えば上述したホイルのうちの1つと、金属ホイル又は紙とを有するホイル等の、複合ホイルも含まれていてよい。
【0026】
好適には多層に形成された複合体の担体材料は、皮革であってもよい。皮革という概念には、本発明の枠内では、仕上げ加工されていてよい、又は好適には仕上げ加工されていなくてよい、なめされた獣皮が含まれる。なめしは、種々様々な方法で行うことができ、例えばクロムなめし剤を用いて、他の鉱物質、例えばアルミニウム化合物又はジルコン化合物等のなめし剤を用いて、例えばアルデヒド、特にグルタルジアルデヒドと(メタ)アクリル酸((Meth)acrylsaeure)のホモポリマー又はコポリマー等のポリマーなめし剤を用いて、例えばアルデヒド、特にホルムアルデヒドと芳香族スルホン酸の縮合生成物、又は別のカルボニル基を含む化合物、例えば芳香族スルホン酸と尿素の縮合生成物等を有する合成なめし剤を用いて行うことができる。別の適当な皮革は、植物性のなめし剤で且つ/又は酵素を用いてなめされたような皮革である。上述したなめし剤のうちの2つ以上から成る混合剤を用いてなめされた皮革も適している。
【0027】
本発明の意味での皮革は更に、1つ又は複数の自体公知の作業ステップ、例えば疎水化、加脂、再なめし又は染色を終了していてよい。
【0028】
皮革は、例えば牛、豚、山羊、羊、魚、蛇、野生動物又は鳥から製造されていてよい。皮革は、0.2mm〜2mmの範囲の厚さを有していてよい。好適には銀面皮革である。皮革は、生皮傷がないものであってよいが、例えば有刺鉄線、動物間の争い、又は虫刺されに起因する生皮傷を有するような皮革でも適している。本発明の1つの実施形態において、皮革はスプリット若しくは床革である。更に皮革は、ベロア革若しくは床ベロアであってもよい。
【0029】
皮革の他に、本発明の意味での担体材料として、合成皮革が使用され得る。合成皮革の中には、本発明の枠内では、合成皮革の前段階も一緒に含まれており、この前段階では、最上層、即ち1つ又は複数の被覆層は欠如している。合成皮革は、本発明の枠内では、プラスチックでコーティングされた、好適には被覆層を有する又は有さない繊維シートであり、被覆層が存在している場合には、被覆層は皮革に類似した外見を有している。合成皮革の例は織布合成皮革、フリース合成皮革、ファイバ合成皮革、ホイル合成皮革、及び発泡合成皮革である。また、例えばフリース合成皮革等の2つの被覆層を有する製品も、合成皮革という概念に含まれる。特に好適な合成皮革は、例えばHarro Traeubel, New Materials Permeable to Water Vapor, Springer Verlag 1999に記載されているような、ポリウレタンをベースにした通気性の合成皮革である。更に好適なのは、気泡として、又は直接的なフォームバッキングにより、連続気泡型のポリウレタンフォームが繊維担体に被着される担体材料である。
【0030】
本発明の方法の1つの実施手段において、担体材料は、皮革、合成皮革、金属ホイル又はプラスチックホイル、繊維、又はセルロース含有材料から選択され得る。
【0031】
本発明の1つの好適な実施形態では、担体材料は、本発明による製造方法の開始時にリザーバから、例えば1つ又は複数のロール、即ち巻成品から、連続的に取り出されるような担体材料である。
【0032】
本発明に基づき製造された、特に多層に形成された複合体は、更に少なくとも1つの結合層を有している。この結合層は、穿孔された、即ち全面的には形成されない層であってよいか、又は全面的に被着される層であってよい。好適には、結合層は、硬化された有機接着剤の層である。結合層は、例えば熱の作用に基づき結合層に変わる材料によって形成される。
【0033】
結合層は、点状、帯状、又は格子状に、例えばひし形、長方形、正方形、又はハニカム構造の形で被着される層であってよい。この場合、少なくとも1つのポリウレタン層は、好適にはウェブ状に存在している担体材料と、結合層の間隙において接触することになる。
【0034】
結合層の可能な構成の変化態様において、結合層は、例えばポリビニルアセテート、ポリアクリレート、及び特にポリウレタン、好適には0℃未満のガラス転移点を有するポリウレタンをベースにした、硬化された有機接着剤である。有機接着剤の硬化は、例えば化学線放射又は時効処理により、熱的に行われていてよい。結合層の別の構成の可能性において、結合層は、接着ネットであってよい。少なくとも1つの結合層は、100μm、好適には50μm、特に好適には30μm、極めて特に好適には15μmの最大厚さを有している。
【0035】
結合層は、マイクロ中空球を有していてよい。マイクロ中空球は、本発明との関連において、ポリマー材料、特に例えばポリ塩化ビニル又はポリ塩化ビニリデン又は塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマー等のハロゲン化ポリマーから成る、5μm〜20μmの範囲の平均直径を有する球状の粒子を意味する。マイクロ中空球は、空であってよいか、又は好適には、沸点が室温よりも僅かに低い物質、例えばn‐ブタン及び特にイソブタンで満たされていてよい。1つの構成の可能性において、マイクロ中空球は、イソペンタンで満たされていてもよい。
【0036】
本発明により提案された解決手段では、少なくとも1つのポリウレタン層、特にウェブ形状で存在している担体材料は、同じ又は異なる組成を有する少なくとも2つの結合層を介して結合されていてよい。例えば、一方の結合層は顔料を含んでおり、且つ2つの結合層の他方は、顔料を含んでいなくてよい。1つの変化態様において、一方の結合層はマイクロ中空球を有していてよいのに対し、他方の結合層は有していなくてよい。
【0037】
以下に、本発明により提案された多層複合体の連続製造方法を詳しく説明する。
【0038】
本発明による方法を実施するためには先行して、マトリックスを用いて少なくとも1つのポリウレタン層を形成し、この少なくとも1つのポリウレタン層を、少なくとも1つの結合層に変わる材料を用いて、好適にはウェブ形状で存在する担体材料上に固定する。マトリックスは、80℃〜270℃の範囲内の温度を有しており、且つ100J/K・m〜20000J/K・mの範囲の熱容量を有する熱担体を有している。この場合好適には、結合層に変わる材料の固定及び/又は被着は連続的に行われる。
【0039】
少なくとも1つのポリウレタン層は、少なくとも1つのポリウレタンの少なくとも1つの配合物を用いて製造される。配合物としては、水性のエマルション、分散物又は溶液が好適であるが、十分に揮発性の有機溶剤中の溶液又は分散物も、配合物に適している。好適なのは、不燃性媒体中、特に水中の配合物である。
【0040】
マトリックスは、80℃〜170℃、好適には85℃〜130℃、及び特に好適には110℃までの範囲の温度を有している。この温度はそれぞれ、少なくとも1つのポリウレタン層の被着開始時の表面温度である。好適には、この表面温度は、少なくとも1つのポリウレタン層へのポリウレタンの硬化終了時でも、60℃を上回る範囲にある。マトリックスは、100J/K・m〜20000J/K・m、好適には500J/K・m〜15000J/K・mの範囲の熱容量を有している。この場合、平方メートルは、それぞれマトリックスの表面積に該当する。この場合、熱容量は、1平方メートルのマトリックス表面を1ケルビンだけ加熱するために必要とされる熱量である。
【0041】
1つの可能な構成の変化態様において、使用されるマトリックスは、付加的に熱担体を有している。1つ又は複数の熱担体は、マトリックスの十分に高い温度を維持するために適しており、これにより、少なくとも1つのポリウレタン層が製造される間に、水及び/又は有機溶剤が十分迅速に蒸発するようになっている。マトリックスが熱担体を有している実施形態では、熱容量の値は、本来のマトリックスと熱担体との組合せに関連付けられている。
【0042】
例えば、マトリックスにおいて使用される熱担体は、例えばベルトの形状、又は、1つ又は複数の、互いに結合されていてよいプレート又はバーの形状、又は格子の形状、又は鎖帷子に似たような、つなげられたリングの形態の、加熱される又は加熱可能な金属体であってよい。加熱される金属体は、例えば電流、110℃を上回る温度を有する水蒸気又は好適には高温蒸気、即ち300℃〜400℃の範囲の温度を有する水蒸気によって加熱され得る。このような加熱される金属体は、連続的に加熱され得るか、又は半連続的に加熱され得る、即ち、所定の最低温度を下回っている場合に加熱媒体が供給され、ある程度の最高温度を上回った後は、加熱媒体の供給は再び中断される。
【0043】
別の実施形態では、特に100J/K・m〜20000J/K・mの範囲の高い熱容量を有する金属体から成る熱担体、例えば金属プレートが使用される。このような金属プレートは、本発明により提案された方法の実施に適した生産装置の所定の箇所で加熱され、且つ別の箇所で少なくとも1つのポリウレタン層を製造するために使用される。
【0044】
更に別の実施形態では、熱担体は、マトリックスに組み込まれた金属である。例えば、金属ホイル、金属ネットの形式のフレキシブルな金属格子、更に金属バー、ハニカム又はメタルウールであり、好適なのは加熱可能な金属線材である。熱担体は、電気的に加熱される線材、又は例えば本来のマトリックスに組み込まれた複数の電気的に加熱される線材の組合せであってもよい。電気的に加熱される複数の線材の組合せは、例えば複数の渦巻線を有していてよい。
【0045】
更に別の構成の可能性において、マトリックスは、例えば0.5cm〜2cm、好適には1cmまでの範囲の特に大きな厚さを有するシリコーンマトリックスである。このように厚いマトリックス及びこのように厚いシリコーンマトリックスは、それ自体が特に大きな熱容量を有していて、当該実施形態ではそれ自体が熱担体である。
【0046】
マトリックスは、例えばシリコーンで被覆された材料、例えば金属、特に鋼又はアルミニウムであってよい。シリコーンマトリックスとして形成されたマトリックスの場合、これらのマトリックスは特に大きな厚さを有しており、この場合、当該マトリックス及び特に当該シリコーンマトリックスには、それ自体が大きな熱容量を有する少なくとも1つの材料、例えばグラファイト、油、ワックス、特にパラフィンワックス及び潜熱蓄熱材、特に例えば国際公開第2004/092299号から公知であるような、カプセルに封入されて形成された潜熱蓄熱材がドープされている。
【0047】
本発明により提案された方法の1つの好適な実施形態では、当該方法の実施中に連続的又は断続的にマイクロ波で加熱されるシリコーンマトリックスを用いる。このマトリックスは、ローラを介して、作業ステップが実施される複数の異なる機械構成部分を通過案内される、エンドレスベルトとして形成されていてよい。機械部分としては、例えばスプレーノズル、スプレーガン、カレンダ、半連続的に作動するプレス、特にローラプレス、フラットベッドラミネート機、更に光源、及び例えば炉又は通風機等の熱装置(赤外線ヒータ)や乾燥装置が挙げられる。
【0048】
更に別の構成の可能性において、マトリックスは、金属ローラ又は金属ドラムに被着されたマトリックスとして形成されていてよく、このことは、「シームレス」に、即ち、マトリックスの始端部と終端部との間に最小限のシームを備えて行われることから、マトリックスの全長が利用され得る。
【0049】
本発明により提案された方法において使用可能なマトリックスは、100J/K・m〜20000J/K・mの範囲の熱容量を備えた熱担体を有している。本発明による製造方法の1つの実施形態では先行して、少なくとも1つのポリウレタン層を形成するマトリックスを使用して、少なくとも1つの有機接着剤を全面的又は部分的に、特にウェブ形状で存在する担体材料及び/又は少なくとも1つのポリウレタン層に被着し、次いで少なくとも1つのポリウレタン層をウェブ状の担体材料に、点状、帯状、又は面状に結合させる。マトリックスに含まれる熱担体は、有機接着剤が少なくとも1つのポリウレタン層に被着される時間の間ずっと、マトリックスが十分に高い温度を有し且つこれを保持することを保証する。
【0050】
本発明により提案された方法の1つの有利な構成手段では先行して、まず最初に少なくとも1つのポリウレタンフィルムを準備し、少なくとも1つのウェブ状の担体材料又は少なくとも1つのポリウレタンフィルム又は両者の各片面に、部分的に、例えばパターン状に有機接着剤を付与し、例えば塗布又はスプレーし、次いで両者の面を互いに接触させる。その後更に、このようにして得られた複合体を相接するようにプレスするか、又は熱処理するか、又は加熱しながら相接するようにプレスすることができる。相接するようにプレスするためには、例えば反対方向に回転する、温度調整可能なロール若しくはローラを使用してよい。
【0051】
ポリウレタンフィルムは後で、本発明により製造される多層複合体の少なくとも1つのポリウレタン層を形成する。ポリウレタンフィルムは、次のように製造され得る。
【0052】
マトリックスに対する、好適には水性のポリウレタン分散物の被着は、自体公知の方法で、特に例えばスプレーガンを用いた連続的な吹付けによって行うことができる。マトリックスは平滑な表面を有していてよいが、好適にはマトリックスは構造化されている。マトリックスの構造化は、一般にレーザ彫刻又は成形により行われる。構造化は、例えば所定のパターンに相応していてよい。特に好適には、構造化は皮革の銀面パターンのネガ、又はヌバックのネガに相当する。他の特に好適な構造化は、木材の表面、例えばカーボンに見えるような技術的な表面に相応し、この場合、3D効果も一緒に含まれている。構造化には、本来の構造化に加えて、造形的なデザイン、署名、家紋、或いは1つ又は複数の会社ロゴも含まれていてよい。
【0053】
本発明により提案された方法の有利な実施手段において準備されるマトリックスは、エラストマ層、又は担体上にエラストマ層を有する層複合体を有しており、この場合、エラストマ層は、バインダ並びに場合によっては別の添加剤及び補助剤を有している。この場合、マトリックスの準備には、次の各ステップが含まれていてよい。
1)場合により添加剤及び/又は補助剤を含有する液状バインダを、パターン化された表面、例えば雄型又は原パターンに被着するステップ、
2)例えば熱的な硬化、放射線硬化、又は時効処理によりバインダを硬化させるステップ、
3)このようにして得られた構造化媒体を分離し、場合によっては担体、例えば金属プレート又は金属シリンダに被着するステップ、
4)場合により、このようにして得られた比較的小さなマトリックスを結合して、より大きなマトリックス、特にシリコーンベルトを形成するステップ。
【0054】
本発明により提案された方法の実施手段では、液状のシリコーンをパターンに供給し、シリコーンを時効処理し、延いては硬化させてシリコーンホイルを形成し、その後、シリコーンホイルを剥離させる。次いでシリコーンホイルを担体、例えば金属プレート、金属シリンダ又は金属ホイルに接着する。マトリックスは、レーザ彫刻可能な層、又はレーザ彫刻可能な層を含む層複合体を有しており、この場合、レーザ彫刻可能な層は、バインダ並びに場合によっては別の添加剤及び補助剤を有している。更に、レーザ彫刻可能な層は、好適にはエラストマである。
【0055】
好適にはエラストマであるレーザ彫刻可能な層、又は層複合体は、好適には担体上に存在していてよい。適当な担体の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、又はポリカーボネートから成る織布及びホイルが含まれ、好適なのはPETホイル又はPENホイルである。同様に、担体として適しているのは、例えばセルロースから成る紙及びメリヤスである。担体として、前記材料から成る円錐形又は円筒形の管(スリーブ)も使用され得る。スリーブとしては、ガラス繊維織布、又はガラス繊維とポリマー材料とから成る複合材料が適している。更に、適当な材料には、例えばアルミニウム、鋼、磁化可能なばね鋼又は別の鉄合金から成る、中実又は織布状で、面状又は円筒形の担体等の、金属の担体がある。
【0056】
本発明の1つの実施形態において、担体は、レーザ彫刻可能な層をより良好に付着させる為に、付着層によりコーティングされていてよい。本発明により提案された解決手段の別の実施形態では、付着層は不要である。
【0057】
本発明により提案された多層複合体の連続製造方法に従って、少なくとも1つのコーティングステーションと複数の加熱ステーションとを通走させることにより、マトリックスに少なくとも1つのポリウレタン層を形成する方法ステップの実施は、処理区間内で、ウェブ状の担体材料の搬送方向とは反対方向に行われる。転移セクションから取り出されたマトリックスは、その取出し位置から、マトリックスを再処理する処理区間に供給され、この処理区間から、ウェブ状の担体材料が処理される転移セクションの循環形式に従って、供給位置に再供給される。
【0058】
本発明により提案された方法の別の構成では、少なくとも1つのポリウレタン層を加工成形するマトリックスは、少なくとも1つのポリウレタン層を製造する方法ステップの実施中に、少なくとも1つのコーティングステーションと複数の加熱ステーションとを通走させられて、所定の取出し位置からその供給位置へ送り戻される。
【0059】
本発明により提案された解決手段に従って、ウェブ状の担体材料の搬送用の転移セクションと、マトリックス処理用の処理区間との間には、マトリックス用の自動化された供給手段も、自動化されたマトリックス搬出手段も存在しており、これにより、従来は手動で行われる作業ステップを省くことができると共に、本発明により提案された方法の処理時間が大幅に増やされることになる。
【0060】
本発明により提案された解決手段に従って、マトリックスは取出し位置において転移セクションから取り出された後、まだ転移セクションから処理区間への搬出中に裏返されて、上側にアプローチ可能な、特に構造化された側で以て処理区間に到達し、転移区間から取り出されたマトリックスをすぐに、マトリックス用の処理区間内で行われる再処理プロセスに送り込むことができるようになっている。
【0061】
本発明により提案された解決手段の別の構成では、ウェブ状の担体材料は、巻成品として、巻取りステーションに向かう搬送方向に運ばれると同時に、巻成品としてローラコアから連続的に繰り出される。ウェブ状の担体材料を使用する場合には、スプレー接着剤を付与される担体材料か、網状接着剤を付与される担体材料か、又は既に熱活性化可能な接着剤でコーティングされたウェブ状の担体材料を使用することができる。
【0062】
処理区間内で、転移セクション内でのウェブ状の担体材料の搬送方向とは反対方向に処理されるマトリックスは、少なくとも1つの自動化可能なハンドリング装置、例えばハンドリングロボットにより、マトリックスの構造化側で以て、所定の供給位置で搬送方向に運ばれるウェブ状の担体材料に載せられる。このことは、自動化されたハンドリング装置が、「できたての」マトリックスを供給するために、搬送方向においてウェブ状の担体材料と同じ速度で一緒に移動することにより、達成され得る。
【0063】
本発明により提案された多層複合体の連続製造方法では、加熱可能なプレス装置を通過する際に、マトリックスとウェブ状の材料部分とから成る複合体内で、マトリックスに含まれる少なくとも1つのポリウレタン層が、マトリックスの構造化側により被覆されたウェブ状材料部分に転移させられる。搬送方向におけるウェブ状の担体材料の搬送速度に応じて、またマトリックスから処理されるべき担体材料の上面に対する、少なくとも1つのポリウレタン層の完全な転移を保証する目下の温度レベルに応じて、加熱可能なプレス装置の長さが選択される。
【0064】
本発明により提案された方法に従って、少なくとも1つのポリウレタン層がウェブ状の担体材料に転移させられるプレス装置を通過した後、ウェブ状の担体材料とマトリックスとから成る複合体は、冷却装置を通過する。冷却装置では、マトリックスの冷却と、今や少なくとも1つのポリウレタン層でコーティングされているウェブ状の担体材料の冷却の両方が行われる。冷却装置を通過した後、処理の完了したウェブ状の担体材料は、巻取りステーションで巻き取られて巻成品となり、自動化可能なハンドリング装置、例えば運転者がいない搬送システム、フォークリフト等により、従来の方法において使用されていた、予め製造された担体材料の予め製造された損傷し易い部分とは異なり、簡単に取り扱うことができるようになっている。
【0065】
ウェブ状の担体材料からのマトリックスの取出しは、冷却装置の下流側で行われ、マトリックスは改めて、コーティング用の処理区間内の再処理部に供給され得る。特に、取出し位置においてウェブ状の担体材料から取り出されたマトリックスは、転移セクションから搬出されて処理区間へ供給される間に裏返され、これによりマトリックスは、自由にアプローチ可能な構造化側で以て処理区間に到達する。原則として、各マトリックスが異なるデザイン、即ち異なって構造化された表面を有している可能性がある。
【0066】
本発明は更に、前記多層複合体の製造方法を実施するための生産装置にも関する。本発明により提案された生産装置は、少なくとも以下のコンポーネントを有している:
‐加熱可能なプレス装置によりウェブ状の担体材料を処理するための転移セクション、
‐ウェブ状の担体材料に作用するマトリックスの取出し位置
‐自動化されたマトリックス搬出手段、及びマトリックス再処理用の処理区間にマトリックスを供給する供給手段、
‐処理区間におけるマトリックス再処理手段、及び
‐転移セクションへマトリックスを供給する自動化された供給手段、及び搬送方向に連続的に運ばれるウェブ状の担体材料にマトリックスを供給する供給手段。
【0067】
本発明により提案された生産装置により、多層複合体を、連続的に進行する、停止時間を一切有さない製造プロセスで生産する可能性が提供される。本発明により提案されたような生産装置は、大幅に効率的な、よってより迅速な、ウェブ状の担体材料の製造を可能にし、ウェブ状の担体材料は巻成品として供給され、且つ処理完了後に巻成品として引き続き処理され得るようになっている。本発明により提案された生産装置は、ウェブ状材料の5.12m/minの製造を可能にし、この場合、この生産量はまだ、プレス装置における待ち時間に基づき変化する可能性がある。担体材料がウェブ形状で巻成品として存在しているという状況に基づき、担体材料を予め製造すること、並びに予め製造することに伴うコストが不要になる。巻き取られたウェブ状の材料は、予め製造された担体材料ピースよりも大幅に簡単且つ確実に取り扱うことができる。更に、従来は個別に且つ不連続にコーティングされていた、予め製造された担体材料部分に、マトリックスを載せるための人員は全く必要とされない。更に、担体材料におけるマトリックスを取り外す(取り出す)ための人員を確保する必要もない。処理の完了したウェブ状の担体材料は、完成後に再び巻き取られるので、ウェブ状の担体材料から得られる巻成品は、一般に手で取り扱われ、高い損傷リスクに晒される予め製造された担体材料部分に比べると、大幅に簡単に取り扱うことができる。
【0068】
本発明により提案された生産装置は、好適には加熱可能に設計されたプレス装置を有しており、このプレス装置は、ローラプレス又はフラットベッドラミネート機として形成されていてよい。好適には加熱可能に形成された、ウェブ状材料の搬送方向において転移セクションに組み込まれたプレス装置は、温度調整可能な複数のローラを有していてよく、これらのローラは、加熱可能なプレス装置を通るウェブ状材料の搬送路の上側若しくは下側を確定している。プレス装置の間を、ウェブ状の担体材料と、その上に位置する、少なくとも1つの転移可能なポリウレタン層を有するマトリックスとから成る複合体が通走し、その結果、プレス装置内の目下の圧力と、プレス装置内の目下の温度とに基づいて、マトリックスにおいて準備された、マトリックスに付着している少なくとも1つのポリウレタン層及びポリウレタン層複合体が、前記圧力及び熱に基づき、処理されるべきウェブ状材料の上面に転移させられることになる。
【0069】
先に相応の処理区間内で準備されるマトリックスの、転移セクションへの供給は、例えばロボットアーム又は別の自動化されたハンドリングシステムとして提供されていてよい、自動化可能なハンドリング装置によって行われる。生産装置は更に、加熱可能なプレス装置の下流側に接続された冷却装置を有しており、この冷却装置内で、マトリックスとウェブ状材料とから形成された複合体が冷却され、この場合、冷却装置には、マトリックス用の取出し位置が続いている。前記取出し位置において、マトリックスはやはり、例えばハンドリングロボット等の自動化可能なハンドリング装置により、処理されたウェブ状材料の上面から取り出され、搬出中に裏返され、裏返された状態で、即ち、マトリックスの構造化側が上向きになるようにして、マトリックス再処理用の処理区間に供給される。
【0070】
ウェブ状の担体材料は、処理区間において再処理されるべきマトリックスの搬送方向とは逆の方向に、転移セクションを通走する。ウェブ状材料用の転移セクションと、マトリックス再処理用の処理区間とは、互いに隣り合って配置されており、例えば互いに平行に配置されていて、マトリックス供給用と搬出用の前記両ハンドリングシステムにより、互いに接続されているので、本発明により提案された、多層複合体を製造するための生産装置では、マトリックスに関して1つの回路が実現されている。
【0071】
本発明により提案された生産装置、特に転移セクションの改良において、転移セクションは、ウェブ状材料用の繰出しステーション、並びに接着剤材料用の供給ステーションに対応配置されていてよい巻取りステーションを有している。生産装置において、特に生産装置の転移セクションにおいて、ウェブ状の担体材料を加工することができ、ウェブ状の担体材料は、スプレー接着剤が付与される担体材料により与えられているか、又は網状接着剤が付与される担体材料により与えられているか、又は既に熱活性化可能な接着剤でコーティングされた担体材料として形成されている。接着材料が付与されないウェブ状材料をコーティングするためには、転移セクションの繰出しステーションに、接着材料用の吹付けステーションと、下流側に接続されたドライヤユニットとが対応配置されていてよい。
【0072】
本発明により提案された生産装置の1つの有利な構成では、処理の完了したウェブ状の担体材料の巻取りステーションに、中間層用の供給手段が対応配置されていてよい。ウェブ状の担体材料の処理したての上面を、ローラコアに巻き取る際に互いに隔てる中間層は、特に、巻き取られた状態においてロール重量の増大に基づき傷付く恐れがある、敏感なソフトタッチ構造体の場合に必要となることがあり、巻き取られた個々の層を互いに緩衝し、延いては損傷しないように防護する。
【0073】
本発明により提案された生産装置の転移セクションには、好適には冷却装置の下流側に配置されたマトリックス用の取出し位置、並びにローラプレス、フラットベッドラミネート機である加熱可能なプレス装置の上流側に接続された、再処理されるマトリックス用の供給ステーションが含まれる。
【0074】
以下に、本発明を図面につき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】手動で実施されるべき作業ステップを伴う従来技術による、多層複合体用の製造方法を示す図である。
図2】転移セクション上をウェブ状材料が所定の搬送方向に搬送され、且つ該搬送方向に対して平行に配置された処理区間では、マトリックスの再処理が反対方向に行われる、本発明に基づき提案された生産装置の概略図である。
【0076】
図1に示す図面から概略的に看取される多層複合体用の製造プロセスでは、未だ多数の手動で行われるべき介入が必要とされている。
【0077】
図1に示す循環部10上を、第1の循環セクション12内ではマトリックス15が搬送方向18に搬送され、第2の循環セクション14では、マトリックス15と担体材料40とを含む複合体が‐やはり搬送方向18に‐搬送される。
【0078】
図1では、マトリックス15が供給部16において第1の循環セクション12に供給される。このマトリックス15はシリコーンマトリックス等であり、1.2m×1.2m〜1.6m×1.6mの外寸を有していてよい。前記マトリックス15には、少なくとも1つのポリウレタン層が形成される。処理開始時に、マトリックス15用の第1の循環セクション12では、開始点22において第1の処理ステップとして、第1の加熱ステーション24内でマトリックス15の処理が行われる。第1の加熱ステーション24は、1つ又は複数の赤外線ヒータ並びに複数の加熱ゾーンを有していてよい。マトリックス15を加熱するために、別の熱源が第1の加熱ステーション24に取り付けられていてもよい。第1の加熱ステーション24を通過した後、加熱されて予熱されたマトリックス15は、第1のコーティングステーション26に進入する。この第1のコーティングステーション26では、ポリウレタンミスト又はポリウレタン層が、予熱されたマトリックス15に被着される。マトリックス15の高温の表面78にポリウレタンミストがぶつかると、水滴の急激な蒸発により、マトリックス15の表面78の構造体が生じる。マトリックス15が第1のコーティングステーション26を出ると直ちに、第1のコーティングステーション26内で処理されたマトリックス15は、中間乾燥部28に供給される。中間乾燥部28もやはり、1つ又は複数の赤外線ヒータ並びに複数の加熱ゾーンを有していてよく、これにより、第1のコーティングステーション26内で例えば被着されたポリウレタン層を乾燥することができるようになっている。更に、中間乾燥部28の枠内で、赤外線ヒータ以外に別の熱源も使用する可能性がある。中間乾燥部28を通過した後、マトリックス15は別の第2のコーティングステーション30に進入する。ここでマトリックス15は、別のポリウレタン層で改めてコーティングされる。第2のコーティングステーション30には別の中間乾燥部32が続いている。別の中間乾燥部32の後、処理の完了したマトリックス15は、循環部10の第1の循環セクション12を搬送方向18に出て、第2の循環セクション14に供給される。
【0079】
第1の循環セクション12を出た、処理の完了したマトリックス15は、接合部34に供給される。接合部34では、搬送方向18に見て第1の循環セクション12を後にした、処理の完了したマトリックス15と、担体材料40とから成る複合体が生じる。
【0080】
担体材料供給部36では作業員52により、各マトリックス15の寸法に対応する個別の寸法で予め製造された担体材料40が供給ステーション38に供給され、供給ステーション38では、例えば熱作用により活性化される接着剤が担体材料40に被着される。供給ステーション38で接着剤を被着された後、接着剤層38を有する担体材料40は、ドライヤに供給される。ドライヤ41では、接着剤の予乾燥が行われる。担体材料40は搬送方向42に送られ、別の作業員52により、第1の循環セクション12を出た、処理の完了したマトリックス15に被着される。よって、接合部34では、予乾燥された接着剤層38を有する担体材料40に、少なくとも1つのポリウレタン層を有する、処理の完了したマトリックス15が手動で載せられる。
【0081】
担体材料40とマトリックス15とから成る複合体は、搬送方向18でプレスステーション44に供給される。プレスステーション44は、例えば液圧プレスである。プレスステーション44は、それぞれ1つのマトリックス15と1つの担体材料部分40とを含む、最高でも2つの複合体しか処理することができないので、第2の循環セクション14内での搬送速度を制限するコンポーネントとなっている。マトリックス15に形成された少なくとも1つのポリウレタン層を、接着剤層38によって前処理された担体材料40に転移させるための保圧時間は、少なくとも30秒である。
【0082】
この時間が経過した後、担体材料40とマトリックス15とから成る複合体は、冷却セクション46に供給される。冷却セクション46の通過後に、マトリックス15と担体材料40とから成る複合体用の第2の循環セクション14の終点48に到達する。第2の循環セクション14の終点48では、複合体、即ちマトリックス15及び処理の完了した担体材料40の、循環部10からの手動取出し50が行われる。この取出しも、やはり作業員52によって行われる。第2の循環セクション14の終点48における手動取出し50の枠内で、一方では先に使用されたマトリックス15が取り出され、且つ他方では、処理の完了した担体材料40の手動取出し50が行われる。次いで処理の完了した担体材料40は、単一材料部材として後処理部、後搬送部、又は中間貯蔵部に供給される。作業員52により、1.20m×1.20m〜1.60m×1.60mのオーダの、比較的大型で薄くフレキシブルな面状部材が取り扱われるので、担体材料40の、コーティングの完了した目視側が損傷される恐れがあるという、かなりのリスクが生じる。更に、終点48での手動取出し50の枠内で、マトリックス15も取り出される。マトリックス15は、再利用及び再使用検査後に、又は別の方法での再処理後に、マトリックス15用の第1の循環セクション12の開始点22に再び供給されてよい。択一的には、これらのマトリックス15は、ここで別の設計、即ち別様に構造化された表面78を有するマトリックス15に取り換えられて、開始点22に供給されてよい。
【0083】
図2に基づき、本発明により提案された多層複合体の連続製造方法並びに該方法に適した生産装置10を略示して詳細に説明する。
【0084】
図2には、本発明による多層複合体の連続製造方法を実施するための、本発明により提案された生産装置の転移セクション60から、取出し位置96においてマトリックス15が取り出されることが示されている。マトリックスは、本発明による方法に従い好適には自動化された、例えばロボット又はロボットアーム等のハンドリング装置を介して行われる搬出98の枠内で、第1の循環セクション12のマトリックス15用の供給部16に供給される。第1の循環セクション12の枠内で、供給部16に供給されたマトリックス15は、マトリックス15の処理されるべき構造化側78にマトリックス15の上側からアプローチ可能であるように位置決めされる。マトリックス15は、第1の加熱ステーション24に供給され、第1の加熱ステーション24内で、供給されたマトリックス15は例えば赤外線ヒータ等の熱源を介して加熱される。第1の加熱ステーション24内での加熱は、マトリックスの両側から行うことができる、即ち、熱源は構造化側78と、非構造化側80にも配置されていてよい。第1の加熱ステーション24の通過後、加熱されたマトリックス15は、第1のコーティングステーション26に供給される。第1のコーティングステーション26では、図1に示した図面に関して既に説明したのと同様に、マトリックス15に少なくとも1つのポリウレタン層が被着される。第1のコーティングステーション26の通過後、前処理されたマトリックスは、これらのマトリックス15が中間乾燥部28に到達するまで、第1の循環セクション12に設けられたコンベヤベルト106により搬送方向18に送られる。中間乾燥部28では、第1のコーティングステーション26においてコーティングされたマトリックス15の乾燥が行われる。中間乾燥部28の後で、マトリックスは第2のコーティングステーション30に供給される。ここでは、マトリックス15が別のポリウレタン層により改めてコーティングされ、次いでマトリックス15は、搬送方向18で中間乾燥部32へ送られる。中間乾燥部32を出ると、循環セクション12は終了する。
【0085】
第1の循環セクション12の終端部に存在するマトリックス15は、非構造化側80、即ち下面を有していて、構造化側78、即ちマトリックス15の、自由にアプローチ可能な上面側の処理は完了している、即ち、単層又は多層のポリウレタン層から成る層構造を備えている。処理が完了したマトリックス15は、第1の循環セクション12から、図2では例えば自動化されたハンドリングシステム、例えばロボットアーム等、のようなハンドリングシステムにより取り出され、生産装置の転移セクション60の供給位置74に供給される。
【0086】
図2から看取可能であるように、ウェブ状の担体材料64が、繰出しステーション62において転移セクション60に供給される。転移セクション60に対するウェブ状の担体材料64の供給は、一貫したプロセスとして連続的に行われる。ウェブ状の担体材料64は、例えば既にスプレー接着剤を付与された担体材料64であるか、又は、供給ステーション68において網状接着剤を備えて供給ステーション68に供給されるウェブ状の担体材料64であってよい。ウェブ状の担体材料は、既に熱により活性化可能な接着剤を付与されているような担体材料、即ち、最早接着剤若しくは接着剤層は付与しなくてよいウェブ状の担体材料66であってもよい。ウェブ状の担体材料64,66は、繰出しステーションからコーティングステーション70へ進行し、場合によってはコーティングステーション70(スプレー室)において、液体接着剤、ホットメルト又は粉末接着剤が、場合によりウェブ状の担体材料64の目視側に被着される。このように前処理されたウェブ状の担体材料64,66は、転移セクション60のコーティングステーション70を通走した後、転移セクション60を搬送方向84に通走して、ドライヤ72に進入する。ドライヤ72においてウェブ状の担体材料64,66は加熱され、これにより場合によってはコーティングステーション70において被着された接着剤が予乾燥されるか、又はウェブ状の担体材料66上の熱活性化可能な接着剤が活性化され、次いでウェブ状の担体材料64,66は、供給位置74に到達する。
【0087】
供給位置74においてウェブ状の担体材料64,66には、自動化されたハンドリングシステムを介して、処理が完了して第1の循環セクション12から取り出されたマトリックス15が供給される。処理の完了したマトリックス15は、供給位置74において、その構造化側78がウェブ状の担体材料64にあてがわれるように、ウェブ状の担体材料64の目視側に被着される。ウェブ状の担体材料64,66を搬送方向84に連続的に搬送することに基づき、マトリックス15の構造化側78と、ウェブ状の担体材料64,66の目視側との間の相対運動を回避するためには、場合により、ウェブ状の担体材料64,66の目視側に被着されるべきマトリックスが、ウェブ状の担体材料64,66の搬送速度に相応して、ウェブ状の担体材料64,66と一緒に移動させられ、これにより、ウェブ状の担体材料64,66に対するマトリックス15の、相対速度の生じない被着が行われる。マトリックス15の構造化側78と、ウェブ状の担体材料64,66の目視側との間の相対運動を回避するためには、支持している搬送ベルト75が、ウェブ状の担体材料64,66と同時に運転されてよい。循環の最小化のために、マトリックス15は、例えばセンサ制御されて、先行する各マトリックス15に対して極めて小さな間隔を開けて載置される。
【0088】
次いで、ウェブ状の担体材料64,66の一部と、その目視側に載置されたマトリックス15の構造化側78とから成る複合体が、供給位置74から、加熱可能なプレス装置82に供給される。加熱可能なプレス装置82は、例えばローラプレス又はフラットプレス又はフラットベッドラミネート機であってもよい。図2に略示したように、加熱可能なプレス装置82は、第1のローラユニット86と、第2のローラユニット88とを有している。両ローラユニット86,88間を、マトリックス15と、ウェブ状の担体材料64,66とから成る複合体が搬送方向84に搬送され、これにより複合体は、ローラユニット86,88の温度調整可能なローラによって、上側と下側とから温度調整され得る。マトリックス15とウェブ状の担体材料64,66とから成る複合体の温度調整時に、マトリックス15に形成された少なくとも1つのポリウレタン層が、ウェブ状の担体材料64,66の目視側に転移して、ウェブ状の担体材料64,66上に、マトリックスのレーザ彫刻に相応する、ウェブ状の担体材料64,66の目視側の所定のエンボス加工部、構造化部を形成する。
【0089】
加熱可能なプレス装置82の通過に際してマトリックス15からウェブ状の担体材料64,66へ、少なくとも1つのポリウレタン層を転移させた後、ウェブ状の担体材料64,66とマトリックス15とから成る複合体は、ウェブ状の担体材料64,66の搬送方向84に延在する冷却装置90に進入する。冷却装置90は、上部92、下部94、並びに図2に略示した多数の冷却可能なローラを有していてよく、これらのローラを介して、マトリックス15とウェブ状の担体材料64,66とから成る複合体から、加熱可能なプレス装置82で供給された熱を再び取り除くことができる。冷却装置90において、その上部92若しくはその下部94には冷却ファンが設けられていてよく、この冷却ファンにより、マトリックス15とウェブ状の担体材料64,66とから成る複合体が冷却され得る。これにより、加熱可能なプレス装置82において110〜130℃の温度にそれぞれ加熱された、マトリックス15とウェブ状の担体材料64,66とから成る複合体は、再び50℃未満の温度に冷却される。
【0090】
冷却装置90の通過後に、マトリックス取外し位置96において、マトリックスはその構造化された下面78と共に、ウェブ状の担体材料64,66の目視側から取り外される。今、ウェブ状の担体材料64,66の目視側は、マトリックス15を通じて移され、ウェブ上の担体材料64,66の目視側に移行させられた、少なくとも1つの、好適には複数のポリウレタン層から成る複合体を有している。
【0091】
取出し位置96において転移セクション60から取り出されたマトリックス15は、搬出98の枠内で、例えばロボットアーム等の自動化されたハンドリング装置を介して第1の循環セクション12の供給部16に、マトリックス15を再処理するために供給される。取出し位置96から供給部16へのマトリックス15の搬出98中に、マトリックス15は裏返され、これによりマトリックス15は第1の処理セクション12の供給部16において、その構造化側78が上を向いているので、第1の循環セクション12の枠内ですぐに再処理部に再供給され得る。構造化されていない下面80は、好適には第1の循環セクション12並びにマトリックス15の再処理部のコンベヤベルト106上に載置されているので、マトリックス15は第1の循環セクション12を通って連続的に搬送され得る。
【0092】
搬出98及びマトリックス反転102の枠内で、自動化されたハンドリング装置により取出し位置96においてマトリックス15を取り外された後、処理の完了したウェブ状の担体材料64,66は、本発明により提案された生産装置の転移セクション60の一部である巻取りステーション100において巻き取られる。ウェブ状の担体材料64,66を、マトリックス15を通じて移された複合体を含めて、引取りローラ95により下方に分離させることによってマトリックス15が剥離され、これにより、ハンドリング装置98によりマトリックスが反転102させられて、マトリックス15用の供給部に再供給され得るようになっている。今、ウェブ状で処理の完了した担体材料64,66は、取り扱いやすい巻成品として巻取りステーション100にある。好適には、ウェブ状の担体材料64,66の目視側では、互いに処理の完了した各断面が、互いに突き合わされて配置されているか、又は数ミリメートルの小さな循環部を形成するように連続して配置されている。例えばベルベット状のソフトタッチ仕上げ等の、特に損傷を受けやすい材料の場合には、巻取りステーション100での巻取り過程中に中間層97を入れることによって、ウェブ状の担体材料64,66の、処理の完了した目視側の損傷を防ぐことができる。
【0093】
【表1】
【符号の説明】
【0094】
10 マトリックス/担体材料複合体循環部
12 処理区間 マトリックス
14 処理区間 複合体
15 マトリックス
16 マトリックスの供給部
18 マトリックスの搬送方向
20 加熱フィールド 第1の加熱ステーション
22 開始点
24 第1の加熱ステーション(赤外線)
26 第1のコーティングステーション
28 中間乾燥部(赤外線)
30 第2のコーティングステーション
32 別の中間乾燥部(赤外線)
34 接合部 マトリックス/担体材料から成る複合体
36 担体材料供給部
38 供給ステーション 接着剤
40 ウェブ状の担体材料
41 ウェブ状の担体材料用ドライヤ
42 搬送方向 ウェブ状の担体材料
44 プレスステーション(液圧)
46 冷却セクション
48 複合体の循環の終点
50 複合体の手動取出し
52 作業員
60 転移セクション
62 繰出しステーション ウェブ状の担体材料
64 ウェブ状の担体材料
66 熱活性化可能な接着剤を有するウェブ状の担体材料
68 供給部 網状接着剤/スプレー接着剤
70 コーティングステーション
72 ドライヤ
74 マトリックスの供給位置
75 駆動装置 搬送ベルト
76 マトリックスの供給/自動化されたハンドリング装置
78 マトリックスの構造化側
80 マトリックスの非構造化側
82 加熱可能なプレス装置(ローラプレス、フラットプレス、フラットベッドラミネート装置)
84 搬送方向 ウェブ状の材料
86 第1の温度調整可能なローラユニット
88 第2の温度調整可能なローラユニット
90 冷却装置
92 上部
94 下部
95 ウェブ状の担体材料64,66用の引取りローラ
96 マトリックス取外し位置
97 中間層用の繰出しステーション
98 自動化されたハンドリング装置によるマトリックス搬出
100 巻取りステーション ウェブ状の担体材料(巻成品)
102 マトリックス反転(180°反転)
104 搬送方向 マトリックス
106 コンベヤベルト
図1
図2