(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677231
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】電子部品の接合方法および接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 7/00 20060101AFI20200330BHJP
B22F 1/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
B22F7/00 Z
B22F1/00 K
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-182141(P2017-182141)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2019-56158(P2019-56158A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2018年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】国宗 哲平
【審査官】
菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−053377(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/043540(WO,A1)
【文献】
国際公開第2017/043541(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/070262(WO,A1)
【文献】
特開2011−249257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00
B22F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀粒子を含有する銀ペーストを用いた電子部品の接合方法であって、
銀粒子を含有する銀ペーストを基体の表面に塗布し、塗布された前記銀ペーストの上に電子部品を配置することと、
還元雰囲気中で300℃未満の温度で加熱を行うことと、
還元雰囲気中で加熱をした後に、酸化雰囲気中で300℃以下の温度で加熱を行うことと
を含む、接合方法。
【請求項2】
還元雰囲気中で加熱を行うときの温度が、酸化雰囲気中で加熱を行うときの温度以下である、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記還元雰囲気がギ酸又は水素を含む、請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記還元雰囲気が、0.5〜20体積%のギ酸を含む窒素雰囲気である、請求項3に記載の接合方法。
【請求項5】
前記銀粒子がフレーク状である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項6】
前記銀粒子は、平均粒径が0.5μm以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記銀粒子は、粒径が0.3μm未満の銀粒子の含有量が5質量%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項8】
前記銀粒子は、粒径が0.5μm以下の銀粒子の含有量が15質量%以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項9】
前記銀ペーストが、分散媒として有機溶剤を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項10】
前記有機溶剤の沸点が150〜250℃の範囲である、請求項9に記載の接合方法。
【請求項11】
還元雰囲気中で加熱を行う前に、前記有機溶剤を揮発させることを含む、請求項9または10に記載の接合方法。
【請求項12】
前記酸化雰囲気が酸素含有雰囲気である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項13】
前記酸素含有雰囲気が大気雰囲気である、請求項12に記載の接合方法。
【請求項14】
前記接合方法で形成される接合体の抵抗率が6μΩ・cm以下である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項15】
前記銀ペーストにおける前記銀粒子の含有量が70質量%以上である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項16】
基体上に銀粒子を含有する銀ペーストを塗布することと、
前記銀ペースト上に電子部品を載置することと、
前記銀ペーストを還元雰囲気中で300℃未満の温度で加熱を行うことと、
還元雰囲気中で加熱をした後に、酸化雰囲気中で300℃以下の温度で加熱を行って接合体を形成することと
を含む、接合体の製造方法。
【請求項17】
前記還元雰囲気がギ酸又は水素を含む、請求項16に記載の接合体の製造方法。
【請求項18】
前記銀ペーストが、分散媒として有機溶剤を更に含む、請求項16または17に記載の接合体の製造方法。
【請求項19】
還元雰囲気中で加熱を行う前に、前記有機溶剤を揮発させることを含む、請求項18に記載の接合体の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の接合方法によって接合体を形成する、接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電子部品の接合方法および接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子を光源とする発光装置やパワー半導体装置において、発光素子やパワー半導体素子等を実装部材の上に配置する際に、接合材料として、金属粉を分散媒に分散した導電性ペーストを用いることが知られている。このような導電性ペーストにおいて用いられる金属粉として、金、銀、銅またはニッケル等の粉末が挙げられるが、なかでも銀は比較的廉価であり、かつ最も熱伝導性が高く、また他の金属と比較して低温で焼結するという特徴を備える。
【0003】
特許文献1には、焼結によって焼結体を製造するのに使用される金属粉末であって、この金属粉末は、銀または銀合金のいずれかを主成分とし、延性向上成分として、ハロゲン元素またはハロゲン化物の少なくともいずれか一方を含み、金属粉末におけるハロゲン元素含有率が5〜2000ppmの範囲内であること、及び金属粉末の50%径が0.5〜20μmかつ球形度0.5以上であることを特徴とする金属粉末が開示されている。また、特許文献1には、この金属粉末は600℃前後の温度で焼結が進行することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−167491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属粉と溶剤とを含む導電性ペーストを接合材料として用いる方法は、導電性ペーストが樹脂を含まないことから、樹脂を含む導電性接着剤を接合材料として用いる方法とは異なり、樹脂の劣化が発生しない。そのため、耐熱性や放熱性に優れた発光装置を得ることができるという利点を有する。しかし、このような導電性ペーストは、樹脂を含む導電性接着剤と比較して、接合温度が高い傾向にある。金属粉と溶剤とを含む導電性ペーストは、このように接合温度が比較的高いことに起因して、焼結および/または接合後の冷却時に生じる熱応力が高くなることがあり、この熱応力によりクラック等が発生しやすくなる。また、上述の導電性ペーストは接合温度が比較的高いことから、この導電性ペーストを、耐熱性の低い熱可塑性樹脂等を含む半導体発光装置の接合に用いた場合、熱可塑性樹脂等の反射率が低下し、半導体発光装置の特性が低下してしまう恐れがある。
【0006】
本実施形態は、比較的低い温度で銀ペーストによる接合を行うことができる、電子部品の接合方法および接合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の第1の要旨によれば、銀粒子を含有する銀ペーストを用いた電子部品の接合方法であって、銀粒子を含有する銀ペーストを基体の表面に塗布し、塗布された銀ペーストの上に電子部品を配置することと、還元雰囲気中で300℃未満の温度で加熱を行うことと、還元雰囲気中で加熱をした後に、酸化雰囲気中で300℃以下の温度で加熱を行うこととを含む、接合方法が提供される。
【0008】
本実施形態の第2の要旨によれば、基体上に銀粒子を含有する銀ペーストを塗布することと、銀ペースト上に電子部品を載置することと、銀ペーストを還元雰囲気中で300℃未満の温度で加熱を行うことと、還元雰囲気中で加熱をした後に、酸化雰囲気中で300℃以下の温度で加熱を行って接合体を形成することとを含む、接合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態は、比較的低い温度で銀ペーストによる接合を行うことができる、電子部品の接合方法および接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、比較例2で得られた焼結膜の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一の実施形態について詳述する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための接合方法および製造方法を例示するものであり、本発明は、以下に説明する接合方法および製造方法に限定されるものではない。
【0012】
[電子部品の接合方法]
本実施形態に係る電子部品の接合方法は、銀粒子を含有する銀ペーストを基体の表面に塗布し、塗布された銀ペーストの上に電子部品を配置することと、還元雰囲気中で300℃未満の温度で加熱を行うことと、還元雰囲気中で加熱をした後に、酸化雰囲気中で300℃以下の温度で加熱を行うこととを含む。
【0013】
(銀ペーストの塗布および電子部品の配置)
まず、銀ペーストを基体の表面に塗布する。銀ペーストの塗布方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビア印刷法、スタンピング、ディスペンス、スキ−ジ印刷、シルクスクリ−ン印刷、噴霧、刷毛塗り、コーティング法等の公知の方法を適宜採用することができる。銀ペーストの塗布厚みは用途等に応じて適宜設定することができ、例えば1μm〜500μm、好ましくは5μm〜200μm、より好ましくは10μm〜100μmとすることができる。
【0014】
(銀ペースト)
銀ペーストは、銀粒子を含有する。銀ペーストは、銀粒子を主成分として含有することが好ましい。銀ペーストは、銀粒子からなるものであってもよい。銀ペーストにおける銀粒子の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上であることが好ましい。銀粒子の含有量を70質量%以上とすることにより、加熱後のボイドを低減することができる。
【0015】
銀粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、略球状であってよく、フレーク状であってもよい。なお、本明細書において、銀粒子が「略球状である」とは、銀粒子の長径aと短径bとの比で定義されるアスペクト比(a/b)が2以下であることを意味し、銀粒子が「フレーク状である」とは、アスペクト比が2より大きいことを意味する。銀粒子の長径aおよび短径bは、SEMによる画像解析により測定することができる。
【0016】
銀粒子は、平均粒径が好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1μm以上であり、さらに好ましくは2μm以上ある。銀粒子は、平均粒径が好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。平均粒径が0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であると、キャッピング剤のような保護膜を銀粒子表面に形成しなくても銀粒子が凝集しないため、保護膜を熱分解する必要がなくなり、低温で焼結することができる。また、保護膜の熱分解に起因する空隙が発生しないため、焼結体(接合体)の電気抵抗を下げることもできる。さらには銀粒子の粒径が大きいことにより、銀ペーストの流動性が向上する。このため、同じ流動性(作業性)を有する場合に銀ペーストがより多くの銀粒子を含むことが可能になり、それによって焼結体(接合体)中の空隙が減少し、その結果、さらに電気抵抗を下げることができる。平均粒径が10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であると、銀粒子の比表面積が大きくなることによって融点降下現象が発生し、その結果、焼結温度を低くすることができる。銀粒子の粒径は、レーザー回折法により測定することができる。本明細書において、「平均粒径」は、レーザー回折法により測定した体積基準のメジアン径(粒度分布から求めた積算体積頻度が50%の値)を意味する。
【0017】
銀粒子は、好ましくは、粒径が0.3μm未満の銀粒子の含有量が5質量%以下であり、より好ましくは、粒径が0.5μm以下の銀粒子の含有量が15質量%以下である。銀粒子は、粒径が小さくなるにしたがってより低い温度で焼結する傾向にある。特に、ナノサイズの銀粒子は、マイクロサイズの銀粒子よりも低温で焼結する。このため、銀ペースト中のナノサイズの銀粒子の含有量が多いと、低温で焼結が開始してしまい、銀粒子同士が十分に接触していない状態で融着が生じるおそれがあり、その結果、多孔質な接合体が形成される場合がある。粒径0.3μm未満の銀粒子の含有量が5質量%以下であると、銀ペースト中に存在する銀粒子において小粒径の銀粒子が占める割合が少ないので、低温で焼結が開始するのを抑制することができ、その結果、緻密で抵抗率の低い接合体を形成することができる。同様に、粒径が0.5μm以下の銀粒子の含有量が15質量%以下であると、銀ペースト中に存在する銀粒子において小粒径の銀粒子が占める割合が少ないので、低温で焼結が開始するのを抑制することができ、その結果、緻密で抵抗率の低い接合体を形成することができる。
【0018】
銀粒子は、その表面に銀の酸化被膜や硫化被膜等が微量に存在していてもよい。銀は貴金属であるため、銀粒子自体は酸化されにくく、非常に安定であるが、ナノ領域で見ると
空気中等の硫黄や酸素等を吸着しやすく、銀粒子の表面に薄い被膜が形成される傾向にある。銀粒子における酸化皮膜や硫化被膜等の厚みは好ましくは50nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0019】
銀ペーストにおける酸化銀の割合は、1.0質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。更に好ましくは、銀ペーストは酸化銀を実質的に含まない。ここで、「銀ペーストが酸化銀を実質的に含まない」とは、銀ペーストに含まれる銀粒子の表面に存在し得る酸化被膜を除いて、銀ペーストが酸化銀(粒子状の酸化銀等)を含まないことを意味する。銀ペーストにおける酸化銀の割合を少なくすることにより、酸化銀の還元に伴う酸素の発生量を低減することができる。更に、銀ペーストが酸化銀を含まないことにより、酸化銀の還元に伴う酸素の発生をなくすことができる。酸化銀の還元に伴う酸素の発生は、酸化銀1モルに対して22.4リットルもの多量の酸素が発生することから、焼結工程において極めて危険である。本実施形態に係る方法は、酸素の発生量を低減することにより、より好ましくは酸素の発生をなくすことにより、より安全な方法で接合体を形成することができる。
【0020】
銀ペーストは、銀粒子に加えて、分散媒を更に含んでよい。銀ペーストは、銀粒子と有機溶剤とからなるものであってよい。分散媒の種類は特に限定されるものではなく、有機溶剤および/または樹脂等であってよい。分散媒として使用可能な樹脂は、後述する還元雰囲気中での加熱および/または酸化雰囲気中での加熱によって分解し、形成される接合体中に残存しないものである。樹脂は、例えば、PS(ポリスチレン)やPMMA(ポリメチルメタクリレート)であってよい。銀ペーストは、分散媒として有機溶剤を更に含むことが好ましい。分散剤として有機溶剤を含むことで、銀ペーストの取り扱い性が向上し、基体の表面に銀ペーストを所望の厚さで均一に塗布することが容易になる。その結果、所望の厚さを有する均一な接合体を形成することができる。有機溶剤は、例えば、1種類の有機溶剤であっても、2種類以上の有機溶剤の混合物であってもよく、ジオールとエーテルとの混合物であってよい。有機溶剤の沸点は、150〜250℃の範囲であることが好ましい。沸点が150℃以上であると、加熱工程までの間に乾燥してしまうことによる、銀粒子の大気による汚染やチップの脱落を防ぐことができる。沸点が250℃以下であると、加熱工程での揮発速度が速くなり、焼結を促進することができる。
【0021】
銀ペーストは、銀粒子および分散媒に加えて、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、希釈溶剤等の微量の添加剤を含んでよい。銀ペーストにおける添加剤の含有量は、添加剤の総量が銀ペーストに対して5質量%以下、例えば0.5質量%〜3質量%であってよい。
【0022】
(基体)
本実施形態に係る接合方法を適用することができる基体は特に限定されず、例えば、プリント配線基板等の配線基板、リードフレーム、サブマウント、銅貼りセラミック基板等であってよい。配線基板としては、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタンまたはこれらの混合物を含むセラミック基板、Cu、Fe、Ni、Cr、Al、Ag、Au、Tiまたはこれらの合金を含む金属基板、ガラス基板、BTレジン基板等の樹脂基板、およびガラスエポキシ基板等が挙げられる。上述した配線基板およびリードフレームは、半導体発光装置を製造するためのパッケージの一部を構成するものであってよい。リードフレームとしては、例えば、Cu、Fe、Ni、Cr、Al、Ag、Au、Tiまたはこれらの合金を含むものが挙げられる。基体表面が銅等の酸化しやすい金属で構成される場合、基体の表面には酸化被膜が形成されていることがあり、この酸化被膜の存在により、基体と電子部品との接合強度が低くなってしまうおそれがある。これに対し、本実施形態に係る接合方法は、酸化雰囲気中での接合に先立って、還元雰囲気中での加熱を行う。還元雰囲気中での加熱により、基体表面の酸化被膜が還元されて除去される。その結果、基体と電子部品との接合強度を向上させることができる。そのため、本実施形態に係る接合方法は、酸化しやすい基体を接合するときに特に有用である。
【0023】
(電子部品)
本実施形態に係る接合方法を適用することができる電子部品は特に限定されず、例えば、発光素子、電力制御素子等であってよい。半導体発光素子をパッケージに接合して半導体発光装置を製造する場合、パッケージは、耐熱性の低い熱可塑性樹脂等を含むことがある。この場合、接合時の加熱により、熱可塑性樹脂等の反射率が低下し、半導体発光装置の特性が低下してしまう恐れがあった。本実施形態に係る接合方法は、還元雰囲気中での加熱および酸化雰囲気中での加熱を低温で行うことができるので、熱可塑性樹脂の反射率の低下およびそれに起因する半導体発光装置の特性の低下を抑制することができる。そのため、本実施形態に係る接合方法は、耐熱性の低い材料を含む装置を製造する場合に特に有用である。
【0024】
(還元雰囲気中での加熱)
還元雰囲気中での加熱により、銀粒子の表面に微量に存在する銀の酸化被膜等が還元され、その結果、銀粒子の表面に銀原子が露出する。このように銀粒子の表面に銀原子が露出すると、銀粒子表面において銀原子の表面拡散が促進されると考えられる。そのため、後続の酸化雰囲気中での加熱において、低温で銀粒子の焼結を進行させることができ、抵抗率の低い接合体を形成することができる。銅や鉄などに比べて銀は貴金属であり非常に安定であるため、所定の条件とすることで、銀粒子の表面に微量に存在する酸化銀や硫化銀を還元しやすくすることができる。そして銀粒子の表面を活性な銀とすることにより、銀粒子同士による融着を一層促進することができる。
【0025】
還元雰囲気中での加熱および後述する酸化雰囲気中での加熱は、焼成炉等の公知の装置を用いて行うことができる。還元雰囲気中での加熱と、酸化雰囲気中での加熱とは、別々の装置において行ってよく、同じ装置で行ってもよい。本実施形態に係る接合方法において、加熱を行う装置は、還元性ガスおよび酸化性ガスの両方と接続したものであることが好ましい。このような装置を用いることで、還元雰囲気中での加熱と酸化雰囲気中での加熱とを同一の装置において連続して実施することができる。還元雰囲気中での加熱と、酸化雰囲気中での加熱とを別々の装置で行う場合、還元雰囲気中での加熱を行った後、別の装置に移動させる間に温度が低下してしまうことがある。銀は温度が低いほど酸化されやすくなる傾向にある。そのため、移動時に温度が低下すると、還元雰囲気中での加熱により酸化被膜が除去された銀の表面に、再び酸化被膜が形成されてしまうおそれがある。そのため、還元雰囲気中での加熱と酸化雰囲気中での加熱とは、同一の装置において実施することが好ましい。
【0026】
還元性ガスおよび酸化性ガスの両方と接続した装置を用いる場合、還元性ガスから酸化性ガスへと雰囲気ガスを切り替える際に、装置内の温度を保持して温度低下を防ぐことが好ましい。還元性ガスおよび酸化性ガスの両方と接続した装置を用いる場合、装置は、還元性ガスの排気設備を備えることが好ましい。還元性ガスとして用いられるギ酸や水素は、酸化雰囲気中に存在する酸素と反応して水を生成し、この水は装置の腐食(錆)等の問題を引き起こす。また、水素は、酸素との反応により爆発を引き起こす危険性もある。装置が還元性ガスの排気設備を備えることで、このような腐食や爆発を防ぐことができる。
【0027】
(還元雰囲気)
還元雰囲気は、ギ酸含有雰囲気または水素含有雰囲気であることが好ましく、例えば、窒素等の不活性ガスにギ酸または水素を混合したものであることが好ましい。還元雰囲気は、より好ましくはギ酸を含み、例えば、窒素等の不活性ガスにギ酸を混合したものであることが好ましい。還元雰囲気としてギ酸含有雰囲気を用いることにより、本実施形態に係る接合方法の安全性を向上させることができ、設備コストを低減することができる。より好ましくは、還元雰囲気が、0.5〜20体積%のギ酸を含む窒素雰囲気である。ギ酸濃度が0.5体積%以上であると、ギ酸による還元効果をより高くすることができる。ギ酸濃度が20体積%以下であると、十分な還元効果を得ると共に、ガスの危険性を低くできる。
【0028】
(加熱温度)
還元雰囲気中での加熱は、300℃未満で行う。還元雰囲気中での加熱温度を300℃未満の低温とすることで、加熱後の冷却時の熱応力を低減することができ、クラックの発生を抑制することができる。また、電子部品が耐熱性の低い部材を含む場合、耐熱性の低い部材の劣化を抑制することができる。例えば、耐熱性の低い熱可塑性樹脂等を含む半導体発光装置の場合、熱可塑性樹脂等の反射率の低下を防ぐことができる。還元雰囲気中での加熱温度は、好ましくは280℃以下であり、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは200℃以下である。還元雰囲気中での加熱は、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃である。加熱温度が150℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃以上であると、銀粒子表面に存在する酸化被膜の還元反応の反応速度を速くすることができる。なお、銀ペーストが有機溶剤を含む場合、還元雰囲気中での加熱温度は有機溶剤の沸点より低い温度であってよい。有機溶剤は室温においても徐々に揮発し、温度が高くなるにしたがって揮発速度は速くなる。そのため、加熱を行う場合、室温から温度が上昇するにしたがって有機溶剤の揮発が進み、沸点が加熱温度より高い場合であっても、通常は加熱温度に達する前に溶剤は完全に揮発してしまう。加熱温度に達したときに有機溶剤が基体上に僅かに残存していたとしても、加熱の間に完全に揮発する。そのため、還元雰囲気中での加熱終了時に、基体上に液体状態の有機溶剤は実質的に存在しない。
【0029】
還元雰囲気中での加熱温度と、酸化雰囲気中での加熱温度は、同じ温度であってよく、互いに異なる温度であってもよい。還元雰囲気中で加熱を行うときの温度は、後続の酸化雰囲気中で加熱を行うときの温度以下であることが好ましい。還元雰囲気中での加熱温度が酸化雰囲気中での加熱温度以下であると、周辺部材の熱劣化を低減することができる。
【0030】
還元雰囲気中での加熱を行うときの圧力は特に限定されるものではなく、例えば大気圧であってよい。
【0031】
(酸化雰囲気中での加熱)
次に、酸化雰囲気中での加熱を行う。以下に詳述するように、本実施形態に係る接合方法によれば、従来の方法と比較して低温の条件下で銀粒子の焼結を進行させることができ、銀粒子同士を融着させて、抵抗値の低い接合体を形成することができる。
【0032】
(酸化雰囲気)
酸化雰囲気は、好ましくは酸素含有雰囲気であり、より好ましくは大気雰囲気である。酸化雰囲気が酸素含有雰囲気である場合、雰囲気中の酸素濃度は2〜21体積%であることが好ましい。雰囲気中の酸素濃度が高いほど、銀粒子表面において銀原子の表面拡散が促進されて、銀粒子同士が融着しやすくなると考えられる。その結果、抵抗率のより低い接合体を形成することができる。酸素濃度が2体積%以上であると、低い加熱温度で抵抗率のより低い接合体を形成することができる。酸素濃度が21体積%以下であると、加熱装置に加圧機構が不要となり、工程コストが低減できる。
【0033】
(加熱温度)
酸化雰囲気中での加熱は、300℃以下で行う。還元雰囲気中での加熱温度を300℃以下の低温とすることで、加熱後の冷却時の熱応力を低減することができ、クラックの発生を抑制することができる。また、電子部品が耐熱性の低い部材を含む場合、耐熱性の低い部材の劣化を抑制することができる。例えば、耐熱性の低い熱可塑性樹脂等を含む半導体発光装置の場合、熱可塑性樹脂等の反射率の低下を防ぐことができる。酸化雰囲気中での加熱温度は、好ましくは280℃以下であり、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは200℃以下である。銀は一般に、他の金属と比較して低温で焼結する傾向にあることが知られている。しかし、実際には、銀粒子の表面には銀の酸化被膜が存在し、この酸化被膜が焼結の妨げとなって、低温での加熱により抵抗率の低い接合体を形成することが困難であった。本実施形態に係る接合方法は、酸化雰囲気中での加熱の前に行われる還元雰囲気中での加熱により、銀粒子表面の酸化被膜が還元されて銀表面に銀原子が露出しているので、酸化雰囲気中での加熱の際に、銀原子の表面拡散が促進されると考えられる。その結果、銀粒子を低温で焼結させることができる。そのため、酸化雰囲気において、300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは200℃以下の低温で加熱を行うことにより、クラックの発生や耐熱性の低い部材の劣化を抑制しつつ、抵抗率の低い接合体を形成することができる。酸化雰囲気中での加熱は、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上であることが好ましい。加熱温度が150℃以上、より好ましくは160℃以上であると、抵抗率のより低い接合体を形成することができる。
【0034】
酸化雰囲気中で加熱を行うときの温度は、還元雰囲気中で加熱を行うときの温度以上であることが好ましい。以上であると、銀粒子の焼結を促進することができる。
【0035】
酸化雰囲気中での加熱を行うときの圧力は特に限定されるものではなく、例えば大気圧であってよい。
【0036】
本実施形態に係る接合方法は、上述した還元雰囲気中での加熱と、酸化雰囲気中での加熱に加えて、任意の1以上の工程を更に含んでよい。例えば、銀ペーストが有機溶剤を含む場合、還元雰囲気中で加熱を行う前に、有機溶剤を揮発させることが好ましい。還元雰囲気中での加熱を行う前に有機溶剤の揮発を行うことにより、有機溶剤が除去されて銀粒子の表面が露出し、この露出した銀粒子表面に対して、ギ酸による還元処理を確実に行うことができる。また、還元雰囲気としてギ酸含有雰囲気を使用し、かつ銀ペーストがギ酸に対して反応性を有する有機溶剤を含む場合、還元雰囲気中での加熱を行う前に、加熱を行って有機溶剤を揮発させてもよい。この加熱は、ギ酸を含まない雰囲気、例えば窒素雰囲気等の不活性雰囲気または大気雰囲気において、25℃〜300℃で行うことができるが、150℃〜260℃で行うことが好ましい。所定の加熱条件とすることにより、有機溶剤の揮発を制御することができる。また、基体の表面が銅等の酸化しやすい金属で構成される場合、還元雰囲気中での加熱およびその後の酸化雰囲気中での加熱に続いて、更に還元雰囲気中での加熱を行ってよい。このような追加の還元雰囲気中での加熱を行うことにより、酸素雰囲気中での加熱の際に酸化された基体表面の金属を還元することができる。
【0037】
本実施形態に係る接合方法において、還元雰囲気中での加熱を行う時間と酸化雰囲気中での加熱を行う時間の合計は、好ましくは6時間以下であり、より好ましくは2時間以下であり、より一層好ましくは1時間以下である。本実施形態に係る接合方法は、還元雰囲気中での加熱およびその後の酸化雰囲気中での加熱を行うことで、低温かつ短時間での加熱により抵抗率の低い接合体を形成することができる。このように低温かつ短時間で十分な焼結を達成し得るので、接合体の製造に要する時間を短縮することができ、さらにクラックの発生や耐熱性の低い部材の劣化を抑制することができる。
【0038】
以上説明した接合方法により、抵抗率が低く導電性の高い接合体を形成することができる。本実施形態に係る接合方法で形成される接合体の抵抗率は、6μΩ・cm以下、好ましくは4μΩ・cm以下であってよい。
【0039】
[接合体の製造方法]
次に、本発明の一の実施形態に係る接合体の製造方法について説明する。なお、本実施形態に係る製造方法について、上述した電子部品の製造方法と共通する事項についての記述は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、本実施形態においては逐次言及しない。
【0040】
本実施形態に係る接合体の製造方法は、上述したいずれかの接合方法によって接合体を形成するものである。
【0041】
接合体の製造方法は、基体上に銀粒子を含有する銀ペーストを塗布することと、銀ペースト上に電子部品を載置することと、銀ペーストを還元雰囲気中で300℃未満の温度で加熱を行うことと、還元雰囲気中で加熱をした後に、酸化雰囲気中で300℃以下の温度で加熱を行って接合体を形成することとを含む。
【0042】
本実施形態に係る接合体の製造方法は、上述した還元雰囲気中での加熱および酸化雰囲気中での加熱に加えて、任意の1以上の工程を更に含んでよい。例えば、銀ペーストが有機溶剤を含む場合、還元雰囲気中で加熱を行う前に、有機溶剤を揮発させることが好ましい。また、還元雰囲気としてギ酸含有雰囲気を使用し、かつ銀ペーストがギ酸に対して反応性を有する有機溶剤を含む場合、還元雰囲気中での加熱を行う前に、加熱を行って有機溶剤を揮発させてもよい。また、基体の表面が銅等の酸化しやすい金属で構成される場合、還元雰囲気中での加熱およびその後の酸化雰囲気中での加熱に続いて、更に還元雰囲気中での加熱を行ってよい。
【0043】
本実施形態に係る製造方法により、抵抗率が低く導電性の高い接合体を製造することができる。本実施形態に係る製造方法により得られる接合体の抵抗率は、6μΩ・cm以下、好ましくは4μΩ・cm以下であってよい。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
以下に示す手順で、銀ペーストを調製し、基体上に接合体を形成した。基体としてガラス基板を用いた。
【0045】
(銀ペーストの調製)
有機溶剤である2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(32.4g)およびジエチレングリコールモノブチルエーテル(8.1g)を、自転・公転ミキサー(商品名「あわとり練太郎AR−500」、株式会社シンキー製)にて30秒間攪拌して混合溶剤を得た。
【0046】
フレーク状銀粒子(福田金属箔粉工業株式会社製、製品名「AgC−239」、フレーク状、平均粒径(メジアン径):2.6μm、比表面積:0.7m
2/g、粒径0.3μm未満の銀粒子の含有量:2質量%、粒径0.5μm以下の銀粒子の含有量:6質量%)を、459.50g計量して混合溶剤に加えて混合物を得た。この混合物を、自転・公転ミキサーにて攪拌して、500gの銀ペーストを得た。混合物の撹拌は、3分間の攪拌と、その後の2分間の脱泡とを含むサイクルを1サイクル実施することで行った。銀ペースト中の銀粒子の含有量は91.9質量%であった。
【0047】
(昇温工程)
得られた銀ペーストを、厚み1mmのガラス基板上にスクリ−ン印刷法で塗布した。塗布厚みは100μmであった。銀ペーストを塗布したガラス基板をバッチ式の加熱機構を用いて、大気雰囲気中で室温から200℃まで170℃/分の昇温速度で昇温した後、200℃で1分間保持した。
【0048】
(第1の加熱工程)
次いで、炉内雰囲気を、ギ酸を3体積%含む窒素雰囲気(以下、「ギ酸雰囲気」とよぶ)に切り替えた後、炉内温度を200℃で4分間保持して第1の加熱工程を行った。なお、本実施例において、第1の加熱工程は還元雰囲気中での加熱に対応する。
【0049】
(第2の加熱工程)
次いで、炉内雰囲気を大気雰囲気に切り替えた後、炉内温度を200℃で10分間保持して第2の加熱工程を行った。なお、本実施例において、第2の加熱工程は酸化雰囲気中での加熱に対応する。
【0050】
その後、炉内を40℃以下に冷却し、表面に焼結膜(接合体)が作成されたガラス基板を取り出した。焼結膜の厚みは約100μmであった。
【0051】
[実施例2]
全工程の温度を180℃に変更した以外は実施例1と同様の手順で実施例2を行い、厚みが約100μmの焼結膜を得た。
【0052】
[実施例3]
全工程の温度を150℃に変更した以外は実施例1と同様の手順で実施例3を行い、厚みが約100μmの焼結膜を得た。
【0053】
[比較例1]
第1の加熱工程における雰囲気を大気雰囲気に変更した以外は実施例1と同様の手順で比較例1を行い、厚みが約100μmの焼結膜を得た。
【0054】
[比較例2]
昇温工程および第2の加熱工程における雰囲気をギ酸雰囲気に変更した以外は実施例1と同様の手順で比較例2を行い、厚みが約100μmの焼結膜を得た。
【0055】
[比較例3]
第1の加熱工程における雰囲気を大気雰囲気に変更し、第2の加熱工程における雰囲気をギ酸雰囲気に変更した以外は実施例1と同様の手順で比較例3を行い、厚みが約100μmの焼結膜を得た。
【0056】
[比較例4]
全工程の温度を180℃に変更した以外は比較例1と同様の手順で比較例4を行い、厚みが約100μmの焼結膜を得た。
【0057】
[比較例5]
全工程の温度を150℃に変更した以外は比較例1と同様の手順で比較例5を行い、厚みが約100μmの焼結膜を得た。
【0058】
実施例1〜3および比較例1〜
5で得られた焼結膜のそれぞれについて、ガラス基板側から目視にて外観を確認した。一例として、比較例2の焼結膜をガラス基板側から撮影した写真を
図1に示す。外観観察の結果を表1
に示す。また、実施例1〜3および比較例1〜
5で得られた焼結膜のそれぞれについて、抵抗率計(製品名「MCP−T600」、三菱化学株式会社製)を用いて4端子法にて電気抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
ギ酸雰囲気(還元雰囲気)中での加熱の後に大気雰囲気(酸化雰囲気)中での加熱を行った実施例1〜3において、6μΩ・cm以下の低い抵抗率を有し、かつ平滑な表面を有する焼結膜(接合体)が得られた。実施例1〜3の比較より、加熱温度が高いほど低い抵抗率を有する焼結膜が得られたことが分かる。温度条件が同じである実施例1と比較例1とを比較すると、大気囲気中での加熱のみを行った比較例1で得られた焼結膜は、大気雰囲気中での加熱およびギ酸雰囲気中での加熱の両方を行った実施例1の焼結膜よりも高い抵抗率を有した。これは、銀粒子表面の酸化被膜が還元されなかったことにより、銀粒子の焼結が進行しなかったからであると考えられる。また、ギ酸雰囲気中での加熱のみを行った比較例2で得られた焼結膜は、大気雰囲気中での加熱およびギ酸雰囲気中での加熱の両方を行った実施例1の焼結膜、ならびに大気雰囲気中での加熱のみを行った比較例1の焼結膜よりも高い抵抗率を有した。このことから、ギ酸雰囲気中では酸素による銀粒子表面の拡散が促進されないため、銀粒子の焼結が進行しにくいと考えられる。また、比較例2で得られた焼結膜の表面には気泡の発生が観察された。これは、昇温工程において、銀ペーストに含まれる有機溶剤とギ酸との間で気体の発生を伴う反応が起こったことによるものと考えられる。このような気泡の発生もまた、比較例2の焼結膜の抵抗値が上昇した原因であると考えられる。また、大気雰囲気中での加熱の後にギ酸雰囲気中での加熱を行った比較例3で得られた焼結膜は、ギ酸雰囲気中での加熱の後に大気雰囲気中での加熱を行った実施例1の焼結膜よりも高い抵抗率を有した。これは、大気雰囲気中での加熱時には、銀粒子表面に酸化被膜が存在することにより焼結が進行せず、その後のギ酸雰囲気中での加熱時には、ギ酸雰囲気が銀粒子の焼結を促進する効果を有しないからであると考えられる。
【0061】
また、加熱温度が180℃であった実施例2と比較例4との比較、および加熱温度が150℃であった実施例3と比較例5との比較より、加熱温度が同じ場合、ギ酸雰囲気中での加熱の後に大気雰囲気中での加熱を行うことにより、全工程を大気雰囲気中で行う場合と比較して抵抗率の低い接合体を形成することができたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本実施形態の焼結銀ペーストの接合方法及び接合体は、例えば、耐熱パワー配線、部品電極、ダイアタッチ、微細バンプ、フラットパネル、ソーラ配線等の製造用途およびウェハ接続等の用途、またこれらを組み合わせて製造する電子部品の製造に適用できる。また、本実施形態の焼結銀ペーストの接合方法及び接合体製造方法は、例えば、LEDやLDなどの半導体発光素子を用いた発光装置を製造する際にも適用できる。