【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人科学技術振興機構、「戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発(ALCA)(特別重点技術領域「次世代蓄電池」、研究開発題目「新規正極活物質の探索」)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
LIU, YUPING ET AL.,Development of Mg-Transition Metal Complex as Cathode Materials,PROGRESS IN CHEMISTRY,2014年,vol. 26, no. issue 9,pages 1596 - 1608
【文献】
MATTHEU M, HUIE ET AL.,Cathode materials for magnesium and magnesium-ion based batteries,COORDINATION CHEMISTRY REVIEWS,2015年 3月15日,vol. 287,pages 15 - 27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(1)中のM2が、Ni、Co、Mn、Ti、V、Cr、Fe、及びCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である請求項1又は請求項2に記載のマグネシウム二次電池用正極活物質。
前記式(1)中、0<x≦0.8であり、0.5≦y<2であり、0<z≦0.6であり、1.5≦x+y+z≦2.0である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のマグネシウム二次電池用正極活物質。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用したマグネシウム二次電池用正極活物質、マグネシウム二次電池用正極、及びマグネシウム二次電池の実施形態の一例について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0017】
<マグネシウム二次電池用正極活物質>
本実施形態のマグネシウム二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」という。)は、下記式(1)の組成式で表され、空間群Fm−3mの岩塩型結晶構造を有するマグネシウム複合酸化物からなるものである。この正極活物質を用いてマグネシウム二次電池を構成することにより、良好な充放電特性を示すマグネシウム二次電池を得ることができる。
Mg
xM1
yM2
zO
2・・・(1)
【0018】
上記式(1)中、元素M1は、Ni、Co、又はMnである。エネルギー密度の観点から、元素M1は、Niであることが好ましい。
【0019】
上記式(1)中、元素M2は、元素M1とは異なり、且つ、Ni、Co、Mn、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Nb、W、Mo、及びRuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。正極活物質の単位質量あたりの充放電容量の観点から、元素M2は、Ni、Co、Mn、Ti、V、Cr、Fe、及びCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましく、Ni、Co、Mn、V、Fe、及びCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることがより好ましい。
元素M2の種類数は特に制限されない。合成プロセスの観点から、元素M2の種類数は、1種〜3種であることが好ましく、1種又は2種であることがより好ましい。
ある実施態様では、上記式(1)中の元素M1は、Niであり、元素M2は、Coである。
【0020】
上記式(1)中、xは、マグネシウム複合酸化物中におけるMgの存在割合を示し、0<x≦1である。マグネシウム複合酸化物がマグネシウム二次電池の正極活物質として機能する場合、充放電状態によってxの値は変化する。負極に金属マグネシウム、マグネシウム合金等を用いるため、0<x≦0.8であることが好ましく、0<x≦0.5であることがより好ましい。
【0021】
上記式(1)中、yは、マグネシウム複合酸化物中における元素M1の存在割合を示し、0<y<2である。充放電容量の観点から、0.5≦y<2であることが好ましく、1≦y<2であることがより好ましい。
【0022】
上記式(1)中、zは、マグネシウム複合酸化物中における元素M2の存在割合を示し、0<z<1である。元素M2が2種以上の元素を含む場合、各元素の比率は特に制限されない。充放電容量の観点から、0<z≦0.6であることが好ましい。
【0023】
上記式(1)中、x+y+zは、1.5≦x+y+z≦2.0である。
【0024】
上記式(1)中、x、y、及びzとしては、0<x≦0.8であり、0.5≦y<2であり、0<z≦0.6であり、1.5≦x+y+z≦2.0であることが好ましい。
【0025】
上記式(1)で表されるマグネシウム複合酸化物を合成する方法としては、特に制限されず、逆共沈法、固相法、水熱法等の公知の合成方法を適宜採用することができる。これらの合成方法の中でも、均一相を得やすいことから、逆共沈法が好ましい。
【0026】
上記式(1)で表されるマグネシウム複合酸化物を逆共沈法により合成する方法は、例えば以下のとおりである。
【0027】
まず、マグネシウム化合物と、元素M1を含む化合物と、元素M2を含む化合物と、沈殿剤とを含有する水溶液を準備する。
【0028】
マグネシウム化合物、元素M1を含む化合物、又は元素M2を含む化合物としては、マグネシウム、元素M1、又は元素M2を含む水溶性化合物が挙げられる。水溶性化合物としては、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、水酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等)などが挙げられる。これらの水溶性化合物は、水和物であってもよい。また、これらの水溶性化合物は、それぞれ1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
沈殿剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。沈殿剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
水溶液中におけるマグネシウム化合物、元素M1を含む化合物、及び元素M2を含む化合物の混合比は、上記式(1)中のx、y、及びzの値に応じた混合比とすることができる。
【0030】
次に、この水溶液を50℃〜90℃で30分間〜120分間撹拌することにより、沈殿物を生成させる。
次に、沈殿物を洗浄して乾燥することにより、前駆体を得る。
その後、前駆体を550℃〜950℃で12時間〜48時間焼成することにより、上記式(1)で表されるマグネシウム複合酸化物を得ることができる。
【0031】
<マグネシウム二次電池用正極>
本実施形態のマグネシウム二次電池用正極(以下、単に「正極」という。)は、前述した正極活物質を含むものである。正極は、正極活物質を含有する正極合剤をフィルム化し、正極集電体上に圧着することにより製造することができる。或いは、正極合剤に有機溶媒を添加したペーストを正極集電体上に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、更に必要に応じて圧延することにより製造することができる。
【0032】
正極集電体としては、特に制限されず、公知の正極集電体を使用することができる。正極集電体としては、アルミニウム、ステンレス、銅等からなる箔、メッシュ等が挙げられる。
【0033】
正極合剤は、正極活物質と、必要に応じて結着剤、導電助剤等とを混合することにより調製することができる。結着剤及び導電助剤としては、特に制限されず、それぞれ公知の材料を使用することができる。
結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム等が挙げられる。結着剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
導電助剤としては、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属繊維等が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等が挙げられる。導電助剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
正極合剤に有機溶媒を添加してペースト化する場合、有機溶媒としては特に制限されず、公知の材料を使用することができる。有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。正極集電体に対するペーストの塗布量は、マグネシウム二次電池の用途等に応じて適宜決定することが好ましい。
【0035】
<マグネシウム二次電池>
本実施形態のマグネシウム二次電池は、前述した正極と、負極と、非水電解液とを有するものである。正極と負極との間にはセパレータが介在している。正極については前述したとおりであるため、以下では、正極以外の構成について詳細に説明する。
【0036】
(負極)
負極は、マグネシウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質を含む。
負極活物質としては、金属マグネシウム及びマグネシウム合金が挙げられる。マグネシウム合金としては、Mg−Al合金、Mg−Zn合金、Mg−Mn合金、Mg−Ni合金、Mg−Sb合金、Mg−Sn合金、Mg−In合金等が挙げられる。
また、負極活物質としては、マグネシウムと合金化するアルミニウム、亜鉛、リチウム、シリコン、スズ等の材料を用いることもできる。また、負極活物質としては、マグネシウムイオンを電気化学的に吸蔵及び放出可能な黒鉛、非晶質炭素等の炭素材料を用いることもできる。
【0037】
負極は、金属マグネシウム、マグネシウム合金等の負極活物質を電極に適した形状(板状等)に成形して作成することができる。
【0038】
また、負極は、上記の負極活物質を含有する負極合剤ペーストを負極集電体上に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、更に必要に応じて圧延することにより作製することもできる。負極集電体としては、特に制限されず、公知の負極集電体を使用することができる。負極集電体としては、アルミニウム、ステンレス、銅等からなる箔、メッシュ等が挙げられる。
【0039】
負極合剤ペーストは、負極活物質と、必要に応じて結着剤、導電助剤等とを有機溶媒に添加して混合することにより調製することができる。結着剤、導電助剤、及び有機溶媒としては、正極と同様の材料を用いることができる。
【0040】
(セパレータ)
セパレータは、正極と負極との間に介在するように設けられ、正極と負極とを絶縁する。セパレータとしては、特に制限されず、公知のセパレータを使用することができる。セパレータの材料としては、ガラス、セラミックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。セパレータの形状としては多孔質体等が挙げられる。
【0041】
(非水電解液)
非水電解液は、非水溶媒と、溶質である支持塩とを含む。非水溶媒及び支持塩としては、特に制限されず、それぞれ公知の材料を使用することができる。
非水溶媒としては、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−1,3−ジオキソラン、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、イオン液体等が挙げられる。
支持塩としては、Mg(N(SO
2CF
3)
2)
2、Mg(SO
3CF
3)
2、Mg(ClO
4)
2、MgBr
2、Mg(BF
4)
2、Mg(PF
6)
2等が挙げられる。
【0042】
(マグネシウム二次電池の形状等)
マグネシウム二次電池の形状は特に制限されず、コイン型、円筒型、積層型等のいずれであってもよい。また、マグネシウム二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)は、非双極型(内部並列接続型)であっても双極型(内部直列接続型)であってもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0044】
[合成例1]
炭酸ナトリウム1.48gを二次蒸留水200mLに溶解し、水溶液を80℃に加熱した。1.0mol/L硝酸マグネシウム水溶液8.00mLと、1.0mol/L硝酸ニッケル水溶液6.40mLと、1.0mol/L硝酸コバルト水溶液1.60mLとに蒸留水を加えて100mLにメスアップした溶液を上記の水溶液に添加し、80℃で30分間撹拌した。撹拌後、沈殿物を吸引濾過し、80℃の水で洗浄した後、大気中、100℃で24時間乾燥させることにより、前駆体を得た。得られた前駆体を自動乳鉢で24時間混合した後、大気中、750℃で24時間焼成することにより、マグネシウム複合酸化物を得た。焼成時の昇温速度は5℃/分とした。
【0045】
得られたマグネシウム複合酸化物について、粉末X線回折装置(PANalytical製、X’Pert Pro)により結晶構造を分析したところ、回折ピークは全て空間群Fm−3mの岩塩型結晶構造に帰属され、単一相が得られたことが確認された。合成例1で得られたマグネシウム複合酸化物の粉末X線回折パターンを
図1に示す。
【0046】
また、得られたマグネシウム複合酸化物について、誘導結合プラズマ発光分光分析装置((株)島津製作所製、ICPE−9000)により化学組成を分析した。更に、放射光X線回折装置(BL02B2、SPring−8)により結晶構造を分析し、得られた回折パターンに基づいてリートベルト解析を行い、結晶学的特性を調べた。リートベルト解析には、リートベルト解析用ソフトRIETAN−FPを用いた。結晶構造パラメータを下記表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
リートベルト解析の結果、金属サイトに空孔を有するMg
0.447Ni
1.229Co
0.246O
2の組成式であることが確認された。
【0049】
[合成例2]
炭酸ナトリウム1.48gを二次蒸留水200mLに溶解し、水溶液を80℃に加熱した。1.0mol/L硝酸マグネシウム水溶液16.00mLと、1.0mol/L硝酸ニッケル水溶液6.40mLと、1.0mol/L硝酸コバルト水溶液1.60mLとに蒸留水を加えて100mLにメスアップした溶液を上記の水溶液に添加し、80℃で30分間撹拌した。撹拌後、沈殿物を吸引濾過し、80℃の水で洗浄した後、大気中、100℃で24時間乾燥させることにより、前駆体を得た。得られた前駆体を自動乳鉢で24時間混合した後、大気中、750℃で24時間焼成することにより、マグネシウム複合酸化物を得た。焼成時の昇温速度は5℃/分とした。
【0050】
得られたマグネシウム複合酸化物について、粉末X線回折装置(PANalytical製、X’Pert Pro)により結晶構造を分析したところ、回折ピークは全て空間群Fm−3mの岩塩型結晶構造に帰属され、単一相が得られたことが確認された。
【0051】
また、得られたマグネシウム複合酸化物について、誘導結合プラズマ発光分光分析装置((株)島津製作所製、ICPE−9000)により化学組成を分析した。更に、放射光X線回折装置(BL02B2、SPring−8)により結晶構造を分析し、得られた回折パターンに基づいて合成例1と同様にリートベルト解析を行い、結晶学的特性を調べた。結晶構造パラメータを下記表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
リートベルト解析の結果、金属サイトに空孔を有するMg
0.639Ni
1.018Co
0.256O
2の組成式であることが確認された。
【0054】
[合成例3]
炭酸ナトリウム1.48gを二次蒸留水200mLに溶解し、水溶液を80℃に加熱した。1.0mol/L硝酸マグネシウム水溶液と1.0mol/L硝酸ニッケル水溶液と1.0mol/L硝酸コバルト水溶液とを所定比で混合した後に蒸留水を加えて100mLにメスアップした溶液を上記の水溶液に添加し、80℃で30分間撹拌した。撹拌後、沈殿物を吸引濾過し、80℃の水で洗浄した後、大気中、100℃で24時間乾燥させることにより、前駆体を得た。得られた前駆体を自動乳鉢で24時間混合した後、大気中、750℃で24時間焼成することにより、マグネシウム複合酸化物を得た。焼成時の昇温速度は5℃/分とした。
【0055】
得られたマグネシウム複合酸化物について、粉末X線回折装置(PANalytical製、X’Pert Pro)により結晶構造を分析したところ、回折ピークは全て空間群Fm−3mの岩塩型結晶構造に帰属され、単一相が得られたことが確認された。
【0056】
また、得られたマグネシウム複合酸化物について、誘導結合プラズマ発光分光分析装置((株)島津製作所製、ICPE−9000)により化学組成を分析した。更に、放射光X線回折装置(BL02B2、SPring−8)により結晶構造を分析し、得られた回折パターンに基づいて合成例1と同様にリートベルト解析を行い、結晶学的特性を調べた。結晶構造パラメータを下記表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
リートベルト解析の結果、金属サイトに空孔を有するMg
0.046Ni
1.517Co
0.366O
2の組成式であることが確認された。
【0059】
[比較合成例1]
炭酸ナトリウム1.48gを二次蒸留水200mLに溶解し、水溶液を70℃に加熱した。1.0mol/L硝酸マグネシウム水溶液8.00mLと、1.0mol/L硝酸ニッケル水溶液8.00mLとに蒸留水を加えて100mLにメスアップした溶液を上記の水溶液に添加し、70℃で30分間撹拌した。撹拌後、沈殿物を吸引濾過し、大気中、100℃で24時間乾燥させることにより、前駆体を得た。得られた前駆体を自動乳鉢で24時間混合した後、大気中、950℃で24時間焼成することにより、マグネシウム複合酸化物を得た。焼成時の昇温速度は5℃/分とした。
【0060】
得られたマグネシウム複合酸化物について、粉末X線回折装置(PANalytical製、X’Pert Pro)により結晶構造を分析したところ、回折ピークは全て空間群Fm−3mの岩塩型結晶構造に帰属され、単一相が得られたことが確認された。
【0061】
また、得られたマグネシウム複合酸化物について、誘導結合プラズマ発光分光分析装置((株)島津製作所製、ICPE−9000)により化学組成を分析した。更に、放射光X線回折装置(BL02B2、SPring−8)により結晶構造を分析し、得られた回折パターンに基づいて合成例1と同様にリートベルト解析を行い、結晶学的特性を調べた。リートベルト解析の結果、Mg
0.468Ni
1.532O
2の組成式であることが確認された。
【0062】
[実施例1]
(マグネシウム二次電池の作製)
合成例2で得たマグネシウム複合酸化物(正極活物質)50質量部と、ポリテトラフルオロエチレン(結着剤)10質量部と、カーボンブラック(導電助剤;Timcal製、SuperC65)50質量部とを混合し、乾式で正極合剤フィルムを作製した。この正極合剤フィルムを15mmφのアルミニウムメッシュ(集電体、100メッシュ)に圧着し、110℃で乾燥させて正極を作製した。
また、金属マグネシウム板((株)ニラコ製、純度99.9質量%、厚さ0.10mm)を15mmφに打ち抜いて負極を作製した。
【0063】
セパレータとしては、ガラスペーパー(日本板硝子(株)製、TGP−008F)を準備した。
非水電解液は、支持塩であるMg(N(SO
2CF
3)
2)
2を、濃度が0.5mol/Lとなるようにアセトニトリル中に溶解して調製した。そして、非水電解液を正極及びセパレータに含浸させた。
【0064】
その後、正極、セパレータ、負極の順にステンレスセル(宝泉(株)製、HSフラットセル)内に積層し、マグネシウム二次電池を作製した。
【0065】
(評価)
作製したマグネシウム二次電池について、60℃の恒温槽内で充放電試験を行った。詳細には、電流密度5mA/gで放電を行い、電位が0V(vs.Mg/Mg
2+)に達した時点で充電に切り替え、電流密度5mA/gで充電を続けた。
実施例1のマグネシウム二次電池の初回放充電曲線を
図2に示す。
図2から分かるように、実施例1のマグネシウム二次電池は、200mAh/gを超える初回放電容量を示した。
【0066】
[実施例2]
(マグネシウム二次電池の作製)
合成例2で得たマグネシウム複合酸化物の代わりに合成例3で得たマグネシウム複合酸化物を使用したほかは、実施例1と同様にしてマグネシウム二次電池を作製した。
【0067】
(評価)
作製したマグネシウム二次電池について、60℃の恒温槽内で充放電試験を行った。詳細には、電流密度5mA/gで放電を行い、電位が0V(vs.Mg/Mg
2+)に達した時点で充電に切り替え、電位が3V(vs.Mg/Mg
2+)に達するまで、電流密度5mA/gで充電を続けた。
実施例2のマグネシウム二次電池の初回放充電曲線を
図3に示す。
図3から分かるように、実施例2のマグネシウム二次電池は、160mAh/gを超える初回放電容量を示した。
【0068】
また、充放電前の正極と、充放電を50サイクル繰り返した後の正極とについて、誘導結合プラズマ発光分光分析装置((株)島津製作所製、ICPE−9000)により、正極合剤層中のマグネシウムの組成を分析した。その結果、充放電前のマグネシウム組成が0.0294pfuであったのに対し、充放電を50サイクル繰り返した後のマグネシウム組成は0.279pfuであり、マグネシウム複合酸化物の構造中にマグネシウムが挿入されたことが示唆された。
【0069】
[比較例1]
(マグネシウム二次電池の作製)
合成例2で得たマグネシウム複合酸化物の代わりに比較合成例1で得たマグネシウム複合酸化物を使用したほかは、実施例1と同様にしてマグネシウム二次電池を作製した。
【0070】
(評価)
作製したマグネシウム二次電池について、60℃の恒温槽内で充放電試験を行った。詳細には、電流密度5mA/gで充電を行い、電位が3V(vs.Mg/Mg
2+)に達した時点で放電に切り替え、電位が0V(vs.Mg/Mg
2+)に達するまで、電流密度5mA/gで放電を続けた。
比較例1のマグネシウム二次電池の初回充放電曲線を
図4に示す。
図4から分かるように、比較例1のマグネシウム二次電池は、初回放電容量が70mAh/gに満たなかった。